説明

等速自在継手

【課題】 ブーツのシール性を確保し得る低コストな等速自在継手を提供する。
【解決手段】 一端に開口部を有する外側継手部材と、その外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材の開口部を閉塞する蛇腹状ブーツ60の小径端部62を、内側継手部材から延びるシャフト50の取付部位51に締め付け固定した等速自在継手であって、シャフト50の取付部位51に単純形状の凹溝52を形成すると共に、ブーツ60の小径端部62の内周面に、周方向に延びる1条の内側スリット溝65を形成すると共に、ブーツ60の小径端部62の外周面に、周方向に延びる2条の外側スリット溝66を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば自動車のドライブシャフトやプロペラシャフトに組み込まれ、継手外部からの異物侵入や継手内部からの潤滑剤漏洩を防止するブーツを備えた等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的にエンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
これら摺動式等速自在継手あるいは固定式等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、等速自在継手の外側継手部材とシャフトとの間にゴム製あるいは樹脂製の蛇腹状ブーツを装着して、外側継手部材の開口部をブーツで閉塞した構造が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ブーツは、等速自在継手の外側継手部材の開口部外周面にブーツバンドにより締め付け固定された大径端部と、等速自在継手の内側継手部材から延びるシャフトの外周面にブーツバンドにより締め付け固定された小径端部と、大径端部と小径端部とを繋ぎ、その大径端部から小径端部へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−128536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の等速自在継手では、特に、硬質材料である樹脂製のブーツの場合、外側継手部材とシャフトとが作動角をとりながら回転する等速自在継手の作動により、外側継手部材およびシャフトとブーツの端部とのシール性をブーツバンドの締め付けのみで維持することが困難となる場合がある。このことから、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤が外側継手部材およびシャフトとブーツの端部との間から漏洩する可能性がある。
【0008】
そのため、特許文献1に開示された等速自在継手では、例えば、図7および図8に示すように、ブーツ160の小径端部162とシャフト150とのシール構造において、ブーツバンド172によりブーツ160の小径端部162とシャフト150とが密着するように、ブーツ160の小径端部162の内周面に凸部164を設けると共に、その凸部164に嵌合する凹溝152をシャフト150の取付部位151に設け、その凹溝152の両側に凸状の係合リブ153を形成することで、シール性を確保するようにしている。
【0009】
しかしながら、凹溝152の両端に凸状の係合リブ153を形成した構造を採用した場合、ブーツ160の小径端部162が締め付け固定されるシャフト150では、凹溝152の両端に凸状の係合リブ153を形成するためにシャフト150よりも大径の素材を使用しなければならず、材料費が嵩むことになる。また、図示しないが、ブーツ160の大径端部が締め付け固定される外側継手部材では、複数の凹溝を形成するために加工費が嵩むと共に加工工数が増加することになる。その結果、材料費および加工費の高騰や加工工数の増加により、製品のコストアップを招くことになる。
【0010】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ブーツのシール性を確保し得る低コストな等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有する外側継手部材と、その外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材の開口部を閉塞する蛇腹状ブーツの端部を、外側継手部材の取付部位および内側継手部材から延びる軸部材の取付部位に締め付け固定した等速自在継手であって、外側継手部材および軸部材のいずれか一方の取付部位に単純形状の凹溝を形成すると共に、ブーツの端部の内周面に外側継手部材または軸部材の凹溝と嵌合する凸部を設け、周方向に延びる内側スリット溝を凸部に形成したことを特徴とする。
【0012】
