説明

箱形ルーフ管の継手構造

【課題】隣接する単位箱形ルーフ管の間の係合片による継手部の係合を容易に解除できようにして、到達立坑が狭い場合でも単位箱形ルーフ管を解体撤去する作業を容易に行うことを可能にする箱形ルーフ管の継手構造を提供する。
【解決手段】継手部16は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに突出して設けられた2箇所の係合片18と、他方の単位箱形ルーフ管12b,12cの側面部21b,21cに突出して設けられた2箇所の係合片19とを係合することによって構成されており、且つ、一方の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに設けられた係合片18は、その基部18aに雌ネジ孔20を有しており、当該側面部21aに貫通形成されたボルト締着孔22に単位箱形ルーフ管12aの内側から装着されるボルト部材23を雌ネジ孔20に螺合することにより、側面部21aに着脱可能に締着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形ルーフ管の継手構造に関し、特に、箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、隣接する箱形ルーフ管の間の継手部の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道の軌条や道路の下方を横断するようにして、これらの鉄道や道路の使用状態を保持したまま函体構造物を地中に構築する工法として、箱形ルーフ工法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。箱形ルーフ工法は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、好ましくは天井部及び側壁部と対応する位置に、矩形断面を有する複数の箱形ルーフ管を、横方向及び縦方向に連設させて地中に先行設置しておき、横方向ルーフ列の上面や縦方向ルーフ列の側面に配置した縁切り板の端部を不動箇所に固定した状態で、既製の函体構造物の端面を縦方向ルーフ列及び横方向ルーフ列に当接させ、これらのルーフ列の内側の地盤を函体構造物の中空内部を介して撤去しつつ函体構造物を前進させることにより、函体構造物を箱形ルーフ管によるルーフ列と置換させて地中に設置するものである。
【0003】
このような箱形ルーフ工法では、地中に先行設置される箱形ルーフ管は、複数の単位箱形ルーフ管を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら発進立坑から到達立坑に向けて掘進させるようになっている。また、地中に先行設置された箱形ルーフ管は、函体構造物の前進に伴って到達立坑に押し出され、押し出された箱形ルーフ管は、単位箱形ルーフ管毎に到達立坑を介して撤去されることになる。さらに、到達立坑には、H形鋼、溝形鋼等を組み付けて、ルーフ受架台が設けられており、特に天井部に設置された箱形ルーフ管は、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管をルーフ受架台で受けてから、解体撤去されるようになっている。
【0004】
そして、箱形ルーフ工法では、横方向又は縦方向に隣接する箱形ルーフ管の間の継手部は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片と、他方の単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片とを係合することによって構成されており、このようなジャンクションと呼ばれる係合片による継手部に案内させて、隣接する一対の箱形ルーフ管が、これらの掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにする工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−32199号公報
【特許文献1】特公平7−35719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、隣接する箱形ルーフ管の間に、各側面部から突出する係合片による継手部が設けられていると、箱形ルーフ管が到達立坑に押し出されて単位箱形ルーフ管毎に撤去される際に、継手部の係合片が邪魔になって、単位箱形ルーフ管を撤去し難くなる場合がある。
【0007】
すなわち、到達立坑が、例えば掘進方向に沿った長さが単位箱形ルーフ管の2倍を超える相当の大きさで形成されていて、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を、到達立坑の内部において隣接する箱形ルーフ管をかわせるように一本毎にさらに前方に引き出すことができれば、係合片による継手部の係合を長手方向に解除させてから単位箱形ルーフ管を吊り上げることが可能である。しかしながら、例えば用地買収や周囲の交通量等との関係で、到達立坑を自由な大きさで形成することができず、掘進方向に沿った長さが例えば単位箱形ルーフ管の長さよりも長く単位箱形ルーフ管の2倍の長さよりも短い程度の大きさでしか到達立坑を形成できない場合には、単位箱形ルーフ管を一本毎にさらに前方に引き出して、係合片による継手部の係合を長手方向に解除することは困難である。
