説明

筒状体用の保持軸

【課題】 部品の交換や修復作業を容易にしてメンテナンス性の向上を図るとともに、保持状態の筒状体の偏心を極力抑え、高回転にも対応できる筒状体用の保持軸を提供する。
【解決手段】 内部に中空部2を有する筒状体3を保持するものであって、筒状体3の軸心方向に沿ってその内部の中空部2に挿嵌される軸体5と、軸体5の外周部5bに筒状体3の中空部2の内壁部2aに当接可能に設けられた複数の内接体6と、内接体6を圧搾空気により筒状体3の動径方向に変位させるラグユニット7とを備え、筒状体3を内側より保持することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの巻取り/繰り出し用の中空軸や搬送用の中空軸等を保持するための保持軸に関し、特に、筒状体の内部に保持体を挿入して該筒状体を保持するようにした筒状体用の保持軸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の中空部を有する筒状体(中空軸)を保持するために、筒状体の中空部を内側から把持するようにした筒状体用の保持軸が用いられている。
【0003】
従来技術として、例えば、図11に示すように、ロール紙110のコア120の内径側に保持軸200を挿通して、円筒状の保持体210の外周部より複数のラグ250を突出させ、前記コア120の内壁部を利用して内側より把持するようにしたものが提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
保持軸200は、図11〜図14に示すように、中空部を有する保持体210と、該保持体210を支持するための中軸220を備え、該保持体210内部の略中央部にゴムチューブ230を配設するとともに、該ゴムチューブ230の外周部に複数のラグ板240およびラグ250を配設し、保持体210の外周壁部にラグ250と対向して該ラグ250が突設自在とした突出口211を形成して、該突出口211よりラグ250を突出させ、コア120の内側と当接圧着させることでコア120を保持するようにしたものである。
【0005】
保持体210の端部より突設された中軸220は、図12に示すように、ゴムチューブ230と連通する空気通路(図示省略)が軸心方向に沿って形成されるとともに、その先端部に空気注入用プラグ221が設けられている。
また、保持体210の外側端部の外周部には、空気通路に連通する空気注入用プラグ212が設けられている。
【0006】
ゴムチューブ230は、図13,図14に示すように、空気注入用プラグ212または221より圧搾空気が注入されると保持体210内部で円周方向外側に向かい膨張するようになっている。
【0007】
ラグ板240は、図12,図13に示すように、ゴムチューブ230の外周に沿って等間隔(本例では4等配)で、且つ軸心方向に沿って複数列配置されている。ラグ板240の外壁部には、ラグ250が保持軸200の軸心方向に沿って外側に向かい突設されている。
【0008】
また、ラグ板240は、その外側面と保持体210の内壁との間に介在された戻り用バネ260により軸心方向に向かい付勢されている。
【0009】
上記のように構成された保持軸200によりコア120の保持操作を行う場合は、空気注入用プラグ212または221から圧搾空気を注入して、ゴムチューブ230を膨張させる。該ゴムチューブ230の膨張にともない、ラグ板240が保持体210の円周方向外側に向かい進出して、さらに保持体210の突出口よりラグ250が突出する。
【0010】
ラグ250は同一形状に形成されているので、均一に突出するとともに、コア120の内壁に均等に当接圧着して、コア120の内側をグリップする状態となる。
【0011】
一方、前記保持軸200によるコア120の保持状態を開放する場合は、前記空気注入用プラグ212または221にエア抜き用部材を装着して、ゴムチューブ230内の空気を排気する。
【0012】
ゴムチューブ230は空気が排気されことにより収縮し、これに伴いラグ板240を外側に押圧する力が減衰するので、戻り用バネ260によるラグ板240を軸心方向へ付勢する力が勝り、ラグ板240が軸心方向に向かい変位する。