本発明では、外側継手部材および軸部材の取付部位に単純形状の凹溝を形成すると共に、ブーツの端部の内周面に外側継手部材または軸部材の凹溝と嵌合する凸部を設け、周方向に延びる内側スリット溝を凸部に形成したことにより、ブーツの端部を締め付け固定する際に、ブーツの端部が容易に変形することから、ブーツの端部が外側継手部材および軸部材の取付部位に確実に密着する。
【0013】
これにより、継手内部に封入された潤滑剤が外側継手部材および軸部材とブーツの端部との間から漏洩することを確実に抑制することでシール性が向上する。その結果、従来のように凹溝の両側に係合リブを形成する必要がないので、外側継手部材および軸部材の取付部位に形成される凹溝が単純形状で済むことから、材料費および加工費の削減や加工工数の低減が図れる。
【0014】
本発明において、ブーツの端部の内周面で軸方向中央部位に、1条の内側スリット溝を形成した構造が望ましい。このようにすれば、ブーツの端部に締め付け力が作用した場合にブーツの端部を均等に変形させることができ、ブーツの端部と外側継手部材および軸部材の取付部位との間で良好な密着性が得られる。
【0015】
本発明において、ブーツの端部の外周面で内側スリット溝よりも軸方向にずれた部位に、周方向に延びる外側スリット溝を形成した構造が望ましい。このようにすれば、内側スリット溝だけでなく外側スリット溝を付加することで、ブーツの端部がより一層容易に変形することから、ブーツの端部が外側継手部材および軸部材の取付部位により一層確実に密着する。この場合、内側スリット溝と外側スリット溝との軸方向位置をずらすことで、ブーツの端部が部分的に薄肉になることなく、強度を確保することができる。
【0016】
本発明において、ブーツの端部の外周面で内側スリット溝よりも軸方向にずれた両側部位に、2条の外側スリット溝を形成した構造が望ましい。このようにすれば、ブーツの端部に締め付け力が作用した場合にブーツの端部を均等に変形させることができ、ブーツの端部と外側継手部材および軸部材の取付部位との間で良好な密着性が得られる。
【0017】
本発明における内側スリット溝および外側スリット溝は、ブーツの端部の全周に亘って連続的に形成されて環状をなすことが望ましい。このようにすれば、ブーツの端部に締め付け力が作用した場合にブーツの端部を周方向で均等に変形させることができ、ブーツの端部と外側継手部材および軸部材の取付部位との間で全周に亘って良好な密着性が得られる。
【0018】
本発明における内側スリット溝および外側スリット溝は、ブーツの端部の全周に亘って非連続に形成されている構造が望ましい。このようにすれば、ブーツの端部の周方向で分断された内側スリット溝および外側スリット溝を形成することで、ブーツの端部に締め付け力が作用した場合にブーツの端部を周方向で均等に変形させることができ、ブーツの端部と外側継手部材および軸部材の取付部位との間で全周に亘って良好な密着性が得られる。
【0019】
本発明において、ブーツの端部に周方向で隣接する非連続の内側スリット溝および外側スリット溝は、ブーツの端部の軸方向にずらして配置されている構造が望ましい。このようにすれば、ブーツの端部の周方向で分断された内側スリット溝および外側スリット溝が軸方向に分散された状態となることから、ブーツの端部に締め付け力が作用した場合にブーツの端部を軸方向についても均等に変形させることができ、ブーツの端部と外側継手部材および軸部材の取付部位との間で軸方向についても良好な密着性が得られる。
【0020】
本発明におけるブーツは樹脂製であることが望ましい。このようにすれば、硬質材料である樹脂製のブーツであっても、ブーツの端部を容易に変形させることができる点で有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外側継手部材および軸部材の取付部位に単純形状の凹溝を形成すると共に、ブーツの端部の内周面に外側継手部材または軸部材の凹溝と嵌合する凸部を設け、周方向に延びる内側スリット溝を凸部に形成したことにより、ブーツの端部を締め付け固定する際に、ブーツの端部が容易に変形することから、ブーツの端部が外側継手部材および軸部材の取付部位に確実に密着する。
【0022】
これにより、外側継手部材および軸部材の取付部位に形成される凹溝が単純形状であっても、継手内部に封入された潤滑剤が外側継手部材および軸部材とブーツの端部との間から漏洩することを確実に抑制することでシール性が向上することから、材料費および加工費の削減や加工工数の低減が図れる。その結果、ブーツのシール性を確保し得る低コストな等速自在継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態で、ブーツの小径端部とシャフトとのシール構造を示す要部拡大断面図である。
