説明

箔転写製品

【課題】 鮮明な凹凸模様を有する箔転写製品を提供しようとする。
【解決手段】 生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔及び該接着剤層の該箔と面する面が一体に賦型されてなり、該凹凸加工により生じた該接着剤層の凹凸の高さが、0.3T〜0.9Tである箔転写製品であり、生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔、該接着剤層及び該生地が一体に賦型されてなる箔転写製品である。接着剤層は、樹脂成分と、該樹脂成分に対して5〜50重量%の接着剤層の賦型時の加熱温度で溶融しない粉体とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地表面に接着剤を介して箔を貼着して凹凸加工されてなる箔転写製品に関する。
【背景技術】
【0002】
生地表面に接着剤の層を形成し、その層の上に箔を重畳して所定のエンボス型を用い凹凸加工し箔転写製品を得ることが従来知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
しかし、従来の方式では、凹凸加工の際の加熱加圧により接着剤の層が流動して鮮明な凹凸模様が得られなかった。又、ベースの生地が編織物のような柔軟なシート状物の場合には特に、この凹凸加工の際の加圧によりエンボス型に生地が食い込んで接着剤の層が潰され箔と接着剤から成る賦型された部分が扁平になり、鮮明な凹凸模様が得られなかった。又、接着剤の層を厚くすると風合いが硬くなり衣料として使用する場合好ましくなかった。
【特許文献1】特開平02−6874号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、鮮明な凹凸模様を有する箔転写製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨とするところは、生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔及び該接着剤層の該箔と面する面が一体に賦型されてなり、該凹凸加工により生じた該接着剤層の凹凸の高さが、0.3T〜0.9Tである箔転写製品であることにある。
【0006】
又、本発明の要旨とするところは、生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔、該接着剤層及び該生地が一体に賦型されてなる箔転写製品であることにある。
【0007】
前記接着剤層は、粉体を含有する接着剤が固化してなり得る。
【0008】
前記粉体は、ホットメルト樹脂から成る粉体を含み得る。
【0009】
前記接着剤層は、樹脂成分と、該樹脂成分に対して5〜50重量%の粉体とを含み得る。
【0010】
前記粉体は、前記接着剤層の賦型時の加熱温度で溶融しない素材からなり得る。
【0011】
前記粉体は、無機粉体であり得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、鮮明な凹凸模様を有する箔転写製品が提供される。又、本発明によると、鮮明な凹凸模様を有し、かつ風合いが柔軟な箔転写製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の箔転写製品の実施形態について、図面を使用して説明する。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。図1に示すように、本発明の箔転写製品20は、生地2の表面に接着剤層4が形成され、賦型された接着剤層4の表面に箔6が積層されて箔6に接着剤層4とともに凹凸が形成された箔転写製品である。接着剤層4には樹脂成分とともに粉体が含有されている。
【0014】
生地2としては、織物、編物、不織布、紙、箔状物等の柔軟なシート状物が挙げられる。あるいは生地が、木製や樹脂製や金属製の板等の部材の表面であって、その表面に接着剤層4が形成される態様であってもよい。
【0015】
本発明の箔転写製品を得る各種の態様を説明する。
方法A
工程1:接着剤層4を構成する樹脂成分と粉体とを混合して必要に応じて希釈剤や増粘剤等を用いて所定の粘度に調整してペーストを得る。
工程2:図2に示すように、このペーストをスクリーン捺染型等を用いて生地2の表面の定められた特定の輪郭形状を有する層状に付着させ、定められた特定の輪郭形状を有するペースト層3を形成する。ペースト層3の厚みは0.2〜7mmが好ましい。
