説明

管継手用継手本体、管継手、継手本体製造方法

【課題】管継手に着目することにより、コストアップや設置スペースの増加を招くことなく簡単で廉価にストレーナを装備できるようにする点にある。
【解決手段】胴部5と、外周に雄ネジ7を持って胴部5から突設される管状部6とを有し、インナーリング2における径外側に隆起する環状大径部分11aを有するリング外周面と管状部6の内周面との間にフッ素樹脂製チューブ4の端部4Tが嵌装される状態におけるユニオンナット3の締付けによる内奥側への螺進により、環状大径部分11aとチューブ端部4Tの内周面との間と、チューブ端部4Tの外周面と管状部6の内周面との間とのうちの少なくとも一方を密着するシール部Sが形成されるように構成され、胴部5の流体移送用流路1Wに作用するストレーナBが一体的に装備されている管継手用継手本体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製等の管継手用継手本体、管継手、継手本体製造方法に係り、詳しくは、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水の配管に適用される管継手用継手本体、管継手、継手本体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の配管系統等において流体中の夾雑物や不純物を取り除くには、配管系に専用の部品としてのストレーナを介装する構成が採られる。一般的には流路の何処かにストレーナを設けることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1においては、配管系における閉止弁(67)と入口弁(69)との間に、パイプ状のストレーナ本体(10)に傾斜配置される濾網(20)を内装して成るストレーナ(68)が介装される構成を開示している。また、特許文献2においては、ストレーナー配管部(13)における一対の仕切弁(16),(17)の間、及バイパス配管部における一対の仕切弁(18),(19)の間のそれぞれにストレーナ(12),(15)が介装される構成を開示している。
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2にて開示される技術では、専用のストレーナが必要になるとともに、それを配管系の途中に接続するための接続手段(管継手等)や配置スペースが必要であり、部品点数の増加や管理コストの増大に繋がる不利がある。また、ある仕様に合せたストレーナは、種類や粘度の異なる流体には使用できないことが多い。従って、現実には、取扱い流体の数だけ互いに異なる仕様のストレーナが必要になり、そのため生産手順が多く必要であって管理コストも増大する等、運営上の煩雑さが増大する傾向があった。
【0005】
一方、近年における流体機器やチューブ等を用いた配管系統に使用される継手構造としては、継手本体とチューブとを、チューブに内嵌されるインナーリングを用いてユニオンナットで締付け固定することにより、配管接続部分からの漏れがほぼ完全に解消できる優れた手段が知られている。このような継手構造としては、特許文献3において開示されたものがある。この管継手本体がインナーリングを伴って用いられる継手構造は、今日では、流体配管系統における技術標準として多用されており、この継手構造は殆どの配管系統において存在しているほどである。
【特許文献1】特開2003−801938号公報
【特許文献2】特開平9−32939号公報
【特許文献3】特開2000−283372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、流体の配管系統においては必ず1つ以上存在する程に多用される管継手に着目することにより、コストアップや設置スペースの増加を招くことなく簡単で廉価にストレーナを装備できるようにする点にある。また、取扱い流体が異なっても極力ストレーナの種類を減らして、生産工数や管理コスト等の軽減化が可能となるようにすることも目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、管継手用継手本体において、管状の流体移送用流路1Wを備える胴部5と、外周に雄ネジ7が形成されて前記胴部5からその軸心P方向に突設される管状部6とを有し、