そして、ラグ250はコア120の内壁より離れ、保持体210側に収納されて、コア120は保持軸200による保持状態から開放される。
【0013】
以上のように構成したので、保持体210内に設けたゴムチューブ230を圧搾空気により膨張/圧縮させてラグ250を出没させることで、容易にコア120の保持/保持解除を行うことができる。
【特許文献1】実願昭49−100355号のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記従来例における、ゴムチューブ230を用いてラグ250をコア120の内壁に当接圧着させてコア120を内側よりグリップする方式では、ゴムチューブ230による保持状態は、ゴムチューブ230、ラグ板240およびラグ250が力のバランスにより中空に浮いた状態でコア120をグリップしているので、保持体210中心とグリップしたコア120中心とが偏心することがある。
【0015】
この場合、シートの巻取り/繰り出しの際に、回転するとコア120中心が上下に変動し、巻き取るシートや繰り出すシートが上下に振動して、シートに張力変動が起こる。
これによりシートの流れが蛇行して幅方向のずれが生じ易くなるという問題点がある。
【0016】
さらに、保持体210の内部にありコア120の内面をグリップする部分であるゴムチューブ230、ラグ板240およびラグ250は、固定された基準により保持されていないため、保持体210が回転してコア120中心が上下に変動すると、内部のゴムチューブ230、ラグ板240およびラグ250もまた一緒に上下に変動する。このため、軸の動バランスが取れず、高速回転に対応できないという問題点がある。
【0017】
また、前記ゴムチューブ230が破損した場合、部品の交換や修復作業が専門工場でないと対応できず、メンテナンス性に影響を及ぼすという問題点がある。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、部品の交換や修復作業を容易にしてメンテナンス性の向上を図るとともに、保持状態のコアの偏心を極力抑え、高回転にも対応できる筒状体用の保持軸を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するための本発明に係る筒状体用の保持軸の構成は、次の通りである。
【0020】
請求項1に記載した筒状体用の保持軸は、筒状体の軸心方向に沿って該筒状体内部の中空部に挿嵌される保持体と、前記保持体の外周部に前記筒状体の中空部の内壁部に当接可能に設けられた複数の内接体と、圧搾空気により前記内接体を前記筒状体の動径方向に変位させる内接体変位手段とを備え、前記筒状体を内側より保持する筒状体用の保持軸において、前記保持体の内部に圧搾空気を導入する空気通路を形成し、該保持体の動径方向の外周部に該空気通路と外部とを連通する開口部を前記複数の内接体に対応して複数箇所に形成し、前記内接体変位手段として、前記保持体の動径方向の外周部に前記開口部から導入される圧搾空気により膨縮可能なゴム体を前記複数の内接体に対応して複数箇所に設け、前記内接体を前記ゴム体に対して保持体の動径方向外側に配置したことを特徴とするものである。
【0021】
前記空気通路の構成として、例えば、前記保持体の一端部に空気導入部を設け、該保持体の一端部より軸心方向に沿ってメインの空気通路を形成し、このメインの空気通路から保持体の動径方向にサブの空気通路を形成し、該保持体の外周部にサブの空気通路と外部と連通する開口部を形成するようにしたものであっても良い。
【0022】
前記複数のゴム体は、例えば、それぞれ板状を呈し略同一の厚さとすることで、圧搾空気により複数のゴム体に同様の膨縮作用を生じさせることが可能になる。このゴム体の膨縮作用に伴い複数の内接体をそれぞれ同様に変位させることができる。
【0023】
請求項2に記載した筒状体用の保持軸は、請求項1に記載した構成に加えて、前記内接体変位手段として、前記内接体を保持体の動径方向に沿ってガイドする内接体ガイド部を備えたことを特徴とするものである。
【0024】
