説明

筐体およびディスプレイ用筐体

【課題】本発明は、筐体の組み立て時にねじ部材を用いる構成でありながら、組み立ておよび分解作業を容易に行なうことができ、作業性を改善できる筐体を得ることにある。
【解決手段】筐体(5)は、起立する第1の筐体部(8)と、第1の筐体部(8)に横方向から突き合わされるとともに、複数のねじ部材(22)を介して第1の筐体部(8)に取り外し可能に連結される第2の筐体部(9)と、を備えている。第1の筐体部(8)は、ねじ部材(22)を弛めて第2の筐体部(9)との連結を解除した時に、第2の筐体部(9)が自重により取り外し可能に引っ掛かる受け部(19)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフロントカバーとバックカバーとを複数のねじ部材を介して連結した薄型テレビ用の筐体に係り、特にフロントカバーに対するバックカバーの着脱作業を容易に行うための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶テレビのような薄型テレビは、液晶表示パネルやスピーカボックス等を収容するフラットな筐体を備えている。筐体は、液晶表示パネルを取り囲んで保持するフロントカバーと、このフロントカバーを後方から覆うバックカバーとに分割されており、これらフロントカバーおよびバックカバーは、合成樹脂材料によって成形されている。
【0003】
従来のテレビ用の筐体は、フロントカバーの外周縁部とバックカバーの外周縁部とを互いに突き合わせるとともに、この突き合わせ部分を複数のねじで結合することにより一体的に組み立てられている。
【0004】
この構成によると、筐体を組み立てる際に数多くのねじを必要とするので、筐体の組み立て時の作業性を考慮すると、ねじの数は少ない方が望ましいことになる。これを実現するものとして、特許文献1は、ねじを一切に用いることなく組み立てを可能とする筐体を開示している。
【0005】
特許文献1の筐体は、キャビネットと、このキャビネットの背面側開口を覆うリヤカバーとで構成されている。キャビネットは、背面側開口に臨む下縁部に左右の係合穴を有するとともに、背面側開口に臨む上縁部に後方に向けて突出する左右の爪を有している。リヤカバーは、上記係合穴に対応する係合用突部と、上記爪に対応する筒状の爪受け部とを有している。
【0006】
リヤカバーをキャビネットの背面側開口の開口縁部に突き合わせると、爪受け部の内側に爪が入り込んで、爪の先端部が爪受け部に引っ掛かるとともに、係合用突部が係合穴に係合する。これにより、リヤカバーがキャビネットの背面側に固定され、組み立て用のねじを不要とすることができる。
【特許文献1】特開昭64−37183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された筐体によると、係合用突部、爪および爪受け部は、合成樹脂製のキャビネットやリヤカバーに一体に形成されている。合成樹脂材料は、例えば経年劣化、熱膨張・熱収縮による変形が生じ易いので、爪が爪受け部の内側に入り込んだ時に、爪と爪受け部との間に隙間が生じたり、係合用突部と係合穴との間に隙間が生じることがあり得る。逆にキャビネットやリヤカバーが膨張すると、爪が爪受け部に強固に食い込んだり、係合用突部が係合穴から抜けなくなることがあり得る。
【0008】
この結果、ねじを一切使用しないでキャビネットとリヤカバーとを連結する構成では、キャビネットとリヤカバーとの間にがたつきが生じたり、リヤカバーをキャビネットから取り外すことが困難となる虞があり得る。
【0009】
よって、筐体の組み立て時の作業性はある程度改善されるものの、逆に筐体の品質が低下したり、リヤカバーをキャビネットから取り外す時に大きな抵抗が生じるのを避けられず、最悪の場合は爪や係合用突部が破損するといった不具合が生じてくる。
【0010】
本発明の目的は、ねじ部材を用いて筐体を組み立てる構成でありながら、筐体の組み立ておよび分解作業を容易に行なうことができ、作業性を改善できる筐体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る筐体は、
起立する第1の筐体部と、上記第1の筐体部に横方向から突き合わされるとともに、複数のねじ部材を介して上記第1の筐体部に取り外し可能に連結される第2の筐体部と、を備えている。
