説明

箔転写面形成用トナー、箔転写方法、及び、箔転写面形成用トナーの製造方法

【課題】製品と転写箔との間に強固な接着力を発現してじょうぶな箔転写面を形成するとともに、欠けやバリを発生させずに精度よく箔を転写させることが可能な箔転写面形成用トナーを提供する。
【解決手段】少なくとも樹脂のマトリクス相に、平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下のワックスのドメイン相を分散させた構造の箔転写面形成用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品上の箔を転写する個所に供給されて箔転写面と呼ぶ層を形成するのに使用される箔転写面形成用トナー(以下、簡単にトナーともいう)と、当該トナーを用いた箔転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製本、商業印刷分野やカードビジネス分野、あるいは、化粧品容器等のプラスチック成形等の分野では、「箔押し」と呼ばれる処理技術が行われている。この技術は、「ホットスタンプ法」とも呼ばれ、金属製の押し型を用いて熱と圧力を与えて製品表面に箔でできた文字や絵柄を転写させ、一般印刷で表現が困難な金属感や光沢のある高級なイメージを付与することができる。また、最近ではキャッシュカードやクレジットカード等の偽変造防止やセキュリティのために設けられるホログラムにも箔転写の技術が展開されている。
【0003】
箔押しに使用される転写箔は、たとえば、樹脂製のフィルム状基材面に離型剤層を設け、その上に保護層や転写材層、接着剤層を配置させた構造を有し、箔を含有する転写材層は主に金属蒸着やインクを用いて形成されるものである。この様な構造を有する転写箔は、箔を転写させる素材や用途が拡大に伴って改良が進められてきた。たとえば、有機ケイ素化合物と反応性有機化合物を含有した保護層を設けることにより箔画像の耐久性を向上させたものや、基材から剥離した後に電子線照射を行って強固な保護層を形成する様にした転写箔等が検討された(たとえば、特許文献1、2参照)。また、前述したキャッシュカードやクレジットカード用の転写箔は、精密な模様を正確に、かつ、バリや欠け等の不良を発生させない転写が求められ、たとえば、高分子液晶材料を転写材層に含有させてこの課題を解消している(たとえば、特許文献3参照)。
【0004】
一方、手間をかけずに箔転写を行う方法も検討され、その中に、トナーを用いて基体上に樹脂層を形成し、その上に箔を転写する技術が検討されていた。具体的には、基体上にトナーを用いて凸状の画像や意匠模様画像を形成し、このトナー画像面に転写箔を重ね合わせて熱圧着を行い、箔を転写するものがある(たとえば、特許文献4参照)。また、基材上にトナーを付着させた謄本を作成し、謄本の上に蒸着箔シートを重ねて、その上からアイロンでホットプレスした後、蒸着箔シートを基材から剥がすだけで金属箔を転写できる様にした技術もある(たとえば、特許文献5参照)。これらの技術では、押し型と呼ばれる金属製の圧着部材を使用せずに箔の転写が迅速に行えるので、箔転写作業の所要時間を短縮化するとともに箔転写装置の構成を簡素化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−1995号公報
【特許文献2】特開2007−157159号公報
【特許文献3】特開2009−90464号公報
【特許文献4】特開平1−200985号公報
【特許文献5】特開2000−127691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トナーを用いて箔を転写する技術では、トナー層上に転写された箔をよく観察すると、仕上がりや強度に課題を残しているものが多くみられた。具体的には、転写箔が離型剤層から剥離しきれず箔がところどころ欠落した仕上がりになっているものや、転写箔からきちんと剥離したものの部分的に剥がれ易い個所が存在して経時で剥がれるものがあった。この様に、トナー層上に転写した箔に十分な接着力が付与されていない傾向がみられ、その原因としてトナー中に含有されているワックスの影響が考えられた。
【0007】
トナー中のワックスは、トナー層を形成する際、基材が定着ローラに巻き付くのを防ぐために添加され、定着時にトナー層表面にすばやく溶出する様に設計されていることが多かった。したがって、トナー層表面にワックスの層が形成され、このワックスの層が箔とトナー層の接着性を阻害しているものと考えられた。上述したトナーを用いて箔を転写する技術には、トナー中に含有させたワックスの影響で箔の接着性に影響を与えることを示唆する記載はみられず、この課題への取り組みはこれまでほとんど行われていなかったといえる。
【0008】
本発明は、ワックスを含有する箔転写面形成トナーについて、ワックスの影響を受けずに転写箔をトナー層表面に強固に接着させることが可能な箔転写面形成用トナーを提供することを目的とする。すなわち、ワックスを含有するトナーを用いて形成した箔転写面上に箔を転写するとき、箔転写面上のところどころに箔の欠落やバリを発生させずに良好な仕上がりになる様に箔の転写が行えるトナーを提供することを目的とする。また、箔転写面上に転写させた箔が、経時で剥離せずに長期にわたり箔を強固に接着させておくことが可能な箔転写面形成トナーを提供することを目的とする。さらに、電子写真方式の画像形成により箔転写面を形成するときには、箔転写面上へのワックスの適度な浸み出しが得られ、巻き付き等を起こさずにスムーズに箔転写面を形成する箔転写面形成用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題が以下に記載のいずれかの構成により解消されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『少なくとも、樹脂とワックスを含有する箔転写面形成用トナーであって、
前記箔転写面形成用トナーは、
前記樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有し、
前記ワックスのドメイン相の平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする箔転写面形成用トナー。』というものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
『前記樹脂は、少なくとも、複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いて形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の箔転写面形成用トナー。』というものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
『前記極性基がカルボキシル基(−COOH)であることを特徴とする請求項1または2に記載の箔転写面形成用トナー。』というものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
『前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の箔転写面形成用トナー。』というものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
『前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の箔転写面形成用トナー。』というものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
『少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を製品に転写する工程と、
前記製品に転写された箔転写面を製品上に定着する工程と、
前記箔転写面が定着された製品に少なくとも接着層を有する転写箔を供給する工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させる工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させた状態のまま加熱する工程と、
前記転写箔を前記製品より除去する工程を有する箔転写方法であって、
前記箔転写面の形成に使用されるトナーは、
少なくとも、樹脂とワックスを含有し、
前記樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有し、
前記ワックスのドメイン相の平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする箔転写方法。』というものである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、
『前記樹脂は、少なくとも、複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いて形成されるものであることを特徴とする請求項6に記載の箔転写方法。』というものである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、
『前記極性基がカルボキシル基(−COOH)であることを特徴とする請求項6または7に記載の箔転写方法。』というものである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、
『前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸のいずれかであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の箔転写方法。』というものである。
【0018】
請求項10に記載の発明は、
『前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の箔転写方法。』というものである。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、
『少なくとも、樹脂とワックスを含有する請求項1に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法であって、
前記箔転写面形成用トナーは、少なくとも、
水系媒体中で、複数回数の重合を経て樹脂粒子を形成する工程と、前記樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て作製されるものであり、
前記複数回数の重合を経て樹脂粒子を形成する工程は、少なくとも、
ワックスを含有する重合性単量体を重合してワックス含有樹脂粒子を形成する工程と、前記ワックス含有樹脂粒子の存在下で重合性単量体の重合を行って前記ワックス含有樹脂粒子表面に樹脂層を形成して樹脂粒子を形成する工程とを有するものであることを特徴とする箔転写面形成用トナーの製造方法。』というものである。
【0020】
請求項12に記載の発明は、
『前記ワックス含有樹脂粒子表面に樹脂層を形成する工程で使用される重合性単量体量が、前記ワックス含有樹脂粒子を形成する工程で使用される重合性単量体量の2.5倍以上3.8倍以下であることを特徴とする請求項11に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法。』というものである。
【0021】
請求項13に記載の発明は、
『前記ワックス含有樹脂粒子を形成する工程で、少なくとも複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いることを特徴とする請求項11に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法。』というものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、箔転写面の形成に使用するトナーについて、樹脂のマトリックス相に分散するワックスの平均ドメイン径を規定するものとした。この様な構成のトナーを用いて箔を転写させる箔転写面を形成することにより、箔転写面上に箔を転写するときにワックスの影響を受けずに箔を安定して転写させることを可能にした。
【0023】
すなわち、後述する実施例の評価結果にも示す様に、箔転写面全面で箔を接着させることが可能になり、局所的な箔の欠落やバリの発生を起こさずに箔の転写が行える様になった。また、微細な細線より構成される線画像面上へ箔を精度よく転写可能なことも確認された。
【0024】
また、箔転写面上に箔を転写後、箔転写面全面で箔を接着させた状態は安定に維持され、経時で箔が転写面より脱離することがなくなり、箔を用いた製品の美的外観への耐久性を大幅に向上させることができるようになった。さらに、電子写真方式により当該トナーを用いて箔転写面を形成するときには、箔転写面上にワックスの適度な浸み出しが得られるので、必要な分離性能レベルを維持することができる。したがって、箔転写面が形成された基体が定着ローラに巻き付いて搬送不良を起こす様なことはなく、箔転写面の形成がスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相が分散した構造の箔転写面形成用トナーの断面構造を示す模式図である。
【図2】製品上に形成された箔転写面上に箔を転写する手順を示す模式図である。
【図3】静電潜像方式により箔転写面を形成する箔転写面形成装置の概略図である。
【図4】箔転写面の形成とフルカラー画像形成を同時に行える箔転写面形成装置の断面構成図である。
【図5】中間転写ベルト、定着装置、転写箔供給部の配置例を示す概略図である。
【図6】転写箔の断面構造を示す模式図である。
【図7】実施例の評価で使用した箔画像サンプルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、製品上の箔を転写する個所に箔転写面と呼ぶ層を形成し、当該層上に箔を転写させて美的外観向上に寄与する箔転写面形成用トナー(以下、簡単にトナーともいう)と箔転写方法に関し、特に、当該トナーがワックスを含有するものである。
【0027】
本発明者は、箔転写面形成用トナーを「樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有し、当該ワックスのドメイン相の平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下のもの」とすることにより上記課題が解消されることを見出した。本発明に係るトナーにより、形成された箔転写面上で転写箔の接着性が向上した理由は以下の様に考えられる。すなわち、トナーに含有されるワックスの平均ドメイン径を上記範囲にすることで、箔転写面形成時、溶出してきたワックスは箔転写面表面で微細に分散した状態で存在する様になる。その結果、箔転写面表面では、転写箔と樹脂相の接触面を多く確保することができる様になったものと考えられる。つまり、ワックスが細かく分散することにより、個々の面積は小さいものの転写箔と樹脂相の接触点が転写箔表面にムラなく均一に広く分布しているので、個々の接点がスポット溶接の様になって転写箔を箔転写面全面で保持しているためと考えられる。
