筒状編地の開口部形成方法、筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下
【課題】従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることが可能な筒状編地の開口部形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法は、丸編機を用いて筒状編地1を編成する際に当該筒状編地1に開口部16を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって開口部16のための補強部12を編成する補強部編成工程と、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、補強部12に対応するコースの一部分を不編成として開口部16を形成する開口部形成工程とを含む。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法は、丸編機を用いて筒状編地1を編成する際に当該筒状編地1に開口部16を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって開口部16のための補強部12を編成する補強部編成工程と、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、補強部12に対応するコースの一部分を不編成として開口部16を形成する開口部形成工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、編地製品(ニット製品)は、素材や編目編成の工夫により外的要因からの物理的な保護や、保湿、抗菌防臭などの環境的保護を目的としたものが多かったが、昨今では、その価値は、単なる生活衣料に留まらず、医療やファッション等の業界において、新しい価値が見出されるようになってきている。例えば、靴下においては、足の特定部分の締付力を強化するためのいわゆるサポータとして形を変え、筋肉や腱の矯正に役立つものが要望されている。更には、元来の足や脚のかたちに添った靴下から形状そのものを変え、つま先や足裏部分が無いものなど、一部分の編地を欠くことによるファッション性豊かなレッグウェアが若者からニーズを集めており、その性能性に加えて見栄えの良さも要望されている。
【0003】
特許文献1及び2には、この種の特殊形状の靴下を製造する方法として、靴下に開口部を形成する方法が開示されている。特許文献1に開示の靴下の開口部形成方法では、編地を編成する際に開口部形成部分に抜き糸を挿入して編み、編成完了後に抜き糸を引き抜くことによって開口部を形成している。また、特許文献2に開示の靴下の開口部形成方法では、一旦、通常の製造工程にて靴下を編立後、オーバーロックミシン等のミシンを用いて裁断や縫製を行うことによって開口部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615698号明細書
【特許文献2】実用新案登録第3114044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の靴下の開口部形成方法では、靴下の製造工程において、抜き糸を引き抜くという通常の製造工程では不要な工程が加わるため、人件費等の生産コストが増加すると共に、生産効率が低下するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の靴下の開口部形成方法においても、通常の製造工程に裁断や縫製を行う工程が加わるため、生産コストの増加や生産効率の低下という問題があった。更に、ミシンを用いた縫製は逢着を主たる目的とする手法であるため、その縫製部分ではゴロつき感を感じたりして自然な着用感が得られないなど、肌触りや着用感に問題があった。また、ミシンの編糸が表面に露出するなど、見栄えが悪いという問題もあった。
【0007】
ここで、生産コストの増加や生産効率の低下の問題点に関しては、編地を編成する際に丸編機の性能を用いてコースの一部を不編成とすることにより開口部を形成する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、編目の構成上、着用により開口部、特に開口部の編成終了端辺側の編目のほつれや糸切れ等によって、開口部が極端に破損しやすいという耐久性の問題が考えられる。この開口部の耐久性の問題に関しては、開口部の端辺部にカットボス手法を用いることが考えられるが、開口部の端辺部からカット端末糸が出てしまい、非常に開口部の見栄えが悪くなってしまうという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることが可能な筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の筒状編地の開口部形成方法は、丸編機を用いて筒状編地を編成する際に当該筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって開口部のための補強部を編成する補強部編成工程と、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、補強部に対応するコースの一部分を不編成として開口部を形成する開口部形成工程とを含む。
【0010】
本発明によれば、補強部編成工程は、筒状編地を編成するための靴下編機を含む丸編機のシリンダの往復回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されており、開口部形成工程においても、同様に靴下編機を含む丸編機のシリンダの回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されているので、これらの工程は、フルコンピュータ制御下の一連の連続する編成工程とすることができる。したがって、本発明によれば、従来のように余分な工程を経ずして、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制することができ、開口部を有する筒状編地製品を生産することができる。
【0011】
更に、本発明によれば、補強部編成工程によって、開口部の編成終了端辺側に補強部を編成するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損を防止することができ、併せてカットボス手法を使用する必要がないため、カット端末糸の残存をなくすことができる。その結果、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0012】
上記した補強部編成工程では、合成繊維を含む編糸を用いて補強部を編成することが好ましく、上記した筒状編地の開口部形成方法は、筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含むことが好ましい。
【0013】
合成繊維は、一般に延伸製法によって成形されるので、熱を加えると縮小する特性を有している。これによれば、熱セット工程において補強部の編糸が縮小するので、補強部の編目が締まり、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0014】
また、上記した補強部編成工程では、熱融着糸を含む編糸を用いて前記補強部を編成することが好ましく、上記した筒状編地の開口部形成方法は、筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
これによれば、熱セット工程において、補強部の編糸が縮小して補強部の編目が締まると共に、編糸の編目の交差部分が熱融着するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0016】
また、上記した補強部編成工程では、針下げ編成によって補強部を編成することが好ましい。
【0017】
これによれば、補強部の編目が編成終了端辺側に向けて次第に目増しすることにより開口部を覆うように補強部が働くので、針上げ、その他の往復回転運動による補強部編成と比べて、より効果的に開口部を補強することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0018】
また、上記した補強部編成工程では、補強部の編成終了端辺側の幅が開口部の幅よりその両端部に対して広くなるように補強部を編成することが好ましい。
【0019】
これによれば、開口部の幅方向に直交する方向に力が加わったときに、開口部の幅方向の両端に加わる力が分散されるので、開口部の編成終了端辺側の両端部のほつれや糸切れ等を防止することができ、その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0020】
また、上記した筒状編地の開口部形成方法は、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、開口部の編成開始端辺側に対応するコースに弾性糸を挿入する弾性糸挿入工程を更に含むことが好ましい。
