説明

筒状体保持チャック装置

【課題】ベアリングの配置ピッチを密にでき、個々のベアリングの作用加重を小さくして筒状体が磨耗しにくくし、ベアリングが円周方向にも回転できるようにし、ベアリングの取付けるための加工を簡単化し組み込み性も向上できる筒状体保持チャック装置を提供する。
【解決手段】筒状体10中空部10a内に挿嵌される保持体12と、前記保持体12の外周部に前記中空部10aの内壁面に当接可能に設けられたラグ体14と、流体によって前記ラグ体14を前記筒状体10の径方向に突出動させて筒状体を保持するラグ駆動部16とを有する筒状体保持チャック装置において、保持体12の本体18の外周部には、取付け穴44を軸方向でおよび周方向に複数箇所形成し、これら取付け穴44のそれぞれに前記保持体12の周方向および軸方向に支持球46aが回転可能なベアリングユニット46を装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの巻き取り/繰出し用の筒状体を保持するためのチャック装置に係り、特に、筒状体の内部にチャック部分を挿入してその筒状体を保持するようにした構造の筒状体保持チャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状体保持チャック装置は、筒状体の内部にチャック部分を挿入してその筒状体を保持し、筒状体の外周に巻き付けた膜状ワークを巻きだす構造である。
【0003】
このような構造の筒状体保持チャック装置は、例えば、特開2000-130456号公報(:特許文献1)や特開2006−349101号公報(:特許文献2)に示される。
【0004】
特許文献1に開示のチャック装置は、ラグにて筒状体をチャックするものであって、チャック装置本体外周から突き出ている部材がなく、筒状体を抜き差しする場合、その内周面が前記本体外周に接触しながら移動する。
【0005】
このとき、本体外周部分の部品の継ぎ目やラグ用の抜き穴のエッジに筒状体が接触すると、その筒状体表面が僅かにむしれるため、筒状体表面に傷ができ粉塵が発生する。
【0006】
本体外周部に筒状体を抜き差しするときの摩擦抵抗を軽減するために、図5に示すように、チャック装置本体aの外周にベアリングb(ベアリング軸b1、ベアリングローラb2)を埋め込んだ構成のチャック装置が案出されている。このチャック装置では、筒状のチャック装置本体aの外周部に十字状に溝c(円周方向・軸方向にそれぞれ沿う溝部c1・c2)を形成しており、円周方向に沿った溝部c1にベアリング軸b1を挿入し、かつ、ネジdで止めて、そのベアリング軸b1にベアリングローラb2を回動自在に設けている。
【0007】
したがって、ベアリングbの回動方向はチャック装置本体aの軸方向に沿う箇所c2に向けて回動自在にしている。なお、ベアリングbはラグeの間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−130456号公報
【特許文献2】特開2006−349101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ベアリングのローラ回転方向が保持チャックの軸方向のみに限定されることと、ベアリング1個ずつの組み付けがユニット単位になっていることから、取付けのための加工間隔が必要になり、密な状態に並べることができない。また、十字状に溝cを加工形成する等、加工自体も複雑で工数および手間のかかる形状になってしまう。
【0010】
また、上記のベアリングを用いる構成の場合、ベアリングの回転軸(ベアリング軸b1)が必要であり、かつ、チャック装置本体aの外周部の厚み部分にベアリングを埋め込む必要があるため、ベアリング自体は小径になり、ベアリング軸b1も径が細くなるため、適用できる耐加重が小さい。
【0011】
また、溝がベアリングで覆われていない部分があるためその部分に筒状体から出た粉塵がたまりやすく除去に手間がかかる。
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑み、ベアリングの配置ピッチを密にでき、個々のベアリングの作用加重を小さくして筒状体が磨耗しにくくし、ベアリングが円周方向にも回転できるようにし、ベアリングの取付けるための加工を簡単化し組み込み性も向上できる筒状体保持チャック装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は筒状体保持チャック装置にかかるものである。