【0028】
ここで、箔転写面形成用トナーのワックスドメイン相の大きさを制御する具体的な方法について説明する。箔転写面表面でワックスを細かく分散させることを可能にする要因の1つとして、たとえば、樹脂分子を構成するモノマー単位側鎖に存在する極性基の存在が考えられる。すなわち、モノマー単位側鎖の極性基が多く存在すると、これら極性基間で形成される水素結合の影響が大きくなり、箔転写面表面に溶出してきたワックスは水素結合の影響を受けて合一が妨げられる様になる。その結果、箔転写面表面に溶出してきたワックスは細かく分散した状態で存在する様になるものと考えられる。
【0029】
また、トナーを構成する樹脂粒子のワックス含有樹脂層の比率も箔転写面トナーのワックスドメイン相の大きさを制御する因子と考えられる。すなわち、多段重合法により樹脂粒子を形成する際、先ず、ワックスの存在下でモノマーの重合を行いワックス含有樹脂粒子を形成する。続いて、ワックス含有樹脂粒子の存在下にモノマーを投入し重合反応を行うことにより、ワックス含有樹脂粒子表面にワックスを含有していない樹脂層を形成することができる。この様に、多段重合法を用いてワックス含有樹脂層とワックスを含有しない樹脂層を有する構造の樹脂粒子を形成することができる。そして、最初に行うワックス存在下での重合反応で使用するモノマー量をワックス含有樹脂粒子存在下で行う重合反応で使用するモノマー量よりも少なくして樹脂粒子を形成する。この樹脂粒子は、2回目の重合反応で形成されたワックスを含有しない樹脂層がワックス含有樹脂層に影響を与えているので、2回目に行う重合反応で使用するモノマーを多くするほどワックス含有樹脂層の比率を下げることになるので、凝集、融着して形成されたトナーのワックスドメイン相の大きさは小さくなるものと考えられる。このことについては、後述する実施例で具体的に説明する。
【0030】
この様な理由により、本発明に係るトナーで形成された箔転写面表面では、転写箔の接着性が向上したものと考えられる。
【0031】
また、本発明に係るトナーで形成された箔転写面では、面全体にワックスを細かく分散させた状態になるので、ワックスによる離型性を十分に発現し易いものと考えられる。この様に、電子写真方式の画像形成方法により形成された箔転写面では、ワックスの離型性が十分に発現する状態下で定着を行うことができるので、箔転写面の定着装置部材への巻き付き等を起こしにくいものと考えられる。
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
なお、本発明でいう「箔転写面形成用トナー」とは、画像形成される画像支持体やIDカード等のプラスチック成形品等の製品上に箔を形成する際、箔を転写する領域に使用される樹脂製の粉体のことである。箔転写面形成用トナーは、製品上に形成されたトナー層を介して転写箔の製品上での接着性を強化、維持するものである。具体的には、先ず、製品上に形成する箔の形状と同じ形状の静電潜像が形成された感光体上に供給され、当該感光体上に、製品上に箔を転写させるためのトナー層(箔転写面)を形成する。感光体上に形成されたトナー層は、製品上に転写され、加熱による定着処理が行われる。次に、定着処理により定着したトナー層が形成された製品に転写箔が供給され、製品と転写箔が接触した状態の下で加熱処理を施すと当該トナー層上に箔が接着する。そして、転写箔を除去すると、トナー層上に箔が転写、固定され、製品上に箔の模様が形成される。
【0034】
この様に、本発明でいう「箔転写面形成用トナー」は、感光体上に供給されて箔転写面と呼ばれるトナー層を形成するものである。そして、本発明に係る箔転写面形成用トナーにより形成された感光体上の箔転写面は、画像支持体に代表されるシート形状の製品上に転写、定着される。さらに、製品上に定着された箔転写面は、転写箔が供給され、加熱されると箔と強固に接着して転写が行われるものである。
【0035】
また、本発明でいう「箔転写面」とは、画像支持体やプラスチック成形品等の製品上の箔を転写させる領域のことで、本発明に係るトナーを用いて形成されるものである。
【0036】
また、本発明では、「製品」や「基体」という用語を用いているが、いずれも公知の画像形成方法により画像を形成することが可能な「画像支持体」と呼ばれる支持体より構成されるものである。ここで、本発明でいう「製品」とは、「基体」の上に少なくとも箔を転写させ、箔により装飾された形態のものをいう。また、本発明でいう「基体」とは、紙やPET(ポリエチレンテレフタレート)ベース等の画像支持体やプラスチック成形品等の立体形状を有するもので、箔による装飾を施す前のものをいうものである。
【0037】
さらに、本発明でいう「箔」とは、「転写箔」とも呼ばれるもので、一般印刷では表現が困難な金属感や光沢感を有する文字や絵柄を画像支持体上に付与するために使用されるものである。転写箔は表現の種類により、金銀箔、カラー顔料箔、ホログラム箔等、様々な種類のものがあるが、本発明ではその種類は限定されるものではない。これら転写箔を用いることにより、金色や銀色の画像や金属光沢をもったカラー画像表現、あるいはホログラム画像の形成を可能にしている。また、転写箔の構成は、たとえば、後述する図6に示す様な層構造を有するものである。すなわち、ベースとなる支持体の上に、離型層、箔の層、接着層等が設けられた構成を有するもので、画像支持体上にトナーで形成された箔転写面に接着可能にしたものである。なお、箔の層は着色層や蒸着層等から構成されるものであり、また、離型層は剥離層とも呼ばれるものである。
【0038】
本発明に係る箔転写面形成用トナーについて説明する。本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂とワックスを含有するもので、樹脂のマトリクス相に平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下のワックスのドメイン相を分散させた構造を有するものである。そして、マトリクス相を形成する樹脂には、少なくとも、複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いて形成されたものが好ましく使用されている。
【0039】
本発明に係る箔転写面形成用トナーの断面構造を図1に示す。図1に示すトナーTは、連続相であるマトリクス相M中にワックスのドメイン相Dを分散させたいわゆる相分離構造あるいはドメイン・マトリクス構造と呼ばれる構造を有するものである。そして、トナー粒子T中に分散するワックスのドメイン相Dは、平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下のものである。
【0040】
平均ドメイン径を上記範囲内にすることにより、トナーにより形成される箔転写面表面に溶出してくるワックスの凝集(合一ともいう)が抑制され、箔転写面では転写箔に対して良好な接着性能を発現させることを可能にしている。すなわち、ワックスが箔転写面表面に細かく均一に分散する形態を採る様になり、樹脂相も箔転写面全面に均一に表れるので樹脂と転写箔との間での接着が箔転写面全面に均一な状態で発現される様になる。
【0041】
その結果、転写箔を箔転写面表面に転写させるときは、転写箔が箔転写面表面に強固に保持されるので箔を欠落させずに転写させることができる。また、転写した箔画像と箔転写面との接着力は経時で低下しないので、箔画像は箔転写面から剥離することなく長期にわたり安定して接着を維持することができる。
【0042】
また、当該トナーを用いて基体上に箔転写面を形成するとき、箔転写面上に離型性を適度に発現させることも可能なので、ローラ等の定着装置構成部材に基体が巻き付きを起こさずに、箔転写面をスムーズに形成することができる。
【0043】
この様に、本発明に係るトナーは、ワックス成分の平均ドメイン径を上記範囲とすることにより、箔転写面全面で転写箔が保持されて箔を欠落させずに転写できるので、良好な仕上がりの箔画像を形成することが可能である。また、箔転写面に転写された箔画像は樹脂との接着性が長期にわたり維持されるので、経時での接着力低下による箔転写面からの脱離は起こらず、製品の品質を長期に維持することが可能である。さらに、本発明に係るトナーは、基体上に箔転写面を形成する際、形成された箔転写面全面にワックスを細かく均一に分散させるので、ワックスの離型性は十分に確保され、定着装置部材への巻き付きを起こすことなくスムーズに箔転写面を形成することが可能である。
【0044】
本発明に係るトナーでは、ワックスの平均ドメイン径は、たとえば、後述する極性基を複数有するビニル系モノマーの添加等により制御することが可能である。たとえば、極性基を複数有するビニル系モノマーを多く添加させることによりワックスのドメイン径を小さくすることが可能で、極性基を複数有するビニル系モノマーの添加量を少なくすることでドメイン径を大きくすることが可能である。
【0045】
たとえば、極性基を複数有するビニル系モノマーの添加量の制御等により、ワックスのドメイン径が制御される理由としては、極性基間で形成される水素結合の強度によりワックスの凝集(合一ともいう)が影響されるためと考えられる。すなわち、樹脂を構成する分子鎖には極性基による電気的な偏りが存在し、これに起因する双極子モーメントの作用で樹脂を構成する分子鎖間に水素結合が形成される。そして、水素結合が存在する領域では樹脂を構成する分子鎖同士の凝集は進行するが、ワックスの凝集(合一)は阻害される方向に作用するものと考えられる。
【0046】
したがって、極性基を複数有するビニル系モノマーの添加量が多くなると、水素結合密度が高くなり、ワックス成分の凝集が阻害されてドメイン径を小さくするものと考えられる。一方、極性基を複数有するビニル系モノマーの添加量が少なくなると、水素結合密度が低くなり、ワックス成分の凝集が促進されてドメイン径を大きくするものと考えられる。この様な仕組みにより、ワックスのドメイン径は、極性基を複数有するビニル系モノマーの様な水素結合密度を制御する因子の存在により、制御されるものと考えられる。
【0047】
本発明に係るトナーのワックスの平均ドメイン径は、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)等でトナー粒子の断面構造を観察することにより、算出することが可能である。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー粒子中のワックスの平均ドメイン径を測定、算出する方法を説明する。透過型電子顕微鏡による箔転写面形成用トナーのワックスの平均ドメイン径測定は、たとえば、以下の手順で試料作製し、作製した試料を透過型電子顕微鏡で撮影し、撮影により得られた電子顕微鏡写真画像より算出が可能である。
【0048】
先ず、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後、加圧成形して箔転写面形成用トナーを含有したブロックを作製する。作製したブロックに、必要な場合には四三酸化ルテニウム、または、四三酸化オスミウムを併用して染色処理を行った後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、厚さ200nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製する。
【0049】
この様に薄片状にした測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、箔転写面形成用トナーの断面構造を写真撮影する。このとき、電子顕微鏡の倍率はトナー粒子1個の断面が視野に入る倍率にするのが好ましい。具体的には、ネガ倍率を280倍に設定して撮影を行い、撮影画像を引き伸ばして倍率12,000倍の写真画像を作成する。そして、作成した倍率12,000倍の写真画像を市販の画像処理装置「LuzexIII(ニレコ(株)製)」を用いて解析して、ワックスの平均ドメイン径を算出する。ここで、「平均ドメイン径」は、作成した写真画像を前記画像処理装置で解析する際、たとえば、箔転写面形成用のトナー粒子20個中に存在する各ドメイン相のドメイン径を各々円相当径にして算出し、その平均値を「平均ドメイン径」とする。
【0050】
なお、箔転写面形成用トナーのドメイン相の観察が可能な透過型電子顕微鏡の具体的な機種としては、たとえば、「LEM−2000型(トプコン社製)」や「JEM−2000FX(日本電子製)」等の市販の装置が挙げられる。
【0051】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーを構成する樹脂を形成する際に好ましく使用される「極性基を複数有するビニル系モノマー」について説明する。本発明に係る箔転写面形成用トナーを構成する樹脂は、前述の様に、分子鎖間における水素結合密度の様なワックスドメイン径の制御を可能にする物理因子を発現することが求められる。たとえば、「極性基を複数有するビニル系モノマー」を用いて形成される樹脂は、前述の様に、分子鎖間での水素結合によりワックスドメイン径の制御が行えるものと考えられるので好ましいものである。
【0052】
ここで、「極性基を複数有するビニル系モノマー」中の「極性基」とは、基を構成する各原子の電気陰性度の差に起因して原子間で電気的な偏りを生じているとみられる官能基のことである。具体的には、官能基中に酸素原子や窒素原子等を含むもので、水酸基(−OH)、カルボニル基(−C=O)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、スルホニル基(−SOH)、シアノ基(−CN)等がある。また、「ビニル系モノマー」とは、ビニル基(CH=CH−)等の炭素原子間の不飽和結合を分子構造中に少なくとも1組有し、重合開始剤の下でこの炭素原子不飽和結合を介して付加反応を行って重合体を形成することが可能な有機化合物のことである。
【0053】
本発明に係る箔転写面形成用トナーを形成する際に好ましく使用される「極性基を複数有するビニル系モノマー」としては、たとえば、カルボキシル基(−COOH)を複数有するビニル系モノマーが好ましく用いられるものの代表的なものである。カルボキシル基(−COOH)を複数有するビニル系モノマーの具体例としては、たとえば、カルボキシル基を2つ有するイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等や、カルボキシル基を3つ有するアコニット酸等が挙げられる。以下に、カルボキシル基を複数個有するビニル系モノマーの具体例を示す。
【0054】
