説明

管継手の接続解体装置

【課題】狭隘な作業スペースでも、管体同士の接続分解作業を円滑に行い得るようにする。
【解決手段】受け側管体1に受け側固定部材5を、挿し側管体3に挿し側固定部材6をそれぞれ設け、両部材5、6を送り部材7で連結する。この送り部材7には、その受け側管体1側の端部を除いて、その周面に雄ねじ部7aが形成されていて、前記端部が受け側固定部材本体9に形成した送り孔8に挿し込まれる一方で、前記雄ねじ部7aが、挿し側固定部材6側に形成された送りねじ孔22にねじ込まれている。この送り部材7を軸周りに回転すると、挿し側管体3が搬送される。この挿し側固定部材6の可動範囲は、送り部材7の雄ねじ部7a形成領域によって決まり、この雄ねじ部7aを受け側固定部材5のすぐ近くまで形成すれば、この挿し側固定部材6を受け側固定部材5に近接した状態とすることもでき、狭隘な作業スペースでも円滑に作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管等に用いられる管継手の接続解体装置に関し、特に、一方の管体の他方の管体への挿し込みを所謂プッシュオンタイプでなすようにした管継手の接続解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管等に用いられるダクタイル鋳鉄管等の管継手は、一方の管体(以下、受け側管体という。)に受け口を形成するとともに、他方の管体(以下、挿し側管体という。)に挿し口を形成し、これを相互に挿し込むことによってその接続がなされる。この管継手においては、挿し込んだ両管体が、地震等の揺れによって抜けるのを防止するため、抜け止め機構を設けることがある。
【0003】
この抜け止め機構の一例として、図15に示すように、受け側管体1の受け口内周に、ロックリング2を拡径自在に設けるとともに、挿し側管体3の挿し口に外径方向に突出し、かつ、ロックリング2の内径よりも大きい外径を有する突部4を形成し、ロックリング2が突部4で係止されることによって、受け側管体1からの挿し側管体3の抜け止めがなされるようにした形式(プッシュオンタイプ)のものがある。
【0004】
この突部4には、前記挿し口の先端側ほど縮径するテーパ4aが形成されているとともに、この突部4の挿し口の反対側には、外径方向に起立する壁面4bが形成されている。その一方で、ロックリング2には、受け側管体1の受け口先端側ほど拡径するテーパ2aが形成されているとともに、この受け口奥側には、内径方向に起立する壁面2bが形成されている。
【0005】
また、このロックリング2には、その周方向に切れ目(図示せず)が形成されていて、挿し込みの際にロックリング2及び突部4の両テーパ2a、4aが当接すると、その当接力によって切れ目の幅が拡がって、このロックリング2の内径が拡径する。このロックリング2の内径が突部4の外径と等しくなると(同図(b)を参照)、ロックリング2の内径側を突部4が通るようになって、両管体1、3の接続をなし得る(同図(c)を参照)。このロックリング2には弾性部材33が外接して設けられ、このロックリング2をその外周から均等に支持して、その芯合わせがなされるようになっている。
【0006】
その一方で、前記接続が完了してロックリング2の拡径が解除されると、挿し側管体3に引き抜き力が作用した際に、ロックリング2と突部4のそれぞれに形成された壁面2b、4b同士が当接して、その引き抜きが確実に阻止される。なお、受け側管体1には水密用ゴム輪34が設けてあって、両管体1、3を接続した際に、水密用ゴム輪34が挿し側管体3の外周に当接することによって、水密を確保するようにしている。
【0007】
例えば、受け側管体1に設けた水密用ゴム輪34が上記接続の際にずれたことによる接続し直し等の場合や、既設管体を更新する場合には、前記抜け止め機構を一旦解除して管継手を解体する必要がある。
【0008】
