説明

第VII因子または第VIIa因子のポリペプチド変種

【課題】長い循環中半減期を有し、hFVIIaまたはrhFVIIaより効率的に第X因子を第Xa因子に活性化することができる改善されたFVII分子またはFVIIa分子を提供する。
【解決手段】変種が10位および32位でアミノ酸置換を含み、変種がGlaドメイン外に存在する導入されたインビボN-グリコシル化部位に共有結合した糖部分をさらに含む、第VII因子(FVII)因子または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチドの新規ポリペプチド変種。そのようなポリペプチド変種は、治療において、特に外傷のような多様な凝固関連障害を治療するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、変種が10位および32位でアミノ酸置換を含み、変種が、導入されたインビボN-グリコシル化部位に共有結合した糖部分をさらに含む、第VII因子(FVII)または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチドの新規ポリペプチド変種に関する。
【0002】
本発明はまた、治療において、特に多様な凝固関連障害を治療するためにそのようなポリペプチド変種を用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血液凝固は、最終的にフィブリン凝血が起こる様々な血液成分(または因子)の複雑な相互作用からなるプロセスである。一般的に、「凝固カスケード」と呼ばれる事象に関与する血液成分は、プロ酵素またはチモーゲン、すなわち、活性化因子の作用によって活性型に変換される酵素的に不活性なタンパク質である。これらの凝固因子の一つは第VII因子である。
【0004】
第VII因子は、肝臓において合成され、血液中に分子量53 kDaの一本鎖糖タンパク質として分泌されるビタミンK依存的血漿タンパク質である(BrozeおよびMajerus、J. Biol. Chem. 1980;255:1242〜1247)。FVIIチモーゲンは、単一の部位R152-I153でのタンパク質溶解切断によって活性型(FVIIa)に変換され、それによって単一のジスルフィド結合によって結合された二つの鎖が得られる。組織因子と複合体を形成したFVIIa(FVIIa複合体)は、第IX因子と第X因子の双方をその活性型に変換することができ、その後迅速なトロンビン形成およびフィブリン形成に至る反応が起こる(OsterudおよびRapaport、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1977;74:5260〜5264)。
【0005】
FVIIは、ビタミンK依存的カルボキシル化を含む翻訳後改変を受け、それによって分子のN末端領域においてγ-カルボキシグルタミン酸残基10個が得られる。このように、配列番号:2に示される残基番号6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位は、FVII活性にとって重要なGlaドメインにおけるγカルボキシグルタミン酸残基である。他の翻訳後改変には、145位および322位での天然に存在する二つのN-グリコシル化部位での、ならびに52位および60位での天然に存在する二つのO-グリコシル化部位でのそれぞれ糖部分の結合が含まれる。
【0006】
ヒト第VII因子(hFVII)をコードする遺伝子は、第13染色体のq34-qter9にマッピングされている(de Grouchyら、Hum Genet. 1984;66:230〜233)。これはエキソン9個を含み、12.8 Kbに及ぶ(O'Haraら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1987;84:5158〜5162)。FVIIの遺伝子構築およびタンパク質構造は、他のビタミンK依存的前凝固タンパク質と類似であり、エキソン1aおよび1bはシグナル配列をコードし;エキソン2はポリペプチドおよびGlaドメイン;エキソン3は短い疎水性領域;エキソン4および5は上皮細胞増殖因子様ドメイン;およびエキソン6〜8はセリンプロテアーゼ触媒ドメインをコードする(Yoshitakeら、Biochemistry 1985;24:3736〜3750)。
【0007】
hFVIIa(Pikeら、P.N.A.S. U.S.A.、1999;96:8925〜30、およびKemball-Cookら、J. Struct. Biol. 1999;127:213〜223)、X線結晶学的方法を用いて可溶性組織因子と複合体を形成したhFVIIa(Bannerら、Nature 1996;380:41、およびZhangら、J. Mol. Biol. 1999;285:2089)、およびhFVIIのより小さい断片(Muranyiら、Biochemistry 1998;37:10605およびKaoら、Biochemistry 1999;38:7097)の実験的三次元構造に関する報告がある。
【0008】
FVIIのいくつかのタンパク質工学による変種が報告されている。例えば、DickinsonおよびRuf、J. Biol. Chem. 1997;272:19875〜19879;Kemball-Cookら、J. Biol. Chem. 1998;273:8516〜8521、Bharadwajら、J. Biol. Chem. 1996;271:30685〜30691、Rufら、Biochemistry、1999;38:1957〜1966;国際公開公報第99/20767号;国際公開公報第00/11416号;国際公開公報第02/22776号;国際公開公報第02/38162号;国際公開公報第01/83725号;国際公開公報第01/58935号:米国特許第5,580,560号を参照されたい。
【0009】
BHKまたは他の哺乳類細胞におけるFVIIの発現(国際公開公報第92/15686号、国際公開公報第91/11514号、および国際公開公報第88/10295号)ならびに真核細胞におけるFVIIおよびkex2エンドプロテアーゼの同時発現(国際公開公報第00/28065号)に関する報告が存在する。
【0010】
ヒト組み換え型FVIIaの市販の調製物は、ノボセブン(NovoSeven)(登録商標)として販売されている。ノボセブン(登録商標)は、血友病AまたはB患者における出血事例の治療に適応されている。ノボセブン(登録商標)は、市販されている出血事例の有効かつ信頼できる治療のための唯一のrhFVIIaである。
【0011】
152位のアルギニンおよび/または153位のイソロイシンが改変されているFVIIの不活性型が、国際公開公報第91/1154号において報告されている。これらのアミノ酸は活性化部位に存在する。国際公開公報第96/12800号は、セリンプロテアーゼ阻害剤によるFVIIaの不活化を記述している。α-アミノ基I153位でのFVIIaのカルバミル化による不活化は、Petersenら、Eur. J. Biochem. 1999;261:124〜129によって記述されている。不活性型は、組織因子との結合および凝固活性の阻害に関して野生型FVIIaまたはFVIIaと競合することができる。FVIIaの不活性型は、心筋梗塞または血栓症発作のリスクがある敗血症患者のような高凝固状態にある患者を治療するために用いることが示唆されている。
【0012】
rhFVIIAの循環中の半減期は2.3時間である、とFDA参照番号96-0597の「ノボセブン(登録商標)の認可について要約した論拠(Summary Basis for Approval for Novaseven(登録商標))」に報告されている。所望の治療的または予防効果に達するおよび維持するためには、比較的高用量の頻回投与が必要である。その結果、適当な用量の調節を得ることが難しく、頻繁に静脈内投与する必要があるために、患者の生活様式は制限される。
【0013】
外傷のような制御されない出血の治療に関連して、第VIIa因子は、組織因子に結合することなく第X因子を第Xa因子へと活性化することができると考えられており、この活性化反応は、主に活性化された血小板上で起こると考えられている(Hednerら、Blood Coagulation & Fibrinolysis、2000;11:107〜111)。しかし、hFVIIaまたはrhFVIIaは、組織因子の非存在下では、第X因子に対して低い活性を有し、その結果、例えば外傷患者における制御されない出血の治療には、比較的高用量で多数回のhFVIIaまたはrhFVIIaの投与を必要とする。したがって、制御されない出血をより効率よく治療するために(失血を最小限にするために)、組織因子の非存在下で第X因子に対して高い活性を有する改善されたFVIIa分子が必要である。そのような改善されたFVIIa分子は、制御されない出血に関連して投与した場合に、rhFVIIaと比較してより短い凝固時間(またはより迅速な作用)を示すと思われる。
【0014】
循環中の半減期がより長い分子は、必要な投与回数が減少すると思われる。現行のrhFVIIa産物と頻回注射との関連、および同時に増強された治療効果を有するより最適な治療的FVIIaレベルを得る可能性を考慮すると、改善されたFVII様分子またはFVIIa様分子が明らかに必要である。
【0015】
タンパク質の循環中の半減期を増加させる一つの方法は、タンパク質の腎クレアランスを確実に低下させることである。これは、タンパク質に腎クレアランスの減少を付与することができる化学的部分を、タンパク質に結合させることによって得てもよい。
【0016】
さらに、タンパク質に対する化学的部分の結合またはタンパク質分解に曝されるアミノ酸の置換は、タンパク質のタンパク質分解に至るタンパク質分解酵素の接触を有効に遮断する可能性がある。ポリエチレングリコール(PEG)は、治療的タンパク質製剤の調製において用いられているそのような化学的部分の一つである。国際公開公報第98/32466号は、FVIIが他の多くのタンパク質の中でも、PEG化される可能性があることを示唆しているが、ここではこの点に関してこれ以上の詳しい情報は含まれていない。国際公開公報第01/58935号は、とりわけ半減期が増加したFVII因子またはFVIIa因子を開発するための新しい戦略を開示している。
【0017】
上記のように、現行のrhFVIIa治療におけるもう一つの問題は、タンパク質分解に関連した分子の相対的不安定性である。タンパク質分解は、凍結乾燥製剤とは反対に溶液中で調製物を得る場合の主要な障害である。安定な可溶性調製物を得ることの長所は、患者がより容易に取り扱いできることと、緊急の場合には、生命を救うようになる可能性があるより迅速な作用にある。部位特異的変異誘発によって主要なタンパク質分解部位でのタンパク質分解を防止する試みは、国際公開公報第88/10295号に開示されている。
【0018】
本発明の一つの目的は、より長い循環中半減期を有し(それによって必要な投与回数が減少する)、hFVIIaまたはrhFVIIaより効率的に第X因子を第Xa因子に活性化することができる(組織因子に結合することなく)(それによって外傷のような制御されない出血をより効率的に治療することができる)改善されたFVII分子またはFVIIa分子(FVII変種またはFVIa変種)を提供することである。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、生物学的利用率が増加して(静脈内投与した場合のrhFVIIaと比較して増加した曲線下面積のような)、hFVIIaまたはrhFVIIaより効率的に第X因子を第Xa因子に活性化することができる(組織因子に結合することなく)(それによって外傷のような制御されない出血をより効率的に治療することができる)改善されたFVII分子またはFVIIa分子(FVII変種またはFVIa変種)を提供することである。
【0020】
これらの目的は、本明細書に提供されるFVII変種またはFVIIa変種によって満たされる。
【発明の概要】
【0021】
発明の簡単な開示
その最も広い局面において、本発明は、変種のアミノ酸配列が、10位および32位でアミノ酸置換を含み、糖部分は、Glaドメイン外に存在する導入されたインビボN-グリコシル化部位に共有結合する、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するhFVIIまたはhFVIIaと比較してアミノ酸3〜15個の改変を含むアミノ酸配列を有するFVIIポリペプチド変種またはFVIIaポリペプチド変種に関する。
【0022】
本発明のもう一つの局面は、本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列に関する。
【0023】
さらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0024】
なおさらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0025】
さらにさらなる局面において、本発明は、本発明のポリペプチド変種と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0026】
本発明のさらにもう一つの局面は、医薬品として用いられる、本発明のポリペプチド変種または本発明の薬学的組成物に関する。
【0027】
本発明のさらなる局面は、添付の請求の範囲と共に以下の説明から明らかになると思われる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な開示
定義
本出願および本発明の状況において、以下の定義を適用する。
【0029】
「結合型(または互換的に「結合型ポリペプチド」)」とは、一つまたは複数のポリペプチドを、ポリマー分子、親油性化合物、糖部分または有機誘導体化物質のような一つまたは複数の非ポリペプチド部分に共有結合させることによって形成された不均一な(組成の意味においてまたはキメラ)分子を示すと解釈される。好ましくは、結合型は、適切な濃度および条件で可溶性である、すなわち血液のような生理的液体において可溶性である。本発明の結合型ポリペプチドの例には、グリコシル化および/またはPEG化ポリペプチドが含まれる。
【0030】
「共有結合」または「共有結合した」という用語は、ポリペプチド変種および非ポリペプチド部分が、互いに直接共有結合しているか、または架橋、スペーサー、もしくは連結部分または複数の部分のような、介在する部分もしくは複数の部分を通して、間接的に共有結合していることを意味する。
【0031】
「非ポリペプチド部分」という用語は、アミノ酸単量体からなり、ペプチド結合によって互いに連結したペプチドポリマーとは異なり、本発明のポリペプチド変種の結合基と結合することができる分子を意味すると解釈される。そのような分子の好ましい例には、ポリマー分子、糖部分、親油性化合物または有機誘導体化物質が含まれる。本発明の結合型変種の意味において用いられる場合、非ポリペプチド部分は、ポリペプチドの結合基を通して結合型変種のポリペプチド部分に結合すると理解されると思われる。先に説明したように、非ポリペプチド部分は、結合基に直接共有結合させることができ、または架橋スペーサーもしくはリンカー部分もしくは複数のリンカー部分のような介在部分もしくは複数の介在部分を通して結合基に間接的に共有結合させることができる。
【0032】
「ポリマー分子」は、ポリマーがヒトアルブミンまたは別の多量に存在する血漿タンパク質である場合を除き、単量体がいずれもアミノ酸残基ではない二つまたはそれ以上の単量体の共有結合によって形成された分子である。「ポリマー」は、「ポリマー分子」という用語と互換的に用いてもよい。この用語はまた、インビトログリコシル化によって結合された糖質分子、すなわち、選択的にクロスリンク剤を用いて糖質分子をポリペプチド変種の結合基に共有結合させることを含む、通常インビトロで行われる合成グリコシル化を含むと解釈される。インビトログリコシル化は、後に詳細に考察する。
【0033】
「糖部分」は、インビボグリコシル化によって(グリコシル化ポリペプチド変種の形でポリペプチド変種結合型を産生するために)ポリペプチド変種に結合することができる、一つまたは複数の単糖類残基を含む糖質含有分子を示すと解釈される。「インビボグリコシル化」という用語は、すなわちポリペプチド変種の発現のために用いられるグリコシル化細胞における翻訳後プロセシングの際に、例えばN-結合およびO-結合グリコシル化によって、インビボで起こる糖部分の任意の結合を意味すると解釈される。正確なオリゴ糖構造は、当該グリコシル化生物に依存するところが大きい。
【0034】
「N-グリコシル化部位」は、配列N-X-S/T/Cを有し、式中Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステインのいずれか、好ましくはセリンまたはトレオニンであり、最も好ましくはトレオニンである。好ましくは、アスパラギン残基に対して+3位のアミノ酸残基は、プロリン残基ではない。
【0035】
「O-グリコシル化部位」は、セリンまたはトレオニン残基のOH-基である。
【0036】
「結合基」という用語は、ポリペプチド変種の官能基、特にポリマー分子、親油性分子、糖部分または有機誘導体化物質のような非ポリペプチド部分を結合させることができるそのアミノ酸残基または糖質部分の官能基を示すと解釈される。有用な結合基およびそのマッチする非ポリペプチド残基は、下記の表から明らかであると思われる。
【0037】



【0038】
インビボN-グリコシル化の場合、「結合基」という用語は、N-グリコシル化部位を構成するアミノ酸残基を示すために通常でない意味で用いられる(配列N-X-S/T/C、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステイン、好ましくはセリンまたはトレオニン、および最も好ましくはトレオニン)。N-グリコシル化部位のアスパラギン残基は、それに対して糖部分がグリコシル化の際に結合する部位であるが、そのような結合は、N-グリコシル化部位の他のアミノ酸残基が存在しなければ、起こり得ない。
【0039】
したがって、非ポリペプチド部分が糖部分であって、結合がインビボN-グリコシル化によって得られる場合、ポリペプチドのアミノ酸配列の改変に関連して用いられる場合の「非ポリペプチド部分の結合基を含むアミノ酸残基」という用語は、機能的インビボN-グリコシル化部位がアミノ酸配列に導入されるように、インビボN-グリコシル化部位を構成する一つまたは複数のアミノ酸残基を変化させるという意味であると理解すべきである。
【0040】
本出願において、アミノ酸名および原子名(例えば、CA、CB、CD、CG、SG、NZ、N、O、C等)は、IUPAC命名法(「IUPAC Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides(residue names, atoms etc.)」、Eur. J. Biochem. 138:9〜37(1984)と共に、Eur. J. Biochem. 152:1(1985)の修正版)に基づいてタンパク質データバンク(PDB)(www.pdb.org)によって定義される通りに用いられる。
【0041】
「アミノ酸残基」という用語は、アラニン(AlaまたはA)、システイン(CysまたはC)、アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはE)、フェニルアラニン(PheまたはF)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、リジン(LysまたはK)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、アスパラギン(AsnまたはN)、プロリン(ProまたはP)、グルタミン(GlnまたはQ)、アルギニン(ArgまたはR)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、バリン(ValまたはV)、トリプトファン(TrpまたはW)、およびチロシン(TyrまたはY)残基からなる群に含まれるアミノ酸残基を示すと解釈される。
【0042】
アミノ酸の位置を同定するために用いられる用語を下記のように示す。I205は、残基205位が配列番号:2に示されるアミノ酸配列においてイソロイシン残基によって占められることを示している。I205Tは、205位のイソロイシン残基がトレオニン残基によって置換されていることを示す。二者択一の置換は「/」で示され、例えばI205S/Tは、205位のイソロイシンがセリンまたはトレオニンのいずれかに置換されているアミノ酸配列を意味する。多数の置換は、「+」で示され、例えばK143N+N145Tは、143位におけるリジン残基がアスパラギン残基に置換され、145位のアスパラギン残基がトレオニン残基に置換されていること意味する。さらなるアミノ酸残基の挿入は以下のように示される。A3の後(すなわち4位)のチロシン残基の挿入は、A3AY(4位におけるチロシン残基の挿入に至る)によって示される。アミノ酸残基の欠失は、星印で示される。例えば、172位のバリン残基の欠失はV172*によって示される。同時挿入および置換は、以下のように示される。175位でのアラニン残基のトレオニン残基への置換の後に175位の後のロイシン残基の挿入はA175TLで示される。
【0043】
特に明記していなければ、本明細書において行われるアミノ酸残基の番号付けは、hFVII/hFVIIaポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号:2)に対してなされる。
【0044】
特定の変異に関連して用いられるように、「異なる」という用語は、明記されたアミノ酸の差に加えてさらなる差が存在すると解釈される。例えば、インビボN-グリコシル化部位の導入の他に(Glaドメイン外に存在する)、ポリペプチドは、そのようなアミノ酸残基の導入に関連しない他の改変を含んでもよい。同様にして、燐脂質膜結合親和性を増加させることをねらいとしてGlaドメインにおいて行われる改変の他に、ポリペプチドは、この影響に必ずしも関連しない他の改変を含んでもよい。
【0045】
このように、本明細書に開示のアミノ酸改変の他に、本発明のポリペプチド変種のアミノ酸配列は、望ましければ他の改変、すなわち他の置換、挿入、または欠失を含んでもよいと理解されると思われる。これらには、例えば一つまたは複数のアミノ酸残基(例えば、アミノ酸残基1〜10個)によるN末端および/またはC末端の切断、またはN末端および/またはC末端での一つまたは複数のさらなる残基の付加、例えばN末端でのメチオニン残基の付加、またはC末端近傍もしくはC末端でのシステイン残基の導入が含まれてもよいと共に、「保存的アミノ酸置換」、すなわち類似の特徴を有するアミノ酸のグループ、例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸および芳香族アミノ酸のグループ内で行われる置換が含まれてもよい。
【0046】
そのような保存的置換の例を下記の表に示す。