【化1】

【0055】
本発明では、上記極性基を複数有するビニル系モノマーの中でもイタコン酸、マレイン酸、アコニット酸を用いて形成された樹脂よりなるトナーがより好ましく、イタコン酸を用いて形成された樹脂よりなるトナーが特に好ましい。
【0056】
また、前述した様に、極性基を複数有するビニル系モノマーの添加量が少ないと形成されるトナー粒子は大きなドメイン相を有するものが得られ、添加量が多くなると小さなドメイン相のトナーを形成することができる。本発明では、極性基を複数有するビニル系モノマーを用いて樹脂を形成する場合、その添加量をビニル系モノマー全量に対して0.1質量%〜5質量%とすることがより好ましく、0.4質量%〜2.5質量%とすることが特に好ましい。
【0057】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーを構成する樹脂を作製する際に、上述した極性基を複数有するビニル系モノマーとの併用可能なビニル系モノマーについて説明する。箔転写面形成用トナーを構成する樹脂を作製する際、「極性基を複数有するビニル系モノマー」を使用する場合、公知のビニル系モノマーを併用することが可能である。
【0058】
以下に、使用可能なビニル系モノマーの具体例を示すが、本発明に係る箔転写面形成用トナーを構成する樹脂の作製に使用可能なビニル系モノマーは下記に示すもののみに限定されるものではない。
【0059】
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(9)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
【0060】
また、以下に示す多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂を作製することも可能である。多官能性ビニル類の具体例を以下に示す。すなわち、
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等
上記樹脂の分子量は、クリアトナーとしての性能を安定して発現することが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、たとえば、数平均分子量Mnで5,000以上50,000以下のもの等が好ましい。また、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは、たとえば、1.0以上1.5以下となる様なものは好ましいものの1つである。トナーを構成する樹脂の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwが上記関係を満たすことにより、定着時にシャープな溶融性が発現され、このことはトナーの溶融及び冷却による固化を促進する上で好ましい。
【0061】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーに使用されるワックスについて説明する。前述した様に、本発明に係る箔転写面形成用トナーは、平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下のワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有するもので、樹脂成分より構成されるマトリクス相にワックス成分より構成されるドメイン相を分散させた構造をとるものである。
【0062】
本発明に係る箔転写面形成用トナーに使用可能なワックスは、樹脂成分との間で相分離構造を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知のワックスを使用することが可能である。以下に、本発明に係る箔転写面形成用トナーに使用可能なワックスの具体例を示すが、本発明で使用可能なワックスは以下のもののみに限定されるものではない。
(1)炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、サゾールワックス等
(2)エステル系ワックス
トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(3)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
(4)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(5)その他
カルナウバワックス、モンタンワックス等。
【0063】
上記ワックスの中でも「炭化水素系ワックス」は、非極性の性質を有する分子鎖より構成されるので、極性部位をところどころに有する樹脂相に対して良好な非相溶性を発現し、所定粒径のドメイン相を形成する上で有利に作用するものと考えられる。
【0064】
本発明に係る箔転写面形成用トナーに使用可能な炭化水素系ワックスには、その分子構造から、直鎖状炭化水素化合物、分岐鎖状炭化水素化合物、分子構造上に環状構造を有する炭化水素化合物等がある。
【0065】
直鎖状炭化水素化合物には、たとえば、主成分がノルマルパラフィンと呼ばれるパラフィンワックスより構成される石油ワックスや、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックスがある。ここで、パラフィンワックスとは、減圧蒸留抽出油より公知の方法で分離して得られたものである。また、フィッシャートロプスワックスとは、一酸化炭素と水素とからなる合成ガスより合成される炭化水素の蒸留から、またはこれらに水素添加して得られる炭素数が16〜78の炭化水素化合物のことである。さらに、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスは、エチレンやプロピレンの重合、ポリエチレンやポリプロピレンの熱分解により得られるものである。
【0066】
次に、分岐鎖状炭化水素化合物と分子構造上に環状構造を有する炭化水素化合物には、たとえば、以下に示すマイクロクリスタリンワックスや、イソパラフィンが主成分であるワックスが挙げられる。マイクロクリスタリンワックスの具体例には、たとえば、HNP−0190、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1090、Hi−Mic−2045、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−2095等(いずれも日本精蝋(株)製)がある。ここで、マイクロクリスタリンワックスとは、石油ワックスの中で主成分がイソパラフィンと呼ばれる分岐鎖状炭化水素化合物やシクロパラフィンと呼ばれる環状炭化水素化合物の割合が高いワックスである。マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンを多く含有するため、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、分子量が大きいものである。マイクロクリスタリンワックスは、一般に、炭素原子数が60〜150、数平均分子量Mnが900以上2000以下、融点が60〜90℃である。
【0067】
また、イソパラフィンが主成分であるワックスの具体例には、たとえば、EMW−0001、EMW−0003等がある。
【0068】
ワックスの融点は、通常40〜160℃にすることが好ましく、ワックスの融点を上記範囲内にすることで加熱による溶融がムラなく迅速に行え、クリアトナー層表面に均一な厚みのワックス被膜を形成する上で有利に作用するものと考えられる。また、ワックスの融点を50〜120℃、好ましくは60〜90℃にすることで、低い加熱温度でも良好なワックス溶融を実現し、クリアトナー層形成時のエネルギー消費量を低減させることが期待できる。また、クリアトナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
【0069】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーの製造方法について説明する。
【0070】
本発明に係る箔転写面形成用トナーを製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の電子写真方式の画像形成に使用されているトナーの製造方法を適用することができる。具体的には、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法を適用することで、本発明に係る箔転写面形成用トナーの作製が可能である。
【0071】
前述した様に、本発明に係る箔転写面形成用トナーは、樹脂マトリクス相に前述の平均ドメイン径を有するワックスドメイン相を有するものである。そして、箔転写面形成用トナーのワックス成分のドメイン相の大きさを制御する方法としては、たとえば、前述した様に、「極性基を複数有するビニル系モノマー」の添加量を制御する等がある。
【0072】
トナーの製造工程で、ワックスのドメイン相の大きさを揃えながらトナー粒子を作製する好ましい方法としては、たとえば、重合法が挙げられる。重合法によるトナー製造方法は、たとえば、懸濁重合、乳化重合等の重合反応により樹脂粒子を形成する工程を有する。そして、重合法によるトナー製造方法の中でも、懸濁重合や乳化重合等で形成した樹脂粒子を凝集、融着させてトナーの母体粒子を形成する会合工程を有する製造方法が特に好ましい。
【0073】
以下に、本発明に係る箔転写面形成用トナーの作製方法の一例として、乳化会合法による箔転写面形成用トナーの作製方法について説明する。乳化会合法による箔転写面形成用トナーの作製方法は、たとえば、以下の工程を経て行われる。
【0074】
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
(2)樹脂粒子の凝集・融着工程(会合工程)
(3)熟成工程
(4)冷却工程
(5)洗浄工程
(6)乾燥工程
(7)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
【0075】
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
この工程は、箔転写面形成用トナーを構成する樹脂を形成する工程である。具体的には、たとえば、前述した極性基を複数有するビニル系モノマー等のビニル系モノマーを水系媒体中に添加した後、分散処理を行ってモノマーの油滴を形成しておき、この状態で乳化重合反応を行って100nm程度の大きさの樹脂粒子を形成するものである。
【0076】
すなわち、極性基を複数有するビニル系モノマー等のビニル系モノマーを水系媒体中に添加後、乳化分散処理を施して、ビニル系モノマーの油滴を形成し、水系媒体中に形成した油滴中でラジカル重合反応を行って樹脂粒子を形成するものである。なお、この工程では、ビニル系モノマーにワックスを溶解させたものを水系媒体中に添加し、分散処理を施してワックスを含有するビニル系モノマーの油滴を形成することも可能である。この様に、ワックスを含有するビニル系モノマーの油滴中でラジカル重合反応を行うことによりワックスを含有する樹脂粒子を形成することも可能である。
【0077】
ビニル系モノマーの油滴は、ビニル系モノマーを添加した水系媒体に公知の方法で機械的エネルギーを付与して分散処理を行うことにより形成されるものである。水系媒体に機械的エネルギーを付与して油滴を形成する分散装置は、特に限定されるものではなく、たとえば高速回転するロータを有する市販の撹拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)(エム・テクニック(株)製)」等が代表的な装置である。前述の撹拌装置の他にも、超音波分散機や機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザ等の公知の分散装置が挙げられ、これら分散装置により100nm前後の油滴を水系媒体中に形成、分散させることが可能である。
【0078】
ラジカル重合反応は、前述のビニル系モノマーの油滴中に重合開始剤を含有させてラジカルを生成させて油滴中でビニル系モノマーの重合反応を行うもので、ラジカル重合反応により樹脂粒子が形成されるものである。あるいは、水系媒体中に重合開始剤を添加しておき、この重合開始剤より生成したラジカルを油滴中に供給してラジカル重合反応を開始する方法もある。
【0079】
ラジカル重合を行うときの温度は、ビニル系モノマーや重合開始剤の種類や添加量にもよるが、通常50〜100℃が好ましく、55〜90℃がより好ましい。また、重合反応時間は、樹脂粒子を形成するビニル系モノマー及びラジカルの反応速度にもよるが2〜12時間が好ましい。
【0080】
また、前述の「水系媒体」とは、水と水に溶解可能な有機溶剤から構成される液体のことで、少なくとも水を50質量%以上含有するものである。水系媒体を構成する水に溶解可能な有機溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等がある。これらの中でも形成した樹脂の溶解のおそれがないメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶剤が好ましい。
【0081】
本発明に係るトナーを形成する樹脂粒子は、前述した様に、ワックス存在下で1回目の重合を行ってワックス含有樹脂層を形成し、次に、ワックス含有樹脂層の存在下にモノマーを添加して2回目の重合を行う工程を経て作製することが好ましい。この様に、複数回の重合反応を段階的に行って樹脂粒子を形成する方法を多段重合という。多段重合を行うことにより、たとえば、形成した樹脂粒子の、粒子中心にワックス含有領域を形成し、粒子表面にはワックスを含有しない領域を形成することが可能になる。
【0082】
多段重合法によりワックス含有領域が規定された樹脂粒子を用いることにより、後述する実施例にも記載の様に、トナーのワックスドメイン相の大きさを制御することができる。この様な観点から、二段重合法や三段重合法等の多段重合法を用いて樹脂粒子を形成することが好ましい。以下、多段重合法の1つである二段重合法について説明する。
【0083】
〈二段重合法〉
二段重合法は、たとえば、ワックスを含有する樹脂で構成される中心部とワックスを含有しない樹脂で構成される外層を有する樹脂粒子の様に、2つの領域を有する樹脂粒子を製造する方法である。二段重合法は、第一段重合と第二段重合という2回の重合反応を行って樹脂粒子を形成するものである。
【0084】
たとえば、ワックスドメイン相の大きさを規定するトナーを作製する際、当該トナーの作製に使用する樹脂粒子を形成するにあたり、最初にワックスを添加した重合性単量体を用意し、これを水系媒体に添加後、水系媒体に機械的エネルギーを付与して重合性単量体の油滴を形成する。そして、ワックスを含有する重合性単量体の油滴を前述した様に重合(第1段重合)して、ワックスを含有する樹脂粒子分散液を作製する。