この解体作業では、まず、両管体1、3の隙間に、先端にテーパ27が形成された解体矢24(後述する図7を参照)を挿し込んでロックリング2を拡径する。この挿し込み作業は、図16に示すように、ハンマーによる打撃をもって行うことができるが、この解体矢24を8〜12本程度挿し込む必要があり作業効率が低い。また、その際に誤って管体1、3や作業者自身の指を打撃することがあり、安全性の面でも問題がある。この問題を解決すべく、例えば下記特許文献1には、油圧シリンダ35のシリンダロッド36の伸縮により、解体矢24を挿し込み、それに引き続いて挿し側管体3を受け側管体1から引き抜くようにした管継手の解体装置が開示されている。
【0009】
この解体装置は、図17に示すように、受け側管体1に油圧シリンダ35の本体側が受け側リング状部材37を介して固定される一方で、油圧シリンダ35のシリンダロッド36が、挿し側管体3に設けられその管体外周面上を管軸方向にスライド自在に、又は、固定し得るように設けた挿し側リング状部材38に固定されている(同図(a)を参照)。挿し側リング状部材38を挿し側管体3に対しスライド自在の状態とした上で、シリンダロッド36を油圧シリンダ35本体に収納すると、解体矢24が両管体1、3の隙間に挿し込まれる(同図(b)を参照)。そして、この解体矢24が前記隙間に十分挿し込まれロックリング2によるロック状態が解除されたら、挿し側リング状部材38に設けられた固定ボルト(図示せず)を締め付けてこの挿し側リング状部材38を挿し側管体3に固定し、シリンダロッド36を油圧シリンダ35本体から突出させる(同図(c)を参照)。すると、解体矢24とともに挿し側管体3が受け側管体1から引き抜かれ、両管体1、3の解体がなされる。
【0010】
この解体装置を用いれば、一度に複数本の解体矢24が挿し込まれ、この挿し込みに引き続いて引き抜き作業を行うことができるため、その作業効率が高い。また、解体矢24の打撃が必要ないので、その作業の安全性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−17833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の解体装置は、解体矢24の挿し込み及び管体1、3同士の引き抜きに油圧シリンダ35等の伸縮部材を用いる(同文献の請求項1を参照)。この油圧シリンダ35を例に挙げると、シリンダロッド36を油圧シリンダ35本体に収納又は油圧シリンダ35本体から突出させてその伸縮がなされ、この油圧シリンダ35本体の全長よりも両リング状部材37、38を接近して設けることができない。このため、狭隘な作業現場においては、両リング状部材37、38の両管体1、3への取り付けができないこともあり得る。これは油圧シリンダ35に限らず、他の伸縮部材についても同じことが言える。
【0013】
そこで、この発明は、狭隘な作業スペースでも、管体同士の接続及び分解作業をスムーズに行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明は、受け側管体の受け口内周に、ロックリングを拡径自在に設けるとともに、挿し側管体の挿し口外周に突部を形成し、前記ロックリングをその弾性力に抗して拡径することにより、前記受け側管体への前記挿し側管体の抜き挿しを自在に行い得るようにしつつ、前記ロックリングで前記突部を係止することにより前記受け側管体からの前記挿し側管体の抜け止めがなされるようにしたプッシュオンタイプの管継手の接続解体装置において、前記受け側管体の外周面に設ける受け側固定部材と、前記挿し側管体の外周面に設ける挿し側固定部材と、前記受け側固定部材と挿し側固定部材に介在する送り部材とを備え、前記受け側固定部材は前記受け側管体の外周面に固定される一方で、前記挿し側固定部材はこの挿し側固定部材に設けた固定ボルトのねじ込み量によって前記挿し側管体の外周面に固定又はこの挿し側管体の管軸方向にスライド自在とし得るようになっており、前記送り部材は両管体の管軸と平行に設けられた断面円形の棒状部材であってその周面に雄ねじが形成され、この送り部材の前記受け側管体側は、前記受け側固定部材に形成した送り孔に、この送り部材の軸周りに回転自在に設けられる一方で、この送り部材の前記挿し側管体側は、前記挿し側固定部材に形成した送りねじ孔にねじ込まれ、この送り部材の軸周りの回転によってこの挿し側固定部材が前記挿し側管体の管軸方向に移動し、両固定部材が接離自在となっており、前記挿し側固定部材に、前記受け側管体の内周と挿し側管体の外周との間の隙間に挿し込んで、接続状態における前記ロックリングを拡径する解体矢を設けた構成を採用した。