流体経路2Wを有するインナーリング2における径外側に隆起する環状大径部分11aを有するリング外周面と前記管状部6の内周面との間に可撓性材料で成る流体移送用チューブ4のチューブ端部4Tが嵌装される状態におけるユニオンナット3のその雌ネジ8を前記雄ネジ7に螺合させての締付けによる前記管状部6の内奥側への螺進により、
前記環状大径部分11aと前記チューブ端部4Tの内周面との間と、前記チューブ端部4Tの外周面と前記管状部6の内周面との間とのうちの少なくとも一方を密着するシール部Sが形成されるように構成されるとともに、前記流体移送用流路1Wに作用するストレーナBが一体的に装備されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の管継手用継手本体において、前記ユニオンナット3の締付けによる前記管状部6の内奥側への螺進によって、前記管状部6又は前記胴部5と前記インナーリング2の内奥側のリング端部10とが密着しての奥シール部Qが構成されるように、前記インナーリング2における前記環状大径部11aよりも内奥側の端部10が、前記管状部6又は前記胴部5に内嵌可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の管継手用継手本体において、前記ストレーナBが、前記胴部5における管状部側端部の前記流体移送用流路1Wに設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の管継手用継手本体において、前記ストレーナBを構成するエレメント24の開口部Kが、互いに同一方向に揃えられる多数の長孔25で形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、管継手において、管状の流体移送用流路1Wを備える胴部5、及び外周に雄ネジ7が形成されて前記胴部5からその軸心P方向に突設される管状部6を有して成る継手本体1と、外径側に隆起する環状大径部11aを有するシール用のインナーリング2と、前記雄ネジ7に螺合可能な雌ネジ8が形成されるユニオンナット3とから成り、
前記インナーリング2の外周面と前記管状部6の内周面との間に可撓性材料で成る流体移送用チューブ4のチューブ端部4Tが嵌装される状態における前記ユニオンナット3の前記雌ネジ8を前記雄ネジ7に螺合させての締付けによる前記管状部6の内奥側への螺進により、前記インナーリング2の環状大径部11aと前記チューブ端部4Tの内周面との間と、前記チューブ端部4Tの外周面と前記管状部6の内周面との間とのうちの少なくとも一方を密着するシール部Sが構成されるとともに、
前記継手本体1には、その流体移送用流路1Wに作用するストレーナBが一体的に装備されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の管継手において、前記シール部Sが、前記管状部6の内周面における先拡がり傾斜する開口側端テーパ面9と、前記インナーリング2の前記環状大径部11aにおける先拡がり傾斜する内向きテーパ面15との間に、前記チューブ端部4Tが挟持される構造によって構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の管継手において、前記インナーリング2における前記環状大径部11aよりも内奥側のリング端部10が前記管状部6又は前記胴部5に内嵌されており、そのリング端部10における前記管状部6又は前記胴部5と前記インナーリング2とを、前記ユニオンナット3の締付けによる前記管状部6の内奥側への螺進によって密着する奥シール部Qが形成されている請求項5又は6に記載の管継手ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の管継手において、前記奥シール部Qが、前記管状部6又は前記胴部5の先端側に向けて漸次拡径又は縮径するように傾斜するシール用テーパ面13と、前記シール用テーパ面13と同方向に傾斜する状態で前記リング端部10に形成される合せ用テーパ面12との密着によって形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の管継手において、前記奥シール部Qが、前記シール用テーパ面13よりも径外側で、かつ、前記軸心Pと平行な状態で前記継手本体1に形成される環状溝部21に、前記リング端部10に形成される円筒部20を強制嵌入させる構造によって