工程3:図3に示すように、ペースト層3の上に箔6を重畳し、生地2、ペースト層3、箔6を、加熱加圧し、図4に示すように、生地2と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4を介して接着したものを得る。接着剤層4の厚みは0.2〜7mmとなる。ペースト層3は箔6を重畳される前に乾燥してある程度固化させてもよい。又、箔6を重畳する前にペースト層3の表面に第二の接着剤層が重畳されてもよい。
工程4:図5に示すように、工程3で得られたものをエンボス型12及びベース盤から成る賦型装置15を用いて、箔6がエンボス型12に面する配置で一体で加熱加圧して賦型し、生地2に接着されていない部分の箔6を除去して図6に示すように、生地2と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する賦型接着剤層44を介して接着しかつ箔6が同様に賦型された本発明の箔転写製品20aを得る。接着されていない箔6の除去は工程4の前に行なわれてもよい。
【0016】
方法A´
工程1:接着剤層4を構成する樹脂成分と粉体とを混合して必要に応じて希釈剤や増粘剤等を用いて所定の粘度に調整してペーストを得る。
工程2:図2に示すように、このペーストをスクリーン捺染型等を用いて生地2の表面の定められた特定の輪郭形状を有する層状に付着させ、定められた特定の輪郭形状を有するペースト層3を形成する。ペースト層3の厚みは0.2〜7mmが好ましい。
工程3:工程3で得られたものをエンボス型12及びベース盤から成る賦型装置15を用いて加熱加圧して賦型し、賦型された接着剤層を得る。この賦型された接着剤層は生地2の表面に固着している。ペースト層3は賦型される前に乾燥、加熱、又は加熱加圧によってある程度工程させられてもよい。
工程4:この賦型された接着剤層の表面に箔を第二の接着剤を用いて貼着し、生地に接着されていない部分の箔を除去して図6に示すように、生地2と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する賦型接着剤層44を介して接着しかつ箔6が接着剤層の表面の凹凸に沿って同様に賦型された本発明の箔転写製品20aを得る。
【0017】
方法B
工程1:樹脂成分と粉体とを混合して所定の粘度に調整してペーストを得る。
工程2:方法Aにおける工程2と同様に、このペーストをスクリーン型等を用いて生地2の表面の定められた特定の輪郭形状を有する層状に付着させ、定められた特定の輪郭形状を有するペースト層3を形成する。
工程3:ペースト層3の上に箔6を重畳し、生地2、ペースト層3、箔6を図5に示すような賦型装置15により箔6がエンボス型12に面する配置で一体で加熱加圧して賦型し生地2に接着されていない部分の箔6を除去して、図6に示すと同様の、本発明の箔転写製品20aを得る。賦型接着剤層44の厚みは0.2〜7mmとなる。
【0018】
なお、方法A、方法Bにおいて、ペースト層3が形成された後、箔6が重畳される前に、ペースト層3の表面に、箔6に対してペースト層3より強力な接着性を有する第二の接着剤層が形成されてもよい。
【0019】
方法C
工程1:樹脂成分と粉体とを混合して所定の粘度に調整してペーストを得る。
工程2:このペーストを平板上に流延したのち乾燥及び/又は加熱するなどしてシート状物を得る。このシート状物の厚みは0.2〜7mmが好ましい。
工程3:このシート状物を定められた特定の輪郭形状を有するピースに切り抜く。
工程4:この特定の輪郭形状を有するピース16を生地2の上に重畳し、更に箔6を重畳し、生地2、ピース16、箔6を、箔6の上から賦型装置15により一体で箔6がエンボス型12に面する配置で加熱加圧して賦型し、生地2に接着されていない部分の箔6を除去して、図6に示すと同様の、本発明の箔転写製品20aを得る。賦型接着剤層44の厚みは0.2〜7mmとなる。
【0020】
箔6を重畳する前にピース16の表面に第二の接着剤が塗付されてもよい。又、箔6を重畳する前に生地2の上に重畳されたピース16が賦型されその後箔6がピース16の表面に貼着されてもよい。
【0021】
方法D
工程1:樹脂成分と粉体とを混合して所定の粘度に調整してペーストを得る。