上記第1の筐体部は、上記ねじ部材を弛めて上記第2の筐体部との連結を解除した時に、上記第2の筐体部が自重により引っ掛かる受け部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の筐体部に対する第2の筐体部の連結を解除した時に、第2の筐体部を第1の筐体部に一時的に保持することができる。このため、第2の筐体部が第1の筐体部から脱落するのを防止でき、第2の筐体部の取り外し作業を容易に行なえるとともに、第2の筐体部の傷付き防止にも役立つ。
【0013】
さらに、第2の筐体部を第1の筐体部に連結する場合にも、第2の筐体部を第1の筐体部に引っ掛けて、この第1の筐体部に仮止めすることができる。そのため、第2の筐体部を片手で支えながら、もう一方の手でねじ部材をねじ込むといった面倒な作業から開放される。よって、第2の筐体部を第1の筐体部にねじ部材を用いて連結する構成でありながら、筐体の組み立て作業を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図10に基づいて説明する。
【0015】
図1は、ディスプレイ装置の一例である薄型の液晶テレビ1を開示している。液晶テレビ1は、スタンド2とディスプレイ本体3とを備えている。
【0016】
スタンド2は、例えばテレビ台の据付面4の上にディスプレイ本体3を支持している。ディスプレイ本体3は、偏平な箱状の筐体5と、この筐体5に収容された液晶表示パネル6とを備えている。筐体5は、据付面4の上で起立している。液晶表示パネル6は、表示画面6aを有し、この表示画面6aは、筐体5の前面に露出している。
【0017】
図3および図4に示すように、筐体5は、フロントカバー8とバックカバー9とに分割されている。フロントカバー8およびバックカバー9は、例えば合成樹脂材料により成形されている。フロントカバー8は、第1の筐体部の一例であり、液晶表示パネル6を取り囲んで保持している。バックカバー9は、第2の筐体部の一例であり、フロントカバー8を背後から覆っている。
【0018】
フロントカバー8は、前壁11と周壁12とを備えている。前壁11は、据付面4に対し起立している。前壁11は、液晶表示パネル6の表示画面6aを露出させる四角い開口部13を有している。周壁12は、前壁11の周縁から前壁11の後方に向けて突出するとともに、前壁11の周方向に連続している。
【0019】
バックカバー9は、後壁14と周壁15とを備えている。後壁14は、据付面4に対し起立している。周壁15は、後壁14の周縁から後壁14の前方に向けて突出するとともに、後壁14の周方向に連続している。
【0020】
バックカバー9の周壁15の先端縁部は、フロントカバー8の背後からフロントカバー8の周壁12の先端縁部に突き合わされる。言い換えると、バックカバー9は、起立するフロントカバー8に対し横方向から突き合わされる。
【0021】
バックカバー9の周壁15の先端縁部に嵌合部16が一体に形成されている。嵌合部16は、周壁15の上部から左右の側部に亘って設けられるとともに、周壁15の先端縁部からフロントカバー8に向けて突出している。嵌合部16は、バックカバー9をフロントカバー8に突き合わせた時に、フロントカバー8の周壁12の内側に嵌まり込んで、周壁12の内面に接するようになっている。
【0022】
この接触により、フロントカバー8とバックカバー9との相対的な位置合わせがなされるとともに、フロントカバー8の周壁12とバックカバー9の周壁15とが同一面上に位置するようになっている。
【0023】
図3に示すように、嵌合部16は、筐体5の内側に露出する内面17を有している。嵌合部16の内面17は、嵌合部16の先端縁部から周壁15の方向に進むに従い周壁15の内面15aよりも筐体5の内側に向けて張り出すように傾斜している。この傾斜により、周壁15の内面15aと嵌合部16との間の境界部には、段差部18が形成されている。
【0024】
図2および図3に示すように、フロントカバー8の周壁12の内面のうち、フロントカバー8の上壁となる部分に一対の受け部19が一体に形成されている。受け部19は、筐体5の幅方向の中心を通って鉛直方向に延びる中心線CLに対し、筐体5の幅方向に振り分けて配置されている。本実施の形態では、一方の受け部19から中心線CLまでの距離をL1、他方の受け部19から中心線CLまでの距離をL2とした時、
L1=L2
の関係を満たすように受け部19が配置されている。
