説明

等温検出法およびその使用

本開示は、特定の核酸配列の迅速な単一温度(等温)検出のための方法およびプローブに関する。上記方法およびプローブは、細菌およびウイルスを含む生物因子を検出するための単純な方法、ならびに任意の核酸配列上の特定の遺伝的マーカーの検出を提供する。記載される方法は、一定温度において溶液中で切断されたポリヌクレオチドプローブの量の幾何的増加を媒介するように作用する。この切断は、特定の標的ヌクレオチド配列の存在によって誘発される。同時に、上記プローブの逆相補体のフラグメントのコピー数の増加もまた、達成される。それによって、上記方法は、上記プローブの切断をモニターするか、または逆相補体ポリヌクレオチドのフラグメントの蓄積をモニターするかのいずれかによって、等温条件下で、上記標的配列を検出する目的で使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2008年1月8日に出願された米国仮出願第61/019,809号の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本開示は、核酸化学および分子遺伝学の分野に関する。より具体的には、マルチエレメントポリヌクレオチドプローブの使用に関し、生物学的サンプル中の特定の核酸配列を検出するための酵素と組み合わせて使用される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
多くの状況では、複雑な混合物の状況において、低レベルの特定の核酸配列を検出することが望ましい。例としては、医療的病原体もしくは環境的病原体の検出、または遺伝的異常を同定するための特定の対立遺伝子(gene allele)の検出が挙げられるが、これらに限定されない。全ての場合において、この目的が意図された方法は、非常に特異的でかつ非常に感度が高くなければならない。好ましい方法はまた、頑強な(robust)、比較的適用が単純な、および安価であるべきである。DNA検出もしくはRNA検出では、検出系は、単一の分子(もしくはせいぜい数個の分子)を検出するために十分感受性が高い必要があり得る。なぜなら、1個の標的配列は、広く行き渡った疾患を引き起こす可能性を有する単一の感染性因子を表し得るからである。
【0004】
特定の配列の単一の核酸分子を直接検出し得る単純な方法は、現在存在しないので、全ての現在使用されている方法は、シグナルを増幅する工程を含む。DNAは、それ自体のコピーを作製する固有の能力を有するので、細胞複製のインビボプロセスを模倣する標的配列のインビトロ複製を使用して、それによって、標的配列が必要とされる感度で同定され得るように、複雑な混合物中で多くの標的ポリヌクレオチドを増幅することが考えられる。
【0005】
大部分のDNA合成(短鎖DNA(例えば、オリゴヌクレオチド)のDNA合成を除いて)は、DNAポリメラーゼが使用される酵素的方法によって行われる。この目的を達成するために使用される、最も広く行き渡った方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;特許文献1、特許文献2および特許文献3に詳細に記載される)である。この方法は、サーマルサイクリングおよび熱安定性DNAポリメラーゼを使用することによって、標的分子の幾何的増幅を提供する。2つの相補的DNA鎖を変性する(分離する)ために、高温が使用され、次いで、低温が、上記ポリメラーゼによる開始(priming)および鎖合成を促進する。従って、PCR合成法は、3工程(各々は、別個の温度で行われる)からなる反応を使用して行われる。上記PCR生成物の検出は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を処理するTaq DNAポリメラーゼによって(Gelfand,1993)、または二本鎖DNAへの結合の債により大きな強度で蛍光を発する蛍光インターカレーター色素(fluorescent intercalating dye)を使用することによって媒介される、下流のオリゴヌクレオチドの分解を介して、リアルタイムでモニターされ得る。RNA標的の増幅および検出を可能にするPCR反応スキームの改変は、逆転写−PCR(RT−PCR)法であり、この方法は、Trends in Biotechnology,10:146−152(1992)に記載されるように、PCRおよび逆転写酵素反応の組み合わせである。
【0006】
分子診断の分野において一般に適用されるPCR法の基本は、上記標的核酸を増幅し、続いて、これら増幅された生成物の検出によって、所望のシグナルレベルを達成することである。対照的には、リガーゼ連鎖反応(LCR)は、上記プローブ自体の構造における幾何的増加によってシグナル増幅を達成する(Barany,1991)。この方法において、DNAリガーゼは、標的相補鎖の存在下で、2つのオリゴヌクレオチドを連結する。得られた、連結された形態は、第2のプライマー対に対して相補的なオリゴヌクレオチドになる。LCRの一適用例は、性行為感染症であるクラミジアの検出においてである。これは、キット(Roche Cobas,Roche Amplicorプレートキット)として市販されている。
【0007】
上記の方法における本質的な不足は、高温と低温との間での反応の反復サイクリング(例えば、PCRの場合において、テンプレート変性およびプライマーアニーリング/伸長の各サイクルを促進するための温度サイクリング)の必要性である。従って、上記反応系は、不連続相もしくはサイクルを使用して行われる。なぜなら、上記反応は、上記のような温度によって制限されるからである。従って、上記方法は、行うのにより長い時間を要する。なぜなら、各相において必要な時間が、不明確であり、同様に、装置が、インキュベーション温度を反復して変化させることを必要とするからである。温度調節において浪費した時間は、サイクル数に比例して増大する。さらに、上記プロセスは、経時的に広い範囲の温度へと正確に調節し得る高価なサーマルサイクラーの使用を要する。これは、小型化するのが困難で、連続した電力供給を要する特別な装置である。結論として、この要件は、point−of−use試験におけるPCRベースの分子診断の適用をおおかた排除した。
【0008】
この制限に応じて、上記PCRに対する単一温度(等温)等価物を開発するために、多くの努力が費やされてきた。上記等温方法は、一般に、鎖置換および鎖合成を同時達成するポリメラーゼを使用し、それによって、高温変性工程の必要性を排除することによって、上記サーマルサイクリング問題の一部を排除する。このような等温核酸増幅法の例としては、JP−B 7−114718に記載される鎖置換増幅(SDA)法、ならびに特許文献4、および特許文献5、特許文献6および特許文献7に記載される種々の改変SDA法が挙げられる。特定の核酸を増幅するための他の等温反応としては、自立式配列複製(self−sustained sequence replication)(3SR)法;特許文献8に記載される核酸配列ベースの増幅(NASBA)法;転写媒介性増幅(TMA)法;および特許文献9に記載されるQβレプリカーゼ法が挙げられる。オリゴヌクレオチドの等温酵素合成の方法は、特許文献10に記載されている。
【0009】
これら方法の反応において、ポリヌクレオチド合成(一般に、プライマーからの伸長、および/もしくは一本鎖伸長生成物へのもしくは本来の標的配列へのプライマーのアニーリング、続いて、上記プライマーからの伸長の工程を含む)は、一定温度でインキュベートされた反応混合物中で並行して起こり、それによって、適用を単純化し、反応時間を短縮する。上記種々の方法が異なっている点は、主として、これら方法がプライマー侵入(primer invasion)および従来のPCRが必要とするアニーリングの困難さをどのように解決するかという点においてである。上記等温核酸増幅法の中で、上記SDA法は、標的DNAが最終的に増幅されるシステムの例である。SDAの元の記載において、サンプル中の標的核酸配列(およびその相補鎖)は、DNAポリメラーゼおよび制限エンドヌクレアーゼそ使用して、二本鎖の置換によって増幅される。上記方法は、増幅のために4種のプライマーを必要とし、そのうちの2種は、上記制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含むように設計されるべきである。上記方法は、多量のDNA合成のための基質として、多量の改変デオキシリボヌクレオチドトリホスフェートの使用を必要とする。これら方法において使用される上記改変デオキシリボヌクレオチドトリホスフェートの例は、(α−S)デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(α位における上記ホスフェート基の酸素原子が硫黄原子(S)で置換されている)である。(α−S)デオキシリボヌクレオチドの、上記制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含む上記プライマーの新たに合成される相補鎖への組み込みは、上記エンドヌクレアーゼの切断点においてヘミホスホロチオエートを作り出す。結論として、上記制限エンドヌクレアーゼは、改変されていない鎖のみにニックを入れ(nick)、上記ニック部位の5’側の配列の伸長、および上記ニック部位の3’側への鎖の置換を促進する。しかし、上記改変デオキシリボヌクレオチドトリホスフェートの使用に関する費用は、上記反応が、例えば、遺伝子試験として慣用的に行われるべき場合に問題になる。さらに、上記改変ヌクレオチド(例えば、上記(α−S)デオキシリボヌクレオチド)の、増幅したDNAフラグメントへの組み込みは、例えば、制限エンドヌクレアーゼフラグメント長多型(RFLP)分析に供される場合に、制限エンドヌクレアーゼでの上記増幅したDNAフラグメントの切断可能性を破壊し得る。
【0010】
特許文献4に記載される改変SDA法は、RNAおよびDNAから構成されかつ、DNAが少なくとも3’末端に位置する構造を必須エレメントとして有するキメラプライマーを使用する、DNA増幅法である。特許文献11および特許文献12は、SDA反応スキームにおけるキメラDNA/RNAオリゴヌクレオチドプライマーの別の適用に関する。特許文献5に記載されるような上記改変SDA法は、3’突出末端を生成する制限酵素の使用を必要とする。特許文献6に記載されるような上記改変SDA法は、少なくとも2対のプライマーの使用を必要とする。特許文献7に記載されるような上記改変SDA法は、少なくとも2対のプライマーおよび少なくとも1種の改変デオキシリボヌクレオチドトリホスフェートの使用を必要とする。特許文献13に記載される改変SDA法は、二本鎖DNA部分の一方の鎖(その鎖は、dUTPの存在下で合成された)にニックを入れるために、ウラシルDNAグリコシラーゼおよび脱プリン部位エンドヌクレアーゼ(apurinic endonuclease)の作用を利用する。これは、ウラシルが組み込まれた位置にランダムプライミング部位(random priming site)を効率的に作り出す。このスキームにおいて、dUTP 対 dTTPの比の調節は、ニックを入れる事象の頻度を調節するために使用され得る。これら方法は、上記標的核酸の感度の高い検出が標的増幅によって達成される限りでは、操作上PCRに類似していると考えられ得る。
【0011】
DNA標的の等温増幅へのSDAアプローチの別の適用は、特許文献14において記載されるLAMP法である。この方法は、中間のニックを入れる工程の必要性なしに、鎖置換ポリメラーゼによって増幅され得るループ状末端を有する中間体を形成するために、6つの配列を認識する4種のプライマーのセットを使用する。このスキームにおいて、その本来の標的配列は、種々の長さのコンカテマー生成物の不均質混合物の形態で増幅される。
【0012】
「ローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification)」(RCA)反応スキームにおける等温条件下での円形状にできるもしくは「南京錠」プローブの増幅は、SDAの別の適用である(Molecular Diagnosis,6:141−150)。上記環状プローブに相補的な配列を有する複数のプライマーを使用することによって、プライマーを、上記ポリメラーゼによって生成される置換された鎖に結合させることを介して、分枝状の生成物が形成される。この「分岐した」反応スキームにおいて、生成されるDNAの量は、幾何的に増大する。RCAは、上記で議論される他のSDAスキームとは異なる。なぜなら、上記反応の生成物は、上記標的DNAではなく、上記環状プローブの配列もしくはこの配列に対して相補的な配列を有するDNAの広がりのコンカテマーアレイであるからである。
【0013】
これらSDAストラテジーの商業化の例としては、種々の細菌病原体およびウイルス病原体を検出するために、LAMP技術を利用する診断アッセイを提供するEiken Chemical Co.(日本)の例が挙げられる。さらに、Becton−Dicksonは、制限エンドヌクレアーゼ媒介性サイクリングストラテジーでのSDA技術に基づいて、Chlamydia trachomatisおよびNeisseria gonorrhoeaeの診断のための分子診断プラットフォームを提供する。
【0014】
等温増幅適用におけるサイクリングを容易にするためにニックを入れることを利用する別の方法は、Proceedings of the National Academy of Sciences,100:4504−4509(2002)、特許文献15および特許文献16ならびにPCT国際特許出願PCT/US02/22657(特許文献17として公開)において記載される方法である。この場合、ニックを入れること(核酸二重鎖の一方の鎖のみの切断)が、最初のプライマー伸長工程から形成される生成物の一方の鎖のみを切断し得る変異した制限エンドヌクレアーゼの使用によって達成される。一実施形態において、ニックを入れることおよび伸長のその後のラウンドは、短いオリゴヌクレオチドの直線状増幅を生じる。別の実施形態において、(指数関数的増幅反応/EXPARといわれる)最初のプライマー伸長工程に使用されるテンプレートは、上記プライマ配列のタンデム反復を含む。その結果、1つのテンプレート鎖から生成された生成物は、さらなるテンプレート鎖に結合しかつさらなる伸長およびニックを入れる反応のためのプライマーとして作用することができ、従って、存在するオリゴヌクレオチドの量において幾何的増加を生じる。上記SDA法とは対照的に、この反応は、上記ニックを入れる反応から生成される生成物が、鎖置換DNAポリメラーゼの必要性なしに、上記テンプレート鎖から解離するに十分高い温度において、行われる。しかし、科学的刊行物(Proceedings of the National Academy of Sciences,100:4504−4509(2002))において、DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有するものが使用される。
【0015】
サーマルサイクリングをPCRから排除するという問題に適用された別のアプローチは、上記テンプレートDNAの熱変性なしに、プライマー結合および伸長を可能にするための、種々のDNA結合タンパク質の使用である。ヘリカーゼタンパク質は、一本鎖結合タンパク質の存在下および非存在下の両方で、二本鎖DNAの鎖を分離して、プライマー結合、およびその後の伸長を可能にするために使用されてきた。この方法は、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)法(米国特許出願公開第2004/0058378号および同第2006/0154286号)と称される。リコンビナーゼタンパク質はまた、標的二本鎖核酸へのプライマー結合の連続ラウンドを可能にするために、ほかでも使用されてきた(PLOS Biology,4:1115−1121ならびに米国特許出願公開第2007/0054296号、同第2005/0112631号、および同第2003/0219792号)。
【0016】
HDA技術は、New England Biolabs(USA)から入手可能な市販のIsoAmp II Universal HDAキットの基礎である。現在、上記技術は、70〜120ヌクレオチド長の範囲における標的にのみ適用可能である。
【0017】
標的核酸の等温増幅を達成する別のアプローチは、存在する適切なプロモーター配列とともに、所定の二本鎖DNAテンプレートの複数のRNA転写物を生成し得るRNAポリメラーゼの活性を活用することである。これは、自立式配列複製(3SR)方法、特許文献8に記載されるような上記核酸配列ベースの増幅(NASBA)法、および転写媒介性増幅(TMA)法の基礎である。特許文献9に記載されるような上記Qβレプリカーゼ法はまた、概念的に類似であるが、RNAポリメラーゼ/鎖置換活性を有するQβレプリカーゼタンパク質のRNAポリメラーゼ活性を活用する。これら方法は、特定の標的配列の複数のコピーを生成するために使用され得る一方で、Nucleic Acids Research,29:54−61(2001)に記載される改変された方法において例示されるように、上記標的核酸に関連しないレセプター転写物の複数のコピーを生成するために使用され得る。