【0014】
本発明は、筒状体の軸方向に沿って該筒状体中空部内に挿嵌される保持体と、前記保持体の外周部に前記筒状体の中空部の内壁面に当接可能に設けられたラグ体と、流体によって前記ラグ体を前記筒状体の径方向に突出動させて筒状体を保持するラグ駆動部とを有する筒状体保持チャック装置において、
保持体の外周部に取付け穴を少なくとも前記周方向に複数形成し、これら取付け穴のそれぞれに前記保持体の周方向および軸方向に支持球が回転可能なベアリングユニットを装着し、
このベアリングユニットの支持球が保持体外周部表面よりも突出した状態でベアリングユニットを覆いかつ取付け穴を塞ぐカバー部材によって、前記ベアリングユニットを前記保持体外周面に固定し、
前記筒状体内部に保持体を挿嵌するときに前記ベアリングユニットの支持球が前記筒状体内部に転接するようにしたことを特徴とする筒状体保持チャック装置である。
【0015】
本発明において、前記取付け穴は、前記周方向に沿う幅よりも軸方向に沿う長さを長く形成して、前記取付け穴内にベアリングユニットを軸方向に沿って複数装着したことが好適である。
【0016】
また、本発明において、前記ベアリングユニットは、ユニット本体に形成された凹部穴内に支持球および該支持球よりも小径かつ複数の転動ボールを支持球と凹部穴の内壁面との間に循環可能に配設したことが好適である。
【0017】
また、本発明において、前記ベアリングユニットは保持体中心に向かって取付け穴の底部面に当接し、支持球周囲部にカバー部材が係止した状態で、カバー部材を前記保持体にネジ止めする構造になっていることが好適である。
【0018】
また、本発明において、前記ベアリングユニットは、支持球、転動ボール、およびユニット本体が金属材からなり、カバー部材は樹脂材から構成されていて、該カバー部材を保持体に着脱自在に固定することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の筒状体保持チャック装置によれば、保持体の外周部に取付け穴を少なくとも前記周方向に複数形成し、これら取付け穴のそれぞれに前記保持体の周方向および軸方向に支持球が回転可能なベアリングユニットを装着し、このベアリングユニットの支持球が保持体外周部表面よりも突出した状態でベアリングユニットを覆いかつ取付け穴を塞ぐカバー部材によって、前記ベアリングユニットを前記保持体外周面に固定し、前記筒状体内部に保持体を挿嵌するときに前記ベアリングユニットの支持球が前記筒状体内部に転接するようにしたので、筒状体内部が支持球により受け止められ筒状体を移動させると該支持球の回転により前記筒状体内部が保持体外周面でこすられることなく滑らかに前記筒状体が移動し保持体に挿嵌できる。
【0020】
また、前記保持体を前記筒状体内部に挿入途中において、前記筒状体を回転させることができるので位置合わせが容易にできる。
また、溝のベアリング以外の部分をカバー部材によって完全に覆ってしまうので、溝の凹部には表面に露出している部分がなくなっているため、その部分に筒状体から出た粉塵がたまることがなく掃除や除去の手間が掛らないばかりか粉塵や埃を嫌うクリーンルームなどで清浄を保ちつつ筒状体のワークの支持ができる。
【0021】
なお、前記取付け穴を、前記周方向に沿う幅よりも軸方向に沿う長さを長く形成して、前記取付け穴内にベアリングユニットを軸方向に沿って複数装着することによって、軸方向で複数の前記支持球により筒状体を確実に支持される。したがって、このようにベアリングユニットの複数装着によって、支持球1個あたりの作用荷重が小さくなり、また、前記図5に示したローラベアリングを用いるものに比べてより密なベアリングユニットの配置になるため筒状体の支持ポイントが増えて、より連続的に支持できることから、筒状体がその移動中に保持体に対して滑らかに移動できる。
【0022】
また、前記ベアリングユニットは、ユニット本体に形成された凹部穴内に支持球および該支持球よりも小径かつ複数の転動ボールを支持球と凹部穴の内壁面との間に循環可能に配設できるものである。
【0023】
また、前記ベアリングユニットは保持体中心に向かって取付け穴の底部面に当接し、支持球周囲部にカバー部材が係止した状態で、カバー部材を前記保持体にネジ止めする構造になっているので、筒状体内部に保持体を挿入する際に前記ベアリングユニットの支持球に筒状体からの荷重がかかった場合、前記ベアリングユニットの荷重が前記保持体に加わるだけでカバー部材にかからないので、カバー部材が破損することがない。
