管状体及びその製造方法
【課題】成形精度及びボイド率を効果的に改善しうる管状体の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の管状体の製造方法は、マンドレル2に繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体6を得る工程と、上記中間成形体6の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体6を加熱する硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレル2の引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープ8が用いられている。上記硬化管状体の繊維含有率Z2(質量%)から上記中間成形体6の繊維含有率Z1(質量%)を引いた値(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下である。上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている。管状体の一例は、ゴルフクラブシャフトである。
【解決手段】本発明の管状体の製造方法は、マンドレル2に繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体6を得る工程と、上記中間成形体6の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体6を加熱する硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレル2の引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープ8が用いられている。上記硬化管状体の繊維含有率Z2(質量%)から上記中間成形体6の繊維含有率Z1(質量%)を引いた値(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下である。上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている。管状体の一例は、ゴルフクラブシャフトである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法及びこの製造方法により製造された管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非力な高齢者や女性ゴルファーの増加に伴い、わずかな力でも飛距離を伸ばすことのできるゴルフクラブシャフト(以下、単にシャフトともいう)の開発が望まれている。中でもシャフトの軽量化は、この問題を解決する有効な手段の一つと考えられ、様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
この取り組みとして、材料面では、まず、スチールからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)への変更が挙げられる。また、同じCFRPでも、カーボン繊維の強度を向上させること、樹脂の物性を変更すること又はカーボン繊維と樹脂との密着強度を向上させること等により、シャフト全体の強度を向上させ、その分シャフト重量を低減している。また、構造面での取り組みとして、強度が向上する角度に繊維を配向又は積層させて強度を向上させることにより、その強度向上分の重量を低減してきた。
【0004】
繊維強化樹脂製の管状体(以下、FRP管状体ともいう)は、様々な用途で用いられている。FRP管状体の製造方法として、ラッピングテープを用いた製造方法が公知である。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のFRP材料を巻き付けた後、所定の張力を付与しつつ樹脂テープを巻き付ける。この樹脂テープは、一般にラッピングテープとも称されている。このラッピングテープにより、成形圧力が付与される。
【0005】
このラッピングテープは、最終的には除去される。この除去を容易とするため、離型性の高いラッピングテープが好ましい。特開2002−144439号公報には、離型性を高める目的で、内面が織物文様であるラッピングテープを開示する。具体的には、織物と樹脂フィルムとが一体とされたラッピングテープが開示されている。
【特許文献1】特開2002−144439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CFRP製シャフトを軽量化する目的で、上記の通り、繊維や樹脂の強度、あるいは、繊維と樹脂との密着を高めることでシャフト全体の強度を高め、強度向上分の重量を低減する方法が採られてきた。そして、それらの方法によりシャフトの軽量化が図られてきた。しかしながら強度を向上させてその分軽量化するという開発にも限界がある。一方、ゴルファーのニーズには限界が無く、少しでも飛距離を伸ばすことが求められている。飛距離の増加を実現する手段の一つがシャフトの軽量化であり、シャフト軽量化への要求は尽きない。この要求を実現するために、シャフトに必要な最低限の強度は維持しつつ、シャフト剛性に関わる特性(フレックスやトルク)は犠牲にするという手法が採られてきた。しかしこの手法による軽量化も限界にきており、剛性の低下もクラブとしての機能に支障をきたすところまできている。如何にシャフトの剛性を維持したまま更なる軽量化を図るかが重要である。
【0007】
シャフトの剛性を維持したまま軽量化を実現する手段として、繊維含有率の高いCFRPを使用することが考えられる。つまり、管状体の成形品としての強度や剛性を主として担う繊維の含有率を高めることにより、単位重量当たりの強度や剛性が高まり、軽量化が図られる。しかしながら、繊維含有率の高いCFRPでの成形は、タック性が不足しているため、成形しにくい上に、繊維強化樹脂部材層間に空気が入り込みやすい。またこの場合、材料自体にも空気が多く含まれることになるため、管状体全体に空気が多く入り込む。この空気はボイドとなり、管状体の強度や耐久性を低下させうる。
【0008】
このように、軽量化を図りながら、強度と剛性とを同時に維持することは困難である。
【0009】
また、上記従来技術のラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとで伸び率が異なるため、張力を付与した際に織物と樹脂フィルムとが部分的に分離したり、テープが捻れたり、テープが湾曲したり、成形圧力がばらついたりする現象が発生しうる。これらの現象により、FRP管状体の表面が不均一となりやすく、不良品の発生又は強度の不均一が生じやすい。
【0010】
ところで、軽量で且つ強度の高いFRP管状体は、様々な用途において有用である。このFRP管状体、例えばゴルフクラブシャフトでは、軽量化が望まれている。軽量なゴルフクラブシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離の増大に寄与しうる。本発明では、新たな技術思想に基づき、成形精度が向上し、FRP管状体のボイド率が低下しうる製造方法を見いだした。成形精度の向上は、強度の向上に寄与しうる。ボイド率の低下は、強度の向上に寄与しうる。強度の向上は、シャフトの軽量化に寄与しうる。この製造方法においては、材料及びラッピングテープが従来と異なる。
【0011】
本発明の目的は、成形精度及びボイド率を効果的に改善しうる管状体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられている。上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下である。上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている。
【0013】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0014】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0015】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である。
【0016】
好ましくは、上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0017】
好ましくは、上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【0018】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0019】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0020】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である。
【0021】
好ましくは、上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0022】
好ましくは、上記ラッピングテープが織物テープのみである。
【0023】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0024】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である。
【0025】
好ましい管状体は、上記いずれかの製造方法により製造される。より好ましい管状体は、ボイド率Rbが0.5%以下である。
【発明の効果】
【0026】
繊維強化樹脂部材の繊維含有率R1が低いため、成形精度が向上しうる。また、織物テープが用いられることにより、硬化工程においてマトリクス樹脂が排出される。マトリクス樹脂とともに、ボイドも排出されうる。本発明により、軽量で且つ高強度な管状体が得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0028】
本実施形態の製造方法では、ラッピングテープが用いられる。以下の実施形態では、ラッピングテープの使用方法として、次の3通りの方法が採用される。
(1)ラッピングテープとして、織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる
(2)ラッピングテープとして、織物テープとゴムテープとが用いられる。
(3)ラッピングテープとして、織物テープのみが用いられる。
【0029】
先ず、ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる実施形態が、図1から図4を参照しつつ、説明される。
【0030】
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2と繊維強化樹脂部材4とが用意される。典型的なマンドレル2の材質は、鋼等の金属である。マンドレル2の中心軸線は、略直線である。マンドレル2の断面形状は、円形である。マンドレル2は、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2は、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2は、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2は、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2の全体において直径が一定であってもよい。
【0031】
マンドレル2は、管状体の内面を成形する。マンドレル2の形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2は、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2の表面に離型剤が塗布される。
【0032】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。この工程が、以下、巻回工程とも称される。
【0033】
巻回工程に先立ち、繊維強化樹脂部材が用意される。本実施形態では、繊維強化樹脂部材は、シート状である。繊維強化樹脂部材は、プリプレグ4である。この製造方法では、シート状の繊維強化樹脂部材が巻回される。この製造方法は、シートワインディング製法とも称される。なお、繊維強化樹脂部材として、プリプレグ4の他、液状の樹脂に含浸させた繊維が例示される。この繊維を用いた製法の一例は、いわゆるフィラメントワインディング製法である。本製造方法は、フィラメントワインディング製法にも適用されうる。
【0034】
プリプレグ4は、繊維とマトリクス樹脂とを含む。この繊維は、炭素繊維である。プリプレグ4の炭素繊維は、一方向に配向している。後述されるように、この繊維は、炭素繊維以外でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。巻回工程において、マトリクス樹脂は、完全には硬化していない。よってプリプレグ4は柔軟性を有する。この柔軟性は、プリプレグ4のマンドレル2への巻回を許容する。なお、後述されるように、マトリクス樹脂は限定されず、好ましくはエポキシ樹脂である。
【0035】
巻回工程の前に、プリプレグ4は、所望の形状に切断される。図1の実施形態では、6枚のプリプレグ4が用いられる。図1の実施形態では、切断されたプリプレグ4の例として、シートs1からs6が示されている。プリプレグ4は、いわゆるアングル層用シートs1、s2と、ストレート層用シートs3、s5、s6と、フープ層用シートs4とを含む。プリプレグ4は、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートs1からs5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートs6とを含む。なお、プリプレグ4の仕様は限定されない。プリプレグ4の枚数は限定されない。プリプレグ4の形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0036】
巻回工程では、シートs1からシートs6までが、順次マンドレル2に巻回される。巻回に先立ち、シートs2は、シートs1に貼り合わせられる。この貼り合わされたシート群がマンドレル2に巻回される。この貼り合わせにおいて、シートs2は、裏返される。この裏返しにより、シートs1の繊維とシートs2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図1において各シートs1からs6に記載は角度が記載されている。この角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度θ1を示している。
【0037】
シートs1からs6の巻回は、例えば人力によりなされる。巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。巻回工程により、中間成形体6が得られる。中間成形体6は、巻き付けられたプリプレグ4により構成されている。中間成形体6の断面は、渦巻き状の層よりなる。この層は、プリプレグ4により形成されている。
【0038】
管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の繊維含有率R1は、50質量%以上が好ましく、55質量%がより好ましい。繊維含有率が小さい(樹脂含有率が大きい)プリプレグは、粘着性(タック性)に優れる。更に、繊維含有率が小さい(樹脂含有率が大きい)プリプレグは、柔軟である。繊維含有率R1が小さいプリプレグは、巻きつけやすい。繊維含有率R1が低いプリプレグでは、皺等の巻き付け不良が起こりにくい。巻き付け不良を有する中間成形体は、硬化工程において、そのまま硬化する。巻き付け不良は、成形不良を意味する。成形精度を高める観点から、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。繊維含有率R1は、裁断されたプリプレグのそれぞれにおいて定まる。図1の実施形態において、繊維含有率R1は、シートs1、s2、s3、s4、s5及びs6のそれぞれについて定まる。少なくとも一枚のシートの繊維含有率R1が、上記好ましい範囲を満たせばよい。一部の繊維強化樹脂部材において、繊維含有率R1が70質量%を超えてもよい。繊維含有率R1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の製品データに基づき決定されうる。
【0039】
繊維含有率R1が小さい(樹脂含有率が大きい)場合、繊維含有率Z1(後述)が小さくなりやすい。繊維含有率Z1が小さい場合、硬化工程中において織物テープに移動するマトリクス樹脂が増加しやすい。つまり、繊維含有率R1が小さい場合、後述される差(Z2−Z1)が大きくなりやすい。織物テープに移動するマトリクス樹脂が増加すると、マトリクス樹脂とともに織物テープに移動する気泡も増加しやすい。よって、差(Z2−Z1)が大きい場合、ボイド率が低下しやすい。また、差(Z2−Z1)が大きい場合、管状体が軽量化される。これらの観点からも、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0040】
繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の生産工程においては、一方向に引きそろえた炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸させる。炭素繊維の割合が多い場合、繊維強化樹脂部材の生産工程において空気が入り込みやすい。逆に、マトリクス樹脂の割合が多い場合、繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の生産工程において空気が入り込みにくい。このため、繊維含有率R1が小さい場合、繊維強化樹脂部材に含まれるボイドは、比較的少ない。繊維含有率R1が大きい場合、繊維強化樹脂部材に含まれるボイドは、比較的多い。この観点からも、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0041】
繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材の含有率Rxは限定されない。繊維含有率R1を好ましい範囲とした場合に得られる利点をより高める観点から、含有率Rxは、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がより好ましい。含有率Rxは、100質量%であってもよい。繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の合計質量がW1(g)とされ、中間成形体の質量がW2(g)とされるとき、含有率Rxは、次の式により算出される。質量W2は、全ての繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の合計質量に等しい。
Rx=(W1/W2)×100
【0042】
硬化工程において、マトリクス樹脂及びボイドは、シャフトの外側(織物テープ側)に排出される。よって、シャフトの外側に存在するボイドは、外部に排出されやすい。これに対して、シャフトの内側に存在するボイドは、外部に排出されにくい。この観点から、ボイドが存在する場合、そのボイドの位置は、シャフトの外側に近いのが好ましい。
【0043】
以下、上記好ましい範囲の繊維含有率R1を有する繊維強化樹脂部材により形成された部分がm1とされ、この部分m1の厚みがtm1とされる。また、上記好ましい範囲の繊維含有率R1よりも多い繊維含有率R1を有する繊維強化樹脂部材により形成された部分がm2とされ、この部分m2の厚みがtm2とされる。厚みtm1及び厚みtm2は、硬化管状体における値である。
【0044】
含有率Rxが100%でない場合、上記部分m1と上記部分m2とが混在することになる。ボイドをシャフトの外側に存在させ、ボイドの抜けを容易とする観点から、上記部分m2の内側に上記部分m1が配置されるのが好ましい。ボイドの抜けを容易とする観点から、上記部分m2が最外層を含むのが好ましい。この最外層の外面は、硬化管状体の外面である。
【0045】
ボイド率の低下の観点から、厚みtm1の、硬化管状体の厚みtkに対する比(tm1/tk)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上がより好ましい。比(tm1/tk)は、1.0であってもよい。好ましくは、厚みtkは、厚みtm1と厚みtm2との和である。厚みtkは、硬化管状体の内面から外面までの厚みである。
【0046】
繊維には、真っ直ぐになろうとする性質がある。繊維の配向角度とシャフト軸方向とが平行に近いほど、繊維の曲がりが少なく、巻き付けが行いやすい。繊維の配向角度θ1の絶対値が大きいほど、繊維の曲がりが大きく、巻き付けが行いにくい。巻き付けが行いにくい場合、皺等の巻き付け不良が生じやすい。また、巻き付けが行いにくい場合、ボイドを巻き込みやすい。一方、前述の通り、繊維含有率R1が小さい場合、巻き付けが行いやすい。これらを併せて考えると、角度θ1の絶対値が大きい場合であっても、繊維含有率R1が小さければ、巻きにくさが緩和される。また、角度θ1の絶対値が大きい場合であっても、繊維含有率R1が小さければ、ボイドを巻き込みにくい。このように、繊維含有率R1が小さいことによる硬化は、θ1の絶対値が大きい場合に顕在化しうる。この観点から、繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材の角度θ1の絶対値は、20度以上が好ましく、30度以上がより好ましく、40度以上がより好ましい。θ1の絶対値の上限は、90度である。
【0047】
シャフト強度の観点から、繊維強化樹脂部材の繊維が炭素繊維である場合、この炭素繊維は、ピッチ系よりもPAN系が好ましい。
【0048】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図2及び図3は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図2及び図3の断面において、中間成形体6は、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6は、前述したように複数の層よりなる。
【0049】
テープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8、10が用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8である。第二のラッピングテープは、樹脂フィルムテープ10である。
【0050】
テープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8が用いられる。織物テープ8は、織物を基材とするテープである。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープ10が用いられる。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムを基材とするテープである。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図2で示される。第二巻き付け工程の様子が、図3で示される。
【0051】
第一巻き付け工程では、中間成形体6の外周面に織物テープ8が直接巻き付けられる。中間成形体6の外周面と織物テープ8とは当接する。織物テープ8は中間成形体6の外周面に接触している。
【0052】
図2が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6の軸線方向と織物テープ8の長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8は、中間成形体6に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8の幅W1は、巻き付けピッチP1よりも広い。巻き付けピッチP1は、図2において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8は、中間成形体6の全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6の全体が織物テープ8により覆われる。なお、織物テープ8の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6に固定される。この両端の固定により、織物テープ8の巻き付けが自然に解けることはない。
【0053】
織物テープ8の巻き付けは、張力F1を付与しつつなされる。この張力F1により、中間成形体6は、織物テープ8により締め付けられる。織物テープ8の巻き付けにより、織物被覆体12が得られる。織物被覆体12は、中間成形体6が織物テープ8で覆われてなる。
【0054】
第二巻き付け工程では、織物被覆体12の外周面に樹脂フィルムテープ10が直接巻き付けられる。織物被覆体12の外周面と樹脂フィルムテープ10とは当接する。樹脂フィルムテープ10は織物被覆体12の外周面に接触している。つまり樹脂フィルムテープ10は織物テープ8に接触している。
【0055】
図3が示すように、第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12の軸線方向と樹脂フィルムテープ10の長手方向とは互いに垂直とされない。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、樹脂フィルムテープ10の幅W2は、巻き付けピッチP2よりも広い。巻き付けピッチP2は、図3において両矢印で示されている。つまり、樹脂フィルムテープ10は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12の全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12の全体が樹脂フィルムテープ10により覆われる。なお、樹脂フィルムテープ10の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12に固定される。この両端の固定により、樹脂フィルムテープ10の巻き付けが自然に解けることはない。
【0056】
樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、張力F2を付与しつつなされる。この張力F2により、織物被覆体12は、樹脂フィルムテープ10により締め付けられる。
【0057】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6は、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10によって締め付けられた状態となる。
【0058】
なお織物被覆体12の表面には、織物テープ8による螺旋模様が形成されているが、図3においては、この織物テープ8による螺旋模様の記載が省略されている。
【0059】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10が巻き付けられた中間成形体6において、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、加熱工程である。加熱は、加熱炉によりなされる。加熱炉の一例は、熱風を用いた加熱炉である。この加熱炉では、炉内の天井から熱風が発生し、この熱風が炉内を循環する。この熱風が被加熱物(テープで覆われた中間成形体6)に吹き付けられる。
【0060】
硬化工程では、マトリクス樹脂が加熱されるため、マトリクス樹脂は流動化しうる。マトリクス樹脂中の気泡は、マトリクス樹脂とともに移動しうる。流動化したマトリクス樹脂は、織物テープに移動しうる。マトリクス樹脂中の気泡も、マトリクス樹脂とともに、織物テープに移動しうる。この気泡の移動(排出)に起因して、管状体のボイド率が低減しうる。
【0061】
好ましい硬化工程は、第一加熱ステップと、第二加熱ステップとを含む。より好ましくは、硬化工程は、第一加熱ステップ及び第二加熱ステップのみからなる。第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされる。第一加熱ステップの温度は、第二加熱ステップの温度よりも低い。
【0062】
第一加熱ステップの温度は、低い。低温の場合、気泡の熱膨張が少ない。熱膨張が少ないため、気泡が大きくなりにくい。第一加熱ステップでは、気泡の熱膨張が抑制されつつ、マトリクス樹脂の硬化が進行する。第一加熱ステップでマトリクス樹脂の硬化が進行するため、第二加熱ステップに移行した段階では、気泡の熱膨張は起こりにくい。第一加熱ステップが長時間とされることにより、第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂の硬化はより一層進行する。第一加熱ステップによりマトリクス樹脂の硬化が進行している場合、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張は、更に起こりにくい。
【0063】
気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、115℃以下が好ましく、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
【0064】
第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂を流動化させ、織物テープへのマトリクス樹脂の移動を促進する観点から、第一加熱ステップの温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
【0065】
マトリクス樹脂が流動化している時間を長くする観点から、第一加熱ステップの時間は、15分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がより好ましく、120分以上がより好ましい。マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第一加熱ステップの温度が80℃よりも低い場合、第一加熱ステップの時間は1440分以上が好ましい。
【0066】
シャフトの生産性の観点から、第一加熱ステップの時間は、4320分以下が好ましい。
【0067】
長時間の第一加熱ステップにより、マトリクス樹脂の硬化はかなり進行している。しかし、第一加熱ステップは低温であるため、マトリクス樹脂の硬化は完全ではない。このため第二加熱ステップが設定される。高温の第二加熱ステップにより、マトリクス樹脂が完全に硬化しうる。