【0018】
上記方法は、検出を可能にするに十分な量の目的の標的核酸を増幅することによって生成する。いったん十分な標的が利用可能であると、多くのストラテジーが、検出可能なシグナルを生成するために使用され得る。過去は、放射活性もしくは免疫標識、免疫蛍光標識を使用することによって、またはゲル電気泳動によって最も一般に達成されていた。より簡潔な開発は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET;Kidwell 1994)の使用である。FRETは、量子効果を利用する。それによって、蛍光分子は、第2の分子(クエンチャーとして既知)に近接してある場合にクエンチされる。FRETの1つの初期の手段は、分子ビーコン(Tyagi and Kramer,1996;Broude 2005による総説)を用いるものであった。従って、ステム−ループオリゴヌクレオチドは、上記蛍光団および上記クエンチャーが上記分子の反対の末端にある場合に使用されるが、ヘアピンステムにわたって塩基対合することによって一緒にされる。特定の標的配列の存在下で、上記ステムは、優先的な塩基対合によって混乱させられ、その構造変化は、上記蛍光団および上記クエンチャーを分離し、それによって蛍光を増大させる。
【0019】
FRETの断然最も一般に使用される適用は、TaqManシステム(Livak,1998)であり、このシステムは、Gelfandのリアルタイム増幅/検出法に対する向上である。リアルタイムPCRもしくは定量的PCRとして一般に公知のこの方法において、上記結合した二重標識プローブが、上記PCRの伸長相の間に、Taq DNAポリメラーゼ(もしくは等価物)の上記エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。この要件は、非等温増幅系にTaqMan技術の適用可能性を制限する。等温方法は、エキソヌクレアーゼ活性ではなく置換活性を有するポリメラーゼを使用する(上記を参照のこと)。結果として、これらポリメラーゼは、TaqManプローブを切断しないので、検出可能なシグナルを生成しない。しかし、FRETの原理を利用する多くの等温核酸検出ストラテジーは、記録されてきた。
【0020】
リアルタイムPCRのための機器は、通常、常時もしくは周期的蛍光モニタリングと、サーマルサイクリングとを組み合わせている。この種の反応において、各伸長工程は、単一の蛍光ユニットを放出し、上記方法の重要な利点は、定量化のために使用され得ることである。しかし、このような機器は、効果でありかつ複雑である。
【0021】
これら方法の全てが共通して持っていることは、これら方法が蛍光ベースの検出および標的増幅の組み合わせを使用することによって、適切なシグナルレベルを達成することである。2つの概念的に異なるアプローチは、記載される方法において具現化されている。第1のアプローチは、上記標的配列を増幅し、次いで、上記増幅されたDNAを検出し、第2のアプローチは、残りの標的とは独立して増幅される分子の別個のセットからシグナルを生成する一連の事象を開始するためのトリガーとして上記標的を使用する。
【0022】
Analytical Biochemistry,333:246−255(2004)、ならびに米国特許第4,876,187号および同第5,011,769号は、蛍光団およびクエンチャーで標識されたキメラDNA/RNAプローブとのハイブリダイゼーションによって、標的核酸を検出するためのサイクリングプローブ技術の適用を記載する。上記プロセスは、RNAse Hを使用することによって切断を達成する。上記標的への上記プローブの結合は、キメラ残基においてRNA/DNA二重鎖を生成し、キメラ残基は、RNAse Hの基質である。上記プローブのRNA部分の、RNAse Hによる加水分解は、蛍光シグナルの生成を生じ、上記プローブが上記標的から解離することを可能にし、このことは、第2のプローブがアニーリングし、別のラウンドのシグナル生成を誘発することを可能にする。この結果は、特定の核酸標的の存在によって触媒される反応における上記プローブの分解から生じる直線状のシグナル増幅である。類似のストラテジーはまた、Clinical Chemistry,52:1855−1863(2006)に記載されるように、PCR後遺伝子タイプ分けストラテジーとして使用されてきた。この反応において、特定の標的核酸配列の存在は、三叉路構造(上記標的核酸;ホスホロチオエート改変制限酵素認識部位を含むアンカーオリゴヌクレオチド;およびレポーターオリゴヌクレオチドを含む)の形成をもたらし、上記レポーターオリゴヌクレオチドは、上記制限エンドヌクレアーゼ認識部位の領域において上記アンカーオリゴヌクレオチドに部分的に相補的であり、蛍光団およびクエンチャーを処理する。上記レポーターおよびアンカーと上記標的との結合は、上記相補的な領域の結合を可能にし、続いて、このことは、制限酵素認識部位を二本鎖にし、上記レポーターオリゴヌクレオチドが、適切な制限エンドヌクレアーゼによって切断されるのを可能にする。上記切断されたレポーターオリゴヌクレオチドは、次いで、上記複合体から解離し得、新たなレポーターオリゴヌクレオチドの結合を可能にする。
【0023】
米国特許出願公開第2004/0101893号は、脱プリン部位エンドヌクレアーゼを使用して、上記標的ヌクレオチドの隣接する領域にアニールする2つのオリゴヌクレオチドに由来する無塩基部位に似ている構造を作り出すことによって、蛍光レポーターを蛍光プローブの一方の末端から切断する。このスキームにおいて、上記プローブの切断は、実質的により短いフラグメントの生成を生じず、よって、本明細書で記載される他の反応スキームについて起こるように、上記標的からのプローブの解離が付随しない。特定の核酸配列の存在を検出するためのFRETベースの等温シグナル増幅の別の方法は、Nature Protocols,1:554−558(2006)に記載されているものである。この方法は、「検出(sensing)」オリゴヌクレオチドを使用し、このオリゴヌクレオチドは、両方の末端においてヘアピンを形成する。標的核酸の存在は、このオリゴヌクレオチドの構造を変化させ、一方の末端が制限酵素FokIによって切断されることを可能にする。次いで、得られた生成物は、第2の「燃料(fuel)」オリゴヌクレオチドの一部の消化を触媒し得る。このオリゴヌクレオチドは、蛍光団およびクエンチャーを分離し(シグナルの増加を与える)、そのオリゴヌクレオチドがFokIに結合し、別の「燃料」オリゴヌクレオチドの分解を触媒する(従って、上記反応を拡げる)ことを可能にする。
【0024】
2つのさらなる方法(これらは、「可視性核酸検出」についてのストラテジーに関する)は、Angewandte Chemie International Edition,45:2879−2883(2006)およびOrganic and Biomolecular Chemistry,5:223−225(2007)に記録されている。これらの場合において、発光反応もしくは比色反応は、FRETベースのシステムを使用して蛍光シグナルを生成するのではなく、標的オリゴヌクレオチドの存在によって開始される。第1の方法において、「分子ビーコン」タイプのヘアピンmRNAオリゴヌクレオチドが使用され、これは、ルシフェラーゼもしくはβ−ガラクトシダーゼオープンリーディングフレームをその3’部分に、リボソーム結合部位をそのステム部分に、および上記標的核酸に相補的なループ部分を有する。上記標的の存在下で、上記ヘアピンは開いており、上記リボソーム結合部位を上記相補鎖から外し、上記ルシフェラーゼ遺伝子の翻訳を可能にし、従って、発光シグナルもしくは比色シグナルを生成する。RNAse Hは、上記標的核酸の存在下で上記ヘアピンの一部を分解するために使用される。この加水分解は、構成的に遊離のリボソーム結合部位を生じ、上記標的核酸のリサイクリングを可能にする。第2の方法において、上記標的核酸の存在は、ペルオキシダーゼ活性を有するDNAザイムの逆相補体(reversecomplement)の複数のコピーを含む環状プローブからのローリングサイクル増幅(RCA)反応を開始する。従って、上記標的の存在は、上記DNAザイムの複数のコピーを生成し、これは、次いで、比色反応を触媒する。
【0025】
多くの等温核酸増幅/検出ストラテジーが記載されてきたが、DNA診断の分野はなお、ポリメラーゼ連鎖反応によって普及される。この1つの理由は、多くの等温選択肢が、望ましい感度、および特異性を与えられないことである。他の方法は、概念的に複雑であり、長さの最適化を必要とし得、いくつかの場合においては、標準的供給源から容易に入手可能ではない酵素を使用する。
【0026】
そこで、標的核酸増幅の必要性なくして、単一の等温反応においてシグナル増幅および検出を提供し得る検出システムの必要性がある。
【0027】
上記の必要性のうちの1つ以上を満たすのを助ける(go some way towards)か、または現在利用可能な技術に固有のもしくはこの技術に存在する欠点のうちの少なくとも1つを克服もしくは改善するか、または既存のアプローチより有用な選択肢を少なくとも提供することは、本実施形態の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第4,683,195号明細書
【特許文献2】米国特許第4,683,202号明細書
【特許文献3】米国特許第4,800,159号明細書
【特許文献4】米国特許第5,824,517号明細書
【特許文献5】国際公開第99/09211号
【特許文献6】国際公開第95/25180号
【特許文献7】国際公開第99/49081号
【特許文献8】特許第2650159号公報
【特許文献9】特許第2710159号公報
【特許文献10】米国特許第5,916,777号明細書
【特許文献11】米国特許第7,056,671号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0073081号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/0136417号明細書
【特許文献14】国際公開第00/28082号
【特許文献15】米国特許第7,112,423号明細書
【特許文献16】米国特許第6,884,586号明細書
【特許文献17】国際公開第03/008622号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
(要旨)
記載される方法は、一定温度において溶液中で切断されたポリヌクレオチドプローブの量の幾何的増加を媒介するように作用する。この切断は、特定の標的ヌクレオチド配列の存在によって誘発される。同時に、上記プローブの逆相補体のフラグメントのコピー数の増加もまた、達成される。それによって、上記方法は、上記プローブの切断をモニターするか、または逆相補体ポリヌクレオチドのフラグメントの蓄積をモニターするかのいずれかによって、等温条件下で、上記標的配列を検出する目的で使用され得る。
【0030】
よって、第1の局面において、本実施形態は、サンプル中の標的核酸を検出するための方法を提供し、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、ここで上記一本鎖標的核酸は、遊離の3’末端を有する、工程、
b)以下を含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程:
i)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられている少なくとも2つの標的結合ドメイン、または
ii)標的結合ドメイン、およびヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた上記標的核酸の少なくとも一部のコピー、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合された上記標的核酸を結合し、かつ上記モノマープローブの逆相補体を合成するポリメラーゼとを接触させる工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、それから二重鎖プローブ中の、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するか、もしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、ならびに
f)上記プローブの切断もしくは分解を検出する工程、
を包含する。
【0031】
さらなる実施形態が提供され、ここで上記モノマープローブの逆相補体は、少なくとも1コピーの標的核酸および少なくとも1コピーの標的結合ドメインを含む。
【0032】
さらなる実施形態が提供され、ここで上記切断部位の幾何は、切断生成物における対合されたヌクレオシドの数が、減少させるようにされている。
【0033】
さらなる実施形態が提供され、ここで上記プローブの切断もしくは分解は、蛍光、比色法、免疫学的方法、電気泳動法、もしくはハイブリダイゼーション法によって検出される。
【0034】
追加が提供され、ここで上記プローブの切断もしくは分解は、ナノ孔技術を使用して検出される。
【0035】
以下の実施形態のうちのいずれかは、上記方法の局面のうちのいずれかに適用され得る。
【0036】
好ましい実施形態において、上記プローブの切断もしくは分解は、検出可能な標識によって生成されるシグナルの変化を生じる。あるいは、上記プローブの切断もしくは分解は、任意の他の手段(例えば、電気泳動もしくはナノ孔技術)による構造変化の検出を可能にする。いずれにしても、シグナルの変化もしくは構造変化の検出される存在は、上記サンプル中に上記標的核酸が存在することを示す。
【0037】
一実施形態において、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基(masking group or groups)を有し、ここで上記検出可能な標識のシグナルは、上記モノマープローブがインタクトな場合に、上記マスキング基によって低下させられるかもしくは検出不能にされる。言い換えると、上記検出可能な標識のシグナルは、上記モノマープローブが切断される場合に、上記標識から上記マスキング基を分離することによって増強される。
【0038】
別の実施形態において、上記モノマープローブは、検出可能な標識および別の基を有し、ここで上記検出可能な標識のシグナルは、上記モノマープローブが切断される場合に上記第2の基によって低下させられる。
【0039】
別の実施形態において、上記モノマープローブは、2種以上の検出可能な標識を有し、ここでシグナルの組み合わせは、上記モノマープローブが切断される場合に変化する。
【0040】
別の実施形態において、上記モノマープローブは、上記プローブの切断が他の化学(酵素的標識、免疫標識、免疫蛍光標識が挙げられるが、これらに限定されない)によって検出可能な様式で、上記プローブの特徴を変化させる方法で、二重標識される。
【0041】
別の実施形態において、上記モノマープローブの切断は、上記の手段のうちのいずれかによって検出されるレポーターオリゴヌクレオチドの生成によって検出される。
【0042】
別の実施形態において、上記モノマープローブの切断は、例えば、ゲル電気泳動、核酸ハイブリダイゼーションもしくはナノ孔技術が挙げられるが、これらに限定されない方法によって、直接検出される。
【0043】
別の実施形態において、上記反応の進行は、上記反応において生成される上記プローブの逆相補体のフラグメントに対応するオリゴヌクレオチドの蓄積をモニターすることによって追跡され得、このモニタリングは、多くの代替の方法論および化学によって達成され得る。
【0044】
一実施形態において、上記一本鎖標的核酸は、上記サンプルに添加される。
【0045】
一実施形態において、上記一本鎖標的核酸は、第2の標的核酸の存在下で生成される。一実施形態において、上記標的核酸の配列および上記第2の標的核酸の配列は、同じである。代替の実施形態において、上記標的核酸の配列および上記第2の標的核酸の配列は、異なる。
【0046】
好ましくは、上記一本鎖標的核酸は、上記第2の標的核酸へのプライマーの結合によって生成される。
【0047】
好ましくは、上記プライマーは、上記第2の標的核酸への結合の際に切断されやすい。
【0048】
