説明

管体の充填方法および充填装置

【課題】管体を余すことなく閉塞できる管体の充填方法および充填装置を実現する。
【解決手段】本発明の充填方法は、一端20aが本管10に接続され閉塞端20b側が閉塞された管体20に、排気手段35とセンサー手段30とを挿入する挿入工程と、センサー手段30で閉塞端20bを検知する閉塞端検知工程と、排気手段35をセンサー手段30から分離して排気手段35の端部35bを閉塞端20bに位置づける排気手段分離工程と、センサー手段30を管体20から退避させるセンサー退避工程と、本管10と管体20との接続部11に型枠50を設置して管内空間20sを閉塞する型枠設置工程と、管内空間20sを充填する充填工程とを有し、本発明の充填装置は、センサー手段30と、排気手段35と、着脱手段37と、型枠50と、充填手段60と、第1および第2の管内作業手段40Aおよび40Bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水道管に接続された取り付け管等の内部を充填するための、管体の充填方法および充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道施設の本管には、事業所、ビルディングおよび家庭等から下水を排出するための取り付け管が多数接続されている。しかし、建築物の改築等にともなって下水排出経路が変更されたため、あるいは都市計画等によって下水路の新設または変更が生じたため、使用されなくなった取り付け管が多数存在する。こうした取り付け管の多くは、その断面概略構造を図11に示すように、取り付け管2の一端2aが本管1に接続されたまま、その他端側を閉塞する等して放置されており(以下、取り付け管の他端を閉塞端と表記する)、一端2aから閉塞端2bにかけて、本管内空間1sと連通した取り付け管内空間2s(以下、取り付け管内空間を管内空間と表記することがある)が形成されている。
【0003】
そのため、閉塞端2b側の土砂が雨水等とともに取り付け管2を通って本管1へと流出することがあり、こうした流出が長年にわたると、閉塞端2b側の地中に空隙が形成されて、陥没の原因となるおそれがある。
【0004】
そこで、遠隔操作される管内作業ロボット等を使用して、図12に示すように、本管1の側から、本管1と取り付け管2との接続部1tを型枠3で閉塞した後、接続部1tから管内空間2sにシリカセメント等の充填材4を充填することで、取り付け管2への土砂の流入を防止する技術が提案された(特許文献1)。
【0005】
しかし、管内空間2sに充填材4を充填すると、そこに充満した空気の圧力が高まるため、管内空間2sを充填材4で余すことなく閉塞できず、残存空間2s’が形成される可能性がある。特に取り付け管2が長い場合には、比較的大きい残存空間2s’が形成されて、そこへ土砂が流入する可能性がある。
【0006】
そこで、接続部1tを型枠3で閉塞するときに、管内空間2s側に袋体5および排気手段6を配設しておき、図13に示すように、管内空間2sに充填する充填材4の浮力を利用して、管内空間2sに袋体5および排気手段6を誘導する技術が提案された(特許文献2)。
【0007】
この技術によれば、袋体5とともに充填材4によって誘導された排気手段6が、袋体5と閉塞端2bとの間の空間に充満している空気を排気するから、残存空間2s’を形成することなく、管内空間2sを充填材4で閉塞することができる(なお図13中の5’は、管内空間2sにおいて、袋体5を所望の大きさに膨らませるための送気管である。)。
【0008】
例えば、取り付け管2が比較的短く、そして直線的に埋設されている場合には、充填材4の浮力を利用して、袋体5と排気手段6を閉塞端2bまで比較的容易に誘導することができ、管内空間2sを充填材4で十分閉塞することができる。
【0009】
しかし、取り付け管2の直径が較的径小さく(例えば150〜200mm)、その長さが長い場合には(例えば4メーター)、袋体5を閉塞端2bまで容易に誘導することができない。また図14に示すように、取り付け管2に屈曲部2c(もしくは破損箇所がある等)がある場合には、屈曲部2において袋体5の挿入が阻まれる可能性がある。そうすると屈曲部2cと閉塞端2bとの間等に、残存空間2s’が形成されて、管内空間2sを十分閉塞できないといった問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−091861号公報
