説明

管体固定具

【課題】ビル等の電気工事において、電線管等の管体を容易かつ適切に取り付け固定する。
【解決手段】管体Hの長手方向とは交差した開口部1aを形成して対向する一対の係止片1bを備えた架台1と、帯状の固定部材2の両先端部の両外側縁に、係止片1bの内側面に当接して管体Hを保持可能な爪部2aを有するので、作業員は固定部材2両端部を開口部1aへの押し込み、爪部2aを係止片1bの裏面に容易かつ確実に取り付け固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有して、電線管等の管体を跨ぎ得るように湾曲させた帯状の固定部材を架台に係止させて固定する管体固定具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル内における電気工事等においては、多数本の配線ケーブルを貫通させた電線管等の管体を建造物の床や柱等に固定することで配線ケーブルの敷設が行われることがある。
【0003】
電線管等の管体を床や柱等に固定するためには、ベース部材となる管体取り付け用の架台を建物の床や柱等にまず固定し、その取り付けた架台上に管体をサドル状の固定部材を跨がせて、ドライバ(driver)を操作して、その固定部材の両端部を架台にビス(ねじ)止め固定する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−106279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような管体に覆い被せたサドル状あるいは帯状の固定部材の両端部で架台にビス止め固定する従来の管体固定具では、作業員が固定部材の一方の端部を架台にビス止め固定する場合はともかくとして、残りの他方の端部を架台にビス止め固定しようとすると、管体の反発力を抑えつつドライバ操作をおこなわなければならないので、取り付け作業が面倒であった。
【0005】
また、管体が架台に固定された後は、管体自体が止め具であるビスに対し、振動等によりビスが緩む方向に力を作用するので、ビスの緩みにより、管体を締め付け一度固定した固定部材が脱落する恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造で、作業員が管体を容易にまた確実に架台に取り付け固定が可能で、耐久性の良好な管体固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、弾性を有して、管体を跨ぎ得るように湾曲させた帯状の固定部材と、この固定部材が前記管体を跨いだ両先端部を係止して前記管体を保持する架台とからなる管体固定具において、前記架台は、前記管体の長手方向とは交差した開口部を形成して対向する一対の係止片を有し、前記固定部材は、前記両先端部の両外側縁に、前記一対の係止片の内側面に当接して前記管体を保持可能な爪部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明に係る管体固定具は、架台が、管体の長手方向とは交差した開口部を形成して対向する一対の係止片を有し、また固定部材は、両先端部の両外側縁に、一対の係止片の内側面に当接して管体を保持可能な爪部を有するので、作業員は、固定部材両端部を開口部への押し込み、爪部を係止片の裏面に係止させるという簡単に操作で管体管を取り付け固定できる。
【0009】
また、本発明の管体固定具は、固定部材の爪部が係止片の内側面に係止する構造からなるので、固定部材の緩みによる管体の外れを的確に防ぐことができ、固定された管体の安定化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による管体固定具の一実施例を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明による管体固定具の一実施例を示した分解斜視図で、図2(a)は図1に示した管体固定具が管体を固定した状態での正面図、図2(b)は図2(a)の平面図、図2(c)は図2(a)の右側面図、図3は図2(c)の要部拡大図である。
【0012】
すなわち、図1ないし図3において、配管等の管体Hを保持して不図示のビル等の建物内に敷設するための架台1は、図示のように管体Hの長手方向とは交差した断面U字状に形成され、開口部1aを形成して、対向した一対の係止片1b,1bを備えている。
【0013】
一方、湾曲方向に弾性を有し、管体Hを跨ぐように形成された帯状の固定部材2は、長手方向の先端部の両側に、係止片1b,1bの内側面に当接して管体Hを保持する爪部2a,2aを有している。
【0014】