【0024】
なお、前記ベアリングユニットは、支持球、転動ボール、およびユニット本体が金属材からなり、カバー部材は樹脂材から構成されていて、該カバー部材を保持体に着脱自在に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る筒状体保持チャック装置の全体外観図である。
【図2】筒状体保持チャック装置の縦断面図である。
【図3】(a)は筒状体保持チャック装置の横断面、(b)でベアリングユニットの取付け穴の平面図、(c)は該取付け穴周辺の縦断図である。
【図4】(a)はベアリングユニットおよびカバー部材の部組した状態の平面図、(b)同側面図、(c)ベアリングユニットの説明図である。
【図5】従来の筒状体保持チャック装置の説明図で、(a)は全体図、(b)はローラユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1〜図4は本発明の実施形態に係る筒状体保持チャック装置の説明図である。
【0028】
図1〜図2に示されるように、筒状体10の軸方向に沿って該筒状体10の中空部10a内に挿嵌される保持体12と、前記保持体12の外周部に前記筒状体10の中空部10aの内壁面に当接可能に設けられたラグ体14と、流体によって前記ラグ体14を前記筒状体10の径方向に突出動させて筒状体10を保持するラグ駆動部16とを有する筒状体保持チャック装置に係るものである。
【0029】
上記筒状体10は、例えば図1に示すように、円筒状のコア10bに加工材料のフィルム状またはシート状の薄膜体10cが巻き付けられたものであって、コア10bの中空部10a内に保持体12を挿嵌してその保持体12を支持軸として筒状体10が回転し、上記薄膜体10cを加工のために送り出す装置に用いるものである。
【0030】
保持体12は詳細には、図1および図2に示すように、中空筒状の本体18の一端開口18aに中軸20が嵌入して塞がり、他端開口18bに蓋体22が嵌入して塞がっている。
【0031】
前記中軸20は、全体が上記保持体12の本体18よりも細径になっている。上記本体18に嵌入する側端部20aが概略椀状に形成されていて(この端部20aが本体18にネジ20c固定される)、かつ、その端部20a以外の部分であってその端部20aよりも細径に中実棒状に形成された棒部20bになっている。棒部20bが図示しない支持装置に嵌入しかつ回動自在可能に支持されて、中軸20を介して保持体12が回転可能さらには筒状体10が回転可能になる。
【0032】
上記の中軸20の嵌入する側端部20aの内部に支持用のチューブニップル24が挿嵌されている。また、蓋体22の内部側には筒状部22aが突出形成され、筒状部22aの外周部が環状の凹凸が形成されており、筒状部22aの中空内部には圧縮空気導入用のチューブニップル26が気密状態にねじ込まれている。
【0033】
前記支持用のチューブニップル24と前記蓋体22の筒状部22a間には、樹脂製(例えば塩化ビニール製)のパイプ28が挟まれていて(パイプ28には内外に流体を流通させる孔が形成されている)、そのパイプ28を取り囲むように前記ラグ体14駆動用の駆動力を発生するゴムまたはエラストマーからなるチューブ体30が設けられている。なお、前記チューブニップル26には図示しない外部のホースが接続されて、当該ホースを介して圧縮空気などの作動流体がパイプ28を介してチューブ体30内に供給されるようになっている。パイプ28は作動流体が供給されないときに、チューブ体30が戻しバネ40(ラグ支持板42を介してチューブ体30を押す)によって戻されるとき片寄り過ぎないよう該チューブ体30を支持するためのものである。
【0034】
チューブ体30は、片側端部30aが前記チューブニップル24に外嵌めされ、かつ、他側端部30bが前記蓋体22の筒状部22aに外嵌めされている。前記片側端部30a外周には、バンド32が嵌められてチューブニップル24の外周部の環状凹所24aに締め付け固定されている。また、前記他側端部30bの外周には、筒状のチューブカラー34が嵌められて前記蓋体22の筒状部22aの外周部の環状凹凸部22bに締め付け固定されている。チューブカラー34はネジ体36によって前記蓋体22に締着されている。また、前記蓋体22は筒状体10の本体18の他端開口18bに付近の縁部に形成されたキー孔18cと前記蓋体22外周部に形成されたキー孔22cにキー38を挿嵌させて、前記本体18に前記蓋体22を固定している。
【0035】