好ましい実施形態において、上記標的核酸もしくは上記第2の標的核酸は、検出もしくは分析されるべき生物中に存在し、そして上記ヌクレオチド配列は、検出もしくは分析されるべき実態を示し、ここで上記実態は、生物、多型または分離物中もしくは他の配列の混合物中の任意の特定の配列を含む。好ましい実施形態において、上記サンプルは、任意の生物学的物質(血液、尿、糞便、唾液、リンパ液、土壌、水、細菌、ウイルス、寄生生物、もしくは食品を含むサンプルが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。上記標的核酸は、上記サンプルに対して内因性(例えば、ヒト血液サンプル中のヒトゲノムDNA)であるか、もしくは外因性(例えば、血液、土壌、水もしくは食品サンプル中の細菌DNAもしくはウイルスDNA)であり得る。
【0049】
一実施形態において、上記標的結合ドメインは、上記標的核酸配列の少なくとも一部の逆相補体を含む。
【0050】
上記反応が上記方法において起こっている限りにおいて、上記方法は、
a)標的核酸配列を含む一本鎖標的核酸分子を含むサンプルを提供する工程であって、上記標的核酸分子は、工程(b)において上記プローブと接触させる場合に、上記核酸がエンドヌクレアーゼによって切断されて、遊離の3’末端を生成し得るように、遊離の3’末端もしくは切断部位を有する、工程、
b)以下を含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程:
i)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた少なくとも2つの標的結合ドメイン、
ii)標的結合ドメイン、およびヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた上記標的核酸の少なくとも一部のコピー、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを、上記標的結合ドメインが上記一本鎖標的核酸配列に結合するように接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させて、それによって、上記モノマープローブの逆相補体を、上記標的核酸分子の3’末端から合成する工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、それから二重鎖プローブ中の、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するか、または上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程であって、ここで上記モノマープローブおよび上記合成された逆相補体を分離して、上記標的結合ドメインの少なくとも2つのコピーおよび上記標的核酸配列の少なくとも2つのコピーを露出する工程、
f)上記標的結合ドメインが標的核酸配列に結合することを可能にする工程、
g)上記サンプルを維持して、上記標的結合ドメインおよび標的核酸配列のさらなるコピーを露出するために工程d)およびe)の反復を、ならびに必要とされる場合、検出可能なシグナルを生成するために工程f)およびg)の反復を可能にする工程、
h)上記プロセスを通じて連続的に、もしくは上記プロセスが完了した後に、上記切断を測定するかもしくは検出する工程、
を包含することが理解されるべきである。
【0051】
上記パラグラフb)において特定された上記プローブの設計に依存して、工程e)が、上記切断されたモノマープローブからの上記標的結合ドメインの少なくとも2コピーおよび上記モノマープローブの切断された逆相補体からの標的核酸配列の少なくとも2コピーを露出するか(例えば、図1を参照のこと)、または代わりに、工程e)が、上記標的結合ドメインの1コピーおよび上記切断されたモノマープローブからの内因性標的の1コピーを露出する(例えば、図6を参照のこと)ことが理解されるべきである。
【0052】
種々の実施形態において、上記工程a)〜h)は、連続してもしくは同時に行われる。
【0053】
上記ヌクレアーゼ切断エレメントの切断、もしくは上記分解されやすいドメインは、多くの方法によって検出され得る、上記プローブにおける構造変化をもたらすことは明らかである。
【0054】
一実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖(上記モノマー核酸配列成分)を含み、上記ヌクレアーゼは、制限エンドヌクレアーゼである。
【0055】
別の実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、2つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖(上記モノマー核酸配列成分)を含み、上記ヌクレアーゼは、1種以上の制限エンドヌクレアーゼである。より好ましくは、上記認識部位は、上記標的結合ドメインおよび上記ヌクレアーゼ切断ドメインの接合点のうちの一方もしくは両方に位置する。より好ましくは、上記制限エンドヌクレアーゼ切断部位突出部は、上記2つの鎖の解離速度が増強されるように、上記切断されたポリヌクレオチドの融解温度を低下させるように配置される。
【0056】
別の局面において、サンプル中の標的核酸のコピー数を増大させるための方法が提供され、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、3’末端を有する、工程、
b)上記のようにモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブとを、上記標的結合ドメインが、上記一本鎖標的核酸配列に結合するように接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させ、それによって、上記モノマープローブの逆相補体を、上記標的核酸分子の3’末端から合成する工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、それから二重鎖プローブ中の、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するか、もしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、
f)上記サンプルを維持して、上記標的結合ドメインおよび標的核酸配列のさらなるコピーを露出するために、工程d)およびe)の反復を可能にし、それによって、上記標的核酸配列の所望の量を露出する工程、
を包含する。
【0057】
一実施形態において、上記モノマープローブは環状である。
【0058】
別の実施形態において、上記モノマープローブは直線状である。好ましくは、上記標的結合ドメインのうちの一方は、5’末端もしくは3’末端に位置している。より好ましくは、上記標的結合ドメインのうちの一方は、5’末端に位置し、上記標的結合ドメインのうちの一方は、3’末端に位置する。
【0059】
一実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖(上記モノマー核酸配列成分)であり、それによって、その相補体に結合した場合、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を形成する。
【0060】
一実施形態において、上記標的核酸がDNAである場合、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、RNAを含む。
【0061】
一実施形態において、上記検出可能な標識は、蛍光団であり、上記マスキング基は、十分近位にある場合、上記蛍光団の蛍光をクエンチし得るクエンチャーである。
【0062】
他の実施形態において、上記検出可能な標識は、免疫標識、免疫蛍光標識もしくはゲル電気泳動を使用するが、切断を検出するための任意の方法が使用され得ることは、明らかである。
【0063】
他の実施形態において、切断は、別個の方法(例えば、ゲル電気泳動もしくはナノ孔技術)または上記分子における変化を可視化し得る任意のこのような方法を使用して検出される。
【0064】
特に好ましい実施形態において、上記方法は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた少なくとも2つの標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供し、上記モノマープローブは、蛍光団およびクエンチャーを有する。
【0065】
好ましくは、上記蛍光団は、上記切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインに対して5’側に位置し、上記クエンチャーは、上記切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインに対して3’側に位置するか、またはその逆も同様である。
【0066】
別の局面において、サンプル中の標的核酸を検出するための方法が提供され、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、遊離の3’末端を有する工程、
b)モノマーのポリヌクレオチドプローブを上記のように提供する工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させる工程であって、上記ポリメラーゼは、上記モノマープローブの逆相補体を、上記標的核酸分子の3’末端から合成し得、上記逆相補体は、標的配列ドメインの少なくとも1コピーおよび標的結合ドメインの少なくとも1コピーを含む工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するか、または上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、ならびに
f)上記プロセスを通じて連続的に、もしくは上記プロセスが完了した後に、上記切断を測定するかもしくは検出する工程、
を包含する。
【0067】
好ましくは、上記標的結合ドメインは、上記標的核酸配列の少なくとも一部の逆相補体を含む。
【0068】
上記標的配列ドメインは、上記標的核酸配列の少なくとも一部を含む。
【0069】
別の局面において、サンプル中の標的核酸のコピー数を増大させるための方法が提供され、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、遊離の3’末端を有する工程、
b)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって少なくとも1個の標的配列ドメインから隔てられている、少なくとも1個の標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程であって、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有し、ここで上記検出可能な標識のシグナルは、上記モノマープローブがインタクトである場合に、上記マスキング基によって低下させられるかもしくは検出不能にされる工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブとを、上記標的結合ドメインが上記一本鎖標的核酸配列に結合するように接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させ、それによって、上記モノマープローブの逆相補体を上記標的核酸分子の3’末端から合成する工程であって、上記逆相補体は、標的配列ドメインの少なくとも1コピーおよび標的結合ドメインの少なくとも1コピーを含む、工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するかもしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、
f)上記サンプルを維持して、上記標的結合ドメインおよび標的配列のさらなるコピーを露出するために、工程d)およびe)の反復を可能にし、それによって、上記標的核酸配列の所望の量を露出する工程、
を包含する。
【0070】
なお別の局面において、上記方法は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって、少なくとも1個の標的配列ドメインから隔てられている、少なくとも1個の標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供し、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有する。
【0071】
別の局面において、上記方法は、標的核酸の検出において、上記のようにモノマーのポリヌクレオチドプローブの使用を提供する。
【0072】
さらなる局面において、本発明の方法は、1種以上の添加剤、癇性化剤、賦形剤、もしくは安定化剤とともに、プローブを含む組成物を提供する。
【0073】
好ましくは、上記組成物は、以下を含む群のうちの1種以上をさらに含む:
ヌクレアーゼ;
エキソヌクレアーゼ;
鎖置換活性を有するポリメラーゼ;
上記ヌクレアーゼの活性を活性化させるかもしくは増大させるための化合物、補因子もしくは補酵素;
上記エキソヌクレアーゼの活性を活性化させるかもしくは増大させるための化合物、補因子もしくは補酵素;
上記ポリメラーゼの活性を活性化させるかもしくは増大させるための基質、化合物、補因子もしくは補酵素。
【0074】
別の局面において、本発明の方法は、サンプル中の標的核酸を検出するためのキットを提供し、上記キットは、一定量のモノマープローブ、一定量のヌクレアーゼ、および一定量の鎖分離活性を、上記プローブ、上記ヌクレアーゼ、および上記鎖分離活性と、上記サンプルとを接触させる工程についての説明書とともに含む。
【0075】
一実施形態において、上記キットは、プライマーをさらに含み、好ましくは、上記プライマーは、本明細書で記載されるように、ダイマーオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0076】
本明細書において、特許明細書、他の外部文書、もしくは他の情報源に対して言及がなされる場合、このことは、一般に、上記方法の盗聴を議論するための状況を提供する目的である。別段具体的に示されなければ、このような外部文書への言及は、このような文書、もしくはこのような情報源が、いずれの管轄においても(in any jurisdiction)先行技術であるか、または当該分野の最も一般的な知識の一部を形成するという承認として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
添付の図面に対する言及がなされ得る。
【図1】図1は、例示的な制限エンドヌクレアーゼ部位とともに、標識されていないタンデム反復制限酵素促進(TR−REF)プローブの主要なエレメントを示す模式図である。このプローブを使用する方法は、少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼおよび上記反応を触媒スルポリメラーゼに依存する。連鎖反応の1回の繰り返しに関与する段階が示される。
【図2】図2は、例示的な制限エンドヌクレアーゼ部位とともに、標識されたタンデム反復制限酵素促進(TR−REF)プローブの主要エレメントを示す模式図である。このプローブを使用する方法は、少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼおよび上記反応を触媒するポリメラーゼに依存する。連鎖反応の1回の繰り返しに関与する段階が示される。
【図3】図3は、上記反応の間に上記標的核酸から生成された逆相補体配列とともに、例示的なタンデム反復制限酵素促進(TR−REF)プローブの配列配置を示す模式図である。
【図4】図4は、本明細書で実施例1に記載されるように、TR−REF反応におけるFAM蛍光シグナルの生成 対 時間を示すグラフである。
【図5】図5は、外来のヒトゲノムDNAの存在下で、本明細書で実施例1に記載されるように、TR−REF反応におけるFAM蛍光シグナルの生成 対 時間を示すグラフである。
【図6】図6は、標識されていない反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)プローブの主要エレメントを示す模式図である。このプローブを使用する方法は、少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼおよび上記反応を触媒するポリメラーゼに依存する。上記反応の1回の繰り返しに関与する段階が示される。