【0021】
これによれば、開口部の編成開始端辺側のほつれをも防止することができるので、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0022】
本発明の筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下は、それぞれ、上記した筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する。
【0023】
これらの筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下によれば、上記したように、従来の開口部を有さない筒状編地と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0024】
上記した靴下において、開口部は、脹脛の上部及び下部のうちの少なくとも何れか一方に位置することが好ましい。
【0025】
この靴下によれば、脹脛の上部と下部に耐久性及び見栄えに優れた開口部を有するので、靴下を着用したまま、各開口部より粘着パッドを着用者の足に装着する着用電気治療用靴下として好適に利用可能である。
【0026】
また、上記した靴下において、開口部は、かかと部に位置することが好ましい。
【0027】
この靴下によれば、例えば、つま先側部分が開放された靴下に適用すれば、ファッション性と耐久性とを兼ね備えたトレンカを得ることができる。
【0028】
また、上記した靴下において、丸編機のシリンダの編針に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針で前記足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で前記甲側編成部分を編成することが好ましい。
【0029】
一般に、丸編機では、シリンダにおける一方の半分の編針で靴下の甲側編成部分を編成し、他方の半分の編針で靴下の足底側編成部分を編成する。その際、弾性糸の挿入位置は足底側編成部分に固定される。そのため、例えば、弾性糸挿入工程において挿入した弾性糸の挿入端末が脹脛に形成された開口部に出てしまい、見栄えが低下してしまう。そこで、本発明の靴下では、甲側を編成するための編針で足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で甲側編成部分を編成するように反転することにより、弾性糸の挿入端末の出所を見かけ上すね側に転置することができる。その結果、開口部の見栄えの低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下において、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて優れた耐久性及び見栄えを有する開口部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】丸編機による編地の一例を拡大して示す図である。
【図2】筒状編地に形成した袋状突起とその展開図を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る靴下を側面から示す図である。
【図4】図3に示す靴下における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図5】図4に示す補強部の針下げ・針上げ編成の種々の変形を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る靴下を側面から示す図である。
【図7】図6に示す靴下における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図8】図6及び図7に示す弾性糸挿入部の編地を拡大して示す図である。
【図9】本発明の変形例1〜3に係る靴下を側面から示す図である。
【図10】本発明の変形例4に係る靴下を側面から示す図である。
【図11】本発明の靴下の開口部形成方法の変形例を模式的に示す図である。
【図12】本発明の変形例5に係る手袋を示す図である。
【図13】図12に示す手袋における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図14】本発明の変形例6に係る手袋を甲側、手のひら側から順に示す図である。
【図15】図14に示す手袋を拡大して示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0033】
本発明では、靴下やストッキング等の筒状の編地製品(ニット製品)や袋状の編地製品を編み立てるための丸編機を用いる。この丸編機は、円筒状のシリンダを備えたフルコンピュータ式の編立機械である。フルコンピュータ式とは、コンピュータ上で作成した製品全体の編目設計データを電磁的記録媒体により編立機械に移行し、当該編目設計データに基づいて電気的に自動編立を行うことができる、設計・編立の一連の作業をコンピュータ式に処理する編立機械を示す。
【0034】
この種の丸編機では、円筒状のシリンダが自転すると共に、周上に配置された編針が上下運動を繰り返し、図1に示すように編糸2をループ状に編成する(例えば、平編み)。そして、360度の回転(1回転)で1コースの編立が行われ、同方向に回転編立が繰り返されることによって、筒状の編地製品が編成される。このシリンダの反時計回りの回転を一般的に正回転と称し、時計回りの回転を一般的に逆回転と称する。一方、例えば、靴下のかかと部のように袋状突起を編成する際には、シリンダを1コース単位で正回転・逆回転を繰り返し、任意の針で編成するが、このシリンダの運動を一般的に往復回転と称する。
【0035】
図2(a)は筒状編地に形成した袋状突起を示す図であり、図2(b)は袋状突起の生地を平面に展開した状態の展開図を示す図である。図2(b)における右方向矢印が正回転を示し、左方向矢印が逆回転を示す。そして、袋状突起A’,B’は、左右矢印が交互に示されるように、正回転及び逆回転の往復回転により形成される。また、袋状突起A’,B’を裏面方向Xから見た場合の台形編地A’はA方向に編み立てられるが、この編立を針上げ(又は目減らし)と称する。また、正面方向Yから見た場合の台形編地B’はB方向に編み立てられるが、この編立を針下げ(又は目増し)と称する。
[第1の実施形態]
【0036】
本発明の第1の実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の第1の実施形態に係る靴下の開口部形成方法について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る靴下1を側面から示す図であり、図4は、図3に示す靴下1における部分Aを拡大して示す展開図である。
(筒状部編成工程)
【0037】
まず、上記した丸編機のシリンダの正回転運動によって、靴下1の筒状部10を編成する。製品の用途に応じた素材や編成方法とし、締付け金具等を調整する。本実施形態の靴下1では、例えば、150デニールのポリエステル長繊維を用いて平編みにて編成し(図1)、市販の着圧ソックスの標準的な締付け力とする。
(補強部編成工程)
【0038】
次に、開口部16に対応する部分においてシリンダを往復回転運動させることによって、開口部16のための補強部12を編成する。例えば、補強部12も図1に示す平編みにて編成する。補強部12の編糸としては、筒状部10から切替えることによって種々な繊維を適用可能であるが、合成繊維をカバーリング糸とするFTY(例えば、ポリウレタンにポリエステルをカバーリングしたもの)を用いることが好ましい。これによれば、ポリエステル自身の熱セットによる縮小に加え、ポリウレタンの伸縮性による縮小力をも得ることができるため、編目が強固になり補強効果を高めることができる。
【0039】
合成繊維は、一般に延伸製法によって成形されるので、熱を加えると縮小する特性を有している。また、合成繊維は、熱を加えると固着する性質を有している。これにより、後述する熱セット工程を経ることによって、補強部12の編糸が縮小し、補強部12の編目が締まると共に、編糸の編目の交差部分が固着する。その結果、補強部12の編成終了端辺12a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損、すなわち、開口部16の編成終了端辺16a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0040】
更に、開口部16の耐久性及び見栄えをより得るために、補強部12の編糸として熱融着糸を用いることが好ましい。これにより、後述する熱セット工程を経ることによって、熱融着糸の編目の交差部分が熱融着する。その結果、補強部12の編成終了端辺12a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損、すなわち、開口部16の編成終了端辺16a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0041】