【図2】図1のブーツの小径端部をシャフトに組み付ける前の状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】(A)は内側スリット溝の形成パターンの一例を示す展開図、(B)は外側スリット溝の形成パターンの一例を示す展開図である。
【図4】(A)は内側スリット溝の形成パターンの他例を示す展開図、(B)は外側スリット溝の形成パターンの他例を示す展開図である。
【図5】本発明の実施形態で、固定式等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図6】図5の固定式等速自在継手の全体構成を示す横断面図である。
【図7】従来構造において、ブーツの小径端部をシャフトに組み付ける前の状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】従来構造において、ブーツの小径端部とシャフトとのシール構造を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、自動車のエンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備するドライブシャフトに組み込まれ、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達することができる構造を備えた固定式等速自在継手の一つであるアンダーカットフリー型等速自在継手を例示する。
【0025】
なお、本発明は、アンダーカットフリー型等速自在継手以外に、ツェッパ型等速自在継手などの他の固定式等速自在継手にも適用可能である。さらに、本発明は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し、しかも、軸方向の相対変位をも許容することができる構造を備えたトリポード型およびダブルオフセット型等速自在継手のような摺動式等速自在継手にも適用可能である。
【0026】
図5および図6に示す実施形態の等速自在継手は、軸方向に延びる円弧状のトラック溝11が球面状内周面12の円周方向複数箇所に形成されたカップ状の外側継手部材10と、外側継手部材10のトラック溝11と対をなして軸方向に延びる円弧状のトラック溝21が球面状外周面22の円周方向複数箇所に形成された内側継手部材20と、外側継手部材10のトラック溝11と内側継手部材20のトラック溝21との間に介在してトルクを伝達する複数のトルク伝達部材であるボール30と、外側継手部材10の球面状内周面12と内側継手部材20の球面状外周面22との間に配され、円周方向等間隔に形成されたポケットに収容したボール30を保持するケージ40とを主要な構成要素としている。
【0027】
この等速自在継手では、内側継手部材20の軸孔にシャフト50の一端がスプライン嵌合によりトルク伝達可能に連結されている。なお、アンダーカットフリー型の場合、外側継手部材10のトラック溝11はその開口側に軸方向と平行なストレート部分を有し、内側継手部材20のトラック溝21はその奥側に軸方向と平行なストレート部分を有する。
【0028】
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材10とシャフト50との間に、例えば樹脂製の蛇腹状ブーツ60を装着した構造を具備する。このように、外側継手部材10およびブーツ60の内部空間に潤滑剤(図示せず)を封入することにより、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材10、内側継手部材20、ボール30およびケージ40で構成される摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
【0029】
ブーツ60は、外側継手部材10の外周面の取付部位13にブーツバンド71により締め付け固定された大径端部61と、内側継手部材20から延びるシャフト50の外周面の取付部位51にブーツバンド72により締め付け固定された小径端部62と、大径端部61と小径端部62とを繋ぎ、その大径端部61から小径端部62へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部63とで構成されている。
【0030】
ここで、ブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51にブーツバンド72により締め付け固定したシール構造を図1および図2に示す。図1はブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51に組み付けた後の状態を示し、図2はブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51に組み付ける前の状態を示す。なお、以下では、ブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51に組み付けるシール構造について説明するが、ブーツ60の大径端部61を外側継手部材10の取付部位13に組み付けるシール構造(図5参照)についても同様であるため、重複説明は省略する。
