説明

等速自在継手

【課題】継手外部からの水等の継手内部への浸入を有効に防止でき、しかも継手内部からの空気の継手外部への流出性に優れ、ブーツ反転やブーツ破損等の発生を有効に防止できる等速自在継手を提供する。
【解決手段】開口部を有する外側継手部材23と、外側継手部材23との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材26とを備えた等速自在継手である。シャフト装着部41aが内側継手部材から延びるシャフト30に外嵌固定される密封装置40にて外側継手部材23の開口部を密封した。密封装置40のシャフト装着部41aの内径面61とシャフト30の密封装置装着部30aの外径面62との間に、継手内部側から継手外部側に向かって断面積が小さくなる通気路60を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手に関し、特に、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば自動車のプロペラシャフト等に組み込まれ、継手内部からの潤滑剤漏洩を防止する密封装置を備えた等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
例えば4WD車やFR車などの自動車で使用されるプロペラシャフトに組み付けられる等速自在継手としては、ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手がある。
【0004】
ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手は、図8に示すように、軸方向に延びる直線状トラック溝1が円筒状内周面2の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材3と、外側継手部材3のトラック溝1と対をなして軸方向に延びる直線状トラック溝4が球面状外周面5の円周方向複数箇所に形成された内側継手部材6と、外側継手部材3のトラック溝1と内側継手部材6のトラック溝4との間に介在してトルクを伝達する複数のトルク伝達部材であるボール7と、外側継手部材3の円筒状内周面2と内側継手部材6の球面状外周面5との間に介在してポケット8に収容されたボール7を保持するケージ9とを主要な構成要素としている。
【0005】
また、内側継手部材6の軸心孔の内径面に雌スプライン11が形成され、この軸心孔にシャフト12の端部の雄スプライン13が嵌入される。そして、雌スプライン11と雄スプライン13とを嵌合させている。なお、雌スプライン11には抜け止め輪14が装着されている。
【0006】
外側継手部材3の一方の開口部は密封装置15にて密封されている。図8に示す密封装置15は、アダプタ付きブーツであって、ゴム材又は可撓性樹脂材からなるブーツ16と金属製のアダプタ17とからなる。ブーツ16は、シャフト12に外嵌する小径端部16aとアダプタ17に接続される大径端部16bと、小径端部16aと大径端部16bとの間に蛇腹形状の屈曲部16cとからなる。ブーツ16の小径端部16aは、バンド20によって締付けられ、シャフト12に対して固着される。アダプタ17は、ブーツ16の大径端部16bに加締め固定される加締め部17aと、外側継手部材3の開口部に外嵌嵌合させる嵌合部17bとを備える。なお、外側継手部材3の開口部の外径面には、Oリング等のシール部材18が嵌着されている。また、外側継手部材3の他方の開口部には、エンドキャップ20が装着されている。
【0007】
等速自在継手を自動車のプロペラシャフトに使用した場合、外側継手部材23と内側継手部材26の作動角が小さく高速回転下で使用されることが多い。このような等速自在継手においては、高速回転時に継手内部の温度上昇に伴って内圧が上昇し、また、その後に冷却されて負圧になるなどして内圧が変動することなる。このように、継手の内圧変化によりブーツ16が過大に変形すると、ブーツ16の耐久性が低下する。
【0008】
このため、従来では、継手内圧上昇によるブーツ反転および破損等を防ぐための通気対策がとられている。この通気対策としては、特許文献1や特許文献2等に開示されているように、通気孔を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−156689号公報