なお、補強部12の編糸としては、ポリウレタンに熱溶着糸をカバーリングした熱溶着FTYが用いられてもよいし、熱溶着FTYと通常のFTYとが併用されてもよい。
【0042】
また、補強部12を編成する往復回転運動に切り替わる10〜20編目前、好ましくは15編目前の筒状部10の編成において、補強部12の編糸を挿入し始め、3〜10編目前、好ましくは5編目前で筒状部10の編糸を抜くことが好ましい。これにより、筒状部10の編糸と補強部12の編糸とが数目重なり、補強部12の編糸がほつれることを防止することができる。
【0043】
また、補強部12は、針下げ(目増し)編成によって編成されることが好ましい。これにより、補強部12の編目が編成終了端辺12a側に向けて次第に目増しするので、着用時の編目のほつれ、特に開口部16の編成終了端辺16a側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0044】
なお、補強部12には、図5に示すように、種々の編成が適用可能である。例えば、補強部12は、図5(a)に示すように針上げ(目減らし)編成であってもよいし、図5(b)に示すように針下げ編成及び針上げ編成を用いなくてもよいし、図5(c)に示すように針上げ編成と針下げ編成とを順次に組み合わせてもよいし、図5(d)に示すように針下げ編成と針上げ編成とを順次に組み合わせてもよい。
【0045】
また、補強部12の編成終了端辺12a側の幅は、開口部16の幅よりその両端部12bにおいて2編目以上広くすることが好ましい。これにより、開口部16の編成終了端辺16a側の両端部16bのほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、その結果、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0046】
また、補強部12は、4コース以上10コース以下(往復回転運動2往復以上5往復以下)とすることが好ましい。補強部12では、コース数が多いほど面積が大きくなり補強効果が高くなるが、その分編地の露出が増えるので見栄えが悪くなる。補強部12を4コース以上10コース以下とすることにより、開口部16の耐久性及び見栄えをバランスよく効果的に高めることができる。
(開口部形成工程)
【0047】
次に、シリンダを正回転運動に戻し、開口筒状部14を編成する。開口筒状部14の編成では、補強部12に対応するコースの一部分を不編成とすることによって開口部16を形成する。
【0048】
本実施形態では、これらの筒状部編成工程、補強部編成工程、及び、開口部形成工程をもう一度繰り返し、脹脛の上部と下部との2か所に開口部16及び補強部12を形成する。その後、筒状部編成工程、かかと部編成工程、筒状部編成工程、及び、つま先部編成工程を経て、編成工程を完了する。
(熱セット工程)
【0049】
その後、熱セット工程において、編成完了後の靴下を金属製の型板に装着し、高圧蒸気をかける。これにより、形を整え、靴下1を得る。なお、熱セット工程は、製品によっては不要な場合もある。
【0050】
このように、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、開口部形成工程は、筒状編地を編成するための靴下編機を含む周知の丸編機のシリンダの回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されており、補強部編成工程においても、同様に靴下編機を含む周知の丸編機のシリンダの往復回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されているので、これらの工程は、フルコンピュータ制御下の一連の連続する編成工程とすることができる。したがって、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、従来のように裁断及び縫製等の工程を要さず、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制することができ、開口部を有する靴下1を生産することができる。
【0051】
また、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、補強部編成工程によって、開口部16の編成終了端辺16a側に補強部12を編成するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部16の編成終了端辺16a側のほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、その結果、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0052】
また、この第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する靴下1は、従来の開口部を有さない筒状編地と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0053】
また、第1の実施形態の靴下1によれば、脹脛の上部と下部に耐久性及び見栄えに優れた開口部16を有するので、靴下を着用したまま、各開口部16より粘着パッドを着用者の足に装着する着用電気治療用靴下として好適に利用可能である。
[第2の実施形態]
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の第2の実施形態に係る靴下の開口部形成方法について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る靴下1Aを側面から示す図であり、図7は、図6に示す靴下1Aにおける部分Aを拡大して示す展開図である。
【0055】
第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法では、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法に加えて弾性糸挿入工程を更に有する点において第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法におけるその他の工程は、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法の各工程と同一である。
(弾性糸挿入工程)
【0056】
開口部形成工程終了後、筒状部10の編成と同様に平編みによって、弾性糸挿入部18を編成する。この弾性糸挿入部18の編成では、図8に示すように、編糸18tの平編み開始直後から1コース分、もしくはそれ以上、ゴム糸等の弾性糸18sを挿入する。
【0057】
この第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法、及び、第2の実施形態の靴下1Aによれば、弾性糸挿入工程によって、開口部16の編成開始端辺16c側の着用時の編目のほつれを防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0058】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、脹脛の上部と下部とに開口部を形成した靴下1,1Aを例示したが、つま先やかかと部に開口部を形成してもよく、これらの例示においても、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
[靴下の変形例1]
【0059】
図9(a)に示す本発明の変形例1に係る靴下1Bでは、第1の実施形態の靴下1において、更につま先部の甲側の指の付け根付近に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例1の靴下1Bによれば、靴下を着用したまま、つま先部や甲部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例2]
【0060】
図9(b)に示す本発明の変形例2に係る靴下1Cでは、第1の実施形態の靴下1において、更につま先部の先端に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例2の靴下1Cによれば、靴下を着用したまま、つま先部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例3]
【0061】
図9(c)に示す本発明の変形例3に係る靴下1Dでは、第1の実施形態の靴下1において、土ふまず部に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例3の靴下1Dによれば、靴下を着用したまま、土ふまず部等の底部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例4]
【0062】
図10に示す本発明の変形例4に係る靴下1Eでは、つま先側部分3が開放されている靴下において、かかと部に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例4の靴下1Eによれば、ファッション性と耐久性とを兼ね備えたトレンカを得ることができる。
