管継手
【課題】ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる管継手を得る。
【解決手段】管継手10におけるボディ本体16の外周面16Cにはロックピン30がボディ本体16の半径方向外側に向かって突出形成されている。ロックピン30の軸方向から見た断面形状は、ボディ本体16の軸方向を長手方向とする楕円形状となっており、カバー26にボディ本体16の軸方向に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合のロックピン30の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げ、カバー26が変形したり、破損するまでは折れない強度に設定されている。
【解決手段】管継手10におけるボディ本体16の外周面16Cにはロックピン30がボディ本体16の半径方向外側に向かって突出形成されている。ロックピン30の軸方向から見た断面形状は、ボディ本体16の軸方向を長手方向とする楕円形状となっており、カバー26にボディ本体16の軸方向に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合のロックピン30の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げ、カバー26が変形したり、破損するまでは折れない強度に設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの液体を移送するホース間の管継手として、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた管継手が知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1記載の管継手では、ボディの外周面から突出したロックピンが、ボディの外周側に取付けられたカバーの配管接続部側への移動をロックする位置と、カバーの配管接続部側への移動を許容するロック解除位置と、の間を周方向に回動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロックピンに異常な力が加わり、ロックピンが折れた場合には、管継手の外観からは、ロックピンの折れ、即ち、管継手の損傷が発見し難くい。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる管継手を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の管継手は、一方側の流路端に接続されるノーズと、他方側の流路端に接続されると共に、該他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが挿入されるボディと、前記ボディの外周面から突出したロックピンと、前記ボディの先端部の外周側に前記ボディの軸方向へ移動可能に取付けられ、前記ロックピンにより配管接続部側への移動がロックされるロック位置と、配管接続部側への移動が許容されるロック解除位置と、との間を前記ボディの周方向に回動可能とされたカバーと、を備えており、前記ロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重により前記カバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。
【0007】
請求項1記載の管継手では、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力が加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の管継手において、前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の管継手では、ロックピンの断面形状がボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされており、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力がボディの軸方向に向かって加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の管継手において、前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の管継手では、ロックピンの断面形状がボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされており、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力がボディの軸方向に向かって加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る管継手のカバーがロック解除位置にあり、ノーズとボディを分離した状態を示す半裁断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る管継手のノーズとボディを結合し、カバーをロック位置に回動した状態を示す半裁断面図である。
【図3】図2に示す管継手に圧力が作用した状態を示す半裁断面図である。
【図4】(A)は図3に示す管継手の平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、及び(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図5】図4(B)に示す管継手に対して45°の方向から見た側面図である。
【図6】コレット単体の平面図、及び半裁断面図である。
【図7】(A)はカバーがロック位置にあるときの第1の凸部と第2の凸部付近を示す拡大断面図、(B)はカバーをロック解除位置の方向に少し回動させたときの第1の凸部と第2の凸部付近を示す拡大断面図である。
【図8】カバーをロック解除位置に回動した状態で、ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図9】ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図10】ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図11】凹状挿入部でノーズの周溝がコレットの凸状部に係合した状態を示す半裁断面図である。
【図12】管継手のカバーをロック解除位置に回動した状態を示す半裁断面図である。