【0025】
受け部19は、フロントカバー8の周壁12からバックカバー9に向けて突出している。受け部19は、嵌合部16の下方に位置するとともに、その上面が受け部19の先端の方向に進むに従い下向きに傾斜している。
【0026】
受け部19の先端部に爪部20が形成されている。爪部20は第1の係合部の一例であって、受け部19の先端から上向きに張り出している。爪部20は、フロントカバー8とバックカバー9とが互いに突き合わされた状態において、段差部18よりも低い位置でバックカバー9の内側に入り込んでいる。
【0027】
図2に示すように、バックカバー9は、複数のねじ部材22を介してフロントカバー8に取り外し可能に連結されている。ねじ部材22は、例えばバックカバー9の上縁部の三箇所、下縁部の三箇所および左右の側縁部の一箇所において、バックカバー9とフロントカバー8とを互いに結合している。ねじ部材22は、筐体5の背後からバックカバー9を貫通するとともに、その貫通端がフロントカバー8にねじ込まれている。
【0028】
具体的に述べると、図4にフロントカバー8およびバックカバー9の上縁部を代表して示すように、バックカバー9は、ねじ部材22が貫通する貫通孔23を有している。図5に最もよく示されるように、貫通孔23は、筐体5の高さ方向に沿う長孔となっている。
【0029】
フロントカバー8は、上記貫通孔23に対応する位置にボス部24を有している。ボス部24は、前壁11の内面からバックカバー9に向けて突出しており、このボス部24の突出端は垂直な平坦面25となっている。ボス部24にねじ孔26が形成されている。ねじ孔26は、ボス部24の平坦面25に開口するとともに、貫通孔23と合致している。
【0030】
ねじ部材22は、バックカバー9の背後から貫通孔23を通じてねじ孔26にねじ込まれている。このねじ込みにより、ねじ部材22の頭部22aとボス部24の平坦面25との間でバックカバー9が挟み込まれて、バックカバー9がフロントカバー8に固定されている。
【0031】
図2に示すように、フロントカバー8の上縁部とバックカバー9の上縁部との結合部分の三箇所に位置補正機構30が設けられている。位置補正機構30は、ねじ部材22をねじ孔26にねじ込んだ時に、フロントカバー8に対するバックカバー9の移動方向をガイドするためのものである。位置補正機構30は、筐体5の幅方向に間隔を存して配置されているとともに、上記受け部19と交互に並んでいる。言い換えると、本実施の形態では、三つの位置補正機構30の間に受け部19が位置している。
【0032】
図4に示すように、位置補正機構30は、ガイド突起31とガイド凹部32とを備えている。ガイド突起31は、バックカバー9に一体に形成されている。ガイド突起31は、上記貫通孔23の近傍からフロントカバー8に向けて突出している。ガイド凹部32は、ボス部24に形成されて、ガイド突起31を受け入れ可能となっている。
【0033】
ガイド凹部32の内面にガイド面33が形成されている。ガイド面33は、ガイド突起31の先端部が摺動可能に接するものであり、ガイド凹部32の下端に位置している。ガイド面33は、ガイド凹部32の開口端から終端の方向に進むに従い上向きに傾斜している。このガイド面33の傾斜角度および傾斜方向は、上記受け部19の上面の傾斜角度および傾斜方向と略一致している。
【0034】
通常の液晶テレビ1の生産工程において、筐体5を組み立てる時は、図6に示すように、フロントカバー8の前壁11を水平なテーブル35の上に載置し、周壁12の先端縁部を上向きとする。この状態でフロントカバー8の上にバックカバー9を被せ、フロントカバー8の周壁12の先端縁部とバックカバー9の周壁15の先端縁部とを突き合わせる。
【0035】
この時、バックカバー9の嵌合部16がフロントカバー8の周壁12の内側に嵌合する。それとともに、図7に示すように、バックカバー9から突出するガイド突起31がガイド凹部32のガイド面33に沿って滑り落ちて、ガイド凹部32の内側の定位置に落ち着く。
【0036】
これにより、フロントカバー8とバックカバー9との位置合せが完了し、フロントカバー8の周壁12とバックカバー9の周壁15とが同一面上に位置する。よって、フロントカバー8とバックカバー9との突き合わせ部分に段差が生じることはないとともに、図6に示すように、受け部19の爪部20が嵌合部18の基端の段差部18から離れた状態を維持する。