【0068】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。シャフトの製造に要するエネルギーのコストを削減する観点から、第二加熱ステップの温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0069】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。シャフトの生産性の観点から、第二加熱ステップの時間は、240分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、60分以下がより好ましい。
【0070】
硬化工程の温度は、加熱炉(オーブン)内の空気の温度を意味しうる。硬化工程の温度は、硬化工程におけるラッピングテープの表面温度を意味しうる。
【0071】
硬化工程の後、マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先に樹脂フィルムテープ10の除去がなされ、次に織物テープ8の除去がなされる。マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2が引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。
【0072】
通常は、上記硬化管状体に仕上げ加工が施されて、最終製品の管状体が完成する。この仕上げ加工には、両端部の切断、表面研磨、塗装等が含まれうる。
【0073】
図4は、樹脂フィルムテープ10の断面図である。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムよりなる基材14と、コーティング剤16とを有する。コーティング剤16は層を形成している。樹脂フィルムテープ10は、基材14とコーティング剤16との2層構造である。基材14の内面に、コーティング剤16が設けられている。コーティング剤16として、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なお、織物テープ8に発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8の内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0074】
上記の如く、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂(マトリクス樹脂)は織物テープ8に移行しうる。特に、第一加熱ステップにおいて、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。
【0075】
織物テープ8は、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8は、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8により、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0076】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率R1が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率R1が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。つまり、繊維含有率R1が高い繊維強化樹脂部材では、巻き付け不良が発生しやすい。また、繊維含有率R1が高い場合、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなる。この空気は、管状体においてボイドとなりうる。このボイドは、シャフトの強度や耐久性を損なう。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0077】
本実施形態の製造方法では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8を張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側に樹脂フィルムテープ10を張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、硬化工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に吸収される。この吸収により、繊維含有率R1の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材を使用しながら、管状体の繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8は、中間成形体6に含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、樹脂フィルムテープ10が中間成形体6に大きな圧力を加えることにより、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0078】
織物テープ8による樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、繊維含有率R1が低い繊維強化樹脂部材を用い、且つ、最終的に得られる管状体の繊維含有率が高められ得る。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つシャフトの繊維含有率の向上が達成されうる。本実施形態では、硬化工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0079】
本実施形態では、織物テープ8の外側に樹脂フィルムテープ10が巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さない樹脂フィルムテープ10が織物テープ8の外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8への樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6に含まれる空気が織物テープ8に移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0080】
前述したように、特開2002−144439に記載されたラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとが一体化されている。このテープも織物部分に樹脂が吸収される可能性がある。しかし実際には、この一体化されたテープでは、樹脂の吸収効果が低いことが判明した。
【0081】
このように吸収効果が低い原因は、次のように考えられる。ラッピングテープは、幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。よって、螺旋状に巻き付けられたラッピングテープには、ラッピングテープ同士が重なった重複部が存在する。つまり、この重複部には、中間成形体と接する内側のラッピングテープ(内側テープ)と、この内側テープの外側に位置する外側のラッピングテープ(外側テープ)とが存在する。従来の一体化されたラッピングテープの場合、内側テープに存在する樹脂フィルム層が、外側テープと中間成形体との間に介在することになる。この樹脂フィルム層は、樹脂及びエアーを通さない。よって、従来の一体化されたテープの場合、上記重複部において、内側テープの樹脂フィルム層が、外側テープの織物層への樹脂及び空気の移行を阻害する。このように、従来の一体化されたテープでは、樹脂及び空気が織物層に移行しにくい。
【0082】
更に、織物と樹脂フィルムとが一体化されているテープでは、織物と樹脂フィルムとの間の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。更に、従来の一体化されたテープでは、織物と樹脂フィルム層との間に存在する接着剤層の一部が織物の内部に浸透しており、織物自体の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。
【0083】
これに対して本実施形態では、上記重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0084】
更に本実施形態では、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10とが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0085】
前述したように、織物テープ8は幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8により、凹凸が形成される。織物テープ8同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8が重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8の幅方向縁9(図2参照)は、織物テープ8の厚さに相当する段差を形成する。この段差により、凹凸が形成される。これらの凹凸により、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8側に移行しやすい。
【0086】
第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、張力F2を付与されつつ織物被覆体12に巻き付けられる。この張力F2に起因して、外側から樹脂フィルムテープ10を巻き付けられた織物テープ8に皺が発生することがある。上記コーティング剤16は、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16は、第二巻き付け工程における織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8における皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16は、樹脂フィルムテープ10に離型性を付与する。この離型性により、樹脂フィルムテープ10の除去が容易とされうる。
【0087】
前述したように、織物テープ8は張力F1が付与されつつ巻き付けられており、樹脂フィルムテープ10は張力F2が付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8に付与される引張応力T1と、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープ10に付与される引張応力がT2とが定義される。引張応力T1は、上記張力F1を、織物テープ8の断面積S1で割った値である。即ち、[T1=F1/S1]である。この断面積S1は、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8において測定される。この引張応力T1は、巻き付けられる直前において織物テープ8に作用する引張応力を意味する。この引張応力T1は、巻き付けられた状態において織物テープ8に作用する引張応力を意味しない。引張応力T2は、上記張力F2を、樹脂フィルムテープ10の断面積S2で割った値である。即ち、[T2=F2/S2]である。この断面積S2は、張力が作用していない(フリーな)状態の樹脂フィルムテープ10において測定される。この引張応力T2は、巻き付けられる直前において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味する。この引張応力T2は、巻き付けられた状態において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味しない。
【0088】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8のたるみを抑制する観点から、引張応力T1は5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1は150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0089】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2は40Mpa以上が好ましく、50Mpa以上がより好ましく、65Mpa以上が更に好ましい。樹脂フィルムテープ10が切れることを抑制する観点から、引張応力T2は200Mpa以下が好ましく、180Mpa以下がより好ましく、150Mpa以下がより好ましい。
【0090】
引張応力T2は、引張応力T1よりも大きいのが好ましい。T2>T1とされることにより、織物テープ8に移行する樹脂の量が増加しうる。引張応力T1が比較的小さくされることにより、織物テープ8の空隙が維持されやすい。引張応力T2が比較的大きくされることにより、織物テープ8の空隙を維持しつつ、中間成形体6への締め付け力を大きくすることができる。よって、T2>T1により、織物テープ8に樹脂が移行しやすい。また、T2>T1とすることにより、FRP管状体内のボイドが低減される。
【0091】
第二巻き付け工程において織物テープ8に皺が発生することを抑制する観点から、比(T1/T2)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。織物テープ8に移行する樹脂を増加させる観点から、比(T1/T2)は、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
【0092】
本実施形態では、中間成形体6の繊維含有率がZ1(質量%)とされ、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)とされる。軽量化及び低ボイド率の観点から、差(Z2−Z1)は3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、ラッピングテープを除去しにくくなる等により生産性が低下しやすい。この観点から、差(Z2−Z1)は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0093】
差(Z2−Z1)を3質量%以上30質量%以下とするための製造方法は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む上記製造方法に限定されない。この製造方法として、上記巻き付け工程において織物テープ8のみを巻き付ける製造方法が例示される。この製造方法は、上記第二巻き付け工程を含まない他は上記製造方法と同じである。織物テープ8のみを巻き付ける製造方法の一例は、後述される。
【0094】
FRP管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維含有率Z1は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。巻き付け不良を抑制する観点、繊維強化樹脂部材に含まれるボイド量を低減する観点、シャフトのボイド率低減の観点及びシャフト物性のばらつきを抑制する観点から、繊維含有率Z1は70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。中間成形体6の繊維含有率Z1は、個々の繊維含有率R1に基づいて算出される。繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の製品データに基づき決定されうる。
【0095】
硬化管状体の繊維含有率Z2は限定されない。FRP管状体を軽量とする観点から、繊維含有率Z2は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、中間成形体6から排出された樹脂によりラッピングテープの除去が行いにくくなるので、生産性が低下しやすい。この観点から、繊維含有率Z2は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下が更に好ましい。繊維含有率Z2の値は、繊維含有率Z1の値と、中間成形体6の質量と、除去された樹脂の質量とから算出される。中間成形体の繊維含有率Z1が低い場合であっても、硬化管状体の繊維含有率Z2を高くすることができる。樹脂の排出量即ち差(Z2−Z1)は、繊維含有率Z1よりも、織物テープのラッピング応力、織物テープの厚さ、織物テープが有する隙間等に依存する。
【0096】
織物テープ8の繊維は、離型性、締め付け力、強度等を総合的に考慮すると、ナイロン繊維及びポリエステル繊維が好ましい。織物テープ8の厚さd1は限定されない。織物テープ8による樹脂の吸収量を大きくするとともに、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙を増やす観点から、織物テープ8の厚さd1は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、織物テープ8の厚さd1は、150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、130μm以下が更に好ましい。
【0097】
織物テープ8の幅W1は限定されない。織物テープ8に吸収されうる樹脂の量を増加させる観点から、織物テープ8の幅W1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともに、中間成形体6を締め付けやすくする観点から、織物テープ8の幅W1は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0098】
織物テープ8の織り組織は限定されない。この織り組織として、平織り、朱子織り及び綾織りが例示される。張力により過度に引き延ばされると、樹脂が入り込みうる空隙及び繊維に吸収されうる樹脂の量が減少しやすい。張力により過度に引き延ばされることを抑制する観点から、織り組織には、織物テープ8の長手方向に対して略平行に配向する糸が存在しているのが好ましい。
【0099】
樹脂フィルムテープ10の基材14の材質としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエステル樹脂が例示される。これらの樹脂は引張強度が高いため好ましい。更には、繊維強化樹脂部材中の樹脂の粘度が低下する温度域において収縮する樹脂フィルムテープが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂層とポリエステル樹脂層とをラミネート積層してなる複合フィルムが好ましい。
【0100】
樹脂フィルムテープ10の厚さd2は限定されない。張力F2により切断されることを抑制する観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0101】
樹脂フィルムテープ10の幅W2は限定されない。管状体表面に発生する段差を抑制する観点から、幅W2は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、14mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0102】
繊維強化樹脂部材の繊維は限定されない。この繊維として、無機繊維、有機繊維及び金属繊維が例示される。この無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及びアルミナ繊維が例示される。この有機繊維として、ポリエチレン繊維及びポリアミド繊維が例示される。複数の繊維が組み合わされてもよい。ゴルフクラブシャフトに要求される剛性を確保しつつ軽量な管状体を得る観点から、繊維の引張弾性率は、5t/mm2以上が好ましく、10t/mm2以上がより好ましく、24t/mm2以上が更に好ましい。繊維の入手可能性の観点から、繊維の引張弾性率は100t/mm2以下が好ましい。この引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
【0103】
次に、ラッピングテープとして織物テープとゴムテープとが用いられる実施形態について、図5から図8を参照しつつ、説明する。
【0104】
図5は、第二実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2aと繊維強化樹脂部材4aとが用意される。マンドレル2aは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2aの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2aの中心軸線は、略直線である。マンドレル2aの断面形状は、円形である。マンドレル2aは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2aは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2aは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2aは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2aの全体において直径が一定であってもよい。
【0105】
マンドレル2aは、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2aの形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2aは、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2aの表面に離型剤が塗布される。
【0106】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0107】
巻回工程の前に、プリプレグ4aは、所望の形状に切断される。図5の実施形態では、6枚のプリプレグ4aが用いられる。図5の実施形態では、切断されたプリプレグ4aの例として、シートh1からh6が示されている。プリプレグ4aは、いわゆるアングル層用シートh1、h2と、ストレート層用シートh3、h5、h6と、フープ層用シートh4とを含む。プリプレグ4aは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートh1からh5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートh6とを含む。なお、プリプレグ4aの仕様は限定されない。プリプレグ4aの形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0108】
巻回工程は、上記第一実施形態と同様である。プリプレグ4aは、上記プリプレグ4と同様である。
【0109】
前述した第一実施形態と、本第二実施形態とでは、テープ巻き付け工程のみが相違する。樹脂フィルムテープに代えてゴムテープが用いられている他は、この第二実施形態は、上記第一実施形態と同様である。
【0110】
本実施形態のテープ巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にラッピングテープが巻き付けられる。図6及び図7は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図6及び図7の断面において、中間成形体6aは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6aは、前述したように複数の層よりなる。
【0111】
このテープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8a、10aが用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8aである。第二のラッピングテープは、ゴムテープ10aである。
【0112】
このテープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8aが用いられる。織物テープ8aは、織物を基材とするテープである。織物テープ8aは、織物のみにより構成されていてもよい。第二巻き付け工程では、ゴムテープ10aが用いられる。ゴムテープ10aは、ゴム又はゴム組成物を基材とするテープである。ゴムテープ10aは、ゴム組成物のみからなっていてもよい。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図6で示される。第二巻き付け工程の様子が、図7で示される。
【0113】
第一巻き付け工程では、中間成形体6aの外周面に織物テープ8aが直接巻き付けられる。中間成形体6aの外周面と織物テープ8aとは当接する。織物テープ8aは中間成形体6aの外周面に接触している。
【0114】
図6が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6aの軸線方向と織物テープ8aの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8aは、中間成形体6aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8aの幅W1aは、巻き付けピッチP1aよりも広い。巻き付けピッチP1aは、図6において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8aは、中間成形体6aの全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6aの全体が織物テープ8aにより覆われる。なお、織物テープ8aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6aに固定される。この両端の固定により、織物テープ8aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0115】
織物テープ8aの巻き付けは、張力F1aを付与しつつなされる。この張力F1aにより、中間成形体6aは、織物テープ8aにより締め付けられる。織物テープ8aの巻き付けにより、織物被覆体12aが得られる。織物被覆体12aは、中間成形体6aが織物テープ8aで覆われてなる。
【0116】
第二巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられる。この第二巻き付け工程では、織物被覆体12aの外周面にゴムテープ10aが直接巻き付けられる。織物被覆体12aの外周面とゴムテープ10aとは当接する。ゴムテープ10aは織物被覆体12aの外周面に接触している。つまりゴムテープ10aは織物テープ8aに接触している。
【0117】
図7が示すように、第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12aの軸線方向とゴムテープ10aの長手方向とは互いに垂直とされない。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、ゴムテープ10aの幅W2aは、巻き付けピッチP2aよりも広い。巻き付けピッチP2aは、図7において両矢印で示されている。つまり、ゴムテープ10aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。このゴムテープ10aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aの全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12aの全体がゴムテープ10aにより覆われる。なお、ゴムテープ10aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12aに固定される。この両端の固定により、ゴムテープ10aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0118】
ゴムテープ10aの巻き付けは、張力F2aを付与しつつなされる。この張力F2aにより、織物被覆体12aは、ゴムテープ10aにより締め付けられる。
【0119】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6aは、織物テープ8a及びゴムテープ10aによって締め付けられた状態となる。
【0120】
なお織物被覆体12aの表面には、織物テープ8aによる螺旋模様が形成されているが、図7においては、この織物テープ8aによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0121】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8a及びゴムテープ10aが巻き付けられた中間成形体6aにおいて、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。前述の通り、好ましくは、この硬化工程は、第一加熱ステップと第二加熱ステップとを含む。
【0122】
硬化工程の後、マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先にゴムテープ10aの除去がなされ、次に織物テープ8aの除去がなされる。マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2aが引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。硬化管状体の表面には、螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aの跡が螺旋状の凹凸として残る。
【0123】
図8は、ゴムテープ10aの断面図である。ゴムテープ10aは、ゴム組成物よりなる基材14aと、コーティング剤16aとを有する。ゴムテープ10aは、基材14aとコーティング剤16aとの2層構造である。基材14aの内面に、コーティング剤16aが設けられている。コーティング剤16aとして、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なおコーティング剤16aは設けられなくてもよい。また、織物テープ8aに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8aの内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0124】
本第二実施形態において、繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様である。
