説明

管のためのねじ込み継手

ここで記載されるのは、ねじ山が5pmから30pmの間の厚さを有する乾燥潤滑剤の層に覆われており、且つオス管のねじ山とメス管のねじ山の間の空間(6,7)の名目隙間容積NWが、ODは名目外側直径でWtは管の壁の厚さである式(I)を用いて大きさを決められている、ねじ込み継手である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有する、特に天然ガス及び石油抽出工業において使用される管を接合するためのねじ込み継手に関する。前記管はガスや石油を汲み上げるためのパイプ及び掘削井戸のケーシングとして使用できる。
【背景技術】
【0002】
油田で石油を抽出するため、埋蔵されているガスや石油が見出されている深度まで達するようにひと続きとなるよう接合された、一定の長さの金属パイプを使用することは一般的な方法である。
【0003】
この抽出技術は、掘削をしている間、井戸の漸進的な内部コーティングを必要とし、そのコーティングには金属管が使用され、それは“ケーシング”と呼ばれている。一度望ましい深度が到達されたら、表面にある液体又は気体炭化水素を汲み上げるために、小さな直径のひと繋ぎの金属管、所謂“チュービング(tubing)”、が“ケーシング”の中に挿入される。ケーシングのためのコラム及びチュービングのためのコラムの両方が、オス型とメス型の、所謂ピン部材とボックス部材の、ねじ込み継手を使う手法によって組み立てられたパイプのセグメントから作り出される。
【0004】
組み立て作業を可能とするために、連結部の接合を容易にするべく潤滑剤を使用することは一般的な方法である。通常使用される潤滑剤は、その中に例えば鉛や銅といった重金属の小さな粒子を含んでいる。これらの重金属は健康と環境にとって危険である。
【0005】
汚染の危険に加えて、取り組まれなければならない別の問題は、潤滑剤の品質の決定である。というのも、継手の性能は前記品質の変化に非常に敏感だからである。
【0006】
一般的に、必要とされる量に満たない潤滑剤は正しい潤滑作用を保証せず、維持されるべきオスねじ山とメスねじ山の間の干渉によって生じる高接触圧を可能としないので、摩滅が生じる。
【0007】
上記されたことと反対の問題がドープを使用する際に生じ、それは所謂“オーバードーピング”、又はドープの過剰と呼ばれており、継手をねじ山で固定する間に、連続する管のセグメントの端部に過剰なドープを配置するという問題を含意している。中に閉じ込められたドープは、その結果として、継手において高圧を発生させる。特定の状況において、そのような圧力はねじ込み部にあるパイプのセグメントの可塑性変形を生じさせ得、及びピン部材の崩壊を導く。一度前記の現象が生じたら、継手はその効力を失い、パイプのセグメント及び/又はスリーブは交換されなくてはならない。
【0008】
ドープが継手の隙間に含浸するための十分な空間を有していないとき、又は連結部の外部に流れ出るための十分な空間が無いときに、閉じ込めが生じる。
【0009】
上記の問題は2つ以上のシールを有する継手の場合において更に深刻となる。この場合、潤滑剤は2つのシールの間に閉じこめられ、流れ出すことが出来ず、発生した高圧を減ずることが不可能となる。
【0010】
上記の問題に対する可能的な解決法は、潤滑剤の貯蔵場所として、2つのシールの間に得られた隙間空間を設けることである。
【0011】
潤滑剤の貯蔵庫を設けることによって生じる不都合は、シールの間に多数の隙間空間を作り出すということにあり、それは連続性の喪失を生み、従って継手の性能を落とし得る。
【0012】
例え潤滑剤が正しい量で適用されるとしても、上記で言及されたことと同じ問題は、主に潤滑剤の継手の全領域を覆う配分の均一性が失われるときに生じ得る。
【0013】
この点において、潤滑剤を適用させる作業はひと続きの管が井戸の中に降ろされる時に、油井施設において実行され、従って時間及びリソースという点から特に費用がかかると考えられねばならない。しばしば不利な環境状況が、潤滑剤の正確な用量や継手部分への適用を不確実にする。
【0014】
石油抽出のために使用される井戸の厚さが増大していることによって証明されるように、蓄積した炭化水素が見つけられるほどの更なる深度に到達するために、市場から要求される性能のレベルはますます増大している。
【0015】
上記の問題を取り扱うために、用量に注意を払ったり、潤滑剤によって占有されている空間を一定の大きさにするといった解決策が提案されている。
【0016】
潤滑剤の閉じ込めという上記の問題に対する解決策は、特許文献1で提案されており、それはオスねじ山とメスねじ山間の隙間空間の最小範囲を固定するというものである。前記の値は0.6mm/pitchに固定される。前記の空隙において、潤滑剤は広がることができ、閉じ込めの問題を防ぐことができる。
【0017】
前継手の性能を向上させる更なる方法は、主にパイプが加圧下で作動している時に、オスねじ山とメスねじ山の尖った側間のギャップを減らすということであり、このことは特許文献2で開示されており、前記のねじ山のギャップに対し0,002ins(0.05mmに対応)という値を提案している。
【0018】
上記の結果として、例えば6TPI(1インチ当たりのネジ山数)(threads per inch)で各々のねじ山の高さが1mmのねじ込み継手を考えるならば、オスねじ山とメスねじ山上の空隙は、特許文献1の教示に従うと、潤滑剤の圧力の問題を防ぐために少なくとも0,26mmなければならない。従って、上記の全空隙はオス管の外側とメス管の内側間での、0,52mmの直径の違いに相当する。
【0019】
継手の重要な部分の領域は輪となっている領域であり、前記の領域はピンとボックスとで異なる。ピンにとって前記の輪はパイプの内側直径(ID)と噛み合わされる最後のねじ山の溝の直径によって規定されるが、一方ボックスにとって前記の輪はパイプの外側直径(OD)と噛み合わされる最後のねじ山の溝の直径によって規定される。
【0020】
従って、もし我々が管のODとIDの値を一定だと考えるならば、ピンの外側とボックスの内側の間の0,52mmの前記差異は継手の性能を減じさせる。
【0021】
更に、ねじ山の差込側における大きなギャップのために、加圧負荷がかけられるとき、ねじ込まれる部分は機能しない。
【0022】
潤滑剤の圧力の問題を防ぐこと、及び継手の高い性能を獲得することは、反対の志向性を有する要請であることがそこから明らかになる。
【特許文献1】米国特許第4830411号明細書
【特許文献2】国際公開第0066928号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の主となる目的は上記に関する不都合を除去することである。
【0024】
本発明の目的は乾燥潤滑剤が使用されるパイプ継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
継手と協働する部分に適用される乾燥潤滑剤を管を、製造する過程の最後に使用することによって得られる利点は、作業している間に潤滑の作業を実行する必要を防ぐことである。
【0026】
過剰な潤滑剤を含むために要請される空間が無いという事実の結果から、継手の形状、ねじ山の寸法、許容差を最適化することが可能であり、それは空隙を減らし、続いて継手の性能を向上させるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の更なる目的は、存在している隙間空間の全容積を減らすように、継手の直径を全て最適化することである。
【0028】
全体的にねじ山と継手の最適な形状と寸法の特質を正しく一定の大きさにすることは、請求項1の式において定義されている。
【0029】
本発明の継手で提案されている解決策に従うと、継手の重要な領域における増加は、3%以上増加し得る。
【実施例】
【0030】
図1に描かれているのは、オス部材又は外側ねじ山3を有するピン1と、メス部材又は内側ねじ山4を有するボックス2から成る継手である。
【0031】
継手の大きさを最適化することを目的とした厳密な研究の後、管の様々なパラメータの間の数学的な関係を定義することが可能であると証明された。
【0032】
我々は、乾燥潤滑剤の被膜の厚さは5μmから30μmの間であると考える。
【0033】
軸平面上にあると考えられる継手の部分において噛み合わされているねじ山間の自由な空間の領域gは0.4mm/pitchより小さい。
【0034】
【数3】