【0037】
また、フロントカバー8とバックカバー9との位置合せが完了した時点では、図7に示すように、バックカバー9の貫通孔23とフロントカバー8のねじ孔26とが互いに合致する。この状態で、バックカバー9の上から貫通孔23にねじ部材22を挿入し、このねじ部材22をねじ孔26にねじ込む。このねじ込みにより、図8に示すように、フロントカバー8とバックカバー9とが互いに突き合わされた状態を維持した状態で一体的に結合される。
【0038】
液晶テレビ1の保守・点検を実施する場合、液晶テレビ1のディスプレイ本体3が起立していることが多い。そのため、ねじ部材22を弛めてフロントカバー8に対するバックカバー9の連結を解除すると、図9に示すように、バックカバー9がフロントカバー8から解放され、その自重によりバックカバー9の嵌合部16がフロントカバー8から突出する受け部19の上に落下する。受け部19の上面は、爪部20に向けて下向きに傾斜しているので、嵌合部16が受け部19の上面を滑り落ちて、第2の係合部としての段差部18が受け部19の爪部20に引っ掛かる。
【0039】
この結果、バックカバー9は、受け部19と段差部18との係合によりフロントカバー8に一時的に保持された状態を維持することになり、全てのねじ部材22を筐体5から外しても、バックカバー9がフロントカバー8から脱落することはない。
【0040】
さらに、本実施の形態では、受け部19と段差部18との係合部分は、バックカバー9の重心よりも上方に位置している。このため、バックカバー9の連結を解除した時点でも、バックカバー9の上部が後方に倒れ込むことはなく、受け部19の爪部20がバックカバー9の段差部18に確実に引っ掛かる。
【0041】
フロントカバー8からバックカバー9を完全に取り外すには、全てのねじ部材22を外した後に、バックカバー9を手で僅かに持ち上げ、段差部18と爪部20との係合を解除する。この状態で、バックカバー9をフロントカバー8の後方に引き出せば、フロントカバー8からバックカバー9を分離させることができる。
【0042】
バックカバー9をフロントカバー8に取り付けるには、図9に示すように、バックカバー9の嵌合部16をフロントカバー8から突出する受け部19の上に載置する。これにより、嵌合部16と周壁15との境界に位置する段差部18が受け部19の爪部20に引っ掛かり、バックカバー9がフロントカバー8に一時的に仮止めされる。よって、バックカバー9から手を離してもバックカバー9がフロントカバー8から脱落することはない。
【0043】
さらに、バックカバー9をフロントカバー8に仮止めした状態では、図10に示すように、貫通孔23の上部がねじ孔26と合致するとともに、ガイド突起31の先端部がガイド面33に接触する。
【0044】
バックカバー9をフロントカバー8に仮止めした後、バックカバー9の上縁部に位置する三つの貫通孔23にバックカバー9の背後からねじ部材22を挿通する。ねじ部材22をねじ孔26にねじ込んでいくと、ねじ部材22の頭部22aが貫通孔23の開口縁部に接触する。このため、ねじ部材22のねじ込み動作に追従してバックカバー9がフロントカバー8に向けて押圧され、ガイド突起31がガイド面33に沿って移動する。
【0045】
ガイド面33は、ガイド凹部32の開口端から終端の方向に進むに従い上向きに傾斜している。このため、バックカバー9のガイド突起31がガイド面33に接触することで、バックカバー9は、その周壁15の先端縁部がフロントカバー8の周壁12の先端縁部に近づくように、バックカバー9の移動方向がガイドされる。
【0046】
したがって、バックカバー9の上縁部に位置するねじ部材22を締め付けることで、フロントカバー8の周壁12の先端縁部とバックカバー9の周壁15の先端縁部とが合致するようにバックカバー9が引き上げられる。これにより、バックカバー9の下縁部および側縁部に位置する他の貫通孔23の下部がねじ孔26と合致する。
【0047】
この後、バックカバー9の下縁部および側縁部の貫通孔23にねじ部材22を挿入して、フロントカバー8のねじ孔26にねじ込むことで、フロントカバー8に対するバックカバー9の連結作業が完了する。
【0048】
このような本発明の第1の実施の形態によれば、全てのねじ部材22を取り外してフロントカバー8に対するバックカバー9の連結を解除した状態でも、バックカバー9は、受け部19との係合によりフロントカバー8に一時的に保持された状態を維持する。このため、バックカバー9の不意な脱落を防止することができ、バックカバー9の傷付き防止に役立つ。