【図13】(A)はカバーをロック解除位置に回動したときの管継手の平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、及び(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図14】図13に示す継手に対して45°の方向から見た図であって、(A)は平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図15】ロック解除位置でカバーの凹部とボディ本体の突起部とを係合し、ノーズを引き抜く過程を示す半裁断面図である。
【図16】ボディからノーズを引き抜いた状態を示す半裁断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係る管継手のカバーがロック解除位置にあり、ノーズとボディを分離した状態を示す半裁断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である管継手10の分離状態を示す半裁断面図であり、図2は、この管継手10の結合状態を示す半裁断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、管継手10は、雌型のボディ12と、雄型のノーズ40とで構成されている。この管継手10は、例えばビールなどの液体を所定の圧力(例えば、約0.4MPa)で流す用途で使用されている。
【0018】
ボディ12は、ノーズ40が挿入される円筒状の凹状挿入部14が形成されたボディ本体16を備えている。ボディ本体16の芯部には、凹状挿入部14と連通し、液体が流れる流路部20が形成されている。ボディ本体16の後端側の内周面には、ねじ部16Aが形成されており、このねじ部16Aにボディ本体16の後端側に接続されるアダプター(図示省略)のねじ部が螺合されるようになっている。
【0019】
ボディ本体16は、ノーズ40が挿入される凹状挿入部14の挿入口14A側の先端部16Bの内径が大きく形成されており、先端部16Bの内側には、ロック部材としての筒状のコレット22が内挿されている。コレット22とボディ本体16の先端部16Bとの間には、コレット22を凹状挿入部14内に軸方向へ移動可能に保持する筒状の保持部材24が設けられている。保持部材24の外周には凸部24Aが形成されており、保持部材24がボディ本体16の先端部16Bに圧入され、凸部24Aが先端部16Bの内側の凹部に係合されることで保持部材24が先端部16Bに固定されている。
【0020】
図6に示すように、コレット22は、樹脂製の筒状体からなり、筒状体の挿入口14A側の端部22Aと反対側に、軸方向に沿って形成された複数の切込み23によって略2/3の長さが切割りされている。コレット22の内周面には、複数に切割りされた端部22B側に、ノーズ40に形成された周溝44を係合する凸状部22Cが形成されている。本実施形態では、切込み23が6個形成されており、凸状部22Cが6個形成されている。コレット22は、複数の切込み23が形成されることで、複数の凸状部22Cが弾性変形により拡径が可能となっている。図2に示すように、複数の凸状部22Cは、凹状挿入部14にノーズ40が挿入されたときにノーズ40の外周面に形成された周溝44に係合されるようになっている。また、挿入口14Aと反対側に配置されるコレット22の端部22Bは、径方向外側に突出している。
【0021】
図3に示すように、コレット22の外周側には、軸方向の中間部付近に径方向に突出する突起22Dが形成されている。保持部材24の先端部側(挿入口14A側)には、内側に突出する突起24Bが形成されており、コレット22の突起22Dが挿入口14A側に移動したときに、保持部材24の突起24Bに突き当たることにより、コレット22の抜け出しが防止される。
【0022】
ボディ本体16の先端部16Bの外周側には、解除部材としての樹脂製のカバー26が軸方向へ移動可能に外挿されている。カバー26は、筒状の部材からなり、挿入口14A側の端部26Aが略直角方向に折り曲げられてコレット22の端部22Aと当接可能に形成されている。
【0023】
図1に示すように、ボディ本体16の後方側(先端部16Bと反対側)のカバー26と隣接する位置には、ボディ本体16の外周面16Cから突出するロックピン30が設けられている。ロックピン30はボディ本体16の約180°の方向に2つ設けられており、これらのロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。
【0024】
より、具体的に説明すると、ロックピン30の軸方向から見た断面形状、即ち、ロックピン30の軸線方向と直交する方向に切断した断面形状が、ボディ本体16の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする長尺形状、本実施形態では楕円形状となっている。このため、ロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。
【0025】
一方、カバー26の後方側の縁部には、各ロックピン30が移動するための2つの凹状の切り欠き部27が周方向に周長の約1/4の長さで形成されている。カバー26は、切り欠き部27の一端部27Aと他端部27Bがロックピン30に当たるまでの間を周方向に回動可能となっている。このとき、切り欠き部27の一端部27Aがロックピン30と当たる位置を、カバー26の軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)への移動をロックするロック位置A(図2参照)とし、切り欠き部27の他端部27Bがロックピン30と当たる位置を、カバー26の軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)への移動を許容するロック解除位置B(図1参照)としている。言い換えると、カバー26は、ロック位置Aとロック解除位置Bとの間を周方向に回動可能に構成されている。
【0026】
カバー26の切り欠き部27の他端部27Bには、ボディ本体16の先端部16Bの方向に凹状に窪んだ凹部27Cが形成されており、凹部27Cがボディ本体16のロックピン30と係合可能となっている。これによって、ロック解除位置Bでは、カバー26の凹部27Cをボディ本体16のロックピン30と係合させることで、カバー26を軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)へ移動することができるようになっている。
【0027】