【図7】図7は、標識された反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)プローブの主要なエレメントを示す模式図である。このプローブを使用する方法は、少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼおよび上記反応を触媒するポリメラーゼに依存する。上記反応の1回の繰り返しに関与する段階が示される。
【0078】
上記方法は、広く上記に記載されるとおりであるが、上記方法がこれに限定されないだけでなく、以下の説明が例を与えるその実施形態を含むことが、当業者によって認識される。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(詳細な説明)
上記のように、一局面において、本発明の方法は、標的核酸を検出するための等温検出法に関し、ここで上記方法は、核酸プローブに結合した検出可能な標識からのシグナルの上記標的核酸依存性増幅に依存する。ここで、シグナル増幅は、標的核酸の存在の結果として起こる。
【0080】
概観において、シグナル増幅は、標識したモノマープローブを使用して達成され、上記標識したモノマープローブの少なくとも一部が、上記標的核酸とハイブリダイズし得る。これは、本明細書で標的結合領域もしくは標的結合ドメインといわれる。プローブおよび標的核酸配列のハイブリダイゼーションは、上記モノマープローブの逆相補体の合成を開始し得る二重鎖を形成し、続いて、ヌクレアーゼによって切断され得るヌクレアーゼ切断エレメントを生成する。上記ヌクレアーゼ切断エレメントの切断は、検出可能な標識の、上記検出可能な標識から上記シグナルを低下させ得るかもしくは検出不能にし得るマスキング基からの分離を最終的にもたらす。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記切断エレメントの切断はまた、最終的に、上記プローブもしくは上記合成された逆相補体内に存在する少なくとも1つのさらなる標的核酸配列を現し、上記標的核酸配列自体は、さらなるプローブ分子とハイブリダイズし得、それによって、さらなるプローブ:標的核酸配列二重鎖の形成がもたらされる。これらさらなる二重鎖の各々は、上記ヌクレアーゼによって切断され得るヌクレアーゼ切断エレメントを含む上記モノマープローブの逆相補体の合成を開始し得る。繰り返すと、切断は、シグナルの幾何的増幅が達成されるように、マスキング基からのさらなる標識の分離、シグナル放出、上記さらなるプローブ分子内に存在するさらなる標的核酸配列の露出などをもたらす。
【0082】
次いで、基本的に、上記標的核酸は、標識およびマスキング基の分離およびシグナルの結果的な放出のための触媒と考えられ得る。
【0083】
一実施形態において、上記方法の上記モノマープローブは、上記標的核酸に結合し得る配列の少なくとも2コピー、好ましくは、上記標的核酸配列の少なくとも一部の逆相補体を含む。当業者によって認識されるように、合成用のテンプレートとして使用される場合、そのように生成された上記逆相補体は、上記標的核酸配列の少なくとも一部、もしくは標的結合ドメインに結合し得る配列を含む。この好ましい実施形態は、本明細書でタンデム反復制限酵素促進(TR−REF)連鎖反応といわれ、実施例1に本明細書で詳細に記載される。
【0084】
別の実施形態において、上記方法の上記モノマープローブは、上記標的核酸配列の1つ以上のコピーまたは上記プローブの標的結合領域にハイブリダイズし得る配列(以下では固有の標的もといわれる)を含む。上記プローブがインタクトである場合、これら固有の標的は、プライマー伸長を開始できず、上記ヌクレアーゼ切断ドメインの切断もしくは上記分解されやすいドメインの分解の際にのみプライマー伸長を開始することができる。一実施形態において、少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼが使用される。この第2の好ましい実施形態は、本明細書で反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)連鎖反応といわれ、実施例2により詳細に記載されている。
【0085】
いったん、検出されるべき標的核酸(上記IRC−REFプローブもしくは上記IRC−REFプローブの逆相補体に存在する固有のコピーから区別するための「外来の」標的配列と考えられ得る)の存在によって誘発されると、上記モノマープローブの逆相補体の合成は、上記ヌクレアーゼ切断ドメインにおいて少なくとも1種のヌクレアーゼ部位(例えば、制限エンドヌクレアーゼ部位)を生成するか、または上記分解されやすいドメインを分解されやすくする。固有の標的の少なくとも2コピーを含む上記モノマープローブもしくはその逆相補体を含むように設計することによって、シグナルの幾何的増幅(倍加もしくは3倍加)は、上記反応の各反復において達成され得る。
【0086】
連鎖反応へのトリガーは、上記プローブの標的結合ドメインと、上記標的DNAとの間の標的:プローブハイブリッドの形成を概念的に説明し得、それによって、ポリメラーゼによる伸長のためのプライマーを作り出す。
【0087】
種々の実施形態において、検出可能なシグナルをもたらす構造変化は、上記ヌクレアーゼ活性によって切断事象の結果として直接的に、または例えば、上記切断事象によって可能にされる上記モノマープローブの編成の結果として間接的に、起こり得る。例えば、このような間接的分離は、エキソヌクレアーゼによる上記プローブの一部のエキソヌクレアーゼ分解(exonucleolytic degradation)を含み得る。上記分離が直接的であるか間接的であるかは、主に、上記切断エレメント、上記マスキング基および上記プローブ内の標識の相対的位置の機能である。
【0088】
好ましい実施形態において、1つより多い制限エンドヌクレアーゼ部位は、切断が上記切断生成物の対合した領域の短縮を生じ、よって、それらの融解温度(Tm)を低下させ、それによって、次いで、上記反応の次のサイクルにおいて使用され得る一本鎖ポリヌクレオチドの再生を補助するように、上記切断エレメント内で配置される。
【0089】
他の実施形態において、上記切断は、上記モノマープローブとは無関係に種々の手段によって検出され得るレポーターオリゴヌクレオチドの作出をもたらし得る。
【0090】
標的DNAは、検出前に一本鎖にされるべきであり、それによって、主に、存在する任意のヌクレアーゼの作用から保護されるべきである。しかし、上記標的染色体上の他の部位におけるエンドヌクレアーゼ活性は、上記方法に対して有害ではない。エキソヌクレアーゼ活性は、上記標的に隣接している相補的PNAブロッカーによって最小限にされ得る。この様式でのPNAの使用は、PNAが二重鎖DNAの鎖侵入を引き起こすことが公知であるという点で二重の機能を有し、それによって、DNAの一本鎖領域を作り出しかつ安定化する(Pefferら,1993)。
【0091】
本発明の方法の直線状プローブを使用すると、ブロッカーは、いくつかの実施形態において、誘発されていないプローブ上のエキソヌクレアーゼ活性もしくは他の分解を妨げるために使用され得る。これらは、DNAの任意の改変形態(アミノ連結、チオール連結、3’−3’連結、5’−5’連結、ヌクレオシドアナログ、スペーサー、または5’末端改変もしくは3’末端改変(脱リン酸化を含む)を含む)であり得る。さらに、上記末端は、改変DNAの短い相補鎖でブロックされ得るか、もしくは結合タンパク質によってブロックされ得る。当然のことながら、伸長に利用される末端が、ポリメラーゼ活性を阻害するいかなる方法によってもブロックされるべきでないことが認識される。
【0092】
よって、第1の局面において、サンプル中の標的核酸の検出のための方法が提供され、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、遊離の3’末端を有する工程、
b)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた少なくとも2つの標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程であって、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有し、ここで上記検出可能な標識のシグナルは、上記モノマープローブがインタクトである場合、上記マスキング基によって低下させられるかもしくは検出不能にされる工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを接触させる工程、
d)上記サンプルと、ポリメラーゼとを接触させる工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するかもしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、
f)上記検出可能な標識のシグナルを検出するかもしくは測定する工程、
を包含し、ここでシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。
【0093】
より明示的には、サンプル中の標的核酸を検出するための方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、遊離の3’末端を有する工程、
b)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた少なくとも2つの標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを、上記標的結合ドメインが上記一本鎖標的核酸配列に結合するように、接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させ、それによって、上記モノマープローブの逆相補体を上記標的核酸分子の3’末端から合成する工程であって、上記逆相補体は、標的核酸配列の少なくとも2つのコピーを含む、工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するかもしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、
f)上記プロセスを介して連続して、または上記プロセスが完了した後に、上記切断を測定するかもしくは検出する工程、
を包含し、
ここでシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。
【0094】
別の局面において、本発明の方法は、サンプル中の標的核酸を検出することを提供し、上記方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、上記一本鎖標的核酸分子は、5’末端もしくは3’末端を有する工程、
b)ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって、少なくとも1つの標的配列ドメインから隔てられている、少なくとも1個の標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程、
c)上記サンプルと、上記モノマープローブの1つより多いコピーとを接触させる工程、
d)上記サンプルと、上記モノマープローブに結合した上記標的核酸分子に結合するポリメラーゼとを接触させる工程であって、上記ポリメラーゼは、上記モノマープローブの逆相補体を[上記標的核酸分子の3’末端から]合成し得、上記逆相補体は、標的配列ドメインの少なくとも1コピーおよび標的結合ドメインの少なくとも1コピーを含む、工程、
e)上記サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するかもしくは上記ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、ならびに
f)上記プロセスを通じて連続的に、または上記プロセスが完了した後に、上記切断を測定するかもしくは検出する工程、
を包含し、
ここでシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。
【0095】
一実施形態において、蛍光団およびクエンチャーは、FRETベースの検出を可能にするために上記分子中に含まれる(Livakら,1998)。これらエレメントは、上記2つがいずれかの上記エンドヌクレアーゼの作用によって互いから隔てられる限りにおいて、多くの考えられる位置に配置され得る。
【0096】
あるいは、他の標識システムは、例えば、免疫標識、免疫蛍光標識のために使用され得るか、または代わりに上記プローブの切断の直接検出は、ゲル電気泳動もしくはナノ孔技術によって達成され得る。
【0097】
上記方法は、標的配列もしくは標的結合配列、またはその両方のさらなるコピーが、ポリメラーゼを使用して生成され得ることを認め、ここで上記一本鎖の標的ヌクレオチドは、伸長のためのプライマーであり、上記モノマープローブの核酸分子は、テンプレートである。ここで、標的配列結合および/または上記ヌクレアーゼ切断領域の切断もしくは分解の後に、上記分子の残っている5’フラグメントは、第2のモノマープローブにハイブリダイズし得、上記モノマープローブの逆相補体の合成を開始し得る。上記テンプレート分子上の配列を適切に形成することによって、上記ポリメラーゼによって生成される上記逆相補体は、標的配列の1つ以上のさらなるコピー(それによって、さらなるプライマー分子が結合し、さらなる重合反応を誘発することを可能にする)、もしくは標的結合配列の1つ以上のコピー、またはその両方を含み得る。
【0098】
上記使用されるポリメラーゼは、上記ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすい領域を再生し得るものであり、それによって、上記モノマープローブの形態に依存して、上記標的配列、もしくは上記標的結合配列、またはその両方の露出を可能にする。例えば、RNAse Hによる切断を受けやすいヌクレアーゼ切断エレメントは、RNA ポリメラーゼもしくはRNA部分を組み込むように改変されたDNAポリメラーゼによって、再生され得る。このような実施形態において、同じヌクレアーゼは、上記第1の核酸分子:標的配列の最初の切断、および上記第2の核酸分子の逆相補体の合成後に形成される上記ヌクレアーゼ切断エレメントの切断を触媒し得る。
【0099】
上記逆相補体の合成は、最終的には、上記テンプレートモノマープローブ:逆相補体二重鎖の切断、ならびに上記切断された分子の分離の際に、上記標的配列、上記標的結合配列、もしくはその両方の1つ以上のコピーの露出をもたらす。
【0100】
例えば、種々の実施形態において、上記方法は、上記サンプルと、第2のヌクレアーゼとを接触させて、上記モノマープローブがその逆相補体に結合される場合に、上記ヌクレアーゼ切断エレメントを切断もしくは分解する工程を包含する。第2のヌクレアーゼの使用が、便利なことには、ヌクレオチド配列要件に起因して必要とされ得るように、上記ヌクレアーゼ切断エレメントの境界において第2の制限エンドヌクレアーゼ部位の使用を可能にすることは、認識される。
【0101】
好ましい実施形態において、上記モノマープローブは、検出可能な標識を有する。好ましくは、上記検出可能な標識のシグナルは、マスキング基に十分に近接している場合に、低下させられるかもしくは検出不能にされ、モノマープローブは、上記検出可能な標識に十分に近接している場合に、上記標識のシグナルを低下させられるかもしくは検出不能にされ得るマスキング基を有する。
【0102】
この実施形態において、上記モノマープローブがインタクトである場合、上記検出可能な標識および上記マスキング基は、上記マスキング基が、上記検出可能な標識のシグナルを低下させられるかもしくは検出不能にするに十分近接している。上記ヌクレアーゼ切断エレメントの切断は、上記マスキング基によって上記シグナルのマスキングを低下させるかもしくは妨げるに十分な、上記検出可能な標識および上記マスキング基の分離をもたらす。
【0103】
好ましくは、上記標的核酸配列を検出する工程は、上記インタクトなモノマープローブのシグナルと比較して、上記標識のシグナルの増加を検出するかもしくは測定することによって、標識およびマスキング基の分離を検出するかもしくは測定することによる。ここでシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。
【0104】
別の実施形態において、上記標的核酸配列の量を検出する工程は、上記モノマープローブもしくはその逆相補体に存在する検出配列と、上記検出配列にハイブリダイズする第2のプローブとを接触させるさらなる工程による。上記第2のプローブは、検出可能な標識を含む。上記第2のプローブはまた、本明細書で「レポーター」プローブともいわれる。
【0105】