【0015】
この構成は、受け側管体及び挿し側管体に、受け側固定部材及び挿し側固定部材をそれぞれ設けた点で上記特許文献1の構成と同じであるが、両固定部材を、油圧シリンダ等の伸縮部材ではなく、周面に雄ねじを形成した断面円形の棒状の送り部材で連結した点で異なる。この送り部材は、その全長に亘って前記雄ねじを形成することにより、両固定部材を近接した状態とすることができる。このため、作業スペースの確保が困難な状況でも両管体に両固定部材を近接した状態で取り付けることができ、スムーズに管体同士の接続解体作業を行うことができる。
【0016】
また、送り部材の軸周りの回転量を微調節することによって、解体矢の挿し込み量を微調節することができる。このため、図18に示すように、この解体矢の挿し込み不足に起因して前記ロックリングのロック解除がなされなかったり(同図(a)を参照)、それと反対に、この解体矢を挿し込み過ぎてその先端部が湾曲し、この湾曲した先端部がロックリングに引っ掛かり、解体作業がスムーズにできなかったり(同図(b)を参照)するトラブルを回避することができる。
【0017】
前記解体矢は、前記挿し側固定部材に取り外し不能に固定する構成としてもよいし、自在に着脱し得る構成としてもよい。前者の場合は、この接続解体装置で両管体を接続する際に、この解体矢が接続作業の邪魔にならないように、挿し側固定部材を逆向きに(解体矢の先端が受け側管体の反対を向くように)取り付ける一方で、両管体の解体の際に、この挿し側固定部材の前後を逆向きに付け変えて、この解体作業を行うようにするのが好ましい。
【0018】
前記構成においては、前記受け側固定部材及び挿し側固定部材の少なくとも一方が、固定部材本体と、前記管体の外周面に沿って掛け渡す留め具と、この受け側管体の管軸と平行な回動軸を有し、前記留め具の一端側を回動自在に支持する留め具軸と、前記留め具の他端側を固定する留め具ロック部とを備え、前記留め具ロック部は、前記留め具を通す留め具溝を形成したロック部本体と、このロック部本体に形成したレバー軸周りに回動し、ロック状態において前記留め具を前記ロック部本体に押し付けてこの留め具の抜け止めをする係止舌片を形成したロックレバーとを備えるのが好ましい。
【0019】
前記留め具は前記外周面に沿って自在に変形し得るものであって、例えば素材自体が自在に変形し得る金属ワイヤやゴム部材としたり、素材自体は変形しないがこの留め具を構成する複数のパーツが少しずつ相対位置をずらすことによって、この留め具全体として前記外周面に沿うようにしたチェーン等を採用したりすることができる。
【0020】
また、前記各構成においては、前記挿し側固定部材に、前記解体矢の尾部を挿し込むポケットを形成するのが好ましい。
【0021】
このようにポケットを形成すると、このポケットで解体矢を安定して支えることができるため、解体作業中にこの解体矢が抜け落ちたり、斜めに向いた状態となったりして、その作業に支障を来たすというトラブルを回避することができる。
【0022】
さらに、前記各構成においては、前記解体矢を前記留め具に磁石を用いて固定するようにするのがより好ましい。