【特許文献2】特許第4652471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記問題を解消するため、取り付け管(管体)の一端から管内空間に排気手段を挿入し、この排気手段を取り付け管の閉塞端まで確実に到達させることができ、この排気手段によって管内空間に充満した空気を十分排出することで、管内空間を余すことなく充填材で充填(閉塞)できる管体の充填方法および充填装置の実現を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明にかかる管体(その一端が本管に接続され、その閉塞端が例えば土砂等によって埋設されて閉塞された、例えば下水道の取り付け管)の充填方法は、管体の一端から、管内空間に充満している空気を排気するための排気手段、およびセンサー手段を挿入する挿入工程を有しており、管内空間における排気手段の位置をセンサー手段で把握しつつ、センサー手段で管体の閉塞端を検知する閉塞端検知工程を実行することができる。
【0013】
センサー手段としてテレビジョンカメラ(以下、カメラと表記することがある)等のイメージセンサーを使用すれば、管内空間の状態を映像モニタによって視覚的に把握することができる。従って、管体へのセンサー手段および排気手段の挿入を遠隔操作で容易に行うことができ、またそれらが閉塞端まで到達したこと等の把握も容易になる。
【0014】
閉塞端検知工程の後、管体の閉塞端において、例えば遠隔操作によって排気手段をセンサー手段から分離することで排気手段の端部を管体の閉塞端に位置づける排気手段分離工程が実行される。その後、センサー手段を管体から退避させるセンサー退避工程が実行される。
【0015】
また、本管と管体との接続部に型枠を設置することで、型枠が有する閉塞面で管体の一端を閉塞する型枠設置工程が実行されて、充填材を管内空間に充填したときに、本管と管体との接続部から充填材が流出することを防止する。ここで排気手段は、型枠を挿通する等して管内空間とその外部との間を連通している。
【0016】
型枠設置工程の後、管内空間に充填材を充填する充填工程が実行される。この工程で充填材が管体の一端側から閉塞端へと充填されていくと、管内空間に充満していた空気が、管体の閉塞端に位置づけられた排気手段の端部から外部(本管内空間)へと排気される。従って、管体の閉塞端まで充填材を円滑に充填することができる。
【0017】
ところで、充填材が管体の閉塞端まで充填されると、充填材は排気手段を経て管体外部へと流出し始める。そうすると、排気手段の本管側に充填材が流下するから、この流下を検知することで、管内空間の充填完了を検知することができる(充填完了検知工程)。
【0018】
ここで、排気手段が光透過性素材で形成されたものであれば(例えば、略透明の素材で形成された排気管等であれば)、型枠近傍の本管側において、排気手段の色等の変化をセンサー手段によって監視することで、管内空間の充填が完了したことを検知することができる。なお充填完了を検知するセンサー手段は、管体から退避したセンサー手段(第1のセンサー手段)であってもよいし、それとは別のセンサー手段(第2のセンサー手段)であってもよい。
【0019】
かかる管体の充填方法を実施するための充填装置は、管体の一端から管体に挿入されて管体の閉塞端を検出するためのセンサー手段と、センサー手段とともに管体の閉塞端に挿入される排気手段と、排気手段をセンサー手段に着脱自在に装着する着脱手段と、本管と管体との接続部に設置される型枠と、管内空間に充填する充填材を収容する充填手段と、センサー手段、排気手段および吸着装置を本管内から管体内に挿入するための第1の管内作業手段と、型枠および充填手段を本管内において搬送等するための第2の管内作業手段とを有している。
【0020】
ここで、センサー手段は、例えばカメラ等のイメージセンサーであり、排気手段は、例えば光透過性を有する素材で形成された排気管であり、着脱手段は、例えば排気手段側が有する吸盤である。この吸盤は、排気管の端部に配設されて、排気管内の負圧でセンサー手段の筐体に吸着するようになっている。従って、排気管内の圧力を負圧から周囲の気圧へと変化させることで、吸盤をセンサー手段の筐体から分離することができる。確実な分離を実現するために、排気管内の圧力を周囲の気圧より若干高めにしてもよい。