請求項3に記載した筒状体用の保持軸は、請求項2に記載した構成に加えて、前記内接体ガイド部の構成として、その内部に前記内接体を収容可能な中空部と、その外周部に前記内接体の一部が突出可能なガイド穴とを形成したことを特徴とするものである。
【0025】
請求項4に記載した筒状体用の保持軸は、請求項3に記載した構成に加えて、前記内接体変位手段の構成として、少なくとも前記内接体、ゴム体及び内接体ガイド部とを一体的に構成し、この内接体変位手段を前記保持体に着脱自在としたことを特徴とするものである。
【0026】
前記内接体変位手段は、例えば、取り付けボルト等の締結部材により保持体に着脱自在に構成したものであっても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1〜4に記載した筒状体用の保持軸によれば、筒状体の軸心方向に沿って該筒状体内部の中空部に挿嵌される保持体と、前記保持体の外周部に前記筒状体の中空部の内壁部に当接可能に設けられた複数の内接体と、圧搾空気により前記内接体を前記筒状体の動径方向に変位させる内接体変位手段とを備え、前記筒状体を内側より保持する筒状体用の保持軸において、前記保持体の内部に圧搾空気を導入する空気通路を形成し、該保持体の動径方向の外周部に該空気通路と外部とを連通する開口部を前記複数の内接体に対応して複数箇所に形成し、前記内接体変位手段として、前記保持体の動径方向の外周部に前記開口部から導入される圧搾空気により膨縮可能なゴム体を前記複数の内接体に対応して複数箇所に設け、前記内接体を前記ゴム体に対して保持体の動径方向外側に配置したことで、部品の交換や修復作業を容易にしてメンテナンス性の向上を図るとともに、保持状態のコア(中空部)の偏心を極力抑え、高回転にも対応できるという優れた効果を奏し得る。
【0028】
すなわち、前記保持体の内部に圧搾空気を導入する空気通路を形成し、該保持体の動径方向の外周部に該空気通路と外部とを連通する開口部を前記複数の内接体に対応して複数箇所に形成するとともに、前記ゴム体を複数の内接体に対応して複数箇所に設けたことで、それぞれのゴム体や内接体毎にメンテナンスを容易に行うことができる。例えば、ある箇所のゴム体や内接体に不良事態が生じても、その部分のみをメンテナンスすることで簡単に対処することができる。
【0029】
また、前記内接体を変位させるためにゴム体(例えばウレタンゴム製のゴム板)を用いることで、簡単な構成で内接体変位手段を構成できるので、部品の交換や修復作業を容易に行うことができる。
【0030】
さらに、保持体の動径方向の外周部を基準にゴム体が膨縮するように構成され、このゴム体の防縮作用により内接体が変位するため、すなわち、内接体の変位の基準が保持体の外周部であり、その基準位置が変化しないため、筒状体を保持した状態におけるコアの偏心を極力抑えることができ、高回転にも対応することができる。
【0031】
また、請求項1〜4に記載の発明で得られる上記共通の効果に加え、請求項2〜4に記載した発明によれば次の効果を得ることができる。
【0032】
すなわち、請求項2に記載した発明によれば、前記内接体変位手段として、前記内接体を保持体の動径方向に沿ってガイドする内接体ガイド部を備えたことで、内接体を同一方向に安定して変位させることができる。
【0033】
請求項3に記載した発明によれば、前記内接体ガイド部の構成として、その内部に前記内接体を収容可能な中空部と、その外周部に前記内接体の一部が突出可能なガイド穴とを形成したことで、簡単な構成で内接体を収容できるとともに、容易に内接体の位置決めを行うことができる。
【0034】
請求項4に記載した発明によれば、前記内接体変位手段を、少なくとも前記内接体、ゴム体及び内接体ガイド部とを一体的に構成したユニット式とし、前記保持体に着脱自在としたことで、組立て作業の効率化を図り、容易に組立てることができる。また、前記内接体変位手段の保持体への組付け位置が固定されているので、保持体と内接体変位手段との組付け状態がばらつくことなく、組立て精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図9は発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明の実施形態に係る筒状体用の保持軸の全体構成を示す外観図、図2は前記保持軸の構成を示す側面断面図、図3は前記保持軸を構成する軸体とラグユニットの取り付け部の構成を示す部分詳細図、図4の(a)は図2のA−A断面矢視図、(b)は図2のB−B断面矢視図、図5は前記軸体の構成を示す斜視図、図6は前記ラグユニットの構成を示す斜視図、図7は前記ラグユニットの構成を示す平面図、図8は前記ラグユニットの取り付け側の構成を示す裏側斜視図、図9は前記軸体とラグユニットとの取り付け状態を示す部分詳細図である。