工程2:図7に示すように、このペーストをスクリーン捺染型等を用いて剥離台紙30の表面の定められた特定の輪郭形状を有する層状に付着させ、定められた特定の輪郭形状を有するペースト層3を形成する。ペースト層3の厚みは0.2〜7mmが好ましい。
工程3:図8に示すように、ペースト層3の上に箔6を重畳し、剥離台紙30、ペースト層3、箔6を一体で加熱加圧し、図9に示すように、剥離台紙30と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4を介して接着したものを得る。接着剤層4の厚みは0.2〜7mmとなる。ペースト層3は箔6を重畳される前に乾燥、加熱あるいは加熱加圧してある程度固化させてもよい。
工程4:工程3で得られたものを賦型装置15により一体で箔6がエンボス型(12)に面する配置で加熱加圧して賦型し、接着されていない部分の箔6を除去して、剥離台紙30と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有しかつ同じ特定の輪郭形状を有する賦型接着剤層44を介して接着された箔付き賦型層45を備える図10に示す賦型層付き台紙34を得る。箔付き賦型層45は賦型接着剤層44と、賦型接着剤層44と一体で賦型された箔6とから成る。
工程5:図11に示すように、賦型層付き台紙34に粘着層36付きの粘着紙38を貼着する。符号39は粘着紙38のベースシートである。これにより、粘着層36を介して箔付き賦型層45が粘着紙38に粘着する。
工程6:粘着紙38を剥離台紙30から剥がす。これにより、図12に示すように、賦型層44が粘着紙38に移行する。
工程7:移行により箔付き賦型層45が貼着された粘着紙38の、賦型接着剤層44の露出面に第二の接着剤48を塗付する。
工程8:図12に示すように、工程7で得られた賦型層44の外側面に第二の接着剤が塗付された型層付き粘着紙38を、生地2の上に第二の接着剤層48を下側にして重畳し、重畳物49を得る。
工程9:重畳物49を必要に応じて加熱又は加熱加圧し第二の接着剤層48を固化させる。これにより、生地2と箔付き賦型層45とが第二の接着剤層48により接着される。
工程10:粘着紙38を箔付き賦型層45から剥がす。これにより、示す本発明の箔転写製品を得る。
【0022】
工程4と工程5とは順序が逆であってもよい。即ち図9に示す剥離台紙30と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4を介して接着したものに粘着紙38を貼着し、粘着紙38ごと賦型してもよい。
【0023】
方法E
工程1〜3:方法Dにおける工程1〜3と同じである。
工程4:工程3で得られたものを加熱加圧し、図15に示すように、剥離台紙30と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4pを介して接着された型層付き台紙34pを得る。このとき、接着されていない部分の箔6を除去する。この除去は後の工程で行なわれてもよい。
工程5:図16に示すように、型層付き台紙34pに粘着紙38を貼着する。これにより、粘着層36を介して箔付き接着剤層4ppが粘着紙38に粘着する。
工程6:粘着紙38を剥離台紙30から剥がす。これにより、箔付き接着剤層4ppが粘着紙38に移行する。
工程7:図17に示すように、移行により箔付き接着剤層4ppが貼着された粘着紙38の、接着剤層4pの露出面に第二の接着剤48を塗付する。
工程8:図18に示すように、工程7で得られた接着剤層4pの外側面に第二の接着剤が塗付された型層付き粘着紙39を、生地2の上に第二の接着剤層48を下側にして重畳し、重畳物49を得る。
工程9:重畳物49を必要に応じて加熱又は加熱加圧し第二の接着剤層48を固化させる。これにより、生地2と箔付き接着剤層4ppとが第二の接着剤層48を介して接着される。
工程10:粘着紙38を箔付き接着剤層4ppから剥がし、型層付き生地を得る。
工程11:型層付き生地を、賦型装置15により加熱加圧して賦型し、本発明の箔転写製品を得る。
【0024】
接着剤層4と生地2とが工程9における加熱加圧で充分に接着される場合は、工程7は不要である。又、粘着紙38を箔付き接着剤層4ppから剥がす工程が、工程9で得られた粘着紙38付きの型層付き生地を賦型した後に行なわれてもよい。
【0025】
方法E´
工程1〜6:方法Eにおける工程1〜6と同じである。