【0021】
型枠は、例えば本管と管体との接続部において、本管の内周の少なくとも一部に接して管体の一端を閉塞することができる閉塞面を有するものである。第1の管内作業手段は、本管内を走行等して、センサー手段、排気手段および吸着装置等を本管内から管体内に挿入することができる、例えば遠隔操作される管内作業ロボットである。第2の管内作業手段は、本管内を走行等して、型枠、排気手段および充填手段等を本管内において搬送等することができる、例えば遠隔操作される管内作業ロボットである。第1の管内作業手段と、第2の管内作業手段とは、別個の管内作業ロボットであってもよい。あるいは同一の管内作業ロボットが、第1の管内作業手段および第2の管内作業手段として機能するものであってもよい。
【0022】
また第1の管内作業手段として機能する管内作業ロボットは、1台であってもよく、2台以上であってもよい(第2の管内作業手段についても同様)。なお管内作業ロボットは、排気手段に装着されるセンサー手段(第1のセンサー手段)とは別のセンサー手段(第2のセンサー手段)を有していてもよい。第2のセンサー手段は、管内作業ロボットが管内を走行するとき、あるいは型枠を本管と管体との接続部に設置するとき等に使用することができる。
【0023】
充填手段は、例えば型枠を貫通した充填管を経由して充填材を管内空間に充填するものであり、典型的には充填材を収容する容器であり、容器から充填材を圧送するためのピストン、およびピストンを駆動する圧縮空気が圧送されるパイプ等を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明にかかる管体の充填方法および充填装置によれば、管体が長い、または屈曲している等の場合であっても、管内空間に挿入した排気手段を閉塞端まで確実に到達されることができるから、排気手段によって管内空間に充満した空気を排出して、管内空間を余すことなく充填材で充填(閉塞)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる管体の充填方法および充填装置の一実施例を説明するための管体の断面概略構造を示す図である。
【図2】本発明にかかる管体の充填において使用される管内作業ロボットの構成の一例を示す図である。
【図3】本発明にかかる管体の充填において使用されるセンサー手段および排気手段の概略外観構成の一例を示す図である。
【図4】本発明にかかる管体の充填において使用される型枠の一例の概略斜視図である。
【図5】図4に示す型枠を略円筒形状に折り曲げたときの概略斜視図である。
【図6】本発明にかかる管体の充填において使用される充填手段の一例の概略側面構成図である。
【図7】本発明にかかる管体の充填におけるセンサー手段と排気手段の挿入工程、および閉塞端検知工程を説明するための図である。
【図8】本発明にかかる管体の充填における充填工程を説明するための図である。
【図9】本発明にかかる管体の充填における充填完了検知工程を説明するための図である。
【図10】本発明にかかる管体の充填装置における着脱手段の変形例の断面概略構成例を示す図である。
【図11】下水道施設における、使用されなくなった取り付け管と、それが接続された本管の断面概略構造の一例を示す図である。
【図12】図11に示す、使用されなくなった取り付け管を、従来の方法で充填したときの本管および取り付け管の断面概略構造の一例を示す図である。
【図13】図11に示す、使用されなくなった取り付け管を、他の従来の方法で充填したときの本管および取り付け管の断面概略構造の一例を示す図である。
【図14】図11に示す、使用されなくなった取り付け管が屈曲部を有したものである場合において、図13に示す他の従来の方法で充填したときの、本管および取り付け管の断面概略構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明にかかる管体の充填方法および充填装置について説明する。
【実施例】
【0027】