カバー26の端部26Aは、挿入口14A側でコレット22の端部22Aと当接可能に形成されており、カバー26をボディ本体16の後方側(ノーズ40の挿入方向)に押し込むことで、コレット22が押されて凹状挿入部14の奥側に移動する構成となっている。その際、コレット22の奥側の端部22Bは、ボディ本体16の内周側の保持部材24の奥側に形成された溝部25に入り込むようになっている。また、カバー26の内周面には突起26Bが形成されており、ボディ本体16の先端部16Bの外周面には、カバー26の突起26Bと突き当たることでカバー26の抜け出しを防止する突起18が設けられている。
【0028】
図7(A)には、カバー26をロック位置Aに回動した状態が示されており、図7(B)には、カバー26をロック位置Aからロック解除方向に少し回動させた状態が示されている。これらの図に示すように、カバー26の外周面には、切り欠き部27の一端部27Aと隣接する位置に径方向に突出する突起26Cが設けられている。また、カバー26の内周面と対向するボディ本体16の外周面には、ロックピン30に近い位置であって、ロックピン30に対して切り欠き部27の他端部27Bの方向に、径方向に突出する第1の凸部32が設けられている。カバー26の内周面には、切り欠き部27の一端部27Aに近い位置であって、切り欠き部27と隣接する位置に、カバー26の内側方向に突出する第2の凸部28が設けられている。ボディ本体16の第1の凸部32とカバー26の第2の凸部28は、カバー26を周方向に回動させるときに、互いに突き当たる位置に形成されている。図7(A)に示すロック位置Aでは、ボディ本体16の第1の凸部32とカバー26の第2の凸部28が近接対向するように配置されており、カバー26の第2の凸部28よりもボディ本体16の第1の凸部32が切り欠き部27の一端部27Aに近い側に位置している。そして、図7(B)に示すように、カバー26をロック解除位置Bに回動させるときに、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32を乗り上げる必要があり、カバー26の回動が規制されるようになっている。
【0029】
第1の凸部32は、ロックピン30側の傾斜面32Aが緩やかな勾配に形成され、ロックピン30と反対側の傾斜面32Bが急勾配に形成されている。また、第2の凸部28は、凸状の湾曲面からなり、切り欠き部27の一端部27A側の傾斜面28Aが急勾配に形成され、切り欠き部27の一端部27Aと反対側の傾斜面28Aが緩やかな勾配に形成されている。これによって、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させるときは、第1の凸部32の急勾配の傾斜面32Bと第2の凸部28の急勾配の傾斜面28Aが当たるため、抵抗が大きくなる。また、カバー26をロック解除位置Bからロック位置Aに回動させるときは、第1の凸部32の緩やかな傾斜面32Aと第2の凸部28の緩やかな傾斜面28Bが当たるため、抵抗が小さくなる。
【0030】
一方、図1及び図2に示すように、ノーズ40は、先端部42に行くにしたがって小径となるように形成されている。ノーズ40の周面には、前述したように、ボディ12の凹状挿入部14に挿入されたときにコレット22の凸状部22Cと係合可能な台形状の周溝44が形成されている。ノーズ40の周面には、周溝44より先端側に凹状の周溝46が形成されており、この周溝46にOリング48が嵌め込まれている。ノーズ40の芯部には、液体が流れる流路部50が形成されている。また、ノーズ40の先端部42と反対側の端部には、ホース(図示省略)が接続される接続部52が設けられている。
【0031】
ノーズ40の外周面には、周溝44よりも軸方向の中央部側に周方向に沿って表示部54が設けられている。この表示部54は、1本の赤いラインからなり、ノーズ40を凹状挿入部14に挿入して周溝44がコレット22の凸状部22Cに係合されたときに、ボディ12の内側に隠れる位置に設けられている。表示部54は、例えば、印刷などによって設けることができる。
【0032】
次に、本発明の管継手10の作用について説明する。
図1及び図8に示すように、ノーズ40とボディ12を結合するときは、ボディ本体16の凹状挿入部14にノーズ40を挿入する。図9に示すように、ノーズ40を挿入すると、ノーズ40の周面がコレット22の凸状部22Cを押し、保持部材24の奥側の溝部25でコレット22の端部22Bが弾性変形により拡径する。そして、図10に示すように、ノーズ40がボディ本体16の凹状挿入部14の奥側に到達すると、図11に示すように、凸状部22Cが弾性復元力によりノーズ40の周溝44に係合する。このとき、コレット22が挿入口14A側に若干移動し、コレット22の端部22Aに当接するカバー26がノーズ40側(ねじ部16Aと反対側)に移動する。また、コレット22の凸状部22Cが弾性復元力によりノーズ40の周溝44に係合したときにクリック音が発生し、このクリック音により凸状部22Cがノーズ40の周溝44に係合したことを確認することもできる。
【0033】
コレット22の凸状部22Cがノーズ40の周溝44に係合した状態では、ノーズ40の外周面に設けられた表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)の内側に隠れる。これに対して、ノーズ40の凹状挿入部14への挿入が不十分である場合や、ノーズ40を斜め方向に挿入した場合には、ノーズの表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)から露出する(例えば図8及び図9を参照)。このため、ノーズ40の表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)から露出しないことを目視により確認することで、ノーズ40の挿入が不十分な状態でノーズ40の周溝44が凸状部22Cに係合されたと勘違いすることを抑制できる。
【0034】
その後、図2に示すように、カバー26をロック位置Aに回動させることで、コレット22がロックされる。すなわち、図4(A)に示すように、カバー26の先端面(挿入口14A側の面)には「ロック」と「はずす」の文字が形成されており、カバー26の「ロック」の位置がロックピン30の位置にくるまでカバー26を回動させる。カバー26をロック位置Aに回動させるときは、第1の凸部32の緩やかな傾斜面32Aと第2の凸部28の緩やかな傾斜面28Bが当たるため、抵抗が小さくカバー26が回動しやすい。なお、管継手10は、カバー26がロック位置Aにあっても、ロック解除位置Bにあっても、ボディ本体16の凹状挿入部14にノーズ40を挿入することができる。
【0035】
