説明

管継手

【課題】バルブ機能部をカートリッジ化することにより、コネクタのハウジング側は設計変更することなく、仕様に応じたバルブ機能部をもつカートリッジを組み込むことにより、ハウジングの汎用化とカートリッジによるバルブ仕様の多様化を実現する。
【解決手段】管継手の本体を構成するハウジング10の内部に、流量を制御するバルブ機能を有するバルブカートリッジ30を組み込み、バルブカートリッジ30は、流体流路を開閉するバルブ本体32と、バルブ本体32を付勢するコイルスプリング33と、流路に開口する弁座36を有しバルブ本体32とコイルスプリング33を収容するケースとからなり、組み入れられる管継手の構造に流量制御機能が従属しない独立したバルブ機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ機構部を管継手の本体内に内蔵させた管継手に係り、特に、バルブ機構部をカートリッジ化した管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手には、バルブ機構を内蔵したものがある。例えば、特許文献1、2は、コネクタハウジングにバルブを内蔵したバルブ内蔵コネクタを開示している。このバルブ内蔵コネクタでは、コネクタハウジングの通路にはバルブシートが形成され、このバルブシートのバルブ孔を開閉するバルブ本体と、このバルブ本体を付勢する圧縮コイルスプリングが組み込まれている。
【0003】
このようなバルブ内蔵コネクタでは、流体の圧力が高まると、圧縮コイルスプリングの弾性力に抗してバルブ本体が移動し、バルブ孔が開くことになる。もっとも、この内蔵バルブの構成では、流量が圧縮コイルスプリングのバネ特性に依存してしまう結果、経時的にバネ特性が変化すると、安定した流量制御ができなくなるという欠点が指摘されている。
【0004】
特許文献3では、上記欠点を解決するために、バルブシートが開閉するバルブ孔とは別に流量を調整するオリフィスを形成し、流量を圧縮コイルスプリングのバネ特性に依存させないようにしたバルブ内蔵コネクタを提案している。
【特許文献1】特開2002−168384号公報
【特許文献2】特開2003−028010号公報
【特許文献3】特開2005−163836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバルブ内蔵コネクタは、コネクタのハウジングにバルブシートが形成されているため、バルブ機構の仕様を変更するためには、ハウジングの形状変更が必然的に伴うという問題があり、簡単には、バルブ機構の仕様を変更できなかった。
【0006】
また、ハウジングの形状を変更した場合、シート面とバルブ本体およびコイルスプリングの調整、すなわち、所期の圧力がバルブ本体が開くか、安定した所期の流量が得られるかなどについてチューニングを慎重に行い、確認する必要がある。
【0007】
このため、用途、使用の異なるバルブ内蔵コネクタの製作には、多くの時間と手間がかかり、高コストのものになっていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、バルブ機構部をカートリッジ化することにより、管継手の本体側は設計変更することなく、仕様に応じたバルブ機構部をもつカートリッジを組み込むことにより、管継手本体の汎用化とカートリッジによるバルブ仕様の多様化を実現できるようにした管継手を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、バルブ機構部の設計変更をした場合にも、バルブ機構部をハウジングに組み込む前に検査をすることができるようにした管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、管継手の本体の内部に、流量を制御するバルブ機能を有するバルブカートリッジを組み込み、前記バルブカートリッジは、流体流路を開閉するバルブ本体と、前記バルブ本体を付勢するコイルスプリングと、流路に開口する弁座を有しバルブ本体とコイルスプリングを収容するケースと、からなり、組み入れられる管継手の種類、形状構造に流量制御機能が依存しない独立したバルブ機構を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、流体流路を開閉するバルブ本体と、前記バルブ本体を付勢するコイルスプリングと、流路に開口する弁座を有し、バルブ本体とコイルスプリングを収容するケースと、からなり、組み入れられる管継手の種類、形状にバルブ機能が従属しない独立したバルブ機能を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管継手の本体側は設計変更することなく、仕様に応じたバルブ機構部をもつカートリッジを組み込むことにより、管継手本体の汎用化とカートリッジによるバルブ仕様の多様化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による管継手の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の管継手の要部を示す縦断面図である。
【図3】本発明による管継手の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図3の管継手の要部を示す縦断面図である。
【図5】本発明による管継手の第3実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の管継手の縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による管継手の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明による管継手の第1実施形態を示す縦断面図である。図1において、参照番号10は、管継手の本体であるハウジングを示す。参照番号12は、接続相手のチューブを示す。参照番号14は、リテーナを示す。この実施形態は、本発明をクイックコネクタに適用した実施形態である。
【0015】
相手方のチューブ12は、金属製または樹脂製のチューブであって、端末から所定の距離だけ離れた位置に、外周部を周回するスプール部15が形成されている。
【0016】