図1に示すように、本発明にかかる管体の充填方法によって充填される取り付け管20は、その一端20aが本管10と取り付け管20の接続部11において本管10に接続され、その閉塞端20b側が土砂等によって閉塞されており、取り付け管20の一端20aと閉塞端20bとの間に形成された管内空間20sが本管内空間10sと連通している。充填は、図2(a)および(b)に示す管内作業ロボットである第1の管内作業手段40Aおよび第2の管内作業手段40B等を使用して行われる。
【0028】
<第1の管内作業手段、第1のセンサー手段、排気手段、着脱手段等>
第1の管内作業手段40Aは、本体41、機材搭載部42、複数の駆動輪43、および複数のローラー44を有しており、さらに制御ケーブル45が接続されて地上の作業員によって遠隔操作されて、本管10の内部を自在に移動することはもとより、種々の作業を行うことができ、また第1のセンサー手段である子カメラ30(図3(a))を、排気手段である排気管35(図3(b))とともに取り付け管20に挿入することができる。
【0029】
子カメラ30は、筐体30aの前部に窓30bを有し、窓30bから入射した映像を電気信号に変換して、駆動ケーブル46a(図2(a)参照)を経由して地上に伝送する。また子カメラ30は、窓30bの内側に例えば発光ダイオードによる投光器を有して、窓30bの前方に光を照射することができる。なお子カメラ30は、窓30bにワイパーを備えてもよい。
【0030】
排気管35は、例えば、可撓性を有する略透明な素材で形成されており、その一端35aと他端(端部)35bとの間には、螺旋形状の巻き癖が形成されていることが望ましい(その理由については後述する)。排気管35の他端35bは、着脱手段である吸盤37によって子カメラ30の筐体30aの側面に着脱自在に装着される。
【0031】
第1の管内作業手段40Aのローラー44は、子カメラ30を制御するための駆動ケーブル46aを、第1の管内作業手段40Aの前後方向(図2(a)中のX方向)に移動自在に保持している。第1の管内作業手段40Aの前部に装着された駆動方向制御手段46bは、遠隔操作で制御されて、適度な可撓性と剛性を有する駆動ケーブル46aの移動方向を上下左右に自在に制御することができる(駆動ケーブル46aおよび駆動方向制御手段46bは子カメラ30の遠隔操作手段46を構成している。)。従って第1の管内作業手段40Aは、子カメラ30および子カメラ30に装着された排気管35を、それらの移動方向を自在に制御しながら、取り付け管20に挿入等することができる。
【0032】
また第1の管内作業手段40Aは、その前部に配設された機材搭載部42に、第2のセンサー手段である親カメラ31(その構成は子カメラ30と同一若しくは類似している)を装着している。親カメラ31は、その撮像方向が遠隔操作されて、第1の管内作業手段40Aの走行前方を撮像できることはもとより、管内周壁方向(横方向)を撮像でき、さらには斜め後方も撮像できる。従って、第1の管内作業手段40Aの走行状況はもとより、その作業状況等の映像を地上に伝送することができる。
【0033】
<第2の管内作業手段、型枠、充填手段等>
第2の管内作業手段40Bは、第1の管内作業手段40Aと同様に構成され、型枠50、充填手段60および排気管35等を搬送することができる(第2の管内作業手段40Bも親カメラ31(図示せず)を搭載している。)。
【0034】
型枠50(展開図を図4に示す)は、可撓性を有する略長方形状の閉塞面51、および可撓性を有する2つのバンド52を有している。閉塞面51は、その一端部51aにおいて、2つのバンド52の一端部52aを、図4中の矢印Y方向に、それぞれ摺動自在に保持する摺動保持部51cを有しており、その他端部51bにおいて、2つのバンド52の他端部52bを、それぞれ係止する係止部51dを有している。摺動保持部51cおよび係止部51dは、閉塞面51の裏面51rに配設されている。また閉塞面51は、その略中央部に排気管挿通孔53、および充填材注入孔54を有しており(充填材注入孔54は閉塞面51を貫通している)、バンド52には、一端部52a側と他端部52b側との間にギヤ部52gが形成されている。
【0035】