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10に係る発明は、継手本体製造方法において、請求項1〜4に記載の管継手用継手本体1及び請求項5〜9に記載の管継手Aのうちの何れか一項に記載の前記ストレーナBが、前記流体移送用流路1Wを閉塞する状態の遮断壁27を前記胴部5に一体形成し、それから前記遮断壁27に複数の開口部Kを貫通形成することにより形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、管継手を構成する上での必須の構成部品である継手本体にストレーナを設けたものであり、専用の部品を新たに追加したり、部品数を増やすことなく、しかも、配管系統を何ら変更することなく、流体の濾過が行えるようになる。つまり、継手本体に、管継手の構成部品であることとストレーナであることとの双方の機能を持たせることができるので、管継手自体は従来のものを使用できてコストアップを招かないようにしながら、流体の濾過が行える合理的な管継手用継手本体が実現可能になる。このような継手本体を備える管継手は、配管系統の至る所に存在することが多いので、設計の自由度が高く、また、改造が容易に行える利点もある。その結果、流体の配管系統においては必ず1つ以上存在する程に多用される継手本体を用いた管継手に着目することにより、コストアップや設置スペースの増加を招くことなく簡単で廉価にストレーナを備える管継手用継手本体を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、チューブに関するシール部とは別に、管状部又は胴部とインナーリングの内奥側の端部とが密着しての奥シール部が形成されるので、請求項1の構成による前記効果を有しながら、継手本体を有する管継手のシール機能をより一層強化できる利点がある。
【0019】
請求項3の発明によれば、胴部における管状部側端部に設けられているので、胴部の先端部分がポンプ等の流体機器に接続連結されることによる変形のおそれが及び難い又は及ばないとともに、インナーリングとの圧入による変形のおそれも及び難い又は及ばないようになり、開口部の面積が減少するおそれが生ぜず、安定した濾過性能が発揮できるストレーナを有する管継手用継手本体を提供することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、ストレーナの開口部が、互いに同一方向に揃えられる多数の長孔で形成されているので、開口面積を十分大きくして流体の流れの妨げになり難いようにできるとともに、粘性のある流体でも円滑に通して目詰まりが生じ難いようにしながら流体の濾過が行える管継手用継手本体を提供することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、管継手を構成する上での必須の構成部品である継手本体にストレーナを設けたものであり、専用の部品を新たに追加したり、部品数を増やすことなく、しかも、配管系統を何ら変更することなく、流体の濾過が行えるようになる。つまり、継手本体に、管継手の構成部品であることとストレーナであることとの双方の機能を持たせることができるので、管継手自体は従来のものを使用できてコストアップを招かないようにしながら、流体の濾過が行える合理的な管継手が提供できる。そして、このような管継手は配管系統の至る所に存在することが多いので、設計の自由度が高く、また、改造が容易に行える利点もある。
【0022】
請求項6の発明によれば、シール部は、管状部先端の開口側端テーパ面とインナーリングの内向きテーパ面との間にチューブ端部を挟持することで構成されるので、請求項5の構成による前記効果を有しながら、確実なシール機能が得られる管継手を提供することができる。
【0023】
請求項7〜9の発明によれば、継手本体の管状部又は胴部とインナーリングのリング端部とによる奥シール部が付設されるので、請求項5又は6の構成による前記いずれかの効果を奏しながら、シール機能がより強化される利点がある。
【0024】