【0085】
次に、作製したワックス含有樹脂粒子分散液中に、重合開始剤と重合性単量体を添加し、ワックス含有樹脂粒子の存在下で重合性単量体の重合(第2段重合)を行う。この様にして、ワックス含有樹脂粒子表面にワックスを含有しない樹脂相が被覆されて2層構造の樹脂粒子を形成することができる。
【0086】
(2)樹脂粒子の凝集・融着工程(会合工程)
この工程は、前述の工程で形成した樹脂粒子を水系媒体中で凝集させて粒子を形成し、凝集により形成した粒子を加熱して融着させて粒子(外添処理する前のクリアトナーの母体粒子のこと)を作製する工程で、会合工程とも呼ばれるものである。すなわち、極性基を複数有するビニル系モノマーと他のビニル系モノマーを乳化重合させて形成した樹脂粒子を凝集、融着させて粒子を作製するものである。
【0087】
この工程では、前記樹脂粒子を存在させた水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加することにより、前記樹脂粒子を凝集させる。次いで、水系媒体中を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して凝集を進行させると同時に凝集させた樹脂粒子同士の融着を行う。そして、凝集を進行させて粒子の大きさが目標になったときに、食塩等の塩を添加して凝集を停止させる。
【0088】
なお、本発明に係る箔転写面形成用トナーを作製する場合、トナー粒子中にワックス成分を含有させておく必要がある。前述したワックス成分を含有している樹脂粒子を使用する場合はそのまま樹脂粒子を凝集・融着させて粒子を形成するが、ワックス成分を含有していない樹脂粒子を用いる場合は、樹脂粒子ともにワックス粒子を添加して凝集・融着を行うことになる。この場合、予めワックス粒子分散液を作製しておき、これを樹脂粒子分散液に添加して凝集・融着を行う。ワックス粒子分散液は、前述したビニル系モノマーの油滴を形成するときと同じ様に、水系媒体中にワックスを添加後、公知の方法による機械的エネルギーの作用で分散処理を行って形成される100nm程度のワックス粒子の分散液である。
【0089】
(3)熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより粒子の形状を所望の平均円形度になるまで熟成するいわゆる形状制御工程とも呼ばれる工程である。
【0090】
(4)冷却工程
この工程は、前記粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/分の冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0091】
(5)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却された前記粒子の分散液より粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのトナーケーキと呼ばれるケーキ状集合体となった粒子より界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去するための洗浄工程からなる。
【0092】
洗浄処理は、ろ液の電気伝導度がたとえば10μS/cm程度になるまで水洗浄する。固液分離方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用する減圧ろ過法、フィルタプレス等を使用するろ過法等があり、本発明では特に限定されるものではない。
【0093】
(6)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された前記粒子を乾燥処理する工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤ、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0094】
また、乾燥された粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0095】
(7)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理した粒子に外添剤や滑剤を添加する工程である。前記乾燥工程を経た粒子はそのまま箔転写面形成用のトナー粒子として使用できるが、外添剤を添加することによりトナーの帯電性や流動性、クリーニング性を向上させることができる。これら外添剤には、公知の無機微粒子や有機微粒子、脂肪族金属塩を使用することができ、その添加量はトナー全体に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤は種々のものを組み合わせて添加することができる。なお、外添剤を添加する際に使用する混合装置としては、たとえば、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウタミキサ、V型混合機、コーヒーミル等の公知の機械式の混合装置がある。
【0096】
公知の無機微粒子としては、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等がある。なお、これら無機微粒子を疎水化処理したものを使用することも可能である。
【0097】
シリカ微粒子の具体例としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等がある。
【0098】
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等がある。
【0099】
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等がある。
【0100】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0101】
これら外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0102】
以上の工程を経ることにより、乳化会合法により本発明に係る箔転写面形成用トナーを作製することができる。
【0103】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーを上述した乳化会合法で作製する場合に使用することが可能な重合開始剤、分散安定剤、界面活性剤等について説明する。
【0104】
本発明に係る箔転写面形成用トナーを構成する結着樹脂は、たとえば、極性基を複数有するビニル系モノマーと他のビニル系モノマーを用いて形成することが可能で、この場合、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用することができる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。すなわち、
(1)アゾ系またはジアゾ系重合開始剤
2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等
(2)過酸化物系重合開始剤
ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。
【0105】
また、樹脂粒子の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。
【0106】
また、極性基を複数有するビニル系モノマーと他のビニル系モノマーを水系媒体中に分散させた状態下で重合する場合、重合により得られた樹脂粒子を水系媒体中に分散させ、これを凝集、融着して箔転写面形成用トナーを作製することが可能である。これらトナー材料を水系媒体中に安定して分散させておく分散安定剤を使用することが好ましい。分散安定剤としては、たとえば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。
【0107】
また、水系媒体中で重合性単量体を用いて重合を行う場合、界面活性剤を使用して前記重合性単量体の油滴を水系媒体中に均一に分散させる必要がある。このとき、使用可能な界面活性剤は、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
【0108】
また、硫酸エステル塩には、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等がある。
【0109】
また、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等がある。
【0110】
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーを用いて行う箔転写方法(以下、本発明に係る箔転写方法ともいう)について説明する。本発明に係る箔転写方法は、少なくとも以下に示す(1)から(7)の工程を有するものである。すなわち、
(1)感光体を露光して静電潜像を形成する工程
(2)静電潜像が形成された感光体に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する工程
(3)感光体上に形成された箔転写面を製品に転写する工程
(4)製品上に転写された箔転写面を加熱して定着する工程
(5)定着処理した箔転写面を有する製品に少なくとも接着層を有する転写箔を供給する工程
(6)供給した転写箔の接着層を製品に接触させる工程
(7)転写箔の接着層と箔転写面を接触させた状態で加熱する工程
(8)接触させた状態の転写箔を製品より除去する工程
を有するものである。この様に、本発明に係る箔転写方法では、先ず、感光体を露光して製品上に形成する箔転写面の形状の静電潜像を形成し、静電潜像が形成された感光体上に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する。そして、感光体上に形成された箔転写面を製品に転写し、箔転写面を加熱して定着処理した製品に転写箔を供給して接触させ、この状態で加熱を行って箔転写面上に箔を転写させる。
【0111】
本発明に係る箔転写方法について図を用いて具体的に説明する。図2は上記(1)〜(7)の工程のうち、(4)〜(7)の工程を反映させた箔転写方法の手順を示す模式図である。すなわち、図2に示していない(1)〜(3)の工程を経て作製された基体P上に箔転写面Hが形成された製品Pに転写箔Fを供給し、供給された転写箔Fを箔転写面Hに接触させ、この状態で加熱を行い箔転写面Hに箔f2を転写させるものである。以下、図2に示す(a)〜(d)を具体的に説明する。
【0112】
図2(a)は、シート状の基体P上に本発明に係るトナーを用いて作製された箔転写面が形成された製品Pの断面図である。なお、上記(1)〜(3)の工程を経て基体P上に箔転写面Hを形成する方法については後述する。
【0113】
次に、図2(b)は製品Pに少なくとも接着層f1を有する転写箔Fを供給した状態を示すもので、転写箔Fは接着層f1が箔転写面Hと接触状態を形成する様に供給される。このとき、供給された転写箔Fの接着層f1は製品P上全面に接触することが想定されるもので、少なくとも製品表面に凸状に形成されている箔転写面Hには接触状態を形成しているといえる。本発明に係るトナーを用いて形成された箔転写面H表面では、前述したカルボキシル基の作用により、転写箔Fの接着層f1と付着し易い状態が形成されるものと推測される。なお、本発明で使用される転写箔Fは、ベースとなるフィルムf0上に少なくとも接着層f1と箔層f2を有するもので、ここでは接着層f1と箔層f2以外の層構成を省略してある。また、本発明に使用可能な転写箔Fの詳細な説明は後で行う。
【0114】
図2(c)は、転写箔Fを製品Pに接触させた状態で加熱手段である加熱加圧ローラR1とR2の間を通過させる状態を示すもので、転写箔Fの接着層f1が製品P上の箔転写面Hに接触している状態で加熱手段である加熱加圧ローラR1とR2の間を通過しているものである。加熱加圧ローラR1とR2の間を通過することにより転写箔Fの接着層f1は溶融し、通過後、接着層f1は冷却して硬化する。このとき、転写箔Fのうち箔転写面Hに接触している領域の接着層f1が箔転写面Hとの間に強固な接着状態を形成する。この様に、本発明では転写箔Fは製品P上に凸状に形成されている箔転写面Hに接触している接着層f1を介して箔転写面Hとの間に接着状態を形成し、転写箔Fより箔層f2を箔転写面Hの形状に忠実に対応させた形状に転写を行うことが可能である。
【0115】
次に、図2(d)は、転写箔Fを製品Pより除去する状態を示すもので、転写箔Fを除去すると、製品P上の箔転写面H上にのみ箔層f2が接着層f1とともに転写される。ここでは、本発明に係る箔転写面形成用トナーを使用することにより箔転写面Hの形状に対応する形状に箔層f2を転写させることが可能で、金属製の押し型を使用せずに欠けやバリを発生させずに所定形状の箔層f2を精度よく転写することが可能である。
【0116】
したがって、本発明によれば金属製の押し型を有さない簡易でコンパクトな構成の箔転写装置により、バリや欠けのない所定形状の箔転写が行え、簡易な箔転写装置により高品質の箔画像を有する製品Pを作製することが可能である。
【0117】
次に、本発明に係る箔転写方法で行われる製品上への箔転写面の形成が可能な箔転写面形成装置の一例を図3で説明する。図3の箔転写面形成装置1は、前述した(1)〜(7)の工程のうち(1)〜(3)の工程の実施が可能なもので、露光により静電潜像を形成する感光体を有し、当該感光体に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して静電潜像に対応した箔転写面を形成する。そして、形成された箔転写面を感光体より製品に転写させるものである。
【0118】
図3の箔転写面形成装置1では、図中の帯電ローラ12Hにより帯電された感光体11H上に露光光Lが照射されて静電潜像が形成される。感光体11H上に形成された静電潜像は、感光体11Hの近傍に配置されている箔転写面形成用トナー供給装置21Hより箔転写面形成用トナーの供給を受けることにより箔転写面を形成する。このとき、箔転写面形成用トナー供給装置21H内では内蔵されているトナー供給ローラ14が回転し、トナー供給ローラ14に付着させたトナーが感光体11Hに供給され、感光体11H上に箔転写面を形成する。
【0119】
次に、除電ランプ22により感光体11H上の電荷が除電されると、感光体11H上の箔転写面は感光体11Hと転写ローラ13Hとが近接する転写部で製品Pを構成する基体p1上に転写される。図3に示す基体p1は、転写紙に代表されるシート形状のもので図示しない給紙カセットより搬送ローラ23により転写部へ搬送され、転写ローラ13Hにより箔転写面形成用トナーと逆極性の電荷が付与される。基体p1は転写ローラ13Hにより付与された逆極性を有する電荷の静電作用により感光体11Hより箔転写面を転写することが可能である。