【0036】
本実施形態の筒状体用の保持軸1は、図1,図2に示すように、内部に中空部2を有する筒状体3を保持するものであって、該筒状体3の軸心方向に沿ってその内部の中空部2に挿嵌される軸体(保持体)5と、軸体5の外周部5bに筒状体3の中空部2の内壁部2aに当接可能に設けられた複数の内接体6と、内接体6を圧搾空気により筒状体3の動径方向(軸心から外周に向かう方向)に変位させるラグユニット(内接体変位手段)7とを備え、筒状体3を内側より保持するものである。
【0037】
軸体5は、図2,図5に示すように、一端部5a側を軸心方向に沿って所定の範囲で外周部5bより小径で段付状に形成された略円柱状を呈している。軸体5の動径方向の外周部5bには、ラグユニット7が装着されるラグユニット取り付け部51が複数箇所に掘り下げ形成されている。
【0038】
本実施形態では、ラグユニット7は、軸体5の外周に沿って3等配された位置に3箇所設けられている。尚、ラグユニット7の設置は、これに限定されるものではなく、軸体5の形状や大きさによって適宜に最適な箇所に最適な個数を設置するものであって良い。
【0039】
軸体5の内部には、圧搾空気を通す空気通路52が形成され、一端部5aには空気通路52に圧搾空気を導入する空気導入部たる空気注入用プラグ53が設けられている。
【0040】
空気通路52は、一端部5aより軸心方向に沿って形成されるメインの空気通路(以下、第1空気通路と称する。)52aと、この第1空気通路52aから動径方向に向かいラグユニット取り付け部51内で外部に連通するサブの空気通路(以下、第2空気通路と称する。)52bとにより構成されている。
【0041】
第2空気通路52bは、それぞれのラグユニット取り付け部51毎に対応して2箇所ずつ形成されている。
【0042】
ラグユニット取り付け部51は、図3,図5に示すように、軸体5の外周部5bにおいて軸心方向に沿って長い長穴状に掘り下げられている。その掘り下げ深さは、ラグユニット取り付け部51内にラグユニット7が装着された際に、軸体5の外周部5bとラグユニット7の外側面(後述するラグガイド部8の外周部8a)とが略面一になるようになっている。
【0043】
ラグユニット取り付け部51の底面51aには、その両端部付近にラグユニット7を螺着するための取り付け穴(ねじ穴)51bが形成され、また、長手方向に沿って略3等配された位置に第2空気通路52bに連通する開口部52cが2箇所形成されている。
【0044】
その開口部52cの周囲には、該開口部52cを包囲してOリング54を配置するOリング取り付け部51cが掘り下げ(座ぐり)形成されている。Oリング取り付け部51cは、Oリング54の厚さ(Oリング54の線径)よりも僅かに浅い深さで形成されている。
【0045】
すなわち、Oリング取り付け部51cにOリング54を配置した状態で、底面51aから僅かに突出するOリング54の一部が該Oリング54の潰し代となり、ラグユニット7と開口部52cとをOリング54を介して密着させることができる。
【0046】
ラグユニット7は、図2,図3,図4(a)に示すように、筒状体3の内壁部2aに当接される内接体6と、内接体6を軸体5の動径方向に沿ってガイドするラグガイド部8と、開口部52cから導入される圧搾空気により膨縮可能なゴム板(ゴム体)9と、ゴム板9をラグガイド部8に固定する底板10とを備え、これらを一体的に構成したものである。
【0047】
内接体6は、筒状体3の中空部2の内壁部2aに押し当てられるラグ61と、ゴム板9に当接するラグ板62とにより構成されている。
【0048】