【0008】
このため、従来の箱形ルーフ工法では、例えば到達立坑が狭い場合には、ガス切断等によって継手部の係合片が邪魔にならないように除去してから、単位箱形ルーフ管をさらに前方に引き出すことなく吊り上げる方法が採用されていたが、例えば単位箱形ルーフ管を転用して用いる際に、除去した係合片を溶接等によって取り付け直す必要を生じて多くの手間を要することになる。
【0009】
また、上記特許文献1や特許文献2に記載の発明では、係合片を単位箱形ルーフ管の外周面に着脱可能にボルト接合したり(特許文献1参照)、一方の単位箱形ルーフ管の係合片をフラットに突出させて(特許文献2参照)、隣接する単位箱形ルーフ管の間の係合片による継手部の係合を、到達立坑が狭い場合でも解除できるようにする工夫がなされているが、特に単位箱形ルーフ管の下部に設けられた係合片の接合ボルトについては、これを取り外す作業が容易ではなく、フラットな突出片では、突出量が小さいと箱形ルーフ管の位置ずれを防止する機能を十分に発揮できなくなり、突出量が大きいと、係合を解除しつつ単位箱形ルーフ管を吊り上げる操作に多くの手間を要することになる。
【0010】
本発明は、このような箱形ルーフ工法に特有の技術的課題を解決するためになされたものであり、隣接する単位箱形ルーフ管の間の係合片による継手部の係合を容易に解除できようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく単位箱形ルーフ管を吊り上げて解体撤去する作業を容易に行うことを可能にする箱形ルーフ管の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、隣接する箱形ルーフ管の間の継手部の継手構造であって、前記継手部は、隣接する一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片と、他方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片とを係合することによって構成されており、且つ、前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、その基部に雌ネジ孔を有しており、当該側面部に貫通形成されたボルト締着孔に前記単位箱形ルーフ管の内側から装着されるボルト部材を前記雌ネジ孔に螺合することにより、前記側面部に着脱可能に締着されている箱形ルーフ管の継手構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
そして、本発明の箱形ルーフ管の継手構造では、前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、L字断面形状又はコの字断面形状を備える山形鋼や溝形鋼等の鋼材からなり、前記L字断面形状又はコの字断面形状の一辺部を前記基部として前記雌ネジ孔が形成されており、該雌ネジ孔に前記ボルト部材が螺合されることにより、他の辺部を前記側面部からフラット断面形状又はL字断面形状に突出させて取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の箱形ルーフ管の継手構造では、前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、前記側面部に沿って配置される基盤プレートに一体として接合されて、フラット断面形状又はL字断面形状に突出して取り付けられており、前記基盤プレートを前記基部として前記雌ネジ孔が形成されており、該雌ネジ孔に前記ボルト部材が螺合されることにより、前記側面部からフラット断面形状またはL字断面形状に突出して取り付けられていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の箱形ルーフ管の継手構造によれば、隣接する単位箱形ルーフ管の間の係合片による継手部の係合を容易に解除できようにして、到達立坑が狭い場合でも、多くの手間を要することなく単位箱形ルーフ管を吊り上げて解体撤去する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい第1実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造を用いた箱形ルーフ工法を説明する断面図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造を用いた箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を解体撤去する状況を説明する略示断面図である。
【図3】本発明の好ましい第1実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造の構成を説明する要部正面図である。
【図4】(a)は図3のA部拡大断面図、(b)は(a)のC部拡大断面図である。
【図5】図3のB部拡大断面図である。
【図6】本発明の好ましい第2実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造を用いた箱形ルーフ工法において、到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管を解体撤去する状況を説明する略示断面図である。