ロック位置Aでは、カバー26の切り欠き部27の一端部27Aがボディ本体16のロックピン30に当接しており、カバー26がロックピン30と干渉し、カバー26を軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)に移動することができない。このため、コレット22が凹状挿入部14の奥側に押し込まれることなく、ノーズ40を凹状挿入部14から引き抜くことができない。
【0036】
また、本実施形態では、ロックピン30の軸方向から見た断面形状が、ボディ本体16の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする楕円形状となっており、ロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重(図1、2の矢印F1)が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。このため、例えば、ロック位置にセットし梱包され出荷した管継手10のカバー26に、輸送中に異常な力が加わったり、使用中の管継手10のカバー26に落下物等が当接し異常な力が加わったりして、ロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合に、ロックピン30が折れる前にカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形したり、破損する。具体的には、カバー26が膨れ上がったり、割れが発生する。この結果、ロックピン30に異常な力が加わり、管継手10の一部が損傷したことを管継手10の外観から容易に知ることができる。
【0037】
従って、管継手10の使用を中止する必要があることが、管継手10の外観上わかりやすくなると共に、ロックピン30が折れないため、ボディ本体16からノーズ40が抜けるのを防止できる。
【0038】
なお、図4及び図5に示すように、ロック位置Aでは、ボディ本体16のロックピン30がカバー26の切り欠き部27の一端部27Aに当接しており、ボディ本体16の第1の凸部32が、カバー26の第2の凸部28よりも切り欠き部27の一端部27Aに近い側に位置している。この状態では、カバー26がロック解除位置Bの方向に回動しようとしても、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32に当たり、カバー26の回動が規制される。すなわち、カバー26をロック解除位置Bに回動させるときに、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32を乗り上げる必要があり、カバー26に第2の凸部28が第1の凸部32を乗り超える力を加えなければ、カバー26を回動させることができない。図7に示すように、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させるときは、第1の凸部32の急勾配の傾斜面32Bと第2の凸部28の急勾配の傾斜面28Aが当たるため、抵抗が大きくカバー26が回動しにくい。このため、管継手10の使用時に、不用意にカバー26がロック解除位置Bに回動することを抑制又は防止することができる。
【0039】
一方、ノーズ40をボディ12から離脱させる際には、図12に示すように、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させる。図4(A)に示すように、ロック位置Aでは、カバー26の「ロック」の位置がロックピン30の位置にあるため、図13(A)に示すように、カバー26の「はずす」の位置がロックピン30の位置にくるまでカバー26を回動させる。このとき、図7に示すように、カバー26に一定以上の力を加えて回動させることで、樹脂製のカバー26が弾性変形して第1の凸部32を乗り超える。そして、図13及び図14に示すように、カバー26を切り欠き部27の他端部27Bがロックピン30と当接するロック解除位置Bへ回動させることにより、カバー26の凹部27Cとロックピン30が対向する。
【0040】
図10に示すように、ロック解除位置Bでカバー26の凹部27Cとロックピン30とを係合させることにより、カバー26をボディ本体16の軸方向の配管接続部側(ノーズ40の挿入方向)に押し込む。これにより、カバー26の挿入口14A側の端部26Aがコレット22の端部22Aを押し込み、コレット22の奥側の端部22Bが弾性変形して保持部材24の奥側の溝部25に入り込み、コレット22の凸状部22Cとノーズ40の周溝44との係合が外れる。この状態で、図15及び図16に示すように、ノーズ40を凹状挿入部14から引き抜くことができ、ノーズ40とボディ12とを分離することができる。
【0041】
[その他の実施形態]
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ロックピン30の軸線方向と直交する方向に切断した断面形状を、ボディ12の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする楕円形状としたが、楕円形状に代えて、前記断面形状を、図17に示すように、ボディ12の軸方向を長手方向とする小判形状(長方形の長手方向両端部が半円形となっている形状)としてもよく、また、長方形状等の他の長尺形状としてもよい。
【0042】
さらには、ロックピン30に補強用インサート等を設け、曲げ荷重が作用した場合のロックピン30の強度を、前記曲げ荷重によりカバー26が変形または破損するまでは折れない強度に設定してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、液体としてビールを流したが、これに限らず、炭酸飲料や、その他の流体も適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 管継手
12 ボディ
16 ボディ本体
22 コレット
26 カバー
30 ロックピン