一実施形態において、上記モノマープローブに存在する検出配列は、検出プローブに結合し得る配列の逆相補体である。ここでテンプレートとしてこのような検出配列を使用した核酸の合成は、検出プローブに結合し得る核酸を生成する。この実施形態において、上記標的核酸配列の量を検出する工程は、上記検出配列の逆相補体を合成し、そして上記検出配列の逆相補体と、上記検出配列の逆相補体にハイブリダイズする第2のプローブとを接触させる工程による。
【0106】
好ましくは、上記第2のプローブは、上記第2のプローブが上記検出配列に結合されない場合に、上記検出可能な標識のシグナルを低下させるかもしくは検出不能にするマスキング基をさらに含み、そしてここで上記第2のプローブの、上記検出配列への結合は、上記マスキング基によって上記シグナルのマスキングを低下させるかもしくは妨げるに十分な、上記検出可能な標識および上記マスキング基の分離をもたらす。ここで上記検出可能な標識のシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。より好ましくは、上記第2のプローブは、本明細書で記載されるように、一本鎖RMDプローブである。
【0107】
好ましくは、上記方法は、以下のさらなる工程:
h−i)上記サンプルと、上記検出配列に結合する第2のプローブとを接触させる工程であって、上記第2のプローブは、検出可能な標識を有する工程、
i−ii)上記検出可能な標識のシグナルを検出するかもしくは測定する工程、
を包含し、
ここでシグナルの増加は、上記サンプル中の上記標的核酸の存在を示す。
【0108】
好ましくは、上記第2のプローブは、蛍光団、基クエンチャーおよび検出配列結合ドメインを含む一本鎖RNAプローブであり、より好ましくは、上記第2のプローブは、本明細書で記載されるようなRMDプローブである。
【0109】
一実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖(上記モノマー核酸配列成分)を含み、上記第1のヌクレアーゼは、制限エンドヌクレアーゼである。
【0110】
一実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、RNAを含み、上記第1のヌクレアーゼは、RNAaseであり、より好ましくは、RNAse Hである。
【0111】
種々の実施形態において、上記方法の工程が、任意の順序で、連続してもしくは同時に行われることは、当業者に明らかである。上記連鎖反応およびシグナル増幅は、上記反応成分(上記標的核酸、上記モノマープローブ、少なくとも1種のヌクレアーゼ、および上記ポリメラーゼ)が全て存在している場合にのみ誘発される。一実施形態において、上記標的核酸は、上記モノマープローブ、上記少なくとも1種のヌクレアーゼ、および上記ポリメラーゼを含む組成物と接触させられ得る。有利なことには、このことは、上記方法が閉鎖系で行われる場合に、汚染を導入してしまう機会を最小限にする。
【0112】
上記方法は、定性的にもしくは定量的に行われ得ることが認識される。例えば、上記方法は、標的核酸の1種以上の種が、上記サンプル中に存在するか否かの2項の(イエス/ノー)の表示を与え得る。別の例において、上記表示は、例えば、3つのシグナルレベル(高、低、およびシグナルなし)を与えることによって、半定量的であり得る。上記標識に依存して、これらレベルは、例えば、同じ色の影であり得る。ここで濃い影は、高レベルの標的核酸を示し、中程度の陰は、低レベルの標的核酸を示し、そして薄い影もしくは色なしは、標的核酸が存在しないことを示す。上記方法はまた、例えば、リアルタイムPCR法に類似の様式においてシグナルの生成を測定することによって(リアルタイム測定を含む)、標的核酸の定量的分析を提供する。標的核酸のこのような定量的測定の例は、本明細書で、実施例に示される(図2を参照のこと)。
【0113】
上記モノマープローブは、ならびに上記プライマーおよび/もしくは上記検出プローブを使用した場合、好ましくは、モル過剰の検出されるべき上記標的核酸配列に存在することが認識される。大部分の実施形態において、上記プローブの濃度もしくは量が、律速でないように、非限定的なモル過剰において存在する上記プローブを有することは、好ましい。しかし、いくつかの実施形態において、一方もしくは両方のプローブまたは上記プライマーの量もしくは濃度は、例えば、定性的結果が望ましい状況においては律速であることが望ましい。標的核酸の量もしくは濃度または他の反応条件を与える、適切な量のプローブもしくはプライマーを計算するための適切な方法は、が当業者に周知である。
【0114】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」およびこれらの等価物は、本明細書で使用される場合、一本鎖もしくは二本鎖の、任意の長さのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのポリマーを含み得、そしてまた、非限定的な例として、遺伝子のコード配列および非コード配列、センス配列およびアンチセンス配列、エキソン、イントロン、ゲノムDNA、cDNA、プレmRNA、mRNA、rRNA、siRNA、miRNA、tRNA、リボザイム、組換えポリヌクレオチド、単離されかつ精製された天然に存在するDNA配列もしくはRNA配列、合成のRNA配列およびDNA配列、核酸プローブ、プライマー、フラグメント、遺伝子構築物、ベクターならびに改変ポリヌクレオチドを含み得る。用語「核酸」、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」との間で長さの区別は意図されず、これら用語は交換可能に使用される。
【0115】
用語「標的領域」、「標的配列」、「標的核酸」、「標的核酸配列」、「標的ポリヌクレオチド」、および「標的ポリヌクレオチド配列」ならびにこれらの文法的等価物は、検出されるべき核酸の領域に言及し得る。従って、用語「標的核酸」もしくは「標的核酸配列」とは、本明細書で使用される場合、例えば、サンプル中に存在するか、もしくは本明細書に記載されるようにプライマー中に存在する、検出されるべき上記標的核酸、および上記プローブ内に存在するかもしくは上記プローブによって生成される上記標的核酸配列のコピーを含む。例えば、上記モノマープローブの例の上記逆相補体は、標的核酸配列の少なくとも1コピーを含む上記モノマープローブの結合後に上記ポリメラーゼによって合成される。
【0116】
用語「第2の標的核酸」もしくは「第2の標的核酸配列」とは、本明細書で使用される場合、同様に、検出されるべきヌクレオチド配列を含み得、この配列は、上記「標的核酸」に対して同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0117】
好ましくは、上記標的核酸は、一本鎖であり、それによって、標的:プローブハイブリッドの形成を促進する。上記標的核酸を一本鎖にする方法は、当該分野で周知であり、最も一般的には、二本鎖核酸の熱変性を含む。塩基対合の形成を妨げるかもしくは低下させる化学的薬剤もまた、核酸を一本鎖にすることにおいて使用することに関して、当該分野で周知である。このような薬剤が、上記方法において慎重に使用されなければならないことは、当業者に明らかである。なぜならこれらの方法は、ハイブリダイゼーションを介する、例えば、標的:プローブハイブリッドの形成に頼っているからである。
【0118】
このような鎖侵入が、上記標的配列がまず一本鎖でなくても、上記標的核酸の相補鎖の置換および標的:プローブ二重鎖の形成、または標的:プローブ三重鎖の形成を生じようと、生じまいと、「鎖侵入(strand invasion)」特性を有するいくつかの核酸が存在することもまた、認識される。ペプチド核酸(PNA)およびその誘導体は、鎖侵入が可能であり、それによって、PNAを含む標的核酸結合領域を含むプローブは、完全に一本鎖にされなかった標的核酸を検出するために使用され得る。PNAを含む標的結合領域の使用は、上記標的:プローブハイブリッドの形成前に、上記プローブの上記標的結合領域が、実質的に二本鎖であり得る場合に、特に、環状プローブにおいて企図される。
【0119】
用語「プローブ」とは、上記プローブの少なくとも一部に相補的な標的ポリヌクレオチド配列を検出するために、ハイブリダイゼーションベースのアッセイにおいて使用されるポリヌクレオチドに言及し得る。上記プローブは、上記標的核酸配列の領域にハイブリダイズする標的結合ドメインを含み得る。本発明の方法の種々の実施形態において、プローブは、検出を可能にするために検出可能な標識で標識される(すなわち、検出可能な標識に結合される)。上記プローブは、本明細書で定義されるように、ポリヌクレオチドの「フラグメント」からなり得る。
【0120】
「対応する」とは、上記示された核酸の逆相補体に同一であるか、またはこれにハイブリダイズし得る核酸に言及し得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「露出される」、「露出」、「マスクされていない」、および「現れる」、ならびにこれらの文法的等価物は、これらの用語が使用される観点において、上記要素が、利用しやすいか、または利用されやすくされることを意味し得る。例えば、ヌクレアーゼ切断エレメントの露出は、ヌクレアーゼ切断エレメントが、ヌクレアーゼによる切断に利用されすくされることを示し得る。別の例において、検出配列の露出は、上記検出配列が検出のために利用されやすくされる(例えば、検出プローブへの結合に利用されやすくされる)ことを示唆し得る。
【0122】
逆に言えば、用語「隠された」もしくは「マスクされた」およびこれらの文法的等価物は、これら用語が使用される観点において、上記エレメントは、利用可能でないことを意味し得る。例えば、検出配列は、検出プローブ以外の核酸分子に結合した場合に、隠され得るかもしくはマスクされ得る。
【0123】
用語「ハイブリダイゼーション」および文法的等価物は、相補的な塩基対合に起因して、2つ以上の一本鎖核酸の結合によって、マルチマー構造(通常は、二重鎖構造)の形成に言及し得る。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖の間で、もしくは微小なミスマッチ領域を含む核酸鎖の間で起こり得る。微小なミスマッチ領域を除いて相補的な2つの一本鎖核酸は、実質的に相補的であると言及される。実質的に相補的な配列の安定な二重鎖は、あまりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で達成され得る。核酸技術の当業者は、多くの変数(例えば、上記ポリヌクレオチドの長さおよび塩基対濃度、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の発生率を含む)を経験的に考慮して、二重鎖安定性を決定し得る。ハイブリダイゼーションについての条件は、適切な場合、例えば、十分に高い相補性の程度を有する一本鎖領域のみが、ハイブリダイズすることを可能にするために、改変され得る。非常に相補的な核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件は、本明細書に記載される。
【0124】
本明細書で使用される場合、「二重鎖形成領域」とは、上記ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にするために、別のポリヌクレオチドに存在する核酸配列に対して十分に相補的であるポリヌクレオチドに存在する核酸配列に言及し、特に、上記インタクトなダイマープライマーの二本鎖領域を形成する方法の、ダイマープライマーを含む上記核酸分子に存在する1個以上の領域を意図する。
【0125】
本明細書で使用される場合、「標的結合ドメイン」およびその等価な「標的結合ドメイン」とは、上記標的結合領域および上記標的核酸のハイブリダイゼーションを可能にし、よって、標的:プローブハイブリッドを形成するために、上記標的核酸に存在する核酸配列に十分相補的な核酸分子に存在する核酸配列をいう。
【0126】
本明細書で使用される場合、「ヌクレアーゼ切断エレメント」とは、上記標的核酸配列もしくは上記標的核酸に対応する配列とハイブリダイズされる場合、ヌクレアーゼによって切断に供される領域を形成するプローブ核酸分子に存在する核酸配列をいう。あるいは、上記「ヌクレアーゼ切断エレメント」とは、DNAポリメラーゼによって伸長の作用によって二本鎖にされ得る。標的核酸に結合されないことによって、またはDNAポリメラーゼによって二本鎖にされていないことによって、エレメントが一本鎖のままである限りにおいて、好ましくは、上記プローブに存在する1つ以上の切断エレメントは、顕著に切断されなにくくなる。より好ましくは、上記プローブの標的結合領域に存在する任意の切断エレメントは、上記プローブが標的核酸に結合されない限りにおいて、または一方で、上記プローブの上記第1のおよび第2の核酸分子がハイブリダイズされ、かつ上記プローブがインタクトであり、切断されにくくなる。
【0127】
本明細書で使用される場合、ヌクレアーゼは、分子、化合物、もしくは酵素、好ましくは、核酸を選択的に切断し得る酵素を含み得る。好ましくは、上記ヌクレアーゼは、高い特異性で、特定の核酸配列を選択的に切断する。好ましいヌクレアーゼは、二本鎖核酸の両方の鎖を切断する。エンドヌクレアーゼは、好ましいヌクレアーゼの例である。多くのエンドヌクレアーゼ(制限エンドヌクレアーゼを含む)が存在し、十分に特徴付けられ、当該分野で周知である。任意の部位特異的エンドヌクレアーゼは、上記方法において使用され得、上記プローブの設計に従って選択され得る。上記のように、これは、上記標的核酸の配列によって決定され得る。しかし、好ましいエンドヌクレアーゼは、上記標的核酸(例えば、上記標的核酸配列がある染色体)のフラグメント化を最小にするために、減少した認識部位頻度を有する。ヌクレアーゼの選択は、上記検出されるべき核酸の潜在的な標的領域内の適切な配列の利用可能性によって決定される。本明細書で記載される例において、上記使用される制限エンドヌクレアーゼは、BsmAI、MwoI、BsaXI、BsiHKAI、BsoBIであるが、他のエンドヌクレアーゼが、上記反応の望ましい温度および上記切断部位の望ましい幾何に依存して使用され得ることが認識されている。
【0128】
用語「ポリメラーゼ」とは、本明細書で使用される場合、テンプレート核酸分子の逆相補体を合成し得る任意の活性に言及し得る。本発明の方法における使用に適したポリメラーゼ、好ましくは、DNAポリメラーゼの多くの例は、公知である。好ましい例としては、Taq DNAポリメラーゼ、およびそのStoffelフラグメント、DNAポリメラーゼ Iおよびそのクレノウフラグメントが挙げられる。
【0129】
標的核酸を検出するための方法は、標識からのシグナル、好ましくは、発光標識で標識したプローブの発光を検出もしくは測定することに頼っている。
【0130】
用語「標識」とは、本明細書で使用される場合、核酸に結合され得、そして検出可能なシグナルを提供するかもしくは第2の標識と相互作用して、上記第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを改変するかのいずれかのために使用され得る、任意の原子、分子、化合物もしくは部分に言及し得る。好ましい標識は、蛍光、化学発光もしくは生体発光によって、検出可能なシグナルを生成する発光化合物である。さらにより好ましい標識は、発光化合物であって、そのシグナルが、マスキング基(例えば、クエンチする発色団)に十分に近接している場合に、低下させるかもしくは検出不能にされるものである。代替の標識系がまた使用され得、これは、個体マトリクスに結合され得る部分から標識の切断を示す。例は、固定化されたアビジンに結合され得るビオチン標識であり、従って、上記プローブの非切断は、上記プローブの他補の末端に存在する第2の標識を同時に結合する。このような方法は、ディップスティックベースの検出のための適用を有する。さらに多くの検出系が、ナノ孔技術によって識別され得る標識を使用し得る。
【0131】
上記方法は、単一の標識で標識されるプローブの検出に適用可能であるが、複数の標識も使用され得る。上記切断されるプローブの検出は、上記標識(例えば、蛍光団)が上記マスキング基(例えば、クエンチャー)から、切断事象または上記切断事象が可能にする上記プローブ変性プロセスによって、十分に除去される場合に起こる。このことは、上記マスキング基および上記標識の相互作用を低下させるので、上記シグナルの放出を可能にする。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「マスキング基」とは、上記標識と相互作用して、上記標識のシグナル放出を減少させ得る、任意の原子、分子、化合物もしくは部分を意味する。上記切断事象もしくは上記切断事象が可能にする上記プローブ変性プロセスから生じる標識およびマスキング基の分離は、続いて、上記結合した標識のシグナル放出における検出可能な増加を生じる。上記標識に依存して、シグナル放出は、発光、粒子放出、定職化合物の出現もしくは消失などを含み得る。好ましい発光標識および上記標識の発光を改変するように相互作用し得るマスキング基は、以下に記載される。
