説明

管材料

【課題】接着性および耐塩素水性を有する管材料を提供すること。
【解決手段】管材料は、内層および外層が接着層を介して積層されてなる管材料であって、この内層がフルオロエチレン系樹脂(A)であり、この外層がポリオレフィン系樹脂(B)であり、この接着層が、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び、(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(C)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管材料に関し、特に、耐熱性および耐塩素水性を兼ね備えている管材料であって、配管用等に使用される管材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯システムは環境に優しく安全であり、かつ、高効率で温水を作ることができることが知られている。そのため、ヒートポンプ給湯システムは、エネルギー使用量を大幅に削減し、省エネルギーを推進することができるという観点から、現在、非常に注目されている。
【0003】
例えば特開平8−110060号公報には、ヒートポンプ給湯システムを構成するヒートポンプと貯湯槽とを連結する配管材として、架橋ポリエチレン、ポリブテン、直鎖状低密度ポリエチレン等の可撓性を有する樹脂からなるパイプ(チューブ)が開示されている。しかしながら、架橋ポリエチレン、ポリブテン、直鎖状低密度ポリエチレン等の樹脂からなるパイプは腐食することがなく、可撓性も有するため設計の自由度は高いが、その反面、塩素含有の温水中で長期間使用した場合には、塩素によるクラックを生じるという問題があった。そのため、長期耐久性の面で大きな不安が残る。
【0004】
現在では配管材として主に銅管が用いられている。しかしながら、銅管は高温水下での使用における耐熱性および耐久性には優れているが、可撓性を有さないため施工時の自由度が低く、また、長期使用においては腐食等の問題が生じる場合がある。
【0005】
また、本発明とは用途が異なるが、特開平09−123367号公報には、ガソリンスタンド内埋設管等の燃料輸送管として好適に使用される多層管として、内層がフッ素樹脂、外層がポリオレフィン樹脂層からなり、内層と外層とが熱可塑性エラストマーを介して接着されてなる多層管が開示されている。また、特開平11−207840号公報には、自動車燃料移送用、薬液移送用及び医療用等に好適に使用される多層管状体として、内層がフッ素樹脂、外層がポリオレフィン系樹脂層からなり、内層と外層とが接着剤層を介して接着されてなる多層管状体であって、この接着剤層が一分子中に少なくとも一個の官能基を有するオレフィン系樹脂に該官能基と反応性を有するラジカル重合性単量体を反応させて得られたラジカル重合性オレフィン系樹脂に、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルをラジカル重合させて得られたアクリルグラフト共重合体を主成分とすることが開示されている。しかしながら、これらの多層管では、フッ素樹脂からなる内層とポリオレフィン系樹脂からなる外層との間の接着性が十分ではなく、成形時あるいは使用時において、層間で剥離が生じるため、実用上問題である。
【0006】
特開2006−297843号公報には、含フッ素共重合体の層と、エポキシ基含有エチレン系共重合体又はその組成物の層との積層体を最小積層単位とする積層体が開示されているが、この積層体に関しても十分な層間接着性は得られておらず、実用上十分な技術とは言い難い。
【0007】
【特許文献1】特開平8−110060号公報
【特許文献2】特開平9−123367号公報
【特許文献3】特開平11−207840号公報
【特許文献4】特開2006−297843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、従来技術においては十分な層間接着性を実現することができ、かつ、耐熱性と耐塩素水性を兼ね備えた配管用管材料を提供することは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らはこのような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の管材料は、内層および外層が接着層を介して積層されてなる管材料であって、前記内層がフルオロエチレン系樹脂(A)であり、前記外層がポリオレフィン系樹脂(B)であり、前記接着層が、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び、(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(C)であることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記フルオロエチレン系樹脂(A)はカーボネート変性テトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0012】
また、前記ポリオレフィン系樹脂(B)はエチレン−オクテン共重合体であることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記内層の層厚みの全層中に占める割合は、0.1%以上、10%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分な層間接着性を実現することができ、かつ、耐熱性および耐塩素水性を有する管材料を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の管材料は、内層と外層とが接着層を介して積層されてなる管材料(管材、管状材料)である。この内層は、フルオロエチレン系樹脂(A)を主成分として含む樹脂からなり、外層はポリオレフィン系樹脂(B)を主成分として含む樹脂からなる。本発明において「主成分として含む」とは、樹脂全体の質量を100質量%としたときに、該当する対象物を50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことを意味し、適宜、当該効果を阻害しない範囲内で他の物質を含有していても良い。