この場合、前記留め具自体が磁性材料からなる金属ワイヤや金属チェーン等の場合は、前記解体矢の尾部に磁石を設ける構成とすればよいが、この留め具がゴム部材等の非磁性材料の場合は、この留め具の所定位置(所定間隔)に予め磁性材料を貼付する等しておく必要がある。このように磁性材料で固定するようにすると、解体矢をより確実に固定することができ、解体作業中における解体矢の脱落等のトラブルを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明は、受け側管体及び挿し側管体に設けた受け側固定部材及び挿し側固定部材を、外周面に雄ねじを形成した送り部材で連結し、この送り部材を軸周りに回転することで両固定部材を接離するようにした。この送り部材を雄ねじとすると、伸縮部材を用いた場合と異なり、両固定部材を近接させることができるため、狭隘な作業スペースでも、管体同士の接続及び分解作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明に係る管継手の接続解体装置の第一実施形態を示し、(a)は平面部分断面図、(b)は正面部分断面図
【図2】図1に示す接続解体装置の、(a)はA矢視図、(b)はB矢視図
【図3】本願発明に係る接続解体装置の送り部材と受け側固定部材を示し、(a)は平面部分断面図、(b)は正面部分断面図、(c)は側面図
【図4】受け側固定部材の要部を示し、(a)は平面部分断面図、(b)は正面部分断面図、(c)は側面部分断面図
【図5】受け側固定部材の要部を示し、(a)は平面部分断面図、(b)は正面部分断面図、(c)はロック状態の側面部分断面図、(d)はロック解除状態の側面部分断面図、(e)は斜視図
【図6】本願発明に係る接続解体装置の稼働治具を示し、(a)は側面図、(b)は正面部分断面図、(c)は底面部分断面図
【図7】本願発明に係る接続解体装置の解体矢を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図8a】第一実施形態に係る接続解体装置を用いた管継手分解作業において、挿し側固定部材を設けた状態を示す正面部分断面図
【図8b】図8aに係る管継手分解作業において、解体矢を設けた状態を示す正面部分断面図
【図8c】図8aに係る管継手分解作業において、受け側固定部材と送り部材を設けた状態を示す正面部分断面図
【図8d】図8aに係る管継手分解作業において、解体矢を挿し込んだ状態を示す正面部分断面図
【図8e】図8aに係る管継手分解作業において、挿し側管体を抜きつつある状態を示す正面部分断面図
【図8f】図8aに係る管継手分解作業において、分解作業が完了した状態を示す正面部分断面図
【図9】第一の実施形態に係る接続解体装置を用いた管継手接続作業の一連の手順を示す正面部分断面図であって、(a)は挿し側固定部材を設けた状態、(b)は受け側固定部材と送り部材を設けた状態、(c)挿し側管体を挿し込みつつある状態、(d)は接続作業が完了した状態
【図10】本願発明に係る管継手の接続解体装置の第二実施形態を示し、(b)は平面部分断面図、(b)は正面部分断面図
【図11】図10に示す接続解体装置の、(a)はC矢視図、(b)はD矢視図
【図12】第二実施形態に係る接続解体装置のリング状固定部材を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図
【図13】第二実施形態に係る接続解体装置を用いた管継手接続作業における、リング状部材の固定態様を示す正面部分断面図
【図14】本願発明に係る接続解体装置の受け側固定部材の他の実施態様を示す正面部分断面図
【図15】プッシュオンタイプの管継手の作用を示し、(a)は接続前、(b)接続中、(c)は接続後
【図16】従来技術に係る管継手の分解作業における解体矢の打撃作業を示す正面部分断面図
【図17】従来技術に係る解体装置を用いた管継手分解作業の一連の手順を示す正面部分断面図であって、(a)は両管体に固定部材を設けた状態、(b)は解体矢を挿し込んだ状態、(c)は挿し側管体を抜きつつある状態
【図18】解体矢の挿し込みに伴う不具合を示す正面要部断面図であって、(a)は挿し込み不足の状態、(b)挿し込み過ぎの状態
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明に係る管継手の接続解体装置の第一実施形態を図1及び2に示す。この接続解体装置は、受け側管体1の受け口内周に、ロックリング2を拡径自在に設けるとともに、挿し側管体3の挿し口外周に突部4を形成し、ロックリング2をその弾性力に抗して拡径することにより、受け側管体1への挿し側管体3の抜き挿しを自在に行い得るようにしつつ、ロックリング2で突部4を係止することにより受け側管体1からの挿し側管体3の抜け止めがなされるようにした、所謂プッシュオンタイプの管継手の接続解体作業に用いるものである。