請求項10明によれば、開口部を後加工する製造方法であるから、遮断壁を設ける工程までは共通化しながらも、流体の種類(濾過対象物の種類)や仕入先の要望を考慮した開口部を形成することが可能になる。その結果、請求項1〜4のいずれかの管継手用継手本体、又は請求項5〜9のいずれかの管継手を、取扱い流体が異なっても極力ストレーナの種類を減らして、生産工数や管理コスト等の軽減化が可能となるように、ストレーナを顧客のニーズにマッチさせたものとしながら、コスト安及び迅速、かつ、柔軟に対応して提供することができる利点のある継手本体製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明による管継手用継手本体、管継手、継手本体製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は管継手用継手本体を示す縦断面図、図2はストレーナ部分を示す一部切欠きの正面図、図3は継手本体を用いた管継手の断面図、図4は継手本体の製造方法を示す図、図5は実施例2の継手本体を用いた管継手の断面図、図6はストレーナ開口部の第1別形状を示す正面図、図7はストレーナ開口部の第2別形状を示す正面図、図8は奥シール部の別構造を示す要部の断面図である。
【0026】
〔実施例1〕
樹脂製の管継手Aは、図3に示すように、継手本体(管継手用継手本体)1と、これの軸心P方向での端部に形成される互いに同一な第1連結部R1及び第2連結部R2とを有して成るストレートユニオンに構成されている。各連結部R1,R2は、それぞれが耐熱、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例:PTFE)等の樹脂によって成形された前記の継手本体1と、インナーリング2と、ユニオンナット3とを備えて構成されている。インナーリング2は、フッ素樹脂等によるチューブ(流体移送用チューブの一例)4のチューブ端部4Tに圧入内嵌されており、管継手Aとしての組付時には継手本体1の受口(管状部の一例)6に内嵌される。
【0027】
実施例1においては、第1及び第2連結部R1,R2は、それぞれ互いに同一のチューブ4が接続連結されるものであって、構成部品の種類も数も一緒であって全く同一の継手構造に構成されている。従って、以下においては代表として何れか一方の連結部のみ説明するものとし、それで第1及び第2連結部R1,R2に関する説明が為されたものとする。
【0028】
軸心P方向の形状が対称な継手本体1は、図1〜図3に示すように、軸心P方向で中央に位置する筒状の胴部5と、その両端に配備される受口6,6と、胴部5に設けられるストレーナBとを備えて形成されている。尚、胴部5の外周部における軸心P方向の両端それぞれには受輪22が装備されている。つまり、各連結部R1,R2は、実質的には受口6とインナーリング2とユニオンナット3とで構成されている。
【0029】
胴部5から軸心P方向には受口6が突設されるとともに、その受口6の付け根部の径内側に環状溝部21を介して位置する内筒状部14が胴部5に形成されている。胴部5の内径よりも径大に形成される受口6の外周には雄ネジ7が形成され、その内奥側には、3次シール部s3の構成要素として、受口6の内周面6Nをその一部(溝内周面)として用いる前記環状溝部21が形成されている。受口6の開口部における径内側には、2次シール部s2の構成要素として、受口6の内奥側から軸心P方向で外側に向かうに連れて漸次拡径して受口6の端面6tに至るテーパ面として形成される開口側端テーパ面9が形成されている。
【0030】
また、内筒状部14の先端部には、4次シール部s4の構成要素として、軸心P方向での内方に向けて漸次縮径して胴部5の内径面に至るシール用テーパ面13が形成されている。後述するが、シール用テーパ面13を持つ4次シール部s4、及び環状溝部21を持つ3次シール部s3それぞれが奥シール部Qを構成している。そして、開口側端テーパ面9を持つ2次シール部s2及びインナーリング2先端の先窄まりする傾斜外周面で成る外向きテーパ面16(後述)を持つ1次シール部s1のそれぞれがシール部Sを構成している。
【0031】
流体移送用流路1Wに作用するストレーナBは、図1〜図3に示すように、ストレーナを構成する円板状の壁であるエレメント24の開口部Kが、互いに同一方向に揃えられる多数の長孔25で形成されている。各長孔25は、軸心C方向視における長手方向が互いに平行となるようにエレメント24に配列形成されている。図2において、軸心Pに直交し、かつ、互いに直交する第1交差軸心X及び第2交差軸心Yを定義した場合、各長孔25は、第1交差軸心Xに平行であり、かつ、第2交差軸心Yに直交する状態で整列されている。
【0032】