工程7:移行により箔付き接着剤層4ppが貼着された粘着紙38を必要に応じて加熱又は加熱加圧した後、賦型装置15により加熱加圧して賦型する。これにより箔付き接着剤層4ppが賦型される。
工程8:賦型された箔付き接着剤層の、接着剤層の露出面に第二の接着剤を塗付する。
工程9:工程8で得られた接着剤層の外側面に第二の接着剤が塗付された型層付き粘着紙を、生地の上に第二の接着剤層を下側にして重畳し、重畳物を得る。
工程10:この重畳物を必要に応じて加熱又は加熱加圧し第二の接着剤層を固化させる。これにより、生地と賦型された箔付き接着剤層とが第二の接着剤層を介して接着される。
工程11:粘着紙を箔付き接着剤層から剥がし本発明の箔転写製品を得る。
【0026】
方法A〜E´において、ペースト層3は同種又は異種のペーストが順次積層されて得られてもよい。ペーストを捺染装置等により順次積層することにより、層の厚みを大にすることが出来る。又、生地2と接する層に生地2との接着性の良好な接着剤を配することにより、接着剤層4の厚みが大でかつ生地2との接着性の良好な箔転写製品を得ることが出来る。従って、接着剤層4は、同種又は異種の接着剤の層が積層されて成るものであってもよい。
【0027】
賦型は上方が平板、下方が凹凸板で被賦型物の被凹凸面がこの凹凸板に面する配置で行なわれてもよい。
【0028】
賦型が平板と凹凸板とで行なわれる場合、凹凸板の材質は、鉄、ステンレス、真鍮等の金属の他に木、セラミック、樹脂、有機物であってもよい。平板の材質は、金属の他に木、セラミック、樹脂であってもよい。平板の材質はシリコーンゴムや弗素系ゴムのような弾性体であってもよい。凹凸板として編織物のように糸条物が集合したものや、天然物や加工された複数の部材が集合した集合体から成るものであってもよい。
【0029】
方法A〜E´において、凹凸一対の互いにはまり合う型によって行なわれてもよい。互いにはまり合う型を用いることにより、図19(a)に示すようなシボ状や、図19(b)に示すようなプリーツ状の賦型を行なうことが出来る。
【0030】
凹凸一対の互いにはまり合う型によって、生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔、該接着剤層及び該生地が一体に賦型されてなる箔転写製品が得られる。このような態様の箔転写製品は、プリーツ状やシボ状の賦型部がシャープかつ強固であり、外部から加えられた力に対して形態安定性に優れる。
【0031】
方法A〜E´において、賦型は接着剤層を固化させてから行なってもよいが、接着剤層が固化しない状態あるいは充分には固化しない状態で行なって、賦型時の加熱により完全に固化させてもよい。
【0032】
方法A〜E´において、第二の接着剤が用いられる場合、その接着剤は、ホットメルト接着剤であってもよい。エマルジョンタイプの接着剤や、溶剤タイプの接着剤であってもよい。
【0033】
方法A〜E´において、凹凸加工における加熱加圧条件は、生地及び接着剤層の性状に応じて適宜選択される。
【0034】
これらの工程の諸態様により、生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔及び該接着剤層の該箔と面する面が一体に賦型されてなり、該凹凸加工により生じた該接着剤層の凹凸の高さETが、0.3T〜0.9Tである箔転写製品を得ることが出来る。(図1)このような箔転写製品は、エンボス型の凹凸が厚い接着剤層4に深く食い込んで接着剤層4が箔6とともに賦型されているため、箔6の表面の凹凸模様が鮮明である。接着剤層の最大厚さTが0.8〜3mmであると、表面の凹凸模様が更に鮮明でかつ製品の風合いがコシがあるうえに柔軟であり更に好ましい。接着剤層の最大厚さTが7mmを超えた場合、あるいは最大厚さTが0.2mm未満であると、表面の凹凸模様が不鮮明となる。
【0035】
又、ペーストに粉体が含有されているため、接着剤層4の固化前の前駆体が加熱加圧賦型によって潰されて扁平化することがこの粉体によって妨げられ、加熱加圧賦型後の接着剤層4が扁平化されず、接着剤層4及び箔6に凹凸が深く形成されてかつ凹凸模様が鮮明である。
【0036】
本発明において用いられる箔6しては、有色の薄いシート状物であれば種類は特に限定されないが、例として、金箔、アルミ箔をはじめとする金属単体や金属合金から成る金属箔、あるいは、樹脂フィルムに金属が蒸着あるいは積層されたスタンピングホイル等のフィルム箔、更に、樹脂フィルムに顔料や着色樹脂が積層されたピグメント箔、樹脂フィルムにインク層が積層されたインク箔が挙げられる。