【0047】
さらなる改変のさらに他の例は、下記の「Glaドメイン外の他の改変」と題する章で開示される。
【0048】
「ヌクレオチド配列」という用語は、二つまたはそれ以上のヌクレオチド分子の連続した枝を指すと解釈される。ヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源、または任意の組み合わせの配列であってもよい。
【0049】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」という用語は一般的に、例えば米国特許第4,683,195号に記述されるように、インビトロでの望ましいヌクレオチド配列の増幅法を指す。一般的に、PCR法は、鋳型核酸に選択的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いるプライマー伸長合成の反復サイクルを含む。
【0050】
「ベクター」という用語は、宿主細胞内で複製することができ、または宿主細胞ゲノムに組み入れられることができ、それ自体、適合性の宿主細胞(ベクター-宿主系)と共に異なる機能を行うため、ヌクレオチド配列のクローニングを促進するため、すなわち使用可能な量の配列を産生するため、配列によってコードされる遺伝子産物の発現を指示するため、および宿主細胞のゲノムにヌクレオチド配列を組み入れるために、有用であるプラスミドまたは他のヌクレオチド配列を指す。ベクターは、それが行う機能に応じて異なる成分を含むと思われる。
【0051】
「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」は、本明細書において互換的に用いられ、そのような用語には全て細胞の増殖または培養に起因する子孫が含まれると理解すべきである。
【0052】
「形質転換」および「トランスフェクション」は、DNAを細胞に導入するプロセスを指すために互換的に用いられる。
【0053】
「機能的に結合した」とは、酵素的ライゲーションによる、または配列の正常な機能が行うことができるように互いに対して配置されている、二つまたはそれ以上のヌクレオチド配列の共有結合を指す。例えば、配列前または分泌リーダーをコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に結合している。プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に機能的に結合する。リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するために存在する場合、コード配列に機能的に結合している。一般的に、「機能的に結合した」とは、結合されるヌクレオチド配列が隣接しているが、分泌リーダーの場合には、隣接して読み取り枠に存在することを意味する。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、標準的な組み換えDNA法と共に用いる。
【0054】
本発明の状況において、「改変」または「アミノ酸改変」という用語は、アミノ酸側鎖の置換、アミノ酸残基の置換、アミノ酸残基の欠失、および/またはアミノ酸残基の挿入を含むと意図される。
【0055】
「変異」および「置換」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0056】
「導入する」という用語は、既存のアミノ酸残基の置換による、またはさらなるアミノ酸残基の挿入によるアミノ酸残基の導入を指す。
【0057】
「除去する」という用語は、除去されるアミノ酸残基をもう一つのアミノ酸残基に置換することによって、または除去されるアミノ酸残基を欠失(置換せずに)することによるアミノ酸残基の除去を指す。
【0058】
「FVII」または「FVIIポリペプチド」という用語は、一本鎖形状で提供されるFVII分子を指す。FVIIポリペプチドの一つの例は、配列番号:2に示される野生型ヒトFVII(hFVII)である。しかし、「FVIIポリペプチド」という用語はまた、配列番号:2の断片または変種、特に配列が、配列番号:2と比較してアミノ酸改変1〜15個、例えば1〜10個のような少なくとも一つのアミノ酸改変を含む変種のようなhFVII様分子にも及ぶ。
【0059】
「FVIIa」または「FVIIaポリペプチド」という用語は、活性化された二本鎖型で提供されるFVIIa分子を指す。FVIIaのアミノ酸配列を記述するために配列番号:2のアミノ酸配列を用いる場合、一本鎖型のR152とI153のあいだのペプチド結合が切断されていること、鎖の一つがアミノ酸残基1〜152位を含み、他の鎖がアミノ酸残基153〜406位を含むと理解されると思われる。
【0060】
「rFVII」および「rFVIIa」という用語は、組み換え技術によって産生されたFVIIおよびFVIIaポリペプチドを指す。
【0061】
「hFVII」および「hFVIIa」という用語はそれぞれ、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型FVIIおよびFVIIaを指す。
【0062】
「rhFVII」および「rhFVIIa」という用語は、組み換え手段によって産生された配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型FVIIおよびFVIIaを指す。rhFVIIaの例は、ノボセブン(登録商標)である。
【0063】
本明細書において用いられる場合、「Glaドメイン」という用語は、配列番号:2のアミノ酸残基1〜45位に及ぶと解釈される。
【0064】
したがって、「Glaドメイン外に存在する」という用語は、配列番号:2のアミノ酸残基46〜406位を含む。
【0065】
省略語「TF」および「TFPI」はそれぞれ、組織因子および組織因子経路阻害剤を意味する。
【0066】
「プロテアーゼドメイン」という用語は、N末端から数えて153〜406位に関して用いられる。
【0067】
「触媒部位」という用語は、ポリペプチド変種のS344、D242、およびH194からなる触媒三残基を意味するために用いられる。
【0068】
「親」という用語は、本発明に従って改変/改善される分子を指すと解釈される。本発明によって改変される親ポリペプチドは、如何なるFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドであってもよく、このように如何なる起源、例えばヒト以外の哺乳類起源に由来してもよいが、親ポリペプチドはhFVIIまたはhFVIIaであることが好ましい。
【0069】
「変種」は、その親ポリペプチドとは、一つまたは複数のアミノ酸残基が異なる、通常、アミノ酸残基3〜10個、例えばアミノ酸残基3〜8個または3〜5個のような、アミノ酸残基3〜15個(例えば、アミノ酸残基3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個)が異なるポリペプチドである。言い換えれば、「変種」は、典型的に親ポリペプチドと比較してアミノ酸残基3〜10個、例えばアミノ酸残基3〜8個または3〜5個のようなアミノ酸残基3〜15個(例えば、アミノ酸3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個)の改変を含む。本発明の状況において、「改変」という用語は、挿入、欠失、置換、およびその組み合わせを含む。本発明に従うポリペプチド変種は、少なくとも一つの改変がインビボN-グリコシル化部位を作製する、少なくとも三つの位置、すなわち少なくとも10位および32位(Glaドメインに存在する)、およびGlaドメイン外に存在する少なくとも一つの位置において改変されると理解されると思われる。
【0070】
「凝固活性」という用語は、本明細書に記述の「凝固アッセイ法」において測定された活性を意味するために用いられる。「凝固活性」を示すために、本発明の変種の活性型は、本明細書に記述の「凝固アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaの凝固活性の少なくとも10%を有しなければならない。本発明の好ましい態様において、変種の活性型は、本明細書に記述の「凝固アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaの凝固活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%のような少なくとも20%、より好ましくは少なくとも60%、例えば少なくとも70%のような少なくとも50%、さらにより好ましくはrhFVIIaの凝固活性の少なくとも90%のような少なくとも80%を有する。興味深い態様において、変種の活性型は、rhFVIIaの凝固活性の75〜125%の凝固活性のような、rhFVIIaと実質的に同じ凝固活性を有する。
【0071】
「アミド溶解活性」という用語は、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ法」において測定される活性を意味するために用いられる。「アミド溶解活性」を示すために、本発明の変種の活性型は、「アミド溶解アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも10%を有しなければならない。本発明の好ましい態様において、変種の活性型は、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaのアミド溶解活性活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%のような少なくとも20%、より好ましくは少なくとも60%、例えば少なくとも70%のような少なくとも50%、さらにより好ましくはrhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも90%のような少なくとも80%を有する。興味深い態様において、変種の活性型は、rhFVIIaのアミド溶解活性の75〜125%のアミド溶解活性のような、rhFVIIaと実質的に同じアミド溶解活性を有する。
【0072】
本発明の状況において、「活性」という用語はまた、変種のFXのFXaへの活性化能に関連して用いられる。この活性はまた、「FX活性化活性」または「FXa産生活性」とも呼ばれる。
【0073】
「FX活性化活性の増加」または「FXa産生活性の増加」という用語は、本発明の変種の活性型が、rhFVIIaと比較して統計学的に有意に増加したFXのFXaへの活性化能を有することを示すために用いられる。本発明の変種(その活性型)がどの程度増加したFX活性化活性を有するかは、本明細書に記述の「TF非依存的第X因子活性化アッセイ法」において都合よく決定してもよい。
【0074】
「より強い凝固」または「増加した凝固強度」という用語は、ポリペプチド変種によって生成された凝血の強度が、比較可能な条件で決定した場合にrhFVIIaによって生成されたものと比較して統計学的に有意に増加していることを示すために用いられる。この作用は、本明細書に開示の「トロンボグラムアッセイ法」においてアッセイした場合に、本発明の変種の活性型によって生成された曲線下面積(AUCthrom)として決定してもよい。同様に、「増加したAUCthrom」という用語は、変種(その活性型)によって生成された曲線下面積が、同等の条件で決定して、本明細書に記述の「トロンボグラムアッセイ法」において測定した場合にrhFVIIaによって生成された面積と比較して統計学的に有意に増加していることを示すために用いられる。
【0075】
「Tmax」という用語は、「トロンボグラムアッセイ法」における最大のトロンビン活性レベルを得るために必要な時間に関して用いられる。
【0076】
所定の物質に関連して用いられる「免疫原性」という用語は、物質の免疫系からの反応の誘導能を示すことを意図する。免疫応答は、細胞性または抗体媒介反応であってもよい(例えば、免疫原性の詳しい定義に関しては、Roitt:Essential Immunology(第8版、Blackwell)を参照されたい)。通常、抗体の反応性の減少は、免疫原性の減少の指標となると思われる。免疫原性の減少は、例えばインビボまたはインビトロでの当技術分野で既知の任意の適した方法を用いることによって決定してもよい。
【0077】
「機能的インビボ半減期」という用語は、その通常の意味において用いられ、すなわちポリペプチドの生物活性の50%が生体/標的臓器になお存在している時間、またはポリペプチドの活性が最初の値の50%である時間である。
【0078】
機能的なインビボ半減期を決定するための代用として、「血清半減期」、すなわち排泄される前にポリペプチドの50%が血漿または血流において循環している時間を決定してもよい。血清半減期の決定はしばしば機能的インビボ半減期を決定するより単純であり、血清半減期の程度は通常、機能的インビボ半減期の程度の良好な指標である。または、血清半減期に対する用語には、「血漿半減期」、「循環中半減期」、「血清クレアランス」、「血漿クレアランス」、および「クレアランス半減期」が含まれる。ポリペプチドは、細網内皮系(RES)、腎臓、脾臓、または肝臓の一つまたは複数の作用によって、組織因子、SEC受容体、もしくは他の受容体媒介排泄によって、または特異的もしくは非特異的タンパク質分解によって排泄される。通常、クレアランスは、大きさ(糸球体濾過速度のカットオフに関して)、電荷、結合した炭化水素鎖、およびタンパク質の細胞受容体の存在に依存する。保持される機能性は通常、前凝固、タンパク質溶解、または受容体結合活性から選択される。機能的インビボ半減期および血清半減期は、当技術分野で既知の任意の適した方法によって決定してもよい。
【0079】
機能的インビボ半減期または血清半減期に関して用いられる場合の「増加した」という用語は、ポリペプチド変種の関連する半減期が、同等の条件で決定した場合にrhFVIIaの半減期と比較して統計学的に有意に増加していることを示すために用いられる(典型的に、ラット、ウサギ、ブタ、またはサルのような実験動物において決定される)。
【0080】
「AUCiv」または「静脈内投与した場合の曲線下面積」は、その通常の意味において、すなわちポリペプチド変種が静脈内投与されている場合、特にラットに静脈内投与されている場合の、血清-時間曲線における活性下面積として用いられる。典型的に、測定された活性は、本明細書において先に定義された「凝固活性」である。実験的活性-時間点が決定された後、AUCivは、GraphPad Prism 3.01のようなコンピュータープログラムによって計算することが都合がよい可能性がある。
【0081】
異なる分子のAUCiv値間の直接比較を行うために(例えば、本発明の変種とrhFVIIaのような参照分子とのあいだで)、同じ量の活性を投与すべきであると理解されると思われる。その結果、AUCiv-値は、典型的に標準化されて(すなわち、注射量の差に関して補正される)、投与されたAUCiv/用量として表記される。
【0082】
「タンパク質分解に対する感受性の低下」という用語は主に、比較できる条件で決定した場合に、ポリペプチド変種が、hFVIIaまたはrhFVIIaと比較してタンパク質分解に対する感受性が低下していることを意味すると解釈される。好ましくは、タンパク質分解は、少なくとも25%(例えば、25〜50%、25〜75%、または25〜100%)のような少なくとも10%(例えば、10〜25%または10〜50%)、より好ましくは少なくとも50%(例えば、50〜75%、または50〜100%)のような少なくとも35%、さらにより好ましくは、少なくとも75%(例えば、75〜100%)のような少なくとも60%、または少なくとも90%減少する。最も好ましくはタンパク質分解は少なくとも100%減少する。
【0083】
「腎クレアランス」という用語は、腎臓によって、例えば糸球体濾過、尿細管排泄または尿細管細胞における分解によって起こる任意のクレアランスを示すためにその通常の意味において用いられる。腎クレアランスは、大きさ(直径)、流体力学容積、対称性、形状/硬度、および電荷を含むポリペプチドの物理的特徴に依存する。通常、分子量約67 kDaは、腎クレアランスに関するカットオフ値であると見なされる。腎クレアランスは、任意の適したアッセイ法、例えば確立されたインビボアッセイ法によって確立してもよい。典型的に、腎クレアランスは、標識された(例えば、放射標識または蛍光標識)ポリペプチドを患者に投与すること、および患者から採取した尿中の標識活性を測定することによって決定される。腎クレアランスの低下は、比較できる条件で対応する参照ポリペプチド、例えばrhFVIIaと比較して決定される。好ましくは、ポリペプチド変種の腎クレアランス速度は、rhFVIIaと比較して少なくとも50%、好ましくは75%、および最も好ましくは少なくとも90%減少する。
【0084】
「その側鎖の少なくとも25%が分子の表面に露出する」および「その側鎖の少なくとも50%が分子の表面に露出する」という用語は、計算等を詳細に説明する実施例1を参照して定義される。
【0085】
「その側鎖の少なくとも25%が分子の表面に露出する」および「その側鎖の少なくとも50%が分子の表面に露出する」という用語を、インビボN-グリコシル化部位の導入に関連して用いる場合、これらの用語は、糖部分が実際に結合している位置におけるアミノ酸側鎖の表面到達性を指すことに注意しなければならない。多くの場合において、それに対して糖部分が実際に結合するアルギニン残基と比較して+2位にセリンまたはトレオニン残基を導入する必要があり(当然であるが、この位置がセリンまたはトレオニン残基によって既に占有されていない場合)、セリンまたはトレオニン残基が導入されるこれらの位置は、隠される、すなわちその側鎖の25%または50%未満が分子の表面に露出する。
【0086】
「組織因子結合部位」、「活性部位領域」、および「活性部位結合裂の隆線」という用語は、上記の部位/領域が決定される、本明細書に記述の実施例1を参照して定義される。
【0087】
「疎水性アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)が含まれる。
【0088】
「陰性荷電アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)が含まれる。
【0089】
「陽性荷電アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:リジン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)が含まれる。
【0090】
発明の変種
その最も広い局面において、本発明は、変種のアミノ酸配列が、10位および32位でアミノ酸置換を含み、糖部分がGlaドメイン外に存在する導入されたインビボN-グリコシル化部位に共有結合している、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するhFVIIまたはhFVIIaと比較してアミノ酸改変3〜15個を含むアミノ酸配列を有するFVIIポリペプチド変種またはFVIIaポリペプチド変種に関する。
【0091】
親FVIIポリペプチドの上記の二つの領域において行われる改変は以下の目的を有する。
【0092】
Glaドメイン外に存在する位置で行われる改変(1つ(または複数)のインビボN-グリコシル化部位の導入)は、好ましくは得られた変種のAUCiv、機能的インビボ半減期および/または血清半減期がrhFVIIaと比較して増加しているような特性を有する。
【0093】
親ポリペプチドのGlaドメインにおいて行われる改変は好ましくは、得られた分子の燐脂質膜結合親和性の増加が得られるような性質、および/または得られた分子が、FXのFXaへの活性化能の改善を有するような性質、および/またはより強い凝血が形成されるような性質である。
【0094】
如何なる特定の理論にも制限されることなく、現在のところ、増強された膜の親和性によって、他の凝固因子、特にFXに対して非常に近位に存在する活性化ポリペプチド変種の局所濃度がより高くなると考えられている。このように、FXのFXaへの活性化速度は、単純に活性化FVII変種対FXのモル比がより高いためにより高くなると思われる。次にFXの増加した活性化速度によって、より大量の活性化トロンビンが得られ、このようにフィブリンのクロスリンク速度はより高くなる。
【0095】
このように、本発明の好ましい態様において、親FVIIポリペプチド変種またはFVIIaポリペプチド変種は、得られた活性化ポリペプチド変種が(rhFVIIaと比較して)以下を有するように改変されている:
i)生物学的利用率(AUCiv)の増加と燐脂質膜結合親和性の増加;
ii)生物学的利用率(AUCiv)の増加とFXのFXaへの活性化能の増加;
iii)生物学的利用率(AUCiv)の増加とより強い凝血の生成能(AUCthromの増加);
iv)生物学的利用率(AUCiv)の増加とTmaxの減少;
v)機能的インビボ半減期の増加と燐脂質膜結合親和性の増加;
vi)機能的インビボ半減期の増加とFXのFXaへの活性化能の増加;
vii)機能的インビボ半減期の増加とより強い凝血の生成能(AUCthromの増加);
viii)機能的インビボ半減期の増加とTmaxの減少;
ix)血清半減期の増加と燐脂質膜結合親和性の増加;
x)血清半減期の増加とFXのFXaへの活性化能の増加;
xi)血清半減期の増加とより強い凝血の生成能(AUCthromの増加)および/または
xii)血清半減期の増加とTmaxの減少。
【0096】
その結果、本発明に従うポリペプチド変種による医学的処置は、現在市販されているrhFVIIa化合物(ノボセブン(登録商標))に対して、より低用量の投与、より長い注射間隔、凝血強度の増加および/またはより迅速な作用のような多くの長所を提供する。
【0097】
このように、本発明の好ましい変種は、その活性型において、そしてrhFVIIaと比較して、静脈内投与した場合(AUCiv)、特にラットに静脈内投与した場合に曲線下面積の増加を生じる変種である。より詳しくは、本発明の好ましい変種は、特にラットに(静脈内)投与した場合に、その活性型の変種のAUCivとrhFVIIaのAUCivとの比が、少なくとも1.5、例えば少なくとも1.75のような少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも3のような少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも5のような少なくとも4である。
【0098】
この作用は次に、rhFVIIaと比較して増加した機能的インビボ半減期および/または増加した血清半減期に対応する可能性がある(が必ずしもそうとは限らない)。したがって、本発明のもう一つの好ましい態様において、その活性型の変種に関する機能的インビボ半減期または血清半減期と、rhFVIIaの機能的インビボ半減期または血清半減期との比は、少なくとも1.25である。より好ましくは、その活性型の変種に関する関連する半減期と、hFVIIaまたはrhFVIIaに関する関連する半減期との比は、少なくとも1.75、例えば少なくとも2のような少なくとも1.5、さらにより好ましくは少なくとも4、例えば少なくとも5のような少なくとも3である。
【0099】
理解されるように、本発明の変種はまた、上記の機能性(すなわち、AUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血清半減期の増加)、rhFVIIと比較して増加した燐脂質膜結合親和性、FXのFXaへの活性化能の増加、より強い凝血の生成能(AUCthromの増加)および/またはTmaxの減少を有する。
【0100】
このように、本発明の一つの好ましい態様において、ポリペプチド変種は(AUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血清半減期の増加の他に)、rhFVIIaと比較して増加した燐脂質膜結合親和性を有する。膜結合親和性は、K. NagataおよびH. Handa(編)「Real-Time Analysis of Biomolecular Interactions」、スプリンガー出版、東京、2000、第6章タイトル「Lipid-Protein Interactions」に記載されるビアコア(Biacore)(登録商標)アッセイ法によるような、当技術分野で既知の方法によって測定してもよい。または、膜結合親和性は、国際公開公報第99/20767号の実施例1に記載されるように測定してもよい。
【0101】
本発明のもう一つの好ましい態様において、ポリペプチド変種(AUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血清半減期の増加の他に)は、特に本明細書に開示される「TF非依存的第X因子活性化アッセイ法」のようなTF非依存的アッセイ法においてアッセイした場合に、rhFVIIaと比較して増加したFX活性化活性を有する。より詳しく述べると、ポリペプチド変種のその活性型のFX活性化活性と、rhFVIIaのFX活性化活性の比は、本明細書に開示の「TF非依存的第X因子活性化アッセイ法」においてアッセイした場合に少なくとも1.25であることが好ましい。より好ましくは、変種の活性型のFX活性化活性とrhFVIIaのFX活性化活性との比は、本明細書に記述する「TF非依存的第X因子活性化アッセイ法」においてアッセイした場合に、少なくとも1.75、例えば少なくとも2のような少なくとも1.5、さらにより好ましくは少なくとも4、例えば少なくとも5のような少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも7、例えば少なくとも8のような少なくとも6、最も好ましくは少なくとも10のような少なくとも9である。
【0102】
本発明のなおもう一つの好ましい態様において、ポリペプチド変種は(AUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血清半減期の増加の他に)、rhFVIIaと比較してより強い凝血を生成することができる。この作用は、本明細書に記述の「トロンボグラムアッセイ法」において曲線下面積(AUCthrom)における増加として決定してもよい。AUCthromはまた、「総トロンビン作用量」を指し、形成された凝血の強度の測定となる。より詳しくは、変種の活性型によって生成されたAUCthromと、rhFVIIaによって生成されたAUCthromとの比は、本明細書に記述の「トロンボグラムアッセイ法」によってアッセイした場合に少なくとも1.15であることが好ましい。より好ましくは、比は少なくとも1.25、例えば少なくとも1.3のような少なくとも1.2、さらにより好ましくは少なくとも1.5、例えば少なくとも1.6のような少なくとも1.4、最も好ましくは少なくとも1.8、例えば少なくとも1.9または少なくとも2のような少なくとも1.7である。
【0103】
本発明のさらにもう一つの好ましい態様において、ポリペプチド変種は(AUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血清半減期の増加の他に)、その活性型においてより迅速な作用を有する。この作用は、本明細書に記述の「トロンボグラムアッセイ法」において最大のトロンビンレベルに達するために必要な時間(Tmax)の短縮として決定してもよい。したがって、好ましい変種は、変種の活性型のTmaxとrhFVIIaのTmaxとの比が、本明細書に記述の「トロンボグラムアッセイ法」においてアッセイした場合に、多くて0.95である変種である。好ましくは比は、多くて0.8、例えば多くて0.7のような多くて0.9、より好ましくは多くて0.5のような多くて0.6である。
【0104】
Glaドメイン外に存在するインビボN-グリコシル化部位の導入
AUCiv、機能的インビボ半減期、および/または血清半減期の増加に至る適した多くの改変が、国際公開公報第01/58935号に開示されている。国際公開公報第01/58935号に開示された変種は、本発明の親FVIIポリペプチドまたは親FVIIaポリペプチドに関して用いられる可能性がある改善されたFVII分子またはFVIIa分子を開発するための一般的な新戦略の結果である。
【0105】
改変される位置は、好ましくは組織因子結合部位の外部、および/または活性部位領域外、および/または活性部位結合裂の隆線外に存在する、FVII分子またはFVIIa分子の一部から選択される。これらの部位/領域は、本明細書に記載の実施例1において同定される。しかし強調しておきたい点は、特定の状況において、例えば不活化ポリペプチド変種が望ましい場合、そのような領域においてまたはその近位に改変を行うことが有利となる可能性がある点である。例えば、一つまたは複数のインビボN-グリコシル化部位を、FVII分子またはFVIIa分子の活性部位領域または活性部位結合裂の隆線に導入することが有利である可能性があると企図される。活性部位領域、組織因子結合部位、および活性部位結合裂の隆線は、本明細書の実施例1において定義し、以下の残基によって構成される。