ストレーナBは、胴部5における軸心P方向で各内筒状部14,14を除いた中央領域に、さらに言及すれば両端の受輪22存在箇所をも避けた部分、即ち、径方向の肉厚の厚い箇所に形成されている。これは、後述するが、奥シール部Qを形成すべく、円筒部20が環状溝部21に圧入されたときに、内筒状部14が径内側へ倒れ変位してそれによって長孔25が縮小され、ストレーナBとしての開口面積が減少するおそれが生じないようにするためである。それにより、連結部R1,R2の状況如何に拘らずに安定した濾過性能が発揮できるストレーナBが実現できている。
【0033】
インナーリング2は、図1,図3に示すように、フッ素樹脂(例:PTFE)等の樹脂成形品であり、その軸心P方向内端部に継手本体1の受口6内に嵌合できる外径を有する内奥側のリング端部10が形成されるとともに、その軸心P方向での先端部にチューブ端部4Tに圧入内嵌される圧入部11が形成され、全体としてスリーブ状のものに構成されている。リング端部10の内奥側には、受口6の内奥に形成される環状溝部21に内嵌可能に内奥側に突出される円筒部20と、その円筒部20よりも径内側において内筒状部14のシール用テーパ面13に当接可能な合せ用テーパ面12とが形成されている。
【0034】
圧入部11は、径外側への膨出部である環状大径部分11aと、環状大径部分11aとリング端部10とをつなぐ連接部11bとからなり、連接部11bの外径はリング端部10の外径よりもチューブ4の肉厚相当分だけ細く設定してある。環状大径部分11aは軸心P方向の外側から内奥へ向けて漸次拡径する外周面である外向きテーパ面16と、この外向きテーパ面16の頂部から連接部11bに向かって漸次縮径する外周面である内向きテーパ面15とを有する軸心P方向断面形状が略山形のものに形成されている。
【0035】
インナーリング2は、外径側に隆起した環状大径部分11aの外面でもあるリング外周面2G、及び流体経路2Wとして形成されるリング内周面2Nとを有する筒状体に構成されており、受口6の内周面6Nとリング外周面2Gとの間にチューブ端部4Tが介装される状態における、雄ネジ7に雌ネジ8を螺合させてのユニオンナット3の受口6締付による内奥側への螺進により、環状大径部分11aとチューブ端部4Tの内周面との間に形成される1次シール部s1と、チューブ端部4Tの外周面と受口6の内周面6Nとの間に形成される2次シール部s2との双方(「少なくとも一方」の一例)を密着する2箇所のシール部S,Sが形成されるように構成されている。
【0036】
外向きテーパ面16の頂部の外径、つまり環状大径部分11aの最大外径は連接部11bの外径よりも大きく設定されている。内向きテーパ面15は、その傾斜角度が継手本体1の開口側端テーパ面9の傾斜角度とほぼ一致するとともに、合せ用テーパ面12がシール用テーパ面13に当接したとき、開口側端テーパ面9と内向きテーパ面15との対向間隔がチューブ端部4Tの肉厚相当となるよう形成されている。インナーリング2の内径は、チューブ端部4Tの内径及び継手本体1の胴部5の、即ち流体移送用流路1Wの内径と同一又は略同一に設定されており、流体の移動(流動)を妨げないようにされている。
【0037】
チューブ端部4T内に、リング端部10が軸心P方向においてチューブ外に突出する状態でインナーリング2を圧入内嵌することにより、チューブ端部4Tを拡径させての拡径部18が形成される。そして、拡径部18の継手本体1への挿入方向とは反対側の反挿入方向側斜面部18aと、チューブ4における軸心Pと平行なチューブ本体4Aとの境目部分を、チューブ4における拡径付け根部19と定義する。また、チューブ端部4Tにおける連接部11bに外嵌される軸心Pと平行な筒状部分は拡径ストレート部17と呼ぶ。
【0038】
インナーリング2を内嵌しているチューブ端部4Tが受口6に挿入された状態では、インナーリング2の合せ用テーパ面12が継手本体1のシール用テーパ面13に当接し、かつ、インナーリング2の円筒部20が継手本体1の環状溝部21に圧入される。加えて、受口6の開口側端テーパ面9がチューブ端部4Tの挿入方向側斜面部18bの外面に当接する。すなわち、インナーリング2の外周面2Gに沿って変形したチューブ端部4Tの拡径部18の挿入方向側斜面部18bが開口側端テーパ面9と当接する。
【0039】