【0120】
箔転写面が転写された基体p1は、感光体11Hより分離された後、搬送ベルト24により図示しない定着装置に搬送される。定着装置はたとえば加熱ローラと加圧ローラ等より構成される定着手段を有し、基体p1上に形成された箔転写面を溶融して定着させる。
【0121】
以上の手順により、図3の箔転写面形成装置1では、感光体11H上に箔の形状に対応した静電潜像が形成され、箔転写面形成用トナーの供給により感光体11H上に箔転写面が形成される。そして、感光体11H上に形成された箔転写面は転写ローラ13Hにより製品Pを構成する基体p1に転写される。
【0122】
なお、図中の帯電ローラ12Hは、たとえば、以下の手順により感光体11Hを帯電することが可能である。すなわち、帯電ローラ12Hは電源27より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受けて感光体ドラム11Hを帯電する。図3に示す帯電ローラ12を用いる帯電はいわゆる接触方式と呼ばれるもので、本発明では図3に示す帯電方式の他に、後述する図4の装置で使用される非接触方式の帯電を感光体に行うことも可能である。帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧は、たとえば、直流成分である±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分である100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させてなるもの等がある。
【0123】
なお、図3中の転写ローラ13Hも帯電ローラ12Hと同様、電源28より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受け、転写部位で感光体11H上に形成された箔転写面を基体p1上に転写させる。転写ローラ13Hに印加されるバイアス電圧の具体例としては、帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧の具体例と同様、直流成分の±500〜1000VのDCバイアスと交流成分の100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させたものがある。
【0124】
帯電ローラ12Hと転写ローラ13Hは、感光体11Hに圧接した状態で従動あるいは強制回転している。これらローラの感光体ドラム11Hへの押圧力は、たとえば、9.8×10−2〜9.8×10−1N/cmであり、ローラの回転速度は、たとえば、感光体11の周速の1〜8倍である。なお、前記ローラの感光体11Hへの押圧力は、たとえば、帯電ローラ12の両端に1N〜10N程度の押圧力を加えることで実現が可能である。
【0125】
なお、基体p1へ箔転写面を転写した感光体11Hは、クリーニング装置25に設けられたクリーニングブレード25bにより除去され、次の箔転写面形成を行う状態にする。
【0126】
なお、本発明では箔転写面を形成する製品上に箔の画像と可視画像を形成することも可能である。製品上に可視画像を形成する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、電子写真方式、印刷方式、インクジェット方式、銀塩写真方式等の公知の画像形成方法を用いて作製することが可能である。たとえば、製品上に箔転写面を形成し、当該箔転写面上に箔を転写した後に、転写した箔の周囲に電子写真方式の画像形成方法でトナー画像を作成することができる。また、箔の上にもカラートナーを載せて色味を変えた画像を作成することも可能で、これらの方法により、箔を転写した製品にさらなる光輝表現を付与することが可能である。
【0127】
図4は、前述した図3の箔転写面の形成と電子写真方式のフルカラー画像形成を行うことが可能な箔転写面形成装置の断面構成図である。図4に示す箔転写面形成装置は、図3に示す箔転写面形成装置1とほぼ同じ様な構成を有するもので、形成した箔転写面Hを加熱、加圧して硬化させる定着装置50を搭載しているものである。
【0128】
図4に示す箔転写面形成装置1は、いわゆる「タンデム型カラー画像形成装置」と呼ばれる電子写真方式の画像形成装置と同じ構成を有し、箔転写面形成部20Hと、複数組のトナー画像形成部20Y、20M、20C、20Bk、ベルト状の中間転写ベルト26と給紙装置40、定着装置50等から構成されるものである。特に、図4の箔転写面形成装置1には、中間転写ベルト26の下方に転写箔供給部70が設けられており、定着装置50で定着した箔転写面Hを定着した基体p1上に転写箔が供給され、定着装置50を再度通過することで箔転写面H上に箔が転写される。
【0129】
この様に、図4に示す箔転写面形成装置1では、製品Pを構成する基体p1上に箔転写面Hを形成し、形成した箔転写面H上に転写箔を転写させることができる。そして、箔を転写させた基体p1上にカラートナーを用いてフルカラー画像を形成することができる。なお、図4の箔転写面形成装置1では転写箔供給部70を中間転写ベルト26の下方に配置させているが、転写箔供給部の配置個所はこれに限定されるものではなく、転写箔を供給後、定着装置50による加熱と加圧で箔転写が可能な個所であればよい。
【0130】
中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70の配置は、図4の箔転写面形成装置1に示すものの他に、たとえば、図5に示す配置が好ましい形態として挙げられる。図6の箔転写面形成装置1では、中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70が順次配置されている。また、図中の矢印は基体p1の搬送方向を表す。図5の転写箔供給部70は、転写箔供給ロール71、箔転写ローラ73a、73b、転写箔巻き取りローラ72を有し、転写箔供給ロール71より転写箔Fが供給され、箔転写の行われた使用済みの転写箔Fは転写箔巻き取りローラ72に巻き取られる。なお、図5では箔転写面形成部20Hやトナー画像形成部20Y、20M、20C、20Bk等は省略してある。また、図5については後で詳細に説明する。
【0131】
箔転写面形成装置1の上部には、画像読取部60が設置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取部60の原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、制御手段においてアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光部30H、30Y、30M、30C、30Bkに入力される。
【0132】
図4では、構成要素を総称する場合にはアルファベットの添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成要素を指す場合にはH(箔転写面用)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の添え字を付した参照符号で示す。
【0133】
本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給する箔転写面形成用トナー供給部21H、イエロー色のトナー画像形成を行うイエロー画像形成部20Y、マゼンタ色のトナー画像形成を行うマゼンタ画像形成部20M、シアン色のトナー画像形成を行うシアン画像形成部20C、及び黒色のトナー画像を形成する黒色画像形成部20Bkは、それぞれ以下の構成を有する。すなわち、
(1)ドラム状の感光体11(11H、11Y、11M、11C、11Bk)
(2)帯電極12(12H、12Y、12M、12C、12Bk)
(3)露光部30(30H、30Y、30M、30C、30Bk)
(4)箔転写面形成用トナー供給装置21H及び現像装置21(21Y、21M、21C、21Bk)
(5)クリーニング装置25(25H、25Y、25M、25C、25Bk)。
【0134】
感光体11は、たとえば、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層がドラム状の金属基体の外周面に形成されてなる有機感光体よりなり、搬送される製品Pを構成する基体p1の幅方向(図4において紙面に対して垂直方向)に伸びる状態で配設されている。感光層を構成する樹脂には、たとえば、ポリカーボネート樹脂等の公知の感光層形成用樹脂が用いられる。なお、図4に示す実施形態では、ドラム状の感光体11を用いた構成例を説明しているが、これに限られずベルト状の感光体を用いてもよい。
【0135】
箔転写面形成用トナー供給装置21Hは、本発明に係る箔転写面形成用トナー(T)とキャリアからなる2成分箔転写面形成剤を内包する。また、現像装置21はそれぞれイエロートナー(Y)、マゼンタトナー(M)、シアントナー(C)及び黒色(Bk)の異なる色のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。2成分箔転写面形成剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと本発明に係る箔転写面形成用トナーとから構成されるものである。また、2成分現像剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと公知の結着樹脂と公知の顔料やカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を含有してなる各色のトナーとから構成される。
【0136】
キャリアは、たとえば平均粒径が10〜50μm、飽和磁化10〜80emu/gを有しトナーは粒径4〜10μmである。また、本発明に係るクリアトナーを含めて、図3に示す箔転写面形成装置で使用される各トナーの帯電特性は、負帯電特性であり平均電荷量としては−20〜−60μC/gであることが好ましい。2成分箔転写面形成剤及び2成分現像剤は、これらキャリアとトナーとをトナー濃度が4質量%〜10質量%にとなる様に混合、調整したものである。
【0137】
中間転写体である中間転写ベルト26は、複数のローラにより回転可能に支持されている。中間転写ベルト26はたとえば10〜1012Ω・cmの体積抵抗を有する無端形状のベルトである。中間転写ベルト26は、たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の公知の樹脂材料を用いて形成することができる。中間転写ベルト26の厚みは50〜200μmが好ましい。
【0138】
箔転写面形成用トナー供給装置21Hより感光体11H上に形成された箔転写面Hは、回転する中間転写ベルト26上に一次転写ローラ13Hにより転写される(一次転写)。中間転写ベルト26上に転写された箔転写面Hは、後述する給紙装置40より供給された基体p1上に転写され(二次転写)、箔転写面Hが転写された基体p1は後述する定着装置50を通過することで箔転写面Hが定着される。
【0139】
そして、箔転写面Hが定着された基体p1は、一度排紙ローラ47を有する排紙搬送路を搬送された後、搬送路48を経由して転写箔供給路51に搬送され、ここで転写箔供給部70より転写箔の供給を受ける。さらに、基体p1は転写箔が供給された状態で再び定着装置50を通過し、定着装置50の加熱、加圧により箔転写面H上に箔が転写される。
【0140】
この様に、箔転写面Hの形成、及び、箔の転写が行われた基体p1は、前述の両面搬送路48を経由して中間転写ベルト26の前に搬送され、今度は、トナー画像形成が行われる。先ず、トナー供給装置21Y、21M、21C、21Bkからの各色トナーにより各感光体11Y、11M、11C、11Bk上に形成された各色トナー画像も回転する中間転写ベルト26上に一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkにより順次転写され、中間転写ベルト26上には合成されたフルカラー画像が形成される。一方、箔転写面Hを転写した感光体11Hとトナー画像を転写した感光体11Y、11M、11C、11Bkは各クリーニング装置25(25H、25Y、25M、25C、25Bk)により残留トナーが除去される。
【0141】
給紙装置40を構成する基体収納部(トレイ)41内に収容された製品Pを構成する基体p1は、第1給紙部42により給紙され、給紙ローラ43、44、45A、45B、レジストローラ(第2給紙部)46等を経て、2次転写ローラ13Aに搬送され、基体p1上に箔転写面Hとカラー画像が転写される(二次転写)。
【0142】
なお、箔転写面形成装置1の下部に鉛直方向に縦列配置された3段の基体収納部41は、ほぼ同一の構成を有するので同符号を付した。また、3段の給紙部42もほぼ同一の構成を有するので同符号を付した。基体収納部41と給紙部42を含めて給紙装置40という。
【0143】
製品Pを構成する基体p1上に転写された箔転写面Hとフルカラー画像は、箔転写面Hとフルカラー画像を加熱、加圧して溶融、硬化する定着装置50により基体p1上に固定される。基体p1は、搬送ローラ対57に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ47から排出され、装置外の排紙トレイ90上に載置される。
【0144】
一方、二次転写ローラ13Aにより基体p1上に箔転写面Hとフルカラートナー画像を転写し、さらに、基体p1を曲率分離させた中間転写ベルト26は、中間転写ベルト用のクリーニング装置261により残留したトナーが除去される。
【0145】
なお、製品Pを構成する基体p1の両面に箔転写面Hとフルカラー画像を形成する場合は、基体p1の第1面に箔転写面とフルカラー画像を形成し、さらに、これらを溶融、硬化した後、基体p1を分岐板49により排紙搬送路から分岐させる。そして、両面搬送路48に導入して表裏反転して再び給紙ローラ45Bに搬送させる。基体p1は箔転写面形成部20H、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bkにより第2面上にも箔転写面Hとフルカラートナー画像を形成し、定着装置50により加熱加圧処理されて排紙ローラ47により装置外に排出される。この様にして、製品Pの両面に箔転写面が設けられたフルカラートナー画像を形成することができる。
【0146】
また、図5の様に中間転写ベルト26、定着装置50、転写箔供給部70を配置した箔転写面形成装置1は、たとえば、以下の手順で箔転写面Hの形成、箔の転写、トナー画像形成を行うことができる。すなわち、
(1)二次転写ローラ13Aの個所で中間転写ベルト26上に形成された箔転写面Hを基体p1に転写させる。
(2)基体p1を定着装置50に通過させて箔転写面Hを定着させる。
(3)転写箔供給部70で基体p1上に転写箔Fを供給し、箔の転写を行う。