【0106】
親FVIIポリペプチドまたは親FVIIaポリペプチドのGlaドメイン外で改変される(配列番号:2に示されるアミノ酸配列と比較して)アミノ酸残基の総数は、典型的に10個を超えないと思われる。好ましくは、FVII変種またはFVIIa変種は、配列番号:2に示されるアミノ酸残基46〜406位とはアミノ酸1〜10個が異なり、典型的にアミノ酸残基1〜8個または2〜8個、例えばアミノ酸残基1〜4個または1〜3個のようなアミノ酸残基1〜5個または2〜5個、例えば配列番号:2に示されるアミノ酸残基46〜406位とはアミノ酸残基1個、2個、または3個異なるアミノ酸配列を含む。
【0107】
このように、本発明のポリペプチド変種は、インビボN-グリコシル化部位1〜10個(さらにまたは導入された)、典型的にインビボN-グリコシル化部位1〜8個または2〜8個(さらにまたは導入された)、好ましくはインビボN-グリコシル化部位1〜4個または1〜3個(さらにまたは導入された)、例えばインビボN-グリコシル化部位1個、2個、または3個(さらにまたは導入された)のようなインビボN-グリコシル化部位1〜5個または2〜5個(さらにまたは導入された)を含んでもよい。同様に、本発明のポリペプチド変種は、糖部分1〜10個(さらにまたは導入された)、典型的に糖部分1〜8個または2〜8個(さらにまたは導入された)、好ましくは糖部分1〜4個または1〜3個(さらにまたは導入された)、例えば糖部分1個、2個、または3個(さらにまたは導入された)のような糖部分1〜5個または2〜5個(さらにまたは導入された)を含んでもよい。導入された糖部分/複数の部分は、導入された1つ(または複数)のインビボN-グリコシル化部位に共有結合されると理解されると思われる。
【0108】
本発明の状況において用いられる場合、「天然に存在するグリコシル化部位」という用語は、N145位、N322位、S52位、およびS60位でグリコシル化部位を含む。同様に、「天然に存在するインビボO-グリコシル化部位」という用語には、S52およびS60位が含まれ、「天然に存在するインビボN-グリコシル化部位」という用語には、N145位およびN322位が含まれる。
【0109】
一つまたは複数のインビボN-グリコシル化部位に共有結合した一つまたは複数の糖部分を含むポリペプチド変種を調製するために、ポリペプチド変種は、1つ(または複数)のグリコシル化部位で、またはインビボグリコシル化を受ける部位で糖(オリゴ糖)部分を結合することができる宿主細胞において発現されなければならないと理解されると思われる。グリコシル化宿主細胞の例を、「糖部分とのカップリング」と題する下記の章にさらに示す。
【0110】
インビボN-グリコシル化部位を導入してもよい位置の例には、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出されるアミノ酸残基を含む位置(本明細書において実施例1において定義される)のような、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出されるアミノ酸残基を有するアミノ酸残基(本明細書において実施例1において定義される)を含む位置が含まれるがこれらに限定されない。一般的に、挿入も同様に企図されるが、インビボN-グリコシル化部位は、置換によって導入されることが好ましい。位置は好ましくは、組織因子結合部位および/または活性部位領域の外部、および/または活性部位裂の隆線外部に存在する分子の一部から選択される。これらの部位/領域は、本明細書において実施例1において同定される。「その側鎖の少なくとも25%(または少なくとも50%)が表面に露出する」という用語が、インビボN-グリコシル化部位の導入に関連して用いられる場合、この用語は、糖部分が実際に結合している位置でのアミノ酸側鎖の表面到達性を指すと理解すべきである。多くの場合において、糖部分が実際に結合するアスパラギン残基に対して+2位にセリンまたはトレオニン残基を導入することが必要であり(当然、この位置がセリンまたはトレオニン残基によって既に占有されていない場合)、セリンまたはトレオニン残基が導入されるこれらの位置は隠される、すなわち表面に露出するのはその側鎖の25%未満である。
【0111】
インビボN-グリコシル化部位を作製するそのような置換の特異的かつ好ましい例には、A51N、G58N、T106N、K109N、G124N、K143N+N145T、A175T、I205S、I205T、V253N、T267N、T267N+S269T、S314N+K316S、S314N+K316T、R315N+V317S、R315N+V317T、K316N+G318S、K316N+G318T、G318N、D334Nおよびその組み合わせからなる群より選択される置換が含まれる。より詳しく述べると、インビボN-グリコシル化部位は、A51N、G58N、T106N、K109N、G124N、K143N+N145T、A175T、I205T、V253N、T267N+S269T、S314N+K316T、R315N+V317T、K316N+G318T、G318N、D334Nおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される。さらにより好ましくは、インビボN-グリコシル化部位は、T106N、A175T、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびその組み合わせからなる群より選択される置換、特にI205Tによって導入される。
【0112】
一つの態様において、唯一のインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている。もう一つの態様において、二つまたはそれ以上(二つのような)のインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている。二つのインビボN-グリコシル化部位を形成する好ましい置換の例には、

からなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、置換は、T106+A175T、T106N+I205T、T106N+V253N、T106N+T267N+S269T、A175T+I205T、A175T+V253N、A175T+T267N+S269T、I205T+V253N、I205T+T267N+S269TおよびV253N+T267N+S269Tからなる群より選択され、さらにより好ましくはT106N+I205T、T106N+V253N、およびI205T+T267N+S269Tからなる群より選択される。
【0113】
さらにさらなる態様において、三つまたはそれ以上の(三つのような)インビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている。三つのインビボN-グリコシル化部位を形成する好ましい置換の例には、I205T+V253N+T267N+S269TおよびT106N+I205T+V253Nからなる群より選択される置換が含まれる。
【0114】
上記のように、インビボN-グリコシル化部位は、組織因子結合部位の一部も活性部位領域の一部も形成せず、本明細書に定義する活性部位結合裂の隆線も形成しない位置に導入される。そのようなグリコシル化変種は主に、本明細書においてこれまでに定義された活性なポリペプチド変種のクラスに属すると認識される。
【0115】
上記の位置にインビボN-グリコシル化部位を導入する代わりに、同じ位置にシステイン残基を導入(置換または挿入によって)してもよく、この場合、導入されたシステイン残基は次にPEG、特にmPEGのような非ポリペプチド部分と共有結合する。このように、システイン残基を導入してもよい位置の例には、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出している(本明細書の実施例1に定義されるように)アミノ酸残基を含む位置のように、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出している(本明細書の実施例1に定義されるように)アミノ酸残基を有するアミノ酸残基を含む位置が含まれるがこれらに限定されない。位置は、好ましくは組織結合部位および/または活性部位領域の外部および/または活性部位裂の隆線の外部に存在する分子の一部から選択される。これらの位置/領域は本明細書の実施例1において同定される。このように、インビボN-グリコシル化部位の導入に関する上記の開示は、必要な変更を加えてシステイン残基の導入に適用される。
【0116】
上記の章で考察したGlaドメイン外に存在する位置における改変は、Glaドメインにおける一つまたは複数の改変と組み合わせるべきであると理解されると思われる(下記の「Glaドメインにおける改変」と題する章を参照されたい)。
【0117】
Glaドメインにおける改変
理解されるように、本発明の変種は、Glaドメイン外(上記を参照されたい)に存在する導入された少なくとも一つのインビボN-グリコシル化部位の他に、Glaドメインにおいて少なくとも二つの置換、すなわち10位および32位での置換を含む。
【0118】
燐脂質膜結合親和性の増加が得られる適した改変の多くは、国際公開公報第99/20767号および国際公開公報第00/66753号に開示されている。
【0119】
本発明の好ましい態様において、10位の置換はP10Qである。本発明のもう一つの好ましい態様において、32位の置換はK32Eである。本発明の特に好ましい態様において、変種は以下の置換P10Q+K32Eを含む。
【0120】
本発明の興味深い態様において、変種は、置換P10Q+K32Eのような10位と32位での置換の他に、Glaドメインにおいて少なくとも一つのさらなる改変を含む。
【0121】
本発明の1つの好ましい態様において、Glaドメインにおけるさらなる改変は33位のアミノ酸置換を含む。好ましくは、D33I、D33L、D33M、D33V、D33F、D33Y、またはD33W、特にD33Fのように、疎水性アミノ酸残基を33位での置換によって導入する。したがって、本発明の一つの非常に興味深い態様において、変種は以下の置換P10Q+K32E+D33Fを含む。
【0122】
本発明のもう一つの好ましい態様において、Glaドメインにおけるさらなる改変は、3位と4位のあいだに少なくとも一つ(一つのような)のアミノ酸残基の挿入を含む。挿入されるアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基であることが好ましい。最も好ましくは、挿入はA3AYである。したがって、本発明のもう一つの非常に興味深い態様において、変種は以下の改変A3AY+P10Q+K32EまたはA3AY+P10Q+K32E+D33Fを含む。
【0123】
本発明のさらにもう一つの態様において、Glaドメインにおけるさらなる改変は、34位での置換を含む。陰性荷電アミノ酸残基を、34位での置換によって導入することが好ましい。最も好ましくは置換はA34Eである。したがって、本発明のなおもう一つの非常に興味深い態様において、変種は以下の置換P10Q+K32E+A34E、P10Q+K32E+D33F+A34E、A3AY+P10Q+K32E+A34EまたはA3AY+P10Q+K32E+D33F+A34Eを含む。
【0124】
Glaドメインはまた、他の位置、特にR28FまたはR28Eのように、8位、11位、および28位において改変を含んでもよい。一方、Glaドメインは、膜結合特性が障害される程度に改変されてはならないと理解すべきである。したがって、γ-カルボキシル化されるようになる残基には改変を行わないことが好ましく、すなわち6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位の残基には改変を行わないことが好ましい。同様に、糖部分および/またはPEG基のような非ポリペプチド部分をGlaドメインに導入することも一般的に好ましくない。そのため、インビボN-グリコシル化部位を形成する改変をGlaドメインに行わないことが好ましい。
【0125】
最後に、本章において考察したGlaドメインにおける改変は、上記の「Glaドメイン外に存在するインビボN-グリコシル化部位の導入」と題する章で開示した改変の一つまたはそれ以上と組み合わせなければならないことが理解されると思われる。
【0126】
そのような「複合」変種の特定の例を下記に示す。
【0127】
本発明の一つの態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+T106Nを含む。
【0128】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A175Tを含む。
【0129】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+I205Tを含む。
【0130】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+V253Nを含む。
【0131】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+T267+S269Tを含む。
【0132】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+T106N+I205Tを含む。
【0133】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+T106N+V253Nを含む。
【0134】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0135】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+T106Nを含む。
【0136】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A175Tを含む。
【0137】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+I205Tを含む。
【0138】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+V253Nを含む。
【0139】
本発明のさらに好ましい態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+T267+S269Tを含む。
【0140】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+T106N+I205Tを含む。
【0141】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+T106N+V253Nを含む。
【0142】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0143】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+T106Nを含む。
【0144】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A175Tを含む。
【0145】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+I205Tを含む。
【0146】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+V253Nを含む。
【0147】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+T267+S269Tを含む。
【0148】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+T106N+I205Tを含む。
【0149】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+T106N+V253Nを含む。
【0150】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0151】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+T106Nを含む。
【0152】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A175Tを含む。
【0153】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+I205Tを含む。
【0154】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+V253Nを含む。
【0155】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+T267+S269Tを含む。
【0156】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+T106N+I205Tを含む。
【0157】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+T106N+V253Nを含む。
【0158】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0159】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+T106Nを含む。
【0160】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+A175Tを含む。
【0161】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+I205Tを含む。
【0162】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+V253Nを含む。
【0163】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+T267+S269Tを含む。
【0164】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+T106N+I205Tを含む。
【0165】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+T106N+V253Nを含む。
【0166】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+A34E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0167】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+T106Nを含む。
【0168】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+A175Tを含む。
【0169】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+I205Tを含む。
【0170】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+V253Nを含む。
【0171】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+T267+S269Tを含む。
【0172】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+T106N+I205Tを含む。
【0173】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+T106N+V253Nを含む。
【0174】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変P10Q+K32E+D33F+A34E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0175】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+T106Nを含む。
【0176】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+A175Tを含む。
【0177】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+I205Tを含む。
【0178】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+V253Nを含む。
【0179】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+T267+S269Tを含む。
【0180】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+T106N+I205Tを含む。
【0181】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+T106N+V253Nを含む。
【0182】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+A34E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0183】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+T106Nを含む。
【0184】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+A175Tを含む。
【0185】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+I205Tを含む。
【0186】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+V253Nを含む。
【0187】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+T267+S269Tを含む。
【0188】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+T106N+I205Tを含む。
【0189】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+T106N+V253Nを含む。
【0190】
本発明のさらなる態様において、前記のFVII変種またはFVIIa変種は、以下の改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34E+I205T+T267N+S269Tを含む。
【0191】
Glaドメイン外の他の改変
本発明のさらなる態様において、FVII変種またはFVIIa変種は、上記の章に記述した改変の他にも、例えば国際公開公報第02/22776号に記述される変異のような、ポリペプチドの内因性の活性を増加することが既に知られている変異も含んでもよい。
【0192】
好ましい置換の例には、V158D、E296D、M298Q、L305V、およびK337Aからなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、前記の置換は、V158D+E296D+M298Q+L305V+K337A、V158D+E296D+M298Q+K337A、V158D+E296D+M298Q+L305V、V158D+E296D+M298Q、M298Q、L305V+K337A、L305VおよびK337Aからなる群より選択される。
【0193】
本発明のさらなる態様において、FVII変種またはFVIIa変種は、先の章に記述した改変の他にも、TFPIによる阻害の減少を引き起こすことが既に知られている変異を含んでもよい。一例には、Neuenschwanderら、Biochemistry、1995;34:8701〜8707によって開示される置換K341Qが含まれる。
【0194】
その上、変種はTF結合親和性を増加させると考えられている改変を含んでもよい。そのような改変の例には、L39E、L39Q、L39H、I42K、I42R、S43H、S43Q、K62E、K62R、L65Q、L65S、F71D、F71Y、F71E、F71Q、F71N、E82Q、E82N、E82KおよびF275Hからなる群より選択される置換が含まれる。
【0195】
既に上記に示したように、変種はまた、保存的アミノ酸置換を含んでもよい。
【0196】
非ポリペプチド部分
本開示に基づいて、当業者は、インビボN-グリコシル化部位に関して先に記述したアプローチと同じアプローチを用いて、他の結合基を含むアミノ酸残基を置換によって親ポリペプチドに導入してもよいことを承知していると思われる。例えば、酸性基(グルタミン酸またはアスパラギン酸)、チロシンまたはリジンを含む一つまたは複数のアミノ酸残基を上記の位置に導入してもよい。特に、一つまたは複数のシステイン残基を上記の位置に導入してもよい。
【0197】
上記でさらに示されるように、結合型変種の非ポリペプチド部分は、好ましくはポリマー分子、親油性化合物、糖部分(インビボグリコシル化によって)および有機誘導体化剤からなる群より選択される。これらの物質は全て、変種ポリペプチドに所望の特性、特にAUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血漿半減期の増加を付与する可能性がある。変種ポリペプチドは通常、唯一のタイプの非ポリペプチド部分に結合するが、二つまたはそれ以上の異なるタイプの非ポリペプチド部分、例えばポリマー分子と糖部分、親油性基と糖部分、有機誘導体化剤と糖部分、親油性基とポリマー分子等に結合してもよい。二つまたはそれ以上の異なる非ポリペプチド部分との結合は、同時または連続的に行ってもよい。
【0198】
本発明の結合型変種を調製する方法
以下の章「親油性化合物との結合」、「ポリマー分子との結合」、「糖部分との結合」、および「有機誘導体化物質との結合」において、特定のタイプの非ポリペプチド部分との結合を記述する。一般的に、本発明に従う結合型変種は、変種ポリペプチドの発現のために行われる条件で適当な宿主細胞を培養すること、および変種ポリペプチドを回収することによって作製してもよく、a)変種ポリペプチドは少なくとも一つのN-またはO-グリコシル化部位を含み、宿主細胞はインビボグリコシル化を行うことができる真核宿主細胞である、および/またはb)変種ポリペプチドは、インビトロで非ポリペプチド部分との結合を受ける。
【0199】
結合は、結合される非ポリペプチド部分の数、そのような分子の大きさおよび形状(例えば、それらが直鎖状であるか分岐であるか)、ならびにポリペプチドに存在する1つ(または複数)の結合部位に関して最適な分子を産生するようにデザインしなければならないと理解されると思われる。用いられる非ポリペプチド部分の分子量は、例えば、得られる所望の効果に基づいて選択してもよい。例えば、結合の主な目的が、高い分子量(例えば、腎クレアランスを減少させるために)を有する結合型変種を得ることである場合、通常、所望の分子量を得るために可能な限り小数の高分子量非ポリペプチド部分と結合することが望ましい。高い程度の遮へいが望ましい場合、これは、非常に多数の低分子量非ポリペプチド部分(例えば、分子量300 Da〜2 kDaのような分子量約300 kDa〜約5 kDaを有する)を用いることによって得てもよい。
【0200】
ポリマー分子との結合
変種ポリペプチドにカップリングされるポリマー分子は、天然または合成ホモポリマーまたはヘテロポリマーのような任意の適したポリマー分子であってもよく、典型的に分子量約500〜20,000 Daのような、分子量の範囲が約300〜100,000 Da、より好ましくは約500〜15,000 Daの範囲、さらにより好ましくは約3〜10 kDaの範囲のような約2〜12 kDaの範囲の分子である。本明細書において特定の分子量に関連して「約」という用語を用いる場合、「約」という用語は、通常、おおよその平均分子量を示し、所定のポリマー調製物において特定の分子量の分布が存在するという事実を反映する。
【0201】
ホモポリマーの例には、ポリオール(すなわち、ポリ-OH)、ポリアミン(すなわち、ポリ-NH2)、およびポリカルボン酸(すなわちポリ-COOH)が含まれる。ヘテロポリマーは、ヒドロキシル基およびアミン基のような異なるカップリング基を含むポリマーである。
【0202】
適したポリマー分子の例には、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のようなポリアルキレングリコール(PAG)を含むポリアルキレンオキシド(PAO)、分岐PEGs、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリ-(ビニルピロリドン)、ポリエチレン-コ無水マレイン酸、ポリスチレン-コ無水マレイン酸、カルボキシメチルデキストランを含むデキストラン、または免疫原性を減少させるおよび/または機能的インビボ半減期および/または血清半減期を増加させるために適した他の任意の生体ポリマーからなる群より選択されるポリマーが含まれる。ポリマー分子のもう一つの例は、ヒトアルブミンまたはもう一つの大量に存在する血漿タンパク質である。一般的に、ポリアルキレングリコールに由来するポリマーは生体適合性、非毒性、非抗原性、非免疫原性であり、様々な水溶性特性を有し、生きている生物から容易に排泄される。
【0203】
PEGは、例えばデキストランのような多糖類と比較すると、クロスリンクすることができる反応基がごく少数であることから、好ましいポリマー分子である。特に、一官能基PEG、例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)は、そのカップリング化学が比較的単純であることから(ポリペプチド上の結合基を結合するために使用できる反応基は1個に過ぎない)重要である。その結果、クロスリンクのリスクが消失すると、得られた結合型変種はより均一となり、ポリマー分子と変種ポリペプチドとの反応はより容易に制御される。
【0204】
1つ(または複数)のポリマー分子を変種ポリペプチドに共有結合させるために、ポリマー分子のヒドロキシル末端基は、活性型で、すなわち反応官能基(その例には一級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、コハク酸塩(SUC)、スクシニミジルスクシネート(SS)、スクシニミジルスクシンアミド(SSA)、スクシニミジルプロピオネート(SPA)、スクシニミジルブチレート(SBA)、スクシニミジルカルボキシメチレート(SCM)、ベンゾトリアゾールカーボネート(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、ニトロフェニルカーボネート(NPC)、およびトレシレート(TRES)が含まれる)を有して提供されなければならない。適した活性化ポリマー分子は、例えばシェアウォーターポリマーズインク(Sheawater Polymers, Inc.)、ハンツビル、アリゾナ州、アメリカまたはポリマスクファーマシューティカルズ(PolyMASC Pharmaceuticals plc、イギリス)から市販されている。
【0205】
または、ポリマー分子は、例えば国際公開公報第90/13540号に開示されるように当技術分野で既知の慣例的な方法によって活性化することができる。本発明において用いるための活性化された直線または分岐ポリマー分子の特定の例は、シェアウォーターポリマーズインク、1997年および2000年のカタログ(参照として本明細書に組み入れられる、Functionalized Biocompatible Polymers for Research and Pharmaceuticals、Polyethylene Glycol and Derivatives)に記述されている。
【0206】
活性化PEGポリマーの特定の例には、以下の直線状PEGsが含まれる。NHS-PEG(例えば、SPA-PEG、SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG、およびSCM-PEG)、およびNOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG、TRES-PEG、VS-PEG、IODO-PEG、およびMAL-PEG、ならびびびPEG2-NHSのような分岐PEGs、ならびにその双方が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,932,462号および米国特許第5,643,575号に開示されるPEGが含まれる。さらに、参照として本明細書に組み入れられる以下の出版物は、有用なポリマー分子および/またはPEG化化学を開示している:米国特許第5,824,778号、米国特許第5,476,653号、国際公開公報第97/32607号、欧州特許第229,108号、欧州特許第402,378号、米国特許第4,902,502号、米国特許第5,281,698号、米国特許第5,122,614号、米国特許第5,219,564号、国際公開公報第92/16555号、国際公開公報第94/04193号、国際公開公報第94/14758号、国際公開公報第94/17039号、国際公開公報第94/18247号、国際公開公報第94/28024号、国際公開公報第95/00162号、国際公開公報第95/11924号、国際公開公報第95/13090号、国際公開公報第95/33490号、国際公開公報第96/00080号、国際公開公報第97/18832号、国際公開公報第98/41562号、国際公開公報第98/48837号、国際公開公報第99/32134号、国際公開公報第99/32139号、国際公開公報第99/32140号、国際公開公報第96/40791号、国際公開公報第98/32466号、国際公開公報第95/06058号、欧州特許第439 508号、国際公開公報第97/03106号、国際公開公報第96/21469号、国際公開公報第95/13312号、欧州特許第921 131号、米国特許第5,736,625号、国際公開公報第98/05363号、欧州特許第809 996号、米国特許第5,629,384号、国際公開公報第96/41813号、国際公開公報第96/07670号、米国特許第5,473,034号、米国特許第5,516,673号、欧州特許第605 963号、米国特許第5,382,657号、欧州特許第510 356号、欧州特許第400 472号、欧州特許第183 503号、および欧州特許第154 316号。
【0207】
システイン残基とのカップリングにとって特に好ましい活性化PEGポリマーの特定の例には、以下の直線状PEGsが含まれる。ビニルスルホン-PEG(VS-PEG)、好ましくはビニルスルホン-mPEG(VS-mPEG);マレイミド-PEG(MAL-PEG)、好ましくはマレイミド-mPEG(MAL-mPEG)、およびオルトピリジル-ジスルフィド-PEG(OPSS-PEG)、好ましくはオルトピリジル-ジスルフィド-mPEG(OPSS-mPEG)。典型的にそのようなPEGまたはmPEGポリマーは、大きさが約5 kDa、約10 kDa、約12 kDa、または約20 kDaであると思われる。
【0208】
ポリペプチド変種と活性化ポリマー分子との結合は、任意の通常の方法、例えば下記の参照文献(同様に、ポリマー分子の活性化にとって適した方法も記述する)に記載される方法を用いることによって行われる:HarrisおよびZalipsky編、「Poly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications」、AZC、ワシントン;R.F. Taylor(1991)、「Protein immobilisation. Fundamental and applications」、マーセルデッカー、ニューヨーク;S.S. Wong(1992)、「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」、CRC出版、ボカレイトン;G.T. Hermansonら(1993)、「Immobilized Affinity Ligand Techniques.」、アカデミック出版、ニューヨーク。
【0209】
当業者は、用いる活性化法および/または結合化学が、変種ポリペプチド(その例は上記に示す)の1つ(または複数)の結合基のみならず、ポリマーの官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、スルフィドリル、スクシニミジル、マレイミド、ビニスルホンまたはハロアセテートである)に依存することを承知していると思われる。PEG化は、変種ポリペプチド上で使用できる全ての結合基との結合に対して行ってもよく(すなわち、ポリペプチドの表面に露出された結合基)、または一つもしくはそれ以上の特異的結合基、例えば、米国特許第5,985,265号に記載のN末端アミノ基もしくはシステイン残基に対して行ってもよい。さらに、結合は、一段階でまたは段階的に行ってもよい(例えば、国際公開公報第99/55377号に記載されるように)。
【0210】
システイン残基に対するPEG化に関して(上記を参照されたい)、FVIIまたはFVIIaは通常、PEG化の前にジチオスレイトール(DDT)のような還元剤によって処理する。還元剤はその後、脱塩のような任意の通常の方法によって除去する。PEGのシステイン残基への結合は典型的に、温度4℃〜25℃、pH 6〜9の適した緩衝液において16時間までの期間起こる。
【0211】