【0125】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、繊維含有率R1の小さい繊維強化樹脂部材を用いているため、成形精度が向上し、ボイド率が抑制される。また、本第二実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに移行しうる。織物テープ8aは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8aは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8aにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0126】
本実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8aを張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側にゴムテープ10aを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに吸収される。この吸収により、繊維含有率R1の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材が使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8aは、中間成形体6aに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ゴムテープ10aは弾性体のため、中間成形体6aの中心に向かう圧力を効果的に付与しうる。この圧力により、マトリクス樹脂及びボイドが一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。ゴムテープ10aは、弾性的に伸ばされた状態で巻き付けられているので、収縮しようとする。この収縮しようとする力により、ゴムテープ10aは、中間成形体6aの表面を効果的に押圧しうる。この押圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。この押圧力により、マトリクス樹脂が一層抜けやすくなり、FRP管状体が軽量化される。
【0127】
織物テープ8aによる樹脂の吸収(抽出)は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。つまり本発明では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。巻回工程後に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0128】
本実施形態では、織物テープ8aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さないゴムテープ10aが織物テープ8aの外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8aへの樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6aに含まれる空気が織物テープ8aに移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0129】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層又はゴムテープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0130】
更に本実施形態では、織物テープ8aとゴムテープ10aとが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0131】
前述したように、織物テープ8aは幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aにより、凹凸が形成される。織物テープ8a同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8aが重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8aの幅方向縁9(図6参照)は、織物テープ8aの厚さに相当する段差を形成する。この段差により、凹凸が形成される。これらの凹凸により、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8a側に移行しやすい。
【0132】
第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、張力F2aを付与されつつ織物被覆体12aに巻き付けられる。この張力F2aに起因して、外側からゴムテープ10aを巻き付けられた織物テープ8aに皺が発生することがある。上記コーティング剤16aは、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16aは、第二巻き付け工程における織物テープ8aとゴムテープ10aとの摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8aにおける皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16aは、ゴムテープ10aに離型性を付与する。この離型性により、ゴムテープ10aの除去が容易とされうる。
【0133】
前述したように、織物テープ8aは張力F1aが付与されつつ巻き付けられており、ゴムテープ10aは張力F2aが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8aに付与される引張応力T1aと、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープ10aに付与される引張応力がT2aとが定義される。引張応力T1aは、上記張力F1aを、織物テープ8aの断面積S1aで割った値である。即ち、[T1a=F1a/S1a]である。この断面積S1aは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8aにおいて測定される。この引張応力T1aは、巻き付けられる直前において織物テープ8aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1aは、巻き付けられた状態において織物テープ8aに作用する引張応力を意味しない。引張応力T2aは、上記張力F2aを、ゴムテープ10aの断面積S2aで割った値である。即ち、[T2a=F2a/S2a]である。この断面積S2aは、張力が作用していない(フリーな)状態のゴムテープ10aにおいて測定される。この引張応力T2aは、巻き付けられる直前においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T2aは、巻き付けられた状態においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味しない。
【0134】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8aのたるみを抑制する観点から、引張応力T1aは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1aは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0135】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2aは2Mpa以上が好ましく、4Mpa以上がより好ましく、6Mpa以上が更に好ましい。ゴムテープ10aが切れることを抑制する観点から、引張応力T2aは60Mpa以下が好ましく、40Mpa以下がより好ましく、30Mpa以下がより好ましく、20Mpa以下が更に好ましい。
【0136】
織物テープ8aに移行する樹脂量を多くする観点から、比(T2a/T1a)は大きくされるのがよい。織物テープに樹脂が移行することにより、中間成形体の外径が小さくなる。外径が小さくなることにより、織物テープ8aによる締め付け力が低下しうる。しかし、弾性を有するゴムテープ10aをその外側から巻き付けることにより、外径が小さくなった場合であっても、中間成形体への締め付け力が効果的に維持されうる。このゴムテープ10aの締め付け力により、織物テープ8aに樹脂が移行しやすい。また、このゴムテープ10aの締め付け力により、FRP管状体内のボイドが低減されうる。
【0137】
比(T2a/T1a)が大きいほど、織物テープ8aに移行する樹脂量が多くなる。この観点から、比(T2a/T1a)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。比(T2a/T1a)が過度に大きい場合、皺の発生又はゴムテープの損傷が発生しやすくなる。この観点から、比(T2a/T1a)は2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0138】
なお、織物テープ8aに移行する樹脂を増加させることを重視する場合、比(T2a/T1a)が大きめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0より大きくするのがよく、更には1.1以上が好ましく、特に1.2以上が好適であり、この場合において、比(T2a/T1a)の上限については、皺の発生を抑制する観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0139】
また、皺の発生を抑制することを重視する場合、比(T2a/T1a)は小さめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0未満が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましく、この場合において、織物テープ8aへ移行する樹脂量を所定量確保するために、比(T2a/T1a)は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0140】
第二巻き付け工程において、ゴムテープに代えて樹脂フィルムテープが用いられる場合、この樹脂フィルムテープの引張応力T2は、織物テープの引張応力T1よりも大きいのが好ましい。即ち、T2>T1が好ましい。樹脂フィルムテープは、ゴムテープに比較して弾性に乏しく、シャフト成形温度に昇温されると引張応力が低下しやすい。この引張応力の低下は、樹脂フィルムテープによる押圧力(シャフト内側に向かう圧力)の低下を招来する。そのため、樹脂フィルムテープの場合、T2>T1とすることにより、シャフト成形温度における引張応力の低下を抑制しておくのが好ましい。一方、ゴムテープは、その弾性に起因して、シャフト成形温度にまで昇温された場合であってもシャフトへの圧力がほとんど低下しない。よってゴムテープの場合、皺等の不具合を効果的に抑制するためには、T2a<T1aとされるのが好ましい。ただし、T2a>T1aとすれば、織物テープへ移行する樹脂量を多くすることができることは、前述した通りである。
【0141】
本第二実施形態でも、繊維含有率Z1、繊維含有率Z2及び差(Z2−Z1)は、上記第一実施形態と同様とされる。繊維強化樹脂部材における繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。含有率Rxの好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。
【0142】
ゴムテープ10aの基材14aは、ゴム組成物を加硫成形してなるものが好ましい。このゴム組成物の基材ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム及びフッ素系ゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられる。耐熱性、耐久性、引張強度及び離型性を総合的に考慮した総合性能に優れるという理由で、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)又はフッ素ゴムを基材ゴム100質量部に対して50質量部以上含む基材ゴムが好ましい。上記ゴム組成物は、加硫剤を含むのが好ましく、硫黄架橋とするのが好ましい。上記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、架橋開始剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤等を含んでいてもよい。加硫促進剤として、例えば、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤から選択される1種又は2種以上が挙げられる。可塑剤として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペート及びトリクレジルフォスフェートから選択される1種又は2種以上が挙げられる。充填剤として、カーボンブラック及びシリカが例示され、こららが併用されてもよい。
【0143】
ゴムテープ10aの厚さd2aは限定されない。張力F2aにより切断されることを抑制する観点、及びゴムテープ自身の捻れ等を抑制する観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上がより好ましく、550μm以上が更に好ましい。ゴムテープの幅方向の一部が重ねられつつ巻き付けられる際において発生する外側テープと内側テープとの境界における過度な段差を抑制するとともにコストを下げる観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは、2000μm以下が好ましく、1800μm以下がより好ましく、1500μm以下がより好ましく、1200μm以下が更に好ましい。
【0144】
ゴムテープ10aの幅W2aは限定されない。張力F2aによる切断されることを抑制する観点から、幅W2aは8mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、12mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2aは35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0145】
テープ巻き付け工程は、ゴムテープをラッピングテープとして巻き付ける工程を少なくとも含んでいるのが好ましい。より好ましくは、テープ巻き付け工程は、上記第二実施形態の様に、織物テープを巻き付ける工程と、織物テープの外側にゴムテープを巻き付ける工程とを含む。
【0146】
次に、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる実施形態について、図9から図11を参照しつつ、説明する。
【0147】
第三実施形態は、ラッピングテープが織物テープのみとされる他は、上記第一実施形態と同様である。
【0148】
図9は、本発明の第三実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2bと繊維強化樹脂部材4bとが用意される。マンドレル2bは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2bの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2bの中心軸線は、略直線である。マンドレル2bの断面形状は、円形である。マンドレル2bは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2bは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2bは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2bは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2bの全体においてその直径が一定であってもよい。
【0149】
マンドレル2bは、前述したマンドレル2と同様である。
【0150】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0151】
プリプレグ4bは、前述したプリプレグ4と同様である。
【0152】
巻回工程の前に、プリプレグ4bは、所望の形状に切断される。図9の実施形態では、6枚のプリプレグ4bが用いられる。図9の実施形態では、切断されたプリプレグ4bの例として、シートe1からe6が示されている。プリプレグ4bは、いわゆるアングル層用シートe1、e2と、ストレート層用シートe3、e5、e6と、フープ層用シートe4とを含む。プリプレグ4bは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートe1からe5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートe6とを含む。なお、プリプレグ4bの仕様は限定されない。プリプレグ4bの形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0153】
巻回工程では、シートe1からシートe6までが、順次マンドレル2bに巻回される。図示されていないが、巻回に先立ち、シートe2は、シートe1に貼り合わせられる。この貼り合わせされてなるシート群がマンドレル2bに巻回される。この貼り合わせにおいて、シートe2は、裏返される。この裏返しにより、シートe1の繊維とシートe2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図9において各シートe1からe6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度θ1を示している。この巻回工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0154】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図10及び図11は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図10及び図11の断面において、中間成形体6bは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6bは、前述したように複数の層よりなる。
【0155】
テープ巻き付け工程におけるラッピングテープは、織物テープ8bである。本実施形態において、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる。テープ巻き付け工程では、織物テープ8bのみが巻き付けられる。織物テープ8bは、織物を基材とするテープである。織物テープ8bは、織物である基材の表面にコーティング剤等を有していてもよい。
【0156】
テープ巻き付け工程の様子が、図10で示される。テープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面に織物テープ8bが直接巻き付けられる。中間成形体6bの外周面と織物テープ8bとは当接している。織物テープ8bは中間成形体6bの外周面に接触している。
【0157】
図10が示すように、テープ巻き付け工程において、織物テープ8bは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6bの軸線方向と織物テープ8bの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8bは、中間成形体6bに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8bの幅W1bは、巻き付けピッチP1bよりも広い。巻き付けピッチP1bは、図10において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8bは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。巻き付けピッチP1bは、一定である。中間成形体6bのチップ端からバット端にかけて、巻き付けピッチP1bは一定である。この織物テープ8bの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8bは、中間成形体6bの全長に亘って巻き付けられる。テープ巻き付け工程の結果、中間成形体6bの全体が織物テープ8bにより覆われる。なお、織物テープ8bの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6bに固定される。この両端の固定により、織物テープ8bの巻き付けが自然に解けることはない。
【0158】
後述されるように、後の硬化工程において、中間成形体6bに含まれる樹脂が、織物テープ8bへと移行する。即ち中間成形体6bに含まれる樹脂は、織物テープ8bへと吸収されるか、又は、織物テープ8bを透過して外部に排出される。
【0159】
織物テープ8bに吸収される樹脂量を増加させる観点から、織物テープ8bのラッピング層数L1は多いのが好ましい。なお、ラッピング層数L1とは、中間成形体6bに巻き付けられた織物テープ8bの層数である。ラッピング層数L1は、中間成形体6bの表面上の各点のそれぞれにおいて定まる。前述した螺旋状の巻き付けにおいて、仮に巻き付けピッチP1bが織物テープの幅W1bよりも大きい場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が0層である部分と、ラッピング層数L1が1層である部分とが存在することになる。また、比(P1b/W1b)が0.5を超えて1.0未満である場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が1層である部分と、ラッピング層数L1が2層である部分とが存在することになる。
【0160】
ラッピング層数L1を多くするための方法として、次の(方法A)及び(方法B)が採用されうる。
(方法A)巻き付けピッチP1bの、織物テープの幅W1bに対する比(P1b/W1b)が小さくされる。
(方法B)複数回の巻き付けがなされる。
【0161】
(方法A)は、一回の巻き付けでラッピング層数L1を増加することができるため、生産性の向上に寄与しうる。一方、(方法B)は、チップ側からバット側への巻き付け、及び/又はチップ側からバット側への巻き付けを繰り返す必要が生じるので、(方法A)と比較して生産性に劣る。生産性の観点からは、(方法B)よりも(方法A)が好ましい。ただし、織物テープ8bの厚さや柔軟性等によっては、比(P1b/W1b)を小さくしてラッピング層数L1を増加させることには限界が生じる場合がある。この場合、(方法B)が有効に用いられうる。
【0162】
ラッピング層数L1を多くして樹脂吸収量を高める観点から、比(P1b/W1b)は、0.70以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.33以下が更に好ましい。なお、比(P1b/W1b)が過度に小さくされ、ラッピング層数L1が過度に多くされた場合、樹脂吸収量の増加がほとんどみられない一方で生産性が低下しうる。この観点から、比(P1b/W1b)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
【0163】
織物テープ8bの巻き付けは、張力F1bを付与しつつなされる。この張力F1bにより、中間成形体6bは、織物テープ8bにより締め付けられる。織物テープ8bの巻き付けにより、織物被覆体12bが得られる。織物被覆体12bは、中間成形体6bが織物テープ8bで覆われてなる。
【0164】
図11は、上記(方法B)が採用される場合における二回目の巻き付けの様子が示された一部断面斜視図である。二回目の巻き付けでは、織物被覆体12bの外周面に織物テープ10bが直接巻き付けられる。織物被覆体12bの外周面と織物テープ10bとは当接する。織物テープ10bは織物被覆体12bの外周面に接触している。つまり織物テープ10bは織物テープ8bに接触している。なお、織物テープ8bと織物テープ10bとは、同一のテープであってもよいし、異なるテープであってもよい。
【0165】
図11が示すように、二回目の巻き付けにおいて、織物テープ10bは、螺旋状に巻き付けられる。この二回目の巻き付けは、前述した一回目の巻き付けと同様になされうる。生産性の観点からは、この二回目の巻き付けは実施されないのが好ましい。差(Z2−Z1)を大きくする観点からは、この二回目の巻き付けがなされるのが好ましい。
【0166】
織物テープ10bの巻き付けは、張力F2bを付与しつつなされる。この張力F2bにより、織物被覆体12bは、織物テープ10bにより締め付けられる。張力F2bと張力F1bとは、同一であってもよいし、異なっていても良い。
【0167】
なお織物被覆体12bの表面には、織物テープ8bによる螺旋模様が形成されているが、図11においては、この織物テープ8bによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0168】
図11の実施形態では、織物テープがチップ端からバット端にかけて巻き付けられる。この実施形態では、巻き付けが二回繰り返されている。このように、巻き付けを繰り返すことにより、ラッピング層数L1を調整することができ、樹脂吸収量の調整が可能である。なお生産性の観点から、織物テープが一方向に向かって巻き付けられる巻き付けの回数(以下、単に巻き付け回数ともいう)は、三回以下が好ましく、二回以下がより好ましく、一回が特に好ましい。この「一方向」とは、チップ側からバット側へと向かう方向でもよいし、バット側からチップ側へと向かう方向でもよい。
【0169】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。前述の通り、好ましくは、この硬化工程は、第一加熱ステップと第二加熱ステップとを含む。
【0170】
硬化工程の後、マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2bが引き抜かれた後に織物テープが除去される。
【0171】
なお、織物テープ8bに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8bの内面にコーティング剤が設けられても良い。織物テープ8bの内面とは、中間成形体6bと当接する面である。このコーティング剤として、フッ素系化合物又はシリコン系化合物が好ましい。
【0172】
第三実施形態では、第一実施形態と同様に、繊維含有率R1の小さい繊維強化樹脂部材を用いているため、成形精度が向上し、ボイド率が抑制される。更に、第三実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに移行しうる。織物テープ8bは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8bは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8bにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0173】
第三実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8bを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。更に、織物テープ8bは、中間成形体6bに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ラッピング層数L1が複数とされることにより、織物テープ8bが中間成形体6bに大きな圧力を付与することができる。この圧力に起因して、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。この圧力に起因して、マトリクス樹脂が一層抜けやすくなり、FRP管状体の軽量化が達成されうる。
【0174】
織物テープ8bによる樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。硬化工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化及び低ボイド率が達成されている。
【0175】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0176】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、平均ラッピング層数Laは、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。また平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、平均ラッピング層数Laは、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0177】
なお、平均ラッピング層数Laは、前述したラッピング層数L1とは異なる概念である。ラッピング層数L1が中間成形体6bの表面上の各点においてそれぞれ定まるのに対し、平均ラッピング層数Laは、ラッピング層数L1の平均値として理解されうる。具体的には、平均ラッピング層数Laは以下の計算式(1)により決定されうる。
La=St/Sn ・・・(1)
ただし、式(1)において、Stは巻き付けられた状態における織物テープの内面の総面積(mm2)であり、Snは巻き付けられた織物テープと接触する部分における中間成形体6bの表面積(mm2)である。この総面積Stは、巻かれている織物テープの長さNt(mm)と織物テープの幅Wa(mm)との積である。即ちSt=Nt×Waである。長さNtは、織物テープの長手方向に沿って測定される。長さNtは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの長さNkと実質的に等しいか、又は、この長さNkよりも長い。Nt>Nkとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。幅Waは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの幅W1bと実質的に等しいか、又は、この幅W1bよりも狭い。W1b>Waとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。ラッピング層数L1は0又は1以上の整数であるが、平均ラッピング層数Laは整数とならない場合がある。
【0178】