【0026】
この受け側管体1の外周面には受け側固定部材5が設けられ、挿し側管体3の外周面には挿し側固定部材6が設けられている。そして、この受け側固定部材5と挿し側固定部材6に介在して送り部材7が設けられている。
【0027】
この送り部材7は、断面円形の棒状部材であって、その受け側管体1側の端部を除いて、その周面に雄ねじ部7aが形成されている。そして、この送り部材7の受け側管体側端部は、図3に示すように、受け側固定部材本体9に形成した送り孔8に、管軸方向に移動不能に、かつ、この送り部材7の軸周りに回転自在に設けられている。
【0028】
この受け側固定部材本体9には管軸と平行な回転軸を有する留め具軸10が設けられ、図4に示すように、この留め具軸10に、留め具11の一端側が軸心周りに回動自在に設けられている。この留め具11は鋼製ワイヤであって、受け側管体1の外周面に沿ってこの管体1の下側を通って掛け渡すことができる長さを有している。この留め具11の他端側は、受け側固定部材本体9に設けられた留め具ロック部12によって固定される。この留め具ロック部12は、図5に示すように、ロック部本体13と、このロック部本体13に設けたレバー軸14周りに回動するロックレバー15とからなり、このロックレバー15には係止舌片16が形成されている。また、このロック部本体13には留め具溝17が形成されていて、この留め具溝17に留め具11を引き通すようになっている。この留め具11を引き通した状態でロックレバー15を回動してロック状態とすると、係止舌片16が留め具11に食い込んで、この留め具11の抜け止めがなされる一方で、このロックレバー15を回動してロック解除状態とすると、前記食い込みが解消して、この留め具11を引き抜き可能状態とすることができる。
【0029】
その一方で、挿し側固定部材本体18の掛かり部19(後述する図12を参照)には、図6に示す稼働治具20の引っ掛け部21が引っ掛けられ、この稼働治具20に形成された送りねじ孔22に、送り部材7の雄ねじ部7aがねじ込まれている。この送り部材7を軸周りに回転すると、それに伴って稼働治具20及び挿し側固定部材6が管軸方向に移動する。また、この挿し側固定部材本体18の受け側管体1の反対側には固定ボルト23が設けられていて、この固定ボルト23をねじ込むと、挿し側管体3に挿し側固定部材本体18が固定される。これにより、送り部材7を軸周りに回転すると、それに伴って挿し側管体3をその管軸方向に移動することが可能となる。その一方で、この固定ボルト23を緩めると、挿し側管体3に対して挿し側固定部材6を前記管軸方向に相対的に移動(スライド)させることが可能となる。この挿し側固定部材6の可動範囲は、送り部材7の雄ねじ部7a形成領域によって決まり、この雄ねじ部7aを受け側固定部材5のすぐ近くまで形成すれば、この挿し側固定部材6を受け側固定部材5に近接した状態とすることもできる。
【0030】
また、この挿し側固定部材本体18には、図2(a)に示したように解体矢24の尾部25を挿し込むためのポケット26が2箇所に形成されている。このポケット26に解体矢24を挿し込むと、作業中に解体矢24が脱落したり、傾いたりする恐れが低くなるため、解体作業をよりスムーズに行うことができる。なお、解体矢24によるロックリング2のロック状態の解消機構は従来技術と同じなので、この点についての説明は省略する。
【0031】
さらに、この挿し側固定部材本体18には、受け側固定部材5と同様に、金属ワイヤからなる留め具11、留め具ロック部12等が設けられ、この挿し側固定部材6を挿し側管体3に自在に固定できるようになっている。
【0032】
この解体矢24は、図7に示すように先端にテーパ部27が形成されるとともに、その尾部25に磁石28が設けられている。このため、本実施形態のように留め具11に鋼製ワイヤを用いた場合、解体矢24を所望の箇所(例えば、図2(a)に記載の5箇所)に簡便に設けることができる。