(4)搬送路48経由で箔を転写した基体p1を中間転写ベルト26に搬送し、フルカラートナー画像を基体p1上に転写させる。
(5)基体p1を定着装置50に通過させてフルカラートナー画像を定着させる。
(6)基体p1は転写箔供給部70をそのまま通過させ、排紙ローラ47を介して装置外に排紙する。
【0147】
以上の手順により、図4あるいは図5に示す箔転写面形成装置1は、製品Pを構成する基体p1上に箔転写面Hを形成し、形成した箔転写面H上に転写箔を転写させる。そして、箔を転写させた基体p1上にカラートナーを用いてフルカラー画像を形成することが可能である。
【0148】
次に、本発明で使用可能な転写箔について図6を用いて説明する。図6は本発明に使用可能な代表的な転写箔の断面構造を示す模式図である。本発明に使用可能な転写箔Fは、少なくとも、樹脂等からなるフィルム状の支持体f0と、着色剤や金属等を含有する箔層f2、接着性を発現する有機材料を含有する接着層f1を有し、箔層f2と接着層f1が製品P上に転写する。接着層f1は、転写箔Fの最表面に設けられ、転写により製品P表面に直接接触して箔層f2を製品P表面に強固に付着させる様に配置されている。また、図5に示す転写箔Fは、支持体f0と箔層f2の間に離型層f3を有するものである。以下、支持体f0、箔層f2、接着層f1の各層について説明する。
【0149】
先ず、支持体f0は、樹脂等からなるフィルムまたはシートである。支持体f0の材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の樹脂材料が挙げられる。また、これら樹脂材料の他に紙等の材料を使用することも可能である。
【0150】
また、支持体f0は、単層構造あるいは多層構造のいずれの構造を有するものを使用することができる。支持体f0に多層構造を採用する場合、支持体f0は箔層f2側の最表面層として剥離抵抗の調節に利用可能な離型層f3を含むものが好ましい。離型層f3の材料としては、たとえば、メラミンもしくはイソシアネートを硬化剤として用いた熱硬化性樹脂、アクリレートもしくはエポキシ樹脂を含有した紫外線または電子線硬化性樹脂に公知の離型剤を添加したものが挙げられる。離型層f3に添加可能な公知の離型剤としては、たとえば、フッ素系またはシリコン系のモノマーまたはポリマー等が挙げられる。
【0151】
箔層f2は、着色剤や金属材料等を含有し製品P上に転写後は美的外観を発現するものであり、製品P上に転写する時には支持体f0よりスムーズに剥離する性能が求められるとともに転写後は製品Pの最表面を形成するものなので耐久性も求められている。箔層f2は、上記性能を満たす公知の樹脂を、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて支持体f0上に塗布することにより形成が可能である。この様な公知の樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、当該樹脂中に公知の染料や顔料等を添加して着色することも可能である。
【0152】
また、メタリックな光沢を有する仕上がりの箔を形成する場合は、金属等を用いて公知の方法で前述の樹脂に反射層を設けることにより形成することが可能である。反射層を形成する金属材料としては、たとえば、アルミニウム、スズ、銀、クロム、ニッケル、金等の担体の他に、ニッケル−クロム−鉄合金や青銅、アルミ青銅等の合金を使用することも可能である。上記金属材料を用いて反射層を形成する方法としては、たとえば、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられ、厚さ約10nmから約100nmの反射層を形成することが可能である。また、反射層には、たとえば、水洗シーライト加工、エッチング加工、レーザ加工等の公知の加工方法を利用して規則的な模様を付与するパターニング処理を施すことも可能である。
【0153】
接着層f1は、加熱により粘着性を発現するいわゆるホットメルトタイプと呼ばれる感熱性の接着剤を含有するものである。感熱性の接着剤としては、たとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体等のホットメルトタイプの接着剤に使用可能な公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、接着層f1は、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて上述した樹脂を箔層f2上に塗布することにより形成することが可能である。
【実施例】
【0154】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記文中に「部」と記載されている個所があるが「質量部」を表すものである。
【0155】
1.「箔転写面形成用トナー1〜18」の作製
以下に示す様に、重合法及び粉砕法で18種類の箔転写面形成用トナーを作製した。
【0156】
1−1.「樹脂微粒子分散液A1」の作製
(1)第1段重合
撹拌装置を取り付けた容器内に下記化合物を投入して単量体組成物を調製し、
スチレン 90質量部
n−ブチルアクリレート 50質量部
アクリル酸 35質量部
イタコン酸 10質量部
n−オクチルメルカプタン 2.6質量部
さらに、上記化合物からなる単量体組成物中に、
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製) 70質量部
を投入し、80℃に加温して溶解させて「混合溶液1」を調製した。
【0157】
一方、アニオン系界面活性剤(ポリオキシ(2)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩1.5質量部をイオン交換水650質量部に溶解させて界面活性剤水溶液を調製し、これを90℃に加温し、前記「混合溶液1」を添加した。その後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて3時間混合、分散処理し、分散粒径210nmの乳化粒子を含有する分散液を調製した。
【0158】
次に、90℃に加熱したイオン交換水700質量部を前記分散液中に添加し、さらに、過硫酸カリウム(KPS)3質量部をイオン交換水120質量部に溶解させた溶液を添加してこの系を82℃にした後、3時間加熱、撹拌することにより重合反応を行った。この様にして、「樹脂微粒子分散液a1」を作製した。
【0159】
(2)第2段重合
前記「樹脂微粒子分散液a1」に、過硫酸カリウム(KPS)3質量部をイオン交換水120質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃にした後、下記化合物からなる「混合溶液1−2」を1時間かけて滴下した。
【0160】
スチレン 248質量部
n−ブチルアクリレート 82質量部
n−オクチルメルカプタン 3.5質量部
滴下終了後、80℃の温度下で3時間加熱、撹拌を行って重合反応を行った後、28℃に冷却して「樹脂微粒子分散液A1」を作製した。「樹脂微粒子分散液A1」を構成する「樹脂微粒子A1」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の割合は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、アクリル酸が6.8質量%、イタコン酸が2.0質量%であった。
【0161】
1−2.「樹脂微粒子分散液A2〜A14」の作製
(1)「樹脂微粒子分散液A2」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製において、第1段重合の「混合溶液1」を調製する際、アクリル酸の添加量を39.8質量部、イタコン酸の添加量を5.2質量部に変更した他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A2」を作製した。「樹脂微粒子分散液A2」を構成する「樹脂微粒子A2」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、アクリル酸が7.7質量%、イタコン酸が1.1質量%であった。
【0162】
(2)「樹脂微粒子分散液A3」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製において、第1段重合の「混合溶液1」を調製する際、アクリル酸の添加量を17.5質量部、イタコン酸の添加量を28.5質量部に変更した他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A3」を作製した。「樹脂微粒子分散液A3」を構成する「樹脂微粒子A3」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.5質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、アクリル酸が3.4質量%、イタコン酸が5.5質量%であった。
【0163】
(3)「樹脂微粒子分散液A4」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製で、第1段重合を行うときに使用した「混合溶液1」を構成する単量体組成物の内容を以下の様に変更した他は同じ手順で「混合溶液4」を作製した。すなわち、
スチレン 92質量部
n−ブチルアクリレート 48質量部
メタクリル酸 30質量部
cis−2−ブテンジオール 14.5質量部
n−オクチルメルカプタン 2.6質量部
上記「混合溶液4」を用いた他は前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製と同じ手順で第1段重合と第2段重合を行って、「樹脂微粒子分散液A4」を作製した。「樹脂微粒子分散液A4」を構成する「樹脂微粒子A4」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが66.1質量%、n−ブチルアクリレートが25.3質量%、メタクリル酸が5.8質量%、cis−2−ブテンジオールが2.8質量%であった。
【0164】
(4)「樹脂微粒子分散液A5」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A4」の作製において、第1段重合の「混合溶液4」を調製する際、メタクリル酸の添加量を37質量部、cis−2−ブテンジオールの添加量を7.7質量部に変更した他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A5」を作製した。「樹脂微粒子分散液A5」を構成する「樹脂微粒子A5」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが66.1質量%、n−ブチルアクリレートが25.3質量%、メタクリル酸が7.1質量%、cis−2−ブテンジオールが1.5質量%であった。
【0165】
(5)「樹脂微粒子分散液A6」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製において、第1段重合の「混合溶液1」を調製する際、アクリル酸に代えてメタクリル酸35質量部に変更して「混合溶液6」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A6」を作製した。「樹脂微粒子分散液A6」を構成する「樹脂微粒子A6」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、イタコン酸が2.0質量%であった。
【0166】
(6)「樹脂微粒子分散液A7」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸に代えてマレイン酸10質量部に変更して「混合溶液7」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A7」を作製した。「樹脂微粒子分散液A7」を構成する「樹脂微粒子A7」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、マレイン酸が2.0質量%であった。
【0167】
(7)「樹脂微粒子分散液A8」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸に代えてフマル酸10質量部に変更して「混合溶液8」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A8」を作製した。「樹脂微粒子分散液A8」を構成する「樹脂微粒子A8」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、フマル酸が2.0質量%であった。
【0168】
(8)「樹脂微粒子分散液A9」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸に代えてアコニット酸10質量部に変更して「混合溶液9」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A9」を作製した。「樹脂微粒子分散液A9」を構成する「樹脂微粒子A9」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、アコニット酸が2.0質量%であった。
【0169】
(9)「樹脂微粒子分散液A10」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸の添加量を4質量部に変更するとともにアコニット酸6質量部を添加して「混合溶液10」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A10」を作製した。「樹脂微粒子分散液A10」を構成する「樹脂微粒子A10」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、イタコン酸が0.8質量%、アコニット酸が1.2質量%であった。
【0170】
(10)「樹脂微粒子分散液A11」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸の添加量を6質量部に変更するとともにcis−2−ブテンジオールの添加量を4質量部を添加して「混合溶液11」とした他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A11」を作製した。「樹脂微粒子分散液A11」を構成する「樹脂微粒子A11」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.6質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、メタクリル酸が6.8質量%、イタコン酸が1.2質量%、cis−2−ブテンジオールが0.8質量%であった。