ユニオンナット3は、内周に継手本体1の雄ネジ7に螺合可能な雌ネジ8が形成されるネジ筒部3Aと、これの一端部から内向きに張り出し形成される環状の鍔部23とから成る部品である。鍔部23の内周部の軸方向内端には、ユニオンナット3の螺進によってチューブ端部4Tを軸心P方向に押すための押圧部26が形成されている。
【0040】
第2連結部R2を組付けるには、インナーリング2が圧入内嵌されているチューブ端部4Tを継手本体1の受口6に挿入させた状態で、チューブ本体4Aの外周に予め遊外嵌させているユニオンナット3の雌ネジ8を受口6の雄ネジ7に螺合させて締め付け、内奥側に螺進させる。この螺進に伴ってユニオンナット3の押圧部26がチューブ端部4Tの拡径部18の拡径付け根部19に当接し、その拡径付け根部19及びインナーリング2を軸心P方向で内奥側に強制的に押圧して押込んで行く。
【0041】
すると、図1,3に示すように、インナーリング2の合せ用テーパ面12がシール用テーパ面13に当接して4次シール部s4が形成され、円筒部20が環状溝部21に圧入されて3次シール部s3が形成され、挿入方向側斜面部18bが開口側端テーパ面9に当接されて2次シール部s2が形成され、反挿入方向側斜面部18aが外向きテーパ面16に当接して1次シール部s1が形成される。1次シール部s1及び2次シール部s2の夫々がシール部Sを構成し、3次シール部s3及び4次シール部s4の夫々が奥シール部Qを構成している。これらのシール部s1〜s4により、液漏れの無い優れたシール性(密封力)を付与するとともにチューブ端部4Tの抜止めが図られている。
【0042】
つまり、ユニオンナット3の受口6の締付による内奥側への螺進によって、胴部5とインナーリング2の内奥側のリング端部10とが密着しての奥シール部Qが構成されるように、リング端部10が胴部5に内嵌可能に形成されている。具体的には、奥シール部Qが、胴部5の先端側に向けて漸次拡径するように傾斜するシール用テーパ面13と、シール用テーパ面13と同方向に傾斜する状態でリング端部10に形成される合せ用テーパ面12との密着によって形成されている。
【0043】
尚、環状溝部21に対し円筒部20の外周面のみ、或いは内周面のみを密着させて3次シール部s3を構成させることも可能である。また、継手本体1における受口6の内奥側(付根側)には、リング凸条1tで抜け止めされる受輪22が嵌合装着され、受輪22に当接可能な対向輪28がユニオンナット3の内奥側の端面に装備されている。ユニオンナット3を締付けての螺進によって受輪22と対向輪28とが相対回動しながら接触することによる接触騒音に発生により、ユニオンナット3の締付け限度位置を規定する節度機構29が構成されている。
【0044】
この管継手Aやそれ用の継手本体1は、流体配管の途中やポンプやバルブといった流体機器から出るチューブと同径(或いは異径)のチューブとの接続箇所に適用できるので、その継手構造を用いて手軽にストレーナBを設置することが可能であり、部品点数の増加やコストアップを招来することのない合理的、経済的、設計自由度も高い状態で流体の濾過を行わせることができる。
【0045】
次に、継手本体1の製造方法について説明する。継手本体1は、まず図4(a)に示すように、型成形等により、開口部Kである複数の長孔25の無い状態のエレメント、即ち遮断壁27を持ち、流体移送用流路1W遮断がされた状態の一次継手本体1iを作成する素材形成工程を行う。それから、図4(b)に示すように、例えばフライス加工により、遮断壁27に長孔25を形成するストレーナ形成工程を行う。
【0046】
それにより、遮断壁27から長孔25を有するエレメント24となって完成品である継手本体1(図2等を参照)が得られる。尚、図4(b)において、26はフライス刃である。つまり、流体移送用流路1Wを閉塞する状態の遮断壁27を一次継手本体1iに一体形成し、それから遮断壁27に複数の長孔25を貫通形成することにより継手本体1が形成されるのである。尚、図4においては受輪22が装備されている状態で描いてあるが、作成段階では受輪22は無くても良い。
【0047】
例えば、素材形成工程において同時に長孔25等の開口部Kも形成させることは可能であるが、その場合には継手本体1の製造後に開口部Kの形状や大きさを変更することには容易に対応させ難い問題がある。これに対して、開口部Kを後加工する製造方法を採れば、ストレーナ形成工程は変更するも素材形成工程は共通使用できるので、流体の種類(濾過対象物の種類)や仕入先の要望に対してコスト安及び迅速、かつ、柔軟に対応することができる利点がある。
