説明

管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法

【課題】蓋体の搬入、管ライニング材への取り付け・取り外し、搬出作業を作業者に負担をかけずに容易に行うことができるとともに、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔にも適用可能な管ライニング材用蓋体を提供すること。
【解決手段】管ライニング材1の開口部に取り付けて管ライニング材1の内部を気密状態に維持するための蓋体4を分割構造とし、蓋体4の直径よりも小さい口径の既設の人孔3の開口部から搬入可能な大きさの分割構造体41a、41b、42a、42b、42cで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路を構成する管材が老朽化した場合、この老朽化した管材(既設管)を新しい管材に交換することなく、その内周面にライニングを施して当該管路を修復する管ライニング工法が提案され、実用化されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
この管ライニング工法は、図1に示すように、例えば、柔軟性を有するチューブ状の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含浸させた樹脂吸収繊維層を備えた管ライニング材1を管路を構成する既設管2内に挿入し、管ライニング材1の内圧を高めることによって管ライニング材1を既設管2の内周面に押圧しながら、加熱したり、紫外線を照射することによって、樹脂吸収繊維層に含浸されている硬化性樹脂を硬化させ、既設管2の内周面に管ライニング材1によるライニングを施して当該既設管2を修復する工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264896号公報
【特許文献2】特開2008−149599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、管ライニング材1は、図1(a)に示すように、既設管2に人孔(マンホール)3から挿入されるが、このとき、管ライニング材1は、地上に配設した管ライニング材の供給装置11から押圧されたシート状の平らな状態で人孔3から挿入され、既設管2に敷設された後、図1(b)に示すように、管ライニング材1の開口部に蓋体4を取り付けて閉鎖し、この状態で、管ライニング材1の内部に空気を注入することによって内圧を高め、管ライニング材1を既設管2の内周面に押圧しながら、加熱したり紫外線を照射することによって、樹脂吸収繊維層に含浸されている硬化性樹脂を硬化させるようにしている。
なお、図1(b)に示す例は、地上に配設した蒸気発生装置12で発生させた蒸気を、配管13を介して蓋体4から管ライニング材1の内部に供給し、管ライニング材1の樹脂吸収繊維層に含浸されている硬化性樹脂を加熱、硬化させた後、蓋体4から配管14を介して地上に配設した排気放出装置15から大気中に排気を放出するようにしている。
【0006】
このように、管ライニング材1の内部に空気や蒸気を注入したり、排気を放出するために、管ライニング材1の開口部に蓋体4を取り付けて閉鎖することにより管ライニング材1の内部を気密状態に維持できるようにする必要があるが、管ライニング材1の開口部に取り付ける蓋体4は、重量が大きく、蓋体4の搬入、管ライニング材1への取り付け・取り外し、搬出作業は、重労働で、かつ、作業性が悪く、作業に時間を要するという問題があった。
また、口径の大きな既設管2の場合であっても、その口径に対応した直径の蓋体4を選択すべきであるが、蓋体4の直径よりも既設の人孔3の開口部の口径が小さい場合には従来タイプの蓋体4は搬入できないことから、このような場合には、管ライニング材1に適合しない小さい直径の蓋体4を用いざるを得ない。しかし、管ライニング材1の口径に比べて蓋体4の直径が過度に小さい場合には、管ライニング材1に大きな皺ができるため蓋体4を取り付ける際の作業性が悪くなり、気密状態を維持しにくくなるだけでなく、管ライニング材1の内部に空気を注入したときに管ライニング材が蓋体外周方向に膨らみを生じやすく、この膨らみが硬化した後に蓋体を固定する金具を解除する作業を行う際に支障になり、作業に多くの時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の管ライニング工法の有する問題点に鑑み、蓋体の搬入、管ライニング材への取り付け・取り外し、搬出作業を作業者に負担をかけずに容易に行うことができるとともに、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔にも適用可能な管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の管ライニング材用蓋体は、管ライニング材の開口部に取り付けて管ライニング材の内部を気密状態に維持するための蓋体であって、該蓋体を、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさの分割構造としたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、蓋体を、蓋体の蓋部を構成する蓋板と蓋体の筒部を構成する筒体とに分割して構成するとともに、少なくとも筒体を円周方向で分割される分割構造とすることができる。
【0010】
また、筒体を、上部分割構造体と少なくとも円周方向で分割される中間・下部分割構造体とで構成するとともに、上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外した状態で上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込み可能な接合構造とすることができる。
【0011】