【0037】
接着剤層4は樹脂成分と粉体を含んでなる。樹脂成分を構成する樹脂の種類は問わないが、一例としてアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、エマルジョンタイプであってもよい。溶液タイプであってもよい。
【0038】
粉体は樹脂の粉体であってもよい。澱粉、セルロース、貝殻等の有機物あるいは生物由来のものであってもよい。無機粉体であってもよい。
【0039】
粉体が樹脂の粉体である場合は、その樹脂は、ホットメルト樹脂であることが好ましい。ホットメルト樹脂から成る粉体を混入した接着剤は、加熱加圧に際してホットメルト樹脂が融解する温度で加熱すれば低い圧力で加熱加圧して箔と生地を接着できるので、加圧で接着剤がエンボス型に生地が食い込んで接着剤の層が潰され箔と接着剤から成る賦型された部分が扁平になる度合いが極めて少なく、鮮明な凹凸模様が得られる。
【0040】
ホットメルト樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂あるいはポリオレフィン系樹脂を用いることが出来る。これらの樹脂の粉体はフレーク状であってもよい。
【0041】
粉体が無機粉体などの、凹凸加工における加熱温度で溶融しない素材からなる粉体である場合は、加熱加圧に際して加圧で接着剤がエンボス型に生地が食い込んで接着剤の層が潰され箔と接着剤から成る賦型された部分が扁平になる度合いが極めて少なく、鮮明な凹凸模様が得られる。同時に、接着剤層4がこのような粉体を含有しないホットメルト樹脂から成る場合に比べて柔軟になり、製品の風合いが良好となり好ましい。このような粉体が中空の粒子から成る場合は、接着剤層4が更に柔軟になる。
【0042】
無機粉体としては、例えば酸化チタン、シリカ等の小径粒状物質、膨潤性雲母・非膨潤性雲母等の雲母系を始めとする板状・鱗片状物質、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の短繊維状もしくはウイスカ状物質、炭酸カルシウムや珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、タルク、クレ−、酸化鉄や、マグネシウム、カルシウム、バリウム又はアルミニウムの酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩または硫酸塩、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Zn等の金属粉末、Zn、Ti、Be、Cu等の金属の酸化物、AlN、BN、窒化珪素等の窒化物、SiC、カーボン、活性炭、ダイアモンド等の炭化物であってもよい。コークス粉であってもよい。製鉄工程で発生する高炉二次灰のような灰であってもよい。
【0043】
粉体は内部が中空であって通常数十μm〜数百μm径の一般にバルーンと呼ばれているものであってもよい。このバルーンの成分は、通常は、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック系、ガラス系、炭素系などの無機化合物からなるものであり、天然物としてはシラス、パーライト、フライフィッシュなどがある。また、フェノール系,ポリ塩化ビニリデン系,エポキシ系などの有機化合物からなるバルーンであってもよい。粉体としてバルーンが用いられた場合は、凹凸模様が更に鮮明になる。かつ、接着剤層4が更に柔軟になる。粉体としてガラスバルーンが用いられた場合は、凹凸模様が又更に鮮明になる。かつ、接着剤層4が最も柔軟になる。
【0044】
更に、無機粉体としては、セメントを素材としたものであってもよい。又、結晶シリカ粉、溶融シリカ粉、球状シリカ粉、およびヒュームドシリカ等のシリカ粉、ステンレス粉、焼却灰、MBR鉱石粉、生石灰、湿石灰、消石灰、粉末消火器用粉末、石炭粉、木炭粉であってもよい。石膏粉末や、モルタルあるいは石膏ボードを砕いた粉末であってもよい。又、トルマリン、黄鉄鉱、硅灰石、チタン鉱、鉄鉱石、蛍石等の岩石や鉱石を砕いた石粉などや、粘土などの土等が挙げられる。
【0045】
凹凸加工における加熱温度で溶融しない素材からなる粉体の素材としては、例えば、ABS(アクリル・ブタジエン・スチレン)共重合樹脂、TBR粉末ゴム、ポリプロピレン、PVC、フッ素系樹脂が挙げられる。又、おがくず、きな粉、片栗粉、かるかん粉、とうもろこし茎粉、とうもろこし皮粉、木材パルプ等の植物由来の粉末が挙げられる。FRP(樹脂繊維複合物)を破砕したFRP粉末やタイヤ破砕したタイヤ粉であってもよい。
