説明

算出方法、算出プログラム、算出システム、算出装置

【課題】
本実施形態の算出方法は、より正確に電池の劣化状態を算出することを目的とする。
【解決手段】
本算出方法は、本実施形態の算出方法は、電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算機能を実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池の劣化状態を算出する算出方法、算出プログラム、算出システム、算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の劣化状態を算出する算出方法、算出プログラム、算出システム、算出装置の研究がすすめられている。例えば、電池セルの容量の値を用いた電池セルの評価が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―75461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容量のみの評価では、正極または負極のどちらが劣化しているかなどより正確な状況把握をすることができなかった。
【0005】
そこで、本実施形態の算出方法は、より正確に電池の劣化状態を算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の算出方法は、電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算機能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る算出システムのブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る電池装置のブロック図。
【図3】活物質A及び活物質Bを用いた正極の充電量に対する起電力の一例を示す図。
【図4】正極の充電量に対する電位の一例を示す図。
【図5】電流値の増大による充電量に対する負極電位の変化の一例を示す図。
【図6】充電時間に対する充電電圧の測定値の一例を示す図。
【図7】第1の実施形態にかかる算出装置の動作を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態にかかる回帰計算の一例を示すフローチャート。
【図9】第1の実施形態にかかる充電量配分計算の一例を示すフローチャート。
【図10】第1の実施形態に係る算出装置の変形例を示す図。
【図11】第1の実施形態に係る算出装置の動作を示すブロック図。
【図12】第1の実施形態に係る算出装置の動作を示すブロック図。
【図13】第1の実施形態に係る算出装置の動作を示すブロック図。
【図14】第1の実施形態に係る算出装置の動作を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の算出システムの構成図である。
【0010】
図1に示す算出システムは、電池装置20の残容量の算出を行うコンピュータシステムである。本実施形態において、算出システムの構成要素の一つである算出装置10は、処理機能に応じて装置をLAN、イントラネット等の通信ネットワークを介して組み合わせた算出装置群で構成することができる。
【0011】
算出装置10は、CPU100と、RAM(RWM)110と、通信IF120と、入力IF131と、表示IF141と、ROM150と、記憶部160と、タイマ170を含む構成である。その他、USBメモリ等の外部記憶装置を装着するIF(インターフェース)を備えていてもよい。算出装置10は、プログラムを実行し演算するコンピュータである。
【0012】
算出装置10は、通信IF120を解して二次電池装置20から電流値、電圧値などのデータを収集し、収集したデータを用いて各種演算処理を行う。
【0013】
CPU100は、ROM150に予め書き込んだ各プログラムをRAM110に読み出し、算出処理を行う演算処理部(マイクロプロセッサ)である。CPU100は、機能に合わせて複数のCPU群(マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ)で構成することができる。またCPU内にRAM機能をもった内蔵メモリを備えていてもよい。
【0014】
RAM(RWM)110は、CPU100がプログラムを実行するに際して使用する記憶エリアであって、ワーキングエリアとして用いられるメモリである。処理に必要なデータを一次記憶させるのに好適である。
【0015】
通信IF120は、二次電池装置とデータ授受を行う通信装置、通信手段である。たとえば、ルーターがある。本実施形態では通信IF20と二次電池装置20との接続は有線通信のごとく記載しているが、各種無線通信網に代替することができる。また、通信IF20と二次電池装置20との接続は一方向または双方向通信可能台数なネットワークを介して行われる形態であってもよい。
【0016】
入力IF130は、入力部131と算出装置10とを接続するインターフェースである。入力部131から送られてきた入力信号を変換しCPU100が認識可能な信号に変換する入力制御機能を有していても良い。本IFは端子等として必須の構成要素ではなく直接算出装置内の配線と接続されていてもよい。
【0017】
入力部131は、コンピュータ装置が一般に備えている各種キーボードやボタン等の入力制御を行う入力装置、入力手段である。その他、人の発する声を認識することにより、入力信号として認識または検出する機能を備えていてもよい。本実施形態では算出装置10の外部に設置しているが算出装置に組み込まれていている形態であってもよい。
【0018】
表示IF140は、表示部141と算出装置10とを接続するインターフェースである。CPU100から表示IF141を介して表示部130の表示制御がおこなわれてもよいし、グラフィックボードなど描画処理を行うLSI(GPU)により表示制御が行われてもよい。表示制御機能として例えば、画像データを復号化するデコード機能がある。IFを使用せず算出装置10内部に直接接続される形態であってもよい。
【0019】
表示部141は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの出力装置、出力手段である。その他、音を発する機能を備えていてもよい。本実施形態では算出装置10の外部に設置しているが算出装置10の内部に組み込まれていてもよい。
【0020】
ROM150は、回帰計算プログラム151と、劣化度算出プログラム152と、を格納するプログラムメモリである。データの書き込みはできない非一次記憶媒体を用いることが好適であるが、データの読み出し、書き込みが随時できる半導体メモリ等の記憶媒体であってもよい。その他、画像データを表示部141にて人が認識可能な文字や図柄を表示させる表示プログラムや、電池の劣化情報等のコンテンツを通信IF120を介して端末30に配信させるプログラム、取得したデータを記憶部160に予め定められた時間毎に記憶させる情報登録プログラムなどが格納されていてもよい。
【0021】
回帰計算プログラム151は、電池装置20を構成する各電池セルごとまたは組電池毎の正極、負局の容量値、内部抵抗値を算出する機能をCPU100に実現させる手段である。例えば、以下の七つの値、(1)正極を構成する活物質Aの容量、(2)正極を構成する活物質Bの容量、(3)負極の容量、(4)正極を構成する活物質Aの充電量、(5)正極を構成する活物質Bの充電量、(6)負極の充電量、(7)内部抵抗値、を算出(解析)する。
【数1】