PEG化は、結合されるPEG分子数、そのような分子の大きさおよび形状(例えば、直線状であるか分岐であるか)、ならびに変種ポリペプチドにおける1つ(または複数)の結合部位に関して最適な分子を産生するようにデザインされると理解されると思われる。用いるポリマーの分子量は、例えば得られる所望の効果に基づいて選択してもよい。
【0212】
タンパク質上の一つの結合基のみに対する結合に関連して(例えば、N末端アミノ基)、直線または分岐であってもよいポリマー分子は高い分子量、好ましくは分子量約15〜25 kDa、例えば約20 kDaのような約10〜25 kDaを有することが都合がよい。
【0213】
通常、ポリマーの結合は、使用できる可能な限り多くのポリマー結合基とポリマー分子とを反応させることを目的とする条件で行われる。これは、ポリペプチドに対してポリマーの適したモル過剰によって行われる。典型的に、活性化ポリマー分子対ポリペプチドのモル比は、約200:1まで、または約100:1までのような約1000:1である。しかし場合によっては、比は、最適な反応を得るために約50:1、10:1、5:1、2:1、または1:1までのようにいくぶん低くてもよい。
【0214】
ポリマー分子をリンカーを通してポリペプチドにカップリングさせることも同様に本発明に従って企図される。適したリンカーは、当業者に周知である。好ましい例は、塩化シアヌル(Abuchowskiら(1977)、J. Biol. Chem. 252:3578〜3581;米国特許第4,179,337号;Shaferら(1986)、J. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed. 24:375〜378)である。
【0215】
結合後、残っている活性化ポリマー分子は、当技術分野において既知の方法に従って、例えば反応混合物に一級アミンを加えることによってブロックして、得られた不活化ポリマー分子を適した方法によって除去する。
【0216】
状況に応じて、例えば、変種ポリペプチドのアミノ酸配列、用いられる活性化PEG化合物の特性、およびPEG対ポリペプチドのモル比を含む特異的PEG化条件に応じて、様々な程度のPEG化が得られる可能性があるが、高度のPEG化は、一般的にPEG対変種ポリペプチドの比がより高い場合に得られる。しかし、任意の所定のPEG化プロセスから得られたPEG化変種ポリペプチドは、通常、わずかに異なる程度のPEG化を有する結合型ポリペプチド変種の確率論的分布を含むと思われる。
【0217】
糖部分とのカップリング
一つまたは複数のグリコシル化部位を含むFVII分子のインビボグリコシル化を得るために、変種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、グルコシル化する真核細胞発現宿主に挿入しなければならない。発現宿主細胞は、真菌(糸状菌または酵母)、昆虫もしくは動物細胞、またはトランスジェニック植物細胞から選択してもよい。一つの態様において、宿主細胞はCHO細胞、BHKもしくはHEK、例えばHEK 293細胞のような哺乳類細胞、またはSF9細胞のような昆虫細胞、または出芽酵母(S. cerevisiae)もしくはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、または先に言及した任意の宿主細胞である。
【0218】
糖部分(デキストランのように)の、変種ポリペプチドのアミノ酸残基への共有結合インビトロカップリングも同様に、例えば国際公開公報第87/05330号およびAplinら、CRC Crit. Rev. Biochem. 259〜306、1981に記述されるように用いてもよい。糖部分またはPEGのタンパク質およびペプチド結合Gln残基へのインビトロカップリングは、トランスグルタミナーゼ(TGアーゼ)によって行うことができる。トランスグルタミナーゼは、いわゆるクロスリンク反応においてタンパク質およびペプチド結合Gln残基へのドナーアミン基の転位を触媒する。ドナーアミン基は、リジン残基におけるε-アミノ基のようにタンパク質またはペプチド結合であってもよく、または小さいもしくは大きい有機分子の一部となりうる。TGアーゼ触媒クロスリンクにおけるアミノ供与体として機能する小さい有機分子の例は、プトレッシン(1,4-ジアミノブタン)である。TGアーゼ触媒クロスリンクにおけるアミノ供与体として機能するより大きい有機分子の例は、アミン含有PEG(Satoら、1996、Biochemistry 35:13072〜13080)である。
【0219】
TGアーゼは一般的に、非常に特異的な酵素であり、タンパク質表面上に露出した全てのGln残基が、必ずしもアミノ含有物質とのTGアーゼ触媒クロスリンクに到達できるわけではない。反対に、本来TGアーゼの基質として機能するGln残基はごく少数であるが、Gln残基が良好なTGアーゼ基質であることを左右する正確なパラメータはなおも不明である。このように、タンパク質をTGアーゼ触媒クロスリンク反応に対して感受性があるようにするために、しばしば、TGアーゼ基質として非常に良好に機能することが知られているアミノ酸配列の枝を都合のよい位置に付加することが必須である。いくつかのアミノ酸配列、例えば、サブスタンスP、エラフィン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、α2-プラスミン阻害剤、α-カゼインおよびβ-カゼインが、優れた天然のTGアーゼ基質である、またはこれを含むことが知られている。
【0220】
有機誘導体化物質との結合
変種ポリペプチドの共有結合改変は、変種ポリペプチドの一つまたは複数の結合基を有機誘導体化物質に反応させることによって行ってもよい。適した誘導体化物質および方法は当技術分野で周知である。例えば、システイニル残基は最も一般的に、クロロ酢酸、またはクロロアセトアミドのようなα-ハロアセテート(および対応するアミン)に反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基も同様に、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(4-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-塩化水銀ベンゾエート、2-塩化水銀-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。ヒスチジル残基は、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるジエチルピロカーボネートとpH 5.5〜7.0での反応によって誘導体化される。パラ-ブロモフェナシルブロミドも同様に有用である。反応は、好ましくはpH 6.0で0.1 Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。リジニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの物質による誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる作用を有する。α-アミノ含有残基を誘導体化するために適した他の試薬には、メチルピコリミデートのようなイミドエステル、ピリドキサルホスフェート、ピリドキサル、クロロ水素化ホウ素、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソウレア、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。アルギニル残基は、一つまたはいくつかの通常の試薬、中でもフェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって改変される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いために、反応をアルカリ条件で行う必要がある。
【0221】
さらに、これらの試薬は、リジンのグループと反応するのみならず、アルギニングアニジノ基とも反応する可能性がある。カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R')との反応によって選択的に改変され、式中、RおよびR'は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのような異なるアルキル基である。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
【0222】
親油性化合物との結合
変種ポリペプチドおよび親油性化合物は、互いに直接またはリンカーを用いて結合させてもよい。親油性化合物は、飽和または不飽和脂肪酸、脂肪酸ジケトン、テルペン、プロスタグランジン、ビタミン、カロチノイド、もしくはステロイドのような天然の化合物、または一つもしくはそれ以上のアルキル、アリール、アルケニル、もしくは他の多数の不飽和化合物を有する炭素酸、アルコール、アミン、およびスルホン酸のような合成化合物であってもよい。選択的にリンカーを通しての変種ポリペプチドと親油性化合物との結合は、例えばBodanszky、Peptide Synthesis、ジョンウィリー、ニューヨーク、1976および国際公開公報第96/12505号に記載されるように、当技術分野で既知の方法に従って行ってもよい。
【0223】
本発明のポリペプチド変種を調製する方法
本発明のポリペプチド変種は、当技術分野で既知の任意の適した方法によって産生してもよい。そのような方法には、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列を構築する段階および適した形質転換またはトランスフェクトした宿主において配列を発現させる段階が含まれる。好ましくは宿主細胞は、哺乳類細胞のようなγカルボキシル化宿主細胞である。しかし、本発明のポリペプチド変種は、あまり効率的ではないが、化学合成もしくは化学合成の組み合わせまたは化学合成と組み換えDNA技術の組み合わせによって産生してもよい。
【0224】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するhFVIIのような親FVIIをコードするヌクレオチド配列を単離または合成すること、次に、1つ(または複数)の関連するアミノ酸残基の導入(すなわち挿入または置換)または除去(すなわち欠失または置換)を行うためにヌクレオチド配列を変化させることによって構築してもよい。
【0225】
ヌクレオチド配列は、通常の方法に従って部位特異的変異誘発によって簡便に改変される。または、ヌクレオチド配列は、化学合成によって、例えばオリゴヌクレオチドが所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいてデザインされるオリゴヌクレオチドシンセサイザーを用いて、好ましくは組み換え型ポリペプチドが産生される宿主において都合がよいコドンを選択することによって、調製される。例えば、所望のポリペプチドの一部をコードするいくつかの小さいオリゴヌクレオチドを合成して、PCR、ライゲーション、またはライゲーション連鎖反応(LCR)(Barany、PNAS 88:189〜193、1991)によって構築してもよい。個々のオリゴヌクレオチドは典型的に、相補的構築のために5'または3'オーバーハングを含む。
【0226】
高スループットスクリーニングのためのポリペプチド変種を産生するため、他のヌクレオチド配列改変法、例えば米国特許第5,093,257号に開示されるように同種クロスオーバーを含む方法、および遺伝子シャッフリングを含む方法、すなわち開始ヌクレオチド配列と比較して多くのヌクレオチド変化を有する新しいヌクレオチド配列が得られる二つまたはそれ以上の相同なヌクレオチド配列間の組み換えを含む方法を使用できる。遺伝子シャッフリンク(DNAシャッフリンクとしても知られる)は、ヌクレオチド配列のランダムな断片化および再構築の一つまたは複数のサイクルを行った後に、所望の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を選択するためのスクリーニングを行うことを含む。相同性に基づく核酸シャッフリングが起こるためには、ヌクレオチド配列の関連する部分が、好ましくは少なくともも60%同一であるように、少なくとも50%同一であり、より好ましくは少なくとも80%同一であるように、少なくとも70%同一である。組み換えはインビトロまたはインビボで行うことができる。
【0227】
適したインビトロ遺伝子シャッフリング法の例は、Stemmerら(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91、10747〜10751;Stemmer(1994)、Nature 370:389〜391;Smith(1994)、Nature 370:324〜325;Zhaoら、Nat. Biotechnol. 1998、3月、16(3):258〜61;Zhao, H.およびArnold, FB.、Nucleic Acids Research、1997、25(6):1307〜1308;Shaoら、Nucleic Acids Research 1998、1月15日号;26(2):681〜83;および国際公開公報第95/17413号によって開示されている。
【0228】
適したインビボシャッフリング法の例は、国際公開公報第97/07205号に開示される。インビトロまたはインビボ組み換えによる核酸配列の変異誘発に関する他の技術は、例えば国際公開公報第97/20078号および米国特許第5,837,458号に開示されている。特異的シャッフリング技術の例には、「ファミリーシャッフリング」、「合成シャッフリング」、および「コンピュータシュミレーションによるシャッフリング」が含まれる。
【0229】
ファミリーシャッフリングは、異なる種からの相同な遺伝子ファミリーに一つまたは複数のシャッフリングサイクルを行うこと、およびその後スクリーニングまたは選択を行うことを含む。ファミリーシャッフリング技術は、例えばCrameriら(1998)、Nature 391:288〜291;Christiansら(1999)、Nature Biotechnology 17:259〜264;Changら(1999)、Nature Biotechnology 17:793〜797;およびNessら(1999)、Nature Biotechnology 17:893〜896に開示されている。
【0230】
合成シャッフリングは、例えば対象となる相同な遺伝子の配列アラインメントに基づいて、重なり合う合成オリゴヌクレオチドのライブラリを提供することを含む。合成によって産生されたオリゴヌクレオチドを組み換えて、得られた組み換え型核酸配列をスクリーニングして、望ましければ、その後のシャッフリングサイクルのために用いる。合成シャッフリング技術は国際公開公報第00/42561号に開示されている。
【0231】
コンピュータシュミレーションによるシャッフリングは、コンピューターシステムを用いて行われるまたはモデリングされ、それによって核酸を物理的に操作する必要性が部分的または完全になくなるDNAシャッフリング技術を指す。コンピュータシュミレーションによるシャッフリングに関する技術は、国際公開公報第00/42560号に開示されている。
【0232】
一度構築されると(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法によって)、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み換えベクターに挿入して、望ましい形質転換宿主細胞においてFVIIの発現にとって必要な制御配列に機能的に結合させる。
【0233】
必ずしも全てのベクターおよび発現制御配列が本明細書に記述のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列を発現するために等しく十分に機能するとは限らないことは当然理解される。必ずしも全ての宿主が同じ発現系によって等しく十分に機能するとは限らないと思われる。しかし、当業者は、不要な実験を行うことなくこれらのベクター、発現制御配列、および宿主において選択を行ってもよい。例えば、ベクターを選択する場合、ベクターはその中で複製しなければならないため、または染色体に組み入れられなければならないために宿主を検討しなければならない。ベクターのコピー数、そのコピー数の制御能、および抗生物質マーカーのようなベクターによってコードされる他の任意のタンパク質の発現も同様に、検討しなければならない。これらには、例えば配列の相対強度、その制御性、特に可能性がある二次構造に関してポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とのその適合性が含まれる。宿主は、選択したベクターとのその適合性、ヌクレオチド配列によってコードされる産物の毒性、その分泌特徴、ポリペプチド変種を正確に折りたたむ能力、その発酵または培養必要条件、およびヌクレオチド配列によってコードされる産物の精製の容易さを検討することによって選択しなければならない。
【0234】
組み換えベクターは、自律的に複製するベクター、すなわちその複製が染色体の複製に依存しない染色体外実体として存在するベクター、例えばプラスミドであってもよい。または、ベクターは、宿主細胞に導入した場合、宿主細胞のゲノムに組み入れられ、それが組み入れられている1つ(または複数)の染色体と共に複製するベクターである。
【0235】
ベクターは好ましくは、その中で本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の転写にとって必要なさらなるセグメントに機能的に結合している発現ベクターである。ベクターは、典型的にプラスミドまたはウイルスDNAに由来する。本明細書において言及した宿主細胞における発現にとって適した多くの発現ベクターが市販され、または文献に記述されている。真核宿主にとって有用な発現ベクターには、例えばSV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルスからの発現制御配列が含まれる。特異的ベクターは、例えば、pCDNA3.1(+)/Hyg(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州、アメリカ)およびpCI-neo(ストラタジーン(Stratagene)、ラホヤ、カリフォルニア州、アメリカ)である。酵母細胞にとって有用な発現ベクターには、2μプラスミドおよびその誘導体、POT1ベクター(米国特許第4,931,373号)、Okkels、Ann. New York Acad. Sci. 782:202〜207、1996に記載されるpJSO37、およびpPICZ A、B、またはC(インビトロゲン)が含まれる。昆虫細胞にとって有用なベクターには、pVL941、pBG311(Cateら、「Isolation of the Bovine and Human Genes for Mullerian Inhibiting Substance And Expression of the Human Gene In Animal Cells」、Cell 45:685〜98(1986))、pBluebac 4.5およびpMelbac(いずれもインビトロゲンから入手可能)が含まれる。細菌宿主にとって有用な発現ベクターには、pBR322、pET3a、およびpET12a(いずれもノバゲンインク(Novagen Inc.)、ウィスコンシン州、アメリカ)を含む大腸菌(E. coli)に由来するプラスミド、RP4、ファージDNA、例えばファージλの膨大な誘導体、例えばNM989、およびM13および糸状一本鎖DNAファージのような他のDNAファージのようなより広い宿主範囲のプラスミドのような既知の細菌プラスミドが含まれる。
【0236】
本発明において用いられる他のベクターには、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列のコピー数を増幅させるベクターが含まれる。そのような増幅可能なベクターは、当技術分野で周知である。それらには、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman、米国特許第4,470,461号、KaufmanおよびSharp、「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression.」、Mol. Cell Biol. 2:1304〜19(1982)を参照されたい)およびグルタミンシンターゼ(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州特許第338,841号を参照されたい)によって増幅することができるベクターが含まれる。
【0237】
組み換えベクターはさらに、ベクターを対象となる宿主細胞において増幅させることができるDNA配列を含んでもよい。そのような配列の例(宿主細胞が哺乳類細胞の場合)は、SV40複製開始点である。宿主細胞が酵母細胞である場合、ベクターを複製させることができる適した配列は、酵母プラスミド2μ複製遺伝子REP1-3および複製開始点である。
【0238】
ベクターはまた、選択マーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子もしくは分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のTPI遺伝子(P.R. Russell、Gene 40、1985:125〜130によって記述される)のように、その遺伝子産物が宿主細胞において欠損を補足する遺伝子、または薬物、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン、もしくはメソトレキセートに対する抵抗性を付与する遺伝子を含んでもよい。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)に関しては、選択マーカーには、ura3およびleu2が含まれる。糸状菌に関しては、選択マーカーにはamdS、pyrG、arcB、niaD、およびsCが含まれる。
【0239】
「制御配列」という用語は、本明細書において、本発明のポリペプチド変種の発現にとって必要または都合がよい全ての成分が含まれると定義される。それぞれの制御配列は、ポリペプチド変種をコードする核酸配列に対して本来の配列であってもよく外来配列であってもよい。そのような制御配列には、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、エンハンサーまたは上流活性化配列、シグナルペプチド配列、および転写ターミネータが含まれるがこれらに限定されない。少なくとも制御配列にはプロモーターが含まれる。
【0240】
広く多様な発現制御配列を本発明において用いてもよい。そのような有用な発現制御配列には、上述の発現ベクターの構造遺伝子に関連した発現制御配列と共に、原核もしくは真核細胞、またはウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている任意の配列および様々なその組み合わせが含まれる。
【0241】
哺乳類細胞において転写を指示するために適した制御配列の例には、SV40およびアデノウイルスの後期および初期プロモーター、例えばアデノウイルス2の主要後期プロモーター、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV)、ヒト伸長因子1α(EF-1α)プロモーター、ショウジョウバエ(Drosophila)最小熱ショックタンパク質70プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトユビキチンC(UbC)プロモーター、ヒト成長ホルモンターミネーター、SV40またはアデノウイルスE1b領域ポリアデニル化シグナルおよびコザック共通配列(Kozak, M.、J. Mol. Biol. 1987、8月20日号;196(4):947〜50)が含まれる。
【0242】
哺乳類細胞における発現を改善するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5'非翻訳領域に合成イントロンを挿入してもよい。合成イントロンの例は、プラスミドpCI-Neoからの合成イントロンである(プロメガ社(Promega Corporation)、ウィスコンシン州、アメリカから入手可能)。
【0243】
昆虫細胞において転写を指示するために適した制御配列の例には、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファカルフォリニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス塩基性タンパク質プロモーター、バキュロウイルス前初期遺伝子1プロモーターおよびバキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター、およびSV40ポリアデニル化配列が含まれる。酵母宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、酵母α-接合系、酵母トリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)プロモーター、酵母解糖遺伝子またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター、ADH2-4cプロモーターおよび誘導型GALプロモーターが含まれる。糸状菌宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、ADH3プロモーターおよびターミネーター、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼトリオースホスフェートイソメラーゼまたはアルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、黒色アスペルギルス(A. niger)α-アミラーゼ、黒色アスペルギルスまたはアスペルギルス・ニジュランス(A. nidulans)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランスアセトアミダーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテナーゼまたはリパーゼ、TPI1ターミネーターおよびADH3ターミネーターが含まれる。細菌宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、lac系、trp系、TACまたはTRC系のプロモーター、およびファージλの主要プロモーター領域が含まれる。
【0244】
シグナルペプチドの存在または非存在は、例えば、発現されるポリペプチド変種を産生するために用いられる発現宿主細胞(それが細胞内または細胞外ポリペプチドであるか否かによらず)、およびそれが分泌を得るために望ましいか否かに依存すると思われる。糸状菌において用いるために、シグナルペプチドは、簡便にアスペルギルス種のアミラーゼもしくはグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミーヘイのリパーゼもしくはプロテアーゼ、またはヒュミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子に由来してもよい。シグナルペプチドは好ましくはアスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、黒色アスペルギルス中性α-アミラーゼ、黒色アスペルギルス酸安定アミラーゼ、または黒色アスペルギルスグルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。昆虫細胞において用いる場合、シグナルペプチドは、鱗翅類マンジュカ・セクスタ(Lepidopteran manduca sexta)脂肪動員ホルモン前駆体(参照、米国特許第5,023,328号)のような昆虫遺伝子(参照、国際公開公報第90/05783号)、ミツバチメリチン(インビトロゲン)、エクジステロイドUDPグルコシルトランスフェラーゼ(egt)(Murphyら、Protein Expression and Purification、4:349〜357(1993))、またはヒト膵臓リパーゼ(hpl)(Methods in Enzymology 284:262〜272、1997)に由来することが都合がよい。哺乳類細胞において用いるために好ましいシグナルペプチドは、hFVIIまたはマウスIgκ軽鎖シグナルペプチド(Coloma, M.(1992)、J. Imm. Methods 152:89〜104)である。酵母細胞において用いるために適したシグナルペプチドは、出芽酵母(米国特許第4,870,008号)に由来するα-因子シグナルペプチド、改変カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(参照、L.A. Vallsら、Cell 48、1987:887〜897)、酵母BAR1シグナルペプチド(参照、国際公開公報第87/02670号)、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(参照、M. Egel-Mitaniら、Yeast 6、1990:127〜137)、および合成リーダー配列TA57(国際公開公報第98/32867号)であることが判明している。大腸菌細胞において用いるために適したシグナルペプチドは、シグナルペプチドompA(欧州特許第581821号)であることが判明している。
【0245】
ポリペプチド変種をコードする本発明のヌクレオチド配列は、部位特異的変異誘発、合成、PCRまたはその他の方法によって調製されたか否かによらず、選択的に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチドを含んでもよい。シグナルペプチドは、ポリペプチド変種が発現される細胞から分泌される場合に存在する。そのようなシグナルペプチドは、存在する場合、ポリペプチド変種の発現に関して選択された細胞によって認識されるペプチドでなければならない。シグナルペプチドは、例えば、通常hFVIIに会合するものであってもよく、またはシグナルペプチドは、他のヒト野生型ビタミンK依存的ポリペプチドに通常関連する任意のペプチドのように、hFVIIとは別の起源であってもよい。さらに、シグナルペプチドは、宿主細胞から通常発現されるシグナルペプチドであってもよく、または宿主細胞から通常発現されないペプチドであってもよい。したがって、シグナルペプチドは原核細胞であってもよく、例えば大腸菌のような細菌に由来してもよく、または真核細胞、例えば哺乳類、昆虫もしくは酵母細胞に由来してもよい。
【0246】