【0017】
本発明に用いられるフルオロエチレン系樹脂とは、ポリフルオロエチレン(いわゆるフッ素樹脂)を主成分として含む樹脂である。ここで、「主成分として含む」とは、上記定義と同様であることを意味する。ここでは、含有可能な他の物質として、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるフルオロエチレン系樹脂としては、特に限定されず種々のものを用いることができるが、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフルオロビニリデン−ポリビニリデンフルオロエチレン共重合体(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド共重合体(THV)等が挙げられ、さらには、これらの共重合体および/または混合体も挙げられる。これらの中では、特に、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が、耐塩素水性、機械的特性、加工性等の点から好ましい。
【0019】
また、本発明の内層(構成する樹脂:例えば、フルオロエチレン系樹脂)と、外層(構成する樹脂:例えば、オレフィン・グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートとビニルアセテートとの共重合体)との接着性をさらに向上させるためには、フルオロエチレン系樹脂の重合時に、カーボネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アルデヒド基等の官能基をフルオロエチレン系樹脂に導入することが好ましい。
【0020】
商業的に入手可能なフルオロエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)として、「アフロンCOP」(旭硝子(株)製)、「Tefzel(登録商標)」(デュポン社製)、「ネオフロン(登録商標)ETFE」(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)として、例えば、「ネオフロン(登録商標)FEP」(ダイキン工業社製)、「テフロン(登録商標)FEP」(三井・デュポンフロロケミカル社製)、「ダイニオン(登録商標)FEP」(ダイニオン社製)等を商業的に入手することができる。カーボネート基をフルオロエチレン系樹脂に導入したカーボネート変性ETFEとして例えば「ネフロン(登録商標)RP−4020」(ダイキン工業(株)製)等が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0021】
本発明の管材料では、内層(構成樹脂:例えば、フルオロエチレン系樹脂)の厚みの全層厚み中に占める割合は、0.1%以上、10%以下であることが好ましく、1%以上、8%以下であることがより好ましく、2%以上、6%以下であることが特に好ましい。内層の厚み範囲が、0.1%を下回る場合には、耐塩素水性の向上効果が得られにくく、10%を上回る場合には、管材料の弾性率が低下しやすく、実用上十分であるとは言い難い。
【0022】
本発明においては、フルオロエチレン系樹脂(A)を主成分とする層と、ポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とする層とを接着させるためには、酢酸ビニル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる1種以上と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(以下、「エチレン系共重合体」と称すこともある)(C)を用いることが重要である。
【0023】
上記エチレン系共重合体(C)としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。商業的に入手可能なエチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体としては、「ボンドファースト2B」、「ボンドファースト7B」等が挙げられる。
【0024】
上記エチレン系共重合体(C)は、エチレン成分の含有割合が50質量%以上、95質量%以下であり、好ましくは60質量%以上、85質量%以下である。エチレン成分の含有割合が50質量%以上であれば、管材料の剛性を良好に維持することができ、エチレン成分の含有割合が95質量%以下であれば、テトラフルオロエチレン系樹脂(A)を主成分とする層と、ポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とする層との接着性を十分に発揮することができるので、成形時及び使用時に、層間剥離等を生じることのない管材料を得ることができる。
【0025】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂(B)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、さらには、これらの混合物を用いることもできる。
【0026】
上記ポリエチレン系樹脂としては、密度が0.94g/cm以上、0.97g/cm以下の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、密度が0.92g/cm以上、0.94g/cm以下の中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、密度が0.92g/cm未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独、あるいは、2種類以上の混合物として使用することができる。