【0046】
凹凸加工における加熱温度で溶融しない素材からなる粉体は、接着剤の樹脂成分に対して5〜50重量%の割合で接着剤層に混入されていることが好ましい。
【0047】
接着剤層に含有されるこれらの粉体は単品であってもよいが、複数種の粉体が混合されたものであってもよい。
【実施例】
【0048】
実施例1
箔として東レルミラースタンピング用タイプF65:厚み12.25μmを使用した。アクリル樹脂のエマルジョン(固形分30重量%)100重量部と、ポリエステル系ホットメルト樹脂パウダ50重量部とを混合してペーストを得た。パウダの平均径は15μmであった。
【0049】
図1に示すように、このペーストをスクリーン捺染型を用いて木綿の編地(目付け70gr/m)の表面にアルファベット文字を表示するような輪郭形状を有する層状に付着させ、ペースト層3を形成した。ペースト層3は箔6を重畳される前に100℃2分間乾燥した。アルファベット文字形状の線幅は略10mmであった。ペースト層3の厚みは1.2mmであった。図2に示すように、ペースト層3の上に箔6を重畳し、生地2、ペースト層3、箔6を、箔6の上から加熱加圧装置盤8により140℃10秒間、10KPaで加熱加圧し、図4に示すような、生地2と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4を介して接着したものを得た。接着剤層4の厚みは1.0mmであった。次いで、図4に示すように、これにより得られたものをエンボス型を用いて150℃10秒間、100KPaで加熱加圧賦型し、図5に示すような、生地2と箔6とが定められた特定の輪郭形状を有する接着剤層4を介して接着しかつ箔6と接着剤層4とが賦型されたものを得た。生地2に接着されていない箔6を除去して図6に示すような箔転写製品20を得た。この箔転写製品は賦型された部分に鮮明な凹凸模様が得られた。得られた箔転写製品の接着剤層の最大厚みは、337μm、賦型により生じた凹凸の高さは250μmであった。
【0050】
実施例2
箔として東レルミラースタンピング用タイプF65:厚み12.25μmを使用した。
水溶性ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製SR−1000)の固形分30重量%の溶液100重量部と、ポリエステル系ホットメルト樹脂パウダ50重量部とを混合してペーストを得た。パウダの平均径は15μmであった。
【0051】
このペーストを用いて実施例1と同様にして箔転写製品を得た。この箔転写製品は賦型された部分に鮮明な凹凸模様が得られた。
【0052】
実施例3
パウダとして平均粒径20ミクロンの石粉を使用したほかは実施例1と同様にして箔転写製品を得た。得られた箔転写製品は賦型された部分に実施例1で得られた箔転写製品よりも更に鮮明な凹凸模様が得られた。
【0053】
実施例4
パウダとして平均粒径100ミクロンのシラスバルーンを使用したほかは実施例1と同様にして箔転写製品を得た。得られた箔転写製品は賦型された部分に実施例3で得られた箔転写製品よりも更に鮮明な凹凸模様が得られた。
【0054】
比較例
アクリル系樹脂のエマルジョン(固形分30重量%)をカルボキシメチルセルロース系の粘度調整剤で粘度を調整しペーストを用いた他は実施例1と同様にして箔転写製品を得た。得られた箔転写製品は接着剤層が扁平で賦型された部分の凹凸模様は凹凸の境目がぼやけてはっきりせず凹凸模様が鮮明でなかった。
【0055】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の箔転写製品は衣料ファッション素材、ユニフォーム、靴鞄等の日用品、装飾品、インテリア用素材、事務用品等の分野で装飾性を高める目的で広範囲に使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の箔転写製品の構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明の箔転写製品の製造方法における中間工程の一つを説明する断面模式図である。
【図3】本発明の箔転写製品の製造方法における中間工程の他の一つを説明する断面模式図である。