前記チューブ体の外周を取り囲むように、ラグ体14に内側から当接して固定されるラグ支持板42が配設され、このラグ支持板42は山折りされた板バネからなる戻しバネ40が固定される。この戻しバネ40は前記本体18の内壁面に当接して、ラグ支持板42を内径方向に弾発している。
【0036】
前記ラグ体14は、実施形態では、軸方向に長い厚板状体であり、軸方向に1〜2箇所で周方向に4箇所設置されている。ラグ体14における前記保持体12の本体18内側部には、ラグ支持板42がネジ止め固定されている。前記本体18へのラグ体14の設置は、保持体12の本体18に軸方向に沿う長円形状の長孔18dに軸方向及び周方向への移動は規制され、かつ、径方向に進退動可能に嵌め込まれている。ラグ体14の前記本体18の径方向外側への突出は、図2(a)に示すように、突出端を符号14fで示す。
【0037】
前記ラグ駆動部16は、実施形態では、チューブニップル26、チューブ体30、ラグ支持板42および戻しバネ40から主になり、図示しないホースからチューブニップル26を介して、チューブ体30内に圧縮空気を導入して加圧したときにチューブ体30が膨らんで、ラグ支持板42を介してラグ体14を外径方向に進出駆動して、筒状体10をチャックして固定し、一方、圧縮空気の排出したときに前記戻しバネ40によって前記ラグ体14が内径方向に後退駆動して筒状体10のチャックを解除し解放するようになっている。
【0038】
ここで、図1〜図3に示すように、前記保持体12の本体18の外周部には、取付け穴44を軸方向で3箇所であって、周方向に4箇所(少なくとも周方向に複数箇所の一例)形成し、これら取付け穴44のそれぞれに前記保持体12の周方向および軸方向に支持球46aが回転可能なベアリングユニット46を装着している。
【0039】
これらのベアリングユニット46の取付けは、ベアリングユニット46の支持球46aが前記保持体12の本体18の外周部表面よりも突出した状態でベアリングユニット46を覆いかつ取付け穴44を塞ぐカバー部材48によって、前記ベアリングユニット46を前記保持体12の本体18外周面に固定している。
【0040】
前記筒状体10内部の中空部10a内に保持体12を挿嵌するときに前記ベアリングユニット46の支持球46aが前記筒状体10内部つまり、コア10b内壁面に転接するようにしたものである。
【0041】
なお、前記取付け穴44は、前記周方向に沿う幅よりも軸方向に沿う長さを長く長円形形状に複数、形成して、前記取付け穴44内にベアリングユニット46を軸方向に沿って複数装着している。実施形態では、図1〜図3に示すように、取付け穴44が軸方向で3箇所かつ周方向に4箇所で合計12箇所を形成している。もちろん取付け穴44の形成数は、軸方向および周方向で適宜選択できるが、軸方向で2箇所以上および周方向で4箇所以上形成した方が筒状体10の安定的保持を確実化できる点から好ましい。
【0042】
ベアリングユニット46の配置は、筒状体10をチャックする長さの全域に配置する。筒状体10をチャックするラグ体14(周方向に複数配置)に対して位相をずらし、ラグ体14とラグ体14との中間部分にベアリングユニット46を配置している。
【0043】
そして、取付け穴44は、図1や図3(b)に示すように、本体18を外径方向から見て軸方向に長い両端円弧状の長円形形状に座ぐり穴加工し、その軸方向両端にネジ取付け孔(雌ネジ孔)44aが形成され、その取付け孔44a、44a間にベアリングユニット46の装着用孔50を該ベアリングユニット46の取付け数に応じた数を穿設している(図3(b)では装着用孔50を3箇所形成している)。取付け穴44は前記本体18にその表面側から厚さ方向中央付近までミーリングする等して切り欠いて形成し、取付け穴44の底面から前記ネジ取付け孔44aと装着用孔50をドリル等で穿孔して形成する。
【0044】
また、図4に示すように、前記ベアリングユニット46は、概略椀状に形成されたユニット本体46bに形成された凹部穴46c内に支持球46aおよび該支持球46aよりも小径かつ複数の転動ボール46dを支持球46aと凹部穴46c穴の内壁面との間に循環可能に配設したものである。ベアリングユニット46は、ユニット本体46bの金属製の外壁を形成する椀状体にモールドによって凹部穴46cから支持球46aや転動ボール46dが抜けないように蓋部分を形成している。
【0045】