また、本発明の管ライニング材用蓋体の取り付け・取り外し方法は、管ライニング材への蓋体の取り付け・取り外し方法であって、上記本発明の管ライニング材用蓋体を、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の管ライニング材用蓋体の取り付け・取り外し方法は、管ライニング材への蓋体の取り付け・取り外し方法であって、上記本発明の管ライニング材用蓋体を、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、筒体の上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外し、上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込むことによって蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法によれば、管ライニング材の開口部に取り付けて管ライニング材の内部を気密状態に維持するための蓋体であって、該蓋体を、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさの分割構造とし、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出するようにすることにより、蓋体の搬入、管ライニング材への取り付け・取り外し、搬出作業を作業者に負担をかけずに容易に行うことができるとともに、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔にも適用可能なため、管ライニング材に適合しない小さい直径の蓋体を用いる場合にあった作業性及び気密状態の維持等に関する問題点を解消することができる。
【0014】
また、蓋体を、蓋体の蓋部を構成する蓋板と蓋体の筒部を構成する筒体とに分割して構成するとともに、少なくとも筒体を円周方向で分割される分割構造とすることにより、蓋体の組み立て及び分解を容易に行うことができる。
【0015】
また、筒体を、上部分割構造体と少なくとも円周方向で分割される中間・下部分割構造体とで構成するとともに、上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外した状態で上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込み可能な接合構造とし、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、筒体の上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外し、上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込むことによって蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出するようにすることにより、蓋体の分解をより容易に行うことができ、特に、硬化後の管ライニング材からの離脱を容易に行うことができるため、適用可能な管ライニング材の範囲が広くなり、汎用性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】管ライニング工法の説明図で、(a)は管ライニング材を管路に敷設する工程を、(b)は管ライニング材を管材の内周面に押圧しながら、加熱する工程を示す。
【図2】本発明の管ライニング材用蓋体の一実施例を示し、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)は筒体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図2に、本発明の管ライニング材用蓋体の一実施例を示す。
この管ライニング材用蓋体4は、管ライニング材1の開口部に取り付けて管ライニング材1の内部を気密状態に維持するためのものであって、蓋体4を、蓋体4の直径よりも小さい口径の既設の人孔3の開口部から搬入可能な大きさの分割構造としたものである。
なお、本実施例の管ライニング材用蓋体4は、組み立て時の直径D:700mm、長さ(軸方向)L:250mmに形成されている。
【0019】
具体的には、蓋体4を、蓋体4の蓋部を構成する蓋板41と、蓋体4の筒部を構成する筒体42とに分割して構成する。
さらに、蓋板41は、二等分に分割した分割構造体41a、41bで構成する。
また、筒体42は、円周方向で分割し、上部分割構造体42aと、中間・下部を二等分に分割した中間・下部分割構造体42b、42cとで構成する。
【0020】
そして、蓋板41及び筒体42のそれぞれの組み立ては、分割構造体41a、41b並びに筒体42の上部分割構造体42a及び中間・下部分割構造体42b、42cに形成したフランジ部F1、F2を突き合わせ、固定具としてのボルトBで締結することにより接合するようにしている。
また、蓋板41と筒体42の組み立ては、筒体42に形成したフランジ部F3に蓋板41を当接し、固定具としてのボルトBで締結することにより接合するようにしている。
なお、フランジ部F1、F2の突き合わせ面及びフランジ部F3と蓋板41の当接面には、必要に応じて、ラビリンス構造部、パッキン、シールテープ等のシール構造部Sを配設するようにする。
【0021】
この場合において、筒体42の上部分割構造体42aと中間・下部分割構造体42b、42cとは、図2(c)に示すように、水平面に対して斜め上方の位置(本実施例においては、θ:60°)で分割するとともに、上部分割構造体42a及び中間・下部分割構造体42b、42cを相互に固定する固定具としてのボルトB並びに蓋板41を取り外した状態で、上部分割構造体42aに上方から押圧力Foを付加することにより、上部分割構造体42aを中間・下部分割構造体42b、42cの内側に落とし込むことができる接合構造、具体的には、上部分割構造体42aと中間・下部分割構造体42b、42cを接合する両者のフランジ部F2の対向する接合面を平行な面(又は下側が広がる傾斜面)に形成するようにしている。
【0022】
なお、管ライニング材用蓋体4は、蓋板41に、蒸気の供給、排気の放出及びドレン水の排水のための配管を接続したり、カメラ等の点検機材を挿入するための閉鎖可能な複数の開口部Hを備えるようにし、また、筒体42の外周面に、管ライニング材1の開口部に蓋体4を取り付けてその外周を帯状の締結具により締結することによって気密状態が維持されるように間隔をあけて突条部Frを備えるとともに、上部分割構造体42aに、筒体42の組み立てや分解時に上部分割構造体42aを支持するためのフックFkを備えるようにする。
このほか、管ライニング材用蓋体4は、従来の管ライニング材用蓋体に備えていた構造や機構を適宜備えることができる。
【0023】
次に、この管ライニング材用蓋体4の取り付け・取り外し方法について説明する。