【0027】
上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)としては、エチレンと、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。このα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。これらの中では、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いても構わない。
【0028】
上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)は、密度が0.80g/cm以上、0.945g/cm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.85g/cm以上、0.9350g/cm以下、特に好ましくは0.90g/cm以上、0.925g/cm以下の範囲である。密度が0.80g/cm以上であれば管材料の剛性や耐熱性を著しく低下させることがないので、実用上好ましい。
【0029】
また、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)が0.1g/10分以上、15g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上、10g/10分以下であることがさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂のMFRは、均一な厚みの管材料を得るためにその他の層に用いる樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0030】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ジエンゴムなどが挙げられる。
【0031】
上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:2.16kg)が、0.5g/10分以上、15g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上、10g/10分以下であることが特に好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRは、均一な厚みの管材料を得るために他の層に用いられる樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0032】
さらに、ここで用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、エチレン成分の含有割合が50モル%以上、95モル%以下であり、好ましくは60モル%以上、85モル%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることが望ましい。エチレン成分の含有率が50モル%以上であれば、管材料の剛性を良好に維持することができるので好ましい。一方、エチレン成分の含有率が95モル%以下であれば、管材料の剛性や耐熱性を著しく低下させることがないので、実用上好ましい。
【0033】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)が、0.5g/10分以上、15g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上、10g/10分以下であることがさらに好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは均一な厚みの管材料を得るために他の層に用いる樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することが好ましい。
【0034】
上記ポリオレフィン系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒、メタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒等を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、あるいは、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
【0035】
商業的に入手可能なポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂として日本ポリエチレン(株)製の「ノバテック(登録商標)HD」、「ノバテックス(登録商標)LD」、「ノバテックスLL」シリーズ、日本ポリエチレン(株)製の「カーネル(登録商標)」シリーズ、三井化学(株)製の「タフマー(登録商標)A」、「タフマー(登録商標)P」シリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製の「サンテック(登録商標)HD」、「サンテック(登録商標)LD」シリーズ、三井化学(株)製の「HIZEX(登録商標)」、「ULTZEX(登録商標)」、「EVOLUE(登録商標)」シリーズ、宇部興産(株)製の「UBEポリエチレン」、「UMERIT」シリーズ、日本ユニカー(株)製の「NUCポリエチレン」、「ナックフレックス」シリーズ、ダウケミカル社製の「Engage」、「DOWLEX」シリーズ等が挙げられる。
【0036】
また、商業的に入手可能なポリプロピレン系樹脂としては、日本ポリプロ(株)製の「ノバテックPP」、「WINTEC」、三井化学(株)製の「タフマー(登録商標)XR」シリーズ、三井化学(株)製の「三井ポリプロ」シリーズ、住友化学(株)製の「住友ノーブレン」、「タフセレン」、「エクセレンEPX」シリーズ、出光興産(株)製の「IDEMITSU PP」、「IDEMITSU TPO」シリーズ、サンアロマー(株)製の「Adflex」、「Adsyl」シリーズ等が挙げられる。
