説明

管式熱交換器とその製法

【課題】
本発明の目的は、温排水・工業用薬液・医薬用液などの流体を熱交換するのに適した管式熱交換器を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、伝熱管、胴体が軟質の高分子化合物とした二重管式熱交換器を、渦巻状など自在な形状に結束した熱交エレメントとし、この熱交エレメントを水平集合や垂直集合に共用できる構造の筐体に格納した管式熱交換器とし、流体の熱容量に応じこの管式熱交換器を段階的に増加させながら任意の形態の集合体に構築することが出来ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温熱量の流体と低温熱量の流体を直接混合させないで、伝熱面を介して熱移動させることを主体とした熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宿泊施設や集合住宅などから出る温排水、温泉施設から出る温泉水や温排水、温水プールや浴場から出される温排水など従来未使用で捨てられていた熱エネルギーを有効に活用できる低廉な熱回収システムが要望されている。この熱回収システムの主体をなす熱交換器に関するものである。
【0003】
医療装置分野や半導体関連産業分野では流体の純度を維持しながら微小な温度管理ができ、軽量で流体の特質を損なわない低廉で多様性のある熱交換システムが要望されている。この熱交換システムの主体をなす熱交換器に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−88173号公報(実願昭60−178734)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された簡易型フッ素樹脂製熱交換器では、外部配管と内管が一体化されて外部配管の途中に簡単に取付けられるもので、熱交換容量が限られた範囲の場合に適用できるが、配管径が大きくなり流体が大量流入する場合には不適合である。またこの二重管式熱交換器は内管または外管は硬質の樹脂材で剛性を有するものとなっているため、熱交換器の形状が制約されるものであり、一定容量を持った熱交換器を自在な形状に成型し台数増加で容量の増大に対処するなどの方策がとれにくい。
【0006】
本発明の目的は、温排水・工業用薬液・医薬用液などの流体を熱交換するのに適した管式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、伝熱管、胴体が軟質の高分子化合物とした二重管式熱交換器を渦巻状など自在な形状に結束した熱交エレメントとし、この熱交エレメントを水平集合や垂直集合に共用できる構造の筐体に格納した管式熱交換器とし、流体の熱容量に応じこの管式熱交換器を段階的に増加させながら水平・垂直の集合体に構築することが出来ることを特徴とする。
【0008】
前記管式熱交換器は、伝熱管を可撓性のある軟質の高分子化合物(例えば、ポリプロピレン系のチューブ、架橋ポリエチレン系のチューブ、その他)の可撓性のある軟質の高分子化合物であり、この伝熱管は流体側から与えた脈動圧や圧力変動によって膨張・収縮による変形が容易に生じやすくしたことを特徴とする。
【0009】
前記管式熱交換器は、筐体内面と熱交エレメント外表面との間隙に断熱機能を有する材料を充填したことを特徴とする。
【0010】
前記筐体は、水平集合や垂直集合での運転条件に耐える剛性をもった構造体で、量産化に対応できる必要があるため耐熱性や断熱効果のある硬質の合成樹脂材とすることを特徴とする。
【0011】
前記胴体は、外表面に断熱効果のある可撓性の有る材料で被覆した構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広い分野で使われている熱回収システムの主体となる管式熱交換器を、伝熱管、胴体の材質を熱交換流体の特性に対応した合成高分子化合物を主体とした軟質の種々の管材から選定し、熱交換流体の特性に合わせた安価で軽量な一定の熱交換容量を持った管式熱交換器を量産化できるので、医療装置分野、半導体関連分野、温排水分野や化学プラントなどの分野の管式熱交換器として広い範囲での実用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る管式熱交換器の一部水平方向の断面を有する平面図(a)とその横断面図(b)。
【図2】本発明に係わる管式熱交換器の熱交換エレメントを、二重の渦巻形状に成形する場合を示す平面図。
【図3】本発明に係わる管式熱交換器の熱交換エレメント熱交換エレメントを示す平面図。
【図4】本発明に係わる管式熱交換器を水平方向に集積した場合を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る管式熱交換器の構造を示す一部縦方向に切断した断面平面図(a)とその横断面(b)である。図1に示すように、本実施例の管式熱交換器は、伝熱管1と胴体2が接続チャンバー3に固着された2重管式熱交換器で、この2重管式熱交換器を渦巻状の形態に造形して組立物とした熱交エレメント(イ)と、この熱交エレメントを収納する筐体10には接続チャンバーが組み込まれる組込部10aと、筐体が水平設置にも適するように剛性を持った底板部10bと、熱交エレメントの中央部を支える突起部10cが設けられている。筐体の組込部10aに熱交エレメントの接続チャンバーに付属する固定台4を固着したのち筐体の蓋板11が取付けられる。