【0031】
図1および図2に示すように、シャフト50の取付部位51に環状の凹溝52を形成すると共に、この凹溝52に対応させてブーツ60の小径端部62の内周面に凸部64を形成する。なお、シャフト50の凹溝52は、従来のように凹溝152の両側に係合リブ153(図7および図8参照)を形成することなく、例えば凹R形状の単純形状をなす。ブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51にブーツバンド72により締め付け固定するに際して、シャフト50の取付部位51の凹溝52にブーツ60の小径端部62の凸部64を嵌め込むことにより位置決めする。
【0032】
外側継手部材10とシャフト50とが作動角をとりながら回転する等速自在継手の作動により、シャフト50とブーツ60の小径端部62とのシール性をブーツバンド72の締め付けのみで維持することが困難となる可能性がある。そのため、この等速自在継手では、図1および図2に示すように、ブーツ60の小径端部62の内周面に、周方向に延びる内側スリット溝65を形成すると共に、ブーツバンド72が接触する外周面に、周方向に延びる外側スリット溝66を形成した構造としている。
【0033】
このように、ブーツ60の小径端部62の内周面に、周方向に延びる内側スリット溝65を形成すると共に、ブーツ60の小径端部62の外周面に、周方向に延びる外側スリット溝66を形成したことにより、ブーツ60の小径端部62をシャフト50の取付部位51に締め付け固定する際に、ブーツ60の小径端部62が容易に変形することから、ブーツ60の小径端部62がシャフト50の取付部位51に確実に密着する。なお、図1および図2の実施形態では、内側スリット溝65だけでなく、さらに、ブーツ60の小径端部62の外周面に、周方向に延びる外側スリット溝66を付加することで、ブーツ60の小径端部62における変形がより一層容易となる。
【0034】
これにより、継手内部に封入された潤滑剤がシャフト50とブーツ60の小径端部62との間から漏洩することを確実に抑制することでシール性が向上する。その結果、従来のように凹溝152の両側に係合リブ153(図7および図8参照)を形成する必要がないので、シャフト50の取付部位51に形成される凹溝52が凹R形状の単純形状で済むことから、シャフト50に大きな径の素材を使用する必要がないので、材料費および加工費の削減や加工工数の低減が図れる。
【0035】
この等速自在継手では、ブーツ60の小径端部62の内周面で軸方向中央部位に、1条の内側スリット溝65を形成すると共に、ブーツ60の小径端部62の外周面で内側スリット溝65よりも軸方向にずれた両側部位に、2条の外側スリット溝66を形成した構造としている。このような構造を採用したことにより、ブーツ60の小径端部62に締め付け力が作用した場合にブーツ60の小径端部62を均等に変形させることができ、ブーツ60の小径端部62とシャフト50の取付部位51との間で良好な密着性が得られる。この場合、内側スリット溝65と外側スリット溝66との軸方向位置をずらすことで、ブーツ60の小径端部62が部分的に薄肉になることなく、強度を確保することができる。
【0036】
この内側スリット溝65および外側スリット溝66は、図3(A)(B)に示すように、ブーツ60の小径端部62の全周に亘って連続的に形成されて環状をなす。このように環状の内側スリット溝65および外側スリット溝66を形成することにより、ブーツ60の小径端部62に締め付け力が作用した場合にブーツ60の小径端部62を周方向で均等に変形させることができ、ブーツ60の小径端部62とシャフト50の取付部位51との間で全周に亘って良好な密着性が得られる。
【0037】
なお、前述の場合、ブーツ60の小径端部61の内周面に1条の内側スリット溝65を形成すると共に、その外周面に2条の外側スリット溝66を形成した場合を例示しているが、2条以上の内側スリット溝65および3条以上の外側スリット溝66も可能であり、その数については任意である。また、内側スリット溝65および外側スリット溝66はV字状の断面形状をなす場合を例示しているが、R状や矩形状など他の断面形状も可能であり、その断面形状も任意である。
【0038】