[靴下の開口部形成方法の変形例]
【0063】
また、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法では、図11(a)〜(c)に示すように、丸編機のシリンダの編針B1,B2に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針B1で足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針B2で甲側編成部分を編成してもよい。
【0064】
図11(a),(b)に示すように、一般に、丸編機では、シリンダにおける一方の半分の編針B1で編成された編成部分b1は靴下の甲側であり、他方の半分の編針B2で編成された編成部分b2は靴下の足底側である。これらの編成の際、弾性糸の挿入位置B3は足底側編成部分に固定される。そのため、例えば、第2の実施形態の弾性糸挿入工程において挿入した弾性糸18sの挿入端末が脹脛に形成された開口部16から出てしまい、見栄えが低下してしまう。そこで、図11(a),(c)に示すように、編針B1で編成する編成部分b1を靴下の足底側とし、編針B2で編成する編成部分b2を靴下の甲側とするように反転することにより、弾性糸18sの挿入端末の出所を見かけ上すね側に転置することができる。その結果、挿入端末の表出が無くなり、開口部16の見栄えの低下を防止することができる。
【0065】
また、本発明の筒状編地の開口部形成方法は、靴下に限定されることなく、筒状や袋状などの様々な編地製品に適用可能である。例えば、手袋において指を露出するための開口部を形成する方法としても適用可能である。
[手袋の変形例5]
【0066】
以下では、本発明の変形例に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の変形例に係る手袋の開口部形成方法について説明する。図12は、本発明の変形例5に係る手袋5を示す図であり、図13は、図12に示す手袋5における部分Aを拡大して示す展開図である。この変形例の手袋5の開口部形成方法は、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様に、筒状部編成工程、補強部編成工程、開口部形成工程、弾性糸挿入工程、及び、熱セット工程を有している。
【0067】
まず、筒状部編成工程では、本実施形態の筒状部編成工程と同様に、丸編機のシリンダの正回転運動によって手袋5の筒状部50を編成する。次に、補強部編成工程において、本実施形態の補強部編成工程と同様に、開口部56に対応する部分においてシリンダを往復回転運動させることによって開口部56のための補強部52を編成する。補強部52の編糸としては、補強部12と同様の編糸が適用可能である。また、補強部52の編糸は、筒状部50の編糸と数目重なっていることが好ましい。また、補強部52は、針下げ(目増し)編成によって編成されることが好ましい。また、補強部52の編成終了端辺52a側の幅は、開口部56の幅よりその両端部52bにおいて2編目以上広くすることが好ましい。また、補強部52は、4コース以上10コース以下(往復回転運動2往復以上5往復以下)とすることが好ましい。
【0068】
次に、開口部形成工程では、本実施形態の開口部形成工程と同様に、シリンダを正回転運動に戻し、開口筒状部54を編成する。開口筒状部54の編成では、補強部52に対応するコースの一部分を不編成とすることによって開口部56を形成する。次に、弾性糸挿入工程では、本実施形態の弾性糸挿入工程と同様に、筒状部50の編成と同様に平編みによって、弾性糸挿入部58を編成する。この弾性糸挿入部58の編成では、編糸の平編み開始直後から1コース分、もしくはそれ以上、ゴム糸等の弾性糸を挿入する。その後、筒状部編成工程を経て、編成工程を完了する。次に、熱セット工程において、本実施形態の熱セット工程と同様に、編成完了後の手袋を金属製の型板に装着し、高圧蒸気をかけて形を整え、手袋5を得る。なお、弾性糸挿入工程と、熱セット工程とは、必ずしも必要ではない。
【0069】
この変形例の手袋5の開口部形成方法でも、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様の利点を得ることができると共に、この変形例の手袋5でも、本実施形態の靴下1,1Aと同様の利点を得ることができる。
[手袋の変形例6]
【0070】
また、本発明の変形例に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の別の変形例に係る手袋の開口部形成方法について説明する。図14(a)及び(b)は、本発明の変形例6に係る手袋5Aを甲側、手のひら側から順に示す図であり、図15は、図14に示す手袋5Aを拡大して示す展開図である。この変形例の手袋5Aの開口部形成方法では、補強部編成工程及び開口部形成工程が変形例の手袋5の開口部形成方法と異なっている。その他の筒状部編成工程、弾性糸挿入工程、及び、熱セット工程については、変形例の手袋5の開口部形成方法の各工程と同様である。
【0071】
補強部編成工程では、5本指に対応する5個の開口部56A〜56Eの全てに対して補強部52を編成する。そして、開口部形成工程では、開口筒状部54の編成において、補強部52に対応するコースの一部分を不編成とすることによって5個の開口部56A〜56Eを形成する。なお、本変形例では、5本指に対応する5個の開口部56A〜56Eの全てに対して1個の補強部52を編成したが、例えば、親指の開口部56Aに対応する補強部と、人差指の開口部56B及び中指の開口部56Cに対応する補強部と、薬指の開口部56D及び小指の開口部56Eに対応する補強部との3個の補強部を編成するようにしてもよい。
【0072】
この別の変形例の手袋5Aの開口部形成方法でも、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様の利点をえることができると共に、この変形例の手袋5Aでも、本実施形態の靴下1,1Aと同様の利点を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1,1A〜1E…靴下(筒状編地、筒状編地製品、袋状編地製品)、2…編糸、3…つま先側部分、5,5A…手袋靴下(筒状編地、筒状編地製品、袋状編地製品)、10,50…筒状部、12,52…補強部、12a,52a…編成終了端辺、12b,52b…編成終了端辺の端部、13…熱融着糸、14,54…開口筒状部、16,56,56A〜56E…開口部、16a…編成終了端辺、16b…端部、16c…編成開始端辺、18,58…弾性糸挿入部、18s…弾性糸、18t…弾性糸挿入部の編糸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、編地製品(ニット製品)は、素材や編目編成の工夫により外的要因からの物理的な保護や、保湿、抗菌防臭などの環境的保護を目的としたものが多かったが、昨今では、その価値は、単なる生活衣料に留まらず、医療やファッション等の業界において、新しい価値が見出されるようになってきている。例えば、靴下においては、足の特定部分の締付力を強化するためのいわゆるサポータとして形を変え、筋肉や腱の矯正に役立つものが要望されている。更には、元来の足や脚のかたちに添った靴下から形状そのものを変え、つま先や足裏部分が無いものなど、一部分の編地を欠くことによるファッション性豊かなレッグウェアが若者からニーズを集めており、その性能性に加えて見栄えの良さも要望されている。
【0003】
特許文献1及び2には、この種の特殊形状の靴下を製造する方法として、靴下に開口部を形成する方法が開示されている。特許文献1に開示の靴下の開口部形成方法では、編地を編成する際に開口部形成部分に抜き糸を挿入して編み、編成完了後に抜き糸を引き抜くことによって開口部を形成している。また、特許文献2に開示の靴下の開口部形成方法では、一旦、通常の製造工程にて靴下を編立後、オーバーロックミシン等のミシンを用いて裁断や縫製を行うことによって開口部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615698号明細書
【特許文献2】実用新案登録第3114044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の靴下の開口部形成方法では、靴下の製造工程において、抜き糸を引き抜くという通常の製造工程では不要な工程が加わるため、人件費等の生産コストが増加すると共に、生産効率が低下するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の靴下の開口部形成方法においても、通常の製造工程に裁断や縫製を行う工程が加わるため、生産コストの増加や生産効率の低下という問題があった。更に、ミシンを用いた縫製は逢着を主たる目的とする手法であるため、その縫製部分ではゴロつき感を感じたりして自然な着用感が得られないなど、肌触りや着用感に問題があった。また、ミシンの編糸が表面に露出するなど、見栄えが悪いという問題もあった。