このクイックコネクタは、ハウジング10の挿入口20にリテーナ14を装着しておいて、相手方のチューブ12を挿入すると、リテーナ14を介してハウジング10とチューブ12とがワンタッチで結合するように構成されている。
【0017】
リテーナ14は、相手方のチューブ12の外径とほぼ同じ内径のプラスチック製部材である。このリテーナ14は相手方のチューブ12のスプール部15に係合するロック爪18a、18bがそれぞれ一体に形成されている。
【0018】
ハウジング10は、相手方のチューブ12が挿入される雌形の継手を構成するとともに、樹脂製のチューブ(図示せず)を圧入により取り付け可能な圧入取付部18と一体構造となっている。ハウジング10の内部には流路21が軸方向に形成されている。また、ハウジング10は、タケノコ形の圧入取付部18を含めて径の異なる4つの円筒部から構成されている。
このうち、径の大きな方の第1円筒部22の内部には、シール部材としてOリング23と、このOリング23の飛び出しを防止するトップハット24が設けられている。第2の円筒部25には、相手方のチューブ12の先端が収容される。第3の円筒部26には、以下に説明するバルブカートリッジ30が収容される。
【0019】
この実施形態では、図1に示すように、ハウジング10の内部に、流量を制御するバルブ機構を有するバルブカートリッジ30が組み込まれている。このバルブカートリッジ30は、管継手のハウジング10の形状や構造に依存しない独立したバルブ機能を有する点に特徴がある。
【0020】
そこで、図2を参照しながら、バルブカートリッジ30の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、バルブカートリッジ30は、ケース31と、バルブ本体32と、コイルスプリング33とを含む。
ケース31は、2つの筒状のケース34、35に分割されている。このうち、第1のケース34には、流路21に開口する弁座36が形成されている。この弁座36の内周面はバルブシート面37が形成されている。
【0021】
バルブ本体32は、バルブシート面37に着座するようになっている。このバルブ本体32は、円筒部材38の先端部に保持されている。円筒部材38には、コイルスプリング33を受容する溝39が所定の深さで形成されている。第2ケース35には、コイルスプリング33の一端を規制するばね受部40が形成されている。図2において、コイルスプリング33は圧縮された状態にあり、その弾性力でバルブ本体32はバルブシート面37に押し付けられる方向に常時付勢されている。
【0022】
この状態では、流路21は閉じられているが、この実施形態では、バルブ本体32には、オリフィス部41が形成され、所定の小流量の流体はオリフィス部41を流れるようになっている。
【0023】
なお、図2において、バルブ本体32には、弁座36の開口から突き出るようにガイド42が形成されている。このガイド42は、バルブ本体32の円滑な移動および適正な姿勢を確保するためのガイドになる部材である。
【0024】
次に、以上のように構成されるバルブカートリッジ30をハウジング10に固定するための構成について説明する。
図2に示すように、ハウジング10を構成する第2円筒部22には、窪み43が周方向に形成されるとともに係止段部44が形成されている。この窪み43および係止段部44に対応するように、バルブカートリッジ30側では、係止段部44に係合する係止部45と窪み43に重なる膨出部46が第2ケース35に形成されている。他方、バルブカートリッジ30の第1ケース34では、弁座36が形成される屈曲部47が、ハウジング10を構成する第2円筒部22の段部22aに当接して位置を規制するようになっており、バルブカートリッジ30をハウジング10に挿入するだけで、バルブカートリッジ30を位置決め保持できるようになっている。なお、第2円筒部22に窪み43や係止段部44を形成しないで、またバルブカートリッジ30の第2ケースには係止部45や膨出部46を形成せずにストレートな形状とするようにしてもよい。これによりバルブカートリッジ30に前後の向きがなくなり、ハウジング10内にいずれの向きにも装着することができる。
本実施形態による管継手は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
まず、本実施形態による管継手としてのクイックコネクタでは、ハウジング10にバルブカートリッジ30を組み込むことで、以下のような流量制御機能を付加している。
バルブ本体32には、オリフィス部41が形成されているので、コイルスプリング33の弾性力によって付勢されてバルブ本体32が弁座36に着座している状態では、オリフィス部41を通じて小流量域の流量制御が行われる。
【0025】
流路21を流れる流体の圧力が高まると、流体圧力は、コイルスプリング33の弾性力に抗して、バルブ本体32を押し上げようとする。そして、流体圧力が一定圧力以上になると、バルブ本体32はバルブシート面37から離れ、その間にできる隙間を通じて流体が流れることになる。このとき流れる流体流量は、オリフィス部41を通る流量よりも大きな流量になっている。
【0026】
本実施形態の管継手では、以上のように流量を大小流量域の2段階で制御する流量制御をバルブカートリッジ30によって付加することができる。
しかも、バルブカートリッジ30はカートリッジ化されており、そのバルブ機能は、管継手のハウジング10の形状、構造に全く依存せずに完全に独立している。このことから、次のような利点が得られる。
【0027】
すなわち、コイルスプリング33のばね定数や、オリフィス部41の口径などを流量制御の特性に応じて変えて製作した多種類のバルブカートリッジ30を予め用意しておけば、管継手のハウジング10そのものは同じ種類のものであっても、組み込むバルブカートリッジ30を変更することで、多様な性能特性の流量制御機能を付加することができる。
【0028】
これとは逆に、バルブカートリッジ30には、同じ種類のものを用い、管継手のハウジング10の方の仕様を変えて、さまざまな形状の継手とすることも容易である。例えば、この実施形態では、ハウジング10は真っ直ぐな形状をしているが、L字形のエルボー継手や、三方継手など、バルブカートリッジを汎用的に組み込む、様々な形状の継手に流量制御機能を付加することができる。
【0029】
さらに、バルブカートリッジ30の性能検査を事前に行えるため、組み込んだ後の検査が不要となり、不良品の発生率を低減させることができる。
【0030】
第2実施形態