また、特に図3に示したように、固定部材2は、爪部2a,2aに対向しつつ、爪部2a,2aとともに架台1の係止片1b,1bを挟持可能な舌片2b,2bを、スリット舌片2ba,2baにより形成されている。
【0015】
また、固定部材2は、長手方向の先端部に向けて広がり開口する切り欠き2cを有するとともに、長手方向の中央部には図示のように、外側に突設したU字状の折り曲げ部2dが形成されている。なお、固定部材2の切り欠き2c形成では、図3に示したように、切り欠き2c形成の先端部から左右の外側縁において、爪部2a,2aにかけてテーパー状(傾斜状)に形成されていて、先端部を開口部1bに押し込み挿入しやすい形状とされている。
【0016】
上記構成の管体固定具において、作業員が管体Hを架台1に取り付け固定するときには、弾性を有して湾曲した固定部材2を押し広げつつ、架台1に載置した管体Hに押し込み、長手方向の両先端部を架台1の開口部1a内に押し込み挿入し、爪部2aが係止片1bの内側面に当接係止するように取り付ける。
【0017】
このとき、図2(c)及び図3に示したように、それぞれスリット2ba形成により設けられた舌片2b,2bは、爪部2aとともに係止片1bを強く挟み込んで安定し、その保持力により、管体Hが架台1の長手方向に移動するのを防止する。また、管体Hが架台1の長手方向への移動をより防ぐために、係止片1bに接触する舌片2b,2b及び爪部2aの各面にいわゆるローレット目を形成させ、摩擦抵抗が大となるようにしても良い。
【0018】
また、図1及び図2に示したように、固定部材2の中央部(すなわち頂部)は、外側にU字状に折り曲げ形成したので、管体Hへの押さえ込みに際し、弾性力により、管体Hに対する押圧力が維持継続されるように形成されている。
【0019】
また、上記構成において、固定部材2の両先端部には、長手方向の先端部に端部辺に向けて広がり開口する切り欠き2cを設けたので、作業員が先端部を架台1の開口部1aに押し込み、爪部2aが係止片1bに係止させるとき、押し込み操作により、切り欠き2cの開口が狭まるので、作業員の固定部材2の架台1に対する取り付け操作が容易である。
【0020】
以上説明のように、この実施例に係る管体固定具によれば、簡単な構成により、作業員は管体固定を容易に行うことができるととともに、爪部の係止片への係止により、安定した管体固定を実現できる。
【0021】
なお、管体Hには銅製や塩化ビニル製が多く、また架台1は例えばステンレス製とすることができ、固定部材2は、防食効果の高い合成樹脂製とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による管体固定具の一実施例を示した分解斜視図である。
【図2】図2(a)は図1に示した管体固定具の正面図、図2(b)は図1に示した管体固定具の平面図、図2(c)は図1に示した管体固定具の右側面図である。
【図3】図2(c)の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 架台
1a 開口部
1b 係止片
2 固定部材
2a 爪部
2b 舌片
2ba スリット
2c 切り欠き
2d 折り曲げ部
H 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有して、管体を跨ぎ得るように湾曲させた帯状の固定部材と、この固定部材が前記管体を跨いだ両先端部を係止して前記管体を保持する架台とからなる管体固定具において、
前記架台は、前記管体の長手方向とは交差した開口部を形成して対向する一対の係止片を有し、
前記固定部材は、前記両先端部の両外側縁に、前記一対の係止片の内側面に当接して前記管体を保持可能な爪部を有する
ことを特徴とする管体固定具。
【請求項2】
前記固定部材は、前記係止片の外側面に当接し、前記爪部とともに係止片を挟持可能な舌片を有することを特徴とする請求項1に記載の管体固定具。
【請求項3】
前記固定部材は、長手方向の先端部に向けて広がり開口する切り欠きを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管体固定具。
【請求項4】
前記固定部材は、外側に向けて突設させたU字状の折り曲げ部を中央部に有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の管体固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−61358(P2008−61358A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234293(P2006−234293)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】