参照番号5によって指示されている前記の空領域gは、図2において表示されている。その領域は例えば、CADの助けを得て計算されて良い。又は図3で表示されているように、理想化された形である領域6を考えて良い。
【0035】
もし我々が4TPI及び1,5mmの歯の高さを有するねじ山を考えるならば、厚さ30μmの被膜によって埋められた領域は約0,3mmである。従って、ねじ山の側部間の予期されない接触を防ぐために、前記領域の前記直径は0.4mmに固定される。
【0036】
2つ目の関係はインチで表現される管の名目空容積NVVと名目外側直径ODの間で定義され、以下の式を与えられる:
【0037】
【数4】

名目空容積として定義されるのは、継手の中に存在する空隙の量の指標である。
【0038】
パラメータNVVの値は2つの最も離れたシールの間の空隙の数値を求めることによって計算されなければならない。
【0039】
前記空間の延長部分は以下のように考えることによって計算されなければならない:
2つのねじ山が名目配置で相互に噛み合っている時の、ねじ山の側部における、
及びねじ山と谷の間における有効空間。その計算は以下の式を使用することに
よってなされる:
=g×(PTL+ITL×k)×TPI
上記で、Gはねじ山の全空領域〔mm
PTLは完全なねじ山の長さ〔ins〕
ITLは不完全なねじ山の長さ〔ins〕
TPIは1インチ当たりのねじ山の数〔ins−1
kは、不完全なねじ山の長さにおける空隙が、切断されるねじ山の山のために、
完全なねじ山における空隙よりも大きいということを仮定する定数である。上記
された式において、kの値は5であり、それは不完全なねじ山の部分でのねじ
の噛み合わせをシミュレートして計算されている。
図4において表わされている、7で指示される、継手の他の空隙Gは、オス要
素とメス要素が名目配置で一致させられたときに計算されねばならない。この場 合の名目空容積NVVは
【0040】
【数5】