【特許文献2】特開2006−275259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来での通気孔は内圧上昇防止のために継手内部の空気(エア)を継手外部へ排出することを目的としている。ところが、この通気孔が大きすぎると、継手内部のグリースがこの通気孔から排出されることになって、グリース漏れが発生する。また、継手外部から継手内部へ水等が浸入することがあり、水浸入により継手寿命が低下することになる。逆に、この通気孔が小さければ、継手内部の空気が継手外部に流出しにくいものとなり、ブーツ反転及びブーツ破損が発生しやすくなる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みて、継手外部からの水等の継手内部への浸入を有効に防止でき、しかも継手内部からの空気の継手外部への流出性に優れ、ブーツ反転やブーツ破損等の発生を有効に防止できる等速自在継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の等速自在継手は、開口部を有する外側継手部材と、この外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、内側継手部材から延びるシャフトにシャフト装着部が外嵌固定される密封装置にて外側継手部材の開口部を密封した等速自在継手であって、密封装置のシャフト装着部の内径面とシャフトの密封装置装着部の外径面との間に、継手内部側から継手外部側に向かって断面積が小さくなる通気路を設けたものである。
【0013】
本発明の等速自在継手によれば、通気路を介して継手内部から継手外部への空気(エア)の流出が可能となる。また、通気路は継手外部側の断面積が小さく設定されるので、継手外部側の開口部からの潤滑剤の継手外部への流出を防止できる。
【0014】
前記通気路の途中に潤滑剤溜りを設けることができる。潤滑剤溜りを設けることによって、潤滑剤の外部流出防止機能の向上を図ることができる。
【0015】
前記通気路は、継手内部側の開口部と継手外部側の開口部とが円周方向にずれているとともに、通気路の周方向長さは円周方向に180deg以上であるように設定したり、前記シャフトに対して一定の角度を成すように傾斜していたり、シャフトに対して角度変位をもって傾斜していたりしてもよい。さらには、通気路として分岐路を有するものであってもよい。
【0016】
記密封装置はシャフト装着部を有するブーツを有し、このブーツがゴムブーツであったり、樹脂ブーツであったりする。ゴムブーツの場合、ブーツの表面硬さがHs50〜Hs70であるのが好ましく、樹脂ブーツの場合、ブーツの表面硬さがHDD38〜HDD50であるのが好ましい。ゴムブーツは、例えば、クロロプレン等のゴム材料で形成される。樹脂ブーツは、例えば、エステル系、オレフィン系、ウレタン系、アミド系、スチレン系等の熱可塑性エラストマーにて形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の等速自在継手によれば、通気路を介して継手内部から継手外部への空気(エア)の流出が可能であるので、内圧の上昇に基づくブーツ反転やブーツ破損等の発生を有効に防止できる。また、潤滑剤の継手外部への流出及び水等の継手内部への浸入を防止できるので、継手機能(トルク伝達機能)の低下を招きにくく長期にわたって安定した継手機構を発揮することができる。
【0018】
潤滑剤溜りを設けた場合、潤滑剤の外部流出防止機能の向上を図ることができ、より安定した寿命を得ることができる。また、継手内部側の開口部と継手外部側の開口部とが円周方向にずれるようにすることによって、潤滑剤の継手外部への流出及び水等の継手内部への浸入をより安定して防止することができる。
【0019】
ブーツとして、ゴムブーツであっても樹脂ブーツであってもよく、汎用性に優れる。なお、熱可塑性エラストマーは樹脂とゴムの中間の性質を持っており、疲労性や摩耗性等の耐久性、耐熱老化性、耐油性等に優れる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の等速自在継手の実施形態を示す断面図である。
【図2】前記図1に示す等速自在継手に装着されたブーツの凹溝を省いた部位の拡大断面である。
【図3】前記図1に示す等速自在継手に装着されたブーツの凹溝に対応した部位の拡大断面である。
【図4】ブーツの凹溝の第1変形例を示す拡大断面図である。
【図5】ブーツの凹溝の第2変形例を示す拡大断面図である。
【図6】ブーツの凹溝の第3変形例を示す拡大断面図である。
【図7】通気路を形成する凹溝の変形例を示す断面図である。
【図8】従来の等速自在継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1に本発明に係る等速自在継手を示し、この場合の等速自在継手はダブルオフセット型の摺動式等速自在継手である。
【0022】
この等速自在継手は、軸方向に延びる直線状トラック溝21が円筒状内周面22の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材23と、外側継手部材23のトラック溝21と対をなして軸方向に延びる直線状トラック溝24が球面状外周面25の円周方向複数箇所に形成された内側継手部材26と、外側継手部材23のトラック溝21と内側継手部材26のトラック溝24との間に介在してトルクを伝達する複数のトルク伝達部材であるボール27と、外側継手部材23の円筒状内周面22と内側継手部材26の球面状外周面25との間に介在してポケット28に収容されたボール27を保持するケージ29とを主要な構成要素としている。なお、ボール個数は任意に設定できる。
