説明

筒製品

【課題】 短時間で接合することが可能で、かつ、良好な外観を有する円筒製品を提供する。
【解決手段】 第1筒12は、側面12aの少なくとも一部に円曲面領域を有し、その第1筒の円曲面領域に第2筒14の端面が抵抗溶接によって固定されている筒製品と、第2筒の端面が先細形状のリング状先端を有し、その先細形状のリング状先端が第1筒の側面の円曲面領域にリング状に抵抗溶接によって固定される筒製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1筒と第2筒を備えた筒製品及びその製造方法、例えば、第1円筒と第2円筒を備えた円筒製品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1筒と第2筒を備えた筒製品は、例えば流体輸送や流体の分配集合に用いられる。第1筒の側面に第2筒の端面を固定する際には、加工に要する時間を低減し、高精度かつ良好な外観を得ることが求められる。
【0003】
従来、第1筒の側面に第2筒の端面を固定するときは、例えばアルゴンガス溶接やアーク溶接により固定していた。
【0004】
特許文献1には、主管部材の外周壁に設けられた管状突起に分岐管を外嵌してロー付けあるいは溶接した分岐管の接合構造が示されている。
【0005】
特許文献2には、合流管の平面形状部分に分岐管の段付形状の端部を勘合させてロー付けあるいは溶接した分岐管接合構造が示されている。
【0006】
他方、プロジェクションを用いた抵抗溶接方法が公知である。この方法はアーク溶接やろう付けに比べて消耗品がなく、溶接速度が速い利点を有する。とくにリングプロジェクションを用いた抵抗溶接法法は、溶接部に耐密性が要求される場合に使用されている。
【特許文献1】実開昭57−44615号公報
【特許文献2】特開2002−106775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばアルゴン溶接により第1筒の側面に第2筒の端面を固定しようとすると、溶接独特の盛り上がりやスパッターが生じ易い。
【0008】
また、第1筒の側面は通常、円曲面として構成されているため、通常、平面として構成される第2筒の端面との間に隙間が生じ易る。
【0009】
特許文献1による分岐管の接合構造は、分岐管の外周からロー付け又は溶接するため、良好な外観を得難い。また、主管部材と分岐管を隙間無く接合するため、主管部材に筒状突起を打出し形成する工程が必要となっている。
【0010】
特許文献2による分岐管接合構造は、合流管の外周壁に分岐管をロー付けあるいは溶接するため、良好な外観を得難い。また、合流管と分岐管を隙間無く接合するため、合流管の外周壁を平面形状に成形する工程が必要となっている。
【0011】
本発明は、第1筒と第2筒を短時間で接合することが可能で、かつ、接合部分が良好な外観を有する筒製品(とくに円筒製品)及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0013】
(1) 第1筒は、側面の少なくとも一部に円曲面領域を有し、その第1筒の円曲面領域に第2筒の端面が抵抗溶接によって固定されていることを特徴とする筒製品。
【0014】
(2) 第1筒が第1円筒で、第2筒が第2円筒であることを特徴とする先述の筒製品。
【0015】
(3) 第1筒は、側面の少なくとも一部に円曲面領域を有し、第2筒の端面が先細形状のリング状先端を有し、その第2筒の端面の先細形状のリング状先端が抵抗溶接によって溶けて第1筒の側面の円曲面領域にリング状に固定されることを特徴とする筒製品の製造方法。
【0016】
(4) 第2筒の端面の先細形状のリング状先端が、第2筒の内周面寄りに位置している形で溶接されることを特徴とする先述の筒製品の製造方法。
【0017】
(5) 第1筒の側面の円曲面領域に貫通孔が形成されており、その貫通孔の周辺に第2筒の端面の先細形状のリング状先端が位置している形で溶接されることを特徴とする先述の筒製品の製造方法。
【0018】
(6) 第1筒が第1円筒で、第2筒が第2円筒であることを特徴とする先述の筒製品の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1筒と第2筒とを短時間で接合可能である。接合部分が良好な外観を有する筒製品(とくに円筒製品)を提供できる。
【0020】
本発明においては、第1筒の側面の少なくとも一部が円曲面として構成されているが、そのまま、円曲面を変形せずに、第1筒の側面に第2筒の端面を抵抗溶接により固定できる。すなわち、本発明によれば、第1筒の側面の円曲面領域に特別な加工を追加的に施す必要がない。
【0021】
筒製品の第2筒の端面がリング状先端を有する場合、そこを通じて小電流かつ低加圧力で所望の抵抗溶接を実現することができる。
【0022】
請求項4に記載の筒製品の製造方法によれば、第1筒の円曲面領域と第2筒の端面との間の最大の隙間を小さくできるため、溶接部分の外観を良好にし、かつ、気密性が高く高精度な筒製品を得ることができる。とくに、第1筒よりも僅かに小さな直径を有する第2筒を用いる場合であっても、第2筒の先細形状のリング状先端を第1筒の側面に抵抗溶接する際に、第1筒と第2筒の間の最大の隙間が小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の最良の形態による筒製品の1例は、第1筒の側面の全体が円曲面である円筒製品である。以下、その円筒製品を例にして説明する。