【0022】
これらの値を用いて、時間に対する充電電圧の変化特性、充電量に対する正極の電位およびまたは充電量に対する負極の電位特性を算出する。具体的動作については後述する。
【0023】
回帰計算プログラム151は以下の各数式に対応するプログラム群により構成されている。なお、各プログラムの順番については、各種変更が可能である。
【0024】
充電電圧Vは、電池の起電圧V,内部抵抗による電圧Vを用いて次の数式2
=V+V (数式2)
から求める。
【0025】
電池の起電圧Vは、正極の電位Ec、負極の電位Eaを用いて次の数式3
=E−E (数式3)
から求める。
【0026】
正極と負極の電位は、充電量(q)、初期状態での正極の容量Qic、初期状態での負極の容量Qiaを用いて数式4、数式5
=f(q/Qic) (数式4)
=f(q/Qia) (数式5)
から求める。
【0027】
ここで、複数の活物質で正極または負極を構成する場合について説明する。この場合、図3に示すように、それぞれの活物質の起電力は異なる特性を示す。活物質A(例えば、マンガン酸リチウム)と活物質B(例えば、コバルト酸リチウム)を混合した複合正極の起電圧の充電量に対する特性を算出する。算出した特性を図示すると図4のようになる。
【0028】
活物質Aの正極の電位EcA、活物質Bの正極の電位EcBが、初期状態の活物質Aの容量QicAと、初期状態の活物質Bの容量QicB、活物質Aの充電量q、活物質Bの充電量qとを用いて数式6、数式7、8、9
cA=fcA(q/QicA) (数式6)
cB=fcB(q/QicB) (数式7)
cA(q/QcA)=fcB(q/QcB) (数式8)
q=q+q (数式9)
の関係にある(図3)。
【0029】
よって、混合正極の電位Eは、活物質Aの正極の充電開始時の容量q、活物質Aの正極の充電量QcAまたは活物質Bの正極の充電開始時の容量q、活物質Bの正極の充電量QcB用いて数式10
=f(q/Qic)=fcA(q/QcA)=fcB(q/QcB) (数式10)
から求める。
【0030】
なお、活物質Aの正極の電位EcAと活物質Bの充電量qは、各活物質表面の電位である。したがって、活物質内でのリチウムイオンの拡散抵抗により活物質内でのリチウムイオンの分布が変わるので充電電流により充電量と起電圧の関係が変わってしまうようにも思われる。しかしながら、本実施形態では、正極に使われる活物質や負極に使われる炭素系の活物質では、活物質内の拡散抵抗が小さいため、充電電流が変化しても、充電電流と起電圧の関係が大きくは変わらないものとして取扱っている。
【0031】
一方、負極に活物質としてチタン酸リチウムのような拡散抵抗の大きな材料を負極に用いた場合には、図5に示すように電流値によって充電量と起電圧の関係が大きく変化するため正極と同様の近似は行わない。
【0032】
よって、負極電位Eaは、数式11
=f(q/Qia,I/Qia) (数式11)
であらわされる。
【0033】
また、内部抵抗による電圧Vは、充電電流Iと内部抵抗R(q)を用いて数式12、13
=R(q)×I (数式12)
q=∫Idt (数式13)
より求められる。
【0034】
つまり、数式2は、
Vc=fc(q/Qic)−fa(q/Qia,I/Qia)+R(q)×I
(数式2A)
としてあらわされる。
【0035】
このように、充電電圧と、活物質の起電圧特性及び内部抵抗とには非線形の相関関係がある。これから、活物質の容量、内部抵抗を変数として充電電圧の充電量に対する特性カーブについて回帰計算を行い、活物質の容量、内部抵抗を算出、決定する。
【0036】
劣化度算出プログラム152は、回帰計算プログラム151を実行することにより求めた活物質の容量と内部抵抗の値から電池装置20の劣化度を算出する機能をCPU100に実現させる手段である。
【0037】
各活物質の容量と内部抵抗を変数とし、劣化度を求める関数を関数情報DB163に記憶させておき、関数情報DB163から関数を読み出し本プログラムにより得られた各活物質の容量と内部抵抗とを比較して劣化度を算出する。
【0038】
例えば、容量と内部抵抗の基準値を記憶しておき、本プログラムにより得られた容量または内部抵抗の値が基準値より小さくなった場合に、使用できない程度に劣化していると判断したり、使用用途によっては、容量と内部抵抗値から演算される劣化指標の演算方法(関数)を記憶しておき、本プログラムにより得られた容量と内部抵抗を用いて演算した劣化指標を劣化度として提示することもできる。
【0039】
記憶部160は、ハードディスクドライブ(HDD)などの不揮発性の記憶装置、記憶手段である。この他、不揮発性の記憶手段に限られることなくフラッシュメモリなどの半導体メモリを利用してもよいし、これらの半導体メモリと、HDDとを組み合わせた形態の記憶媒体であってもよい。本実施形態では、ROM150と記憶部160とは別の記憶媒体のごとく記載しているが、ROMと記憶部を併せて一の記憶部、記憶手段としてもよい。