【0049】
しかも、バックカバー9をフロントカバー8から取り外す時に、片方の手でバックカバー9を支えながら、もう一方の手でねじ部材22を弛めるといった煩雑な作業から開放され、バックカバー9の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、バックカバー9をフロントカバー8に連結する際にも、バックカバー9をフロントカバー8の受け部19に引っ掛けることで、バックカバー9をフロントカバー8に仮止めすることができる。このため、バックカバー9を片手で支えながら、もう一方の手でねじ部材22を落さないようにねじ孔26に差し込み、さらにドライバーで締め付けるといった面倒な作業から開放される。
【0051】
それとともに、第1の実施の形態では、フロントカバー8の上縁部とバックカバー9の上縁部との連結部分にガイド突起31とガイド面33とを有する位置補正機構30が設けられている。このため、バックカバー9の上縁部に位置するねじ部材22を締め付けていくと、ガイド面33の傾斜に沿うようにバックカバー9が持ち上げられ、このバックカバー9の周壁15の先端縁部がフロントカバー8の周壁12の先端縁部と合致する。
【0052】
この結果、フロントカバー8に対するバックカバー9の位置合せ作業を簡単に行うことができ、バックカバー9とフロントカバー8とを複数のねじ部材22を用いて連結する構成でありながら、筐体5の組み立て作業を容易に行なえるといった利点がある。
【0053】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0054】
図11ないし図13は、本発明の第2の実施の形態を開示している。
【0055】
この第2の実施の形態は、バックカバー9がフロントカバー8から不意に外れないように、バックカバー9をフロントカバー8に仮止めするための構成が上記第1の実施の形態と相違している。それ以外の筐体5の構成は、第1の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
図12に示すように、フロントカバー8の受け部19は、前壁11の内面の上端部からバックカバー9に向けて突出している。受け部19は、フロントカバー8の周壁12の上部と向かい合うように平行に配置されており、これら受け部19の上面と周壁12の内面との間に隙間41が形成されている。
【0057】
受け部19の上面に第1の係合部としての突起42が形成されている。突起42は、受け部19の長手方向に沿う中間部に位置するとともに、受け部19の上面から隙間41に向けて突出している。突起42の上面は、受け部19の突出先端の方向に進むに従い下向きに傾斜している。このため、突起42の前壁11側の端部に段差部43が形成されている。
【0058】
図11に示すように、バックカバー9の周壁15の上部に挿入片44が一体に形成されている。挿入片44は、周壁15の先端縁部からフロントカバー8に向けて水平に突出している。挿入片44は、バックカバー9の周壁15の先端縁部をフロントカバー8の周壁12の先端縁部に突き合わせた時に、隙間41に差し込まれるようになっている。
【0059】
挿入片44の中央部に第2の係合部としての係合孔45が形成されている。係合孔45は、突起42に取り外し可能に引っ掛かる開口形状を有している。係合孔45は、バックカバー9の周壁15の先端縁部をフロントカバー8の周壁12の先端縁部に突き合わせた時に、突起42の真上に位置するようになっている。
【0060】
このような構成において、全てのねじ部材を弛めてフロントカバー8に対するバックカバー9の連結を解除すると、バックカバー9が自重によりフロントカバー8から解放され、図13に示すように、バックカバー9の挿入片44が隙間41の内側でフロントカバー8の受け部19の上に落下し、受け部19の突起42が挿入片44の係合孔45に入り込む。よって、突起42の段差部43が係合孔45の開口縁に引っ掛かり、バックカバー9がフロントカバー8に保持された状態を維持する。
【0061】
したがって、全てのねじ部材を弛めて外しても、バックカバー9がフロントカバー8から脱落することはない。
【0062】