【0024】
第1円筒の側面に、第1円筒よりも小さな直径を有する第2円筒の端面が、抵抗溶接によって固定されている。
【0025】
第1円筒と第2円筒の材質は、任意のもので良い。多くの場合、鉄、ステンレス等であるが、チタンとすることもできる。典型的には、第1円筒の側面は全体的に円曲面を構成している。ただし、本発明は、必要に応じて、第1円筒の側面が平坦な面を有する場合や、段部や溝部を有する場合を含む。
【0026】
好ましくは、第2円筒の端面が先細形状のリング状先端を有し、その先細形状のリング状先端が第1円筒の側面にリング状に抵抗溶接によって固定されている。その際、先細形状のリング状先端のみが溶け、第1円筒の側面は溶けないようにする。
【0027】
先細形状は、テーパー形状が最良であるが、その他、断面U形状、断面V形状、断面凸形状等種々の先細形状を含む。ただし、本発明は第2円筒の端面が突起を有する構成を含む。
【0028】
好ましくは、第2円筒の先細形状のリング状先端が、第2円筒の内周面寄りに位置している。なお、本発明は、第2円筒の先細形状のリング状先端が第2円筒の内周面と外周面の中間に位置している構成や、第2円筒の外周面寄りに位置している構成を含む。
【0029】
好ましくは、第1円筒の側面に貫通孔が形成されており、その貫通孔の周辺に、第2円筒の端面のリング状先端が位置している。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
【0031】
図1は、本発明による円筒製品の一例を示す概略斜視図である。
【0032】
円筒製品10は、シリンダーチューブ12を有する。シリンダーチューブ12は、本発明における第1円筒の典型例である。
【0033】
円筒製品10は、更にボス14を有する。ボス14は、本発明における第2円筒の典型例である。ボス14は、シリンダーチューブ12よりも小さな直径を有する。
【0034】
シリンダーチューブ12には多数のボス14が固定されているが、1個又は数個のボス14が固定されているものでもよい。
【0035】
図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明の円筒製品を製造する前の状態を示す説明図である。
【0037】
シリンダーチューブ12の側面12a(図2には側面12a円曲面の一部が示されている)に貫通孔12bが形成されている。
【0038】
図2においては、ボス14の下面14aがシリンダーチューブ12の側面12aの頂部(直線状)に接触しており、ボス14の下面14aの両側には隙間A、Bができている。
【0039】
ボス14は、先細形状のリング状先端14bを有する。リング状先端14bの下面14aは、軸心Xに垂直な平面内にあり、リング状をしている。
【0040】
リング状先端14bは、ボス14の内周面14e寄りに位置している。換言すると、リング状先端14bは、ボス14の外周面14gから最も離れた位置にある。
【0041】
リング状先端14bは、シリンダーチューブ12の側面12aに接触している接触部分14cと、シリンダーチューブ12の側面12aから離れた離隔部分14dとを有する。ボス14の外周面14gのところが、シリンダーチューブ12の側面12aから最も離れた位置である。
【0042】
リング状先端14bがボス14の内周面14e寄りに位置していると、離隔部分14dは、後述する図6の第2円筒34の場合と比較して、シリンダーチューブ12の側面12aに近くなる。つまり、最も離れた位置(つまりボス14の外周面14)における、シリンダーチューブ12の側面12aからの距離が小さい。
【0043】
そのため、リング状先端14bは、抵抗溶接時の図2における所定の下向きの押圧力(加圧力)により、シリンダーチューブ12の側面12aと容易に抵抗溶接されるようになっている。
【0044】
図3は、本発明の円筒製品を製造した後、つまり抵抗溶接後の状態を示す概略部分断面図である。
【0045】
貫通孔12bの周辺にリング状先端14bの全周が溶着されている。つまり、ボス14のリング状端面14hの全体が、抵抗溶接によって溶けて、シリンダーチューブ12の側面12aに固定されている。先細形状のリング状先端14bは、シリンダーチューブ12の側面12aにリング状の全体にわたって気密状態に固定される。
【0046】
貫通孔12bの直径とボス14の内周面の直径は、ほぼ等しい。
【0047】
図4は、第2円筒の別の例を示す断面図である。図5は、図4の第2円筒の上面図である。
【0048】
図4及び図5において、第2円筒はソケット24として構成されている。ソケット24に抵抗溶接される第1円筒(図示省略)は、図1及び図2に示されたものと同様のものを用いることができる。
【0049】
ソケット24は、第1円筒よりも小さな直径を有する。
【0050】
ソケット24は、先細形状のリング状先端24bを有する。リング状先端24bの下面24aは、軸心Xに垂直な平面内にあり、リング形状をしている。リング状先端24bは、ソケット24の内周面24e寄りに位置している。換言すると、リング状先端24bは、ソケット24の外周面24gから最も離れている。
【0051】
リング状先端24bは、第1円筒の側面(図示省略)に設定したときに、そこに接触する接触部分24cと、第1円筒の側面と最も離れた離隔部分24dを有する。リング状先端24bがソケット24の内周面24e寄りに位置しているため、離隔部分24dは、後述する図6の第2円筒34の場合と比較して、第1円筒の側面に近くなる。つまり、最も離れた位置における距離が小さい。