【0133】
用語「発色団」とは、光の形態においてエネルギーを吸収する非放射活性化合物をいう。いくつかの発色団は、化学発光を生じる化学反応によって、もしくは蛍光を生じる光の吸収によってかのいずれかで、発光するように励起され得る。
【0134】
用語「蛍光団」とは、蛍光を発し得る(すなわち、ある周波数において光を吸収しかつ別の(一般には、より低い)周波数で発光し得る)化合物をいう。
【0135】
用語「生物発光」とは、上記発光化合物が生きている生物において見いだされるものである、化学発光の一形態をいう。生物発光化合物の例としては、細菌ルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼが挙げられる。
【0136】
用語「クエンチする」とは、機構に拘わらず、第2の化合物によって引き起こされる第1の化合物の蛍光における減少をいう。クエンチすることは、代表的には、近接して上記化合物が存在する必要がある。本明細書で使用される場合、上記化合物もしくは上記化合物の蛍光のいずれかは、クエンチされるといわれ、両方の使用が、同じ現象をいうことが理解される。
【0137】
化合物の発光が第2の化合物によってクエンチされ得る機構は、Nonisotopic DNA Probe Techniques(Kricka編,Academic Press,Inc. San Diego,Calif.)、第13章中、Morrison,1992に記載されている。1つの周知の機構は、蛍光エネルギー移動(FET)(これは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、無放射性エネルギー移動、長範囲エネルギー移動(long−range energy transfer)、双極子連結エネルギー移動(dipole−coupled energy transfer)、およびForsterエネルギー移動ともいわれる)である。FETについての主な用件は、上記化合物のうちの一方(上記エネルギー供与体)の発光スペクトルが、他方の化合物(エネルギー受容体)の吸収スペクトルと重なり合わなければならないことである。Styer and Haugland,1967,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:719(本明細書に参考として援用される)は、いくつかの一般的エミッター−クエンチャー対のエネルギー移動効率が、分離距離が10Å未満である場合に100%に近づき得ることを示す。上記エネルギー移動速度は、上記エネルギー供与体分子とエネルギー受容体分子との間の距離の6乗に比例して低下する。結論として、分離距離の小さな増大は、上記エネルギー移動速度を大いに減少させ、上記エネルギー供与体の増大した蛍光、および上記クエンチャー発色団がまた、蛍光団である場合に、上記エネルギー受容体の低下した蛍光を生じる。
【0138】
上記方法において、上記プローブに結合した標識(好ましくは、蛍光標識)のシグナル放出が、検出される。当該分野で記載される多くの蛍光団および発色団は、上記方法における使用に適している。適切な蛍光団およびクエンチする発色団の対は、上記蛍光団の発光スペクトルが、上記発色団の吸収スペクトルと重なり合うように選択される。理想的には、上記蛍光団は、散乱した励起光による干渉を最小限にするために、高いストークスシフト(最大吸収の波長と最大発光の波長との間の大きな差異)を有するべきである。
【0139】
当該分野で周知の適切な標識としては、フルオレセインおよび誘導体(例えば、FAM、HEX、TET、およびJOE);ローダミンおよび誘導体(例えば、テキサスレッド、ROX、およびTAMRA);ルシファーイエロー、およびクマリン誘導体(例えば、7−MeN−クマリン−4−アセテート、7−OH−4−CH−クマリン−3−アセテート、および7−NH−4−CH−クマリン−3−アセテート(AMCA))が挙げられるが、これらに限定されない。FAM、HEX、TET、JOE、ROX、およびTAMRAは、Perkin Elmer,Applied Biosystems Division(Foster City,Calif.)によって販売されている。テキサスレッドおよび多くの他の適切な化合物は、Molecular Probes(Eugene,Oreg.)によって販売されている。上記エネルギー供与体としての使用に適切であり得る化学発光化合物および生物発光化合物の例としては、ルミノール(アミノフタルヒドラジド)および誘導体、ならびにルシフェラーゼが挙げられる。
【0140】
大部分の実施形態において、上記検出可能な標識が発光標識であり、上記マスキング基がクエンチャー(例えば、クエンチする発色団)であることは好ましい一方で、他の検出可能な標識およびマスキング基も、考えられる。例えば、上記標識は、酵素であってもよく、上記マスキング基は、上記酵素のインヒビターであってもよい。上記酵素およびインヒビターが、相互作用するに十分近接して存在する場合、上記インヒビターはまた、上記酵素の活性を阻害するはずである。上記プローブの切断もしくは変性の際に、上記酵素およびインヒビターは分離され、上記酵素が活性であるようにはもはや相互作用できない。検出可能な生成物を生じる反応を触媒し得る広く種々の酵素、およびこのような酵素の活性のインヒビターは、当業者に周知である(例えば、β−ガラクトシダーゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ)。
【0141】
さらなる局面において、本発明の方法は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって分離された少なくとも2つの標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供し、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有する。
【0142】
なお別の局面において、上記方法は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって、少なくとも一方の標的配列ドメインから隔てられている、少なくとも1個の標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供し、上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有する。
【0143】
好ましくは、上記検出可能な標識および上記マスキング基は、上記検出可能な標識のシグナルが、上記モノマープローブがインタクトである場合に、上記マスキング基によって低下させられるかもしくは検出不能にされるように、配置される。
【0144】
一実施形態において、上記モノマープローブは、環状である。
【0145】
別の実施形態において、上記モノマープローブは、直線状である。好ましくは、上記標的結合ドメインのうちの一方は、5’末端もしくは3’末端に位置し、より好ましくは、上記標的結合ドメインのうちの一方は、5’末端に位置し、上記標的結合ドメインのうちの一方は、3’末端に位置する。
【0146】
一実施形態において、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖(上記モノマー核酸配列成分)であり、それによって、その相補体に結合した場合に、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を形成する。
【0147】
一実施形態において、上記標的核酸がDNAである場合、上記ヌクレアーゼ切断エレメントは、RNAを含む。
【0148】
好ましくは、上記検出可能な標識は、蛍光団であり、上記マスキング基は、十分に近接している場合、上記蛍光団の蛍光をクエンチし得るクエンチャーである。
【0149】
特定の好ましい実施形態において、上記方法は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられた少なくとも2つの標的結合ドメインを含むモノマーのポリヌクレオチドプローブを提供し、上記モノマープローブは、蛍光団およびクエンチャーを有する。
【0150】
好ましくは、上記蛍光団は、上記切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインに対して5’側に位置し、上記クエンチャーは、上記切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインに対して3’側に位置し、その逆も同様である。
【0151】
モノマープローブの種々の形態は、使用されるべき標的核酸を検出するための方法においてバリエーションを可能にする。
【0152】
本発明の方法はまた、本明細書でRNAse媒介性検出(RMD)といわれる方法において検出プローブを利用し得、DNA標的検出のために使用され得る。ここで幾何的増幅が必要とされないように、十分に多くの標的分子数が存在する。あるいは、この方法は、本明細書で記載される検出法に加えて、任意のDNA増幅法とともに使用され得る。
【0153】
上記方法は、繰り返すと、差別的な蛍光シグナルを生成するためにFRETを使用するが、RNA プローブおよびリボヌクレアーゼ Hを使用する点で、上記二重標識したTaqMan プローブとは異なる。
【0154】
RNA/DNAハイブリッドの上記DNA鎖に対するリボヌクレアーゼ H酵素の非破壊的性質は、RNAプローブの使用が、上記標的DNAをインタクトなままにすることを意味する。さらに、上記酵素の作用が、上記アニールしたプローブを完全に加水分解するので、新たなプローブが結合することを可能にする。本質的には、上記DNA鎖は、上記プローブの酵素媒介性切断のための触媒として作用するに過ぎない。
【0155】
従って、十分なプローブを用いると、シグナル強度は、経時的に直線状様式で増大する。上記方法は、非常に感度が高い。このような系は、320アトモル(3.2×10−16)程度の標的配列(約2億個の分子)を検出し得る。このような感度レベルは、等温検出法にとっては非常によく、等温増幅と組み合わせた場合に、強力な検出系を提供する。
【0156】
よって、上記方法は、本明細書で記載されるような標的DNAを検出するための方法を提供する。ここで上記モノマープローブは、検出可能な標識およびマスキング基を有する一本鎖RNAプローブの配列の少なくとも一部に相補的であるかもしくは対応する検出配列をさらに含み、上記方法は、上記サンプルと、上記一本鎖プローブとを接触させる工程をさらに包含する。
【0157】
好ましくは、上記検出可能な標識は、蛍光団であり、上記マスキング基は、クエンチャーである。
【0158】
好ましくは、上記ヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼ H(RNAse H)もしくはRNAse H活性を有する薬剤である。本明細書で使用される場合、「リボヌクレアーゼ H活性を有する薬剤」としては、リボヌクレアーゼ H、その改変体および機能的等価物が挙げられ、それによって、機能的等価物は、RNA:DNAハイブリッドのRNA成分に対してヌクレオチド分解活性を有するが、RNA:DNAハイブリッドのDNA成分に対してヌクレオチド分解活性を有さない、任意の化合物、部分もしくは酵素である。
【0159】
上記RMD法は、本明細書で記載される方法とともに使用され得ることが認識される。いくつかの実施形態において、このような組み合わせは、標識されていない(および従って低コストの)プローブが製造されかつ使用されることを許容する。上記方法のこの実施形態では、上記シグナルは、検出されるべき標的配列に拘わらず、一般的に保たれ得るRMDプローブによって生成される。
【0160】
このような組み合わせ実施形態において、上記モノマープローブ中に存在する場合、上記検出配列は、本明細書で使用される場合、上記RMDプローブにハイブリダイズし得る配列であることが明らかである。
【0161】
また、上記例および図面を参照すると、上記でおよび本明細書で記載される方法およびプローブが提供される。
【0162】
別の局面において、本発明の方法は、1種以上の添加剤、癇性化剤、賦形剤、もしくは安定化剤とともに、プローブを含む組成物を提供する。
【0163】
好ましくは、上記組成物は、以下を含む群のうちの1種以上をさらに含む:
ヌクレアーゼ;
鎖分離活性;
ヌクレアーゼ活性を有する薬剤の活性を活性化させるかもしくは増大させるための、化合物、補因子もしくは補酵素;
鎖分離活性を活性化させるかもしくは増大させるための、化合物、補因子もしくは補酵素。
【0164】
別の局面において、本発明の方法は、サンプル中の標的核酸を検出するためのキットを提供し、上記キットは、一定量のモノマープローブ、一定量のヌクレアーゼ、および一定量の鎖分離活性を、上記プローブ、上記ヌクレアーゼ、および上記鎖分離活性と、上記サンプルとを接触させる工程についての説明書とともに含む。
【0165】
一実施形態において、上記キットは、プライマーをさらに含み、好ましくは、上記プライマーは、本明細書で記載されるように、ダイマーオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0166】
上記方法を行うために必要な物質を含むキットは、取り扱いおよびfoster standardizationを促進するために組み立てられ得る。代表的には、上記キットは、上記モノマープローブ、上記少なくとも1種のヌクレアーゼ、および上記ポリメラーゼ、必要な緩衝化剤、ならびに1種以上の標準物質を含む。上記標準物質は、標的核酸、ヌクレアーゼもしくはポリメラーゼ基質、または上記方法を行うために必要とされる較正に必要な印刷形態もしくは電子的形態において存在し得るデータ(経験的)であり得る。上記キット中に含まれるべき物質、および上記キット成分が提供される形態は、最終的な目的に依存して変化し得る。例えば、固相技術の使用(例えば、周知の「ディップスティック」技術に限定されない)は、反応成分(例えば、上記モノマープローブ、上記ヌクレアーゼおよびポリメラーゼ活性)が固体基材(これは、続いて、上記サンプルと接触させられて、標的核酸の存在について分析される)上に沈着させられる場合、実験施設が利用可能でない状況(例えば、現場)において、サンプルの分析を容易に可能にする。
【0167】
キットが、単一種のプローブを含み得、それによって、単一種の標的核酸の存在を示し得るか、または複数種の標的核酸の存在が示され得る場合に複数種のプローブを含み得ることは、認識される。後者の実施形態において、存在する上記1種以上の種の標的核酸の正体が決定され得るように、異なって標識された異なる種のプローブを有することが所望であり得る。しかし、他の場合において、上記特定の標的核酸種の同定は必要とされず、ここで、プローブの種々の種を異なって標識することは必要ではない。好ましい実施形態において、キットは、複数種のプライマー、好ましくは、本明細書で記載されるように、ダイマープライマーを、単一種の(ユニバーサル)モノマープローブとともに含み得る。上記モノマープローブは、それによって、各種のプライマーとともに使用され得ることが認識される。
【0168】
上記キット中に存在する物質は、上記サンプル中に存在する上記標的核酸の定性的、半定量的、もしくは定量的評価を可能にするように選択され得ることもまた、認識される。例えば、上記キットは、標的核酸のうちの1種以上が上記サンプル中に存在するか否かの2項の(イエス/ノー)の表示を与え得る。別の例において、上記表示は、例えば、3つのシグナルレベル(高、低、およびシグナルなし)を与えることによって、半定量的であり得る。上記標識に依存して、これらレベルは、例えば、同じ色の陰であり得る。ここで濃い影は、高レベルの標的核酸を示し、中程度の影は、低レベルの標的核酸を示し、そして薄い影もしくは色なしは、標的核酸が存在しないことを示す。上記キットはまた、例えば、シグナルの生成を測定することによって(リアルタイム測定を含む)、標的核酸の定量的分析を提供し得る。標的核酸のこのような定量的測定の例は、本明細書で、実施例に示される。
【0169】
上記方法およびプローブは、特定の核酸の存在もしくは量が決定されるべき全ての場合において広い適用を有する。本明細書で記載される方法の使用の非限定的例としては、以下が挙げられる:
(i)微生物因子(病原性細菌およびウイルスを含む)の検出。医療分野および生物テロの因子の検出の両方において;
(ii)寄生虫病(例えば、マラリア、トリパノソーマ、リーシュマニア)の検出;