型枠50(図5)は、2つのバンド52の他端部52bを閉塞面51の係止部51dに係止した後に、閉塞面51の裏面51rが内面側になるように閉塞面51および2つのバンド52を曲げて、2つのバンド52の一端部52aを摺動保持部51cに挿入する(図4に示す型枠50ではバンド52のギヤ部52gが相対するように挿入する)ことで組み上げられる。
【0036】
かくして略円筒形状に折り曲げられた型枠50は、第2の管内作業手段40Bの機材搭載部42を覆うようにして搭載され、また2つのバンド52のギヤ部52gが、機材搭載部42が有する型枠駆動装置(図示せず)のギヤに噛み合わされる。この型枠駆動装置でバンド52を駆動することで、略円筒形状に折り曲げられた型枠50を縮径し、または拡径することができる。
【0037】
図2(b)に示すように排気管35は、閉塞面51に挿通されて、その一端35aは、閉塞面51の裏面51r側(型枠50の内側)においてカプラー32によって吸気管36と着脱可能に連結され、その他端35b側は、閉塞面51の表面51s側(型枠50の外側)において吸盤37によって子カメラ30に着脱自在に装着され、排気管35、吸気管36、駆動テーブルにそって(平行)移動する。吸気管36に連結された排気管35は、ローラー44によって、第2の管内作業手段40Bの前後方向(図2(b)中のX方向)に移動自在に保持され、また排気管35に負圧を供給することで、吸盤37を子カメラ30に吸着させることができる。
【0038】
充填手段60(図6)は、充填材70を収容する容器部61および充填管62を有しており、圧縮空気を供給する圧送管63が接続された状態で第2の管内作業手段40Bに搭載され、充填管62が型枠50の内側から充填材注入孔54に連結される。かくして、充填手段60は、圧縮空気によって作動するピストン(図示せず)で、充填材70を充填管62に送出することができる。なお充填手段60は、充填管62だけで構成されてもよく、この場合には、地上から圧送等された充填材70が充填管62を経由して充填材注入孔54に供給される。
【0039】
<取り付け管の充填>
取り付け管20の充填に先立ち、遠隔操作された管内作業ロボット等によって、本管10、接続部11および取り付け管20の内部状況の調査はもとより、それらの破損個所の補修を行っておくことが望ましい。
【0040】
第1の管内作業手段40Aおよび第2の管内作業手段40Bを本管内に進入させる際には、第1の管内作業手段40Aが子カメラ30を駆動ケーブル46aの先端に装着し、また第2の管内作業手段40Bが、本管10の内径よりも縮径させた型枠50、および充填手段60を装着する。型枠50は、閉塞面51に排気管35が挿通されており、排気管35は、吸気管36から負圧が加えられて、先端35bに配設された吸盤37が子カメラ30に吸着している。
【0041】
第1の管内作業手段40Aおよび第2の管内作業手段40Bは、マンホール(図示せず)から本管10内に搬入され、接続部11近傍まで走行して、例えば接続部11の下流側に第1の管内作業手段40Aが、上流側に第2の管内作業手段40Bが位置づけられる(図1)。なお第1の管内作業手段40Aおよび第2の管内作業手段40Bは、それぞれ別のマンホールから本管10内に搬入される。
【0042】
<挿入工程>
挿入工程は、次のように実行される。遠隔操作された第1の管内作業手段40Aが、接続部11から、駆動ケーブル46aの先端に装着した子カメラ30を排気管35とともに取り付け管20(例えば内径150mm〜200mm、長さ4メーター)内に挿入する(図1)。より具体的には、第1の管内作業手段40Aが、ローラー44を回転駆動することで、駆動ケーブル46aを前後方向に移動させ、また駆動方向制御手段46bによって駆動ケーブル46aの移動方向を左右上下に制御することで、駆動ケーブル46aの移動を制御する。例えば、図1に示すように、取り付け管20に屈曲部20c(もしくは破損箇所)があっても、作業員は、子カメラ30の映像によって、屈曲部20cにおける駆動ケーブル46aの通過に適した部位を知ることができる。
【0043】
こうして子カメラ30および排気管35が、取り付け管20に挿入される。このとき排気管35が螺旋形状の巻き癖(取り付け管20の内径よりもある程度大きい直径の巻き癖であることが望ましい)を有していれば、取り付け管20に挿入された排気管35は、拡径しようとして取り付け管20の内周面20dに接するから、取り付け管20内から落下し難くなる。該挿入工程によれば、取り付け管20が小径で長いものであっても、排気管35の他端35bおよび子カメラ30を、取り付け管20の閉塞端20bまで到達させることができる。