【0052】
リング状先端24bは、抵抗溶接時の所定の押圧力により、リング状の全体にわたって気密状態に、第1円筒の側面と容易に抵抗溶接される。
【0053】
また、ソケット24は内部に流通孔24fを有する。リング状先端24bの内周面24eの直径d1は、流通孔24fの直径d2よりも大きい。そのため、リング状先端24bが抵抗溶接の結果多少変形して内向きに張り出したとしても、流通孔24fを通る流体の流量に影響を与えないようになっている。
【0054】
図6は、第2円筒の更に別の例を示す部分断面図である。
【0055】
図6において、第2円筒34に抵抗溶接される第1円筒(図示省略)は、図1及び図2に示されたものと同様のものを用いることができる。
【0056】
第2円筒34は、全体として第1円筒よりも小さな直径を有する。
【0057】
第2円筒34は、先細形状のリング状先端34bを有する。リング状先端34bの下面34aは、軸心Xに垂直な平面内にあり、リング形状をしている。リング状先端34bは、第2円筒34の内周面34eと外周面34gの中間に位置している。
【0058】
リング状先端34bは、第1円筒の側面(図示省略)に設定したときに、そこと接触する接触部分34cと、第1円筒の側面と最も離れた離隔部分34dを有する。リング状先端34bが第2円筒34の内周面34eと外周面34gの中間に位置しているため、離隔部分34dは、図2〜図5に示された例と比較して、第1円筒の側面から遠くなっている。
【0059】
リング状先端34bの離隔部分34dは、第1円筒よりもかなり小さな直径を有する第2円筒34を用いる場合に、第1円筒の側面と容易に抵抗溶接されるようになっている。
【0060】
また、第2円筒34は内部に流通孔34fを有する。下面34aにおけるリング状先端34bの内周面34cの直径d3は、流通孔34fの直径d4よりも大きい。そのため、リング状先端34bが抵抗溶接の結果多少変形して内向きに張り出しても、流通孔34fを通る流体の流量に影響を与えないようになっている。この例によれば、単純な構成で可能な限り流量を多くすることができる。
【0061】
図7は、円筒製品の一例を示す写真である。円筒製品の左側部分が本発明による円筒製品10として構成されている。円筒製品の右側部分が従来の円筒製品40として構成されている。従来の円筒製品には溶接独特の盛り上がりとスパッターが見られるが、本発明による円筒製品はスパッターが無くシンプルな仕上がりで良好な外観となっている。
【0062】
本発明は図示された実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による円筒製品の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の円筒製品を製造する前の状態を示す説明図である。
【図3】本発明の円筒製品を製造した後の状態を示す概略部分断面図である。
【図4】第2円筒の別の例を示す断面図である。
【図5】図4の上面図である。
【図6】第2円筒の更に別の例を示す部分断面図である。
【図7】円筒製品の一例を示す写真である。
【符号の説明】
【0064】
10 円筒製品
12 シリンダーチューブ(第1円筒)
12a 側面
12b 貫通孔
14 ボス(第2円筒)
14a、24a、34a 下面
14b、24b、34b リング状先端
14c、24c、34c 接触部分
14d、24d、34d 離隔部分
14e、24e、34e 内周面
14h 端面
24 ソケット(第2円筒)
24f、34f 流通孔
34 第2円筒
14g、24g、34g 外周面
X 軸心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒は、側面の少なくとも一部に円曲面領域を有し、その第1筒の円曲面領域に第2筒の端面が抵抗溶接によって固定されていることを特徴とする筒製品。
【請求項2】
第1筒が第1円筒で、第2筒が第2円筒であることを特徴とする請求項1に記載の筒製品。
【請求項3】
第1筒は、側面の少なくとも一部に円曲面領域を有し、第2筒の端面が先細形状のリング状先端を有し、その第2筒の端面の先細形状のリング状先端が抵抗溶接によって溶けて第1筒の側面の円曲面領域にリング状に固定されることを特徴とする筒製品の製造方法。
【請求項4】
第2筒の端面の先細形状のリング状先端が、第2筒の内周面寄りに位置している形で溶接されることを特徴とする請求項3に記載の筒製品の製造方法。
【請求項5】
第1筒の側面の円曲面領域に貫通孔が形成されており、その貫通孔の周辺に第2筒の端面の先細形状のリング状先端が位置している形で溶接されることを特徴とする請求項3〜4のいずれか1項に記載の筒製品の製造方法。
【請求項6】
第1筒が第1円筒で、第2筒が第2円筒であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の筒製品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−301577(P2007−301577A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129929(P2006−129929)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(598163248)株式会社清水製作所 (3)
【Fターム(参考)】