(iii)法医学的目的のヒトDNAの検出、識別、もしくは定量、または獣医目的もしくは農業目的の動物DNAもしくは植物DNAの検出、識別、もしくは定量;
(iv)生物安全性のための、微生物、植物もしくは昆虫の疫病(pest)の検出;
(v)遺伝的に改変された生物の検出;
(vi)特定の対立遺伝子もしくは多型の検出。
【0170】
本明細書で開示される数の範囲(例えば、1〜10)への言及はまた、その範囲内で全ての関連する数字(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)への言及を組み込み、そしてまた、その範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2〜8、1.5〜5.5および3.1〜4.7)、および従って、本明細書で明示的に開示される全ての範囲の全ての部分範囲は、明示的に開示されていることが意図される。具体的に意図されているものの例のみがあるが、列挙された最低値と最高値との間の数値の全ての考えられる組み合わせは、同様の様式において本願で明示的に述べられているとみなされるべきである。
【0171】
例えば、標的核酸の核酸もしくは上記モノマープローブの改変体は、上記方法において利用され得ることが認識される。
【0172】
本明細書で使用される場合、用語「改変体」とは、具体的に同定された配列とは異なるポリヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列であって、ここで1もしくは数個のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基が欠失されているか、置換されてているか、もしくは付加されているものをいう。改変体は、天然に存在する対立遺伝子改変体であってもよいし、天然に存在しない改変体であってもよい。改変体は、同じ種に由来してもよいし、他の種に由来してもよく、ホモログ、パラログ、およびオルソログを包含し得る。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの改変体は、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドのものと同じもしくは類似である生物学的活性を有する。用語「改変体」は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを参照すると、本明細書で定義されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの全ての形態を包含する。
【0173】
改変ポリヌクレオチド配列は、好ましくは、本発明の方法の配列に対して、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、および最も好ましくは、少なくとも99%の同一性を示す。同一性は、少なくとも5ヌクレオチド位置、好ましくは、少なくとも10ヌクレオチド位置、好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド位置、好ましくは、少なくとも50ヌクレオチド位置、より好ましくは、少なくとも100ヌクレオチド位置の比較ウインドウに対して、および最も好ましくは、ポリヌクレオチドの全長に対して、見いだされる。
【0174】
ポリヌクレオチド配列同一性は、以下の様式で決定され得る。主題のポリヌクレオチド配列は、候補ポリヌクレオチド配列に対して、bl2seq(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),「Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」,FEMS Microbiol Lett.174:247−250)(これは、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公的に入手可能である)において、BLASTN(programs,version 2.2.5[Nov 2002]のBLAST統合ソフトウェアから)を使用して、比較される。bl2seqのデフォルトパラメーターが利用され得る。
【0175】
ポリヌクレオチド配列同一性はまた、全体配列アラインメントプログラム(global sequence alignment program)(例えば、Needleman,S.B. and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443−453)を使用して、候補ポリヌクレオチド配列と主題のポリヌクレオチド配列との間の重なり合いの全長に対して計算され得る。Needleman−Wunsch全体アラインメントプログラムの全ての手段は、EMBOSSパッケージ(Rice,P.Longden,I. and Bleasby,A. EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Trends in Genetics June 2000,vol 16,No 6. pp.276−277)におけるニードルプログラム(needle program)において見いだされ、EMBOSSパッケージは、http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/から入手され得る。The European Bioinformatics Instituteサーバーはまた、http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/においてオンラインで2つの配列の間のEMBOSS−ニードル全体アラインメント(needle global alignment)を行うための設備を提供する。
【0176】
あるいは、上記GAPプログラムが使用され得、このプログラムは、末端ギャップにペナルティーを付すことなく、2つの配列の最適な全体アラインメントを計算する。GAPは、以下の論文において記載されている:Huang,X.(1994) On Global Sequence Alignment.Computer Applications in the Biosciences 10,227−235。
【0177】
上記のようにBLASTNの使用は、本発明の方法に従って、ポリヌクレオチド改変体の配列同一性の決定において使用するために好ましい。
【0178】
あるいは、本発明の方法の改変ポリヌクレオチドは、本明細書で開示されるポリヌクレオチド配列、もしくはその相補体に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0179】
用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」、およびその文法的等価物は、ポリヌクレオチド分子が標的ポリヌクレオチド分子(例えば、DNAもしくはRNAブロット(例えば、サザンブロットもしくはノーザンブロット)に固定化された標的ポリヌクレオチド分子)に、温度および塩濃度の規定された条件下でハイブリダイズする能力に言及する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする能力は、あまりストリンジェントでない条件下で最初にハイブリダイズし、次いで、上記ストリンジェンシーを所望のストリンジェンシーまで増大させることによって決定され得る。
【0180】
約100塩基長より大きなポリヌクレオチド分子に関しては、代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ネイティブ二重鎖の融解温度(Tm)よりも25℃以下〜30℃(例えば、10℃)低い(一般には、Sambrookら,編,1987,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版.Cold Spring Harbor Press;Ausubelら,1987,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishingを参照のこと)。約100塩基より大きいポリヌクレオチド分子のTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C−log(Na+)によって計算され得る(Sambrookら,編,1987,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版.Cold Spring Harbor Press;Bolton and McCarthy,1962,PNAS 84:1390)。100塩基長より大きいポリヌクレオチド分子の代表的なストリンジェントな条件は、例えば、6×SSC、0.2% SDSの溶液中での予備洗浄;65℃、6×SSC、0.2% SDSで一晩ハイブリダイズ、続いて、65℃において1×SSC、0.1% SDS中で2回洗浄(各々30分間)、および65℃において0.2×SSC、0.1% SDS中で2回洗浄(各々30分間)のようなハイブリダイゼーション条件である。
【0181】
100塩基より短い長さを有するポリヌクレオチド分子に関しては、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、Tmより5〜10℃低い。平均すると、100bpより短い長さのポリヌクレオチド分子のTmは、約(500/オリゴヌクレオチド長)℃まで低下する。
【0182】
本発明の方法の改変ポリヌクレオチドはまた、上記方法の配列とは異なるが、遺伝コードの縮重の結果として、本発明の方法のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに類似の活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。上記ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない配列改変は、「サイレント改変体」である。ATG(メチオニン)およびTGG(トリプトファン)を除いて、同じアミノ酸に対する他のコドンが、例えば、特定の宿主生物におけるコドン発現を細隙化するために、当該分野で認識されている技術によって変化させられ得る。
【0183】
その生物学的活性を顕著に変化させることなく、上記コードされたポリペプチド配列において1もしくは数個のアミノ酸の保存的置換を生じるポリヌクレオチド配列改変はまた、上記方法に含まれる。当業者は、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を作製するための方法を知っている(例えば、Bowieら,1990,Science 247,1306を参照のこと)。
【0184】
上記コードされたポリペプチド配列におけるサイレント改変および保存的置換に起因する改変ポリヌクレオチドは、以前に記載されるように、tblastxアルゴリズムを介して、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からのプログラム(version 2.2.5 [Nov 2002])のBLAST統合ソフトウェアから、公に入手可能なbl2seqプログラムを使用して決定され得る。
【0185】
上記方法の改変ポリヌクレオチド配列はまた、配列データベース(公のドメインデータベースとしては、Genbank、EMBL、Swiss−Prot、PIRなどが挙げられる)を検索するために、公のドメイン配列アラインメントアルゴリズムおよび配列類似性検索ツールを使用して、当業者に周知のコンピューターベースの方法によって同定され得る。オンラインリソースの例については、Nucleic Acids Res.29:1−10および11−16,2001を参照のこと。類似性検索は、分析されるべき配列(すなわち、問い合わせ配列)との比較のために、標的配列を検索およびアラインする。配列比較アルゴリズムは、全般的なスコアを上記アラインメントの各々に割り当てるためにスコアリングマトリクスを使用する。
【0186】
配列データベース中の改変体を同定するために有用なプログラムの例示的なファミリーは、BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTNおよびtBLASTX(これらは、(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から、もしくはNational Center for Biotechnology Information (NCBI),National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,MD 20894 USAから、公に入手可能である)を含むプログラム(version 2.2.5 [Nov 2002])のBLAST統合ソフトウェアである。上記NCBIサーバーはまた、多くの公に利用可能な配列データベースをスクリーニングするために、プログラムを使用するための設備を提供する。BLASTNは、ヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチド問い合わせ配列を比較する。BLASTPは、タンパク質配列データベースに対してアミノ酸問い合わせ配列を比較する。BLASTXは、タンパク質配列データベースに対して、全てのリーディングフレームにおいて翻訳されるヌクレオチド問い合わせ配列を比較する。tBLASTNは、全てのリーディングフレームにおいて動的に翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対して、タンパク質問い合わせ配列を比較する。tBLASTXは、ヌクレオチド配列データベースの6フレーム翻訳(six−frame translation)に対して、ヌクレオチド問い合わせ配列の6フレーム翻訳を比較する。上記BLASTプログラムは、デフォルトパラメーターとともに使用され得るか、または上記パラメーターは、上記スクリーンを正確にするために必要とされる場合に変更され得る。
【0187】
アルゴリズム(BLASTN、BLASTP、およびBLASTXを含む)の上記BLASTファミリーの使用は、Altschulら,Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997の刊行物に記載されている。
【0188】
BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTN、tBLASTX、もしくは類似のアルゴリズムによって生成される問い合わせされた配列による、1つ以上のデータベース配列に対する「ヒット」は、配列の類似の部分をアラインしかつ同定する。上記ヒットは、類似性の程度および配列の重なり合いの長さの大きさで調整される。データベース配列に対するヒットは、一般に、上記問い合わせされた配列の配列長さの一部のみに対する重なり合いを示す。
【0189】
上記BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTNおよびtBLASTXアルゴリズムはまた、アラインメントに対する「期待」値を生成する。上記期待値(E)は、無作為の連続配列を含む同じサイズのデータベースを検索する場合に、偶然に参照するのを「期待」し得るヒット数を示す。上記期待値は、データベースに対する上記ヒットが、真の類似性を示すか否かを決定するための有意閾値(significance threshold)として使用される。例えば、ポリヌクレオチドヒットに割り当てられた0.1というE値は、上記スクリーニングされたデータベースのサイズにおいて、単に偶然に類似のスコアで、上記配列のアラインされた部分に対して0.1のマッチを参照することを期待し得ることを意味すると解釈される。アラインされかつマッチした部分に対して0.01以下のE値を有する配列については、そのデータベースにおいて偶然にマッチを見いだす確率は、上記BLASTN、BLASTP、BLASTX、tBLASTNもしくはtBLASTXアルゴリズムを使用して、1%以下である。
【0190】
開示された配列の機能的等価物である可能性が最も高い上記ポリヌクレオチド改変体を同定するために、いくつかのさらなるコンピューターベースのアプローチは、当業者に公知である。
【0191】