ラグ61は、図3に示すように、側面視で軸体5の軸心方向に沿って長い矩形状を呈し、上面61aの両端部61b,61bが斜めに面取りされ、その上面61aには、図4(a),図6に示すように、横断面視で上面61aの形状が略鋸歯状にギザギザ状態になるように長手方向に沿って複数のV溝61cが並設されている。
【0049】
ラグ板62は、平面視で軸体5の軸心方向に沿って長い長矩形状を呈し、図3,図4(a)に示すように、一側面(表面)62aの幅方向略中央部に、長手方向に沿ってラグ61が略垂直に立設されている。
【0050】
本実施形態では、ラグ61は、ラグ板62の他側面(裏面)62b側から取り付けねじ63によって一側面62a上に一体的に螺着するようにしている。
尚、内接体6の構成は、上述した構成に限定されるものではなく、例えば、ラグ61とラグ板62とを溶接、溶着、嵌着、接着剤による接着等により一体的に構成するものであっても良い。
【0051】
ラグガイド部8は、図4(a),(b)、図6〜8に示すように、平面視で両端部が円弧状に形成された長円形状を呈し、且つ、ラグユニット取り付け部51の外側に露出する外周部8aが軸体5の外周部5bの曲率と略同様な曲率で形成されている。
【0052】
ラグガイド部8の内部には、内接体6を収容可能な中空部81と、その外周部8aに内接体6のラグ61を突出可能なガイド穴82とが形成されている。
【0053】
中空部81は、ラグ板62が収容可能な大きさの長穴状の溝であって、この中空部81内に内接体6が収容された状態で、該内接体6が軸体5の動径方向に所定量変位可能な深さで形成されている。
【0054】
ガイド穴82は、平面視でラグ61の外形形状と略同様な形状を呈し、開口幅は中空部81の幅より狭く、ラグ61が出没可能に形成されている。
【0055】
ラグガイド部8の底面83には、長手方向両端部にラグユニット取り付け部51の底面51aに取り付けるための取り付け部83aが形成され、該底面83の取り付け部83a,83aの間にゴム板9及び底板10が取り付けられるゴム板取り付け部83bが形成されている。
【0056】
取り付け部83aには、軸体5に取り付けるための締結ボルト94用の取り付け穴83a1が形成されている。
【0057】
ゴム板取り付け部83bは、図9に示すように、取り付け部83aから段付状に掘り下げて形成されている。その掘り下げ深さ(段付量)Hは、ゴム板9と底板10とを重ね合わせた厚さよりもH1だけ僅かに深く形成されている。
【0058】
すなわち、ラグガイド部8をラグユニット取り付け部51に装着した状態で、底板10の取り付け面10bとラグユニット取り付け部51の底面51aとの間に僅かに隙間51sが構成されるようになっている。
【0059】
この隙間51sは、前述したOリング54が底面51aより突出する量より少なく形成されており、該Oリング54の突出する部分が該Oリング54の潰し代となり、ラグユニット7の底板10とOリング54を密着させるようになっている。
【0060】
ゴム板取り付け部83bには、図7,図8に示すように、ゴム板9と底板10とを締結ねじ84により取り付けるための取り付け穴(ねじ穴)83b1が中空部81の開口部81aを包囲するように複数箇所に形成されている。
【0061】
また、ゴム板取り付け部83bには、中空部81の開口部81aを包囲するようにその外周に沿って長円状の溝部83cが複数列形成されている。
【0062】
ゴム板9は、ウレタンゴムで形成され、平面視でゴム板取り付け部83bの外周に沿った形状と略同様の形状、すなわち略矩形状を呈し、ゴム板取り付け部83bに配置された状態で、該ゴム板取り付け部83bの取り付け穴83b1と対向する位置に締結ねじ84用の取り付け穴(貫通穴)9aが形成されている。
【0063】
底板10は、平面視でゴム板9と略同形状を呈し、ゴム板取り付け部83bに配置された状態で、該ゴム板取り付け部83bの取り付け穴83b1と対向する位置に締結ねじ84用の取り付け穴(貫通穴)10cが形成されるとともに、図3,図4(a)に示すように、ラグユニット7をラグユニット取り付け部51に装着した時に、開口部52cと対向する位置に連通穴10dが2箇所形成されている。
【0064】