【0048】
〔開口部Kの第1別実施例〕
開口部Kの形状は、図6に示すように、エレメント24に形成される多数の小円孔30で成るものでも良い。この場合は、図3等に示される長孔25のものよりも濾過対象物が小さなものとなる。
【0049】
〔開口部Kの第2別実施例〕
開口部Kは、図7に示すように、軸心方向視の形状が互いに複数種に異なる円孔31、小円弧孔32、及び大円弧孔33とを有して成るものでも良い。この図7の場合は、小円弧孔32及び大円弧孔33は四つずつ形成され、中心の円孔31は一つのみ形成されている。
【0050】
〔実施例2〕
管継手Aは、図5に示すような構造のものでも良い。即ち、実施例2による管継手Aは、流体機器の一例であるポンプ34にフッ素樹脂(PTFE等)製のチューブ4を接続連結させるものであって、ポンプボディ35に縦向きの軸心Pを有して螺装される継手本体1と、継手本体1の上端部に形成される連結部Rとから構成されている。
【0051】
継手本体1は、外周端部にテーパ雄ネジ36が形成された胴部5と、外周に雄ネジ7を備える受口6と、ストレーナBとを有して構成されている。胴部5は、テーパ雄ネジ36を備える小径部5Aと、小径部5Aと受口6との間に位置する大径部5Bとから成り、テーパ雄ネジ36をポンプボディ35のテーパ雌ネジ37に螺着することにより、継手本体1の流体移送用流路1Wとポンプボディ35の流体路35Wとが液密に接続連結される。
【0052】
ストレーナBは、軸心P方向の位置が基も肉厚の厚い大径部5Bに合致するように配置されており、比較的軸心P方向の長さが短いエレメント24に、大きさの比較的小さい開口部Kを多数設けて構成されている。つまり、ストレーナBは、胴部5における受口6側端部の流体移送用流路1Wに設けられている。ストレーナーBの形状は、図2に示す長円形のものや、図6に示す多数の円形のもの、或いは図7に示す複数の互いに異形のもの、その他が可能である。尚、連結部Rは、図1,3に示す第1,第2連結部R1,R2と同一のものであるため、同一の符号を付すことでその説明が為されたものとする。
【0053】
〔奥シール部Qの別実施例〕
継手本体1とインナーリング2とで構成される奥シール部Qは、図8に示すように、内筒状部14における軸心P方向で先端側ほど小径となる先端先窄まり外周面38(シール用テーパ面13の一例)と、リング端部10における内奥側ほど大径となる奥拡がり内周面39(合せ用テーパ面12の一例)とで成る構造の3次シール部s3として構成されるものでも良い。つまり、胴部5の先端側に向けて漸次縮径するように傾斜するシール用テーパ面13と、シール用テーパ面13と同方向に傾斜する状態でリング端部10に形成される合せ用テーパ面12との密着によって形成される奥シール部Qである。その他の構造は、図1に示す管継手Aと同じであり、同一箇所には同一の符号を記す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】管継手用継手本体を示す側面方向の縦断面図(実施例1)
【図2】図1のストレーナ部分を示す一部切欠きの正面図
【図3】図1の継手本体を用いた管継手の断面図
【図4】図1の継手本体の製造方法を示し、(a)は型成形及びねじ切り後の断面図、(b)はストレーナの加工状況を示す断面図
【図5】実施例2の継手本体を用いた管継手の断面図
【図6】ストレーナ開口部の第1別形状を示す正面図
【図7】ストレーナ開口部の第2別形状を示す正面図
【図8】奥シール部の別構造を示す要部の断面図
【符号の説明】
【0055】
1 継手本体
1W 流体移送用流路
2 インナーリング
2W 流体経路
3 ユニオンナット
4 チューブ
4T チューブ端部
5 胴部
6 管状部
7 雄ネジ
8 雌ネジ
9 開口側端テーパ面
10 リング端部
11a 環状大径部分
12 合せ用テーパ面
13 シール用テーパ面
15 内向きテーパ面
20 円筒部
21 環状溝部
24 エレメント
25 長孔
27 遮断壁
A 管継手
B ストレーナ
K 開口部
P 軸心
Q 奥シール部
S シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の流体移送用流路を備える胴部と、外周に雄ネジが形成されて前記胴部からその軸心方向に突設される管状部とを有し、