【0015】
本実施例では、伝熱管内を流れる流体は導入管5aより導入され伝熱管1の内面を通って排出管5bに排出される。伝熱管外を流れる流体は導入管6aより導入され胴体2の内面側を通って排出管6bに排出される。この流動状態によって伝熱管内外面で流体の熱交換が行われる管式熱交換器で、流体の特性や熱交換条件に合わせ流体の流れ方向は自在に選定することができる。
【0016】
又、熱交エレメント(イ)の外表面と筐体10の内表面の隙間部12には断熱材や凍結防止材を挿入することもできる。
【0017】
図2は、本発明に係わる管熱交換器の熱交エレメントを、二重の渦巻形状に成型する過程を示す平面図である。胴体2の両端には伝熱管1の管内外面流体の導入と排出を行うための接続チャンバー3を設け、伝熱管と胴体は軟質合成高分子化合物からなる二重管式熱交換器を、巻付け胴7の外面に巻き込んで成形する状態を示す。
【0018】
図3は、本発明に係わる管熱交換器の熱交換エレメントを組立てした状態を示す平面図である。巻付け胴7の外面に巻き込んで成形されたものを網8などによって結束し熱交エレメントに組立てる。この単体状態で耐圧及び気密試験や清浄化作業を行い熱交エレメントの信頼性の確保がされる。
【0019】
図4は、本発明に係わる管式熱交換器を水平方向に集積した場合を示す斜視図である。一定の熱交換容量を持った標準的な管式熱交換器を、要求される熱交換容量にあわせ水平方向に集積した場合の一事例を示し、管式熱交換器に導入される伝熱管内を通る流体は母管21aから流体導入管4aに分配され伝熱管内部を貫流し、排出管4bを流れて母管21bに合流する。胴体内部を通る流体は母管22aより分岐された導入管5aに分配され胴体内部を流れ排出管5bを通り母管22bに合流される。
【0020】
本実施例では、伝熱管の内外面の流体が熱交換器に導入や排出される管路(4a、4b,5a,6bなど)に、これら流体の圧力変動を生じさせる圧力調整器20を設けて伝熱管の内外に流動圧力の変化を生じせしめ、軟質な合成高分子化合物の伝熱管が膨張や収縮などの作用により変径させることにより、伝熱管内外面に生成された付着物が剥離する現象を生じさせて表面生成物を除去する機能が付与されている。このため軟質な合成高分子化合物の伝熱管は表面の汚れが比較的に着きにくい特性を有するが更に伝熱管の変形作用によって防汚機能の向上が図られることを特徴とする。
【0021】
この管式熱交換器は従来の熱交換器と対比して著しく軽量化されると同時に低廉なものとなり、産業界のみならず医療分野では血液や薬液の温度調整用熱交換器、家庭用としては調理用液体の温度調整用熱交換器など新分野への適用拡大が期待できる。
【符号の説明】
【0022】
1 伝熱管
2 胴体
3 管(a導入、b排出)
4 管(a導入、b排出)
5 接続チャンバー
10 筺体(a組込み部、b底板部、c突起部、d組付け孔)
20 圧力調整器
21 母管(a導入、b排出)
22 母管(a導入、b排出)
24 固定金具
イ 熱交エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管を内包する外筒を胴体とし胴体の両端には伝熱管の管内外面流体の導入と排出を行うための接続チャンバーを設け、伝熱管と胴体は軟質合成高分子化合物からなる二重管式熱交換器と、該二重管式熱交換器を自在な任意の形状に結束組立した熱交エレメントと、該熱交エレメントを収納する筐体は水平集合と垂直集合に供用できる機能を備え、熱交換容量に応じて段階的に増減させて集合体に構築することができることを特徴とした管式熱交換器とその製法。
【請求項2】
請求項1において、前記匡体内部面と前記熱交エレメント外表面との間隙に断熱機能を有する材料を充填した構造としたことを特徴とした管式熱交換器。
【請求項3】
請求項1において、前記伝熱管の管内外面を流動する流体の管路に圧力変動を付与する圧力調整器を設け、伝熱管に膨脹・収縮などの変形が強制される機能としたことを特徴とした管式熱交換器。
【請求項4】
請求項1において、前記匡体を集合体に構築し易い剛体で量産化が可能な硬質合成樹脂材としたことを特徴とした管式熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−12888(P2011−12888A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157412(P2009−157412)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(595150663)
【出願人】(509188148)株式会社ナプレ (3)
【Fターム(参考)】