底板10のゴム板9と当接する一側面10aには、底板10をラグガイド部8に装着した状態で該ラグガイド部8に形成された溝部83cと対向する位置に、溝部83cと略同形状の溝部10eが複数列形成されている。
【0065】
次に、本実施形態に係る筒状体用の保持軸1の作用について説明する。
まず、ラグユニット7を構成する。
図3,図4(a)に示すように、ラグガイド部のガイド穴82からラグ61が突出するように該ラグガイド部8の中空部81に内接体6を配置する。
【0066】
そして、ラグガイド部8のゴム板取り付け部83に、ゴム板9、底板10の順に重ね合わせて配置し、ゴム板9をゴム板取り付け部83と底板10とで挟み込む。この状態で、複数の締結ねじ84によりゴム板9及び底板10をゴム板取り付け部83に締め付け固定する。
【0067】
この時、ゴム板9は、弾性変形が生じる力より強い力でゴム板取り付け部83と底板10とに押し付けられると、ゴム板9の表面の一部が変形してゴム板取り付け部83の溝部83cと底板10の溝部10eに入り込んだ状態でゴム板取り付け部83と底板10とにより挟持される。これにより、ゴム板9は、ゴム板取り付け部83と底板10との間で位置ズレが生じ難くなり確実に固定される。
【0068】
また、溝部10eに包囲されたゴム板9と底板10との境界部は、溝部10eとそこに入り込んだゴムによって更に密閉された状態となる。
【0069】
このようにして、内接体6,ラグガイド部8,ゴム板9及び底板10とが一体的に構成されたラグユニット7が出来上がる。
【0070】
次に、ラグユニット7を軸体5に装着する。
まず、図3,図4(b)に示すように、軸体5のラグユニット取り付け部51内のOリング取り付け部51cにOリング54を配置し、そこにラグユニット7を配置する。
そして、締結ボルト94によりラグガイド部8を軸体5に締め付け固定する。
【0071】
この時、Oリング54は、弾性変形が生じる力より強い力でラグユニット7により押し付けられると押し潰されてOリング取り付け部51cと底板10とに密着した状態となる。これにより、開口部52cと連通穴10dとが密閉された状態で連通される。
【0072】
そして、ラグガイド部8の取り付け部83aとラグユニット取り付け部51の底面51aとは密着された状態となり、ラグユニット7は軸体5に対して動径方向で位置決め固定される。
【0073】
次に、保持軸1により筒状体3を保持する場合について説明する。
まず、図1に示すように、筒状体3の中空部2に軸体5を配置する。
そして、この軸体5の一端部5aの空気注入用プラグ53より圧搾空気を注入する。
【0074】
注入された空気は、第1空気通路52a、第2空気通路52bを通って開口部52cからそれぞれのラグユニット取り付け部51に供給される。
【0075】
ラグユニット取り付け部51に供給された空気は、底板10の連通穴10dを通ってゴム板9を押圧する。供給された空気の圧力がゴム板9の弾性力に勝ると、ゴム板9を変形させながらゴム板9と底板10との間に入り込み、ゴム板9を外側に膨出させる。
【0076】
ゴム板9が膨出するに連れてラグ板62が押し上げられ、これに伴いラグ61がガイド穴82から外側に突出して筒状体3の内壁部2aに押し当てられる。
【0077】
本実施形態では、軸体5の外周部5bを3等配した位置の3箇所にラグユニット7が配置されているので、それぞれのラグユニット7の内接体6が筒状体3の内壁部2aに当接すると、それぞれの内接体6は、同じ空気圧で膨出したゴム板9により同じ様に内壁部2aに押し当てられるので、保持軸1は筒状体3の中空部2と同軸上に配置される。
【0078】
更に保持軸1の空気通路52に圧搾空気が供給されると、筒状体3は、保持軸1によって中空部2内側より均一な圧力で、且つ確実に保持される。
このようにして、保持軸1により筒状体3を容易に保持することができる。
【0079】
保持軸1による筒状体3の保持状態を開放する場合は、軸体5の空気注入用プラグ53にエア抜き用治具(図示省略)を装着して軸体5内部から空気を排気する。
【0080】
すると、ゴム板9と底板10との境界部に供給された空気が排気され、ゴム板9はゴム板9自体の弾性力により元の状態に復元する。これに伴い、内接体6はゴム板9による押し圧力がなくなるため、動径方向外側への付勢がなくなり変位自在となる。