フロントカバー8からバックカバー9を完全に取り外すには、全てのねじ部材を外した後に、バックカバー9を手で僅かに持ち上げ、係合孔45と突起42との係合を解除する。この状態で、バックカバー9をフロントカバー8の後方に引き出せば、フロントカバー8とバックカバー9とを互いに分離させることができる。
【0063】
バックカバー9をフロントカバー8に取り付けるには、まず、バックカバー9の挿入片44を隙間41に挿入する。この挿入により、挿入片44の先端が突起42の上面に乗り上がるとともに、挿入片44の係合孔45が突起42と合致した時に、突起42が係合孔45に入り込む。この結果、突起42の段差部43が係合孔45の開口縁に引っ掛かり、バックカバー9がフロントカバー8に一時的に仮止めされる。よって、バックカバー9から手を離してもバックカバー9がフロントカバー8から脱落することはない。
【0064】
このような本発明の第2の実施の形態によると、バックカバー9は受け部19との係合によりフロントカバー8に仮止めされた状態を維持する。このため、バックカバー9の不意な脱落を防止することができ、バックカバー9の傷付き防止に役立つ。
【0065】
しかも、バックカバー9をフロントカバー8から取り外す時に、片方の手でバックカバー9を支えながら、もう一方の手で複数のねじ部材を弛めるといった煩雑な作業から開放され、バックカバー9の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0066】
さらに、バックカバー9をフロントカバー8に連結する際にも、バックカバー9をフロントカバー8の受け部19に引っ掛けることで、バックカバー9をフロントカバー8に仮止めすることができる。このため、バックカバー9を片手で支えながら、もう一方の手でねじ部材を落さないように締め付けるといった面倒な作業から開放され、筐体5の組み立て作業を容易に行うことができる。
【0067】
図14ないし図16は、本発明の第3の実施の形態を開示している。
【0068】
この第3の実施の形態は、バックカバー9をフロントカバー8に仮止めするための構成が上記第1の実施の形態と相違している。それ以外の筐体5の構成は、第1の実施の形態と同様である。そのため、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
図14に示すように、フロントカバー8の前壁11の内面に左右の受け部51(一方のみを図示)と左右のガイド壁52(一方のみを図示)が一体に形成されている。受け部51は、板状をなすとともに、前壁11の内面の側部からバックカバー9に向けて突出している。受け部51は、周壁12の左右の側部および周壁12の上部に隣接している。図15に示すように、受け部51と周壁12の側部の内面との間に隙間53が形成されている。隙間53は、バックカバー9の嵌合部16が摺動可能に差し込まれる幅寸法を有している。
【0070】
受け部51の上縁51aは、その途中からバックカバー9の方向に進むに従い下向きに傾斜している。この上縁51aの中間部には、段差部54が形成されている。
【0071】
上記ガイド壁52は、前壁11の内面の側部からバックカバー9に向けて突出している。ガイド壁52は、上記受け部51の近傍に位置するとともに、周壁12の左右の側部に隣接している。図16に示すように、ガイド壁52の縁部と周壁12の側部の内面との間に隙間55が形成されている。隙間55は、バックカバー9の嵌合部16が摺動可能に差し込まれる幅寸法を有している。
【0072】
一方、バックカバー9の周壁15の側部に左右のフランジ壁57(一方のみを図示)が形成されている。フランジ壁57は、周壁15の内面からバックカバー9の内側に向けて張り出している。フランジ壁57の上部に突起58が一体に形成されている。突起58は、フランジ壁57の前面からフロントカバー8に向けて突出している。
【0073】
突起58は、バックカバー9の周壁15の先端縁部をフロントカバー8の周壁12の先端縁部に突き合わせた時に、受け部51の上に位置するようになっている。突起58の先端に係合部としての爪部59が形成されている。爪部59は、突起58の先端から下向きに張り出すとともに、上記受け部51の段差部54に取り外し可能に引っ掛かるようになっている。
【0074】