40 ノーズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの液体を移送するホース間の管継手として、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた管継手が知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1記載の管継手では、ボディの外周面から突出したロックピンが、ボディの外周側に取付けられたカバーの配管接続部側への移動をロックする位置と、カバーの配管接続部側への移動を許容するロック解除位置と、の間を周方向に回動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロックピンに異常な力が加わり、ロックピンが折れた場合には、管継手の外観からは、ロックピンの折れ、即ち、管継手の損傷が発見し難くい。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる管継手を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の管継手は、一方側の流路端に接続されるノーズと、他方側の流路端に接続されると共に、該他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが挿入されるボディと、前記ボディの外周面から突出したロックピンと、前記ボディの先端部の外周側に前記ボディの軸方向へ移動可能に取付けられ、前記ロックピンにより配管接続部側への移動がロックされるロック位置と、配管接続部側への移動が許容されるロック解除位置と、との間を前記ボディの周方向に回動可能とされたカバーと、を備えており、前記ロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重により前記カバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。
【0007】
請求項1記載の管継手では、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力が加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の管継手において、前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の管継手では、ロックピンの断面形状がボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされており、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力がボディの軸方向に向かって加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の管継手において、前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の管継手では、ロックピンの断面形状がボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされており、ボディの外周面から突出したロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重によりカバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている。このため、カバーを介してロックピンに異常な力がボディの軸方向に向かって加わった場合には、ロックピンが折れずに、カバーが変形または破損する。このため、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明の管継手は、ロックピンに異常な力が加わり、管継手が損傷したことを管継手の外観から容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る管継手のカバーがロック解除位置にあり、ノーズとボディを分離した状態を示す半裁断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る管継手のノーズとボディを結合し、カバーをロック位置に回動した状態を示す半裁断面図である。
【図3】図2に示す管継手に圧力が作用した状態を示す半裁断面図である。
【図4】(A)は図3に示す管継手の平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、及び(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図5】図4(B)に示す管継手に対して45°の方向から見た側面図である。
【図6】コレット単体の平面図、及び半裁断面図である。
【図7】(A)はカバーがロック位置にあるときの第1の凸部と第2の凸部付近を示す拡大断面図、(B)はカバーをロック解除位置の方向に少し回動させたときの第1の凸部と第2の凸部付近を示す拡大断面図である。
【図8】カバーをロック解除位置に回動した状態で、ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図9】ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図10】ノーズを凹状挿入部に挿入する過程を示す半裁断面図である。
【図11】凹状挿入部でノーズの周溝がコレットの凸状部に係合した状態を示す半裁断面図である。
【図12】管継手のカバーをロック解除位置に回動した状態を示す半裁断面図である。
【図13】(A)はカバーをロック解除位置に回動したときの管継手の平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、及び(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図14】図13に示す継手に対して45°の方向から見た図であって、(A)は平面図、(B)は管継手の一部を半裁断面とした側面図、(C)は管継手の第1の凸部と第2の凸部を示す断面図である。
【図15】ロック解除位置でカバーの凹部とボディ本体の突起部とを係合し、ノーズを引き抜く過程を示す半裁断面図である。
【図16】ボディからノーズを引き抜いた状態を示す半裁断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係る管継手のカバーがロック解除位置にあり、ノーズとボディを分離した状態を示す半裁断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である管継手10の分離状態を示す半裁断面図であり、図2は、この管継手10の結合状態を示す半裁断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、管継手10は、雌型のボディ12と、雄型のノーズ40とで構成されている。この管継手10は、例えばビールなどの液体を所定の圧力(例えば、約0.4MPa)で流す用途で使用されている。
【0018】
ボディ12は、ノーズ40が挿入される円筒状の凹状挿入部14が形成されたボディ本体16を備えている。ボディ本体16の芯部には、凹状挿入部14と連通し、液体が流れる流路部20が形成されている。ボディ本体16の後端側の内周面には、ねじ部16Aが形成されており、このねじ部16Aにボディ本体16の後端側に接続されるアダプター(図示省略)のねじ部が螺合されるようになっている。