【0044】
なお子カメラ30に替えて、例えば障害物の有無および障害物との距離を検知することができるセンサー手段等を使用してもよい。そうすれば、取り付け管20内の障害個所等を避けつつ排気管35を挿入することができる。
【0045】
<閉塞端検知工程>
閉塞端検知工程は、次のように実行される。図1に示すように、取り付け管20内に挿入された排気管35が取り付け管20の閉塞端20bに到達したことを、作業員は、子カメラ30から伝送された映像によって知ることができる。
【0046】
<排気手段分離工程>
排気手段分離工程は、次のように実行される。閉塞端検知工程が実行された後、吸気管36への負圧の供給を停止することで、または吸気管36内の気圧が取り付け管20内よりも若干高くなるようにすることで、吸盤37を子カメラ30から離脱させる。かくして排気管35の他端35bを取り付け管20の閉塞端20bに位置づけることができる。ここで排気管35の他端35bは吸盤37を介して開口しているから、排気管35の内部が管内空間20sと連通したことになる。
【0047】
<センサー退避工程>
センサー退避工程は、次のように実行される。排気手段分離工程が実行された後、駆動ケーブル46aの制御によって、駆動ケーブル46aおよび子カメラ30が、接続部11に向け退避し、さらに本管10内へと退避する。このとき作業員は、子カメラ30からの映像を監視することで、排気管35の他端35bが取り付け管20の閉塞端20bに正しく位置づけられていること、および駆動ケーブル46aおよび子カメラ30の本管10内への退避完了を知ることができる。なお、センサー退避工程が完了した後、第2の管内作業手段40Bが接続部11に移動できるように、必要に応じて、第1の管内作業手段40Aを接続部11から離してもよい。
【0048】
<型枠設置工程>
型枠設置工程は、次のように実行される。センサー退避工程が実行された後、図7に示すように、第2の管内作業手段40Bが接続部11へと移動する。このとき第2の管内作業手段40Bに搭載した親カメラ31によって、第2の管内作業手段40Bと接続部11との位置関係等を知ることができる(なおこの位置関係は、接続部11近傍に停止している第1の管内作業手段40Aの親カメラ31(または子カメラ30)の映像によって知ることもできる。)。
【0049】
接続部11への第2の管内作業手段40Bの移動が完了すると、機材搭載部42を制御することで、型枠50の閉塞面51の中央領域を接続部11の開口と相対する位置に位置づけことができる。さらに縮径していた型枠50を拡径させることで、本管10の内径まで型枠50を拡径させて、型枠50を本管10の内周面10aにしっかりと位置づけることができ、また型枠50の閉塞面51によって接続部11を塞ぐことができる(図7は、型枠50が接続部11を塞いだ状態を示している。)。
【0050】
<充填工程>
充填工程は、次のように実行される。型枠設置工程が実行された後、例えば、接続部11から第1の管内作業手段40Aが若干離れるように移動した後、第2の管内作業手段40Bが接続部11に近づく(図8)。
【0051】
遠隔操作された第2の管内作業手段40Bは、充填手段60から、充填管62および充填材注入孔54を経由して、充填材70(例えば泡モルタル)を管内空間20sに充填する。管内空間20sに充填された充填材70の上面70sは、充填が進むにつれて上昇する。すると管内空間20sに充満していた空気が排気管35の他端35bを経由して管内空間20sの外部へと排出される。
【0052】
充填工程実行時に、排気管35と吸気管36とがカプラー32によって連結されているときには、管内空間20sに充満していた空気は吸気管36を経由して、地上等に排出される。排気管35と吸気管36とが切り離されているときには(充填工程実行時にカプラー32の連結が解除されているときには)、管内空間20sに充満していた空気は排気管35を経由して本管内空間10sに排出される。いずれにしろ管内空間20sの空気は、排気管35を経由して排出される。充填材70の充填中に圧縮されることはない。取り付け管20の閉塞端20bまで充填材70を充填することができる。