このような構成において、全てのねじ部材を弛めてフロントカバー8に対するバックカバー9の連結を解除すると、バックカバー9が自重によりフロントカバー8から解放され、バックカバー9の突起58がフロントカバー8の受け部51の上に落下し、突起58の爪部59が受け部51の段差部54に引っ掛かる。よって、バックカバー9は、フロントカバー8に一時的に保持された状態を維持する。
【0075】
したがって、全てのねじ部材を弛めて外しても、バックカバー9がフロントカバー8から脱落することはなく、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
図17は、本発明の第4の実施の形態を開示している。
【0077】
この第4の実施の形態では、バックカバー9の嵌合部16の側部に左右の突起58(一方のみを図示)が一体に形成されている。突起58は、嵌合部16の側部の内面から突出しており、嵌合部16が隙間53に差し込まれた時に、フロントカバー8の受け部51の上に位置するようになっている。
【0078】
このような構成において、全てのねじ部材を弛めてフロントカバー8に対するバックカバー9の連結を解除すると、バックカバー9が自重によりフロントカバー8から外れる。これにより、バックカバー9の突起58がフロントカバー8の受け部51の上に落下し、突起58の爪部59が受け部51の段差部54に引っ掛かる。よって、バックカバー9は、フロントカバー8に一時的に保持された状態を維持する。
【0079】
したがって、全てのねじ部材を弛めて外しても、バックカバー9がフロントカバー8から脱落することはなく、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
本発明において、フロントカバーに設置する受け部の数は、上記実施の形態に特定されるものではなく、例えば筐体のサイズ・重量等を勘案して適宜設定することができる。例えば、筐体が小型軽量である場合には、一つの受け部をフロントカバーの上部の幅方向に沿う中央又は中央付近に設置することが可能である。
【0081】
さらに、本発明に係る筐体は、液晶テレビのような薄型テレビのディスプレイ本体用に特定されるものではなく、例えばパーソナルコンピュータのディスプレイ用の筐体あるいはその他の電子機器用の筐体としても同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る液晶テレビの正面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る液晶テレビの背面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態において、フロントカバーとバックカバーとを突き合わせた状態を示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態において、フロントカバーとバックカバーとをねじ部材を介して連結した状態を示す断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態において、バックカバーの貫通孔の形状を示す背面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、水平なテーブルの上に載置されたフロントカバーにバックカバーを突き合わせた状態を示す断面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態において、ねじ部材、バックカバーの貫通孔およびフロントカバーのねじ孔の位置関係を示す断面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態において、水平なテーブルの上に載置されたフロントカバーにねじ部材を介してバックカバーを連結した状態を示す断面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、フロントカバーの受け部にバックカバーが引っ掛かった状態を示す断面図。
【図10】本発明の第1の実施の形態において、バックカバーをフロントカバーに取り付ける時のガイド突起とガイド面との位置関係を示す断面図。
【図11】本発明の第2の実施の形態において、バックカバーの挿入片に対応する部分を示す斜視図。
【図12】本発明の第2の実施の形態において、フロントカバーとバックカバーとを突き合わせた状態を示す断面図。
【図13】本発明の第2の実施の形態において、バックカバーの挿入片がフロントカバーの突起に引っ掛かった状態を示す断面図。