関連する配列の群の複数の配列アラインメントは、CLUSTALW(Thompson,J.D.,Higgins,D.G. and Gibson,T.J.(1994) CLUSTALW: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,positions−specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research,22:4673−4680、http://www−igbmc.u−strasbg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)もしくはT−COFFEE(Cedric Notredame,Desmond G.Higgins,Jaap Heringa,T−Coffee:A novel method for fast and accurate multiple sequence alignment, J.Mol.Biol.(2000)302:205−217))もしくはPILEUP(これらは、漸進性の(progressive)対様式のアラインメントを使用する)で行われ得る(Feng and Doolittle,1987,J.Mol.Evol.25,351)。
【0192】
パターン認識ソフトウェアアプリケーションは、モチーフもしくはシグナチャー配列を見いだすために利用可能である。例えば、MEME(モチーフ誘発のためのマルチEM(Multiple Em for Motif Elicitation))は、配列のセットにおいてモチーフ配列およびシグナチャー配列を見いだし、MAST(モチーフアラインメントおよび検索ツール(Motif Alignment and Search Tool))は、これらモチーフを、問い合わせ配列における類似のもしくは同じモチーフを同定するために使用する。上記MAST結果は、適切な統計データとの一連のアラインメントおよび見いだされたモチーフの視覚的概観として提供される。MEMEおよびMASTは、University of California,San Diegoにおいて開発された。
【0193】
PROSITE(Bairoch and Bucher,1994,Nucleic Acids Res.22,3583;Hofmannら,1999,Nucleic Acids Res.27,215)は、ゲノムDNA配列もしくはcDNA配列から翻訳された特徴付けられていないタンパク質の機能を同定するための方法である。上記PROSITEデータベース(www.expasy.org/prosite)は、生物学的に顕著なパターンおよびプロフィールを含み、新たな配列をタンパク質の既知のファミリーに割り当てるか、またはどの既知のドメインが、配列中に存在するかを決定する(Falquetら,2002,Nucleic Acids Res.30,235)ための適切なコンピューターツールとともに使用され得るように、設計される。Prosearchは、所定の配列パターンもしくはシグナチャーで、SWISS−PROTデータベースおよびEMBLデータベースを検索し得るツールである。
【0194】
本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列の「フラグメント」は、少なくとも5ヌクレオチド長である連続ヌクレオチドの部分配列に言及し得る。上記フラグメントは、上記方法のポリヌクレオチドの連続ヌクレオチドのうちの少なくとも5ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも30ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも50ヌクレオチド、および最も好ましくは、少なくとも60ヌクレオチドを含み得る。
【0195】
用語「プライマー」とは、テンプレートにハイブリダイズされかつ上記標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を開始するために使用される、通常、遊離の3’OH基を有する短いポリヌクレオチドに言及し得る。
【0196】
遺伝子構築物およびベクターを、分子生物学的技術において一般に使用される酵素(ヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼおよび制限エンドヌクレアーゼ)、ポリメラーゼ、リガーゼなどを含む)とともに、組み立てかつ操作するための方法は、当該分野で周知であり、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版.Cold Spring Harbor Press,1987;Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing,1987に一般に記載されている。
【0197】
上記方法の種々の局面は、ここで以下の実施例を参照することによって非限定的な方法において例示される。以下の実施例は、蛍光標識(蛍光団)およびクエンチャーの使用を記載する。しかし、これは、主に便宜上であり、いかなる方法においても本願を限定することを意図しない。上記のように、他の標識およびマスキング基が、上記方法において使用され得ることは、認識される。
【実施例】
【0198】
(実施例1 直線状のモノマーNCRプローブ)
この実施例は、方法の一実施形態のエレメント、およびシグナル増幅をもたらす上記連鎖反応における工程を記載する。上記エレメントの順番が、本明細書で記載されかつ添付の図面において示されるものとは異なり得ることに注意すべきである。
【0199】
直線状の一本鎖ポリヌクレオチドプローブの形態が、図1に示される。この実施形態は、本明細書でタンデム反復制限酵素促進連鎖反応(TR−REF)プローブといわれる。
【0200】
この実施例は、特定の核酸配列の増幅された検出のための方法におけるTR−REFプローブの使用を記載する。上記反応の成分は、標的核酸の逆相補体のタンデム反復を含むTR−REFプローブ;標的核酸;DNAポリメラーゼ;および少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼからなる。
【0201】
制限エンドヌクレアーゼおよびポリメラーゼの多くの組み合わせが、この実施例において使用されるもので置換され得ることは、当業者によって認識される。種々の方法が、現在の実施形態において例示されるように、蛍光団/クエンチャー対の分離を介した蛍光シグナルの生成に加えて、上記標的核酸の複数のコピーの蓄積もしくは上記TR−REFプローブの分解の検出のために利用可能であることもまた、当業者によって認識される。
【0202】
図1に示されるこの実施形態の例において、上記TR−REFプローブは、リンカー(これは、制限エンドヌクレアーゼBsmAIによって認識される配列をコードする)によって隔てられた上記標的核酸の逆相補体のタンデム反復、および制限エンドヌクレアーゼMwoIによって認識される部位の一部を含む。このリンカーの設計は、上記標的核酸配列の選択に際して配置される唯一の制約が、完全なMwoI制限部位を生成するように、上記リンカーに存在するMwoI認識部位の残りから適切な距離だけ離れた、GC ジヌクレオチドの要件であるようにする。他の制限酵素は、上記プローブの設計に対して他の制約を提起する。
【0203】
標的核酸は、上記対応するTR−REFプローブ上の結合部位、およびDNAポリメラーゼによって伸長され得る遊離の3’ヒドロキシル基に対して相補性を有するべきである。適切な標的核酸の例としては、第2の標的核酸の存在によってもっぱら生成されるプライマー(短いオリゴヌクレオチドを含む);および上記3’末端が、DNAポリメラーゼによって伸長され得るように、ヌクレアーゼによって切断される一本鎖標的DNAが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0204】
例えば、このようなプライマーを利用する実施形態において、上記標的核酸は、第2の標的核酸の存在下でもっぱら(直接的にもしくは間接的に)生成され、ここで上記第2の標的核酸は、検出もしくは分析されるべき最終的な核酸である。
【0205】
いったん生成されると、上記標的核酸は、上記TR−REFプローブに結合し得、DNAポリメラーゼによって伸長される。(上記TR−REFプローブをテンプレートとして使用する)DNAポリメラーゼによる上記標的核酸の伸長は、上記標的核酸の第2のコピーを生成する。制限酵素(この実施例においては、BsmAI、およびMwoI)によって生じた二本鎖プローブ/逆相補体の切断は、上記TR−REFプローブの分解、および上記標的核酸配列の2コピーの分離を生じる。上記標的核酸の分離したコピーは、上記TR−REFプローブの残りのフラグメントから解離する。次いで、各コピーは、上記TR−REFプローブの新たな(インタクトな)コピーに結合し得、そして上記反応のその後のラウンドを開始し得る。
【0206】
各反応反復において、標的の数は倍加し、シグナルの幾何的増幅をもたらす。
【0207】
TR−REF反応から得られた結果は、図4および図5に示される。反応は、10mM Tris(pH7.5)の20μlの最終体積において、0.25μMのFAM/BHQ標識TR−REFプローブ[5’−FAM−GCATCGCAAAGCGGTTGCGAGACGCATGCATCGCAAAGCGGTTG−3’−BHQ(図3を参照のこと)、配列番号1];1.25UのBsmAI;1.25UのMwoI;5UのTaq DNAポリメラーゼのStoffel配列;10mM MgCl;50mM NaCl;2% DMSO;1mM DTTおよび200μM dNTPからなっていた。0.1μMのROXを、反応の間の蛍光の正規化のために添加した。図4に示されるように、0モル、5アトモル、50アトモル、500アトモル、および5フェムトモル量の標的オリゴヌクレオチドを、59℃でのインキュベーションの前に、別個の反応系に添加した。上記反応の進捗を、インキュベーション期間にわたって、FAM蛍光の増加を測定することによってモニターした。図5は、ゲノムDNAが上記サンプルに添加された場合の反復実験を示す。
【0208】
(実施例2 直線状モノマーIRC−REFプローブ)
この実施例は、TR−REFプローブの代替形態のエレメントを記載し、シグナル増幅をもたらす連鎖反応における工程もまた、記載される。繰り返すと、上記エレメントの順序が、本明細書で記載されかつ添付の図面に示されるものとは異なり得ることに注意すべきである。
【0209】
この実施例は、上記TR−REF反応のエレメントの再配置に基づいて、特定の核酸配列の増幅された検出のための代替のシステムを記載し、そして本明細書では、反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)連鎖反応といわれる。上記IRC−REFプローブは、3’末端において、標的核酸配列の逆相補体および5’末端において、上記標的核酸配列のコピーを含む。上記反応のさらなる成分は、以下の通りである:標的核酸;DNAポリメラーゼ;および少なくとも1種の制限エンドヌクレアーゼ。
【0210】
制限エンドヌクレアーゼおよびポリメラーゼの多くの組み合わせが、例示される実施例において使用されるもので置換され得ることは、当業者によって認識されるべきである。種々の方法が、上記標的核酸の複数のコピーの蓄積もしくは上記IRC−REFプローブの分解の検出のために利用可能であることもまた、当業者によって認識されるべきである。
【0211】
図6に示される実施形態の例において、上記IRC−REFプローブは、標的核酸配列の逆相補体、および上記に記載されるように、制限エンドヌクレアーゼBsaXIのための認識部位を含むリンカーによって隔てられた上記標的核酸配列のコピーを含む。
【0212】
標的核酸は、上記対応するIRC−REFプローブ上の結合部位、およびDNAポリメラーゼによって伸長され得る遊離の3’ヒドロキシル基に対する相補性を有するべきである。適切な標的核酸の例としては、第2の標的核酸の存在下でもっぱら生成されるプライマー(短いオリゴヌクレオチドを含む);および上記3’末端がDNAポリメラーゼによって伸長され得るように、ヌクレアーゼによって切断される一本鎖標的DNAが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0213】
例えば、このようなプライマーを利用する実施形態において、上記標的核酸は、第2の標的核酸の存在下でもっぱら(直接的もしくは間接的に)生成され、ここで上記第2の標的核酸は、検出もしくは分析されるべき最終的核酸である。
【0214】
いったん生成されると、上記標的核酸は、上記IRC−REFプローブに結合し得、そしてDNAポリメラーゼによって伸長される。(上記IRC−REFプローブをテンプレートとして使用する)DNAポリメラーゼによる上記標的核酸の伸長は、BsaXI二本鎖の認識部位を与え、この制限エンドヌクレアーゼによって新たに合成された二本鎖DNAの効率的な切断を可能にする。このことは、上記標的核酸の本来のコピーの放出、および上記IRC−REFプローブによってコードされる上記標的核酸の放出を生じる。次いで、各コピーは、上記TR−REFプローブの新たな(インタクトな)コピーに結合し得、そして上記反応のその後のラウンドを開始し得る。
【0215】
上記説明が、例示によって提供されるに過ぎず、当業者に公知である使用される物質および技術の両方におけるバリエーションが企図されることは、認識される。
【0216】
(刊行物)
【0217】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的核酸を検出するための方法であって、該方法は、
a)一本鎖標的核酸を含むサンプルを提供する工程であって、ここで該一本鎖標的核酸は、遊離3’末端を有する、工程;
b)以下を含む、モノマーのポリヌクレオチドプローブを提供する工程:
i)少なくとも2つの標的結合ドメインであって、ここで該ドメインは、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられている、少なくとも2つの標的結合ドメイン、または
ii)標的結合ドメインおよび該標的核酸の少なくとも一部のコピーであって、ここで該標的結合ドメインおよび該標的核酸は、ヌクレアーゼ切断エレメントもしくはヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインによって隔てられている、標的結合ドメインおよび該標的核酸の少なくとも一部のコピー;
c)該サンプルと、1つより多い該モノマーのポリヌクレオチドプローブのコピーとを接触させる工程;
d)該サンプルと、該モノマープローブの逆相補体を合成するポリメラーゼとを接触させる工程;
e)該サンプルと、少なくとも1種のヌクレアーゼとを接触させて、該ヌクレアーゼ切断エレメントを切断するか、もしくは該ヌクレアーゼ分解を受けやすいドメインを分解する工程、ならびに
f)該プローブの切断もしくは分解を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記モノマープローブの逆相補体は、少なくとも1コピーの標的核酸および少なくとも1コピーの標的結合ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切断部位の幾何は、切断生成物における対合されたヌクレオチドの数を減少するようにされている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブの切断もしくは分解は、蛍光によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブの切断もしくは分解は、比色法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブの切断もしくは分解は、免疫学的方法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブの切断もしくは分解は、電気泳動法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブの切断もしくは分解は、ハイブリダイゼーション法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブの切断もしくは分解は、ナノ孔技術を使用して検出される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−509091(P2011−509091A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541864(P2010−541864)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006280
【国際公開番号】WO2009/133473
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510188964)ザイジェム コーポレイション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】