【0007】
ここで、生産コストの増加や生産効率の低下の問題点に関しては、編地を編成する際に丸編機の性能を用いてコースの一部を不編成とすることにより開口部を形成する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、編目の構成上、着用により開口部、特に開口部の編成終了端辺側の編目のほつれや糸切れ等によって、開口部が極端に破損しやすいという耐久性の問題が考えられる。この開口部の耐久性の問題に関しては、開口部の端辺部にカットボス手法を用いることが考えられるが、開口部の端辺部からカット端末糸が出てしまい、非常に開口部の見栄えが悪くなってしまうという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることが可能な筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の筒状編地の開口部形成方法は、丸編機を用いて筒状編地を編成する際に当該筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって開口部のための補強部を編成する補強部編成工程と、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、補強部に対応するコースの一部分を不編成として開口部を形成する開口部形成工程とを含む。
【0010】
本発明によれば、補強部編成工程は、筒状編地を編成するための靴下編機を含む丸編機のシリンダの往復回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されており、開口部形成工程においても、同様に靴下編機を含む丸編機のシリンダの回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されているので、これらの工程は、フルコンピュータ制御下の一連の連続する編成工程とすることができる。したがって、本発明によれば、従来のように余分な工程を経ずして、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制することができ、開口部を有する筒状編地製品を生産することができる。
【0011】
更に、本発明によれば、補強部編成工程によって、開口部の編成終了端辺側に補強部を編成するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損を防止することができ、併せてカットボス手法を使用する必要がないため、カット端末糸の残存をなくすことができる。その結果、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0012】
上記した補強部編成工程では、合成繊維を含む編糸を用いて補強部を編成することが好ましく、上記した筒状編地の開口部形成方法は、筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含むことが好ましい。
【0013】
合成繊維は、一般に延伸製法によって成形されるので、熱を加えると縮小する特性を有している。これによれば、熱セット工程において補強部の編糸が縮小するので、補強部の編目が締まり、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0014】
また、上記した補強部編成工程では、熱融着糸を含む編糸を用いて前記補強部を編成することが好ましく、上記した筒状編地の開口部形成方法は、筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
これによれば、熱セット工程において、補強部の編糸が縮小して補強部の編目が締まると共に、編糸の編目の交差部分が熱融着するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部の編成終了端辺側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0016】
また、上記した補強部編成工程では、針下げ編成によって補強部を編成することが好ましい。
【0017】
これによれば、補強部の編目が編成終了端辺側に向けて次第に目増しすることにより開口部を覆うように補強部が働くので、針上げ、その他の往復回転運動による補強部編成と比べて、より効果的に開口部を補強することができる。その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0018】
また、上記した補強部編成工程では、補強部の編成終了端辺側の幅が開口部の幅よりその両端部に対して広くなるように補強部を編成することが好ましい。
【0019】
これによれば、開口部の幅方向に直交する方向に力が加わったときに、開口部の幅方向の両端に加わる力が分散されるので、開口部の編成終了端辺側の両端部のほつれや糸切れ等を防止することができ、その結果、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0020】
また、上記した筒状編地の開口部形成方法は、丸編機のシリンダの回転運動による編成において、開口部の編成開始端辺側に対応するコースに弾性糸を挿入する弾性糸挿入工程を更に含むことが好ましい。
【0021】
これによれば、開口部の編成開始端辺側のほつれをも防止することができるので、開口部の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0022】
本発明の筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下は、それぞれ、上記した筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する。
【0023】
これらの筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下によれば、上記したように、従来の開口部を有さない筒状編地と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0024】
上記した靴下において、開口部は、脹脛の上部及び下部のうちの少なくとも何れか一方に位置することが好ましい。
【0025】
この靴下によれば、脹脛の上部と下部に耐久性及び見栄えに優れた開口部を有するので、靴下を着用したまま、各開口部より粘着パッドを着用者の足に装着する着用電気治療用靴下として好適に利用可能である。
【0026】
また、上記した靴下において、開口部は、かかと部に位置することが好ましい。
【0027】
この靴下によれば、例えば、つま先側部分が開放された靴下に適用すれば、ファッション性と耐久性とを兼ね備えたトレンカを得ることができる。
【0028】
また、上記した靴下において、丸編機のシリンダの編針に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針で前記足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で前記甲側編成部分を編成することが好ましい。
【0029】
一般に、丸編機では、シリンダにおける一方の半分の編針で靴下の甲側編成部分を編成し、他方の半分の編針で靴下の足底側編成部分を編成する。その際、弾性糸の挿入位置は足底側編成部分に固定される。そのため、例えば、弾性糸挿入工程において挿入した弾性糸の挿入端末が脹脛に形成された開口部に出てしまい、見栄えが低下してしまう。そこで、本発明の靴下では、甲側を編成するための編針で足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で甲側編成部分を編成するように反転することにより、弾性糸の挿入端末の出所を見かけ上すね側に転置することができる。その結果、開口部の見栄えの低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、筒状編地の開口部形成方法、この筒状編地の開口部形成方法を用いて形成した開口部を有する筒状編地製品、袋状編地製品、及び、靴下において、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて優れた耐久性及び見栄えを有する開口部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】丸編機による編地の一例を拡大して示す図である。
【図2】筒状編地に形成した袋状突起とその展開図を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る靴下を側面から示す図である。
【図4】図3に示す靴下における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図5】図4に示す補強部の針下げ・針上げ編成の種々の変形を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る靴下を側面から示す図である。