【図14】本発明の第3の実施の形態において、フロントカバーの受け部とバックカバーの突起との位置関係を示す斜視図。
【図15】本発明の第3の実施の形態において、フロントカバーの周壁と受け部との位置関係を示す断面図。
【図16】本発明の第3の実施の形態において、フロントカバーの周壁とガイド壁との位置関係を示す断面図。
【図17】本発明の第4の実施の形態において、フロントカバーの受け部とバックカバーの突起との位置関係を示す斜視図。
【符号の説明】
【0083】
5…筐体、6…液晶表示パネル(表示パネル)、8…フロントカバー、9…バックカバー、19,51…受け部、22…ねじ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立する第1の筐体部と、
上記第1の筐体部に横方向から突き合わされるとともに、複数のねじ部材を介して上記第1の筐体部に取り外し可能に連結される第2の筐体部と、を備える筐体であって、
上記第1の筐体部は、上記ねじ部材を弛めて上記第2の筐体部との連結を解除した時に、上記第2の筐体部が自重により引っ掛かる受け部を有することを特徴とする筐体。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記第1および第2の筐体部は、互いに突き合わされる上縁部を有し、上記受け部は、上記第1の筐体部から上記第2の筐体部の上縁部の下方に入り込むように突出するとともに、その突出端に第1の係合部を有し、上記第2の筐体部は、上記ねじ部材を弛めて上記第1の筐体部に対する連結を解除した時に、上記第1の筐体部の第1の係合部に引っ掛かる第2の係合部を有することを特徴とする筐体。
【請求項3】
請求項2の記載において、上記第1の係合部は、上向きに突出する突起であり、上記第2の係合部は、上記突起が取り外し可能に入り込む孔であることを特徴とする筐体。
【請求項4】
請求項1の記載において、上記第1および第2の筐体部は、互いに向かい合う側部を有し、上記受け部は、上記第1の筐体部の側部から上記第2の筐体部の側部に向けて突出するとともに、上記第2の筐体部はその側部から上記第1の筐体部の受け部の上に延出する係合部を有し、上記係合部は、上記ねじ部材を弛めて上記第1の筐体部に対する上記第2の筐体部の連結を解除した時に上記受け部に取り外し可能に引っ掛かることを特徴とする筐体。
【請求項5】
請求項1の記載において、上記第2の筐体部は、上記ねじ部材が貫通する貫通孔と、上記貫通孔の周囲から上記第1の筐体部に向けて突出するガイド突起とを有し、上記第1の筐体部は、上記貫通孔に対応する位置に上記ねじ部材を受けるボス部と、上記ガイド突起が摺動可能に接するガイド面とを有し、
上記ガイド突起および上記ガイド面は、上記ねじ部材を上記貫通孔を通じて上記ボス部にねじ込んでいく時に、上記第1の筐体部と上記第2の筐体部とが合致するように、上記第1の筐体部に対する上記第2の筐体部の移動方向をガイドする位置補正機構を構成することを特徴とする筐体。
【請求項6】
請求項5の記載において、上記位置補正機構と上記受け部とは互いに隣り合うことを特徴とする筐体。
【請求項7】
表示パネルを支持するフロントカバーと、
このフロントカバーを後方から覆うとともに、複数のねじ部材を介して上記フロントカバーに取り外し可能に連結されるバックカバーと、を備えるディスプレイ用筐体であって、
上記フロントカバーは、上記ねじ部材を弛めて上記バックカバーとの連結を解除した時に、上記バックカバーが自重により取り外し可能に引っ掛かる複数の受け部を有することを特徴とするディスプレイ用筐体。
【請求項8】
請求項7の記載において、上記受け部は、上記フロントカバーの幅方向に離れて配置されていることを特徴とするディスプレイ用筐体。
【請求項9】
請求項7又は請求項8の記載において、上記受け部は、上記バックカバーの重心よりも上方に位置することを特徴とするディスプレイ用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−164803(P2008−164803A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352642(P2006−352642)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】