【0033】
この送り部材7の受け側固定部材本体9からの突出端には受け具ナット29(六角ナット)が設けられており、後述する管継手の解体作業及び接続作業において、この受け具ナット29にラチェットレンチ30等の工具を用いたり、モータの回転軸を接続したりすることで、この受け具ナット29すなわち送り部材7を軸周りに回転させる。この回転の回転量を微調節することにより、解体矢24の挿し込みを適切に行うことができ、図18に示したように、解体矢24の挿し込み不足又は挿し込み過ぎに起因するトラブルを回避することができる。
【0034】
この接続解体装置を用いた管継手の解体作業の手順について図8a〜図8fを用いて説明する。
まず、連結された管継手の挿し側管体3に、挿し側固定部材6を設ける(図8aを参照)。このとき、管体3に掛け渡すように設けた留め具11をこの管体3にあまり締め付けないようにするとともに、固定ボルト23を緩めた状態にしておく。このようにすると、この挿し側固定部材6を管軸方向に自在にスライドさせることができる。
【0035】
次に、挿し側固定部材本体18のポケット26、及び、留め具11の所定箇所に合計7本の解体矢24を設ける(図2(a)及び図8(b)を参照)。この解体矢24は、図7に示したようにその尾部25に磁石28を設けられていて、このポケット26及び留め具11に、簡便かつ確実に固定することができる。
【0036】
さらに、受け側管体1に受け側固定部材5を設ける。このとき、管体1に掛け渡すように設けた留め具11をしっかり締め付けて、この受け側管体1の管軸方向に受け側固定部材5がスライドしないようにする。そして、挿し側固定部材6の挿し側固定部材本体18に稼働治具20を設け、送り部材7の雄ねじ部7aの先端をこの稼働治具20の送りねじ孔22にねじ込む一方で、この送り部材7の雄ねじ部7aを形成していない側の端部を受け側固定部本体9の送り孔8に通し、この送り孔8からの突出端に受け具ナット29を設ける(図8cを参照)。
【0037】
次に、この受け具ナット29にラチェットレンチ30を設け、この送り部材7を軸周りに回転させて、挿し側固定部材6を受け側固定部材5に接近させる。そうすると、両管体1、3の隙間に解体矢24が挿し込まれ、ロックリング2によるロック状態が解除される(図8dを参照)。このロック解除状態で、挿し側固定部材本体18の固定ボルト23を締め付けるとともに、管体3に掛け渡すように設けた留め具11をしっかりと締め付ける。この締め付けによって、挿し側固定部材6が挿し側管体3に固定された状態となる。この状態のまま、送り部材7を解体矢24の挿し込みの際と逆の方向に軸周りに回転すると、両固定部材5、6が離間するとともに挿し側管体3が引き抜かれ(図8eを参照)、管継手の分解作業が完了する(図8fを参照)。
【0038】
この解体作業においては、解体矢24を挿し込んだ際に、両固定部材5、6が離間した態様を示したが、受け側固定部材5を受け側管体1の開口部近傍に設け、前記挿し込みの際に、両固定部材5、6が近接する構成とすることもできる。これは、本願発明において送り部材7の周面に雄ねじ部7aを形成しこの雄ねじ部7aを形成した範囲内において挿し側固定部材6を移動し得るようにしたことによるものであって、油圧シリンダ等の伸縮部材を用いる従来の構成においてはなし得ないものである。
【0039】
この接続解体装置を用いた管継手の接続作業の手順について図9を用いて説明する。
まず、挿し側管体3に挿し側固定部材6を設ける。このとき、管体3に掛け渡すように設けた留め具11を管体3にしっかりと締め付けるとともに、固定ボルト23も締め付ける。これにより、挿し側固定部材6が挿し側管体3に固定される(同図(a)を参照)。
【0040】
次に、受け側管体1に受け側固定部材5を設ける。このとき、管体1に掛け渡すように設けた留め具11をしっかり締め付けて、この受け側管体1の管軸方向に受け側固定部材5がスライドしないようにする。そして、挿し側固定部材6の挿し側固定部材本体18に稼働治具20を設け、送り部材7の雄ねじ部7aの先端をこの稼働治具20の送りねじ孔22にねじ込む一方で、この送り部材7の雄ねじ部7aを形成していない側の端部を受け側固定部本体9の送り孔8に通し、この送り孔8からの突出端に受け具ナット29を設ける(同図(b)を参照)。