【0053】
かくして取り付け管20を充填材70によって充填した後、充填材70を固化させることで、取り付け管20の管内空間20sを余すことなく閉塞することができる。
【0054】
<充填完了検知工程>
取り付け管20の管内空間20sに余すことなく充填材70が充填されたことを検知するための充填完了検知工程を図9で説明する。
【0055】
先ず、排気管35と吸気管36とを連結していたカプラー32の連結が解除されている場合について説明する。排気管35は、その一端35aが型枠50の近傍に位置している。取り付け管20の管内空間20sが余すことなく充填材70によって充填されると、充填材70が排気管35の他端35bに流入し排気管35内を流下する。
【0056】
この流下した充填材70が排気管35の一端35a近傍に達したことを、または流下した充填材70が排気管35の一端35aから流出したことを、第2の管内作業手段40Bのカメラによって検知することで、取り付け管20の管内空間20sに余すことなく充填材70が充填されたことを検知することができる。第1の管内作業手段40Aの親カメラ31が近傍にあるときには該カメラ31によってかかる検知を行うこともできる。
【0057】
次に、排気管35と吸気管36とを連結していたカプラー32の連結が維持されている場合を図8を参照して説明する。充填材70が、取り付け管20の管内空間20sに余すことなく充填されたときには、充填材70が排気管35を流下し始める。排気管35の一端35aは、型枠50の閉塞面51の裏面51r側に位置しているから、排気管35を流下した充填材70の第2の管内作業手段40Bによる作業を親カメラ31によって検知することができる。
【0058】
<充填後>
充填材70の充填が完了し、充填材70が固化した後に型枠50を接続部11から取り外す場合には、型枠50は、第2の管内作業手段40Bの機材搭載部42によって縮径されたのち、本管10の外部に搬出される。さらに管内作業ロボット等によって、接続部11における充填材70のバリの切削等の仕上げを行ってもよい。
【0059】
<変形例>
図10は着脱手段の変形例である。着脱手段38に着脱自在に装着される排気管35は、その他端35b近傍に複数の通気孔35cが設けられており(通気孔35cは、排気管35の長さ方向および周面35sの周回方向に複数設けられている)、排気管35の他端35bと通気孔35cとの間の内部領域には、磁性体35dが固着等されている。
【0060】
着脱手段38は、電磁石39を内蔵した着脱手段本体38a、および電気ケーブル38bを有している(電気ケーブル38bは着脱手段38の本体38aを子カメラ30に接続するとともに電磁石39を駆動するケーブルである)。着脱手段本体38aは、排気管35の内径より若干小さい直径を有する円筒形状をなしている。
【0061】
接続ケーブル38bを子カメラ30に接続して、着脱手段本体38aを排気管35の他端35b部に挿入し電磁石39を駆動すれば、子カメラ30に排気管35の他端35bを電磁的に連結することができる。こうして連結した子カメラ30および排気管35を挿入工程において取り付け管20に挿入してもよい。そうすれば排気手段分離工程において、電磁石39の駆動を停止することで、排気管35を子カメラ30から分離して、排気管35の端部35bを取り付け管20の閉塞端20bに位置づけることができる。ここで確実な分離を行うために、磁性体35dとして帯磁したものを使用し、電磁石39の駆動電流の極性を制御することで、電磁石39と磁性体35dとの吸着、反発を制御してもよい。
【0062】
上述した本発明にかかる管体の充填方法および充填装置は、前記実施例に限定されるものではなく、それらの趣旨を変更することなく、適宜変形して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかる管体の充填方法および充填装置は、工業的に使用することができるから、また商業的取引の対象とすることができるから、本発明は経済的価値を有して産業上利用することができる発明である。
【符号の説明】
【0064】
10 本管
11 (本管と管体との)接続部
