説明

節度装置

【課題】節度角度の設定の容易化、節度感の強弱とか変化度合いなどの設定の容易化を図る。
【解決手段】操作部材24の軸23には、ほぼV形の凹面部28を有する回動抵抗受部27が設けられている。抵抗付与手段29は、鋼線製コイルばね31及び押圧部材32を有し、該コイルばね31のばね力により、前記押圧部材32を回動抵抗受部27の凹面部28に対して押圧して回動抵抗を与えるものである。装置ベース21には、電磁石26が設けられ、軸23にはロータリーエンコーダ25が設けられている。回動抵抗受部27と抵抗付与手段29とのうち、回動抵抗受部27を、操作部材24と一体回動可能に設けると共に、抵抗付与手段29を、電磁石26の断電時に操作部材24と一体回動し電磁石26の通電時に該電磁石26に吸着されて非回動状態に固定される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材の操作に節度を与える節度装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の各種コントロールに使用されるロータリスイッチ装置は、例えば、特許文献1に開示されているスイッチ装置のように、ケース内面に形成された山部及び谷部を交互に有する節度面部と、ケース内のロータ側に設けられたコイルばね及びこのコイルばねにより節度面部に当接するように付勢されたボールとからなる節度機構を有している。
【0003】
このような構成の節度機構によれば、使用者が操作ノブを回動してスイッチ操作を行う場合、ロータの回動に伴ってボールが山部を超えて谷部に移動し、この谷部に落ち込む。すなわち、ボールが山部を超える前後において操作ノブに与えられるフィードバック力が変化する。これにより、操作ノブ(操作部材)の回動に節度が与えられている。
【特許文献1】特開平5−94922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1のものでは、操作部材を回動した時に節度が与えられる回動角度(以下、節度角度という)が、節度面の山部及び谷部の形成ピッチ(角度ピッチ)に制約されてしまう問題がある。この問題を解決するものとして、図4に示す構成の節度装置が考えられている。
【0005】
図4において、例えばインストルメントパネル1の裏面側の適宜部位に取り付けられた装置ベース2には、軸3が回動可能に支承されている。この軸3において前記インストルメントパネル1の表面側に突出する端部(図では上端部)には、操作部材4が軸3と一体回動する形態に取り付けられている。さらに、この軸3の下端には、操作部材4の回動位置を検出するためのロータリーエンコーダ5のディスク5aが軸3と一体回動する形態に取り付けられている。
【0006】
さらに、軸3の下端側に被吸着部6が軸3と一体回動する形態に設けられており、この被吸着部材6の上面には磁性板からなる被吸着体6aが取着されている。この被吸着体6aの上方部には、電磁石7が、軸3とは無関係に回動可能に、且つ微小距離で上下動可能に設けられている。この電磁石7と装置ベース2との間には、合成樹脂からなるばね板8、8が設けられており、このばね板8、8の一端は前記装置ベース2に取着され、他端は前記電磁石7に取着されている。このばね板8、8は、軸3の回動に対して抵抗を与えるものである。なお軸3には適宜の操作対象物が付設あるいは連結される。
【0007】
この図の構成において、通常は、電磁石7が断電されており、操作部材4が使用者により回動操作されると、軸3、ディスク5a、被吸着部6が一体回動する。そして、操作部材4が所定角度回動されると、ロータリーエンコーダ5がこの所定角度を検出し、これに基づいて図示しない制御部が電磁石7に通電する。すると、電磁石7と被吸着体6aとが吸着状態となって当該電磁石7、被吸着体6a、軸3、操作部材4が一体化状態となる。従って、この状態から使用者が操作部材4をさらに回動すると、板ばね8、8の他端がその回動方向へ弾性変形することによって復元方向へばね力を発生し、使用者が回動抵抗を受け、電磁石が断電したときに回動抵抗がなくなる。回動抵抗の差により節度が与えられる。
【0008】
しかし、この構成では、合成樹脂製のばね板8、8を使用するため、ばね機能を奏するための形状の設定が難しいとともに、ばね力設定のための材料選定も難しく、総じて節度感の設定が難しいといった問題があった。また、節度感の滑らか度合いとか、急激度合いなどの微妙な設定も困難であった。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、節度角度の設定が容易であり、且つ、節度感の強弱などの設定が容易となる節度装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、装置ベースに回動操作可能に設けられた操作部材と、ほぼV形の凹面部を有する回動抵抗受部と、鋼線製コイルばね及び押圧部材を有し、該コイルばねのばね力により、前記押圧部材を回動抵抗受部の前記凹面部に対して押圧して回動抵抗を与えるための抵抗付与手段と、前記装置ベースに設けられた電磁石と、前記操作部材の回動位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段により検出された前記操作部材の回動位置に応じて前記電磁石を通断電制御する制御手段とを備え、前記回動抵抗受部と前記抵抗付与手段との一方を、前記操作部材と一体回動可能に設けると共に、他方を、前記電磁石の断電時に前記操作部材と一体回動し電磁石の通電時に該電磁石に吸着されて非回動状態に固定される構成としてなるところに特徴を有する。