以上では、環状の内側スリット溝65および外側スリット溝66を形成した場合を例示したが、その他の形成パターンとして、図4(A)(B)に示すように、内側スリット溝65’および外側スリット溝66’をブーツ60の小径端部62の全周に亘って非連続に形成することも可能である。このように、ブーツ60の小径端部62の周方向で分断された内側スリット溝65’および外側スリット溝66’を形成することで、ブーツ60の小径端部62に締め付け力が作用した場合にブーツ60の小径端部62を周方向で均等に変形させることができ、ブーツ60の小径端部62とシャフト50の取付部位51との間で全周に亘って良好な密着性が得られる。
【0039】
内側スリット溝65’および外側スリット溝66’を、ブーツ60の小径端部62の全周に亘って非連続に形成する場合、例えば、図4(A)(B)に示すように、ブーツ60の小径端部62に周方向で隣接する内側スリット溝65’および外側スリット溝66’を、ブーツ60の小径端部62の軸方向にずらして配置した構造が可能である。この場合、ブーツ60の小径端部62の周方向で分断された内側スリット溝65’および外側スリット溝66’が軸方向に分散された状態となることから、ブーツ60の小径端部62に締め付け力が作用した場合にブーツ60の小径端部62を軸方向についても均等に変形させることができ、ブーツ60の小径端部62とシャフト50の取付部位51との間で軸方向についても良好な密着性が得られる。
【0040】
なお、ブーツ60は樹脂製以外にゴム製などであってもよいが、ブーツ60が樹脂などの硬質材料からなる場合、ゴムなどの軟質材料で構成する場合よりも、ブーツ60の小径端部62とシャフト50の取付部位51とのシール性をブーツバンド72の締め付けのみで維持することが困難であることから、ブーツ60の小径端部62に内側スリット溝65,65’および外側スリット溝66,66’を形成することは、ブーツ60の小径端部62の変形を容易にできる点で有効となる。
【0041】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0042】
10 外側継手部材
11 円弧状トラック溝
12 球面状内周面
13 取付部位
20 内側継手部材
21 円弧状トラック溝
22 球面状外周面
30 トルク伝達部材(ボール)
50 軸部材(シャフト)
51 取付部位
52 凹溝
60 ブーツ
61,62 ブーツの端部
64 凸部
65 内側スリット溝
66 外側スリット溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する外側継手部材と、前記外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部を閉塞する蛇腹状ブーツの端部を、前記外側継手部材の取付部位および前記内側継手部材から延びる軸部材の取付部位に締め付け固定した等速自在継手であって、
前記外側継手部材および前記軸部材のいずれか一方の取付部位に単純形状の凹溝を形成すると共に、前記ブーツの端部の内周面に前記外側継手部材または前記軸部材の凹溝と嵌合する凸部を設け、周方向に延びる内側スリット溝を前記凸部に形成したことを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】
前記ブーツの端部の内周面で軸方向中央部位に、1条の内側スリット溝を形成した請求項1に記載の等速自在継手。
【請求項3】
前記ブーツの端部の外周面で前記内側スリット溝よりも軸方向にずれた部位に、周方向に延びる外側スリット溝を形成した請求項1又は2に記載の等速自在継手。
【請求項4】
前記ブーツの端部の外周面で前記内側スリット溝よりも軸方向にずれた両側部位に、2条の外側スリット溝を形成した請求項1〜3のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【請求項5】
前記内側スリット溝および前記外側スリット溝は、前記ブーツの端部の全周に亘って連続的に形成されて環状をなす請求項1〜4のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【請求項6】
前記内側スリット溝および前記外側スリット溝は、前記ブーツの端部の全周に亘って非連続に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【請求項7】
前記ブーツの端部に周方向で隣接する内側スリット溝および外側スリット溝は、前記ブーツの端部の軸方向にずらして配置されている請求項6に記載の等速自在継手。
【請求項8】
前記ブーツは樹脂製である請求項1〜7のいずれか一項に記載の等速自在継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−83331(P2013−83331A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224769(P2011−224769)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】