例えば、比(P1b/W1b)が0.5であり、W1b=Waであり、且つ巻き付け回数が1回である場合、平均ラッピング層数Laは、2層である。この場合、巻き付けピッチP1bの誤差を無視すれば、ラッピング層数L1は、全ての点において、2層である。
【0179】
上記総面積St及び表面積Snは、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの範囲において測定される。前述したように、管状体製造の仕上げ工程においては、硬化管状体の両端部が切断されてもよい。この両端部の切断がなされた場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。同様に、前述した両端部の切断がなされた場合、管状体のバット端位置Bt1と、硬化管状体のバット端位置Btとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。図9には、両端部の切断がなされた場合におけるチップ端位置Tp1及びバット端位置Bt1が示されている。
【0180】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。ラッピング層数L1が過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。またラッピング層数L1が過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0181】
平均ラッピング層数Laの値に関わらず、巻き付け回数が1回である場合、巻き付け部分の両端部には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。例えば、平均ラッピング層数Laが2層以上とされた場合であっても、巻き付け回数が1回である限り、巻き付けの開始部分及び巻き付けの終了部分には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。巻き付けの開始点に隣接し且つラッピング層数L1が1層である部分Xtは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Xtが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。同様に、巻き付けの終了点に隣接し且つラッピング層数L1が1回である部分Ytは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Ytが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。なお、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Xtには該当しない。同様に、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Ytには該当しない。上記軸方向とは、管状体の軸方向を意味する。
【0182】
巻き付け工程において、チップ側とバット側との間で織物テープ8bを往復させて巻き付けてもよい。例えば、織物テープ8bをバット側からチップ側に向かって螺旋状に巻き付け、引き続き、織物テープ8bをチップ側からバット側に向かって螺旋状に巻き付けてもよい。このような往復方式の巻き付けにより、巻き付け回数が増加されてもよい。なお本明細書では、このような往復方式の巻き付けにより一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。織物テープ8bが途中で切断されることなく一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。前述した通り、生産性の観点から、平均ラッピング層数Laを増加させる方法としては、巻き付け回数が1回とされ且つ比(P1b/W1b)が小さくされる方法が好ましい。
【0183】
前述したように、織物テープ8bは張力F1bが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記テープ巻き付け工程において織物テープ8bに付与される引張応力T1bが定義される。引張応力T1bは、上記張力F1bを、織物テープ8bの断面積Sdで割った値である。即ち、[T1b=F1b/Sd]である。この断面積Sdは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8bにおいて測定される。この引張応力T1bは、巻き付けられる直前において織物テープ8bに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1bは、巻き付けられた状態において織物テープ8bに作用する引張応力を意味しない。
【0184】
織物テープ8bに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8bのたるみを抑制する観点から、引張応力T1bは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1bは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0185】
なお、樹脂吸収量を高める観点から、平均ラッピング層数Laと、織物テープ8bの厚さd1(μm)との積(La×d1)は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。生産性の観点から、この積(La×d1)は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
【0186】
本第三実施形態でも、繊維含有率Z1、繊維含有率Z2及び差(Z2−Z1)は、上記第一実施形態と同様とされる。繊維強化樹脂部材における繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。含有率Rxの好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。
【実施例】
【0187】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0188】
下記の表1に示される実施例は、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例である。下記の表1に示される比較例は、表1の実施例に対応する。
【0189】
下記の表2に示される実施例は、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例である。下記の表2に示される比較例は、表2の実施例に対応する。
【0190】
下記の表3に示される実施例は、織物テープのみを用いた実施例である。下記の表3に示される比較例は、表3の実施例に対応する。
【0191】
先ず、評価方法について説明する。
【0192】
[順式フレックスの測定]
硬化管状体のバット端Btから75mm隔てた位置の上側と、このバット端Btから215mm隔てた位置の下側とが支持点とされた。これらの二点が支持された状態で、硬化管状体の軸線方向が水平とされた。次に、バット端Btから1039mm隔てた荷重点Kに、2.7kgの錘りを掛けた。錘りにより硬化管状体が曲がり、上記荷重点Kが下方へと移動した。荷重点Kの鉛直方向における移動量が、順式フレックスFjとして下記の表に示される。
【0193】
[しわの程度]
硬化管状体の表面に生じたしわ(皺)の程度が、外観の目視により評価された。次の5段階により評価がなされた。この評価が、下記の表で示される。評価点数が小さいほど、しわの発生程度が小さく、評価が高い。
評価1:しわが無い。
評価2:しわがごく僅かに見られる。
評価3:目立たない程度のしわが見られる。
評価4:しわがやや目立つ。
評価5:しわがかなり目立つ。
【0194】
[織物テープの厚さ]
織物テープの厚さd1は、JIS L 1096に準拠して、デジマチックマイクロメータを用いて測定された。240g/cm2の一定圧力を付与させて10秒間経過した後、240g/cm2の圧力のもとで測定がなされた。測定は5箇所で行われた。5箇所のデータの平均値が、「厚さd1」として下記の表に示される。
【0195】
[ボイド率Rb]
ボイド率Rbは、シャフト先端から90mm隔てた地点の断面の画像によりボイド面積Sb及びシャフト断面積Smを求め、下記式により算出した。
Rb(%)=(Sb/Sm)×100
【0196】
ゴルフクラブシャフトにおいては、先端部にヘッドが取り付けられるため、先端部における強度が特に重要である。ボイド率Rbは、シャフト強度との相関が高い。
【0197】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図12は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図12が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点とされた。T点は、チップTpから90mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。上記スパンSは、150mmとされた。この測定結果が下記の表に示される。
【0198】
[生産性]
以下の基準に従い、4段階で評価された。評価Aが、最も生産性が高く、良好である。評価Dは、最も生産性が低い。
A・・・硬化工程における加熱時間が4時間以内である。
B・・・硬化工程における加熱時間が4時間を超えて24時間以内である。
C・・・硬化工程における加熱時間が24時間を超えて72時間以内である。
D・・・硬化工程における加熱時間が72時間を超える。
【0199】
次に、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例について説明する。
【0200】
[実施例1]
図1で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図1及び表5で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表1には、シートs1からシートs6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表5には、実施例1のプリプレグ構成が示されている。
【0201】
表1及び表4に示される通り、シートs1及びシートs2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートs3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートs4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートs5及びシートs6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0202】
表5における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表5における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0203】
次に、上記中間成形体の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1を付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2を付与しつつなされた。張力F1及び張力F2は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1、F2に基づき、引張応力T1及び引張応力T2が算出された。
【0204】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1は15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1は35Mpaとされた。第一巻き付け工程において、巻き付けピッチP1は1.5mmとされた。
【0205】
第一巻き付け工程の平均ラッピング層数Laは、10とされた。比(P1/W1)が0.1とされることにより、平均ラッピング層数Laが10とされた。
【0206】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリプロピレン(PP)フィルムテープが用いられた。このPPフィルムテープとして、信越フィルム社製のPT30Hが用いられた。このフィルムテープの片面には、シリコン系のコーティング剤が設けられている。このコーティング剤層を内側にして、このPPフィルムテープが巻き付けられた。このPPフィルムテープの幅W2は25mmであり、厚さd2は30μmであった。第二巻き付け工程における引張応力T2は85Mpaとされた。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2は2mmとされた。
【0207】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。硬化工程では、第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップでは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0208】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、樹脂フィルムテープ及び織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。実施例1の仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0209】
[実施例2から5]
表1で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0210】
[比較例1から4]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表1に示される通りとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例1から4の硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0211】
なお、比較例1及び比較例2のPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3では、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4では、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0212】
【表1】
【0213】
差(Z2−Z1)は、硬化工程中において排出された樹脂の量(樹脂の減少量)を示している。差(Z2−Z1)が大きいことは、軽量化に寄与する。樹脂とともにボイドが排出されうる。差(Z2−Z1)が大きいことは、ボイド率の低減にも寄与する。
【0214】
樹脂の減少量が大きい場合、硬化管状体の外径が小さくなる。硬化管状体の外径が小さい場合、順式フレックスFjは、より大きくなる。表1では、順式フレックスFjの逆数(1/Fj)を硬化管状体の質量Wtで割った値[1/(Fj×Wt)]が示されている。[1/(Fj×Wt)]が大きいことは、単位質量当たりの剛性が向上していることを意味する。[1/(Fj×Wt)]が大きいほど、軽量性に優れる。
【0215】
実施例1は、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2は、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3は、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1から3の結果は、良好である。
【0216】
実施例4は、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4は、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4の結果は、良好である。
【0217】
比較例1は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0218】
比較例2は、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0219】
比較例3は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0220】
比較例4では、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4では、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0221】
次に、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例について説明する。
【0222】
[実施例1a]
図5で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図5及び表6で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表2には、シートh1からシートh6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表6には、実施例1aのプリプレグ構成が示されている。
【0223】
表2及び表4に示される通り、シートh1及びシートh2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートh3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートh4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートh5及びシートh6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0224】
表6における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表6における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0225】
次に、上記中間成形体の外側にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1aを付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2aを付与しつつなされた。張力F1a及び張力F2aは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1a、F2aに基づき、引張応力T1a及び引張応力T2aが算出された。
【0226】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1aは15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1aは15Mpaとされた。第一巻き付け工程における平均ラッピング層数Laは、10とされた。
【0227】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、ゴムテープが巻き付けられた。このゴムテープとして、EPDMゴムが基材ゴムとされたゴムテープが用いられた。このゴムテープには、コーティング剤が設けられていない。このゴムテープとして、三ツ星ベルト社製の商品名「ネオ・ルーフィングE」を下記の幅W2aとなるように切断してなるテープが用いられた。このゴムテープの幅W2aは12.5mmとされ、このゴムテープの厚さd2aは1000μmであった。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2aは5mmとされた。
【0228】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0229】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、ゴムテープ及び織物テープが除去され、実施例1aに係る硬化管状体を得た。実施例1aの仕様と評価結果が下記の表2に示される。
【0230】
[実施例2aから5a]
表2で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2に示される。
【0231】
[比較例1aから4a]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表2に示される通りとされた。その他については実施例1aと同様にして、比較例1aから4aの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2に示される。
【0232】
なお、比較例1a及び比較例2aのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3aでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4aでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0233】
【表2】
【0234】
実施例1aは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2aは、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3aは、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1aから3aの結果は、良好である。
【0235】
実施例4aは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4aは、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4aの結果は、良好である。
【0236】
比較例1aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0237】
比較例2aは、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、シャフト重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0238】
比較例3aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0239】
比較例4aでは、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4aでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0240】
次に、織物テープのみを用いた実施例について説明する。
【0241】
[実施例1b]
図9で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図9及び表7で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表3には、シートe1からシートe6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表7には、実施例1bのプリプレグ構成が示されている。
【0242】
表3及び表4に示される通り、シートe1及びシートe2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートe3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートe4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートe5及びシートe6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0243】
表7における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表7における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0244】
次に、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。巻き付け工程において、巻き付け回数は1回とされた。テープ巻き付け工程は、一定の張力F1bを付与しつつなされた。張力F1bは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1bに基づき、引張応力T1bが算出された。
【0245】
テープ巻き付け工程では、織物テープのみが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1bは15mmであり、厚さd1は100μmであった。テープ巻き付け工程における引張応力T1bは50Mpaとされた。平均ラッピング層数Laは10とされた。
【0246】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0247】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、織物テープが除去され、実施例1bに係る硬化管状体を得た。実施例1bの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0248】
[実施例2bから5b]
表3で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0249】
[比較例1bから4b]
織物テープに代えて他のテープが用いられ、且つ、各仕様が表3に示される通りとされた。その他については実施例1bと同様にして、比較例1bから4bの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0250】
なお、比較例1b及び比較例2bのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3bでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4bでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0251】
【表3】
【0252】
実施例1bは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2bは、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3bは、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1bから3bの結果は、良好である。
【0253】
実施例4bは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4bは、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4bの結果は、良好である。
【0254】
比較例1bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0255】
比較例2bは、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、シャフト重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0256】
比較例3bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0257】
比較例4bでは、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4bでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0258】
【表4】
【0259】
【表5】
【0260】
【表6】
【0261】
【表7】
【0262】
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆるFRP管状体に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】図1は、本発明の一実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図2】図2は、第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図3】図3は、第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図4】図4は、樹脂フィルムテープの断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図6】図6は、第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図7】図7は、第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図8】図8は、ゴムテープの断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図10】図10は、テープ巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図11】図11は、テープ巻き付け工程の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図12】図12は、三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0265】
2・・・マンドレル
4・・・プリプレグ
6・・・中間成形体
8・・・織物テープ
10・・・樹脂フィルムテープ
12・・・織物被覆体
s1、s2、s3、s4、s5、s6・・・切断されたプリプレグシート
2a・・・マンドレル
4a・・・プリプレグ
6a・・・中間成形体
8a・・・織物テープ
10a・・・ゴムテープ
12a・・・織物被覆体
h1、h2、h3、h4、h5、h6・・・切断されたプリプレグシート
2b・・・マンドレル
4b・・・プリプレグ
6b・・・中間成形体
8b・・・織物テープ
10b・・・織物テープ
12b・・・織物被覆体
e1、e2、e3、e4、e5、e6・・・切断されたプリプレグシート
20・・・シャフト