【0011】
この構成において、使用者が操作部材を回動操作すると、前記回動抵抗受部と前記抵抗付与手段との一方が、前記操作部材と一体回動し、他方が、前記電磁石の断電時に前記操作部材と一体回動する。従って、電磁石の断電時には、操作部材の回動操作に伴って前記回動抵抗受部と前記抵抗付与手段との両方が回動し、節度感は発生しない。そして、該他方が、操作部材が所定の回動位置に達すると、位置検出手段により当該所定の回動位置が検出され、制御手段により、電磁石が通電される。この通電により、前記回動抵抗受部と前記抵抗付与手段とのうちの他方が、該電磁石に吸着されて非回動状態に固定される。すると、抵抗付与手段の押圧部材がコイルばねのばね力に抗して回動抵抗受部の凹面部を絶対的にあるいは相対的に摺動するようになり、コイルばねのばね力が増加して抵抗感が強くなる。そして、操作部材が所定の回動位置に達すると、電磁石が断電され、この抵抗感がなくなる。コイルばねによる抵抗感の急変により節度感が発生する。
【0012】
この構成の場合、前記所定の回動位置の変更により、節度角度を容易に変更できる。また、ほぼV形の凹面部を有する回動抵抗受部と、鋼線製コイルばね及び押圧部材を有し、該コイルばねのばね力により、前記押圧部材を回動抵抗受部の前記凹面部に対して押圧して回動抵抗を与えるための抵抗付与手段とで、節度を与える構成であるから、コイルばねの選定と、凹面部の傾斜角度の設定により節度感の間隔と強弱の設定が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、節度角度の設定が容易であり、且つ、節度感の強弱など種々の設定が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を例えば自動車のヒータコントロール用スイッチの操作装置に適用した一実施例につき図1ないし図3を参照して説明する。
操作装置20の装置ベース21は、インストルメントパネル22の裏面側の適宜部位に取り付けられている。この装置ベース21には軸23が回動可能に支承されている。この軸23において前記インストルメントパネル22の表面側に突出する端部(図では上端部)には、操作部材24が軸23と一体回動する形態に取り付けられている。さらに、この軸23において装置ベース21から下方へ突出する下端部には、操作部材24の回動位置を検出するための位置検出手段としてのロータリーエンコーダ25のディスク25aが軸23と一体回動する形態に取り付けられている。
【0015】
前記装置ベース21にはほぼ円筒形の電磁石26が取着されており、この電磁石26の中空部を軸23が挿通している。
また、軸23における電磁石26上方部には、円筒状の回動抵抗受部27が軸23と一体回動するように設けられており、この回動抵抗受部27の内面には、図2に示すように、ほぼV形の凹面部28が形成されている。この凹面部28は、斜面28aと斜面28bとでほぼV形をなす。
【0016】
また、この回動抵抗受部27の内部における軸23部分には、抵抗付与手段29が設けられている。この抵抗付与手段29は、被吸着部材30と、鋼線製コイルばね31と、押圧部材32と、ガイド筒部33とを有する。
【0017】
前記被吸着部材30は、磁性材から構成されており、円筒部30aと、これの下端部に形成された径大な被吸着部30bとを有した構成である。前記被吸着部30bは、前記電磁石26の上面と軸方向で対向している。この被吸着部材30は、軸23に回動可能に嵌合されている。
【0018】
前記ガイド筒部33は前記被吸着部材30の円筒部30aに遠心方向へ延びるように取着されており、このガイド筒部33の先端側の内部には前記押圧部材32を移動可能に収容配置している。さらにこのガイド筒部33の内部には、前記コイルばね31が圧縮状態で収容配置されており、このコイルばね31は鋼線たとえばばね用鋼線から構成されたものである。このコイルばね31のばね力により、図2に示すように、押圧部材32が前記凹面部28の谷中心部に押圧付勢されている。
【0019】
制御ユニット34は、装置ベース21に設けられており、この制御ユニット34には、電磁石26を所定の回動位置で通電及び断電するための制御手段たる制御回路35が備えられている。また制御ユニット34には、手動操作されて前記通断電パターン(所定の回動位置)を任意に設定するための設定手段(図示せず)が設けられている。つまり、この設定手段の操作に基づいて前記制御回路35における電磁石26に対する通断電パターンを変更可能としている。この場合、該所定の回動位置は、例えば角度15度(角度15度の範囲で通電、次の角度15度の範囲で断電)に設定されている。なお軸23には適宜の操作対象物が付設あるいは操作対象部に連結される。この制御回路35に前記ロータリーエンコーダ25の回動位置検出信号が与えられるようになっている。
【0020】