【図7】本発明の好ましい第2実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造の構成を説明する要部略示断面図である。
【図8】図7のD部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい第1実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造10は、図1及び図2に示すように、例えば鉄道の軌条30の下方を横断して、例えば道路トンネル用の地下構造物を形成するための矩形断面を有する中空の函体構造物17を、鉄道の軌条30の下方の地中に先行設置された、箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15と置き換えることにより設置して構築する箱形ルーフ工法において採用されたものである。
【0017】
ここで、本第1実施形態では、函体構造物17は、その先端部分に刃口部材31が取り付けられており、この刃口部材31を切羽面に押し付けつつ、ルーフ列14,15の内側の地盤32を掘削すると共に、箱形ルーフ管11を到達立坑13に押し出しながら、到達立坑13に向けて掘進されるようになっている。また、本第1実施形態では、到達立坑13に押し出された箱形ルーフ管11は、押出し方向Xの先端側の単位箱形ルーフ管12から順次解体撤去されるようになっていると共に、函体構造物17の天井部17aに沿って配置された単位箱形ルーフ管12は、到達立坑13に設けられたルーフ受架台33によって受けてから解体撤去されるようになっている。
【0018】
さらに、本第1実施形態では、到達立坑13は、用地買収や周囲の交通量等との関係で、押出し方向Xに沿った長さが、例えば3.0〜6.0m程度の長さの単位箱形ルーフ管12よりも長く、単位箱形ルーフ管12の2倍の長さよりも短い程度の大きさで形成されており、このような小さくて狭い到達立坑13においても、押し出された単位箱形ルーフ管12を、図3にも示すように、例えば横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との一方の接合角部分に配置された単位箱形ルーフ管12aから、順次スムーズに解体撤去して行くことができるようにするために、本発明の箱形ルーフ管の継手構造10が採用されたものである。
【0019】
そして、本第1実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10は、設置される函体構造物17の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管11を、発進立坑(図示せず)から到達立坑13に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管11と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑13に向けて函体構造物17を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管12の解体撤去を容易にする、例えば角部分に位置する箱形ルーフ管11aと、これと隣接する箱形ルーフ管11b,11cとの間の継手部16の継手構造である。継手部16は、隣接する一方の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに突出して設けられた複数(本第1実施形態では2箇所)の係合片18と、他方の単位箱形ルーフ管12b,12cの側面部21b,21cに突出して設けられた複数(本第1実施形態では2箇所)の係合片19とを係合することによって構成されており、且つ、一方の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに設けられた係合片18は、図4(a),(b)及び図5に示すように、その基部18aに雌ネジ孔20を有しており、当該側面部21aに貫通形成されたボルト締着孔22に単位箱形ルーフ管12aの内側から装着されるボルト部材23を雌ネジ孔20に螺合することにより、側面部21aに着脱可能に締着されている。
【0020】
また、本第1実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10では、一方の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに設けられた係合片18として、L字断面形状を備える山形鋼が用いられている(図4(a),(b)、図5参照)。係合片18は、L字断面形状の一辺部を基部18aとして雌ネジ孔20が形成されており、この雌ネジ孔20に単位箱形ルーフ管12aの内側からボルト部材23が螺合されることにより、側面部21aに一辺部(基部)18aを密着させると共に、他辺部18bを側面部21aからフラット断面形状に突出させた状態で取り付けられている。
【0021】
なお、本第1実施形態では、一方の角部分に位置する箱形ルーフ管11aを構成する単位箱形ルーフ管12aと、これの側方に隣接する箱形ルーフ管11bを構成する単位箱形ルーフ管12b及び下方に隣接する箱形ルーフ管11cを構成する単位箱形ルーフ管12cとの間の継手部16についてのみ、本発明の継手構造が採用されるようになっており、他の隣接する箱形ルーフ管11の間の継手部16’については、従来の継手部と同様の、例えば両側の側面部に一体接合されたフラット断面形状を備える係合片24による継手構造が採用されるようになっている(図2、図3参照)。