【図7】図6に示す靴下における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図8】図6及び図7に示す弾性糸挿入部の編地を拡大して示す図である。
【図9】本発明の変形例1〜3に係る靴下を側面から示す図である。
【図10】本発明の変形例4に係る靴下を側面から示す図である。
【図11】本発明の靴下の開口部形成方法の変形例を模式的に示す図である。
【図12】本発明の変形例5に係る手袋を示す図である。
【図13】図12に示す手袋における部分Aを拡大して示す展開図である。
【図14】本発明の変形例6に係る手袋を甲側、手のひら側から順に示す図である。
【図15】図14に示す手袋を拡大して示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0033】
本発明では、靴下やストッキング等の筒状の編地製品(ニット製品)や袋状の編地製品を編み立てるための丸編機を用いる。この丸編機は、円筒状のシリンダを備えたフルコンピュータ式の編立機械である。フルコンピュータ式とは、コンピュータ上で作成した製品全体の編目設計データを電磁的記録媒体により編立機械に移行し、当該編目設計データに基づいて電気的に自動編立を行うことができる、設計・編立の一連の作業をコンピュータ式に処理する編立機械を示す。
【0034】
この種の丸編機では、円筒状のシリンダが自転すると共に、周上に配置された編針が上下運動を繰り返し、図1に示すように編糸2をループ状に編成する(例えば、平編み)。そして、360度の回転(1回転)で1コースの編立が行われ、同方向に回転編立が繰り返されることによって、筒状の編地製品が編成される。このシリンダの反時計回りの回転を一般的に正回転と称し、時計回りの回転を一般的に逆回転と称する。一方、例えば、靴下のかかと部のように袋状突起を編成する際には、シリンダを1コース単位で正回転・逆回転を繰り返し、任意の針で編成するが、このシリンダの運動を一般的に往復回転と称する。
【0035】
図2(a)は筒状編地に形成した袋状突起を示す図であり、図2(b)は袋状突起の生地を平面に展開した状態の展開図を示す図である。図2(b)における右方向矢印が正回転を示し、左方向矢印が逆回転を示す。そして、袋状突起A’,B’は、左右矢印が交互に示されるように、正回転及び逆回転の往復回転により形成される。また、袋状突起A’,B’を裏面方向Xから見た場合の台形編地A’はA方向に編み立てられるが、この編立を針上げ(又は目減らし)と称する。また、正面方向Yから見た場合の台形編地B’はB方向に編み立てられるが、この編立を針下げ(又は目増し)と称する。
[第1の実施形態]
【0036】
本発明の第1の実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の第1の実施形態に係る靴下の開口部形成方法について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る靴下1を側面から示す図であり、図4は、図3に示す靴下1における部分Aを拡大して示す展開図である。
(筒状部編成工程)
【0037】
まず、上記した丸編機のシリンダの正回転運動によって、靴下1の筒状部10を編成する。製品の用途に応じた素材や編成方法とし、締付け金具等を調整する。本実施形態の靴下1では、例えば、150デニールのポリエステル長繊維を用いて平編みにて編成し(図1)、市販の着圧ソックスの標準的な締付け力とする。
(補強部編成工程)
【0038】
次に、開口部16に対応する部分においてシリンダを往復回転運動させることによって、開口部16のための補強部12を編成する。例えば、補強部12も図1に示す平編みにて編成する。補強部12の編糸としては、筒状部10から切替えることによって種々な繊維を適用可能であるが、合成繊維をカバーリング糸とするFTY(例えば、ポリウレタンにポリエステルをカバーリングしたもの)を用いることが好ましい。これによれば、ポリエステル自身の熱セットによる縮小に加え、ポリウレタンの伸縮性による縮小力をも得ることができるため、編目が強固になり補強効果を高めることができる。
【0039】
合成繊維は、一般に延伸製法によって成形されるので、熱を加えると縮小する特性を有している。また、合成繊維は、熱を加えると固着する性質を有している。これにより、後述する熱セット工程を経ることによって、補強部12の編糸が縮小し、補強部12の編目が締まると共に、編糸の編目の交差部分が固着する。その結果、補強部12の編成終了端辺12a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損、すなわち、開口部16の編成終了端辺16a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0040】
更に、開口部16の耐久性及び見栄えをより得るために、補強部12の編糸として熱融着糸を用いることが好ましい。これにより、後述する熱セット工程を経ることによって、熱融着糸の編目の交差部分が熱融着する。その結果、補強部12の編成終了端辺12a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損、すなわち、開口部16の編成終了端辺16a側の着用時のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0041】
なお、補強部12の編糸としては、ポリウレタンに熱溶着糸をカバーリングした熱溶着FTYが用いられてもよいし、熱溶着FTYと通常のFTYとが併用されてもよい。
【0042】
また、補強部12を編成する往復回転運動に切り替わる10〜20編目前、好ましくは15編目前の筒状部10の編成において、補強部12の編糸を挿入し始め、3〜10編目前、好ましくは5編目前で筒状部10の編糸を抜くことが好ましい。これにより、筒状部10の編糸と補強部12の編糸とが数目重なり、補強部12の編糸がほつれることを防止することができる。
【0043】
また、補強部12は、針下げ(目増し)編成によって編成されることが好ましい。これにより、補強部12の編目が編成終了端辺12a側に向けて次第に目増しするので、着用時の編目のほつれ、特に開口部16の編成終了端辺16a側のほつれや糸切れ等の破損をより効果的に防止することができる。その結果、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0044】
なお、補強部12には、図5に示すように、種々の編成が適用可能である。例えば、補強部12は、図5(a)に示すように針上げ(目減らし)編成であってもよいし、図5(b)に示すように針下げ編成及び針上げ編成を用いなくてもよいし、図5(c)に示すように針上げ編成と針下げ編成とを順次に組み合わせてもよいし、図5(d)に示すように針下げ編成と針上げ編成とを順次に組み合わせてもよい。
【0045】
また、補強部12の編成終了端辺12a側の幅は、開口部16の幅よりその両端部12bにおいて2編目以上広くすることが好ましい。これにより、開口部16の編成終了端辺16a側の両端部16bのほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、その結果、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0046】
また、補強部12は、4コース以上10コース以下(往復回転運動2往復以上5往復以下)とすることが好ましい。補強部12では、コース数が多いほど面積が大きくなり補強効果が高くなるが、その分編地の露出が増えるので見栄えが悪くなる。補強部12を4コース以上10コース以下とすることにより、開口部16の耐久性及び見栄えをバランスよく効果的に高めることができる。
(開口部形成工程)
【0047】
次に、シリンダを正回転運動に戻し、開口筒状部14を編成する。開口筒状部14の編成では、補強部12に対応するコースの一部分を不編成とすることによって開口部16を形成する。
【0048】
本実施形態では、これらの筒状部編成工程、補強部編成工程、及び、開口部形成工程をもう一度繰り返し、脹脛の上部と下部との2か所に開口部16及び補強部12を形成する。その後、筒状部編成工程、かかと部編成工程、筒状部編成工程、及び、つま先部編成工程を経て、編成工程を完了する。
(熱セット工程)
【0049】
その後、熱セット工程において、編成完了後の靴下を金属製の型板に装着し、高圧蒸気をかける。これにより、形を整え、靴下1を得る。なお、熱セット工程は、製品によっては不要な場合もある。
【0050】
このように、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、開口部形成工程は、筒状編地を編成するための靴下編機を含む周知の丸編機のシリンダの回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されており、補強部編成工程においても、同様に靴下編機を含む周知の丸編機のシリンダの往復回転運動を利用した編成工程のみの工程で構成されているので、これらの工程は、フルコンピュータ制御下の一連の連続する編成工程とすることができる。したがって、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、従来のように裁断及び縫製等の工程を要さず、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制することができ、開口部を有する靴下1を生産することができる。