【0040】
記憶部160は、計測値DB161と、算出結果DB162、関数情報DB163を格納している。その他、CPU100の算出処理に必要なデータが記憶されている。
【0041】
測定結果DB161は、計測した電池装置20の電流値、電圧値などの測定データを予め定められた測定間隔毎にデータを記憶している。例えば、格納されたデータをテーブル形式で格納する。図示すると図6に示すような図を描く。格納された測定結果に関するデータは、回帰計算プログラム151を実行する際に利用される。
【0042】
算出結果DB162は、回帰計算プログラム151を実行するCPU100によって算出された値を格納する。格納した値は、CPU100により読み出され表示IF140を介して表示部141に表示してもよい。本記憶手段に代えて、クラウドコンピューティングシステム内の算出装置10外部の記憶媒体に格納する形態であってもよい。
【0043】
また、関数情報DB163は、図4に示すように正極電位と充電量の関係を表す関数や、図5に示す負極電位と充電量との関係を示す関数、値を格納している。これらは、図5に示す負極電位と充電量との関係は、電流値の増大によって充電量に対する負極電位が一定となる領域が少なくなることをあらわしている。本関数情報は、正極、負極の劣化度を評価する際に利用される。
【0044】
また、正極、負極の充電量に対する電位を求める際のデータも格納されている。正極または負極が複数の材料で構成されている場合は、各材料ごとに対応する関数が格納されている。
【0045】
タイマ170は、時間を計測するための時計である。計測した時刻を利用してCPU100は、電流値、電圧値の計測、格納を行う。算出装置10は、タイマ170に代えて、ネットワークを介して時間を取得する形態であってもよいし、タイマ170による計測とネットワークから得られる時刻とから時刻を算出する形態であってもよい。
【0046】
電池装置20は、電池と電池の電流値、電圧値等を計測する制御回路を備えた装置である。電池には、各種二次電池が利用できる。例えば、VTM21により電圧検出がなされ、電圧検出回路602により電圧が検出される。
【0047】
端末30は上記電池装置20を積んだ車両や定置形電池装置である。CPU300と、RAM(RWM)310と、通信IF320と、入力IF331と、表示IF341と、ROM350と、記憶部360と、タイマ370と蓄電池380とを含む構成である。なお、蓄電池に充電を行う充電器381、モータ383に蓄電池から電力を送る際に直流−交流変換を行うインバータ382を備えていても良い。また、端末30内を制御するCPU100に代えてプログラマブルコントローラ385を使用しても良い。
【0048】
各構成要素の機能は、算出装置の各構成要素と同様なので省略する。なお、CPU100とCPU300によって各プログラムの実行を分割して実行してもよい。蓄電池380は電池装置20である。
【0049】
次に具体的な動作の一例について図7、図8を主に参照しながら説明する。
【0050】
充電電流値は、簡単のため定電流充電の場合について記載している。充電電流値は、一定値である必要はないが、測定誤差や計算誤差の少なさから定電流充電での測定が好適である。
【0051】
また、内部抵抗値は充電量qに対して変化しないものとして取り扱う。
【0052】
また、本実施形態では、各セルごとに電圧を測定した場合について記載する。組電池のように複数のセルを有する電池モジュールに対して本算出方法を用いる場合には、各セルごとに劣化の進行状況も異なることから充電電圧の時間変化をセル毎に測定することが好適である。(ステップS101)。
【0053】
このようにし測定した充電電圧を測定結果DB161に格納する。充電開始から充電終止電圧到達までの充電時間tの間にN個の測定値が得られた。充電直後は、過渡期で充電電圧が安定していないため、この過渡期tsの期間に得られたns個のデータは活物質の容量や、内部抵抗を算出するための回帰計算に用いていない。
【0054】
算出装置10は、各セルの充電電圧の測定値を取得する。取得した値をRAM110に一時格納または、記憶部160に記憶させる。
【0055】
CPU100はROM150から回帰計算プログラム151を実行し、非線形微分方程式の解を回帰計算により解析する(ステップS102)。
【0056】
定電流充電を行っているので充電開始からの充電量qは、数式13から
=I・t
求める。
【0057】
このように充電量qに対応した測定電圧、測定値(V,qc1)、(V,qc2),………,(V,qcN)を得る。
【0058】
得た値を、CPU100は、RAM110に一時格納または、記憶部160に記憶させる。
【0059】
上記測定値を用いて回帰計算を行う。回帰計算を行う際に使用する残差平方和は、下式で表される。
【数2】