【0023】
そして、内側継手部材26の軸孔にシャフト30をスプライン嵌合により連結して止め輪34により抜け止めしている。すなわち、内側継手部材26の軸孔の内径面には雌スプライン31が形成され、シャフト30の端部には雄スプライン32が形成されている。そして、シャフト30の雄スプライン32が内側継手部材26の軸孔に嵌入され、雌スプライン31に雄スプライン32が嵌合する。また、雄スプライン32の端部に止め輪34が装着される。
【0024】
外側継手部材23は、円筒状内周面22にトラック溝21が形成された短円筒状の本体23aと、後述する密封装置40が付設される開口部33aと反対側の開口部33b側に設けられる外鍔部(フランジ部)23bとからなる。また、この外鍔部23bが設けられる側の開口部33bは、シールプレート35が嵌着されている。すなわち、シールプレート35は、円盤状本体部35aと、この円盤状本体部35aの外周縁部から軸方向に延びる短円筒部35bとからなり、短円筒部35bが外側継手部材23の開口部33bに内嵌圧入されている。密封装置40とシールプレート35とで、外側継手部材23の内部に封入されるグリース等の潤滑剤の漏洩を塞いでいる。
【0025】
また、この外側継手部材23の両開口部33a,33b側の内径面には、内部部品S(内側継手部材26、ボール27、及びケージ29)の外側継手部材23からの抜けを防止(規制)する止め輪35,36が装着されている。
【0026】
一方の開口部33aは密封装置40にて密封される。密封装置40は、アダプタ付きブーツであって、ブーツ41と金属製のアダプタ42とからなる。ブーツ41は、シャフト30に外嵌する小径端部41aと、アダプタ42に接続される大径端部41bと、小径端部41aと大径端部41bとの間に蛇腹形状の屈曲部41cとからなる。
【0027】
ブーツ41がゴムブーツであったり、樹脂ブーツであったりする。ゴムブーツの場合、ブーツ41の表面硬さがHs50〜Hs70であるのが好ましく、樹脂ブーツである場合、ブーツ41の表面硬さがHDD38〜HDD50であるのが好ましい。ゴムブーツは、例えば、クロロプレンゴムやシリコンゴムなどで形成される。樹脂ブーツは、例えば、エステル系、オレフィン系、ウレタン系、アミド系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー、及び熱可塑性エラストマーを含む組成物等にて形成される。樹脂ブーツである場合、表面硬さがHDD38より小さいと、耐熱性の低下、ブーツのコストアップおよび強度低下を招来し、逆に、表面硬さがHDD50より大きいと、疲労性、柔軟性および組付性の低下を招来する。また、ゴムブーツの場合、その表面硬さがHs50より小さいと、ブーツ41の強度低下を招来し、逆に、表面硬さがHs70より大きいと、疲労性の低下を招来する。
【0028】
小径端部41aは短円筒形状であって、図2に示すように、その外径面に周方向凹溝43が設けられ、シャフト30には、図1に示すように、小径部からなるブーツ装着部30aが設けられている。そして、シャフト30のブーツ装着部30aにブーツ41のこの小径端部(シャフト装着部)41aが外嵌され、この外嵌された状態で、バンド45を周方向凹溝43(図2参照)に装着し、このバンド45を締付ける(縮径させる)ことによって、シャフト30にブーツ41の小径端部41aが固着される。
【0029】
アダプタ42は、小径部42aと、大径部42bとを備える。小径部42aの端部には、ブーツ41の大径端部41bを加締め固定する加締め部42aが形成される。また、外側継手部材23の一方の開口部側の外径面には周方向溝46が形成され、アダプタ42の大径部42bの端部には、この周方向溝46に嵌合する縮径部47が形成されている。すなわち、アダプタ42の大径部42bを外側継手部材23の一方の開口部に外嵌圧入することによって、アダプタ42の縮径部47が外側継手部材23の周方向溝46に嵌合する。また、周方向溝46と、外側継手部材23の端面48との間の外径面には、周方向凹溝49が形成され、この周方向凹溝49のOリング等のシールリング50が嵌着されている。なお、この図1に示すように、アダプタ42は外側継手部材23に装着された状態で、アダプタ42の小径部42aと大径部42bとの間の段差部42cが外側継手部材23の端面48に当接した状態となる。
【0030】
この等速自在継手では、密封装置40のシャフト装着部41aの内径面61とシャフト30の密封装置装着部(ブーツ装着部)30aの外径面62との間に通気路60(図3参照)が設けられる。通気路60は、図3に示すように、シャフト装着部41aの内径面61に設けられた凹溝63と、この凹溝63に対向するブーツ装着部30aの外径面62とで構成される。この場合、凹溝63は、シャフト軸方向に延びる直線溝であって、継手内部側から継手外部側に向かってその溝幅を小さくしている。すなわち、継手内部側の開口部63aの幅寸法をW1とし、継手外部側の開口部63bの幅寸法をW2とした場合、W1>W2としている。