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法及びこの製造方法により製造された管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非力な高齢者や女性ゴルファーの増加に伴い、わずかな力でも飛距離を伸ばすことのできるゴルフクラブシャフト(以下、単にシャフトともいう)の開発が望まれている。中でもシャフトの軽量化は、この問題を解決する有効な手段の一つと考えられ、様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
この取り組みとして、材料面では、まず、スチールからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)への変更が挙げられる。また、同じCFRPでも、カーボン繊維の強度を向上させること、樹脂の物性を変更すること又はカーボン繊維と樹脂との密着強度を向上させること等により、シャフト全体の強度を向上させ、その分シャフト重量を低減している。また、構造面での取り組みとして、強度が向上する角度に繊維を配向又は積層させて強度を向上させることにより、その強度向上分の重量を低減してきた。
【0004】
繊維強化樹脂製の管状体(以下、FRP管状体ともいう)は、様々な用途で用いられている。FRP管状体の製造方法として、ラッピングテープを用いた製造方法が公知である。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のFRP材料を巻き付けた後、所定の張力を付与しつつ樹脂テープを巻き付ける。この樹脂テープは、一般にラッピングテープとも称されている。このラッピングテープにより、成形圧力が付与される。
【0005】
このラッピングテープは、最終的には除去される。この除去を容易とするため、離型性の高いラッピングテープが好ましい。特開2002−144439号公報には、離型性を高める目的で、内面が織物文様であるラッピングテープを開示する。具体的には、織物と樹脂フィルムとが一体とされたラッピングテープが開示されている。
【特許文献1】特開2002−144439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CFRP製シャフトを軽量化する目的で、上記の通り、繊維や樹脂の強度、あるいは、繊維と樹脂との密着を高めることでシャフト全体の強度を高め、強度向上分の重量を低減する方法が採られてきた。そして、それらの方法によりシャフトの軽量化が図られてきた。しかしながら強度を向上させてその分軽量化するという開発にも限界がある。一方、ゴルファーのニーズには限界が無く、少しでも飛距離を伸ばすことが求められている。飛距離の増加を実現する手段の一つがシャフトの軽量化であり、シャフト軽量化への要求は尽きない。この要求を実現するために、シャフトに必要な最低限の強度は維持しつつ、シャフト剛性に関わる特性(フレックスやトルク)は犠牲にするという手法が採られてきた。しかしこの手法による軽量化も限界にきており、剛性の低下もクラブとしての機能に支障をきたすところまできている。如何にシャフトの剛性を維持したまま更なる軽量化を図るかが重要である。
【0007】
シャフトの剛性を維持したまま軽量化を実現する手段として、繊維含有率の高いCFRPを使用することが考えられる。つまり、管状体の成形品としての強度や剛性を主として担う繊維の含有率を高めることにより、単位重量当たりの強度や剛性が高まり、軽量化が図られる。しかしながら、繊維含有率の高いCFRPでの成形は、タック性が不足しているため、成形しにくい上に、繊維強化樹脂部材層間に空気が入り込みやすい。またこの場合、材料自体にも空気が多く含まれることになるため、管状体全体に空気が多く入り込む。この空気はボイドとなり、管状体の強度や耐久性を低下させうる。
【0008】
このように、軽量化を図りながら、強度と剛性とを同時に維持することは困難である。
【0009】
また、上記従来技術のラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとで伸び率が異なるため、張力を付与した際に織物と樹脂フィルムとが部分的に分離したり、テープが捻れたり、テープが湾曲したり、成形圧力がばらついたりする現象が発生しうる。これらの現象により、FRP管状体の表面が不均一となりやすく、不良品の発生又は強度の不均一が生じやすい。
【0010】
ところで、軽量で且つ強度の高いFRP管状体は、様々な用途において有用である。このFRP管状体、例えばゴルフクラブシャフトでは、軽量化が望まれている。軽量なゴルフクラブシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離の増大に寄与しうる。本発明では、新たな技術思想に基づき、成形精度が向上し、FRP管状体のボイド率が低下しうる製造方法を見いだした。成形精度の向上は、強度の向上に寄与しうる。ボイド率の低下は、強度の向上に寄与しうる。強度の向上は、シャフトの軽量化に寄与しうる。この製造方法においては、材料及びラッピングテープが従来と異なる。
【0011】
本発明の目的は、成形精度及びボイド率を効果的に改善しうる管状体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられている。上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下である。上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている。
【0013】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0014】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0015】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である。
【0016】
好ましくは、上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0017】
好ましくは、上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【0018】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0019】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0020】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である。
【0021】
好ましくは、上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0022】
好ましくは、上記ラッピングテープが織物テープのみである。
【0023】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0024】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である。
【0025】
好ましい管状体は、上記いずれかの製造方法により製造される。より好ましい管状体は、ボイド率Rbが0.5%以下である。
【発明の効果】
【0026】
繊維強化樹脂部材の繊維含有率R1が低いため、成形精度が向上しうる。また、織物テープが用いられることにより、硬化工程においてマトリクス樹脂が排出される。マトリクス樹脂とともに、ボイドも排出されうる。本発明により、軽量で且つ高強度な管状体が得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0028】
本実施形態の製造方法では、ラッピングテープが用いられる。以下の実施形態では、ラッピングテープの使用方法として、次の3通りの方法が採用される。
(1)ラッピングテープとして、織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる
(2)ラッピングテープとして、織物テープとゴムテープとが用いられる。
(3)ラッピングテープとして、織物テープのみが用いられる。
【0029】
先ず、ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる実施形態が、図1から図4を参照しつつ、説明される。
【0030】
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2と繊維強化樹脂部材4とが用意される。典型的なマンドレル2の材質は、鋼等の金属である。マンドレル2の中心軸線は、略直線である。マンドレル2の断面形状は、円形である。マンドレル2は、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2は、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2は、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2は、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2の全体において直径が一定であってもよい。
【0031】
マンドレル2は、管状体の内面を成形する。マンドレル2の形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2は、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2の表面に離型剤が塗布される。
【0032】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。この工程が、以下、巻回工程とも称される。
【0033】
巻回工程に先立ち、繊維強化樹脂部材が用意される。本実施形態では、繊維強化樹脂部材は、シート状である。繊維強化樹脂部材は、プリプレグ4である。この製造方法では、シート状の繊維強化樹脂部材が巻回される。この製造方法は、シートワインディング製法とも称される。なお、繊維強化樹脂部材として、プリプレグ4の他、液状の樹脂に含浸させた繊維が例示される。この繊維を用いた製法の一例は、いわゆるフィラメントワインディング製法である。本製造方法は、フィラメントワインディング製法にも適用されうる。
【0034】
プリプレグ4は、繊維とマトリクス樹脂とを含む。この繊維は、炭素繊維である。プリプレグ4の炭素繊維は、一方向に配向している。後述されるように、この繊維は、炭素繊維以外でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。巻回工程において、マトリクス樹脂は、完全には硬化していない。よってプリプレグ4は柔軟性を有する。この柔軟性は、プリプレグ4のマンドレル2への巻回を許容する。なお、後述されるように、マトリクス樹脂は限定されず、好ましくはエポキシ樹脂である。
【0035】
巻回工程の前に、プリプレグ4は、所望の形状に切断される。図1の実施形態では、6枚のプリプレグ4が用いられる。図1の実施形態では、切断されたプリプレグ4の例として、シートs1からs6が示されている。プリプレグ4は、いわゆるアングル層用シートs1、s2と、ストレート層用シートs3、s5、s6と、フープ層用シートs4とを含む。プリプレグ4は、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートs1からs5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートs6とを含む。なお、プリプレグ4の仕様は限定されない。プリプレグ4の枚数は限定されない。プリプレグ4の形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0036】
巻回工程では、シートs1からシートs6までが、順次マンドレル2に巻回される。巻回に先立ち、シートs2は、シートs1に貼り合わせられる。この貼り合わされたシート群がマンドレル2に巻回される。この貼り合わせにおいて、シートs2は、裏返される。この裏返しにより、シートs1の繊維とシートs2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図1において各シートs1からs6に記載は角度が記載されている。この角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度θ1を示している。
【0037】
シートs1からs6の巻回は、例えば人力によりなされる。巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。巻回工程により、中間成形体6が得られる。中間成形体6は、巻き付けられたプリプレグ4により構成されている。中間成形体6の断面は、渦巻き状の層よりなる。この層は、プリプレグ4により形成されている。
【0038】
管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の繊維含有率R1は、50質量%以上が好ましく、55質量%がより好ましい。繊維含有率が小さい(樹脂含有率が大きい)プリプレグは、粘着性(タック性)に優れる。更に、繊維含有率が小さい(樹脂含有率が大きい)プリプレグは、柔軟である。繊維含有率R1が小さいプリプレグは、巻きつけやすい。繊維含有率R1が低いプリプレグでは、皺等の巻き付け不良が起こりにくい。巻き付け不良を有する中間成形体は、硬化工程において、そのまま硬化する。巻き付け不良は、成形不良を意味する。成形精度を高める観点から、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。繊維含有率R1は、裁断されたプリプレグのそれぞれにおいて定まる。図1の実施形態において、繊維含有率R1は、シートs1、s2、s3、s4、s5及びs6のそれぞれについて定まる。少なくとも一枚のシートの繊維含有率R1が、上記好ましい範囲を満たせばよい。一部の繊維強化樹脂部材において、繊維含有率R1が70質量%を超えてもよい。繊維含有率R1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の製品データに基づき決定されうる。
【0039】
繊維含有率R1が小さい(樹脂含有率が大きい)場合、繊維含有率Z1(後述)が小さくなりやすい。繊維含有率Z1が小さい場合、硬化工程中において織物テープに移動するマトリクス樹脂が増加しやすい。つまり、繊維含有率R1が小さい場合、後述される差(Z2−Z1)が大きくなりやすい。織物テープに移動するマトリクス樹脂が増加すると、マトリクス樹脂とともに織物テープに移動する気泡も増加しやすい。よって、差(Z2−Z1)が大きい場合、ボイド率が低下しやすい。また、差(Z2−Z1)が大きい場合、管状体が軽量化される。これらの観点からも、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0040】
繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の生産工程においては、一方向に引きそろえた炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸させる。炭素繊維の割合が多い場合、繊維強化樹脂部材の生産工程において空気が入り込みやすい。逆に、マトリクス樹脂の割合が多い場合、繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の生産工程において空気が入り込みにくい。このため、繊維含有率R1が小さい場合、繊維強化樹脂部材に含まれるボイドは、比較的少ない。繊維含有率R1が大きい場合、繊維強化樹脂部材に含まれるボイドは、比較的多い。この観点からも、繊維含有率R1は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0041】
繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材の含有率Rxは限定されない。繊維含有率R1を好ましい範囲とした場合に得られる利点をより高める観点から、含有率Rxは、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がより好ましい。含有率Rxは、100質量%であってもよい。繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の合計質量がW1(g)とされ、中間成形体の質量がW2(g)とされるとき、含有率Rxは、次の式により算出される。質量W2は、全ての繊維強化樹脂部材(プリプレグ)の合計質量に等しい。
Rx=(W1/W2)×100
【0042】
硬化工程において、マトリクス樹脂及びボイドは、シャフトの外側(織物テープ側)に排出される。よって、シャフトの外側に存在するボイドは、外部に排出されやすい。これに対して、シャフトの内側に存在するボイドは、外部に排出されにくい。この観点から、ボイドが存在する場合、そのボイドの位置は、シャフトの外側に近いのが好ましい。
【0043】
以下、上記好ましい範囲の繊維含有率R1を有する繊維強化樹脂部材により形成された部分がm1とされ、この部分m1の厚みがtm1とされる。また、上記好ましい範囲の繊維含有率R1よりも多い繊維含有率R1を有する繊維強化樹脂部材により形成された部分がm2とされ、この部分m2の厚みがtm2とされる。厚みtm1及び厚みtm2は、硬化管状体における値である。
【0044】
含有率Rxが100%でない場合、上記部分m1と上記部分m2とが混在することになる。ボイドをシャフトの外側に存在させ、ボイドの抜けを容易とする観点から、上記部分m2の内側に上記部分m1が配置されるのが好ましい。ボイドの抜けを容易とする観点から、上記部分m2が最外層を含むのが好ましい。この最外層の外面は、硬化管状体の外面である。
【0045】
ボイド率の低下の観点から、厚みtm1の、硬化管状体の厚みtkに対する比(tm1/tk)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上がより好ましい。比(tm1/tk)は、1.0であってもよい。好ましくは、厚みtkは、厚みtm1と厚みtm2との和である。厚みtkは、硬化管状体の内面から外面までの厚みである。
【0046】
繊維には、真っ直ぐになろうとする性質がある。繊維の配向角度とシャフト軸方向とが平行に近いほど、繊維の曲がりが少なく、巻き付けが行いやすい。繊維の配向角度θ1の絶対値が大きいほど、繊維の曲がりが大きく、巻き付けが行いにくい。巻き付けが行いにくい場合、皺等の巻き付け不良が生じやすい。また、巻き付けが行いにくい場合、ボイドを巻き込みやすい。一方、前述の通り、繊維含有率R1が小さい場合、巻き付けが行いやすい。これらを併せて考えると、角度θ1の絶対値が大きい場合であっても、繊維含有率R1が小さければ、巻きにくさが緩和される。また、角度θ1の絶対値が大きい場合であっても、繊維含有率R1が小さければ、ボイドを巻き込みにくい。このように、繊維含有率R1が小さいことによる硬化は、θ1の絶対値が大きい場合に顕在化しうる。この観点から、繊維含有率R1が上記好ましい範囲である繊維強化樹脂部材の角度θ1の絶対値は、20度以上が好ましく、30度以上がより好ましく、40度以上がより好ましい。θ1の絶対値の上限は、90度である。
【0047】
シャフト強度の観点から、繊維強化樹脂部材の繊維が炭素繊維である場合、この炭素繊維は、ピッチ系よりもPAN系が好ましい。
【0048】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図2及び図3は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図2及び図3の断面において、中間成形体6は、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6は、前述したように複数の層よりなる。
【0049】
テープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8、10が用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8である。第二のラッピングテープは、樹脂フィルムテープ10である。
【0050】
テープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8が用いられる。織物テープ8は、織物を基材とするテープである。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープ10が用いられる。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムを基材とするテープである。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図2で示される。第二巻き付け工程の様子が、図3で示される。
【0051】
第一巻き付け工程では、中間成形体6の外周面に織物テープ8が直接巻き付けられる。中間成形体6の外周面と織物テープ8とは当接する。織物テープ8は中間成形体6の外周面に接触している。
【0052】
図2が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6の軸線方向と織物テープ8の長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8は、中間成形体6に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8の幅W1は、巻き付けピッチP1よりも広い。巻き付けピッチP1は、図2において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8は、中間成形体6の全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6の全体が織物テープ8により覆われる。なお、織物テープ8の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6に固定される。この両端の固定により、織物テープ8の巻き付けが自然に解けることはない。
【0053】
織物テープ8の巻き付けは、張力F1を付与しつつなされる。この張力F1により、中間成形体6は、織物テープ8により締め付けられる。織物テープ8の巻き付けにより、織物被覆体12が得られる。織物被覆体12は、中間成形体6が織物テープ8で覆われてなる。
【0054】
第二巻き付け工程では、織物被覆体12の外周面に樹脂フィルムテープ10が直接巻き付けられる。織物被覆体12の外周面と樹脂フィルムテープ10とは当接する。樹脂フィルムテープ10は織物被覆体12の外周面に接触している。つまり樹脂フィルムテープ10は織物テープ8に接触している。
【0055】
図3が示すように、第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12の軸線方向と樹脂フィルムテープ10の長手方向とは互いに垂直とされない。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、樹脂フィルムテープ10の幅W2は、巻き付けピッチP2よりも広い。巻き付けピッチP2は、図3において両矢印で示されている。つまり、樹脂フィルムテープ10は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12の全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12の全体が樹脂フィルムテープ10により覆われる。なお、樹脂フィルムテープ10の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12に固定される。この両端の固定により、樹脂フィルムテープ10の巻き付けが自然に解けることはない。
【0056】
樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、張力F2を付与しつつなされる。この張力F2により、織物被覆体12は、樹脂フィルムテープ10により締め付けられる。
【0057】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6は、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10によって締め付けられた状態となる。
【0058】
なお織物被覆体12の表面には、織物テープ8による螺旋模様が形成されているが、図3においては、この織物テープ8による螺旋模様の記載が省略されている。
【0059】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10が巻き付けられた中間成形体6において、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、加熱工程である。加熱は、加熱炉によりなされる。加熱炉の一例は、熱風を用いた加熱炉である。この加熱炉では、炉内の天井から熱風が発生し、この熱風が炉内を循環する。この熱風が被加熱物(テープで覆われた中間成形体6)に吹き付けられる。
【0060】
硬化工程では、マトリクス樹脂が加熱されるため、マトリクス樹脂は流動化しうる。マトリクス樹脂中の気泡は、マトリクス樹脂とともに移動しうる。流動化したマトリクス樹脂は、織物テープに移動しうる。マトリクス樹脂中の気泡も、マトリクス樹脂とともに、織物テープに移動しうる。この気泡の移動(排出)に起因して、管状体のボイド率が低減しうる。
【0061】
好ましい硬化工程は、第一加熱ステップと、第二加熱ステップとを含む。より好ましくは、硬化工程は、第一加熱ステップ及び第二加熱ステップのみからなる。第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされる。第一加熱ステップの温度は、第二加熱ステップの温度よりも低い。
【0062】
第一加熱ステップの温度は、低い。低温の場合、気泡の熱膨張が少ない。熱膨張が少ないため、気泡が大きくなりにくい。第一加熱ステップでは、気泡の熱膨張が抑制されつつ、マトリクス樹脂の硬化が進行する。第一加熱ステップでマトリクス樹脂の硬化が進行するため、第二加熱ステップに移行した段階では、気泡の熱膨張は起こりにくい。第一加熱ステップが長時間とされることにより、第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂の硬化はより一層進行する。第一加熱ステップによりマトリクス樹脂の硬化が進行している場合、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張は、更に起こりにくい。
【0063】
気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、115℃以下が好ましく、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
【0064】
第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂を流動化させ、織物テープへのマトリクス樹脂の移動を促進する観点から、第一加熱ステップの温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
【0065】
マトリクス樹脂が流動化している時間を長くする観点から、第一加熱ステップの時間は、15分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がより好ましく、120分以上がより好ましい。マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第一加熱ステップの温度が80℃よりも低い場合、第一加熱ステップの時間は1440分以上が好ましい。
【0066】
シャフトの生産性の観点から、第一加熱ステップの時間は、4320分以下が好ましい。
【0067】
長時間の第一加熱ステップにより、マトリクス樹脂の硬化はかなり進行している。しかし、第一加熱ステップは低温であるため、マトリクス樹脂の硬化は完全ではない。このため第二加熱ステップが設定される。高温の第二加熱ステップにより、マトリクス樹脂が完全に硬化しうる。
【0068】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。シャフトの製造に要するエネルギーのコストを削減する観点から、第二加熱ステップの温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0069】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。シャフトの生産性の観点から、第二加熱ステップの時間は、240分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、60分以下がより好ましい。
【0070】
硬化工程の温度は、加熱炉(オーブン)内の空気の温度を意味しうる。硬化工程の温度は、硬化工程におけるラッピングテープの表面温度を意味しうる。
【0071】
硬化工程の後、マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先に樹脂フィルムテープ10の除去がなされ、次に織物テープ8の除去がなされる。マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2が引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。
【0072】
通常は、上記硬化管状体に仕上げ加工が施されて、最終製品の管状体が完成する。この仕上げ加工には、両端部の切断、表面研磨、塗装等が含まれうる。
【0073】
図4は、樹脂フィルムテープ10の断面図である。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムよりなる基材14と、コーティング剤16とを有する。コーティング剤16は層を形成している。樹脂フィルムテープ10は、基材14とコーティング剤16との2層構造である。基材14の内面に、コーティング剤16が設けられている。コーティング剤16として、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なお、織物テープ8に発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8の内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0074】
上記の如く、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂(マトリクス樹脂)は織物テープ8に移行しうる。特に、第一加熱ステップにおいて、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。