20 取り付け管(管体)
20a 取り付け管(管体)の一端
20b 取り付け管(管体)の閉塞端
20s 管内空間
30 子カメラ(センサー手段)
35 排気管(排気手段)
35a 排気管(排気手段)の一端
35b 排気管(排気手段)の他端(端部)
37 吸盤(着脱手段)
40A 第1の管内作業手段
40B 第2の管内作業手段
50 型枠
51 型枠の閉塞面
60 充填手段
70 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一端が本管に接続され、前記一端と相対する端部である閉塞端側が閉塞された管体の、前記一端から前記閉塞端にわたって形成された管内空間を充填する管体の充填方法であって、
前記管体の一端側から、センサー手段と前記管内空間に充満した空気を排気するための排気手段とを挿入する挿入工程と、
前記センサー手段で前記管体の閉塞端を検知する閉塞端検知工程と、
前記排気手段を前記センサー手段から分離して、前記排気手段の端部を前記管体の閉塞端に位置づける排気手段分離工程と、
前記センサー手段を前記管体から退避させるセンサー退避工程と、
前記本管と前記管体との接続部に型枠を設置して前記管内空間を型枠で閉塞する型枠設置工程と、
前記管内空間に充填材を充填する充填工程とを有することを特徴とする管体の充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管体の充填方法において、
前記充填材が、前記排気手段の端部に流入したことを検知することで前記管内空間の充填完了を検知する充填完了検知工程を、更に有することを特徴とする管体の充填方法。
【請求項3】
前記センサー手段と前記排気手段とを、着脱手段によって着脱自在に装着することを特徴とする請求項1に記載の管体の充填方法。
【請求項4】
前記センサー手段として、テレビジョンカメラを使用することを特徴とする請求項1に記載の管体の充填方法。
【請求項5】
前記排気手段として、少なくともその一端側が略透明の素材で形成された排気手段を使用することを特徴とする請求項1に記載の管体の充填方法。
【請求項6】
前記型枠が閉塞面を有して、この閉塞面が、前記接続部において、前記本管の内周の少なくとも一部に接することで、前記接続部を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の管体の充填方法。
【請求項7】
その一端が本管に接続され、前記一端と相対する端部である閉塞端側が埋設された管体の、前記一端から前記閉塞端にわたって形成された管内空間を充填する管体の充填装置であって、
前記管体の一端から前記管体に挿入されて前記管体の閉塞端を検出することができるセンサー手段と、
前記センサー手段とともに前記管体に挿入される排気手段と、
前記排気手段を前記センサー手段に着脱自在に装着する着脱手段と、
前記本管と前記管体との接続部に設置される型枠と、
充填管から、前記管内空間に充填する充填材を収容する充填手段と、
前記排気手段を装着した前記センサー手段を前記本管内から前記管体内に挿入するための第1の管内作業手段と、
前記型枠、前記排気手段および前記充填手段を本管内において搬送するための第2の管内作業手段とを有することを特徴とする管体の充填装置。
【請求項8】
前記センサー手段がテレビジョンカメラであることを特徴とする請求項7に記載の管体の充填装置。
【請求項9】
前記排気手段の少なくともその一端側が略透明の素材で形成された排気手段であることを特徴とする請求項7に記載の管体の充填装置。
【請求項10】
前記型枠が、前記接続部において、前記本管の内周の少なくとも一部に接して前記接続部を閉塞するための閉塞面を有することを特徴とする請求項7に記載の管体の充填装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−14885(P2013−14885A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146689(P2011−146689)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(509312813)流域計画株式会社 (2)
【Fターム(参考)】