図1及び図2の状態では、電磁石26が断電されている状態を示しており、この状態では、押圧部材32は、回動抵抗受部27の凹面部28の谷中心部に押圧付勢されており、前記被吸着部材30が軸23に対して回動可能である。この状態から、使用者が操作部材24を矢印A方向(図2参照)に回動操作すると、軸23、回動抵抗受部27、ディスク25aが一体回動する。この場合、上述したように、押圧部材32が回動抵抗受部27の凹面部28の谷中心部に押圧付勢され、且つ被吸着部材30が軸23に対して回動可能であるから、押圧部材32も一体回動する。つまり、電磁石26の断電時には、操作部材24の回動操作に伴って前記回動抵抗受部27と前記抵抗付与手段27との両方が回動し、節度感は発生しない。
【0021】
制御回路35は、ロータリーエンコーダ25からの信号により操作部材24の回動操作開始を検知し、該操作部材24がこの開始時点から前記15度の回動を検知すると、電磁石26を通電する(図3(a)参照)。この通電により電磁石26が被吸着部材30において対向する被吸着部30bを吸着固定もしくは吸引固定する。
【0022】
これにより押圧部材32が回動不能状態に固定され、回動抵抗受部27は、引き続き使用者による回動操作力を受けて矢印A方向へ回動される。このときに、該回動抵抗受部27の凹面部28の斜面28aが押圧部材32と摺接し、押圧方向へのコイルばね31のばね力が増加し、該回動抵抗受部27が回動抵抗を使用者が徐々に強く感じるようになる。(図3(b)参照)。この電磁石26に対する通電を、角度15度の回動が検出されるまで行い、断電する。この断電により、押圧部材32は、斜面28aの谷中心部へ戻り、回動抵抗がなくなる。このときに節度感が与えられる。この断電は、次の角度15度が検出されるまで行われる。
【0023】
このように本実施例によれば、電磁石26を通電及び断電するタイミングである前記所定の回動位置の変更により、節度角度を容易に変更できる。また、コイルばね31と凹面部28の傾斜角度の設定により節度感の強弱や間隔の設定が容易となる。
【0024】
また、本実施例によれば、使用者によって操作される設定手段を備え、制御回路35が、該設定手段の操作に基づいて、前記電磁石26に対する通断電パターンを変更するから、節度角度を任意に変更できて、利便性に優れている。
【0025】
なお、上記実施例では、前記回動抵抗受部27と前記抵抗付与手段29とのうち、回動抵抗受部27を、前記操作部材24と一体回動可能に設けると共に、前記抵抗付与手段29を、前記電磁石26の断電時に前記操作部材24と一体回動し電磁石26の通電時に該電磁石26に吸着されて非回動状態に固定される構成としたが、抵抗付与手段29を、前記操作部材24と一体回動可能に設けると共に、前記回動抵抗受部27を、前記電磁石26の断電時に前記操作部材24と一体回動し電磁石26の通電時に該電磁石26に吸着されて非回動状態に固定される構成としても良い。
【0026】
また、電磁石26の通電と断電の角度範囲は前述した15度に限られず、また、通電の角度範囲と断電の角度範囲も同じでなくても良い。また、位置検出手段としては、ロータリーエンコーダに限られず、複数のリミットスイッチを所定角度位置に配置する構成でも良く、種々変更できる。また、本発明は、自動車のヒータコントロール用スイッチの操作装置以外の操作装置に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示す自動車のヒータコントロール用スイッチの操作装置の縦断正面図
【図2】抵抗付与手段部分での横断平面図
【図3】(a)は電磁石の通断電パターンを示す図、(b)は節度感変化の様子を示す図
【図4】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0028】
図面中、20は操作装置、21は装置ベース、22はインストルメントパネル、23は軸、24は操作部材、25はロータリーエンコーダ(位置検出手段)、26は電磁石、27は回動抵抗受部、28は凹面部、29は抵抗付与手段、30は被吸着部材、31はコイルばね、32は押圧部材、35は制御回路(制御手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置ベースに回動操作可能に設けられた操作部材と、
ほぼV形の凹面部を有する回動抵抗受部と、
鋼線製コイルばね及び押圧部材を有し、コイルばねのばね力により、前記押圧部材を回動抵抗受部の前記凹面部に対して押圧して回動抵抗を与えるための抵抗付与手段と、
前記装置ベースに設けられた電磁石と、
前記操作部材の回動位置を検出する位置検出手段と、
この位置検出手段により検出された前記操作部材の回動位置に応じて前記電磁石を通断電制御する制御手段とを備え、
前記回動抵抗受部と前記抵抗付与手段との一方を、前記操作部材と一体回動可能に設けると共に、他方を、前記電磁石の断電時に前記操作部材と一体回動し電磁石の通電時に該電磁石に吸着されて非回動状態に固定される構成としてなることを特徴とする節度装置。
【請求項2】
使用者によって操作される設定手段を備え、
前記制御手段は、該設定手段の操作に基づいて、前記電磁石に対する通断電パターンを変更することを特徴とする請求項1に記載の節度装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−177038(P2008−177038A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9213(P2007−9213)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】