【0075】
織物テープ8は、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8は、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8により、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0076】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率R1が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率R1が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。つまり、繊維含有率R1が高い繊維強化樹脂部材では、巻き付け不良が発生しやすい。また、繊維含有率R1が高い場合、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなる。この空気は、管状体においてボイドとなりうる。このボイドは、シャフトの強度や耐久性を損なう。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0077】
本実施形態の製造方法では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8を張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側に樹脂フィルムテープ10を張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、硬化工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に吸収される。この吸収により、繊維含有率R1の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材を使用しながら、管状体の繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8は、中間成形体6に含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、樹脂フィルムテープ10が中間成形体6に大きな圧力を加えることにより、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0078】
織物テープ8による樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、繊維含有率R1が低い繊維強化樹脂部材を用い、且つ、最終的に得られる管状体の繊維含有率が高められ得る。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つシャフトの繊維含有率の向上が達成されうる。本実施形態では、硬化工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0079】
本実施形態では、織物テープ8の外側に樹脂フィルムテープ10が巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さない樹脂フィルムテープ10が織物テープ8の外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8への樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6に含まれる空気が織物テープ8に移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0080】
前述したように、特開2002−144439に記載されたラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとが一体化されている。このテープも織物部分に樹脂が吸収される可能性がある。しかし実際には、この一体化されたテープでは、樹脂の吸収効果が低いことが判明した。
【0081】
このように吸収効果が低い原因は、次のように考えられる。ラッピングテープは、幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。よって、螺旋状に巻き付けられたラッピングテープには、ラッピングテープ同士が重なった重複部が存在する。つまり、この重複部には、中間成形体と接する内側のラッピングテープ(内側テープ)と、この内側テープの外側に位置する外側のラッピングテープ(外側テープ)とが存在する。従来の一体化されたラッピングテープの場合、内側テープに存在する樹脂フィルム層が、外側テープと中間成形体との間に介在することになる。この樹脂フィルム層は、樹脂及びエアーを通さない。よって、従来の一体化されたテープの場合、上記重複部において、内側テープの樹脂フィルム層が、外側テープの織物層への樹脂及び空気の移行を阻害する。このように、従来の一体化されたテープでは、樹脂及び空気が織物層に移行しにくい。
【0082】
更に、織物と樹脂フィルムとが一体化されているテープでは、織物と樹脂フィルムとの間の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。更に、従来の一体化されたテープでは、織物と樹脂フィルム層との間に存在する接着剤層の一部が織物の内部に浸透しており、織物自体の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。
【0083】
これに対して本実施形態では、上記重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0084】
更に本実施形態では、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10とが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0085】
前述したように、織物テープ8は幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8により、凹凸が形成される。織物テープ8同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8が重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8の幅方向縁9(図2参照)は、織物テープ8の厚さに相当する段差を形成する。この段差により、凹凸が形成される。これらの凹凸により、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8側に移行しやすい。
【0086】
第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、張力F2を付与されつつ織物被覆体12に巻き付けられる。この張力F2に起因して、外側から樹脂フィルムテープ10を巻き付けられた織物テープ8に皺が発生することがある。上記コーティング剤16は、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16は、第二巻き付け工程における織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8における皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16は、樹脂フィルムテープ10に離型性を付与する。この離型性により、樹脂フィルムテープ10の除去が容易とされうる。
【0087】
前述したように、織物テープ8は張力F1が付与されつつ巻き付けられており、樹脂フィルムテープ10は張力F2が付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8に付与される引張応力T1と、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープ10に付与される引張応力がT2とが定義される。引張応力T1は、上記張力F1を、織物テープ8の断面積S1で割った値である。即ち、[T1=F1/S1]である。この断面積S1は、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8において測定される。この引張応力T1は、巻き付けられる直前において織物テープ8に作用する引張応力を意味する。この引張応力T1は、巻き付けられた状態において織物テープ8に作用する引張応力を意味しない。引張応力T2は、上記張力F2を、樹脂フィルムテープ10の断面積S2で割った値である。即ち、[T2=F2/S2]である。この断面積S2は、張力が作用していない(フリーな)状態の樹脂フィルムテープ10において測定される。この引張応力T2は、巻き付けられる直前において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味する。この引張応力T2は、巻き付けられた状態において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味しない。
【0088】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8のたるみを抑制する観点から、引張応力T1は5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1は150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0089】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2は40Mpa以上が好ましく、50Mpa以上がより好ましく、65Mpa以上が更に好ましい。樹脂フィルムテープ10が切れることを抑制する観点から、引張応力T2は200Mpa以下が好ましく、180Mpa以下がより好ましく、150Mpa以下がより好ましい。
【0090】
引張応力T2は、引張応力T1よりも大きいのが好ましい。T2>T1とされることにより、織物テープ8に移行する樹脂の量が増加しうる。引張応力T1が比較的小さくされることにより、織物テープ8の空隙が維持されやすい。引張応力T2が比較的大きくされることにより、織物テープ8の空隙を維持しつつ、中間成形体6への締め付け力を大きくすることができる。よって、T2>T1により、織物テープ8に樹脂が移行しやすい。また、T2>T1とすることにより、FRP管状体内のボイドが低減される。
【0091】
第二巻き付け工程において織物テープ8に皺が発生することを抑制する観点から、比(T1/T2)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。織物テープ8に移行する樹脂を増加させる観点から、比(T1/T2)は、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
【0092】
本実施形態では、中間成形体6の繊維含有率がZ1(質量%)とされ、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)とされる。軽量化及び低ボイド率の観点から、差(Z2−Z1)は3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、ラッピングテープを除去しにくくなる等により生産性が低下しやすい。この観点から、差(Z2−Z1)は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0093】
差(Z2−Z1)を3質量%以上30質量%以下とするための製造方法は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む上記製造方法に限定されない。この製造方法として、上記巻き付け工程において織物テープ8のみを巻き付ける製造方法が例示される。この製造方法は、上記第二巻き付け工程を含まない他は上記製造方法と同じである。織物テープ8のみを巻き付ける製造方法の一例は、後述される。
【0094】
FRP管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維含有率Z1は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。巻き付け不良を抑制する観点、繊維強化樹脂部材に含まれるボイド量を低減する観点、シャフトのボイド率低減の観点及びシャフト物性のばらつきを抑制する観点から、繊維含有率Z1は70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。中間成形体6の繊維含有率Z1は、個々の繊維含有率R1に基づいて算出される。繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の製品データに基づき決定されうる。
【0095】
硬化管状体の繊維含有率Z2は限定されない。FRP管状体を軽量とする観点から、繊維含有率Z2は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、中間成形体6から排出された樹脂によりラッピングテープの除去が行いにくくなるので、生産性が低下しやすい。この観点から、繊維含有率Z2は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下が更に好ましい。繊維含有率Z2の値は、繊維含有率Z1の値と、中間成形体6の質量と、除去された樹脂の質量とから算出される。中間成形体の繊維含有率Z1が低い場合であっても、硬化管状体の繊維含有率Z2を高くすることができる。樹脂の排出量即ち差(Z2−Z1)は、繊維含有率Z1よりも、織物テープのラッピング応力、織物テープの厚さ、織物テープが有する隙間等に依存する。
【0096】
織物テープ8の繊維は、離型性、締め付け力、強度等を総合的に考慮すると、ナイロン繊維及びポリエステル繊維が好ましい。織物テープ8の厚さd1は限定されない。織物テープ8による樹脂の吸収量を大きくするとともに、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙を増やす観点から、織物テープ8の厚さd1は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、織物テープ8の厚さd1は、150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、130μm以下が更に好ましい。
【0097】
織物テープ8の幅W1は限定されない。織物テープ8に吸収されうる樹脂の量を増加させる観点から、織物テープ8の幅W1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともに、中間成形体6を締め付けやすくする観点から、織物テープ8の幅W1は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0098】
織物テープ8の織り組織は限定されない。この織り組織として、平織り、朱子織り及び綾織りが例示される。張力により過度に引き延ばされると、樹脂が入り込みうる空隙及び繊維に吸収されうる樹脂の量が減少しやすい。張力により過度に引き延ばされることを抑制する観点から、織り組織には、織物テープ8の長手方向に対して略平行に配向する糸が存在しているのが好ましい。
【0099】
樹脂フィルムテープ10の基材14の材質としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエステル樹脂が例示される。これらの樹脂は引張強度が高いため好ましい。更には、繊維強化樹脂部材中の樹脂の粘度が低下する温度域において収縮する樹脂フィルムテープが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂層とポリエステル樹脂層とをラミネート積層してなる複合フィルムが好ましい。
【0100】
樹脂フィルムテープ10の厚さd2は限定されない。張力F2により切断されることを抑制する観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0101】
樹脂フィルムテープ10の幅W2は限定されない。管状体表面に発生する段差を抑制する観点から、幅W2は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、14mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0102】
繊維強化樹脂部材の繊維は限定されない。この繊維として、無機繊維、有機繊維及び金属繊維が例示される。この無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及びアルミナ繊維が例示される。この有機繊維として、ポリエチレン繊維及びポリアミド繊維が例示される。複数の繊維が組み合わされてもよい。ゴルフクラブシャフトに要求される剛性を確保しつつ軽量な管状体を得る観点から、繊維の引張弾性率は、5t/mm2以上が好ましく、10t/mm2以上がより好ましく、24t/mm2以上が更に好ましい。繊維の入手可能性の観点から、繊維の引張弾性率は100t/mm2以下が好ましい。この引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
【0103】
次に、ラッピングテープとして織物テープとゴムテープとが用いられる実施形態について、図5から図8を参照しつつ、説明する。
【0104】
図5は、第二実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2aと繊維強化樹脂部材4aとが用意される。マンドレル2aは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2aの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2aの中心軸線は、略直線である。マンドレル2aの断面形状は、円形である。マンドレル2aは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2aは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2aは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2aは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2aの全体において直径が一定であってもよい。
【0105】
マンドレル2aは、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2aの形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2aは、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2aの表面に離型剤が塗布される。
【0106】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0107】
巻回工程の前に、プリプレグ4aは、所望の形状に切断される。図5の実施形態では、6枚のプリプレグ4aが用いられる。図5の実施形態では、切断されたプリプレグ4aの例として、シートh1からh6が示されている。プリプレグ4aは、いわゆるアングル層用シートh1、h2と、ストレート層用シートh3、h5、h6と、フープ層用シートh4とを含む。プリプレグ4aは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートh1からh5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートh6とを含む。なお、プリプレグ4aの仕様は限定されない。プリプレグ4aの形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0108】
巻回工程は、上記第一実施形態と同様である。プリプレグ4aは、上記プリプレグ4と同様である。
【0109】
前述した第一実施形態と、本第二実施形態とでは、テープ巻き付け工程のみが相違する。樹脂フィルムテープに代えてゴムテープが用いられている他は、この第二実施形態は、上記第一実施形態と同様である。
【0110】
本実施形態のテープ巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にラッピングテープが巻き付けられる。図6及び図7は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図6及び図7の断面において、中間成形体6aは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6aは、前述したように複数の層よりなる。
【0111】
このテープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8a、10aが用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8aである。第二のラッピングテープは、ゴムテープ10aである。
【0112】
このテープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8aが用いられる。織物テープ8aは、織物を基材とするテープである。織物テープ8aは、織物のみにより構成されていてもよい。第二巻き付け工程では、ゴムテープ10aが用いられる。ゴムテープ10aは、ゴム又はゴム組成物を基材とするテープである。ゴムテープ10aは、ゴム組成物のみからなっていてもよい。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図6で示される。第二巻き付け工程の様子が、図7で示される。
【0113】
第一巻き付け工程では、中間成形体6aの外周面に織物テープ8aが直接巻き付けられる。中間成形体6aの外周面と織物テープ8aとは当接する。織物テープ8aは中間成形体6aの外周面に接触している。
【0114】
図6が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6aの軸線方向と織物テープ8aの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8aは、中間成形体6aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8aの幅W1aは、巻き付けピッチP1aよりも広い。巻き付けピッチP1aは、図6において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8aは、中間成形体6aの全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6aの全体が織物テープ8aにより覆われる。なお、織物テープ8aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6aに固定される。この両端の固定により、織物テープ8aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0115】
織物テープ8aの巻き付けは、張力F1aを付与しつつなされる。この張力F1aにより、中間成形体6aは、織物テープ8aにより締め付けられる。織物テープ8aの巻き付けにより、織物被覆体12aが得られる。織物被覆体12aは、中間成形体6aが織物テープ8aで覆われてなる。
【0116】
第二巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられる。この第二巻き付け工程では、織物被覆体12aの外周面にゴムテープ10aが直接巻き付けられる。織物被覆体12aの外周面とゴムテープ10aとは当接する。ゴムテープ10aは織物被覆体12aの外周面に接触している。つまりゴムテープ10aは織物テープ8aに接触している。
【0117】
図7が示すように、第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12aの軸線方向とゴムテープ10aの長手方向とは互いに垂直とされない。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、ゴムテープ10aの幅W2aは、巻き付けピッチP2aよりも広い。巻き付けピッチP2aは、図7において両矢印で示されている。つまり、ゴムテープ10aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。このゴムテープ10aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aの全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12aの全体がゴムテープ10aにより覆われる。なお、ゴムテープ10aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12aに固定される。この両端の固定により、ゴムテープ10aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0118】
ゴムテープ10aの巻き付けは、張力F2aを付与しつつなされる。この張力F2aにより、織物被覆体12aは、ゴムテープ10aにより締め付けられる。
【0119】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6aは、織物テープ8a及びゴムテープ10aによって締め付けられた状態となる。
【0120】
なお織物被覆体12aの表面には、織物テープ8aによる螺旋模様が形成されているが、図7においては、この織物テープ8aによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0121】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8a及びゴムテープ10aが巻き付けられた中間成形体6aにおいて、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。前述の通り、好ましくは、この硬化工程は、第一加熱ステップと第二加熱ステップとを含む。
【0122】
硬化工程の後、マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先にゴムテープ10aの除去がなされ、次に織物テープ8aの除去がなされる。マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2aが引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。硬化管状体の表面には、螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aの跡が螺旋状の凹凸として残る。
【0123】
図8は、ゴムテープ10aの断面図である。ゴムテープ10aは、ゴム組成物よりなる基材14aと、コーティング剤16aとを有する。ゴムテープ10aは、基材14aとコーティング剤16aとの2層構造である。基材14aの内面に、コーティング剤16aが設けられている。コーティング剤16aとして、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なおコーティング剤16aは設けられなくてもよい。また、織物テープ8aに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8aの内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0124】
本第二実施形態において、繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様である。
【0125】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、繊維含有率R1の小さい繊維強化樹脂部材を用いているため、成形精度が向上し、ボイド率が抑制される。また、本第二実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに移行しうる。織物テープ8aは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8aは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8aにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0126】
本実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8aを張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側にゴムテープ10aを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに吸収される。この吸収により、繊維含有率R1の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材が使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8aは、中間成形体6aに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ゴムテープ10aは弾性体のため、中間成形体6aの中心に向かう圧力を効果的に付与しうる。この圧力により、マトリクス樹脂及びボイドが一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。ゴムテープ10aは、弾性的に伸ばされた状態で巻き付けられているので、収縮しようとする。この収縮しようとする力により、ゴムテープ10aは、中間成形体6aの表面を効果的に押圧しうる。この押圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。この押圧力により、マトリクス樹脂が一層抜けやすくなり、FRP管状体が軽量化される。
【0127】
織物テープ8aによる樹脂の吸収(抽出)は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。つまり本発明では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。巻回工程後に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0128】