【0060】
充電開始時の充電量は回帰計算時には未知数であることから、上記充電開始時の正極および負極の充電量も未知数となる。
【0061】
本実施形態では、正極が活物質Aと活物質Bの複合正極の場合には、回帰計算の未知数は、
【数3】

【0062】
である。
【0063】
よって、次の連立方程式の解を求める(ステップS1022)。
【数4】

【0064】
初期値としては、適当な値、例えば、前回測定時の値を用いる(ステップS1021)。
【数5】

【0065】
次のステップの各値は次式で求められる(ステップS1023)。
【数6】

【0066】
このとき、
【数7】

【0067】
は、次式を解いて得られる。本実施形態では、ニュートン法を用いて説明しているが、これに代えてレーベンバーグ、マルカート法などの他の数値解析法を用いても良い。
【数8】

【0068】
求めた値が以下の収束条件(収束半径)
【数9】

【0069】
を満たすまで繰り返し演算する(ステップS1024、ステップS1025)。このようにして繰り返し演算した結果が記憶部160に格納される(ステップS103)。
【0070】
次にCPU100は、次に劣化度算出プログラム152を実行する。
【0071】
上記回帰計算プログラム151により算出された容量や内部抵抗と、予め記憶されている劣化基準との比較、または、予め記憶されている演算方法(関数)により容量と内部抵抗を用いて劣化度を算出する(ステップS104)。
【0072】
CPU100は、算出した結果を、表示プログラムなどの表示制御手段を実行し表示部141に表示する。
【0073】
なお、ステップ102で演算処理された充電電圧と内部抵抗をそのまま表示部141に表示させる形態であってもよい。
【0074】
次にステップS1022の演算処理について、例示する。
【0075】
第一に、正極または負極が単極の場合、例えば数式27の第3列第3行についてとくと、
【数10】

【0076】
となり、微分を小変異ΔQcを用いて計算して、
【数11】

【0077】
となる。
【0078】
同様に第1行第7列の数式について計算すると、
【数12】

【0079】
としてあらわせる。
【0080】
他の項についても同様に計算がなされる。
【0081】
次に正極が複合材の場合のステップS1022の演算の前処理について、図10を用いて説明する。
【0082】
まず初期値を設定する(ステップS10211)。
【0083】
cn← qc ns+1、qA, qB
次に、q、qに連立方程式を生成し、解を求める(ステップS10212、S10213)。
【数13】