また、前記ベアリングユニット46は外周面部に段部46eが形成されその段部46eが保持体12中心に向かって取付け穴44の底部面に当接して位置決めし、支持球46a周囲部にカバー部材48が係止した状態で、該カバー部材48を前記保持体12にネジ止めする構造になっている。このカバー部材48には、ベアリングユニット46の支持球46aが突出させる通孔48aとネジ(皿ネジ)を通すネジ孔48bを穿設している。カバー部材48のネジ止めはネジをネジ孔48b経由して前記取付け穴44の底面のネジ取付け孔44aにネジ止めする。
【0046】
また、前記ベアリングユニット46は、支持球46a、転動ボール46d、およびユニット本体46bが金属材からなり、カバー部材48は樹脂材から構成されていて、該カバー部材48を保持体12に上記のようにネジ止めによって着脱自在に固定できるようにしている。カバー部材48は、前記取付け穴44をほぼ完全に塞ぐように形成されている。
【0047】
前記ベアリングユニット46の支持球46aの頂点を結んだ外接円(OR)が前記本体18の外径より外側に位置している。ラグ体14を突出させない状態(非作動時)では、ラグ体14の外接円は前記本体18の外径付近でかつ前記支持球46aの外接円ORより内側に位置している。したがって、保持体12を筒状体10に挿入・抜き取り時には、ベアリングユニット46の支持球46aのみが接して、荷重がベアリングユニット46のみに作用しラグ体14に作用せず、ラグ体14が保持体12の外周に接したり擦れたりすることがない。
【0048】
一方、前記ラグ体14を突出させた状態(作動時)では、ラグ体14の先端部は前記外接円ORより外側に位置しており、保持体12によって筒状体10を確実にチャック固定できるようにしている。その際、荷重がベアリングユニット46に作用しない構造になっている。
【0049】
本実施形態の筒状体保持チャック装置によれば、保持体12の外周部に取付け穴44を少なくとも前記周方向に複数形成し、これら取付け穴44のそれぞれに前記保持体12の周方向および軸方向に支持球46aが回転可能なベアリングユニット46を装着し、このベアリングユニット46の支持球46aが保持体12外周部表面よりも突出した状態でベアリングユニット46を覆いかつ取付け穴44を塞ぐカバー部材48によって、前記ベアリングユニット46を前記保持体12外周面に固定し、前記筒状体10内部に保持体12を挿嵌するときに前記ベアリングユニット46の支持球46aが前記筒状体10内部に転接するようにしたので、筒状体10内部が支持球46aにより受け止められ筒状体10を移動させると該支持球46aの回転により前記筒状体10内部が保持体12外周面でこすられることなく滑らかに前記筒状体10が移動し保持体12に挿嵌できる。
【0050】
このため、ベアリングユニット46の支持球46aに作用するラジアル荷重は、ユニット本体46bから取付け穴44の底部から保持体12の本体18で支え、樹脂製のカバー部材48に作用しない構成になっている。ベアリングユニット46に作用する荷重は、変形し易い樹脂材に作用しないため、これを組み込んだ保持体12の許容荷重は、ベアリングユニット46自身の許容荷重で規定される。
【0051】
また、前記保持体12を前記筒状体10内部に挿入途中において、前記筒状体10を回転させることができるので位置合わせが容易にできる。
【0052】
なお、前記取付け穴44を、前記周方向に沿う幅よりも軸方向に沿う長さを長く形成して、前記取付け穴44内にベアリングユニット46を軸方向に沿って複数装着することによって、軸方向で複数の前記支持球46aにより確実に支持される。したがって、このようにベアリングユニット46の複数装着によって、支持球46a1個あたりの作用荷重が小さくなり、また、前記図5に示したローラベアリングを用いるものに比べてより密なベアリングユニット46の配置になるため筒状体10の支持ポイントが増えて、より連続的に支持できることから、筒状体10がその移動中に保持体12に対して滑らかに移動できる。
【0053】
また、前記ベアリングユニット46は、ユニット本体46bに形成された凹部穴46c内に支持球46aおよび該支持球46aよりも小径かつ複数の転動ボール46dを支持球46aと凹部穴46cの内壁面との間に循環可能に配設できるものである。
【0054】
また、前記ベアリングユニット46は保持体12中心に向かって取付け穴44の底部面に当接し、支持球46a周囲部にカバー部材48が係止した状態で、カバー部材48を前記保持体12にネジ止めする構造になっているので、筒状体10内部に保持体12を挿入する際に前記ベアリングユニット46の支持球46aに筒状体10からの荷重がかかった場合、前記ベアリングユニット46の荷重が前記保持体12に加わるだけでカバー部材48にかからないので、カバー部材48が破損することがない。