【0037】
また、商業的に入手可能なポリブテン系樹脂としては、出光興産(株)製の「出光ポリブテン」シリーズ、新日本石油(株)製の「日石ポリブテン」シリーズ、三井化学(株)製の「ビューロン」シリーズ等が挙げられる。
【0038】
商業的に入手可能なエチレン酢酸ビニル共重合体としては、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「エバフレックス(登録商標)」シリーズ、日本ポリエチレン(株)製の「ノバテック(登録商標)EVA」シリーズ等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、内層、外層、接着剤層の各層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
【0040】
次に、本発明の管材料の製造方法について詳細に説明する。
内層と外層とを接着層を介して積層するように、各層を形成する樹脂の各々を押出機に投入し、所定の層構成となる口金にて腑形する。なお、内層を形成する樹脂としては例えばフルオロエチレン系樹脂(A)を、外層を形成する樹脂としてはポリオレフィン系樹脂(B)を、接着層を形成する樹脂としては、例えば、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び、(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(C)を使用する。
【0041】
所定の層構成を形成する際の各層の樹脂温度は、例えば、フルオロエチレン系樹脂(A)では180℃以上、340℃以下が好ましく、ポリオレフィン系樹脂(B)では150℃以上、250℃以下が好ましく、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(C)では180℃以上、250℃以下が好ましい。かかる温度範囲内において、樹脂の組成、添加剤の種類、配合量等を考慮して適宜温度調整することが好ましい。さらに、各層間の融着強度を確実にするために、口金内部における各層合流部の圧力は0.1MPa以上、2.0MPa未満であることが好ましい。また、口金賦形以降のフォーマー、冷却水槽、引取機、切断機、巻取機等の各条件は、特に限定されることなく、適宜調整されることが好ましい。
【0042】
本発明によれば、フルオロエチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との間に優れた接着強度を発現し、長期耐熱性、長期耐塩素水性に優れた管材料を提供することができるため、ヒートポンプ給湯システムにおけるヒートポンプと貯湯槽を連結する配管用管材料として、金属管の代替として広く使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0044】
(1)耐塩素水性
管材料内の温度および塩素濃度を一定に調整可能な耐塩素水性促進試験装置を使用し、管材料(試験片)を保持具に曲げ支持状態で取付けた。この試験片を、温度90℃、有効塩素濃度500ppm、および、流量1L/時間の条件で塩素含有水に曝した後、試験片を目視によって観察し、水泡の有無を調べた。試験片に水泡が発生していないものを記号「○」、水泡が確認されたものを記号「×」で表示した。
【0045】
(2)接着強度
管材料から、長手方向に150mm、長手方向と垂直な方向に15mmの大きさでサンプルを切り出した。サンプルの積層界面を長手方向に50mm剥離してから、引張試験機にて180度方向に引っ張って、引張剥離強度を測定し、接着強度とした。
【0046】
(3)耐圧性
常温(23℃)において、管材料内部を2.5MPaに昇圧し、破壊の有無を観察した。管材料に破壊が生じなかったものを記号「○」、破壊が生じたものを記号「×」で表示した。
【0047】
(4)熱間内圧クリープ性
JIS K6769に基づき、管材料を、95℃、円周応力4.8MPaの条件下において1,000時間保持した後、破壊の有無を目視にて観察し、評価を行った。管材料に破壊が生じなかったものを記号「○」、破壊が生じたものを記号「×」で表示した。
【0048】
(5)臭気
JIS S3200−7の水道器具−浸出性能試験方法に基づき、加熱した水を通水することを目的とした給湯管(最高使用温度90℃)として試験を行い、臭気の有無を確認した。試験後の管材料について、臭気が確認されなかったものを記号「○」、臭気が確認されたものを記号「×」で表示した。
【0049】
実施例で使用されたフルオロエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および、接着性樹脂を以下に記載する。
【0050】
「フルオロエチレン系樹脂」
A−1:カーボネート変性ETFE(ダイキン工業(株)製のネオフロン RP−4020)
【0051】
「ポリオレフィン系樹脂」
B−1:エチレン−オクテン共重合体(ダウケミカル社製のDOWLEX 2344)
B−2:ポリブテン(三井化学(株)製のビューロン P5050)
B−3:直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製のノバテックUE320)
【0052】
「接着層形成樹脂」
C−1:エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体(住友化学(株)製のボンドファースト E)
【0053】
(実施例1)
