説明

簡易マスク

【課題】簡易マスクの着用者が口を大きく動かしても着用しているマスクがずれることのないように簡易マスクに改良を施す。
【解決手段】簡易マスク1がカップ状の被覆部2と締め紐3を一例とする着用手段を有する。被覆部2は不織布の複数枚を含み、被覆部2の周縁部分8における内面6には、柔軟にして弾性変形可能な環状の接顔用パッド11が取り付けられる。被覆部2とパッド11とは周縁部分8の縁からの距離が2mmまでの範囲内で接合している。マスク1を側方から見たときに、周縁部分8はマスク着用者の鼻梁部に向けられる部分と顎部に向けられる部分とにおいて顔面に向かって凹となるようにくぼんでいる。パッド11には、縦方向中心線CLの両側それぞれに複数の切り欠き部21,21,22,22が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マスク着用者の口部と鼻部とを覆う被覆部がカップ状に形成されている簡易マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスク着用者の口部と鼻部とを覆う被覆部がカップ状に形成されているマスクは従来周知である。また、このようなマスクであって、1回または複数回の使用後に洗濯その他のクリーニング手段で処理して再び使用するということを予定していない使い捨て用の簡易マスクも周知ないし公知である。
【0003】
例えば、特開2000−202051号公報(特許文献1)に開示された使い捨て防じんマスクは、略半球状のフィルタ部と、フィルタ部の周縁部に取り付けられた接顔クッションとを有し、フィルタ部の周縁部と接顔クッションとは、マスク着用者の顔の起伏に沿うような凹凸を有する。また、この文献には、従来技術の一つとして、略半球状に形成されたフィルタ部の周縁部に平板状の接顔クッションを取り付けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−202051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カップ形状の被覆部の周縁部分に環状の接顔用パッドを取り付けた簡易マスクは、その接顔用パッドがマスク着用者の鼻梁部や口許に密着することによってマスク内部への粉じんの侵入を防ぐことができる。しかし、マスク着用者が会話をすることなどによって口を動かすと、着用しているマスクが顔面の上方または下方へずれて、顔面との間に隙間が生じ、その隙間から粉じんが簡易マスクの内側へ侵入するということがある。
【0006】
そこで、この発明では、マスク着用者が口を大きく動かしても着用しているマスクがずれることのないように、従来のマスクに対して改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためにこの発明が対象とするのは、マスク着用者の口部と鼻部とを覆うことが可能であってカップ状に形成されている通気性の被覆部と、前記被覆部から延びていて前記着用者の頭部、頸部、耳部のいずれかに掛け回すことのできる着用手段とを有し、前記被覆部は前記着用者の顔面と向かい合う内面とその反対面である外面とを含み、前記周縁部分における前記内面には前記周縁部分に沿って環状に延びていて外周縁部と内周縁部とを有する接顔用パッドの前記外周縁部が取り付けられ、前記被覆部が前記顔面の上下に一致させる上下方向と、前記上下方向に直交して前記鼻部を横切る横方向と、前記上下方向と前記横方向とに直交する前後方向とを有する簡易マスクである。
【0008】
かかる簡易マスクにおいて、この発明が特徴とするところは以下のとおりである。前記被覆部は、熱可塑性合成繊維で形成された不織布の複数枚を含み、前記パッドは、柔軟にして弾性変形可能なものである。前記被覆部と前記パッドとは、前記周縁部分の縁からの距離が2mmまでの範囲内において接合していて、前記マスクを側方から見たときの前記周縁部分が、前記着用者の鼻梁部に向けられる第1部分と顎部に向けられる第2部分とにおいて前記顔面に向かって凹となるようにくぼんでいる。前記パッドには、前記被覆部を前記横方向において二等分する縦方向中心線の両側それぞれに、前記内周縁部から前記外周縁部に向かって延びる長さが5〜20mmである前記パッドに対しての切り欠き部が前記上下方向において互いに離間した状態で複数形成されている。
【0009】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記両側それぞれに形成されている前記切り欠き部の数が2または3である。
【0010】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記上下方向を水平方向に向けた状態の前記マスクを前記第1部分と前記第2部分とにおいて把持し、前記水平方向へ200mm/minの速度で10mm伸長するときに要する力が、0.2kgfを越えることがない。
【0011】