【0055】
なお、前記ベアリングユニット46は、支持球46a、転動ボール46d、およびユニット本体46bが金属材からなり、カバー部材48は樹脂材から構成されていて、該カバー部材48を保持体12に着脱自在に固定できることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の筒状体保持チャック装置は、樹脂や金属膜材の材料を巻き付けた筒状体を保持してワークとして巻き出したり、巻き取ったりするチャック装置において、ベアリングの配置ピッチを密にでき、個々のベアリングの作用加重を小さくして筒状体が磨耗しにくくし、ベアリングが円周方向にも回転できるようにし、ベアリングの取付けるための加工を簡単化し組み込み性も向上できる筒状体保持チャック装置を利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 筒状体
10a 中空部
10b コア
10c 薄膜体
12 保持体
14 ラグ体
14f ラグ体の突出端
16 ラグ駆動部
18 保持体の本体
18a 保持体の一端開口
18b 保持体の他端開口
18c キー孔
18d 長孔
20 中軸
20a 本体に嵌入する側端部
20b 中軸の棒部
20c ネジ
22 蓋体
22a 蓋体の筒状部
22b 環状凹凸部
22c キー孔
24 チューブニップル
24a 環状凹所
26 蓋体側のチューブニップル
28 パイプ
30 チューブ体
30a 片側端部
30b 他側端部
32 バンド
34 チューブカラー
36 ネジ体
38 キー
40 戻しバネ
42 ラグ支持板
44 取付け穴
44a ネジ取付け孔
46 ベアリングユニット
46a 支持球
46b ユニット本体
46c 凹部穴
46d 転動ボール
46e 段部
48 カバー部材
48a 通孔
48b ネジ孔
50 装着用孔
OR ベアリングユニットの外接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の軸方向に沿って該筒状体中空部内に挿嵌される保持体と、前記保持体の外周部に前記筒状体の中空部の内壁面に当接可能に設けられたラグ体と、流体によって前記ラグ体を前記筒状体の径方向に突出動させて筒状体を保持するラグ駆動部とを有する筒状体保持チャック装置において、
保持体の外周部に取付け穴を少なくとも前記周方向に複数形成し、これら取付け穴のそれぞれに前記保持体の周方向および軸方向に支持球が回転可能なベアリングユニットを装着し、
このベアリングユニットの支持球が保持体外周部表面よりも突出した状態でベアリングユニットを覆いかつ取付け穴を塞ぐカバー部材によって、前記ベアリングユニットを前記保持体外周面に固定し、
前記筒状体内部に保持体を挿嵌するときに前記ベアリングユニットの支持球が前記筒状体内部に転接するようにしたことを特徴とする筒状体保持チャック装置。
【請求項2】
前記取付け穴は、前記周方向に沿う幅よりも軸方向に沿う長さを長く形成して、前記取付け穴内にベアリングユニットを軸方向に沿って複数装着したことを特徴とする請求項1に記載の筒状体保持チャック装置。
【請求項3】
前記ベアリングユニットは、ユニット本体に形成された凹部穴内に支持球および該支持球よりも小径かつ複数の転動ボールを支持球と凹部穴の内壁面との間に循環可能に配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の筒状体保持チャック装置。
【請求項4】
前記ベアリングユニットは保持体中心に向かって取付け穴の底部面に当接し、支持球周囲部にカバー部材が係止した状態で、カバー部材を前記保持体にネジ止めする構造になっていることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の筒状体保持チャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249192(P2010−249192A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97561(P2009−97561)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(591272343)株式会社三橋製作所 (13)
【Fターム(参考)】