【0022】
すなわち、本第1実施形態では、函体構造物17の天井部17aに沿って配置された複数の箱形ルーフ管11からなる横方向ルーフ列14と、函体構造物17の両側の側壁部に沿って配置された複数の箱形ルーフ管11からなる一対の縦方向ルーフ列15とが、下方を向いたコの字断面形状を有するように、接合角部分の箱形ルーフ管11aを介して互いに連結されて横断面方向に連続一体化された状態となっており、これらの連続一体化されたルーフ列14,15の各箱形ルーフ管11が一体として掘進されるようになっている。このため、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との接合角部分に配置された箱形ルーフ管11aの単位箱形ルーフ管12aは、側方及び下方の二つの側面部21aに継手部16が設けられることから、特に接合角部分の箱形ルーフ管11aの二つの側面部21aの係合状態を同時に解除する作業を行い難くなっている。
【0023】
また、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との一方の接合角部分に配置された箱形ルーフ管11aの単位箱形ルーフ管12aと、これと横方向及び縦方向に隣接する単位箱形ルーフ管12b,12cとの係合状態を解除して当該単位箱形ルーフ管12aを解体撤去できれば、残りの単位箱形ルーフ管12については、一つの側面部のみに残された継手部の係合状態を、単位箱形ルーフ管12の僅かな移動で解除しつつ順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。このため、本第1実施形態では、一方の接合角部分に配置された箱形ルーフ管11aの単位箱形ルーフ管12aと、これの側方及び下方に隣接する箱形ルーフ管11b,11cを構成する単位箱形ルーフ管12b,12cとの間の継手部16についてのみ、本発明の継手構造10が採用されて、一方の接合角部分に配置された単位箱形ルーフ管12aの解体撤去を速やかに行えるようにすると共に、他の継手部16’については、従来の継手部と同様の継手構造が採用されるようになっている。
【0024】
ここで、本第1実施形態では、箱形ルーフ管11を構成する単位箱形ルーフ管12として、例えばアール・アンド・シー工法(株式会社奥村組製)に使用する公知の矩形パイプを好ましく用いることができる。単位箱形ルーフ管12は、例えば縦横800mm程度の矩形(正方形)の断面形状を備えると共に、内部に作業員が入って作業を行うことが可能な中空部分を備えている。
【0025】
また、単位箱形ルーフ管12は、長手方向の両端部の四隅の部分に、ボルト締着孔25が形成された連結リブ26が取り付けられている(図3参照)。これらの連結リブ26を介して、連結ボルトにより複数の単位箱形ルーフ管12を軸方向に後方から順次継ぎ足しながら、発進立坑から到達立坑13に向けて箱形ルーフ管11を掘進させることができるようになっている。
【0026】
さらに、本第1実施形態では、例えば単位箱形ルーフ管12の側面部21から突出して設けられた係合片18,19,24を、横方向又は縦方向に隣接する箱形ルーフ管11の間で係合することにより継手部16,16’を形成して、隣接する箱形ルーフ管11が、掘進作業中に横方向や縦方向への相対的な位置ずれを生じないようにすることができるようになっている。
【0027】
さらにまた、本第1実施形態では、横方向ルーフ列14を構成する箱形ルーフ管11の上面や、縦方向ルーフ列15を構成する箱形ルーフ管11の外側面に沿って、例えば上述のアール・アンド・シー工法に使用する公知のフリクションカットプレートからなる縁切り板27(図1参照)が設けられている。これらの縁切り板27は、地中に設置した箱形ルーフ管11によるルーフ列14,15の後方に函体構造物17を接続して押し出すことにより、ルーフ列14,15と置き換えて函体構造物17を地中に設置する際に、ルーフ列14,15を周囲の地盤から縁切りする機能と、函体構造物17のスライド移動を容易にするガイド面としての機能を発揮することになる。
【0028】
そして、本第1実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10は、一方の角部分に配置された箱形ルーフ管11aと、これと隣接する箱形ルーフ管11b,11cとの間の継手部16において採用されたものであり、図3〜図5に示すように、角部分の箱形ルーフ管11aを構成する単位箱形ルーフ管12aの、一方の側方の側面部21a及び下方の側面部21aに設けられた係合片18は、その基部18aに雌ネジ孔20を有しており、当該側面部21aに貫通形成されたボルト締着孔22に単位箱形ルーフ管12aの内側から装着されるボルト部材23を雌ネジ孔20に螺合することにより、側面部21aに着脱可能に締着されている。
【0029】
すなわち、本第1実施形態では、角部分の単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに設けられた係合片18は、例えばL−75×75×9の山形鋼からなり、単位箱形ルーフ管12aの一方の側方の側面部21a及び下方の側面部21aに、間隔をおいて平行に配置されて、単位箱形ルーフ管12aの略全長に亘って各々2箇所に取り付けられている。また係合片18には、例えばそのL字断面形状の一辺部18aにネジ切り加工を施すことによって、複数の雌ネジ孔20が、長手方向に間隔をおいて開口形成されている。これらの雌ネジ孔20は、一辺部18aの内側面にナット部材を固着することによって形成することもできる。