【0051】
また、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によれば、補強部編成工程によって、開口部16の編成終了端辺16a側に補強部12を編成するので、着用時の編目のほつれや糸切れ等の破損、特に開口部16の編成終了端辺16a側のほつれや糸切れ等の破損を効果的に防止することができ、その結果、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0052】
また、この第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する靴下1は、従来の開口部を有さない筒状編地と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部16の耐久性及び見栄えを高めることができる。
【0053】
また、第1の実施形態の靴下1によれば、脹脛の上部と下部に耐久性及び見栄えに優れた開口部16を有するので、靴下を着用したまま、各開口部16より粘着パッドを着用者の足に装着する着用電気治療用靴下として好適に利用可能である。
[第2の実施形態]
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の第2の実施形態に係る靴下の開口部形成方法について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る靴下1Aを側面から示す図であり、図7は、図6に示す靴下1Aにおける部分Aを拡大して示す展開図である。
【0055】
第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法では、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法に加えて弾性糸挿入工程を更に有する点において第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法におけるその他の工程は、第1の実施形態の靴下1の開口部形成方法の各工程と同一である。
(弾性糸挿入工程)
【0056】
開口部形成工程終了後、筒状部10の編成と同様に平編みによって、弾性糸挿入部18を編成する。この弾性糸挿入部18の編成では、図8に示すように、編糸18tの平編み開始直後から1コース分、もしくはそれ以上、ゴム糸等の弾性糸18sを挿入する。
【0057】
この第2の実施形態の靴下1Aの開口部形成方法、及び、第2の実施形態の靴下1Aによれば、弾性糸挿入工程によって、開口部16の編成開始端辺16c側の着用時の編目のほつれを防止することができ、開口部16の耐久性及び見栄えをより高めることができる。
【0058】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、脹脛の上部と下部とに開口部を形成した靴下1,1Aを例示したが、つま先やかかと部に開口部を形成してもよく、これらの例示においても、従来の開口部を有さない筒状編地の製造方法と比べて生産コストの増加や生産効率の低下を抑制し、かつ、従来の筒状編地の開口部と比べて開口部の耐久性及び見栄えを高めることができる。
[靴下の変形例1]
【0059】
図9(a)に示す本発明の変形例1に係る靴下1Bでは、第1の実施形態の靴下1において、更につま先部の甲側の指の付け根付近に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例1の靴下1Bによれば、靴下を着用したまま、つま先部や甲部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例2]
【0060】
図9(b)に示す本発明の変形例2に係る靴下1Cでは、第1の実施形態の靴下1において、更につま先部の先端に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例2の靴下1Cによれば、靴下を着用したまま、つま先部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例3]
【0061】
図9(c)に示す本発明の変形例3に係る靴下1Dでは、第1の実施形態の靴下1において、土ふまず部に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例3の靴下1Dによれば、靴下を着用したまま、土ふまず部等の底部の治療を行うことができる。
[靴下の変形例4]
【0062】
図10に示す本発明の変形例4に係る靴下1Eでは、つま先側部分3が開放されている靴下において、かかと部に開口部16と補強部12とが形成されている。この変形例4の靴下1Eによれば、ファッション性と耐久性とを兼ね備えたトレンカを得ることができる。
[靴下の開口部形成方法の変形例]
【0063】
また、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法では、図11(a)〜(c)に示すように、丸編機のシリンダの編針B1,B2に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針B1で足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針B2で甲側編成部分を編成してもよい。
【0064】
図11(a),(b)に示すように、一般に、丸編機では、シリンダにおける一方の半分の編針B1で編成された編成部分b1は靴下の甲側であり、他方の半分の編針B2で編成された編成部分b2は靴下の足底側である。これらの編成の際、弾性糸の挿入位置B3は足底側編成部分に固定される。そのため、例えば、第2の実施形態の弾性糸挿入工程において挿入した弾性糸18sの挿入端末が脹脛に形成された開口部16から出てしまい、見栄えが低下してしまう。そこで、図11(a),(c)に示すように、編針B1で編成する編成部分b1を靴下の足底側とし、編針B2で編成する編成部分b2を靴下の甲側とするように反転することにより、弾性糸18sの挿入端末の出所を見かけ上すね側に転置することができる。その結果、挿入端末の表出が無くなり、開口部16の見栄えの低下を防止することができる。
【0065】
また、本発明の筒状編地の開口部形成方法は、靴下に限定されることなく、筒状や袋状などの様々な編地製品に適用可能である。例えば、手袋において指を露出するための開口部を形成する方法としても適用可能である。
[手袋の変形例5]
【0066】
以下では、本発明の変形例に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の変形例に係る手袋の開口部形成方法について説明する。図12は、本発明の変形例5に係る手袋5を示す図であり、図13は、図12に示す手袋5における部分Aを拡大して示す展開図である。この変形例の手袋5の開口部形成方法は、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様に、筒状部編成工程、補強部編成工程、開口部形成工程、弾性糸挿入工程、及び、熱セット工程を有している。
【0067】
まず、筒状部編成工程では、本実施形態の筒状部編成工程と同様に、丸編機のシリンダの正回転運動によって手袋5の筒状部50を編成する。次に、補強部編成工程において、本実施形態の補強部編成工程と同様に、開口部56に対応する部分においてシリンダを往復回転運動させることによって開口部56のための補強部52を編成する。補強部52の編糸としては、補強部12と同様の編糸が適用可能である。また、補強部52の編糸は、筒状部50の編糸と数目重なっていることが好ましい。また、補強部52は、針下げ(目増し)編成によって編成されることが好ましい。また、補強部52の編成終了端辺52a側の幅は、開口部56の幅よりその両端部52bにおいて2編目以上広くすることが好ましい。また、補強部52は、4コース以上10コース以下(往復回転運動2往復以上5往復以下)とすることが好ましい。
【0068】
次に、開口部形成工程では、本実施形態の開口部形成工程と同様に、シリンダを正回転運動に戻し、開口筒状部54を編成する。開口筒状部54の編成では、補強部52に対応するコースの一部分を不編成とすることによって開口部56を形成する。次に、弾性糸挿入工程では、本実施形態の弾性糸挿入工程と同様に、筒状部50の編成と同様に平編みによって、弾性糸挿入部58を編成する。この弾性糸挿入部58の編成では、編糸の平編み開始直後から1コース分、もしくはそれ以上、ゴム糸等の弾性糸を挿入する。その後、筒状部編成工程を経て、編成工程を完了する。次に、熱セット工程において、本実施形態の熱セット工程と同様に、編成完了後の手袋を金属製の型板に装着し、高圧蒸気をかけて形を整え、手袋5を得る。なお、弾性糸挿入工程と、熱セット工程とは、必ずしも必要ではない。