【0041】
次に、この受け具ナット29にラチェットレンチ30を設け、この送り部材7を軸周りに回転させて、挿し側固定部材6を受け側固定部材5に接近させる。そうすると、受け側管体1に挿し側管体3が挿し込まれ、挿し口の先端に形成した突部4とロックリング2が当接し、このロックリング2が拡径した状態となる(図15(b)及び図9(c)を参照)。この状態からさらに挿し側管体3を挿し込んで、管継手の接続作業を完了する(図15(c)及び図9(d)を参照)。
【0042】
この発明に係る管継手の接続解体装置の第二実施形態を図10及び11に示す。この実施形態に係る構成においては、挿し側固定部材6としてリング状固定部材31が用いられている。このリング状固定部材31は、図12に示すように上下に二分割(上部分割リング31a及び下部分割リング31b)されており、両分割リング31a、31bを挿し側管体3に設けた後に、連結ボルト32で固定するようになっている。
【0043】
この上部分割リング31aの上端には掛かり部19が形成され、この掛かり部19に稼働治具20(図6を参照)の引っ掛け部21が設けられる。また、この上部分割リング31aの周面には内径側に貫通するねじ孔が形成され、このねじ孔に固定ボルト23が設けられている。この固定ボルト23をねじ込むと、挿し側管体3にこのリング状固定部材31が固定される。その一方で、この固定ボルト23を緩めると、挿し側管体3に対してリング状固定部材31を管軸方向に相対的に移動(スライド)させることが可能となる。また、上部分割リング31a及び下部分割リング31bには、それぞれ4本の解体矢24が一体に設けられている。
【0044】
なお、この第二実施形態に係る構成における管継手の解体作業の手順は、第一実施形態に係る構成の場合と同じなので説明は省略する(図8a〜図8fを参照)。
【0045】
また、このリング状固定部材31を用いて管継手の接続作業を行う際は、図13に示すように解体矢24の先端が受け側管体1と反対を向くようにリング状固定部材31を挿し側管体3に設け、固定ボルト23を締め付けて、このリング状固定部材31を挿し側管体3に固定する。このようにすれば、解体矢24が邪魔にならず、スムーズにこの接続作業を行うことができる。
【0046】
上記各実施形態では、金属ワイヤからなる留め具を採用した受け側固定部材5について示したが、図14に示すように、この留め具11としてチェーンを採用することもできる。このチェーンは受け側固定部材5だけではなく、挿し側固定部材6にも採用できる。また、このチェーンの材質は、管体1、3を支持するのに十分な強度を有するのであれば特に限定されないが、挿し側固定部材6として用いた際に、尾部25に磁石28を設けた解体矢24を容易に取り付けられるように磁性材料からなる金属製とするのがより好ましい。
【0047】
また、上記各実施形態において、送り部材7の本数は一本に限定されず、両管体1、3の接離をスムーズに行い得る限りにおいて、適宜変更することができる。そして、解体矢24の本数についても、ロックリング2によるロック状態をスムーズに解除し得る限りにおいて、適宜変更することができる。
【0048】
さらに、上記各実施形態では、送り部材7の軸周りの回転をラチェットレンチ30で行ったが、モータを用いて自動化してもよい。接続分解作業の一層の効率化を図り得るためである。
【符号の説明】
【0049】
1 受け側管体
2 ロックリング
3 挿し側管体
4 突部
5 受け側固定部材
6 挿し側固定部材
7 送り部材
7a (送り部材の)雄ねじ部
8 送り孔
9 受け側固定部材本体
10 留め具軸
11 留め具
12 留め具ロック部
13 ロック部本体
14 レバー軸
15 ロックレバー
16 係止舌片
17 留め具溝
18 挿し側固定部材本体
19 掛かり部
20 稼働治具