【0030】
一方、本第1実施形態では、単位箱形ルーフ管12aの一方の側方の側面部21a及び下方の側面部21aには、ボルト締着孔22が、係合片18の取付け位置に沿って、長手方向に間隔をおいて複数箇所に貫通形成されている。これらのボルト締着孔22は、単位箱形ルーフ管12aの当該側面部21aを含む外周面に予め形成されているグラウト注入孔を、そのまま利用して用いることもできる。
【0031】
そして、本第1実施形態では、係合片18の基部18aとしての一辺部に形成された複数の雌ネジ孔20を、単位箱形ルーフ管12aの一方の側方の側面部21a及び下方の側面部21aに形成された複数のボルト締着孔22に合致させた状態で、単位箱形ルーフ管12aの内側からの作業によってボルト部材23を螺合締着することにより、係合片18は、一辺部(基部)18aを側面部21aに密着させると共に、他辺部18bを側面部21aからフラット断面形状に突出させた状態で着脱可能に固着されることになる。
【0032】
なお、本第1実施形態では、係合片18と共に継手部16を構成する、側方に隣接する箱形ルーフ管11bの側面部21b及び下方に隣接する箱形ルーフ管11cの側面部21bに突出して設けられた係合片19は、各々、これらの側面部21b,21cに一体接合された、フラット断面形状を有する従来と同様の係合片となっている。また、これらの係合片19は、各継手部16において、一対のL字断面形状の係合片18を挟み込みようにして、これらの係合片18の外側に隣接する位置に各々取り付けられることになる。
【0033】
そして、上述の構成を備える本第1実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10によれば、角部分の単位箱形ルーフ管11aと、これと隣接する単位箱形ルーフ管11b,11cとの間の係合片18,19による継手部16の係合を容易に解除できようにして、到達立坑13が狭い場合でも、多くの手間を要することなく、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管11を吊り上げて解体撤去する作業を容易に行うことが可能になる。
【0034】
すなわち、本第1実施形態によれば、角部分に配置された単位箱形ルーフ管12aの側面部21aに設けられた係合片18は、その基部(一辺部)18aに雌ネジ孔20を有しており、当該側面部21aに貫通形成されたボルト締着孔22に単位箱形ルーフ管12aの内側から装着されるボルト部材23を雌ネジ孔20に螺合することにより、側面部21aに着脱可能に締着されているので、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管11を解体撤去する際に、角部分の単位箱形ルーフ管12aの内部に作業員が立入って、単位箱形ルーフ管12aの内側からの作業によってボルト部材23を取り外せば、係合片18を単位箱形ルーフ管12aの側面部21aから容易に取り外すことが可能になり、これによって係合片18が邪魔になることなく角部分の単位箱形ルーフ管12aを速やかに解体撤去することが可能になる。
【0035】
また、角部分の単位箱形ルーフ管12aが解体撤去されたら、残りの単位箱形ルーフ管12は、一つの側面部のみに、隣接する単位箱形ルーフ管12との間の継手部が残されることになるので、これの係合状態を僅かな移動で解除しつつ順次容易に解体撤去してゆくことが可能になる。
【0036】
図6〜図8は、本発明の好ましい第2実施形態に係る箱形ルーフ管の継手構造40を説明するものである。本第2実施形態によれば、横方向ルーフ列14と縦方向ルーフ列15との一方の接合角部分に配置された単位箱形ルーフ管12aと、これの側方に隣接する単位箱形ルーフ管12bとの間の継手部16において、本発明の箱形ルーフ管の継手構造40が採用されており、下方に隣接する単位箱形ルーフ管12cとの間の継手部16’においては、従来の継手部と同様の、例えばフラット断面形状を備える係合片24による継手構造が採用されている。
【0037】
そして、本第2実施形態の箱形ルーフ管の継手構造40では、隣接する一方の単位箱形ルーフ管である角部分の単位箱形ルーフ管12aの側方の側面部21aに一対の係合片41が設けられており、これらの係合片41は、側面部21aに沿って配置される基盤プレート42に一体として接合されて、L字断面形状に突出して取り付けられている。また基盤プレート42を基部として雌ネジ孔43が形成されており、この雌ネジ孔43に、単位箱形ルーフ管の側面部21aに貫通形成されたボルト締着孔22に内側から装着されるボルト部材23が螺合されることにより、係合片41は、側面部21aからL字断面形状に突出して取り付けられている。
【0038】
また、本第2実施形態では、係合片41の基部としての基盤プレート42に複数のナット嵌着凹部44が形成されており、これらのナット嵌着凹部44に各々ナット部材45を嵌着固定することにより、雌ネジ孔43が、長手方向に間隔をおいて基盤プレート42に複数設けられることになる。
【0039】