【0171】
(11)「樹脂微粒子分散液A12」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製で、第1段重合の「混合溶液1」を調製する際、イタコン酸を添加せず、他の化合物の添加量はそのままにして「混合溶液12」を調製し、その他の作製工程は同じものとすることで「樹脂微粒子分散液A12」を作製した。「樹脂微粒子分散液A12」を構成する「樹脂微粒子A12」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが66.9質量%、n−ブチルアクリレートが26.1質量%、アクリル酸が7.0質量%であった。また、「樹脂微粒子分散液A12」の作製で、第1段重合で使用された重合性単量体の和は175質量部、第2段重合で使用された重合性単量体の和は330質量部で、両重合における単量体使用量の比、「第2段重合の単量体使用量/第1段重合の単量体使用量」は1.89であった。
【0172】
(12)「樹脂微粒子分散液A13」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A6」の作製において、第1段重合の「混合溶液6」を調製する際、イタコン酸を添加せず、かつ、単量体の添加量を以下の様に変更して「混合溶液13」を調製した。すなわち、
スチレン 129.5質量部
n−ブチルアクリレート 72.0質量部
メタクリル酸 50.4質量部
n−オクチルメルカプタン 3.74質量部
第1段重合における他の条件は同じものとして重合を行い「樹脂微粒子分散液a13」を作製した。
【0173】
また、第2段重合で使用する単量体の添加量を以下の様に変更した。すなわち、
スチレン 190.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.9質量部
n−オクチルメルカプタン 2.65質量部
第2段重合における他の条件は同じものとして重合を行い、「樹脂微粒子分散液A13」を作製した。「樹脂微粒子分散液A13」を構成する「樹脂微粒子A13」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが63.3質量%、n−ブチルアクリレートが26.7質量%、メタクリル酸が10.0質量%であった。また、「樹脂微粒子分散液A13」の作製で、第1段重合で使用された重合性単量体の和は252質量部、第2段重合で使用された重合性単量体の和は253質量部で、両重合における単量体使用量の比、「第2段重合の単量体使用量/第1段重合の単量体使用量」は1.00であった。
【0174】
(13)「樹脂微粒子分散液A14」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A1」の作製において、第1段重合の「混合溶液1」を調製する際、アクリル酸の添加量を7質量部、イタコン酸に代えてフマル酸を38質量部添加した他は同じ手順で「樹脂微粒子分散液A14」を作製した。「樹脂微粒子分散液A14」を構成する「樹脂微粒子A14」を作製する際に使用した各ビニル系単量体の質量比は、スチレンが65.5質量%、n−ブチルアクリレートが25.6質量%、アクリル酸が1.4質量%、フマル酸が7.5質量%であった。
【0175】
以上の手順で作製した「樹脂微粒子A1〜A14」を構成するスチレン、n−ブチルアクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸、イタコン酸等の極性基を複数有するビニル系モノマーの質量比を下記表1に示す。
【0176】
【表1】

【0177】
1−3.「樹脂微粒子分散液A15と樹脂微粒子分散液A16」の作製
(1)「樹脂微粒子分散液A15」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製において、第1段重合のワックスを含有する「混合溶液12」を調製する際、各化合物の添加量を以下の様に変更して「混合溶液15」を調製した。すなわち、
スチレン 74.3質量部
n−ブチルアクリレート 41.3質量部
アクリル酸 28.9質量部
n−オクチルメルカプタン 2.6質量部
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製) 70質量部
上記「混合溶液15」を使用した他は、前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製で行った第1段重合と同じ条件で重合反応を行うことにより、「樹脂微粒子分散液a15」を作製した。
【0178】
次に、ワックスを含有しない樹脂領域を形成する第2段重合では、前記「樹脂微粒子分散液a15」へ滴下させる混合溶液を調製する際、各化合物の添加量を以下の様に変更して「混合溶液(15)」とした。すなわち、
スチレン 271質量部
n−ブチルアクリレート 90質量部
n−オクチルメルカプタン 3.8質量部
前記「樹脂微粒子分散液a15」へ上記添加量の化合物を含有する「混合溶液(15)」を滴下した他は、前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製で行った第2段重合と同じ条件で重合反応と反応後の処理を行うことにより「樹脂微粒子分散液A15」を作製した。なお、「樹脂微粒子分散液A15」の作製で、第1段重合で使用された重合性単量体の和は144.5質量部、第2段重合で使用された重合性単量体の和は361質量部で、両重合における単量体使用量の比、「第2段重合の単量体使用量/第1段重合の単量体使用量」は2.50であった。
【0179】
(2)「樹脂微粒子分散液A16」の作製
前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製において、第1段重合のワックスを含有する「混合溶液12」を調製する際、各化合物の添加量を以下の様に変更して「混合溶液16」を調製した。すなわち、
スチレン 63.6質量部
n−ブチルアクリレート 35.4質量部
アクリル酸 24.8質量部
n−オクチルメルカプタン 1.83質量部
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製) 70質量部
上記「混合溶液16」を使用した他は、前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製で行った第1段重合と同じ条件で重合反応を行うことにより、「樹脂微粒子分散液a16」を作製した。
【0180】
次に、ワックスを含有しない樹脂領域を形成する第2段重合では、前記「樹脂微粒子分散液a16」へ滴下させる混合溶液を調製する際、各化合物の添加量を以下の様に変更して「混合溶液(16)」とした。すなわち、
スチレン 286.7質量部
n−ブチルアクリレート 94.8質量部
n−オクチルメルカプタン 4.0質量部
前記「樹脂微粒子分散液a16」へ上記添加量の化合物を含有する「混合溶液(16)」を滴下した他は、前記「樹脂微粒子分散液A12」の作製で行った第2段重合と同じ条件で重合反応と反応後の処理を行うことにより「樹脂微粒子分散液A16」を作製した。なお、「樹脂微粒子分散液A16」の作製で、第1段重合で使用された重合性単量体の和は123.8質量部、第2段重合で使用された重合性単量体の和は381.5質量部で、両重合における単量体使用量の比、「第2段重合の単量体使用量/第1段重合の単量体使用量」は3.80であった。
【0181】
1−4.「箔転写面形成用トナー1」の作製
(1)「トナー母体粒子1」の作製(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂微粒子分散液A1」 400質量部(固形分換算)
イオン交換水 1250質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 8.5質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
【0182】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温させ、80℃に保持させたまま上記「樹脂微粒子A1」の凝集、融着を継続した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」を用いて形成されている粒子の粒径測定を行い、粒子の体積基準メディアン径が6.5μmになったときに、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して凝集を停止させた。
【0183】
凝集停止後、熟成処理として液温を80℃にして加熱撹拌を3時間行って融着を継続させて「トナー母体粒子1」を形成させた。その後、液温を30℃まで冷却し、塩酸を使用して液中をpHを2に調整して撹拌を停止した。
【0184】
上記工程を経て作製した「トナー母体粒子分散液1」をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「トナー母体粒子1」のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄した後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が1.0質量%になるまで乾燥処理を行って「トナー母体粒子1」を作製した。
【0185】
(2)外添処理
作製した「トナー母体粒子1」に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行うことにより「箔転写面形成用トナー1」を作製した。
【0186】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm、疎水化度68)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm、疎水化度63)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0187】
以上の手順により、「箔転写面形成用トナー1」を作製した。なお、上記手順で作製した「箔転写面形成用トナー1」の体積基準メディアン径は6.5μmであった。
【0188】
1−5.「箔転写面形成用トナー2〜16」の作製
前記「箔転写面形成用トナー1」の作製で、「樹脂微粒子分散液A1」に代えて「樹脂微粒子分散液A2〜A16」をそれぞれ用いた他は同じ手順で「箔転写面形成用トナー2〜16」を作製した。なお、上記手順で作製した「箔転写面形成用トナー2〜16」の体積基準メディアン径はいずれも6.5μmであった。
【0189】
1−6.「箔転写面形成用トナー17、18」の作製
(1)「箔転写面形成用トナー17」の作製
下記化合物を「ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)」で十分混合した後、2軸押出混練機「PCM−30(池貝鉄工(株)製)」の排出部を取り外したものを使用して溶融混練後冷却した。すなわち、
ビニル系樹脂(スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸/イタコン酸を用いて公知の重合方法により形成したもの(質量比=25:10:3:2)
100質量部
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製) 8.7質量部
得られた混練物を冷却ベルトで冷却した後、フェザーミルで粗粉砕した。その後、機械式粉砕機「KTM(川崎重工(株)製)」で平均粒径9〜10μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機「IDS(日本ニューマチック工業社製)」で平均粒径6.5μmになるまで粉砕処理と粗粉分級を行った。その後、粗粉分級したものよりロータ型分級機(ティープレックス型分級機タイプ「100ATP(ホソカワミクロン(株)製)」)を使用して体積基準メディアン径が6.5μmの「トナー母体粒子17」を作製した。
【0190】
作製した「トナー母体粒子17」に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行うことにより「箔転写面形成用トナー17」を作製した。
【0191】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0192】
(2)「箔転写面形成用トナー18」の作製
前記「箔転写面形成用トナー17」の作製で、「トナー母体粒子17」を作製するときに使用したビニル系樹脂に代えて、
ビニル系樹脂(スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸を用いて公知の重合方法により形成したもの(質量比=5:2:3)) 100質量部
を用いた他は同じ手順で「トナー母体粒子18」を作製し、前述の外添処理を行うことにより「箔転写面形成用トナー18」を作製した。
【0193】
以上の手順により、18種類の箔転写面形成用トナーを作製した。
【0194】
2.「箔転写面形成用トナー1〜18」の構造解析
市販の透過型電子顕微鏡(TEM)「JEM−2000FX(日本電子製)」を用いて上記各箔転写面形成用トナー粒子の構造解析を行った。先ず、作製した「箔転写面形成用トナー1〜15」をそれぞれ常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後、加圧成形を行って箔転写面形成用トナーを含有したブロックを作製した。次に、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームで作製したブロックを厚さ200nmの薄片状に切り出して測定用試料とした。
【0195】
作製した薄片状の測定用試料を透過型電子顕微鏡(TEM)にセットし、箔転写面形成用トナーの断面構造を写真撮影した。このとき、ネガ倍率を280倍に設定して撮影を行い、引き伸ばしにより倍率1200倍の写真画像を作成した。この様にして作成した写真画像を市販の画像処理装置「LuzexIII(ニレコ(株)製)」で解析し、箔転写面形成用トナー粒子中に形成されているドメイン相の大きさ(平均ドメイン径)を算出した。なお、「ドメイン相の大きさ」は、作成した写真画像を前記画像処理装置で解析する際、箔転写面形成用トナー粒子20個中に存在する各ドメインについて各々円相当径を算出し、その算術平均値を「ドメイン相の大きさ(平均ドメイン径)」とした。以上の手順で算出した「箔転写面形成用トナー1〜18」のドメイン相の大きさを表2に示す。
【0196】
【表2】

【0197】
2.評価実験
2−1.箔転写面形成用トナー現像剤の調製