【0019】
ボディ本体16は、ノーズ40が挿入される凹状挿入部14の挿入口14A側の先端部16Bの内径が大きく形成されており、先端部16Bの内側には、ロック部材としての筒状のコレット22が内挿されている。コレット22とボディ本体16の先端部16Bとの間には、コレット22を凹状挿入部14内に軸方向へ移動可能に保持する筒状の保持部材24が設けられている。保持部材24の外周には凸部24Aが形成されており、保持部材24がボディ本体16の先端部16Bに圧入され、凸部24Aが先端部16Bの内側の凹部に係合されることで保持部材24が先端部16Bに固定されている。
【0020】
図6に示すように、コレット22は、樹脂製の筒状体からなり、筒状体の挿入口14A側の端部22Aと反対側に、軸方向に沿って形成された複数の切込み23によって略2/3の長さが切割りされている。コレット22の内周面には、複数に切割りされた端部22B側に、ノーズ40に形成された周溝44を係合する凸状部22Cが形成されている。本実施形態では、切込み23が6個形成されており、凸状部22Cが6個形成されている。コレット22は、複数の切込み23が形成されることで、複数の凸状部22Cが弾性変形により拡径が可能となっている。図2に示すように、複数の凸状部22Cは、凹状挿入部14にノーズ40が挿入されたときにノーズ40の外周面に形成された周溝44に係合されるようになっている。また、挿入口14Aと反対側に配置されるコレット22の端部22Bは、径方向外側に突出している。
【0021】
図3に示すように、コレット22の外周側には、軸方向の中間部付近に径方向に突出する突起22Dが形成されている。保持部材24の先端部側(挿入口14A側)には、内側に突出する突起24Bが形成されており、コレット22の突起22Dが挿入口14A側に移動したときに、保持部材24の突起24Bに突き当たることにより、コレット22の抜け出しが防止される。
【0022】
ボディ本体16の先端部16Bの外周側には、解除部材としての樹脂製のカバー26が軸方向へ移動可能に外挿されている。カバー26は、筒状の部材からなり、挿入口14A側の端部26Aが略直角方向に折り曲げられてコレット22の端部22Aと当接可能に形成されている。
【0023】
図1に示すように、ボディ本体16の後方側(先端部16Bと反対側)のカバー26と隣接する位置には、ボディ本体16の外周面16Cから突出するロックピン30が設けられている。ロックピン30はボディ本体16の約180°の方向に2つ設けられており、これらのロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。
【0024】
より、具体的に説明すると、ロックピン30の軸方向から見た断面形状、即ち、ロックピン30の軸線方向と直交する方向に切断した断面形状が、ボディ本体16の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする長尺形状、本実施形態では楕円形状となっている。このため、ロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。
【0025】
一方、カバー26の後方側の縁部には、各ロックピン30が移動するための2つの凹状の切り欠き部27が周方向に周長の約1/4の長さで形成されている。カバー26は、切り欠き部27の一端部27Aと他端部27Bがロックピン30に当たるまでの間を周方向に回動可能となっている。このとき、切り欠き部27の一端部27Aがロックピン30と当たる位置を、カバー26の軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)への移動をロックするロック位置A(図2参照)とし、切り欠き部27の他端部27Bがロックピン30と当たる位置を、カバー26の軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)への移動を許容するロック解除位置B(図1参照)としている。言い換えると、カバー26は、ロック位置Aとロック解除位置Bとの間を周方向に回動可能に構成されている。
【0026】
カバー26の切り欠き部27の他端部27Bには、ボディ本体16の先端部16Bの方向に凹状に窪んだ凹部27Cが形成されており、凹部27Cがボディ本体16のロックピン30と係合可能となっている。これによって、ロック解除位置Bでは、カバー26の凹部27Cをボディ本体16のロックピン30と係合させることで、カバー26を軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)へ移動することができるようになっている。
【0027】
カバー26の端部26Aは、挿入口14A側でコレット22の端部22Aと当接可能に形成されており、カバー26をボディ本体16の後方側(ノーズ40の挿入方向)に押し込むことで、コレット22が押されて凹状挿入部14の奥側に移動する構成となっている。その際、コレット22の奥側の端部22Bは、ボディ本体16の内周側の保持部材24の奥側に形成された溝部25に入り込むようになっている。また、カバー26の内周面には突起26Bが形成されており、ボディ本体16の先端部16Bの外周面には、カバー26の突起26Bと突き当たることでカバー26の抜け出しを防止する突起18が設けられている。
【0028】
図7(A)には、カバー26をロック位置Aに回動した状態が示されており、図7(B)には、カバー26をロック位置Aからロック解除方向に少し回動させた状態が示されている。これらの図に示すように、カバー26の外周面には、切り欠き部27の一端部27Aと隣接する位置に径方向に突出する突起26Cが設けられている。また、カバー26の内周面と対向するボディ本体16の外周面には、ロックピン30に近い位置であって、ロックピン30に対して切り欠き部27の他端部27Bの方向に、径方向に突出する第1の凸部32が設けられている。カバー26の内周面には、切り欠き部27の一端部27Aに近い位置であって、切り欠き部27と隣接する位置に、カバー26の内側方向に突出する第2の凸部28が設けられている。ボディ本体16の第1の凸部32とカバー26の第2の凸部28は、カバー26を周方向に回動させるときに、互いに突き当たる位置に形成されている。図7(A)に示すロック位置Aでは、ボディ本体16の第1の凸部32とカバー26の第2の凸部28が近接対向するように配置されており、カバー26の第2の凸部28よりもボディ本体16の第1の凸部32が切り欠き部27の一端部27Aに近い側に位置している。そして、図7(B)に示すように、カバー26をロック解除位置Bに回動させるときに、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32を乗り上げる必要があり、カバー26の回動が規制されるようになっている。