さらに、本第2実施形態では、係合片41と共に継手部16を構成する、側方に隣接する箱形ルーフ管11bの側面部21bに突出して設けられた一対の係合片46は、当該側面部21bに一体接合された、L字断面形状を有する従来と同様の係合片となっている。また、これらの係合片46は、継手部16において、角部分の単位箱形ルーフ管12aの一対のL字断面形状の係合片41と鉤状に係合されるように、これらの係合片41の内側に隣接する位置に各々取り付けられることになる。
【0040】
そして、本第2実施形態の箱形ルーフ管の継手構造40によっても、到達立坑13に押し出された単位箱形ルーフ管11を解体撤去する際に、角部分の単位箱形ルーフ管12aの内部に作業員が立入って、単位箱形ルーフ管12aの内側からの作業によってボルト部材23を取り外せば、係合片41を基盤プレート42と共に単位箱形ルーフ管12aの側面部21aから容易に取り外すことが可能になり、これによって角部分の単位箱形ルーフ管12aを速やかに解体撤去することが可能になって、上記第1実施形態の箱形ルーフ管の継手構造10と同様の作用効果を奏することになる。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の箱形ルーフ管の継手構造は、隣接する単位箱形ルーフ管の一方の側面部に設けられた係合片のみを、ルーフ管の内側からボルト部材によって着脱可能に取り付ける必要は必ずしも無く、隣接する双方の側面部に設けられた係合片を、ルーフ管の内側からボルト部材によって着脱可能に取り付けることもできる。また、本発明の箱形ルーフ管の継手構造は、ルーフ列の角部分に配置される単位箱形ルーフ管と、これと隣接する単位箱形ルーフ管との間の継手部に設ける必要は必ずしも無く、解体撤去に障害となると考えられる、任意の隣接する単位箱形ルーフ管の間の継手部において本発明の箱形ルーフ管の継手構造を採用することができる。さらに、係合片は、フラット断面形状やL字断面形状に突出する必要は必ずしもなく、その他の種々の断面形状で突出していても良い。
【符号の説明】
【0042】
10,40 箱形ルーフ管の継手構造
11 箱形ルーフ管
11a 角部分の箱形ルーフ管
11b 側方に隣接する箱形ルーフ管
11c 下方に隣接する箱形ルーフ管
12 単位箱形ルーフ管
12a 角部分の単位箱形ルーフ管
12b 側方に隣接する単位箱形ルーフ管
12c 下方に隣接する単位箱形ルーフ管
13 到達立坑
14 横方向ルーフ列
15 縦方向ルーフ列
16 継手部
17 函体構造物
18 係合片
18a L字断面形状の一辺部(係合片の基部)
18b L字断面形状の他辺部
19 係合片
20,43 雌ネジ孔
21a,21b,21c 単位箱形ルーフ管の側面部
22 ボルト締着孔
23 ボルト部材
41 係合片
42 基盤プレート(係合片の基部)
46 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置される函体構造物の外周形状に沿って、複数の矩形断面を有する箱形ルーフ管を、発進立坑から到達立坑に向けて掘進させることにより地中に並べて設置し、しかる後に、設置した複数の箱形ルーフ管と置き換えるようにして、発進立坑から到達立坑に向けて前記函体構造物を掘進させることにより地中に設置する箱形ルーフ工法において用いられ、前記到達立坑に押し出された単位箱形ルーフ管の解体撤去を容易にする、隣接する箱形ルーフ管の間の継手部の継手構造であって、
前記継手部は、隣接する一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片と、他方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に突出して設けられた複数の係合片とを係合することによって構成されており、
且つ、前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、その基部に雌ネジ孔を有しており、当該側面部に貫通形成されたボルト締着孔に前記単位箱形ルーフ管の内側から装着されるボルト部材を前記雌ネジ孔に螺合することにより、前記側面部に着脱可能に締着されている箱形ルーフ管の継手構造。
【請求項2】
前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、L字断面形状又はコの字断面形状を備える鋼材からなり、前記L字断面形状又はコの字断面形状の一辺部を前記基部として前記雌ネジ孔が形成されており、該雌ネジ孔に前記ボルト部材が螺合されることにより、他の辺部を前記側面部からフラット断面形状又はL字断面形状に突出させて取り付けられている請求項1に記載の箱形ルーフ管の継手構造。
【請求項3】
前記少なくとも何れか一方の前記単位箱形ルーフ管の側面部に設けられた係合片は、前記側面部に沿って配置される基盤プレートに一体として接合されて、フラット断面形状又はL字断面形状に突出して取り付けられており、前記基盤プレートを前記基部として前記雌ネジ孔が形成されており、該雌ネジ孔に前記ボルト部材が螺合されることにより、前記側面部からフラット断面形状またはL字断面形状に突出して取り付けられている請求項1に記載の箱形ルーフ管の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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