これにより、筒状体3の中空部2から保持軸1の取り外しが可能になる。
【0081】
以上にように構成したので、本実施形態に係る保持軸1によれば、中空部2の軸心と軸体5の軸心との偏心を極力抑制して、中空部2の内側より確実に保持することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、筒状体用の保持軸1は、別体で構成した軸体5とラグユニット7とを使用時に一体的に組付けるように構成したので、組立て作業の効率化を図ることができる。
【0083】
さらに、本実施形態によれば、別体で構成された複数のラグユニット7を軸体5の外周部5bにそれぞれに装着するようにしたので、1つのラグユニット7のゴム板9が損傷した場合であっても、保持装置(図示省略)に保持軸1を装着した状態で、損傷したラグユニット7のみを個別に着脱交換することができるので、作業を容易にするととともに短時間で作業を行うことができ、著しくメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、複数のラグユニット7は、それぞれ軸体5のラグユニット取り付け部51の底面51aを基準に取り付けられ、ゴム板9も底板10を介してラグユニット取り付け部51の底面51aを基準に取り付けられるとともに膨張するため、それぞれのラグユニット7に設けられたラグ61の突出量を均一にすることができる。
【0085】
さらに、本実施形態によれば、ゴム板取り付け部83bと底板10に、中空部81の開口部81aを包囲するように長円状の溝部83c,10eをそれぞれ形成したので、ゴム板9による密閉性を向上させるとともに、該ゴム板9の位置ズレを防止することができる。
【0086】
尚、本実施形態では、軸体5の外周部5bの外周方向3等配の位置に3箇のラグユニット7を装着するようにしているが、本発明は、ラグユニット7の配置構成に限定されるものではなく、ラグユニット7を適宜な位置に適宜な個数を設けるようにしても良い。
【0087】
さらに、保持する筒状体の形状に応じて、使用しないラグユニット7は取り外し、そのラグユニット取り付け部51を閉塞する蓋部材を設けるようにしても良い。
【0088】
このよう構成することで、保持される筒状体3の大きさや使用目的に応じて最適な保持軸1を提供できる。
【0089】
また、本実施形態では、ラグ61の上面61aにV溝61cを形成して、筒状体3の内壁部2aとの当接状態を滑り難くしているが、ラグ61の当接部の形状はこれに限定されるものではない。
【0090】
さらに、本実施形態では、ゴム板9の材質にウレタンゴムを使用しているが、本発明は、ゴム板9を形成するゴム材の種類に限定されるものではなく、例えば、シリコンゴムや天然ゴム等を使用するものであってもよく、圧縮変形性、復元性のよいゴム材が望ましい。
【0091】
また、本実施形態のゴム板9は、単一のゴム材で構成しているが、本発明は、柔軟な弾性体であって復元力を有するものであれば、ゴム体の構成や材質に限定されるものではなく、例えば、複数のゴム材を組み合わせたものや、また、ラグ板62との接触面に自己潤滑性を有する合成樹脂をコーティングして、伸縮時の変位を容易にするようにしたものであっても良い。
【0092】
さらに、本実施形態では、ラグユニット7の構成として、ゴム板9を底板10によりラグガイド部8に締結固定するようにしているが、本発明は、内接体変位手段たるラグユニット7の構成に限定されるものではない。
【0093】
本実施形態の変形例として、例えば、図10に示すように、ラグガイド部18とラグユニット取り付け部151の底面151aとでゴム板19を直接挟み込むようにしたものであっても良い。
【0094】
具体的には、ラグガイド部18のゴム板取り付け部183bの深さをゴム板19の厚さよりも僅かに浅くして、ゴム板19に潰し代を設けて密着性を高めるようにしたものである。図中の符号184は、潰されて拡張したゴム板19の一部を収容する隙間である。
【0095】