なお、この発明において、簡易マスクとは、マスクを1回または複数回使用した後に、さらなる使用を目的に、そのマスクを洗濯等のクリーニング手段で処理することを予定していない種類のマスクを意味している。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る簡易マスクでは、被覆部と柔軟な接顔用パッドとが被覆部の縁からの距離が2mmまでの範囲内で接合していることによって、被覆部における周縁部分は接顔用パッドとの接合によって硬くなるということがない。また、その周縁部分とパッドとは、第1、第2部分が着用者の顔面に向かって凹となるようにくぼんでいることによって、マスク着用者の顔面に対するフィット性がよくなる。環状のパッドは、縦方向中心線の両側それぞれに、5〜20mmの長さを有する切り欠き部が複数形成されていることによって上下方向と幅方向とにおける変形が容易なものになる。このような簡易マスクは、マスク着用者が口を動かしたときに生じる顔面の動きに追随して変形し得るので、顔面に対してずれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】簡易マスクの外面側斜視図。
【図2】簡易マスクの内面側斜視図。
【図3】簡易マスクの側面図。
【図4】図1のIV−IV線切断面を示す図。
【図5】従来の簡易マスクの一例の側面図。
【図6】簡易マスクを伸長するときの状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して、この発明に係る簡易マスクの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0015】
図1,2,3において、図1は簡易マスク1の外面側斜視図、図2は簡易マスク1の内面側斜視図、図3は簡易マスク1の側面図であって、簡易マスク1の上下方向、幅方向、前後方向が双頭矢印A,B,Cで示されている。簡易マスク1は、その幅を二等分する縦方向中心線CLに関して対称に形成されているもので、カップ形状であって通気性を有する被覆部2と、被覆部2をマスク着用者(図示せず)の顔面に当接させることのできる着用手段である上下二条の締め紐3とを有している。被覆部2は、着用者の顔面と向かい合う内面6と、内面6の反対面である外面7と、周縁部分8とを有する。周縁部分8の内面側には、環状の接顔用パッド11が取り付けられている。
【0016】
接顔用パッド11は、周縁部分8に沿って延びる外周縁部12と、簡易マスク1の中央部に開口14を画成している内周縁部13とを有する。外周縁部12は、被覆部2の周縁部分8と重なり合い、その周縁部分8に沿って被覆部2を一周している接合線10において被覆部2に接合し一体になっている。ただし、外周縁部12と周縁部分8とは、締め紐3を長さ調節可能に取り付けるためのバックル部3aを介在させて一体になっている部位を含んでいる。
【0017】
接顔用パッド11の内周縁部13は、中心線CL上に位置する頂部16がマスク着用者の鼻梁部にその両側からフィットできるように幅狭く形成されている。中心線CLの両側それぞれでは、内周縁部13に少なくとも二つの切り欠き部21,22と21,22とが上下方向Aへ互いに離間する態様で形成されている。内周縁部13と内周縁部13に沿って延びる内周縁部13の近傍の部位13aとは、頂部16、切り欠き部21,21,22,22の存在によって弾性的変形が容易な状態にある。例えば、内周縁部13と近傍の部位13aとは、頂部16と切り欠き部21との間の部位が双頭矢印Pで示す方向へ往復運動することが容易である。切り欠き部21と22との間の部位は双頭矢印Qで示す方向へ往復運動することが容易である。切り欠き部22と22との間の部位は双頭矢印Rで示す方向へ往復運動することが容易である。また、頂部16と切り欠き部21との間の部位は双頭矢印P’で示す方向へ往復運動することが容易である。さらにはまた、切り欠き部21と22との間の部位は双頭矢印Q’で示す方向へ往復運動することが容易である。
【0018】
パッド11は、これらの往復運動を弾性的な運動にして、パッド11が顔面に対して弾性的に当接することを可能にするために、0.5〜3mmの厚さを有し柔軟にして弾性変形可能なシート片、例えば発泡ポリエチレンや発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等のシート片によって形成されることが好ましい。また、そのシート片の肌触りを布様のものにするためにシート片の片面には、例えば1dtex以下の繊維で形成された不織布等の柔軟なシート材料を接合して、そのシート材料で肌に対する接触面を作ることができる。
【0019】