前記「箔転写面形成用トナー1〜18」に対して、メチルメタクリレート樹脂を被覆してなる体積平均粒径40μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%になるように混合し、2成分現像剤の形態をとる「箔転写面形成用トナー現像剤1〜18」を調製した。
【0198】
2−2.評価実験
(1)評価条件
「箔転写面形成用トナー現像剤1〜18」を図4に示す構成の箔転写面形成装置1の箔転写面形成用トナー供給装置21Hにそれぞれ搭載して箔転写面を形成した。箔転写面の形成は製品である市販の画像支持体「OKトップコート+(坪量157g/m、紙厚131μm)(王子製紙(株)製)」上に形成した。なお、箔転写面形成装置1では箔転写面形成用トナーの供給量を4g/mに設定して箔転写面を形成した。
【0199】
また、定着装置50における画像支持体の定着速度を230mm/sec、加熱ローラの表面材質をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、加熱ローラの表面温度を135℃に設定して行った。
【0200】
前記箔転写面形成装置1を用いて前記画像支持体上に各トナーによる箔転写面を形成した後、当該画像支持体を図2に示す手順にしたがい、図6に示す層構成を有する市販の転写箔を用いて画像支持体上に形成した箔転写面上に箔を転写させた。なお、転写箔は、市販の金箔「BL 2号金2.8」とホログラム箔「KP015YPP」(いずれも(株)村田金箔製)を使用した。
【0201】
図2に示す手順で箔転写を以下に示す条件の下で行った。すなわち、
・加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもので、表面温度を150℃に設定
・加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもので、表面温度を100℃に設定
・熱源:加熱ロール及び加圧ロールの内部にハロゲンランプを各々配置(サーミスタにより温度制御)
・加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:7mm
・画像支持体搬送速度:73mm/秒
・画像支持体搬送方向:A4サイズの上記画像支持体を縦方向に搬送させる
・評価環境:常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)
なお、上記ホログラム箔の転写を行うときは、加熱ロールの表面温度を135℃に、加圧ロールの表面温度を85℃に変更し、その他の条件は同じにして転写を行った。
【0202】
ここで、「箔転写面形成用トナー1〜11、15〜17」と上記市販の箔「BL 2号金2.8」を用いて形成した試料の評価を「実施例1〜14」とし、「箔転写面形成用トナー12〜14、18」を用いて箔を形成した試料の評価を「比較例1〜4」とした。また、「箔転写面形成用トナー1」と上記ホログラム箔「KP015YPP」を用いて形成した試料の評価を「実施例15」とした。
【0203】
(2)評価実験
以下の手順により、箔転写面形成時での定着装置への巻き付きの発生の有無の評価と、作成した箔画像の仕上がり評価、及び、高温高湿環境下に放置した箔画像の耐久性を評価した。
【0204】
〈定着装置構成部材への巻き付き〉
定着装置構成部材(加熱ロール)への巻き付き発生は、上記作成条件の下でA4サイズの上記画像支持体100枚を横方向へ搬送させ、当該画像支持体の加熱ロールあるいは加圧ロールへの巻き付きの発生状況を目視観察して以下の様に評価した。すなわち、
(評価基準)
○:100枚全て巻き付きが発生せず、かつ、画像支持体が加熱ロールに付着して持ち上がる現象も観察されなかった
△:100枚全て巻き付きは発生しなかったが、画像支持体が加熱ロールに付着して持ち上がる現象が1〜3枚に見られたが問題なしと評価した
×:巻き付きが発生し、かつ、画像支持体の加熱ロールへの付着による持ち上がり現象が頻繁に発生し不良と判断した。
【0205】
次に、上記作成条件の下で、箔画像の仕上がり評価用の試料作成を行った。画像支持体上に図7に示す6種類の箔画像サンプルを形成して作成した。図中のSaとSbは細線画像で、Saは幅2mmの線画を1.5mm幅間隔で縦と横に配置したものであり、Sbは幅0.5mmの線画を1mm幅間隔で配置したものである。また、Scは円、Sdは正方形、Seは正三角形、Sfは星形の箔画像である。この様な箔画像サンプルの試料をトナー1種類につき5枚ずつ作成し、作成した箔画像を以下の様に目視観察して箔転写面上における箔の欠落とバリ発生、及び、箔の細線再現性を評価した。
【0206】
〈箔転写面上における箔の欠落〉
各試料上に形成されたSc〜Sfの箔画像を、肉眼及び倍率10倍のルーペにより目視観察して箔転写面上における箔の欠落の有無を以下の様に評価した。○と△を合格とし、×を不合格とした。すなわち、
(評価基準)
○;試料5枚とも、全ての箔画像についてルーペ観察で観察しても箔の欠落は認められなかった
△;ルーペ観察により微小な欠落を有する箔画像が形成されたものがあったが、肉眼観察では問題のないレベルで問題なしと判断した
×;肉眼観察で箔の欠落が認められる箔画像が形成されたものが5枚中1枚あった。
【0207】
〈バリ発生〉
各試料上に形成されたSc〜Sfの箔画像のエッジ部分を肉眼及び倍率10倍のルーペにより目視観察してバリ発生の有無を以下の様に評価した。○と△を合格とし、×を不合格とした。すなわち、
(評価基準)
○;試料5枚とも、全ての箔画像エッジ部分についてルーペで観察してもバリの発生はみられなかった
△;ルーペ観察により微小なバリの発生がみられたものがあったが、肉眼観察では問題のないレベルで問題なしと判断した
×;肉眼観察でバリの発生が認められるものが5枚中1枚あった。
【0208】
〈箔の細線再現性〉
各試料上に形成された前述の2つの細線画像を肉眼及び倍率10倍のルーペにより目視観察し、細線間に余分な箔が存在しないことと細線上における箔の欠落の有無を以下の様に評価した。○と△を合格とし、×を不合格とした。すなわち、
(評価基準)
○;2つの細線画像とも細線間に余分な箔が存在せず、かつ、細線上に箔の欠けがないことが5枚の試料全てに対してルーペ観察で確認された
△;幅0.5mmの細線画像上に微小な欠けが見られたが肉眼観察では問題のないレベルであった。また、5枚の試料全てが2つの細線画像の細線間に余分な箔は存在していなかった
×;細線間に余分な箔が残存していることが肉眼観察でみとめられたものが5枚中、少なくとも1枚はあった。
【0209】
〈耐剥離性〉
5枚の試料より仕上がりの良いものを2枚ずつ選出し、温度30℃、相対湿度80%RH環境下に48時間放置した後、サンプル上に形成された細線画像、正三角形、正方形、星形の各箔画像にテープを貼り付けた後、手でそのテープを剥がした。テープを剥がした後の箔画像の状態を肉眼及び倍率10倍のルーペで観察して以下の様に評価した。なお、テープは「スコッチメンディングテープ MP−18(住友スリーエム(株)製)」を使用した。すなわち、
(評価基準)
○;試料2枚ともルーペ観察で剥離は観察されなかった
△;ルーペ観察で確認可能な微細な剥離を起こしたものがあるが、肉眼観察では2枚とも問題ないレベルと判断した
×;肉眼観察で剥離が確認されたものが2枚中、少なくとも1枚はあった。
【0210】
以上の結果を表3に示す。
【0211】
【表3】

【0212】
表3に示す様に、本発明の構成を有する箔転写面形成用トナーを用いて箔画像を形成した「実施例1〜15」は、いずれも箔転写面形成時に画像支持体が定着装置に巻き付きを起こすことがなく、作成した箔画像も良好な仕上がりを有し、かつ、耐久性に優れたものが得られることが確認された。一方、本発明の構成を有さない箔転写面形成用トナーを用いた「比較例1〜4」では、箔転写面形成時に画像支持体が定着装置に巻き付きを起こすものや、作成した箔画像はワックスの影響で良好な接着力が得られず箔の欠落やバリが発生するもの、あるいは耐久性に劣るものがあった。これらの結果から、本発明の構成を有する箔転写面形成用トナーを用いた「実施例1〜15」と、本発明の構成を満たさない箔転写面形成用トナーを用いた「比較例1〜4」の間には明確な性能差を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0213】
1 箔転写面形成装置
11(11H、11Y、11M、11C、11Bk) 感光体
12(12H、12Y、12M、12C、12Bk) 帯電ローラ、帯電極
13(13A、13H、13Y、13M、13C、13Bk) 転写ローラ
14 トナー供給ローラ
20H 箔転写面形成部
20Y、20M、20C、20Bk トナー画像形成部
21H 箔転写面形成用トナー供給装置
21Y、21M、21C、21Bk トナー供給装置(現像装置)
23 搬送ローラ
25(25H、25Y、25M、25C、25Bk) クリーニング装置
26 中間転写ベルト
30(30H、30Y、30M、30C、30Bk) 露光部
50 定着装置
51 転写箔供給路
60 画像読取部
70 転写箔供給部
71 転写箔供給ローラ
72 転写箔巻き取りローラ
73a、73b 箔転写ローラ
F 転写箔
f0 支持体
f1 接着層
f2 箔層
f3 離型層
H 箔転写面
P 製品
p1 基体(画像支持体)
R1、R2 加熱加圧ローラ
S 箔画像サンプル
Sa、Sb 線画の箔画像サンプル
Sc 円の箔画像サンプル
Sd 正方形の箔画像サンプル
Se 正三角形の箔画像サンプル
Sf 星形の箔画像サンプル
T 箔転写面形成用トナー(トナー)
D ドメイン相
M マトリクス相
U 帯電量測定装置
u1 導電性スリーブ
u2 マグネットロール
u3 バイアス電源
u4 円筒電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、樹脂とワックスを含有する箔転写面形成用トナーであって、
前記箔転写面形成用トナーは、
前記樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有し、
前記ワックスのドメイン相の平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする箔転写面形成用トナー。
【請求項2】
前記樹脂は、少なくとも、複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いて形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の箔転写面形成用トナー。
【請求項3】
前記極性基がカルボキシル基(−COOH)であることを特徴とする請求項1または2に記載の箔転写面形成用トナー。
【請求項4】
前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の箔転写面形成用トナー。
【請求項5】
前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の箔転写面形成用トナー。
【請求項6】
少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体にトナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を製品に転写する工程と、
前記製品に転写された箔転写面を製品上に定着する工程と、
前記箔転写面が定着された製品に少なくとも接着層を有する転写箔を供給する工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させる工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させた状態のまま加熱する工程と、
前記転写箔を前記製品より除去する工程を有する箔転写方法であって、
前記箔転写面の形成に使用されるトナーは、
少なくとも、樹脂とワックスを含有し、
前記樹脂のマトリクス相にワックスのドメイン相を分散させた相分離構造を有し、
前記ワックスのドメイン相の平均ドメイン径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする箔転写方法。
【請求項7】
前記樹脂は、少なくとも、複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いて形成されるものであることを特徴とする請求項6に記載の箔転写方法。
【請求項8】
前記極性基がカルボキシル基(−COOH)であることを特徴とする請求項6または7に記載の箔転写方法。
【請求項9】
前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸のいずれかであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の箔転写方法。
【請求項10】
前記複数の極性基を有するビニル系モノマーが、イタコン酸であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の箔転写方法。
【請求項11】
少なくとも、樹脂とワックスを含有する請求項1に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法であって、
前記箔転写面形成用トナーは、少なくとも、
水系媒体中で、複数回数の重合を経て樹脂粒子を形成する工程と、前記樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て作製されるものであり、
前記複数回数の重合を経て樹脂粒子を形成する工程は、少なくとも、
ワックスを含有する重合性単量体を重合してワックス含有樹脂粒子を形成する工程と、前記ワックス含有樹脂粒子の存在下で重合性単量体の重合を行って前記ワックス含有樹脂粒子表面に樹脂層を形成して樹脂粒子を形成する工程とを有するものであることを特徴とする箔転写面形成用トナーの製造方法。
【請求項12】
前記ワックス含有樹脂粒子表面に樹脂層を形成する工程で使用される重合性単量体量が、前記ワックス含有樹脂粒子を形成する工程で使用される重合性単量体量の2.5倍以上3.8倍以下であることを特徴とする請求項11に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法。
【請求項13】
前記ワックス含有樹脂粒子を形成する工程で、少なくとも複数の極性基を有するビニル系モノマーを用いることを特徴とする請求項11に記載の箔転写面形成用トナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103579(P2012−103579A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253553(P2010−253553)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】