流体経路を有するインナーリングにおける径外側に隆起する環状大径部分を有するリング外周面と前記管状部の内周面との間に可撓性材料で成る流体移送用チューブのチューブ端部が嵌装される状態におけるユニオンナットのその雌ネジを前記雄ネジに螺合させての締付けによる前記管状部の内奥側への螺進により、
前記環状大径部分と前記チューブ端部の内周面との間と、前記チューブ端部の外周面と前記管状部の内周面との間とのうちの少なくとも一方を密着するシール部が形成されるように構成されるとともに、前記流体移送用流路に作用するストレーナが一体的に装備されている管継手用継手本体。
【請求項2】
前記ユニオンナットの締付けによる前記管状部の内奥側への螺進によって、前記管状部又は前記胴部と前記インナーリングの内奥側のリング端部とが密着しての奥シール部が構成されるように、前記インナーリングにおける前記環状大径部よりも内奥側の端部が、前記管状部又は前記胴部に内嵌可能に形成されている請求項1に記載の管継手用継手本体。
【請求項3】
前記ストレーナが、前記胴部における管状部側端部の前記流体移送用流路に設けられている請求項1又は2に記載の管継手用継手本体。
【請求項4】
前記ストレーナを構成するエレメントの開口部が、互いに同一方向に揃えられる多数の長孔で形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の管継手用継手本体。
【請求項5】
管状の流体移送用流路を備える胴部、及び外周に雄ネジが形成されて前記胴部からその軸心方向に突設される管状部を有して成る継手本体と、外径側に隆起する環状大径部を有するシール用のインナーリングと、前記雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されるユニオンナットとから成り、
前記インナーリングの外周面と前記管状部の内周面との間に可撓性材料で成る流体移送用チューブのチューブ端部が嵌装される状態における前記ユニオンナットの前記雌ネジを前記雄ネジに螺合させての締付けによる前記管状部の内奥側への螺進により、前記インナーリングの環状大径部と前記チューブ端部の内周面との間と、前記チューブ端部の外周面と前記管状部の内周面との間とのうちの少なくとも一方を密着するシール部が構成されるとともに、
前記継手本体には、その流体移送用流路に作用するストレーナが一体的に装備されている管継手。
【請求項6】
前記シール部が、前記管状部の内周面における先拡がり傾斜する開口側端テーパ面と、前記インナーリングの前記環状大径部における先拡がり傾斜する内向きテーパとの間に、前記チューブ端部が挟持される構造によって構成されている請求項5に記載の管継手。
【請求項7】
前記インナーリングにおける前記環状大径部よりも内奥側のリング端部が前記管状部又は前記胴部に内嵌されており、そのリング端部における前記管状部又は前記胴部と前記インナーリングとを、前記ユニオンナットの締付けによる前記管状部の内奥側への螺進によって密着する奥シール部が形成されている請求項5又は6に記載の管継手。
【請求項8】
前記奥シール部が、前記管状部又は前記胴部の先端側に向けて漸次拡径又は縮径するように傾斜するシール用テーパ面と、前記シール用テーパ面と同方向に傾斜する状態で前記リング端部に形成される合せ用テーパ面との密着によって形成されている請求項7に記載の管継手。
【請求項9】
前記奥シール部が、前記シール用テーパ面よりも径外側で、かつ、前記軸心と平行な状態で前記継手本体に形成される環状溝部に、前記リング端部に形成される円筒部を強制嵌入させる構造によって構成されている請求項8に記載の管継手。
【請求項10】
請求項1〜4に記載の管継手用継手本体及び請求項5〜9に記載の管継手のうちの何れか一項に記載の前記ストレーナが、前記流体移送用流路を閉塞する状態の遮断壁を前記胴部に一体形成し、それから前記遮断壁に複数の開口部を貫通形成することにより形成される継手本体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−84914(P2010−84914A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257056(P2008−257056)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】