フルオロエチレン系樹脂としてA−1(カーボネート変性ETFE)を使用し、ポリオレフィン系樹脂としてB−1(エチレン−オクテン共重合体)を使用し、接着層を形成する樹脂としてC−1(エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体)を使用した。A−1をアイ・ケー・ジー(株)製のφ25mm内層用単軸押出機に、B−1をクラウスマッファイ社製のφ45mm外層用単軸押出機に、C−1をアイ・ケー・ジー(株)製のφ25mm中間層用単軸押出機にそれぞれ供給した。押出機に投入後のスクリュー回転数は、それぞれ内層用単軸押出機が45rpm、外層用単軸押出機が20rpm、中間層用単軸押出機が15rpmであり、また各樹脂温度は、それぞれA−1が175℃、B−1が190℃、C−1が200℃であった。その後、三菱樹脂(株)設計のスパイラル口金にて賦形し、water−film方式フォーマーにて成形し、水温が25℃のバキューム水槽にて完全冷却を行うことにより、外径17.0mm、全肉厚が2.00mm、内層平均厚みが0.10mm、接着層平均厚みが0.10mmの管材料を得た。得られた管材料について、耐塩素水性、接着強度、耐圧性、熱間内圧クリープ性、臭気の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
(実施例2)
ポリオレフィン系樹脂としてB−2(ポリブテン)を用いた以外は実施例1と同様の方法で管材料を作製した。また、得られた管材料について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
実施例1における内層および接着層の厚みを、内層厚みが0.01mm、接着層の厚みが0.01mmとなるように変更して全肉厚が1.82mmとなるようにした以外は実施例1と同様の方法で管材料を作製した。得られた管材料について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
実施例1における内層および接着層の厚みを、内層厚みが0.05mm、接着層の厚みが0.05mmとなるように変更して全肉厚が1.90mmとなるようにした以外は実施例1と同様の方法で管材料を作製した。得られた管材料について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂としてB−3(直鎖状低密度ポリエチレン)を使用し、これをクラウスマッファイ社製のφ45mm外層用単軸押出機に供給し、スクリュー回転20rpm、樹脂温度190℃で樹脂を溶融させ、その後、三菱樹脂(株)設計のスパイラル口金にて賦形し、water−film方式フォーマーにて成形し、水温が25℃のバキューム水槽にて完全冷却を行うことにより、外径17.0mm、全肉厚が2.00mmの単層の管材料を得た。得られた管材料について実施例1と同様の測定および評価を行った。但し、単層の管材料であるので接着強度の測定は行っていない。その結果を表1に示す。
【0058】
(比較例2)
フルオロエチレン系樹脂としてA−1(カーボネート変性ETFE)を用い、ポリオレフィン系樹脂としてB−1(エチレン−オクテン共重合体)を用い、A−1をアイ・ケー・ジー(株)製のφ25mm内層用単軸押出機に、B−1をクラウスマッファイ社製のφ45mm外層用単軸押出機にそれぞれ供給した。供給後の溶融混練時の各押出機のスクリュー回転数はそれぞれ内層用単軸押出機が45rpm、外層用単軸押出機が20rpmであり、また樹脂温度は、それぞれA−1が175℃、B−1が190℃であった。その後、三菱樹脂(株)設計のスパイラル口金にて賦形し、water−film方式フォーマーにて成形し、水温が25℃のバキューム水槽にて完全冷却を行うことにより、外径17.0mm、全肉厚が2.00mm、内層平均厚みが0.10mmの管材料を得た。得られた管材料について実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜4は、耐塩素水性、接着強度、耐圧製、熱間内圧クリープ性、および、臭気のすべてにおいて、優れた結果を得ることができた。
一方、単層構成の比較例1の管材料は、耐塩素水性および臭気の評価において実用不可能なレベルのものであり、接着層を有していない比較例2は接着強度に非常に劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、各層間の接着性に優れた管材料であって、長期耐熱性、長期耐塩素水性に優れているので、塩素水を通す配管材等に、また、例えば90℃の水のような高温にも十分耐える配管材等に適用することができる。したがって、例えば、ヒートポンプ給湯システムに使用される配管材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層および外層が接着層を介して積層されてなる管材料であって、前記内層がフルオロエチレン系樹脂(A)であり、前記外層がポリオレフィン系樹脂(B)であり、前記接着層が、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び、(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンと、酢酸ビニルとの共重合体(C)であることを特徴とする管材料。
【請求項2】
前記フルオロエチレン系樹脂(A)が、カーボネート変性テトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の管材料。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂(B)が、エチレン−オクテン共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の管材料。
【請求項4】
前記内層の層厚みの全層中に占める割合が、0.1%以上、10%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管材料。

【公開番号】特開2009−234030(P2009−234030A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82989(P2008−82989)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】