本実施形態では、織物テープ8aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さないゴムテープ10aが織物テープ8aの外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8aへの樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6aに含まれる空気が織物テープ8aに移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0129】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層又はゴムテープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0130】
更に本実施形態では、織物テープ8aとゴムテープ10aとが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0131】
前述したように、織物テープ8aは幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aにより、凹凸が形成される。織物テープ8a同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8aが重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8aの幅方向縁9(図6参照)は、織物テープ8aの厚さに相当する段差を形成する。この段差により、凹凸が形成される。これらの凹凸により、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8a側に移行しやすい。
【0132】
第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、張力F2aを付与されつつ織物被覆体12aに巻き付けられる。この張力F2aに起因して、外側からゴムテープ10aを巻き付けられた織物テープ8aに皺が発生することがある。上記コーティング剤16aは、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16aは、第二巻き付け工程における織物テープ8aとゴムテープ10aとの摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8aにおける皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16aは、ゴムテープ10aに離型性を付与する。この離型性により、ゴムテープ10aの除去が容易とされうる。
【0133】
前述したように、織物テープ8aは張力F1aが付与されつつ巻き付けられており、ゴムテープ10aは張力F2aが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8aに付与される引張応力T1aと、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープ10aに付与される引張応力がT2aとが定義される。引張応力T1aは、上記張力F1aを、織物テープ8aの断面積S1aで割った値である。即ち、[T1a=F1a/S1a]である。この断面積S1aは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8aにおいて測定される。この引張応力T1aは、巻き付けられる直前において織物テープ8aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1aは、巻き付けられた状態において織物テープ8aに作用する引張応力を意味しない。引張応力T2aは、上記張力F2aを、ゴムテープ10aの断面積S2aで割った値である。即ち、[T2a=F2a/S2a]である。この断面積S2aは、張力が作用していない(フリーな)状態のゴムテープ10aにおいて測定される。この引張応力T2aは、巻き付けられる直前においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T2aは、巻き付けられた状態においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味しない。
【0134】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8aのたるみを抑制する観点から、引張応力T1aは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1aは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0135】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2aは2Mpa以上が好ましく、4Mpa以上がより好ましく、6Mpa以上が更に好ましい。ゴムテープ10aが切れることを抑制する観点から、引張応力T2aは60Mpa以下が好ましく、40Mpa以下がより好ましく、30Mpa以下がより好ましく、20Mpa以下が更に好ましい。
【0136】
織物テープ8aに移行する樹脂量を多くする観点から、比(T2a/T1a)は大きくされるのがよい。織物テープに樹脂が移行することにより、中間成形体の外径が小さくなる。外径が小さくなることにより、織物テープ8aによる締め付け力が低下しうる。しかし、弾性を有するゴムテープ10aをその外側から巻き付けることにより、外径が小さくなった場合であっても、中間成形体への締め付け力が効果的に維持されうる。このゴムテープ10aの締め付け力により、織物テープ8aに樹脂が移行しやすい。また、このゴムテープ10aの締め付け力により、FRP管状体内のボイドが低減されうる。
【0137】
比(T2a/T1a)が大きいほど、織物テープ8aに移行する樹脂量が多くなる。この観点から、比(T2a/T1a)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。比(T2a/T1a)が過度に大きい場合、皺の発生又はゴムテープの損傷が発生しやすくなる。この観点から、比(T2a/T1a)は2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0138】
なお、織物テープ8aに移行する樹脂を増加させることを重視する場合、比(T2a/T1a)が大きめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0より大きくするのがよく、更には1.1以上が好ましく、特に1.2以上が好適であり、この場合において、比(T2a/T1a)の上限については、皺の発生を抑制する観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0139】
また、皺の発生を抑制することを重視する場合、比(T2a/T1a)は小さめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0未満が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましく、この場合において、織物テープ8aへ移行する樹脂量を所定量確保するために、比(T2a/T1a)は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0140】
第二巻き付け工程において、ゴムテープに代えて樹脂フィルムテープが用いられる場合、この樹脂フィルムテープの引張応力T2は、織物テープの引張応力T1よりも大きいのが好ましい。即ち、T2>T1が好ましい。樹脂フィルムテープは、ゴムテープに比較して弾性に乏しく、シャフト成形温度に昇温されると引張応力が低下しやすい。この引張応力の低下は、樹脂フィルムテープによる押圧力(シャフト内側に向かう圧力)の低下を招来する。そのため、樹脂フィルムテープの場合、T2>T1とすることにより、シャフト成形温度における引張応力の低下を抑制しておくのが好ましい。一方、ゴムテープは、その弾性に起因して、シャフト成形温度にまで昇温された場合であってもシャフトへの圧力がほとんど低下しない。よってゴムテープの場合、皺等の不具合を効果的に抑制するためには、T2a<T1aとされるのが好ましい。ただし、T2a>T1aとすれば、織物テープへ移行する樹脂量を多くすることができることは、前述した通りである。
【0141】
本第二実施形態でも、繊維含有率Z1、繊維含有率Z2及び差(Z2−Z1)は、上記第一実施形態と同様とされる。繊維強化樹脂部材における繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。含有率Rxの好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。
【0142】
ゴムテープ10aの基材14aは、ゴム組成物を加硫成形してなるものが好ましい。このゴム組成物の基材ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム及びフッ素系ゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられる。耐熱性、耐久性、引張強度及び離型性を総合的に考慮した総合性能に優れるという理由で、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)又はフッ素ゴムを基材ゴム100質量部に対して50質量部以上含む基材ゴムが好ましい。上記ゴム組成物は、加硫剤を含むのが好ましく、硫黄架橋とするのが好ましい。上記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、架橋開始剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤等を含んでいてもよい。加硫促進剤として、例えば、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤から選択される1種又は2種以上が挙げられる。可塑剤として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペート及びトリクレジルフォスフェートから選択される1種又は2種以上が挙げられる。充填剤として、カーボンブラック及びシリカが例示され、こららが併用されてもよい。
【0143】
ゴムテープ10aの厚さd2aは限定されない。張力F2aにより切断されることを抑制する観点、及びゴムテープ自身の捻れ等を抑制する観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上がより好ましく、550μm以上が更に好ましい。ゴムテープの幅方向の一部が重ねられつつ巻き付けられる際において発生する外側テープと内側テープとの境界における過度な段差を抑制するとともにコストを下げる観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは、2000μm以下が好ましく、1800μm以下がより好ましく、1500μm以下がより好ましく、1200μm以下が更に好ましい。
【0144】
ゴムテープ10aの幅W2aは限定されない。張力F2aによる切断されることを抑制する観点から、幅W2aは8mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、12mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2aは35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0145】
テープ巻き付け工程は、ゴムテープをラッピングテープとして巻き付ける工程を少なくとも含んでいるのが好ましい。より好ましくは、テープ巻き付け工程は、上記第二実施形態の様に、織物テープを巻き付ける工程と、織物テープの外側にゴムテープを巻き付ける工程とを含む。
【0146】
次に、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる実施形態について、図9から図11を参照しつつ、説明する。
【0147】
第三実施形態は、ラッピングテープが織物テープのみとされる他は、上記第一実施形態と同様である。
【0148】
図9は、本発明の第三実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2bと繊維強化樹脂部材4bとが用意される。マンドレル2bは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2bの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2bの中心軸線は、略直線である。マンドレル2bの断面形状は、円形である。マンドレル2bは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2bは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2bは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2bは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2bの全体においてその直径が一定であってもよい。
【0149】
マンドレル2bは、前述したマンドレル2と同様である。
【0150】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0151】
プリプレグ4bは、前述したプリプレグ4と同様である。
【0152】
巻回工程の前に、プリプレグ4bは、所望の形状に切断される。図9の実施形態では、6枚のプリプレグ4bが用いられる。図9の実施形態では、切断されたプリプレグ4bの例として、シートe1からe6が示されている。プリプレグ4bは、いわゆるアングル層用シートe1、e2と、ストレート層用シートe3、e5、e6と、フープ層用シートe4とを含む。プリプレグ4bは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートe1からe5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートe6とを含む。なお、プリプレグ4bの仕様は限定されない。プリプレグ4bの形状、厚み、繊維種類等は限定されない。
【0153】
巻回工程では、シートe1からシートe6までが、順次マンドレル2bに巻回される。図示されていないが、巻回に先立ち、シートe2は、シートe1に貼り合わせられる。この貼り合わせされてなるシート群がマンドレル2bに巻回される。この貼り合わせにおいて、シートe2は、裏返される。この裏返しにより、シートe1の繊維とシートe2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図9において各シートe1からe6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度θ1を示している。この巻回工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0154】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図10及び図11は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図10及び図11の断面において、中間成形体6bは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6bは、前述したように複数の層よりなる。
【0155】
テープ巻き付け工程におけるラッピングテープは、織物テープ8bである。本実施形態において、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる。テープ巻き付け工程では、織物テープ8bのみが巻き付けられる。織物テープ8bは、織物を基材とするテープである。織物テープ8bは、織物である基材の表面にコーティング剤等を有していてもよい。
【0156】
テープ巻き付け工程の様子が、図10で示される。テープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面に織物テープ8bが直接巻き付けられる。中間成形体6bの外周面と織物テープ8bとは当接している。織物テープ8bは中間成形体6bの外周面に接触している。
【0157】
図10が示すように、テープ巻き付け工程において、織物テープ8bは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6bの軸線方向と織物テープ8bの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8bは、中間成形体6bに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8bの幅W1bは、巻き付けピッチP1bよりも広い。巻き付けピッチP1bは、図10において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8bは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。巻き付けピッチP1bは、一定である。中間成形体6bのチップ端からバット端にかけて、巻き付けピッチP1bは一定である。この織物テープ8bの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8bは、中間成形体6bの全長に亘って巻き付けられる。テープ巻き付け工程の結果、中間成形体6bの全体が織物テープ8bにより覆われる。なお、織物テープ8bの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6bに固定される。この両端の固定により、織物テープ8bの巻き付けが自然に解けることはない。
【0158】
後述されるように、後の硬化工程において、中間成形体6bに含まれる樹脂が、織物テープ8bへと移行する。即ち中間成形体6bに含まれる樹脂は、織物テープ8bへと吸収されるか、又は、織物テープ8bを透過して外部に排出される。
【0159】
織物テープ8bに吸収される樹脂量を増加させる観点から、織物テープ8bのラッピング層数L1は多いのが好ましい。なお、ラッピング層数L1とは、中間成形体6bに巻き付けられた織物テープ8bの層数である。ラッピング層数L1は、中間成形体6bの表面上の各点のそれぞれにおいて定まる。前述した螺旋状の巻き付けにおいて、仮に巻き付けピッチP1bが織物テープの幅W1bよりも大きい場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が0層である部分と、ラッピング層数L1が1層である部分とが存在することになる。また、比(P1b/W1b)が0.5を超えて1.0未満である場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が1層である部分と、ラッピング層数L1が2層である部分とが存在することになる。
【0160】
ラッピング層数L1を多くするための方法として、次の(方法A)及び(方法B)が採用されうる。
(方法A)巻き付けピッチP1bの、織物テープの幅W1bに対する比(P1b/W1b)が小さくされる。
(方法B)複数回の巻き付けがなされる。
【0161】
(方法A)は、一回の巻き付けでラッピング層数L1を増加することができるため、生産性の向上に寄与しうる。一方、(方法B)は、チップ側からバット側への巻き付け、及び/又はチップ側からバット側への巻き付けを繰り返す必要が生じるので、(方法A)と比較して生産性に劣る。生産性の観点からは、(方法B)よりも(方法A)が好ましい。ただし、織物テープ8bの厚さや柔軟性等によっては、比(P1b/W1b)を小さくしてラッピング層数L1を増加させることには限界が生じる場合がある。この場合、(方法B)が有効に用いられうる。
【0162】
ラッピング層数L1を多くして樹脂吸収量を高める観点から、比(P1b/W1b)は、0.70以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.33以下が更に好ましい。なお、比(P1b/W1b)が過度に小さくされ、ラッピング層数L1が過度に多くされた場合、樹脂吸収量の増加がほとんどみられない一方で生産性が低下しうる。この観点から、比(P1b/W1b)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
【0163】
織物テープ8bの巻き付けは、張力F1bを付与しつつなされる。この張力F1bにより、中間成形体6bは、織物テープ8bにより締め付けられる。織物テープ8bの巻き付けにより、織物被覆体12bが得られる。織物被覆体12bは、中間成形体6bが織物テープ8bで覆われてなる。
【0164】
図11は、上記(方法B)が採用される場合における二回目の巻き付けの様子が示された一部断面斜視図である。二回目の巻き付けでは、織物被覆体12bの外周面に織物テープ10bが直接巻き付けられる。織物被覆体12bの外周面と織物テープ10bとは当接する。織物テープ10bは織物被覆体12bの外周面に接触している。つまり織物テープ10bは織物テープ8bに接触している。なお、織物テープ8bと織物テープ10bとは、同一のテープであってもよいし、異なるテープであってもよい。
【0165】
図11が示すように、二回目の巻き付けにおいて、織物テープ10bは、螺旋状に巻き付けられる。この二回目の巻き付けは、前述した一回目の巻き付けと同様になされうる。生産性の観点からは、この二回目の巻き付けは実施されないのが好ましい。差(Z2−Z1)を大きくする観点からは、この二回目の巻き付けがなされるのが好ましい。
【0166】
織物テープ10bの巻き付けは、張力F2bを付与しつつなされる。この張力F2bにより、織物被覆体12bは、織物テープ10bにより締め付けられる。張力F2bと張力F1bとは、同一であってもよいし、異なっていても良い。
【0167】
なお織物被覆体12bの表面には、織物テープ8bによる螺旋模様が形成されているが、図11においては、この織物テープ8bによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0168】
図11の実施形態では、織物テープがチップ端からバット端にかけて巻き付けられる。この実施形態では、巻き付けが二回繰り返されている。このように、巻き付けを繰り返すことにより、ラッピング層数L1を調整することができ、樹脂吸収量の調整が可能である。なお生産性の観点から、織物テープが一方向に向かって巻き付けられる巻き付けの回数(以下、単に巻き付け回数ともいう)は、三回以下が好ましく、二回以下がより好ましく、一回が特に好ましい。この「一方向」とは、チップ側からバット側へと向かう方向でもよいし、バット側からチップ側へと向かう方向でもよい。
【0169】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。前述の通り、好ましくは、この硬化工程は、第一加熱ステップと第二加熱ステップとを含む。
【0170】
硬化工程の後、マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2bが引き抜かれた後に織物テープが除去される。
【0171】
なお、織物テープ8bに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8bの内面にコーティング剤が設けられても良い。織物テープ8bの内面とは、中間成形体6bと当接する面である。このコーティング剤として、フッ素系化合物又はシリコン系化合物が好ましい。
【0172】
第三実施形態では、第一実施形態と同様に、繊維含有率R1の小さい繊維強化樹脂部材を用いているため、成形精度が向上し、ボイド率が抑制される。更に、第三実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに移行しうる。織物テープ8bは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8bは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8bにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。マトリクス樹脂と共に、ボイドも排出されうる。これにより、管状体の軽量化とボイド率の低下とが達成されうる。
【0173】
第三実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8bを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。更に、織物テープ8bは、中間成形体6bに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ラッピング層数L1が複数とされることにより、織物テープ8bが中間成形体6bに大きな圧力を付与することができる。この圧力に起因して、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。この圧力に起因して、マトリクス樹脂が一層抜けやすくなり、FRP管状体の軽量化が達成されうる。
【0174】
織物テープ8bによる樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。硬化工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化及び低ボイド率が達成されている。
【0175】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0176】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、平均ラッピング層数Laは、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。また平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、平均ラッピング層数Laは、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0177】
なお、平均ラッピング層数Laは、前述したラッピング層数L1とは異なる概念である。ラッピング層数L1が中間成形体6bの表面上の各点においてそれぞれ定まるのに対し、平均ラッピング層数Laは、ラッピング層数L1の平均値として理解されうる。具体的には、平均ラッピング層数Laは以下の計算式(1)により決定されうる。
La=St/Sn ・・・(1)
ただし、式(1)において、Stは巻き付けられた状態における織物テープの内面の総面積(mm2)であり、Snは巻き付けられた織物テープと接触する部分における中間成形体6bの表面積(mm2)である。この総面積Stは、巻かれている織物テープの長さNt(mm)と織物テープの幅Wa(mm)との積である。即ちSt=Nt×Waである。長さNtは、織物テープの長手方向に沿って測定される。長さNtは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの長さNkと実質的に等しいか、又は、この長さNkよりも長い。Nt>Nkとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。幅Waは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの幅W1bと実質的に等しいか、又は、この幅W1bよりも狭い。W1b>Waとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。ラッピング層数L1は0又は1以上の整数であるが、平均ラッピング層数Laは整数とならない場合がある。
【0178】
例えば、比(P1b/W1b)が0.5であり、W1b=Waであり、且つ巻き付け回数が1回である場合、平均ラッピング層数Laは、2層である。この場合、巻き付けピッチP1bの誤差を無視すれば、ラッピング層数L1は、全ての点において、2層である。
【0179】
上記総面積St及び表面積Snは、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの範囲において測定される。前述したように、管状体製造の仕上げ工程においては、硬化管状体の両端部が切断されてもよい。この両端部の切断がなされた場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。同様に、前述した両端部の切断がなされた場合、管状体のバット端位置Bt1と、硬化管状体のバット端位置Btとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。図9には、両端部の切断がなされた場合におけるチップ端位置Tp1及びバット端位置Bt1が示されている。
【0180】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。ラッピング層数L1が過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。またラッピング層数L1が過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0181】
平均ラッピング層数Laの値に関わらず、巻き付け回数が1回である場合、巻き付け部分の両端部には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。例えば、平均ラッピング層数Laが2層以上とされた場合であっても、巻き付け回数が1回である限り、巻き付けの開始部分及び巻き付けの終了部分には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。巻き付けの開始点に隣接し且つラッピング層数L1が1層である部分Xtは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Xtが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。同様に、巻き付けの終了点に隣接し且つラッピング層数L1が1回である部分Ytは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Ytが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。なお、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Xtには該当しない。同様に、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Ytには該当しない。上記軸方向とは、管状体の軸方向を意味する。