この管ライニング材用蓋体4は、蓋体4の直径よりも小さい口径の既設の人孔3の開口部から搬入可能な大きさの分割構造としているので、既設の人孔3の開口部から搬入可能な大きさの分割構造体41a、41b、42a、42b、42cに分解した状態で人孔3内に搬入し、組み立て及び管ライニング材1の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材1による既設管2の修復を行い、蓋体4を分割構造体41a、41b、42a、42b、42cに分解して、既設の人孔3の開口部から搬出するようにする。
この場合、管ライニング材用蓋体4の組み立ては、まず、筒体42の組み立て、組み立てた筒体42を管ライニング材1の開口部に取り付けた後、蓋板41を組み立て、筒体42に形成したフランジ部F3に蓋板41を接合するようにする。
これにより、蓋体4の搬入、管ライニング材1への取り付け・取り外し、搬出作業を作業者に負担をかけずに容易に行うことができるとともに、蓋体4の直径よりも小さい口径の既設の人孔3にも適用可能なため、管ライニング材1に適合しない小さい直径の蓋体を用いる場合にあった作業性及び気密状態の維持等に関する問題点を解消することができる。
【0024】
特に、管ライニング材用蓋体4の筒体42を、上部分割構造体42aと中間・下部分割構造体42b、42cとで構成するとともに、上部分割構造体42a及び中間・下部分割構造体42b、42cを相互に固定する固定具(ボルトB)を取り外した状態で上部分割構造体42aを中間・下部分割構造体42b、42cの内側に落とし込み可能な接合構造とすることにより、筒体42の上部分割構造体42a及び中間・下部分割構造体42b、42cを相互に固定する固定具(ボルトB)を取り外し、上部分割構造体42aを中間・下部分割構造体42b、42cの内側に落とし込むことによって、蓋体4の分解をより容易に行うことができる。
また、この管ライニング材用蓋体4は、硬化後の管ライニング材1からの離脱を容易に行うことができるため、適用可能な管ライニング材の範囲が広くなり(通常、管ライニング材用蓋体4の直径Dの±5%の範囲の管ライニング材1に適用可能となる。)、汎用性を持たせることができる。
【0025】
なお、蓋体4の分割の仕方は、蓋体4の直径よりも小さい口径の既設の人孔3の開口部から搬入可能な大きさに分割できる限りにおいて、本実施例に限定されるものではなく、例えば、筒体42に形成したフランジ部F3を中心側に大きく張り出させることにより、蓋板41の直径を人孔3の開口部の口径よりも小さくできる場合には、必ずしも、蓋板41を分割構造とする必要はない。
また、蓋体4を、蓋板41と筒体42とに分割して構成することに代えて、蓋体4全体を円周方向で分割した分割構造、すなわち、蓋部及び筒部を備えた分割構造体(図示省略)で構成することもできる。
【0026】
以上、本発明の管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の管ライニング材用蓋体及びその取り付け・取り外し方法は、蓋体の搬入、管ライニング材への取り付け・取り外し、搬出作業を作業者に負担をかけずに容易に行うことができるとともに、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔にも適用可能であることから、大径の管ライニング材を用いる管ライニング工法に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 管ライニング材
2 既設管
3 人孔(マンホール)
4 蓋体
41 蓋板
41a 分割構造体
41b 分割構造体
42 筒体
42a 上部分割構造体
42b 中間・下部分割構造体
42c 中間・下部分割構造体
B ボルト(固定具)
F1 フランジ部
F2 フランジ部
F3 フランジ部
S シール構造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管ライニング材の開口部に取り付けて管ライニング材の内部を気密状態に維持するための蓋体であって、該蓋体を、蓋体の直径よりも小さい口径の既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさの分割構造としたことを特徴とする管ライニング材用蓋体。
【請求項2】
蓋体を、蓋体の蓋部を構成する蓋板と蓋体の筒部を構成する筒体とに分割して構成するとともに、少なくとも筒体を円周方向で分割される分割構造としたことを特徴とする請求項1記載の管ライニング材用蓋体。
【請求項3】
筒体を、上部分割構造体と少なくとも円周方向で分割される中間・下部分割構造体とで構成するとともに、上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外した状態で上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込み可能な接合構造としたことを特徴とする請求項2記載の管ライニング材用蓋体。
【請求項4】
管ライニング材への蓋体の取り付け・取り外し方法であって、請求項1、2又は3記載の管ライニング材用蓋体を、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出することを特徴とする管ライニング材用蓋体の取り付け・取り外し方法。
【請求項5】
管ライニング材への蓋体の取り付け・取り外し方法であって、請求項3記載の管ライニング材用蓋体を、既設の人孔の開口部から搬入可能な大きさに分解した状態で人孔内に搬入し、組み立て及び管ライニング材の開口部への取り付けを行った後、管ライニング材による既設管の修復を行い、筒体の上部分割構造体及び中間・下部分割構造体を相互に固定する固定具を取り外し、上部分割構造体を中間・下部分割構造体の内側に落とし込むことによって蓋体を分解して、既設の人孔の開口部から搬出することを特徴とする管ライニング材用蓋体の取り付け・取り外し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−224038(P2012−224038A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95412(P2011−95412)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(505354095)タキロンエンジニアリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】