【0029】
第1の凸部32は、ロックピン30側の傾斜面32Aが緩やかな勾配に形成され、ロックピン30と反対側の傾斜面32Bが急勾配に形成されている。また、第2の凸部28は、凸状の湾曲面からなり、切り欠き部27の一端部27A側の傾斜面28Aが急勾配に形成され、切り欠き部27の一端部27Aと反対側の傾斜面28Aが緩やかな勾配に形成されている。これによって、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させるときは、第1の凸部32の急勾配の傾斜面32Bと第2の凸部28の急勾配の傾斜面28Aが当たるため、抵抗が大きくなる。また、カバー26をロック解除位置Bからロック位置Aに回動させるときは、第1の凸部32の緩やかな傾斜面32Aと第2の凸部28の緩やかな傾斜面28Bが当たるため、抵抗が小さくなる。
【0030】
一方、図1及び図2に示すように、ノーズ40は、先端部42に行くにしたがって小径となるように形成されている。ノーズ40の周面には、前述したように、ボディ12の凹状挿入部14に挿入されたときにコレット22の凸状部22Cと係合可能な台形状の周溝44が形成されている。ノーズ40の周面には、周溝44より先端側に凹状の周溝46が形成されており、この周溝46にOリング48が嵌め込まれている。ノーズ40の芯部には、液体が流れる流路部50が形成されている。また、ノーズ40の先端部42と反対側の端部には、ホース(図示省略)が接続される接続部52が設けられている。
【0031】
ノーズ40の外周面には、周溝44よりも軸方向の中央部側に周方向に沿って表示部54が設けられている。この表示部54は、1本の赤いラインからなり、ノーズ40を凹状挿入部14に挿入して周溝44がコレット22の凸状部22Cに係合されたときに、ボディ12の内側に隠れる位置に設けられている。表示部54は、例えば、印刷などによって設けることができる。
【0032】
次に、本発明の管継手10の作用について説明する。
図1及び図8に示すように、ノーズ40とボディ12を結合するときは、ボディ本体16の凹状挿入部14にノーズ40を挿入する。図9に示すように、ノーズ40を挿入すると、ノーズ40の周面がコレット22の凸状部22Cを押し、保持部材24の奥側の溝部25でコレット22の端部22Bが弾性変形により拡径する。そして、図10に示すように、ノーズ40がボディ本体16の凹状挿入部14の奥側に到達すると、図11に示すように、凸状部22Cが弾性復元力によりノーズ40の周溝44に係合する。このとき、コレット22が挿入口14A側に若干移動し、コレット22の端部22Aに当接するカバー26がノーズ40側(ねじ部16Aと反対側)に移動する。また、コレット22の凸状部22Cが弾性復元力によりノーズ40の周溝44に係合したときにクリック音が発生し、このクリック音により凸状部22Cがノーズ40の周溝44に係合したことを確認することもできる。
【0033】
コレット22の凸状部22Cがノーズ40の周溝44に係合した状態では、ノーズ40の外周面に設けられた表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)の内側に隠れる。これに対して、ノーズ40の凹状挿入部14への挿入が不十分である場合や、ノーズ40を斜め方向に挿入した場合には、ノーズの表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)から露出する(例えば図8及び図9を参照)。このため、ノーズ40の表示部54がボディ12(本実施形態ではカバー26)から露出しないことを目視により確認することで、ノーズ40の挿入が不十分な状態でノーズ40の周溝44が凸状部22Cに係合されたと勘違いすることを抑制できる。
【0034】
その後、図2に示すように、カバー26をロック位置Aに回動させることで、コレット22がロックされる。すなわち、図4(A)に示すように、カバー26の先端面(挿入口14A側の面)には「ロック」と「はずす」の文字が形成されており、カバー26の「ロック」の位置がロックピン30の位置にくるまでカバー26を回動させる。カバー26をロック位置Aに回動させるときは、第1の凸部32の緩やかな傾斜面32Aと第2の凸部28の緩やかな傾斜面28Bが当たるため、抵抗が小さくカバー26が回動しやすい。なお、管継手10は、カバー26がロック位置Aにあっても、ロック解除位置Bにあっても、ボディ本体16の凹状挿入部14にノーズ40を挿入することができる。
【0035】
ロック位置Aでは、カバー26の切り欠き部27の一端部27Aがボディ本体16のロックピン30に当接しており、カバー26がロックピン30と干渉し、カバー26を軸方向の配管接続部側(ねじ部16A側)に移動することができない。このため、コレット22が凹状挿入部14の奥側に押し込まれることなく、ノーズ40を凹状挿入部14から引き抜くことができない。
【0036】
また、本実施形態では、ロックピン30の軸方向から見た断面形状が、ボディ本体16の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする楕円形状となっており、ロックピン30は、カバー26にボディ本体16の軸方向(図1、2の下方向)に向かって荷重が作用し、カバー26を介してロックピン30に曲げ荷重(図1、2の矢印F1)が作用した場合の強度が、前記曲げ荷重F1によりカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形(膨れ等)したり、破損(割れ等)するまでは、折れない強度に設定されている。このため、例えば、ロック位置にセットし梱包され出荷した管継手10のカバー26に、輸送中に異常な力が加わったり、使用中の管継手10のカバー26に落下物等が当接し異常な力が加わったりして、ロックピン30に曲げ荷重F1が作用した場合に、ロックピン30が折れる前にカバー26がロックピン30に乗り上げカバー26が変形したり、破損する。具体的には、カバー26が膨れ上がったり、割れが発生する。この結果、ロックピン30に異常な力が加わり、管継手10の一部が損傷したことを管継手10の外観から容易に知ることができる。
【0037】
従って、管継手10の使用を中止する必要があることが、管継手10の外観上わかりやすくなると共に、ロックピン30が折れないため、ボディ本体16からノーズ40が抜けるのを防止できる。
【0038】