細菌(特に好ましくはないが)、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳類、または他の適当な動物細胞または細胞株と共にトランスジェニック動物または植物を含む、任意の適した宿主を用いてポリペプチド変種を産生してもよい。細菌宿主の例には、バチルス(Bacillus)、例えば、短バチルス(B. brevis)もしくは枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス(Pseudomonas)、もしくは放線菌(Streptomyces)のようなグラム陽性菌、または大腸菌株のようなグラム陰性菌が含まれる。細菌宿主細胞へのベクターの導入は、例えばプロトプラスト形質転換によって(例えば、ChangおよびCohen、1979、Molecular General Genetics 168:111〜115を参照されたい)、コンピテント細胞(例えば、YoungおよびSpizizin、1961、Journal of Bacteriology 81:823〜829、またはDubnauおよびDavidoff-Abelson、1971、Journal of Molecular Biology 56:209〜221を参照されたい)、電気穿孔(例えば、ShigekawaおよびDower、1988、Biotechniques 6:742〜751を参照されたい)、または抱合(例えば、KoehlerおよびThorne、1987、Journal of Bacteriology 169:5771〜5278)を用いて行ってもよい。適した糸状菌宿主細胞の例には、アスペルギルス、例えばアスペルギルス・オリゼ、黒色アスペルギルス、またはアスペルギルス・ニジュランス、フザリウム(Fusarium)、またはトリコデルマ(Trichoderma)の株が含まれる。真菌細胞は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、および既知の方法による細胞壁の再生を含むプロセスによって形質転換してもよい。アスペルギルス宿主細胞を形質転換するために適した方法は、欧州特許第238 023号および米国特許第5,679,543号に記述されている。フザリウム種を形質転換するために適した方法は、Malardierら(1989)、Gene 78:147〜156および国際公開公報第96/00787号に記述されている。適した酵母宿主細胞の例には、サッカロミセス、例えば出芽酵母、分裂酵母、クリベロミセス(Klyveromyces)、P. パストリスまたはP. メタノリカ(P. methanolica)のようなピチア、H. ポリモルファのようなハンセヌラ(Hansenula)、またはヤロウィア(Yarrowia)の株が含まれる。酵母は、BeckerおよびGuarente、Abelson, J. N.およびSimon, M.I.編、「Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology」、Methods in Enzymology 194:182〜187、アカデミック出版、ニューヨーク;Itoら、1983、Journal of Bacteriology 153:163;Hinnenら、1978、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920;およびクロンテックラボラトリーズインク(Clontech Laboratories Inc.、パロアルト、カリフォルニア州、アメリカ)によって開示される方法(イーストメーカー(Yeastmaker)(商標)酵母形質転換システムキットの製品プロトコールにおいて)を用いて形質転換してもよい。適した昆虫宿主細胞の例には、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9またはSf21)のような鱗翅類細胞株、またはトリコプルシオア・ニ(Trichoplusioa ni)細胞(ハイファイブ(High Five))(米国特許第5,077,214号)が含まれる。昆虫細胞の形質転換およびそこでの異種ポリペプチドの産生は、インビトロゲンによって記述されたとおりに実施してもよい。適した哺乳類宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、CHO-K1;ATCC CCL-61)、ミドリザル細胞株(COS)(例えば、COS1(ATCC CRL-1650)、COS 7(ATCC CRL-1651));マウス細胞(例えば、NS/O)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞株(例えば、ATCC CRL-1632またはATCC CCL-10)、およびヒト細胞(例えば、HEK 293(ATCC CRL-1573))と共に、組織培養での植物細胞が含まれる。さらに適した細胞株が当技術分野で既知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビル、メリーランド州のような公共の寄託所から入手可能である。同様に、CHO細胞のような哺乳類細胞は、ポリペプチド変種の改善されたグリコシル化を提供するために、例えば米国特許第5,047,335号に記述されるようなシアリルトランスフェラーゼ、例えば1,6-シアリルトランスフェラーゼを発現するように改変してもよい。
【0247】
分泌を増加するために、本発明のポリペプチド変種をエンドプロテアーゼ、特にKex2エンドプロテアーゼ(例えば国際公開公報第00/28065号に記述)のような、PACE(対の塩基性アミノ酸変換酵素)(例えば、米国特許第5,986,079号に記述)と共に産生することは特に興味深い可能性がある。
【0248】
外因性DNAを哺乳類宿主細胞に導入する方法には、燐酸カルシウム媒介トランスフェクション、電気穿孔、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルスベクター、およびライフテクノロジーズ(Life Technologies Ltd.)、ペイスリー、イギリスによって記述されるリポフェクタミン2000を用いるトランスフェクション法が含まれる。これらの方法は当技術分野で周知であり、例えばAusbelら(編)、1996、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョンウィリー&サンズ、ニューヨーク、アメリカに記述されている。哺乳類細胞の培養は、例えば「Animal Cell Biotechnology, Methods and Protocols」、Nigel Jenkins編、1990、ヒューマンプレスインク、トトワ、ニュージャージー州、アメリカおよびHarrison, MAおよびRae, IF、「General Techniques of Cell Culture」、ケンブリッジ大学出版、1997に開示されているように、確立された方法に従って行う。
【0249】
本発明の産生法において、細胞は、当技術分野で既知の方法を用いてポリペプチド変種の産生に適した栄養培地において培養する。例えば、細胞は、ポリペプチドが発現および/または単離される適した培地および条件で行われる実験的または工業的発酵装置において、振とうフラスコ培養、小規模または大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ、または固相発酵を含む)によって培養してもよい。培養は、炭素および窒素源ならびに無機塩を含む適した栄養培地において、当技術分野で既知の方法を用いて行う。適した培地は、販売元から入手可能であるか、または公表された組成(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションのカタログ)に従って調製してもよい。ポリペプチド変種が栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは、培地から直接回収することができる。ポリペプチド変種が分泌されない場合、これは細胞溶解物から回収することができる。
【0250】
得られたポリペプチド変種は、当技術分野で既知の方法によって回収してもよい。例えば、ポリペプチド変種は、遠心、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸留、または沈殿を含むがこれらに限定されない通常の方法によって栄養培地から回収してもよい。
【0251】
ポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、疎水性、クロマトフォーカシング、およびサイズ排除)、電気泳動法(例えば、調整的等電点電気泳動)、溶解度の差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、HPLC、または抽出(例えば、「Protein Purification」、J.C. JansonおよびLars Ryden編、VCH出版、ニューヨーク、1989を参照されたい)を含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の多様な方法によって精製してもよい。
【0252】
本発明の一本鎖ポリペプチド変種は、文献に記述されている多数の方法によって二本鎖ポリペプチド変種に精製および活性化することができる(BrozeおよびMajerus、1980、J. Biol. Chem. 255:1242〜47およびHednerおよびKisiel、1983、J. Clin. Invest. 71:1836〜41)。それによって一本鎖ポリペプチド変種を精製することができるもう一つの方法は、米国特許第5,700,914号に記述されるように精製の際にZnイオンを組み入れることによって精製することができる。好ましい態様において、ポリペプチド変種は、一本鎖ポリペプチド変種として精製される。一本鎖ポリペプチド変種は、固定された酵素(例えば、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子および第XIIa因子)または陽性荷電イオン交換マトリクス等を用いる自己活性化のいずれかを用いることによって活性化される。
【0253】
最初にその一本鎖型のポリペプチド変種を精製してから、PEG化を行い(望ましければ)、最後に上記の方法の一つによって、またはPedersenら、1989、BIochemistry 28:9331〜36に記述される自己活性化によって活性化することが都合がよい。活性化の前にPEG化を行う長所は、R152-I153の切断によって形成された新しいアミノ末端のPEG化が回避される点である。この新しいアミノ末端のPEG化は、D242とI153のアミノ末端とのあいだの水素結合の形成が活性にとって必要であることから、分子を不活性にすると思われる。
【0254】
本発明の薬学的組成物とその用途
さらなる局面において、本発明は、組成物、特に本発明のポリペプチド変種と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0255】
本発明に従うポリペプチド変種または薬学的組成物は、医薬品として用いてもよい。
【0256】
先に記述した改善された特性のために、本発明のポリペプチド変種、または本発明の薬学的組成物は、外傷患者、血小板減少症患者、抗凝固治療を受けている患者、および静脈瘤出血または他の上部消化管出血を有する硬変患者、および正所肝臓移植または肝切除を受ける患者(輸血を伴わない手術を可能にする)における制御できない出血事象を治療するために特に有用である。
【0257】
外傷は、外因性物質によって引き起こされる生きている組織への損傷として定義される。これは米国における死因の第4位であり、経済に対しても大きい財政的負担となっている。
【0258】
外傷は、鈍的外傷または貫通性外傷のいずれかに分類される。鈍的外傷によって、内部圧迫、臓器損傷、および内出血が起こるが、貫通性外傷(物質が体を貫通して組織、血管および臓器を破壊した結果として)によって外部出血が起こる。
【0259】
外傷の結果としての出血は、一連の問題を開始しうる。例えば、最初の末梢および腸管膜の血管収縮によって生理的代償メカニズムが始まり、中心循環への血液の短絡が起こる。循環が回復しない場合、血液量減少ショック(不適切な還流による多臓器不全)が続いて起こる。全身の組織が酸素を要求するようになるため、嫌気的代謝が始まる。しかし、同時に乳酸を与えると血液のpHは低下して、代謝性アシドーシスが起こる。アシドーシスが重度で補正されない場合、患者は多臓器不全を引き起こして死亡する可能性がある。
【0260】
大多数の外傷患者が、その場面の環境条件により、救命救急室に到着時低体温であるが、不適切な保護、静脈内輸液投与および進行中の出血は、低体温状態を悪化させる。凝固因子の欠損は、失血または輸血が原因で起こりうる。そのあいだに、アシドーシスおよび低体温症は、血液凝固メカニズムを妨害する。このように、凝固障害が起こると、次にこれが外科的出血部位を隠して、機械的出血の制御を妨害する可能性がある。低体温症、凝固障害およびアシドーシスはしばしば、「外傷による三死因」として特徴付けられている。
【0261】
外傷は、重度の事象によって引き起こされる可能性がある。例えば、交通事故によって多くの異なるタイプの外傷が起こる。いくつかの交通事故は、貫通性外傷を引き起こす可能性があるが、多くの交通事故は、頭部および体の双方に鈍的外傷を負わせる可能性がある。しかし、これらの様々なタイプの外傷は全て、患者に凝固障害を引き起こしうる。交通事故は、米国における事故死の第一位である。アメリカでは交通事故によって年間42,000人以上が死亡する。多くの外傷患者は、準医療活動従事者による処置を受けながらERの到着前または搬送途中で事故の現場で死亡する。
【0262】
もう一つの例には、銃による損傷が含まれる。銃による損傷は、大量の出血を引き起こしうる外傷である。それらは貫通性であり、弾丸が体内を通過すると、それが体躯または脚であれ、組織を破壊する。アメリカでは年間約40,000人が銃による損傷のために死亡する。
【0263】
さらなる例には、墜落が含まれる。墜落によって交通事故と類似の外傷タイプのプロフィールが起こる。高いところから硬い物体または地面に墜落すると、貫通性外傷と減速鈍的外傷の双方を引き起こしうる。アメリカにおいて、墜落は、事故死の一般的な原因であり、その数は約13,000例に及ぶ。
【0264】
なおさらなる例には、機械の事故が含まれる。より少数の人々が、機械に当たるまたは挟まれて、機械による事故関連死のために死亡する。数値は小さいが有意であり、約2,000人である。
【0265】
なおさらなる例には、刺し傷が含まれる。刺し傷も同様に、大量の出血を引き起こしうる貫通性の損傷である。刺し傷において損傷を受ける可能性が最も高い臓器は、肝臓、小腸、および結腸である。
【0266】
肝硬変は、肝実質に対する持続的な繰り返し損傷の最終的な続発症である。最終的な結果は、肝葉の正常な構築を維持せず、このように肝機能の悪化を引き起こす再生性の結節を分離する広範囲の線維様組織の形成である。患者は、ビタミンK依存的凝固因子の枯渇の結果としてプロトロンビン時間の延長を引き起こす。病原性に、肝硬変は、強度の繰り返しの持続的な肝細胞損傷の任意の形が原因で起こりうる慢性的な肝損傷の最終的な一般的経路として見なすべきである。肝硬変は、慢性アルコール中毒、慢性ウイルス性肝炎(B型、C型、およびD型)および自己免疫性肝炎を含む直接的な肝損傷と共に、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および胆管閉鎖を含む胆管損傷による間接的な損傷によって引き起こされる可能性がある。あまり一般的でない肝硬変の原因には、嚢胞性線維症、α-1-アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、ガラクトース血症、および糖原病のような遺伝性疾患による直接的な肝損傷が含まれる。
【0267】
移植は、疾患を治療するための基本的な介入である場合の末期肝硬変患者に残される主な最終手段である。移植に適格となるためには、患者はChildのBまたはCと分類されると共に、さらなる選択基準を満たさなければならない。昨年、アメリカだけでも移植4,954例が実施された。
【0268】
切除を受ける患者に関連して年間6,000例の出血事例があると推定されている。これは、移植数と比較してわずかに高いように思われるがこの方法の置かれた立場と相関する。
【0269】
静脈瘤出血の発生率に関する正確なデータは得ることが難しい。わかっている重要な事実は、診断時、静脈瘤は、非代償性患者の約60%、および代償性患者の30%に存在し、これらの静脈瘤患者の約30%が出血を経験して、静脈瘤出血のそれぞれの事例は、30%の死亡リスクに関連していることである。
【0270】
このように、さらなる局面において、本発明は、凝血形成が望ましい疾患または障害の治療のために医薬品を製造するために本発明のポリペプチド変種に関する。本発明のなおさらなる局面は、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与することを含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法に関する。
【0271】
血小板減少症は、三つのメカニズムの一つによって引き起こされる−骨髄産生の減少、脾臓分離の増加、または血小板破壊の加速。血小板減少症は出血の危険因子であり、血小板輸血は出血の発生率を減少させる。予防的血小板輸血の閾値は10,000個/μlである。発熱または感染症を有しない患者において、閾値5000個/μlは、自然発生出血を予防するために十分である可能性がある。侵襲性岐法の場合、血小板50,000個/μlが通常の標的レベルである。繰り返し輸血後に血小板に対する抗体を産生する患者では、出血は極めて制御が困難となりうる。
【0272】
凝血形成の増加が望ましい疾患/障害の例には、脳出血を含む出血と共に外傷のような重度の制御されない出血を有する患者が含まれるがこれらに限定されない。さらなる例には、生体移植を受ける患者、切除を受ける患者、および静脈瘤出血を有する患者が含まれる。
【0273】
本発明のポリペプチド変種は治療的有効量で、通常、ノボセブン(登録商標)のようなrFVII治療において用いられる用量とほぼ平行な用量でまたはより低い用量で患者に投与される。本明細書における「治療的有効量」とは、それが投与される病態に関連して望ましい作用を生じるために十分な用量を意味する。正確な用量は、状況に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認可能となると思われる。通常、用量は、治療される病態または適応の重症度または拡大を予防または弱めることができなければならない。本発明のポリペプチド変種または組成物の有効量は、中でも疾患、用量、投与スケジュール、ポリペプチド変種もしくは組成物が単独で投与されるのかまたは他の治療物質と共に投与されるのか、組成物の血漿半減期、および患者の全身健康に依存することは当業者には明らかであると思われる。好ましくは、本発明のポリペプチド変種または組成物は、有効量、特に凝固障害を正常にするために十分な用量で投与される。
【0274】
本発明のポリペプチド変種は好ましくは、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物において投与される。「薬学的に許容される」とは、それが投与される患者において如何なる望ましくない作用も引き起こさない担体または賦形剤を意味する。そのような薬学的に許容される担体および賦形剤は当技術分野で周知である(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、A.R. Gennaro編、マック出版社[1990];「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、S. FrokjaerおよびL. Hovgaard編、Taylor およびFrancis[2000];および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、A. Kibbe編、ファーマシューティカル出版[2000]を参照されたい)。
【0275】
本発明のポリペプチド変種は、周知の方法によって薬学的組成物に調製することができる。適した組成物は、E.W. Martin(マック出版社、第16版、1980)による「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記述されている。
【0276】
本発明のポリペプチド変種は、「そのまま」および/またはその塩の形で用いることができる。適した塩には、ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムのようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と共に、例えば亜鉛塩が含まれるがこれらに限定されない。これらの塩または複合体は、結晶および/または非晶系構造として存在してもよい。
【0277】
本発明の薬学的組成物は単独または他の治療物質と共に投与してもよい。これらの物質は、同じ薬学的組成物の一部として組み入れてもよく、または本発明のポリペプチド変種とは個別に、同時にまたはもう一つの治療スケジュールに従って投与してもよい。さらに、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物は、他の治療に対する補助剤として用いてもよい。
【0278】
本発明の目的に関して「患者」には、ヒトおよび他の哺乳類の双方が含まれる。このように、方法はヒトの治療および獣医学応用の双方に適用可能である。本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、多様な剤形、例えば液体、ゲル、凍結乾燥、または圧縮個体の形で製剤化してもよい。好ましい剤形は治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0279】
特に、本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、凍結乾燥または安定な可溶性型で調製してもよい。ポリペプチド変種は、当業者に既知の多様な方法によって凍結乾燥してもよい。ポリペプチド変種は、本明細書に記述のようにタンパク質分解部位の除去または保護による安定な溶解型であってもよい。安定な溶解調製物を得る長所は、患者がより容易に取り扱いできる点にあり、緊急の場合には、生命を救うようになりうるより迅速な作用である。好ましい剤形は、治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0280】
本発明の製剤の投与は、経口、皮下、静脈内、脳内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内、眼内、または他の任意の許容される方法を含むがこれらに限定されない多様な方法で行うことができる。製剤は、注入によって連続的に投与することができるが、ポンプまたは埋め込みのような当技術分野で周知の技術を用いるボーラス注射が許容される。場合によっては、製剤は溶液またはスプレーとして直接適用してもよい。
【0281】
非経口投与
薬学的組成物の好ましい例は、非経口投与のためにデザインされた溶液である。多くの場合において、薬学的溶液製剤は、直ちに使用するために適用な液体型で提供されるが、そのような非経口製剤はまた凍結または凍結乾燥型で提供してもよい。前者の場合、組成物は使用前に融解しなければならない。凍結乾燥調製物は一般的にその液体対応物より安定であることが当業者によって認識されていることから、後者の型は、組成物に含まれる活性化合物の安定性を広く多様な保存条件で増強するために用いられる。そのような凍結乾燥調製物は、注射用滅菌水または滅菌生理食塩液のような一つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤を加えることによって使用前に溶解する。
【0282】
非経口投与の場合、それらは適当であれば、所望の程度の純度を有するポリペプチド変種を、当技術分野で典型的に用いられる(その全てが「賦形剤」と呼ばれる)一つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤、例えば緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、または洗浄剤、抗酸化剤、および/または他の雑多な添加剤と混合することによって凍結乾燥製剤または水溶液として保存するために調製される。
【0283】
緩衝剤は、生理的条件を模倣する範囲にpHを維持するために役立つ。それらは典型的に、約2 mM〜約50 mMの範囲の濃度で存在する。本発明において用いるために適した緩衝剤には、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物等)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸ニナトリウム混合物等)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物等)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物等)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物等)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物等)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物等)、および酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物等)のような有機酸および無機酸の双方ならびにその塩が含まれる。さらなる可能性は燐酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、およびトリスのようなトリメチルアミン塩である。
【0284】
安定化剤は、充填剤から、治療物質を安定化させて、変性または容器の壁への接着を防止するために役立つ添加剤に至るまで機能の範囲が及びうる賦形剤の広い範囲の分類を指す。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(先に記述したとおり);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等のようなアミノ酸;イノシトールのようなシクリトールを含む、乳糖、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロール等のような有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウムのような硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち、<10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような疎水性ポリマー;キシロース、マンノース、果糖およびブドウ糖のような単糖類;乳糖、マルトース、および蔗糖のような二糖類;ラフィノースのような三糖類、およびデキストランのような多糖類となりうる。安定化剤は典型的に活性タンパク質の重量に基づいて重量で約0.1〜10,000倍の範囲で存在する。
【0285】
保存剤は、微生物の増殖を遅らせるために加え、典型的に約0.2%〜1%(w/v)の量で加える。本発明において用いるために適した保存剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化、臭化、またはヨウ化ベンザルコニウム)、塩化ヘキサメトニウム、メチルもしくはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが含まれる。
【0286】
等張剤は、液体組成物の等張性を確実にするために加えられ、これには多価糖アルコール、好ましくは、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールのような三価またはそれ以上の糖アルコールが含まれる。多価アルコールは、他の成分の相対量を考慮に入れて、重量で0.1%〜25%、典型的に1〜5%の量で存在しうる。
【0287】
非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療物質の溶解を助けるためのみならず、攪拌による凝集に対して治療的ポリペプチドを保護するために存在してもよく、これによっても製剤はポリペプチドの変性を引き起こすことなく表面の剪断応力に曝露される。適した非イオン性界面活性座には、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(184、188等)、プルロニック(Pluronic)(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(ツィーン(Tween)(登録商標)-20、ツィーン(登録商標)-80等)が含まれる。
【0288】
さらなる多様な賦形剤には、充填剤または増量剤(例えば、デンプン)、キレート化剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)および共溶媒が含まれる。
【0289】
活性物質はまた、例えばコロイド脱混合減少技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、またはポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬物輸送システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロ乳剤、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロ乳剤に捕獲してもよい。そのような技術は、上記の「Remington's Pharmaceutical Sciences」に開示されている。
【0290】
インビボ投与で用いられる非経口製剤は、滅菌でなければならない。これは例えば、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に行われる。
【0291】
徐放性調製物
徐放性調製物の例には、ポリペプチド変種を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクス、被膜またはマイクロカプセルのような適した形を有するマトリクスが含まれる。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、プロリーゼ(ProLease)(登録商標)技術またはルプロンデポット(Lupron Depot)(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸のようなポリマーは、100日までまたはそれ以上のような長期間分子を放出することができるが、特定のハイドロゲルはより短期間タンパク質を放出する。封入されたポリペプチドが体内に長期間留まる場合、それらは、37℃で水分に曝露された結果として変性または凝集する可能性があり、生物活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニズムに応じた安定化に関して、合理的戦略を考案することができる。例えば、凝集メカニズムが、チオ-ジスルフィド結合を通しての分子間S-S結合形成であることが判明すれば、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液からの凍結乾燥、適当な添加剤を用いての水分含有量の制御、および特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって得てもよい。
【0292】
本発明は、以下の非制限的な実施例においてさらに説明する。
【0293】
材料および方法
アクセス可能表面積(ASA)
コンピュータープログラムアクセス(B. LeeおよびF.M. Richards、J. Mol. Biol. 55:379〜400(1971))バージョン2(著作権1983年、エール大学)を用いて、構造における個々の原子のアクセス可能表面積(ASA)を計算する。この方法は典型的に、大きさ1.4Åのプローブを用い、プローブの中心によって形成される面積としてアクセス可能表面積(ASA)を定義する。この計算の前に、他の原子がタンパク質に直接関連しないように、全ての水分子および全ての水素原子を、座標の組から除去しなければならない。
【0294】
側鎖の分画ASA
側鎖原子の分画ASAは、側鎖における原子のASAの合計を、伸長したAla-x-Alaトリペプチドにおけるその残基タイプの側鎖原子のASAを表す値によって除することによって計算する(Hubbard、CampbellおよびThornton(1991)、J. Mol. Biol. 220:507〜530を参照されたい)。本実施例において、CA原子はグリシン残基の側鎖の一部として見なされ、残りの残基ではない。以下の表は、側鎖に関する標準的な100%ASAとして用いられる。