【0069】
この変形例の手袋5の開口部形成方法でも、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様の利点を得ることができると共に、この変形例の手袋5でも、本実施形態の靴下1,1Aと同様の利点を得ることができる。
[手袋の変形例6]
【0070】
また、本発明の変形例に係る筒状編地の開口部形成方法として、本発明の別の変形例に係る手袋の開口部形成方法について説明する。図14(a)及び(b)は、本発明の変形例6に係る手袋5Aを甲側、手のひら側から順に示す図であり、図15は、図14に示す手袋5Aを拡大して示す展開図である。この変形例の手袋5Aの開口部形成方法では、補強部編成工程及び開口部形成工程が変形例の手袋5の開口部形成方法と異なっている。その他の筒状部編成工程、弾性糸挿入工程、及び、熱セット工程については、変形例の手袋5の開口部形成方法の各工程と同様である。
【0071】
補強部編成工程では、5本指に対応する5個の開口部56A〜56Eの全てに対して補強部52を編成する。そして、開口部形成工程では、開口筒状部54の編成において、補強部52に対応するコースの一部分を不編成とすることによって5個の開口部56A〜56Eを形成する。なお、本変形例では、5本指に対応する5個の開口部56A〜56Eの全てに対して1個の補強部52を編成したが、例えば、親指の開口部56Aに対応する補強部と、人差指の開口部56B及び中指の開口部56Cに対応する補強部と、薬指の開口部56D及び小指の開口部56Eに対応する補強部との3個の補強部を編成するようにしてもよい。
【0072】
この別の変形例の手袋5Aの開口部形成方法でも、本実施形態の靴下1,1Aの開口部形成方法と同様の利点をえることができると共に、この変形例の手袋5Aでも、本実施形態の靴下1,1Aと同様の利点を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1,1A〜1E…靴下(筒状編地、筒状編地製品、袋状編地製品)、2…編糸、3…つま先側部分、5,5A…手袋靴下(筒状編地、筒状編地製品、袋状編地製品)、10,50…筒状部、12,52…補強部、12a,52a…編成終了端辺、12b,52b…編成終了端辺の端部、13…熱融着糸、14,54…開口筒状部、16,56,56A〜56E…開口部、16a…編成終了端辺、16b…端部、16c…編成開始端辺、18,58…弾性糸挿入部、18s…弾性糸、18t…弾性糸挿入部の編糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機を用いて筒状編地を編成する際に当該筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、
前記丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって前記開口部のための補強部を編成する補強部編成工程と、
前記丸編機のシリンダの回転運動による編成において、前記補強部に対応するコースの一部分を不編成として前記開口部を形成する開口部形成工程と、
を含む、
筒状編地の開口部形成方法。
【請求項2】
前記補強部編成工程では、合成繊維を含む編糸を用いて前記補強部を編成し、
前記筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含む、
請求項1に記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項3】
前記補強部編成工程では、熱融着糸を含む編糸を用いて前記補強部を編成し、
前記筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含む、
請求項1に記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項4】
前記補強部編成工程では、針下げ編成によって前記補強部を編成する、
請求項1〜3の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項5】
前記補強部編成工程では、前記補強部の編成終了端辺側の幅が前記開口部の幅よりその両端部に対して広くなるように前記補強部を編成する、
請求項1〜4の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項6】
前記丸編機のシリンダの回転運動による編成において、前記開口部の編成開始端辺側に対応するコースに弾性糸を挿入する弾性糸挿入工程を更に含む、
請求項1〜5の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する筒状編地製品。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する袋状編地製品。
【請求項9】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する靴下。
【請求項10】
前記開口部は、脹脛の上部及び下部のうちの少なくとも何れか一方に位置する、請求項9に記載の靴下。
【請求項11】
前記開口部は、かかと部に位置する、請求項9に記載の靴下。
【請求項12】
丸編機のシリンダの編針に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針で前記足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で前記甲側編成部分を編成する、
請求項10に記載の靴下。
【請求項1】
丸編機を用いて筒状編地を編成する際に当該筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、
前記丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって前記開口部のための補強部を編成する補強部編成工程と、
前記丸編機のシリンダの回転運動による編成において、前記補強部に対応するコースの一部分を不編成として前記開口部を形成する開口部形成工程と、
を含む、
筒状編地の開口部形成方法。
【請求項2】
前記補強部編成工程では、合成繊維を含む編糸を用いて前記補強部を編成し、
前記筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含む、
請求項1に記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項3】
前記補強部編成工程では、熱融着糸を含む編糸を用いて前記補強部を編成し、
前記筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含む、
請求項1に記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項4】
前記補強部編成工程では、針下げ編成によって前記補強部を編成する、
請求項1〜3の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項5】
前記補強部編成工程では、前記補強部の編成終了端辺側の幅が前記開口部の幅よりその両端部に対して広くなるように前記補強部を編成する、
請求項1〜4の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項6】
前記丸編機のシリンダの回転運動による編成において、前記開口部の編成開始端辺側に対応するコースに弾性糸を挿入する弾性糸挿入工程を更に含む、
請求項1〜5の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する筒状編地製品。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する袋状編地製品。
【請求項9】
請求項1〜6の何れかに記載の筒状編地の開口部形成方法によって形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する靴下。
【請求項10】
前記開口部は、脹脛の上部及び下部のうちの少なくとも何れか一方に位置する、請求項9に記載の靴下。
【請求項11】
前記開口部は、かかと部に位置する、請求項9に記載の靴下。
【請求項12】
丸編機のシリンダの編針に対する靴下の甲側編成部分と足底側編成部分とを反転させて、甲側を編成するための編針で前記足底側編成部分を編成し、足底側を編成するための編針で前記甲側編成部分を編成する、
請求項10に記載の靴下。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−17097(P2011−17097A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162109(P2009−162109)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]