なお、図4及び図5に示すように、ロック位置Aでは、ボディ本体16のロックピン30がカバー26の切り欠き部27の一端部27Aに当接しており、ボディ本体16の第1の凸部32が、カバー26の第2の凸部28よりも切り欠き部27の一端部27Aに近い側に位置している。この状態では、カバー26がロック解除位置Bの方向に回動しようとしても、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32に当たり、カバー26の回動が規制される。すなわち、カバー26をロック解除位置Bに回動させるときに、カバー26の第2の凸部28がボディ本体16の第1の凸部32を乗り上げる必要があり、カバー26に第2の凸部28が第1の凸部32を乗り超える力を加えなければ、カバー26を回動させることができない。図7に示すように、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させるときは、第1の凸部32の急勾配の傾斜面32Bと第2の凸部28の急勾配の傾斜面28Aが当たるため、抵抗が大きくカバー26が回動しにくい。このため、管継手10の使用時に、不用意にカバー26がロック解除位置Bに回動することを抑制又は防止することができる。
【0039】
一方、ノーズ40をボディ12から離脱させる際には、図12に示すように、カバー26をロック位置Aからロック解除位置Bに回動させる。図4(A)に示すように、ロック位置Aでは、カバー26の「ロック」の位置がロックピン30の位置にあるため、図13(A)に示すように、カバー26の「はずす」の位置がロックピン30の位置にくるまでカバー26を回動させる。このとき、図7に示すように、カバー26に一定以上の力を加えて回動させることで、樹脂製のカバー26が弾性変形して第1の凸部32を乗り超える。そして、図13及び図14に示すように、カバー26を切り欠き部27の他端部27Bがロックピン30と当接するロック解除位置Bへ回動させることにより、カバー26の凹部27Cとロックピン30が対向する。
【0040】
図10に示すように、ロック解除位置Bでカバー26の凹部27Cとロックピン30とを係合させることにより、カバー26をボディ本体16の軸方向の配管接続部側(ノーズ40の挿入方向)に押し込む。これにより、カバー26の挿入口14A側の端部26Aがコレット22の端部22Aを押し込み、コレット22の奥側の端部22Bが弾性変形して保持部材24の奥側の溝部25に入り込み、コレット22の凸状部22Cとノーズ40の周溝44との係合が外れる。この状態で、図15及び図16に示すように、ノーズ40を凹状挿入部14から引き抜くことができ、ノーズ40とボディ12とを分離することができる。
【0041】
[その他の実施形態]
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ロックピン30の軸線方向と直交する方向に切断した断面形状を、ボディ12の軸方向(図1、2の上下方向)を長手方向とする楕円形状としたが、楕円形状に代えて、前記断面形状を、図17に示すように、ボディ12の軸方向を長手方向とする小判形状(長方形の長手方向両端部が半円形となっている形状)としてもよく、また、長方形状等の他の長尺形状としてもよい。
【0042】
さらには、ロックピン30に補強用インサート等を設け、曲げ荷重が作用した場合のロックピン30の強度を、前記曲げ荷重によりカバー26が変形または破損するまでは折れない強度に設定してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、液体としてビールを流したが、これに限らず、炭酸飲料や、その他の流体も適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 管継手
12 ボディ
16 ボディ本体
22 コレット
26 カバー
30 ロックピン
40 ノーズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の流路端に接続されるノーズと、
他方側の流路端に接続されると共に、該他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが挿入されるボディと、
前記ボディの外周面から突出したロックピンと、
前記ボディの先端部の外周側に前記ボディの軸方向へ移動可能に取付けられ、前記ロックピンにより配管接続部側への移動がロックされるロック位置と、配管接続部側への移動が許容されるロック解除位置と、との間を前記ボディの周方向に回動可能とされたカバーと、
を備えており、前記ロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重により前記カバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている管継手。
【請求項2】
前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項1】
一方側の流路端に接続されるノーズと、
他方側の流路端に接続されると共に、該他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが挿入されるボディと、
前記ボディの外周面から突出したロックピンと、
前記ボディの先端部の外周側に前記ボディの軸方向へ移動可能に取付けられ、前記ロックピンにより配管接続部側への移動がロックされるロック位置と、配管接続部側への移動が許容されるロック解除位置と、との間を前記ボディの周方向に回動可能とされたカバーと、
を備えており、前記ロックピンの曲げ荷重に対する強度が、前記曲げ荷重により前記カバーが変形または破損するまでは折れない強度に設定されている管継手。
【請求項2】
前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする長尺形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記ロックピンの断面形状が前記ボディの軸方向を長手方向とする楕円形状とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−106540(P2011−106540A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260819(P2009−260819)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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