【図4】本発明の箔転写製品の製造方法における中間工程の更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図5】本発明の箔転写製品の製造方法における中間工程の又更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図6】本発明の箔転写製品の製造方法により得られた箔転写製品を説明する断面模式図である。
【図7】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の一つを説明する断面模式図である。
【図8】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の他の一つを説明する断面模式図である。
【図9】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図10】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の又更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図11】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の更に又他の一つを説明する断面模式図である。
【図12】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の別の一つを説明する断面模式図である。
【図13】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様における中間工程の更に別の一つを説明する断面模式図である。
【図14】本発明の箔転写製品の製造方法の他の態様により得られた箔転写製品を説明する断面模式図である。
【図15】本発明の箔転写製品の製造方法の更に他の態様における中間工程の一つを説明する断面模式図である。
【図16】本発明の箔転写製品の製造方法の更に他の態様における中間工程の他の一つを説明する断面模式図である。
【図17】本発明の箔転写製品の製造方法の更に他の態様における中間工程の更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図18】本発明の箔転写製品の製造方法の更に他の態様における中間工程の又更に他の一つを説明する断面模式図である。
【図19】本発明の箔転写製品の他の態様の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0058】
2:生地
4:接着剤層
6:箔
20:箔転写製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔及び該接着剤層の該箔と面する面が一体に賦型されてなり、該凹凸加工により生じた該接着剤層の凹凸の高さが、0.3T〜0.9Tである箔転写製品。
【請求項2】
生地表面に最大厚さTが0.2〜7mmの接着剤層を介して箔が貼着され、凹凸加工により該箔、該接着剤層及び該生地が一体に賦型されてなる箔転写製品。
【請求項3】
前記接着剤層が粉体を含有する接着剤が固化してなる請求項1又は2に記載の箔転写製品。
【請求項4】
前記粉体がホットメルト樹脂から成る粉体を含む請求項3に記載の箔転写製品。
【請求項5】
前記接着剤層が、樹脂成分と、該樹脂成分に対して5〜50重量%の粉体とを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の箔転写製品。
【請求項6】
前記粉体が前記接着剤層の賦型時の加熱温度で溶融しない素材からなる請求項5に記載の箔転写製品。
【請求項7】
前記粉体が無機粉体である請求項6に記載の箔転写製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−37306(P2006−37306A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222705(P2004−222705)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504291801)
【出願人】(501329596)
【出願人】(504291834)
【出願人】(501329600)
【出願人】(500270893)株式会社コルモス (2)
【Fターム(参考)】