3番目の関係は名目隙間容積NVVと直径ODと管の本体の名目の厚さWtの間で定義される。以前に記述されたように計算された前記名目隙間容積(NVV)は以下の式と相関していなければならない:
【0041】
【数6】

NVVは(主にシーリング及び不完全なねじ山の領域において)固定された容積と、不完全なねじ山の長さと共に増加する線形の値の和を表すと考えられねばならないので、Wtは平方根となる。
【0042】
結果として、もし継手に存在する空隙の全量と比較されるならば、ねじ山の各々の個別のピッチに対する空容積は非常に小さいので、異なる壁の厚さによるねじ山の異なる長さのための空容積の増加は、主として平方根によってかなり近似される。
【0043】
前記パラメータの値は表1に記されている。
【0044】
【表1】

継手の更に好ましい実施態様は図5で表されている。
【0045】
これは、乾燥潤滑剤を伴って使用するために特別に設計された、中央のショルダーを持つ、2つの段となっている先細型ねじ山を有する継手を表している。
【0046】
前記継手において、図6のように、2つの段はねじ山の断面で4°の角αと20°の角βを有し、直径では8,5%という値で先細りしている。
【0047】
前記の好都合な実施態様に従うと、前記のパラメータは以下の値のように仮定される:
【0048】
【表2】

発明に従う継手の別の好ましい実施態様は、図7に表されている。前記構造は、単一段先細ねじ山を有する、作られたねじ込み継手に関係する。それは、オス管の管先に対応する位置に設置された、接合部のためのショルダーと、金属対金属シールと、ねじ込み領域に配置されたリングシールガスケットから成る。ねじ山の先細り率は、5TPIの場合では6,25%で、4TPIの場合は8,5%である。ねじ山の断面は、3°の負荷側角と25°の導入側角を有する、API型の修正ノコギリ状歯の断面をしている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】石油抽出工業において一般的に使用される継手を表している。
【図2】継手部分の拡大図である。
【図3】継手部分の拡大図である。
【図4】継手部分の拡大図である。
【図5】管本体よりは大きくない全体直径を有するほぼフラッシュ(flush)継手の好ましい実施態様を示している。
【図6】継手部分の拡大図である。
【図7】ねじ山のある領域の末端部分に最初の金属対金属ガスケットやシールリングを設けられた、ねじ込み式の、及び仕上がった継手を示している。
【図8】一体的なフラッシュ継手、すなわち管本体の直径と同じ全体の直径を有している継手を表している。
【符号の説明】
【0050】
1、1’、1” ピン
2、2’、2” ボックス
3 外側ねじ山
4 内側ねじ山
5 g
6 理想化された形の領域
7 Gc
9’、 9” ショルダー
10、11 内側ねじ山部
12、13 外側ねじ山部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1つの端部に各々のねじ山部を有しているピン(1,1’,1”)とボックス(2,2’,2”)から成る、パイプのねじ込み継手において、前記の各々のねじ山部は5μmから30μmの間の厚さを有する乾燥潤滑剤の層で覆われ、且つピン部材とボックス部材との間の空間(6,7)の隙間容積(NVV)が以下の式を満たすような寸法を有する、前記パイプのねじ込み継手:
【数1】

ここでODは前記パイプの名目外側直径を表す。
【請求項2】
空間(6,7)の名目空容積NVVは、以下の式が満足される寸法である、請求項1に従うねじ込み継手:
【数2】

ここでWtは前記パイプの壁の厚さを表す。
【請求項3】
軸平面にあると考えられる継手の部分に噛み合わされるねじ山の間の自由空間(5,6)の領域は、0,4mm/pitchより小さい、請求項2に従うねじ込み継手。
【請求項4】
前記オス要素とメス要素のそれぞれは少なくとも1つのシール要素を備えている、請求項1から3のどれか1つに従うねじ込み継手。
【請求項5】
ピンは、軸の方向に互い違いに置かれ、ショルダー(9’)によって分離されている、切頭円錐形をしている2つの外側ねじ山部(12,13)を有しており、且つボックスは、ねじ山で固定している間につめとして働く、軸の方向に互い違いに置かれ、ショルダー(9”)によって分離されている、切頭円錐形をしている2つの内側ねじ山部(10,11)から成る、請求項4に従うねじ込み継手。
【請求項6】
ピンは切頭/円錐形の外側ねじ山部を有し、且つボックスは切頭/円錐形の内側ねじ山部を有しており、及び各々のピン部材とボックス部材は、組み立てる際に接合部として働くよう適合された、前記ねじ込み部の少なくともそれぞれの端部の1つに取り付けられたショルダーを備えている、請求項4に従うねじ込み継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−515394(P2006−515394A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501802(P2006−501802)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001252
【国際公開番号】WO2004/072533
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505306038)テナリス コネクションズ アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】