【0084】
次に予め定めた収束半径内に解が入るか否かを判定する(ステップS10214)。
【数14】

【0085】
入っていない場合、新たな初期値を設定し、qA, qBを求める(ステップS10215)。
【0086】
入っている場合(ステップS10214−YES)は、次の測定点についての算出を行う(ステップS10216、S10217)。
【0087】
得られる解が次の式で表される。
【数15】

【0088】
ここで、正極電圧は、
【数16】

【0089】
でもとめられる。
【0090】
この数列は
【数17】

【0091】
のように記載できる。
【0092】
すると、∂S/∂QcAについて例示すると
【数18】

【0093】
となる。他の正極に関係する項についても同様に求めることができる。
【0094】
このように本実施形態によれば、正極の電位、負極の電位、充電電圧を算出することができる。
【0095】
このように正極の電池、負極の電位をより精密に求めることにより、充電電圧のみを用いた劣化判断ではできなかった正極、負極のみが劣化が進んでいる場合を検出することができることから、より正確な劣化判定を行うことができる。
【0096】
さらに、電池の特性に応じて一部の値を一定とすることにより処理の高速化も実現することができる。
【0097】
<変形例>
第1の実施形態の変形例について、図10乃至図14を参照しながら説明する。
【0098】
図10、11では、端末30内に算出装置10を備えている。この場合、上位側にサーバを設ける必要がなく、通信ネットワーク1の情報通信量の低減を実行することができる。
【0099】
図12では、算出機関がインターネットおよび通信機を通じて端末30の情報を集め算出装置10にて電池状態を評価する実施形態である。データの一元管理が可能であり、電池状態の評価をより正確に行うことができる。また、信頼性の保持にも役立つ。
【0100】
図13では、無線通信にて端末30からの電池情報の収集を行う。一定時間毎に行うことができ電池特性の算出に好適である。
【0101】
図14では、急速充電器などの充電器にて算出装置10を備えている実施形態である。
【0102】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、正極、負極を構成する物質は、2種類に限られることなく、1種類、3種類以上であってもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 … 通信ネットワーク
10 … 算出装置
20 … 電池装置
30 … 端末
100、300 … CPU(Central Processing Unit)(算出処理部)
110、310 … RAM(RWM)(Random Access Memory)(Read Write Memory)
120、320 … 通信IF(inter face)
130、330 … 入力部
131、331 … 入力IF
140、340 … 表示部
141、341 … 表示IF
150、350 … ROM(Read Only Memory)
151 … 回帰計算プログラム
152 … 劣化度算出プログラム
160、360 … 記憶部
161 … 測定結果DB(data base)
162 … 算出結果DB
163 … 関数情報DB
170、370 … タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池電圧を算出する算出装置に
電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算機能
を実現させる算出方法。
【請求項2】
前記演算機能は、
前記電池の内部抵抗値と、充電電流値から求める前記電池の充電開始からの測定時までの充電量とを変数として前記電池の充電電圧の時間特性を算出する
請求項1に記載する算出方法。
【請求項3】
前演算機能は、
活物質の充電量の変化量を変数として前記電池の充電電圧の時間特性を算出する
請求項1または請求項2に記載する算出方法。
【請求項4】
前記充電電流値は定電流充電時の電流値である
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載する算出方法。
【請求項5】
前記電池は、
複数の活物質を含む正極およびまたは複数の活物質を含む負極を備え、
前記演算機能は、
前記活物質の電位−充電量特性を格納する関数情報データベースを参照して前記複数の活物質を含む正極の正極電圧およびまたは前記複数の活物質を含む負極の負極電圧を算出する
請求項1乃至4いずれか一項に記載する算出方法。
【請求項6】
ROMからデータを読み出し算出処理を行うCPUを備えるコンピュータに電池の劣化度を算出させる算出プログラムであって、
前記CPUに、
電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算機能
を実現させる算出プログラム。
【請求項7】
電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算手段
を備えた算出システム。
【請求項8】
電池の充電量とそのときに発生している電池電圧とを対応させて記憶する測定値データベースと、電池内に含まれる複数の活物質の充電量と電圧の関係を表す関数を記憶する関数情報データベースと、を参照して前記関数情報データベースに格納された関数の活物質の量を変数として前記測定値データベースに記憶された電池電圧を回帰計算する演算手段
を備えた算出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−251806(P2012−251806A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122965(P2011−122965)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】