【0295】
構造において検出されない残基は、それらが柔軟な領域に存在すると考えられることから100%露出を有すると定義される。6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位でのγ-カルボキシグルタミン酸は全て、100%露出されると定義される。
【0296】
原子間距離の決定
原子間距離は、分子グラフィックスソフトウェア、例えばInsightII(登録商標)バージョン98.0、MSIインクを用いて最も容易に決定される。
【0297】
活性部位領域
活性部位領域は、触媒三残基(残基H193、D242、S344)の任意の原子の10Å以内に少なくとも一つの原子を有する任意の残基であると定義される。
【0298】
組織因子結合部位の決定
TF結合部位は、TF結合の際にそのアクセス可能表面積が変化した全ての残基を含むとして定義される。これは、少なくとも二つのASA計算によって決定され、一つは1つ(または複数)のリガンド/1つ(または複数)の受容体複合体における単離された1つ(または複数)のリガンドについて、およびもう一つは完全な1つ(または複数)のリガンド/1つ(または複数)の受容体複合体についてである。
【0299】
タンパク質分解に対する感受性低下の測定
タンパク質分解は、タンパク質分解が自己タンパク質分解である、米国特許第5,580,560号、実施例5に記載されるアッセイ法を用いて測定することができる。
【0300】
さらに、タンパク質溶解の減少は、放射標識試料を用いて、血液試料を採取してこれらにSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーを行うことによって、rhFVIIaと本発明のポリペプチド変種とのタンパク質分解を比較するインビボモデルにおいて試験することができる。
【0301】
タンパク質分解を決定するために用いられるアッセイ法によらず、「タンパク質分解の減少」は、クーマシー染色SDS-PAGEゲルのゲルスキャニング、HPLCによって測定されるように、または下記の組織因子比依存的活性アッセイ法を用いて野生型と比較して保存された触媒活性によって測定されるように、rhFVIIaによって得られた分解と比較した切断の測定可能な減少を意味すると解釈される。
【0302】
ポリペプチド変種の分子量の測定
ポリペプチド変種の分子量は、SDS-PAGE、ゲル濾過、ウェスタンブロット、マトリクス支援レーザー脱離質量分析、または平衡遠心、例えばLaemmli, U.K.、Nature 227(1970)、680〜85によるSDS-PAGEによって決定される。
【0303】
TF非依存的第X因子活性化アッセイ法
このアッセイ法は、Nelsestuenら、J. Biol. Chem. 2001;276:39825〜39831の39826頁に詳細に記載されている。
【0304】
簡単に説明すると、アッセイすべき分子(hFVIIa、rhFVIIa、またはその活性型の本発明のポリペプチド変種)を、BSAを含むトリス緩衝液において、燐脂質源(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルセリンを8:2の比で、またはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールを4:2:4の比で)および第X因子と混合する。明記されたインキュベーション時間の後、過剰量のEDTAを加えて反応を停止させる。次に、色素産生基質(S-2222、クロモゲニクス(Chromogenix))を加えた後に、第Xa因子の濃度を、405 nmでの吸光度の変化から測定する。バックグラウンドから補正した後、rhFVIIa(awt)の組織因子非依存的活性を10分後の吸光度の変化として決定して、本発明のポリペプチド変種の組織因子非依存的活性(a変種)も同様に、10分後の吸光度の変化として決定する。活性型のポリペプチド変種の活性とrhFVIIaの活性との比をa変種/awtとして定義する。
【0305】
凝固アッセイ法
凝固活性は、一段階アッセイ法において測定され、凝固時間はトロンボトラック(Thrombotrack) IV凝固計(メジナー(MEDINOR))上で記録する。FVII枯渇ヒト血漿(アメリカンディアグノスティカ(American Diagnostica))を溶解して、室温で15〜20分間平衡にする。血漿50 μlを凝固計のカップに移す。
【0306】
hFVIIa、rhFVIIaまたは変種をグリオキサリン緩衝液(5.7 mMバルビツレート、4.3 mMクエン酸ナトリウム、117 mM NaCl、1 mg/ml BSA、pH 7.35)において希釈する。試料を50 μlのカップに加えて、37℃で2分間インキュベートする。
【0307】
トロンボプラスチン(メジナー)を水に溶解してCaCl2を加える。反応は、4.5 mM CaCl2を含むトロンボプラスチン0.1 mlを加えることによって開始する。
【0308】
データはプリズム(PRISM)ソフトウェアを用いて分析する。
【0309】
TF非依存的凝固アッセイ法
このアッセイ法は、「凝固アッセイ法」について先に記述した通りに行うが、トロンボプラスチンを加えない。
【0310】
アミド溶解アッセイ法
変種の小さいペプチド基質の切断能は、色素産生基質S-2288(D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド)を用いて測定することができる。アミド溶解活性は、アンチトロンビンIII(ATIII)の存在下および非存在下の双方で測定してもよい。
【0311】
hFVIIa、rhFVIIaまたは変種をアッセイ緩衝液(50 mM Na-Hepes pH 7.5、150 mM NaCl、5 mM CaCl2、0.1%BSA、1 U/mlヘパリン)において90 nMに希釈する。さらに、可溶性TF(sTF)をアッセイ緩衝液において450 nMに希釈する。ATIIIはアッセイ緩衝液において900 nMに希釈する。アッセイ緩衝液120 μlをFVIIa試料20 μl、sTF 20 μlおよびATIII 20 μlまたはアッセイ緩衝液と混合する。FVIIa、sTF、およびATIIIの最終濃度はそれぞれ、10 nM、50 nM、および100 nMである。室温で軽く振とうしながら5分間インキュベートした後、37℃で10分間インキュベートして、S-2288基質を1 mMとなるように加えて反応を開始させ、405 nmでの吸光度をいくつかの時点で決定する。
【0312】
トロンボグラムアッセイ法
ヒト血漿におけるトロンビン産生に及ぼすhFVIIa、rhFVIIaまたは変種の影響を、Hemkerら、Thromb Haemost. 2000;83:589〜91の589頁に記述するアッセイ法の改変版において試験する。簡単に説明すると、アッセイされる分子(hFVIIa、rhFVIIaまたは変種)を、組み換え型ヒト組織因子(rTF)、再脂質添加rTFまたは他のTF起源(トロンボプラスチンのような)を加えてまたは加えずに、正常な血小板多血漿(PRP)、正常な血小板乏血漿(PPP)、またはFVII枯渇PPPと混合する。燐脂質源(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルセリンを8:2の比で、またはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールを4:2:4の比で)を加えることができる。
【0313】
反応は、蛍光発生トロンビン基質および塩化カルシウムを加えることによって開始する。蛍光は、連続的に測定して、トロンビンアミド溶解活性は、蛍光曲線の勾配(蛍光の増加対時間)を計算することによって計算される。このようにして、最大のトロンビンアミド溶解活性が得られるまでの時間(Tmax)および総トロンビン作用量(曲線下面積(AUC))を計算することができる。
【0314】
以下の方法を用いる。PRPは、新たに採取した血液を250 g、15℃で10分間遠心することによって得る。血液凝固は、クエン酸塩(13 mMクエン酸三ナトリウム)、トウモロコシトリプシン阻害剤(50〜100 μg/ml血液)、またはクエン酸とトウモロコシトリプシン阻害剤との組み合わせのいずれかによって阻害される。血小板数は、緩衝液または自己の血小板乏血漿(PPP)を用いて3×108個mlに調節する。PPPは、PRPを1000 g、15℃で10分間2回遠心することによって得られる。FVII枯渇は、PPPを、固相にカップリングさせたFVII特異的モノクローナル抗体と共にインキュベートすることによって得られる。
【0315】
96ウェルマイクロタイタープレートのウェルあたりPRP 80 μlを加えて、rhFVIIまたは調べる変種を含む緩衝液20 μlを最終濃度で0.1〜100 nMで加える。rTFをアッセイ緩衝液5 μlに加えて、最終濃度を1 pMとする。アッセイ緩衝液は、蒸留水中に20 mM Hepes、150 mM NaCl、および60 mg/ml BSAからなる。反応は0.1 M塩化カルシウムを含む基質溶液20 μlを加えることによって開始する。アッセイプレートおよび試薬を37℃に予め加温して、反応はこの温度で起こる。用いた蛍光計は、励起フィルター390 nmおよび放射フィルター460 nmのBMG蛍光計である。蛍光は、96ウェルの透明な底のプレートのそれぞれのウェルにおいて、20〜40秒間隔で30〜180分間測定する。データはPRISMソフトウェアを用いて分析する。
【0316】
ELISA法
FVII/FVIIa(または変種)濃度はELISAによって決定する。マイクロタイタープレートのウェルを、プロテアーゼドメインに対する抗体の2 μg/mlのPBS溶液(100μl/ウェル)を用いてコーティングする。室温で2時間コーティングした後、ウェルをTHT緩衝液(100 mM NaCl、50 mMトリス-塩酸、pH 7.2、0.05%ツィーン-20)によって4回洗浄する。その後、ブロッキングのために、1%カゼイン(100 mM NaCl、50 mMトリス-塩酸、pH 7.2を用いて2.5%保存液から希釈)をウェルあたり200 μl加える。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを空にして試料(選択的に、希釈緩衝液(THT+0.1%カゼイン)によって希釈する)100 μlを加える。室温でさらに1時間インキュベートした後、ウェルをTHT緩衝液によって4回洗浄して、EGF様ドメインに対するビオチン標識抗体(1 μg/ml)100 μlを加える。室温でさらに1時間インキュベートした後、THT緩衝液によってさらに4回洗浄して、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(DAKO A/S、グロストルップ、デンマーク、10000倍希釈)を加える。室温でさらに1時間インキュベートした後、THT緩衝液によってさらに4回洗浄して、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、ケンエンテック(Kem-en-Tech A/S)、デンマーク)100 μlを加える。室温の暗所で30分間インキュベートした後、1 M H2SO4 100 μlを加えて、OD450 nmを決定する。rhFVIIa(ノボセブン(登録商標))を用いて標準曲線を調製する。
【0317】
または、FVII/FVIIaまたは変種は、プロテアーゼドメインを通してよりむしろGlaドメインを通して定量してもよい。このELISAのセットアップにおいて、ウェルをEGF様ドメインに対する抗体によって一晩コーティングして、検出するためにカルシウム依存的ビオチン標識モノクローナル抗Glaドメイン抗体(2 μg/ml、100 μl/ウェル)を用いる。このELISAセットアップにおいて、5 mM CaCl2をTHTおよび希釈緩衝液に加える。
【0318】
全血アッセイ法
全血凝固アッセイ法は、Elgら、Thrombosis Res. 2001;101(3):159〜170に記載されるとおりに行う。
【0319】
再構成凝固アッセイ法
再構成凝固アッセイ法は、Van't Veerら、Blood 2000、95(4):1330〜1335によって記述されるとおりに行う。
【実施例】
【0320】
実施例1
Bannerら、J. Mol. Biol. 1996;285:2089による可溶性組織因子との複合体におけるhFVIIaのX線構造を、本実施例において用いる。参照文献における残基の番号付けは、配列に従わないことに注意されたい。本明細書において、本発明者らは配列番号:2に従う連続番号を用いる。6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位のγ-カルボキシグルタミン酸は全て本明細書においてGLU(三文字略語)またはE(一文字略語)として命名される。残基143〜152位は構造に存在しない。
【0321】
表面の露出
方法に記述した非標準的および/または欠失残基の到達可能性の定義と組み合わせて、FVII断片のみに関する分画ASA計算を行ったところ、その側鎖の25%より多くが表面に露出される以下の残基が得られた:

(A1〜S45は、Glaドメインに存在し、残りの位置は、Glaドメイン外に存在する)。
【0322】
以下の残基は、その側鎖の50%より多い部分が表面に露出された:

(A1〜S43は、Glaドメインに存在し、残りの位置は、Glaドメイン外に存在する)。
【0323】
組織因子結合部位
ASA計算を行うと、ヒトFVIIにおける以下の残基が複合体においてそのASAを変化させる。これらの残基は、受容体結合部位を構成すると定義された:

【0324】
活性部位領域
活性部位領域は、触媒三残基(残基H193、D242、S344)における任意の原子から10Åの距離内に少なくとも一つの原子を有する任意の残基として定義される:

【0325】
活性部位結合裂の隆線
活性部位結合裂領域の隆線は、FVIIa構造1FAK pdbの肉眼的検分によって以下のように定義した:
N173、A175、K199、N200、N203、D289、R290、G291、A292、P321およびT370。
【0326】
実施例2
哺乳類細胞におけるrhFVIIの発現のための発現カセットのデザイン
その本来の短いシグナルペプチド(Hagenら、1986、PNAS 83:2412)と共にhFVIIをコードする完全長のcDNAの短い型を含む配列番号:1に示されるDNA配列を、哺乳類細胞における高い発現を促進するために合成した。最初に、ATG開始コドンをコザック共通配列に従って改変したところ(Kozak, M.、J. Mol. Biol. 1987、8月20日号;196(4):947〜50)、ATG開始コドンの上流の共通配列と完全なマッチを認める。第二に、本来のcDNAのオープンリーディングフレームは、高度に発現されたヒト遺伝子において頻繁に用いられるコドンに対してコドン使用を偏らせることによって改変した。さらに、効率的な翻訳の停止を促進するために、二つの翻訳停止コドンをオープンリーディングフレームの末端に挿入した。完全な合成および発現最適化hFVII遺伝子を70量体DNAオリゴヌクレオチドから構築して、標準的なPCR技術を用いて5'末端および3'末端でそれぞれ、BamHIおよびHindIII部位を挿入するエンドプライマーを用いて最終的に増幅し、以下の配列を得た:

【0327】
hFVIIの発現カセットを含む生成されたPCR産物のクローニングのためのベクターを、pCINeo(プロメガ)からイントロンをクローニングすることによって調製した。pCI-Neoからの合成イントロンは、標準的なPCR条件および以下のプライマーを用いて増幅して:

および

332 bpのPCR断片を得た。断片をNheIおよびBamHIによって切断してからpCDNA3.1/HygR(インビトロゲン社から得られる)にクローニングするとPF#34が得られた。
【0328】
hFVIIの発現カセットを、PF#34のBamHIおよびHindIII部位のあいだにクローニングすると、プラスミドPF#226が得られた。
【0329】
実施例3
CHO K1細胞におけるポリペプチド変種の発現
細胞株CHO K1(ATCC #CCL-61)を、MEMα、10%FCS(ギブコ/BRL(Gibco/BRL)、カタログ番号10091)、P/Sおよび5 μg/mlフィロキノンを用いてT-25フラスコにおいて50%コンフルエンスで播種して、コンフルエントになるまで増殖させる。コンフルエント単細胞層に、製造元の説明書に従ってリポフェクタミン2000トランスフェクション試薬(ライフテクノロジーズ)を用いて、上記の適切なプラスミド5 μgをトランスフェクトさせる。トランスフェクションの24時間後、試料を採取して、例えば、hFVIIのEGF1ドメインを認識するELISAを用いて定量する。この時点で、安定なトランスフェクタントのプールを作製する目的で、適切な選択(例えば、ハイグロマイシンB)を細胞に適用してもよい。CHO K1細胞およびプラスミド上の選択マーカーとしてハイグロマイシンB抵抗性遺伝子を用いる場合、これは通常1週間以内に得られる。
【0330】
実施例4
ポリペプチド変種を安定に発現するCHO K1細胞の作製
CHO-トランスフェクタントのプールのバイアルを融解して、細胞を、MEMα、10%FCS、フィロキノン(5 μg/ml)、100 U/lペニシリン、100μg/lストレプトマイシン25 mlを含む175 cm2組織培養フラスコに播種して、24時間増殖させる。細胞を回収して、希釈して、96ウェルマイクロタイタープレートに細胞密度1/2〜1個/ウェルで播種する。増殖1週間後、細胞20〜100個のコロニーがウェルに存在し、一つのみのコロニーを含むウェルを標識する。さらに2週間後、コロニー1個のみを含む全てのウェルの培地を新鮮な培地200 μlに置換する。24時間後、培地試料を採取して、例えばELISAによって分析する。産生能の高いクローンを選択して、FVIIまたは変種を大規模に産生するために用いる。
【0331】
実施例5
ポリペプチド変種の精製およびその後の活性化
FVIIおよびFVII変種は以下のように精製する。方法は4℃で行う。大規模産生から採取した培養培地は、ミリポアTFFシステムを用いて30 kDaのカットオフペリコン膜によって限外濾過する。培地を濃縮した後、クエン酸塩を5 mMとなるように加えて、pHを8.6に調節する。必要であれば、伝導率を10 mS/cmまで低下させる。その後試料を、50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって平衡にしたQ-セファロースFFカラムに適用する。カラムを100 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって洗浄後、150 mM NaCl、10 mMトリスpH 8.6によって洗浄して、10 mMトリス、25 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 8.6を用いてFVIIを溶出する。
【0332】
第二のクロマトグラフィー段階に関して、モノクローナルカルシウム依存的抗Gla-ドメイン抗体をCNBr-活性化セファロースFFにカップリングさせることによってアフィニティカラムを調製する。樹脂1 mlあたり抗体約5.5 mgをカップリングさせる。カラムを10 mMトリス、100 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 7.5によって平衡にする。NaClを濃度100 mM NaClとなるように試料に加えて、pHを7.4〜7.6に調節する。試料を一晩適用後、カラムを100 mM NaCl、35 mM CaCl2、10 mMトリスpH 7.5によって洗浄して、FVIIタンパク質を100 mM NaCl、50 mMクエン酸塩、75 mMトリスpH 7.5によって溶出する。
【0333】
第三のクロマトグラフィー段階に関して、試料の伝導率を10 mS/cm以下に低下して、必要であれば、pHを8.6に調節する。効率的な活性化を得るために、試料をQ-セファロースカラム(50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6)に密度約3〜5 mgタンパク質/mlゲルで適用する。適用後、カラムを50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって、流速を3〜4カラム容積(cv)/時間として約4時間洗浄する。FVIIタンパク質は500 mM NaCl、10 mMトリスpH 8.6の0〜100%勾配を用いて40 cvで溶出する。FVII含有分画をプールする。
【0334】
最終的なクロマトグラフィー段階において、伝導率を10 mS/cm未満に低下する。その後、試料をQ-セファロースカラム(140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6)に3〜5 mgタンパク質/mlゲルの濃度で適用する。次に、カラムを140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって洗浄して、およびFVIIを140 mM NaCl、15 mM CaCl2、10 mMグリシルグリシンpH 8.6によって溶出する。溶出液を10 mM CaCl2に希釈して、pHを6.8〜7.2に調節する。最後に、ツィーン-80を0.01%となるように加えて、-80℃で保存するためにpHを5.5に調節する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変種のアミノ酸配列が10位および32位でアミノ酸置換を含み、糖部分が、Glaドメイン外に存在する導入されたインビボN-グリコシル化部位に共有結合する、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するヒト第VII因子(hFVII)またはヒト第VIIa因子(hFVIIa)と比較してアミノ酸3〜15個の改変を含むアミノ酸配列を有する第VII因子(FVII)または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチド変種。
【請求項2】
10位での置換がP10Qである、請求項1記載の変種。
【請求項3】
32位での置換がK32Eである、請求項1または2に記載の変種。
【請求項4】
10位での置換がP10Qであって、32位での該置換がK32Eである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変種。
【請求項5】
変種がGlaドメインにおいて少なくとも一つのさらなるアミノ酸改変を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変種。
【請求項6】
Glaドメインにおけるさらなる改変が、33位でのアミノ酸置換を含む、請求項5記載の変種。
【請求項7】
疎水性アミノ酸残基が33位での置換によって導入される、請求項6記載の変種。
【請求項8】
置換がD33Fである、請求項7記載の変種。
【請求項9】
変種が、置換P10Q+K32E+D33Fを含む、請求項8記載の変種。
【請求項10】
Glaドメインにおけるさらなる改変が、3位と4位のあいだに少なくとも一つのアミノ酸残基の挿入を含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の変種。
【請求項11】
Glaドメインにおけるさらなる改変が、3位と4位のあいだに一つのアミノ酸残基の挿入を含む、請求項10記載の変種。
【請求項12】
疎水性アミノ酸残基が3位と4位のあいだに挿入される、請求項10または11に記載の変種。
【請求項13】
挿入がA3AYである、請求項12記載の変種。
【請求項14】
変種が、改変A3AY+P10Q+K32Eを含む、請求項13記載の変種。
【請求項15】
変種が、改変A3AY+P10Q+K32E+D33Fを含む、請求項13記載の変種。
【請求項16】
Glaドメインにおけるさらなる改変が34位でのアミノ酸置換を含む、請求項5〜15のいずれか一項に記載の変種。
【請求項17】
陰性荷電アミノ酸残基が34位での置換によって導入される、請求項16記載の変種。
【請求項18】
置換がA34Eである、請求項17記載の変種。
【請求項19】
変種が、置換P10Q+K32E+A34Eを含む、請求項18記載の変種。
【請求項20】
変種が、置換P10Q+K32E+D33F+A34Eを含む、請求項18記載の変種。
【請求項21】
変種が、改変A3AY+P10Q+K32E+A34Eを含む、請求項18記載の変種。
【請求項22】
変種が、改変A3AY+P10Q+K32E+D33F+A34Eを含む、請求項18記載の変種。
【請求項23】
Glaドメインにおけるさらなる改変が、8位、11位および28位からなる群より選択される位置での置換を含む、請求項5〜22のいずれか一項に記載の変種。
【請求項24】
28位における置換がR28FまたはR28Eである、請求項23記載の変種。
【請求項25】
残基6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位において改変がなされない、請求項1〜24のいずれか一項に記載の変種。
【請求項26】
インビボN-グリコシル化部位が、置換によって導入される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の変種。
【請求項27】
インビボN-グリコシル化部位が、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出している(本明細書の実施例1において定義される)アミノ酸残基を含む位置に導入される、請求項26記載の変種。
【請求項28】
インビボN-グリコシル化部位が、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出している(本明細書の実施例1において定義される)アミノ酸残基を含む位置に導入される、請求項27記載の変種。
【請求項29】
インビボN-グリコシル化部位が、A51N、G58N、T106N、K109N、G124N、K143N+N145T、A175T、I205S、I205T、V253N、T267N、T267N+S269T、S314N+K316S、S314N+K316T、R315N+V317S、R315N+V317T、K316N+G318S、K316N+G318T、G318N、D334Nおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項26〜28のいずれか一項に記載の変種。
【請求項30】
インビボN-グリコシル化部位が、A51N、G58N、T106N、K109N、G124N、K143N+N145T、A175T、I205T、V253N、T267N+S269T、S314N+K316T、R315N+V317T、K316N+G318T、G318N、D334Nおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項29記載の変種。
【請求項31】
インビボN-グリコシル化部位が、T106N、A175T、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項30記載の変種。
【請求項32】
一つのインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項16〜31のいずれか一項に記載の変種。
【請求項33】
二つまたはそれ以上のインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項16〜31のいずれか一項に記載の変種。
【請求項34】
二つのインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項33記載の変種。
【請求項35】
インビボN-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入されている、請求項33または34に記載の変種。
【請求項36】
インビボN-グリコシル化部位が、T106+A175T、T106N+I205T、T106N+V253N、T106N+T267N+S269T、A175T+I205T、A175T+V253N、A175T+T267N+S269T、I205T+V253N、I205T+T267N+S269TおよびV253N+T267N+S269Tからなる群より選択される置換によって導入されている、請求項35記載の変種。
【請求項37】
インビボN-グリコシル化部位が、T106N+I205T、T106N+V253N、およびI205T+T267N+S269Tからなる群より選択される置換によって導入されている、請求項36記載の変種。
【請求項38】
三つまたはそれ以上のインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項26〜37のいずれか一項に記載の変種。
【請求項39】
三つのインビボN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項38記載の変種。
【請求項40】
インビボN-グリコシル化部位が、I205T+V253N+T267N+S269TおよびT106N+I205T+V253Nからなる群より選択される置換によって導入されている、請求項38または39に記載の変種。
【請求項41】
変種が活性型である、請求項1〜40のいずれか一項に記載の変種。
【請求項42】
活性型の変種が、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも10%を有する、請求項1〜41のいずれか一項に記載の変種。
【請求項43】
活性型の変種が、本明細書に記述の「凝固アッセイ法」においてアッセイした場合にrhFVIIaの凝固活性の少なくとも10%を有する、請求項1〜42のいずれか一項に記載の変種。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれかに定義された変種をコードするヌクレオチド配列。
【請求項45】
請求項44において定義されたヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項46】
請求項44において定義されたヌクレオチド配列または請求項45において定義された発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項47】
宿主細胞が、インビボグリコシル化を行うことができるγカルボキシル化細胞である、請求項46記載の宿主細胞。
【請求項48】
請求項1〜43のいずれかに定義される変種と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項49】
医薬品として用いるための、請求項1〜43のいずれかに定義される変種または請求項48において定義される薬学的組成物。
【請求項50】
凝血形成が望ましい疾患または障害を治療するための医薬品を製造するための、請求項1〜43のいずれかにおいて定義された変種の使用。
【請求項51】
疾患または障害が、脳出血、外傷のような重度の制御されない出血、生体移植を受けている患者における出血、切除を受けている患者における出血、および静脈瘤出血を含む出血からなる群より選択される、請求項50記載の使用。
【請求項52】
疾患または障害が外傷である、請求項51記載の使用。
【請求項53】
疾患または障害が鈍的外傷である、請求項52記載の使用。
【請求項54】
疾患または障害が貫通性外傷である、請求項52記載の使用。
【請求項55】
請求項1〜43のいずれかにおいて定義される変種または請求項48において定義される薬学的組成物の有効量を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法。
【請求項56】
疾患または障害が、脳出血、外傷のような重度の制御されない出血、生体移植を受けている患者における出血、切除を受けている患者における出血、および静脈瘤出血を含む出血からなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
疾患または障害が外傷である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
疾患または障害が鈍的外傷である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
疾患または障害が貫通性外傷である、請求項57記載の方法。

【公開番号】特開2010−213706(P2010−213706A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88431(P2010−88431)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【分割の表示】特願2004−501601(P2004−501601)の分割
【原出願日】平成15年4月29日(2003.4.29)
【出願人】(509011776)バイエル ヘルスケア エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】