【0031】
このため、凹溝63を形成することによって、構成される通気路60は、継手内部側から継手外部側に向かって断面積が小さくなることになる。この場合、W1を1.0mm〜2.0mm程度とし、W2を0.5mm〜0.8mm程度とし、また、W1/W2としては、2.0程度とする。また、凹溝63の深さT(図7(a)参照)としては、0.5mm〜1.5mm程度とする。通気路60を構成するための凹溝63の数は、任意に設定できる。
【0032】
本発明の等速自在継手では、通気路60を介して継手内部から継手外部への空気(エア)の流出が可能となる。このため、内圧の上昇に基づくブーツ反転やブーツ破損等の発生を有効に防止できる。また、通気路60は継手外部側の断面積が小さく設定されるので、潤滑剤の継手外部への流出及び水等の継手内部への浸入を防止できるので、継手機能(トルク伝達機能)の低下を招きにくく長期にわたって安定した継手機構を発揮することができる。
【0033】
ブーツ41として、ゴムブーツであっても樹脂ブーツであってもよく、汎用性に優れる。なお、熱可塑性エラストマーは樹脂とゴムの中間の性質を持っており、疲労性や摩耗性等の耐久性、耐熱老化性、耐油性等に優れる利点がある。また、ブーツの表面硬度を前記のように設定することによって、強度的に安定する。
【0034】
次に、図4は、通気路60の第1変形例を示し、シャフト30の軸線またはブーツ15の軸線に対して一定の角度を成すように傾斜している。凹溝63をシャフト30の軸線またはブーツ15の軸線に対して一定の角度を成すように傾斜させるとともに、継手内部側から継手外部側に向かってその溝幅を小さくしている。すなわち、継手内部側の開口部の幅寸法をW1とし、継手外部側の開口部の幅寸法をW2とした場合、W1>W2としている。
【0035】
また、この通気路60にはその途中に潤滑剤溜り65を設けている。すなわち、凹溝63に半円状の凹部65aを連設している。このように、シャフト30に対して一定の角度を成すように傾斜しているものであれば、前記通気路60は、継手内部側の開口部(凹溝63の開口部63a)と継手外部側の開口部(凹溝63の開口部63b)とが円周方向にずれている。
【0036】
図5に示す第2変形例の通気路60では、シャフトに対して角度変位をもって傾斜させている。すなわち、展開図において、扁平Sの字状に凹溝63を蛇行させている。また、図6に示す第3変形例の通気路60では分岐路66を備えている。なお、分岐路66は、シャフト装着部41aの内径面61に、展開図において、短片67と長片68とからなるL字状の凹溝66aを、凹溝63に連通させて形成することによって構成している。また、凹溝66aの短片68と長片67とのコーナ部に小凹部69aが形成され、これによって潤滑剤溜り69を構成している。
【0037】
図4〜図6に示す通気路60では、継手内部側の開口部(凹溝63の開口部63a)と継手外部側の開口部(凹溝63の開口部63b)とが円周方向にずれているが、この場合、通気路60の周方向長さは円周方向に180deg以上とするのが好ましい。
【0038】
潤滑剤溜り65を設けた場合、潤滑剤の外部流出防止機能の向上を図ることができ、より安定した寿命を得ることができる。また、継手内部側の開口部63aと継手外部側の開口部63bとが円周方向にずれるようにすることによって、潤滑剤の継手外部への流出及び水等の継手内部への浸入をより安定して防止することができる。
【0039】
ところで、通気路60は、継手内部側から継手外部側に向かって断面積が小さくなればよいので、このような通気路60を形成する場合、前記図3等に示すものでは、その凹溝63の図7(a)に示すように、溝深さTを、継手内部側から継手外部側に向かって一定とし、かつ継手外部側の開口部63bの幅寸法W2を継手内部側の開口部63aの幅寸法W1よりも小さくしていたが、継手内部側の開口部63aの幅寸法W1と、継手外部側の開口部63bの幅寸法W2とを同一に設定し、溝深さTを、図7(b)に示すように、継手内部側から継手外部側に向かって浅くしてもよい。すなわち、継手内部側の開口部63aの溝深さをT1とし、継手外部側の開口部63bの溝深さをT2としたときに、T1>T2とする。このように設定することによっても、通気路60の断面積を継手内部側から継手外部側に向かって小さくできる。
【0040】
このため、図3に示すように、凹溝63が軸方向に沿って配設されるものであっても、図4〜図6に示すように、継手内部側の開口部63aと継手外部側の開口部63bとが周方向にずれているものであっても、継手内部側の開口部の幅寸法W1と、継手外部側の開口部の幅寸法W2とを同一に設定し、溝深さTを継手内部側から継手外部側に向かって浅くしてもよい。なお、継手内部側の開口部33aの溝深さをT1としては、0.5mmから1.5mm程度とし、継手外部側の開口部の幅寸法T2を0.5mmから0.8mm程度とし、T1/T2としては、2.0程度とする。