このよう構成することで、前述したOリング54及び底板10を用いることなく、簡単な構成でラグガイド部18とラグユニット取り付け部151の底面151aとの間にゴム板19を配置することができる。
【0096】
さらに、本発明の筒状体用の保持軸は、上述した図示例にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係る筒状体用の保持軸の全体構成を示す外観図である。
【図2】前記保持軸の構成を示す側面断面図である。
【図3】前記保持軸を構成する軸体とラグユニットの取り付け部の構成を示す部分詳細図である。
【図4】(a)は図2のA−A断面矢視図、(b)は図2のB−B断面矢視図である。
【図5】前記軸体の構成を示す斜視図である。
【図6】前記ラグユニットの構成を示す斜視図である。
【図7】前記ラグユニットの構成を示す平面図である。
【図8】前記ラグユニットの取り付け側の構成を示す裏側斜視図である。
【図9】前記ラグユニットの軸体への取り付け状態を示す部分詳細図である。
【図10】前記ラグユニットの取り付け部の変形例を示す部分詳細図である。
【図11】従来の保持体を用いた保持軸の構成の一例を示す概略図である。
【図12】前記保持体の構成を示す部分断面図である。
【図13】前記保持体の構成を示す側面断面図である。
【図14】前記保持体の保持状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 筒状体用の保持軸
2 中空部
2a 内壁部
3 筒状体
5 軸体(保持体)
6 内接体
7 ラグユニット(内接体変位手段)
8,18 ラグガイド部
9,19 ゴム板(ゴム体)
10 底板
10d 連通穴
10e 溝部
51,151 ラグユニット取り付け部
51s 隙間
52 空気通路
52a 第1空気通路
52b 第2空気通路
52c 開口部
53 空気注入用プラグ
54 Oリング
61 ラグ
61c V溝
62 ラグ板
83b,183b ゴム板取り付け部
83c 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の軸心方向に沿って該筒状体内部の中空部に挿嵌される保持体と、前記保持体の外周部に前記筒状体の中空部の内壁部に当接可能に設けられた複数の内接体と、圧搾空気により前記内接体を前記筒状体の動径方向に変位させる内接体変位手段とを備え、前記筒状体を内側より保持する筒状体用の保持軸において、
前記保持体は、その内部に圧搾空気を導入する空気通路が形成され、該保持体の動径方向の外周部に該空気通路と外部とを連通する開口部が前記複数の内接体に対応して複数箇所に形成され、
前記内接体変位手段として、前記保持体の動径方向の外周部に前記開口部から導入される圧搾空気により膨縮可能なゴム体が前記複数の内接体に対応して複数箇所に設けられ、
前記内接体は、前記ゴム体に対して保持体の動径方向外側に配置されたことを特徴とする筒状体用の保持軸。
【請求項2】
前記内接体変位手段として、前記内接体を保持体の動径方向に沿ってガイドする内接体ガイド部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の筒状体用の保持軸。
【請求項3】
前記内接体ガイド部は、その内部に前記内接体を収容可能な中空部と、その外周部に前記内接体の一部が突出可能なガイド穴とが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の筒状体用の保持軸。
【請求項4】
前記内接体変位手段は、少なくとも前記内接体、ゴム体及び内接体ガイド部とが一体的に構成され、前記保持体に着脱自在とされていることを特徴とする請求項3に記載の筒状体用の保持軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−349101(P2006−349101A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178022(P2005−178022)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(591272343)株式会社三橋製作所 (13)
【Fターム(参考)】