21 引っ掛け部
22 送りねじ孔
23 固定ボルト
24 解体矢
25 尾部
26 ポケット
27 (解体矢の)テーパ部
28 磁石
29 受け具ナット
30 ラチェットレンチ
31 リング状固定部材
31a 上部分割リング
31b 下部分割リング
32 連結ボルト
33 弾性部材
34 水密用ゴム輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け側管体(1)の受け口内周に、ロックリング(2)を拡径自在に設けるとともに、挿し口を形成した挿し側管体(3)の挿し口外周に突部(4)を形成し、前記ロックリング(2)をその弾性力に抗して拡径することにより、前記受け側管体(1)への前記挿し側管体(3)の抜き挿しを自在に行い得るようにしつつ、前記ロックリング(2)で前記突部(4)を係止することにより前記受け側管体(1)からの前記挿し側管体(3)の抜け止めがなされるようにしたプッシュオンタイプの管継手の接続解体装置において、
前記受け側管体(1)の外周面に設ける受け側固定部材(5)と、前記挿し側管体(3)の外周面に設ける挿し側固定部材(6)と、前記受け側固定部材(5)と挿し側固定部材(6)に介在する送り部材(7)とを備え、
前記受け側固定部材(5)は前記受け側管体(1)の外周面に固定される一方で、前記挿し側固定部材(6)はこの挿し側固定部材(6)に設けた固定ボルト(23)のねじ込み量によって前記挿し側管体(3)の外周面に固定又はこの挿し側管体(3)の管軸方向にスライド自在とし得るようになっており、
前記送り部材(7)は両管体(1、3)の管軸と平行に設けられた断面円形の棒状部材であってその周面に雄ねじ(7a)が形成され、この送り部材(7)の前記受け側管体(1)側は、前記受け側固定部材(5)に形成した送り孔(8)に、この送り部材(7)の軸周りに回転自在に設けられる一方で、この送り部材(7)の前記挿し側管体側(3)は、前記挿し側固定部材(6)に形成した送りねじ孔(22)にねじ込まれ、この送り部材(7)の軸周りの回転によってこの挿し側固定部材(6)が前記挿し側管体(3)の管軸方向に移動し、両固定部材(5、6)が接離自在となっており、
前記挿し側固定部材(6)に、前記受け側管体(1)の内周と挿し側管体(3)の外周との間の隙間に挿し込んで、接続状態における前記ロックリング(2)を拡径する解体矢(24)を設けたことを特徴とする管継手の接続解体装置。
【請求項2】
前記受け側固定部材(5)及び挿し側固定部材(6)の少なくとも一方が、固定部材本体(9、18)と、前記管体(1、3)の外周面に沿って掛け渡す留め具(11)と、この受け側管体(1)の管軸と平行な回動軸を有し、前記留め具(11)の一端側を回動自在に支持する留め具軸(10)と、前記留め具(11)の他端側を固定する留め具ロック部(12)とを備え、
前記留め具ロック部(12)は、前記留め具(11)を通す留め具溝(17)を形成したロック部本体(13)と、このロック部本体(13)に形成したレバー軸(14)周りに回動し、ロック状態において前記留め具(11)を前記ロック部本体(13)に押し付けてこの留め具(11)の抜け止めをする係止舌片(16)を形成したロックレバー(15)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の管継手の接続解体装置。
【請求項3】
前記挿し側固定部材(6)に、前記解体矢(24)の尾部(25)を挿し込むポケット(26)を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手の接続解体装置。
【請求項4】
前記解体矢(24)を前記留め具(11)に磁石(28)を用いて固定するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の管継手の接続解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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