【0041】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、密封装置40として、シャフト30のブーツ装着部30aに外嵌固定される小径部と、外側継手部材23の開口部33aに外嵌固定される大径部と、この小径部と大径部とを連結する蛇腹部とからなるブーツ(ゴムブーツや樹脂ブーツ)でもって構成したものであってもよい。また、潤滑剤溜り65の数の増減は任意であり、勿論、このような潤滑剤溜り65を設けなくてもよい。凹溝63として、図5と図6では、展開図において扁平S字状として湾曲したものであったが、傾斜角度が相違する直線状凹溝の組み合わせでもよい。この場合、直線状凹溝と湾曲した凹溝との組み合わせであっても、直線状凹溝のみの組み合わせであってもよい。
【0042】
また、通気路60としては、前記実施形態では、ブーツ41のシャフト装着部41aの内径面61に凹溝63を形成することによって設けていたが、ブーツ41のシャフト装着部41aの内径面61に凹溝63に設けることなく、シャフト30のブーツ装着部30aの外径面62にこのような凹溝を設けてもよい。さらには、ブーツ41のシャフト装着部41aの内径面61とシャフト30のブーツ装着部30aの外径面62とに凹溝を設けてもよい。このように、ブーツ側とシャフト側とに凹溝を設ける場合、ブーツ側の凹溝とシャフト側の凹溝とを相対面させてもよく、相対面させなくてもよい。
【0043】
等速自在継手としては、前記実施形態では、ダブルオフセット型等速自在継手であったが、他の摺動式等速自在継手、例えばトリポード型等速自在継手、クロスグルーブ型等速自在継手であってもよい。また摺動式等速自在継手に限らず、ツェッパ型等速自在継手やアンダーカットフリー型等速自在継手の固定式等速自在継手であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
23 外側継手部材
26 内側継手部材
27 ボール(トルク伝達部材)
30 シャフト
30a 密封装置装着部(ブーツ装着部)
33a 開口部
40 密封装置
41 ブーツ
41a シャフト装着部(小径端部)
60 通気路
61 内径面
62 外径面
63a 開口部
63b 開口部
65 潤滑剤溜り
66 分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する外側継手部材と、この外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、内側継手部材から延びるシャフトにシャフト装着部が外嵌固定される密封装置にて外側継手部材の開口部を密封した等速自在継手であって、
密封装置のシャフト装着部の内径面とシャフトの密封装置装着部の外径面との間に、継手内部側から継手外部側に向かって断面積が小さくなる通気路を設けたことを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】
前記通気路の途中に潤滑剤溜りを設けたことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
【請求項3】
前記通気路は、継手内部側の開口部と継手外部側の開口部とが円周方向にずれているとともに、通気路の周方向長さは円周方向に180deg以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等速自在継手。
【請求項4】
前記通気路は、継手内部側の開口部と継手外部側の開口部とが円周方向にずれているとともに、前記シャフトに対して一定の角度を成すように傾斜していることを特徴とする請求項1〜請求項3にいずれか1項に記載の等速自在継手。
【請求項5】
前記通気路は、継手内部側の開口部と継手外部側の開口部とが円周方向にずれているとともに、前記シャフトに対して角度変位をもって傾斜していることを特徴とする請求項1〜請求項3にいずれか1項に記載の等速自在継手。
【請求項6】
前記通気路は分岐路を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の等速自在継手。
【請求項7】
前記密封装置はシャフト装着部を有するブーツを有し、このブーツがゴムブーツであり、前記ブーツの表面硬さがHs50〜Hs70であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手。
【請求項8】
前記密封装置はシャフト装着部を有するブーツを有し、このブーツが樹脂ブーツであり、前記ブーツの表面硬さがHDD38〜HDD50であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87915(P2013−87915A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230939(P2011−230939)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】