次に、本発明による管継手の第2の実施形態について、図3、図4を参照して説明する。
この第2実施形態は、第1実施形態と同様高圧化に対応することに加えて、バルブカートリッジ30をより大型化し、大型継手に対応するものとして構成したものである。この第2実施形態では、基本的な構成要素は第1実施形態と同一であるので、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0031】
この第2実施形態では、バルブカートリッジ30のケースのうち、第2ケース35には、接続相手のパイプ12の端末部を受容する延長部48が一体で形成されている。
この第2実施形態によれば、本来、ハウジング10の方に形成されるべき、相手パイプ12の端末部の受容部をバルブカートリッジ30の第2ケース35の方に延長部18として移設することで、バルブ機構部の大型化に伴う調整を第2ケース35の方で吸収できるので、バルブ機構部の設計自由度の幅が拡がることになる。また、継手側の一部機能をバルブカートリッジ30の方で担うことができるので、継手側の仕様調整も容易になる。
【0032】
第3実施形態
次に、本発明による管継手の第3の実施形態について、図5、図6参照して説明する。
この第3形態は、第1実施形態のバルブカートリッジ30を図5、図6に示す管継手に組み込んだ実施形態である。バルブカートリッジ30は、第1実施形態と同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0033】
管継手の本体50は、相手方の樹脂チューブが圧入される継手部51a、51bが両端部に形成されている。継手部51a、51bでは、樹脂チューブを圧入した後に抜けるのを防止する段差部53がそれぞれ形成されている。54は、Oリングが装着される溝である。
【0034】
本体50の内径部には、バルブ位置決め部55が突き出るようになっている。また、本体50の内径部には、窪み43と係止段部44が形成されている。係止段部44に対応するように、バルブカートリッジ30の第2ケース35には、係止段部44に係合する係止部45と窪み43に重なる膨出部46が形成されている。バルブカートリッジ30を固定する構造は、第1実施形態と同様である。
【0035】
以上の第3実施形態のように、バルブカートリッジ30は、第1実施形態、第2実施形態のクイックコネクタだけではなく、圧入により樹脂チューブを接続する管継手の本体50にも組み込むことができる。また、この第3実施形態では、本体50は真っ直ぐな形状をしているが、L字形のエルボー継手や、三方継手など、さまざまな形態の管継手にバルブカートリッジを汎用的に組み込み、様々な形状の管継手に流量制御機能を付加することができる。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明では、実施形態に挙げた以外にも、例えば、バルブカートリッジのケースを、前後の向きに依らずにハウジング内に装着可能な形状にするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ハウジング
12 チューブ
14 リテーナ
15 スプール部
18 圧入取付部
30 バルブカートリッジ
32 バルブ本体
33 コイルスプリング
34 第1ケース
35 第2ケース
36 弁座
37 バルブシート面
40 ばね受部
42 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手の本体の内部に、流量を制御するバルブ機能を有するバルブカートリッジを組み込み、前記バルブカートリッジは、流体流路を開閉するバルブ本体と、前記バルブ本体を付勢するコイルスプリングと、流路に開口する弁座を有しバルブ本体とコイルスプリングを収容するケースと、からなり、組み入れられる管継手の種類、形状構造に流量制御機能が依存しない独立したバルブ機構を有することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記バルブカートリッジのケースは、前記弁座を有する第1のケースと、コイルスプリングの保持部を有する第2のケースと、からなることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
バルブカートリッジの前記第2のケースは、接続相手のパイプの端末部を受容する延長部を有することを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記バルブカートリッジのバルブ本体は、小流域での流量制御を分担するオリフィスを有することを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記バルブカートリッジの前記ケースは、その前後の向きに依らずに前記ハウジング内に装着可能であることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項6】
前記管継手はクイックコネクタであり、そのハウジングに前記バルブカートリッジを組み込んだことを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項7】
前記管継手は、その本体の両端部に相手方のチューブが圧入される継手部を有する管継手であることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項8】
流体流路を開閉するバルブ本体と、前記バルブ本体を付勢するコイルスプリングと、流路に開口する弁座を有しバルブ本体とコイルスプリングを収容するケースと、からなり、
組み入れられる管継手の種類、形状に流量制御機能が依存しない独立したバルブ機能を有することを特徴とするバルブカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−94805(P2011−94805A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287514(P2010−287514)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2008−214089(P2008−214089)の分割
【原出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】