【0182】
巻き付け工程において、チップ側とバット側との間で織物テープ8bを往復させて巻き付けてもよい。例えば、織物テープ8bをバット側からチップ側に向かって螺旋状に巻き付け、引き続き、織物テープ8bをチップ側からバット側に向かって螺旋状に巻き付けてもよい。このような往復方式の巻き付けにより、巻き付け回数が増加されてもよい。なお本明細書では、このような往復方式の巻き付けにより一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。織物テープ8bが途中で切断されることなく一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。前述した通り、生産性の観点から、平均ラッピング層数Laを増加させる方法としては、巻き付け回数が1回とされ且つ比(P1b/W1b)が小さくされる方法が好ましい。
【0183】
前述したように、織物テープ8bは張力F1bが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記テープ巻き付け工程において織物テープ8bに付与される引張応力T1bが定義される。引張応力T1bは、上記張力F1bを、織物テープ8bの断面積Sdで割った値である。即ち、[T1b=F1b/Sd]である。この断面積Sdは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8bにおいて測定される。この引張応力T1bは、巻き付けられる直前において織物テープ8bに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1bは、巻き付けられた状態において織物テープ8bに作用する引張応力を意味しない。
【0184】
織物テープ8bに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8bのたるみを抑制する観点から、引張応力T1bは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1bは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0185】
なお、樹脂吸収量を高める観点から、平均ラッピング層数Laと、織物テープ8bの厚さd1(μm)との積(La×d1)は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。生産性の観点から、この積(La×d1)は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
【0186】
本第三実施形態でも、繊維含有率Z1、繊維含有率Z2及び差(Z2−Z1)は、上記第一実施形態と同様とされる。繊維強化樹脂部材における繊維含有率R1の好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。含有率Rxの好ましい範囲は、上記第一実施形態と同様とされる。
【実施例】
【0187】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0188】
下記の表1に示される実施例は、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例である。下記の表1に示される比較例は、表1の実施例に対応する。
【0189】
下記の表2に示される実施例は、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例である。下記の表2に示される比較例は、表2の実施例に対応する。
【0190】
下記の表3に示される実施例は、織物テープのみを用いた実施例である。下記の表3に示される比較例は、表3の実施例に対応する。
【0191】
先ず、評価方法について説明する。
【0192】
[順式フレックスの測定]
硬化管状体のバット端Btから75mm隔てた位置の上側と、このバット端Btから215mm隔てた位置の下側とが支持点とされた。これらの二点が支持された状態で、硬化管状体の軸線方向が水平とされた。次に、バット端Btから1039mm隔てた荷重点Kに、2.7kgの錘りを掛けた。錘りにより硬化管状体が曲がり、上記荷重点Kが下方へと移動した。荷重点Kの鉛直方向における移動量が、順式フレックスFjとして下記の表に示される。
【0193】
[しわの程度]
硬化管状体の表面に生じたしわ(皺)の程度が、外観の目視により評価された。次の5段階により評価がなされた。この評価が、下記の表で示される。評価点数が小さいほど、しわの発生程度が小さく、評価が高い。
評価1:しわが無い。
評価2:しわがごく僅かに見られる。
評価3:目立たない程度のしわが見られる。
評価4:しわがやや目立つ。
評価5:しわがかなり目立つ。
【0194】
[織物テープの厚さ]
織物テープの厚さd1は、JIS L 1096に準拠して、デジマチックマイクロメータを用いて測定された。240g/cm2の一定圧力を付与させて10秒間経過した後、240g/cm2の圧力のもとで測定がなされた。測定は5箇所で行われた。5箇所のデータの平均値が、「厚さd1」として下記の表に示される。
【0195】
[ボイド率Rb]
ボイド率Rbは、シャフト先端から90mm隔てた地点の断面の画像によりボイド面積Sb及びシャフト断面積Smを求め、下記式により算出した。
Rb(%)=(Sb/Sm)×100
【0196】
ゴルフクラブシャフトにおいては、先端部にヘッドが取り付けられるため、先端部における強度が特に重要である。ボイド率Rbは、シャフト強度との相関が高い。
【0197】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図12は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図12が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点とされた。T点は、チップTpから90mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。上記スパンSは、150mmとされた。この測定結果が下記の表に示される。
【0198】
[生産性]
以下の基準に従い、4段階で評価された。評価Aが、最も生産性が高く、良好である。評価Dは、最も生産性が低い。
A・・・硬化工程における加熱時間が4時間以内である。
B・・・硬化工程における加熱時間が4時間を超えて24時間以内である。
C・・・硬化工程における加熱時間が24時間を超えて72時間以内である。
D・・・硬化工程における加熱時間が72時間を超える。
【0199】
次に、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例について説明する。
【0200】
[実施例1]
図1で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図1及び表5で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表1には、シートs1からシートs6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表5には、実施例1のプリプレグ構成が示されている。
【0201】
表1及び表4に示される通り、シートs1及びシートs2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートs3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートs4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートs5及びシートs6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0202】
表5における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表5における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0203】
次に、上記中間成形体の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1を付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2を付与しつつなされた。張力F1及び張力F2は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1、F2に基づき、引張応力T1及び引張応力T2が算出された。
【0204】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1は15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1は35Mpaとされた。第一巻き付け工程において、巻き付けピッチP1は1.5mmとされた。
【0205】
第一巻き付け工程の平均ラッピング層数Laは、10とされた。比(P1/W1)が0.1とされることにより、平均ラッピング層数Laが10とされた。
【0206】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリプロピレン(PP)フィルムテープが用いられた。このPPフィルムテープとして、信越フィルム社製のPT30Hが用いられた。このフィルムテープの片面には、シリコン系のコーティング剤が設けられている。このコーティング剤層を内側にして、このPPフィルムテープが巻き付けられた。このPPフィルムテープの幅W2は25mmであり、厚さd2は30μmであった。第二巻き付け工程における引張応力T2は85Mpaとされた。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2は2mmとされた。
【0207】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。硬化工程では、第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップでは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0208】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、樹脂フィルムテープ及び織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。実施例1の仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0209】
[実施例2から5]
表1で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0210】
[比較例1から4]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表1に示される通りとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例1から4の硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0211】
なお、比較例1及び比較例2のPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3では、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4では、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0212】
【表1】
【0213】
差(Z2−Z1)は、硬化工程中において排出された樹脂の量(樹脂の減少量)を示している。差(Z2−Z1)が大きいことは、軽量化に寄与する。樹脂とともにボイドが排出されうる。差(Z2−Z1)が大きいことは、ボイド率の低減にも寄与する。
【0214】
樹脂の減少量が大きい場合、硬化管状体の外径が小さくなる。硬化管状体の外径が小さい場合、順式フレックスFjは、より大きくなる。表1では、順式フレックスFjの逆数(1/Fj)を硬化管状体の質量Wtで割った値[1/(Fj×Wt)]が示されている。[1/(Fj×Wt)]が大きいことは、単位質量当たりの剛性が向上していることを意味する。[1/(Fj×Wt)]が大きいほど、軽量性に優れる。
【0215】
実施例1は、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2は、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3は、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1から3の結果は、良好である。
【0216】
実施例4は、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4は、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4の結果は、良好である。
【0217】
比較例1は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0218】
比較例2は、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0219】
比較例3は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0220】
比較例4では、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4では、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0221】
次に、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例について説明する。
【0222】
[実施例1a]
図5で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図5及び表6で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表2には、シートh1からシートh6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表6には、実施例1aのプリプレグ構成が示されている。
【0223】
表2及び表4に示される通り、シートh1及びシートh2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートh3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートh4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートh5及びシートh6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0224】
表6における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表6における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0225】
次に、上記中間成形体の外側にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1aを付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2aを付与しつつなされた。張力F1a及び張力F2aは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1a、F2aに基づき、引張応力T1a及び引張応力T2aが算出された。
【0226】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1aは15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1aは15Mpaとされた。第一巻き付け工程における平均ラッピング層数Laは、10とされた。
【0227】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、ゴムテープが巻き付けられた。このゴムテープとして、EPDMゴムが基材ゴムとされたゴムテープが用いられた。このゴムテープには、コーティング剤が設けられていない。このゴムテープとして、三ツ星ベルト社製の商品名「ネオ・ルーフィングE」を下記の幅W2aとなるように切断してなるテープが用いられた。このゴムテープの幅W2aは12.5mmとされ、このゴムテープの厚さd2aは1000μmであった。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2aは5mmとされた。
【0228】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0229】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、ゴムテープ及び織物テープが除去され、実施例1aに係る硬化管状体を得た。実施例1aの仕様と評価結果が下記の表2に示される。
【0230】
[実施例2aから5a]
表2で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2に示される。
【0231】
[比較例1aから4a]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表2に示される通りとされた。その他については実施例1aと同様にして、比較例1aから4aの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2に示される。
【0232】
なお、比較例1a及び比較例2aのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3aでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4aでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0233】
【表2】
【0234】
実施例1aは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2aは、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3aは、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1aから3aの結果は、良好である。
【0235】
実施例4aは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4aは、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4aの結果は、良好である。
【0236】
比較例1aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0237】
比較例2aは、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、シャフト重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0238】
比較例3aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0239】
比較例4aでは、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4aでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0240】
次に、織物テープのみを用いた実施例について説明する。
【0241】
[実施例1b]
図9で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図9及び表7で示された通りとされた。下記の表4には、プリプレグの品番として、A、B、C、D及びEが示されている。下記の表3には、シートe1からシートe6に用いられたプリプレグの品番が、表4に記載のAからEにより示されている。下記の表7には、実施例1bのプリプレグ構成が示されている。
【0242】
表3及び表4に示される通り、シートe1及びシートe2は東レ社製の「9252S−11」とされ、シートe3は東レ社製の「2252G−10」とされ、シートe4は東レ社製の「805S−3」とされ、シートe5及びシートe6は東レ社製の「2252G−10」とされた。
【0243】
表7における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表7における「繊維角度θ1」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。
【0244】
次に、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。巻き付け工程において、巻き付け回数は1回とされた。テープ巻き付け工程は、一定の張力F1bを付与しつつなされた。張力F1bは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1bに基づき、引張応力T1bが算出された。
【0245】
テープ巻き付け工程では、織物テープのみが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1bは15mmであり、厚さd1は100μmであった。テープ巻き付け工程における引張応力T1bは50Mpaとされた。平均ラッピング層数Laは10とされた。
【0246】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が80℃とされ、時間が30分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が120分とされた。
【0247】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、織物テープが除去され、実施例1bに係る硬化管状体を得た。実施例1bの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0248】
[実施例2bから5b]
表3で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0249】
[比較例1bから4b]
織物テープに代えて他のテープが用いられ、且つ、各仕様が表3に示される通りとされた。その他については実施例1bと同様にして、比較例1bから4bの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3に示される。
【0250】
なお、比較例1b及び比較例2bのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例3bでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例4bでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。
【0251】
【表3】
【0252】
実施例1bは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。実施例2bは、内側の層が高樹脂率であり、外側の層が低樹脂率である。実施例3bは、角度θ1の絶対値が45度の層が高樹脂率である。実施例1bから3bの結果は、良好である。
【0253】
実施例4bは、全ての繊維強化樹脂部材が高樹脂率である。更に、実施例4bは、低温である第一加熱ステップの時間が長いので、ボイド率Rbが低い。実施例4bの結果は、良好である。
【0254】
比較例1bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0255】
比較例2bは、繊維含有率R1及び繊維含有率Z1は高いが、差(Z2−Z1)が小さい。このため、シャフトが重く、ボイド率Rbが高い。また、シャフト重量が大きい割に、三点曲げ強度が小さい。即ち、単位重量あたりの三点曲げ強度が小さい。
【0256】
比較例3bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。
【0257】
比較例4bでは、一体化テープを用いたが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例4bでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0258】
【表4】
【0259】
【表5】
【0260】
【表6】
【0261】
【表7】
【0262】
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆるFRP管状体に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】図1は、本発明の一実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図2】図2は、第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図3】図3は、第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図4】図4は、樹脂フィルムテープの断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図6】図6は、第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図7】図7は、第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図8】図8は、ゴムテープの断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図10】図10は、テープ巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図11】図11は、テープ巻き付け工程の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図12】図12は、三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0265】
2・・・マンドレル
4・・・プリプレグ
6・・・中間成形体
8・・・織物テープ
10・・・樹脂フィルムテープ
12・・・織物被覆体
s1、s2、s3、s4、s5、s6・・・切断されたプリプレグシート
2a・・・マンドレル
4a・・・プリプレグ
6a・・・中間成形体
8a・・・織物テープ
10a・・・ゴムテープ
12a・・・織物被覆体
h1、h2、h3、h4、h5、h6・・・切断されたプリプレグシート
2b・・・マンドレル
4b・・・プリプレグ
6b・・・中間成形体
8b・・・織物テープ
10b・・・織物テープ
12b・・・織物被覆体
e1、e2、e3、e4、e5、e6・・・切断されたプリプレグシート
20・・・シャフト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下であり、
上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項2】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項3】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項8】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
上記ラッピングテープが織物テープのみである請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項13】
上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載された製造方法により製造された管状体。
【請求項17】
ボイド率Rbが0.5%以下である請求項16に記載の管状体。
【請求項1】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上30質量%以下であり、
上記繊維強化樹脂部材に、繊維含有率R1が50質量%以上70質量%以下である繊維強化樹脂部材が含まれている繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項2】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項3】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項8】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
上記ラッピングテープが織物テープのみである請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項13】
上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載された製造方法により製造された管状体。
【請求項17】
ボイド率Rbが0.5%以下である請求項16に記載の管状体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−120191(P2010−120191A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293849(P2008−293849)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
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