パッドの幅Wは、被覆部2の径方向の寸法であって、その幅Wは簡易マスク1の大きさに合わせて適宜の値にすることができる。ただし、簡易マスク1が成人用のものである場合の幅Wは、一般的に10〜50mmの範囲にあることが好ましく、そのような幅Wに対して、切り欠き部21,21,22,22の内周縁部13からの長さは、5〜20mmの範囲にあることが好ましい。こうした切り欠き部21,21,22,22の存在によって、環状のパッド11は上下方向Aへ長くなるように変形したり、幅方向Bに長くなるように変形したりすることが容易である。そして、パッド11のなかでも内周縁部13とその近傍の部位13aとが特に変形容易である。
【0020】
図3において明らかなように、被覆部2の周縁部分8とパッド11の外周縁部12とが接合している被覆部2の周縁部分8は、それを簡易マスク1の側方から見ると、中心線CL上においての最上部である第1部分51と最下部である第2部分52とのそれぞれは、マスク着用者の顔面における鼻梁と顎部とのそれぞれにフィットし得るように、顔面に向かって凹となるようにくぼんでいる。これら第1、第2部分51,52は、顔面の起伏を模して形成されている部分であって、簡易マスク1を着用すると、パッド11が周縁部分8の内側において顔面にフィットして、パッド11と顔面との間に間隙の生じることを防ぐことができる。なお、図3における簡易マスク1では、中心線CLが垂直であって、簡易マスク1の第1部分51と第2部分52とがその中心線CLに接している状態にある。
【0021】
図4は、図1のIV−IV線に沿う切断面を示す図である。被覆部2の周縁部分8とパッド11の外周縁部12とが接合線10において接合している。接合線10は、被覆部2とパッド11との両者を加熱下に加圧してその両者に含まれる熱可塑性合成樹脂成分を溶融させて一体化した後に冷却することによって形成することができる他に、両者のうちの一方に含まれる熱可塑性合成樹脂成分を溶融させた状態で両者を圧着一体化し、しかる後に冷却することによって接合線10を形成することもできる。また、接合線10は、被覆部2とパッド11とをホットメルト接着剤等の接着剤を介して一体化させることによっても形成することができる。いずれの接合線10も、その内側縁10aが被覆部2における周縁部分8の縁8aから幅2mmの範囲におさまるように形成されることが好ましい。かように細い接合線10を含む周縁部分8は柔軟であって、簡易マスク1が上下方向Aへ伸長するように変形するときの妨げになることがない。
【0022】
簡易マスク1に対する接合線10のこのような作用は、簡易マスク1を中心線CLに沿ってゆっくりと、例えば200mm/minの速度で10mm程度伸長させるときに要する力の大きさによって評価することができる。発明者が知見したところによれば、周縁部分8が好ましい柔軟性を有する簡易マスク1では、それを10mm伸長させるのに要する力が0.2kgfを越えることがない。
【0023】
簡易マスク1の被覆部2は、外気を濾過するフィルタとしての機能を有する。一例としての被覆部2は、熱可塑性合成繊維で形成された不織布を複数枚重ねることによって形成される。複数枚の不織布のうちで被覆部2の外面側に位置するものには、粒径の大きい粉じんを捕捉することができるように、繊維どうしが大きな通気性の間隙を形成している不織布を使用することが好ましい。被覆部2の内面側に位置するものには、粒径の小さい粉じんを捕捉することができるように、繊維どうしが小さい通気性の間隙を形成している不織布を使用することが好ましい。これらの不織布の他に、被覆部2における外面7の美観を向上させたり、耐擦傷性を向上させたりするための通気性シートを併用することができる。また、被覆部2における内面6や不織布と不織布との間には、被覆部2のカップ形状を維持するために、ネット状の保形用シートを使用することもできる。ただし、保形用シートは、その存在によって被覆部2を著しく変形し難いものにすることがないように、適度な柔軟性を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
このように形成されている簡易マスク1は、被覆部2の周縁部分8とそこに接合しているパッド11の外周縁部12とが、第1、第2部分にくぼみを有することによって、それを着用するとパッド11が着用者の顔面によくフィットし、簡易マスク1の内側への粉じんの侵入を防ぐことができる。また、周縁部分8は、接合線10が縁8aの近傍にあってしかも幅狭く作られていることによって、接合線10が存在していても変形することが容易な状態にある。加えて、パッド11は、それに切り欠き部21,22,21,22が形成されていることによって、内周縁部13とその近傍の部位13aとが特に変形容易な状態にある。このような状態にある簡易マスク1では、着用者が口を大きく動かすことによって顎が上下に動いたり、顔面の起伏の状態が変化したりすると、簡易マスク1における被覆部2の周縁部分8やパッド11が顎の動きや顔面の起伏の変化に追随して動き、簡易マスク1と顔面との間に隙間が生じたり、顔面に対して簡易マスク1がずれたりすることも防ぐことができる。
【0025】
簡易マスク1のこれらの挙動のうち、簡易マスク1が顔面に対してずれ易いか否かは、着用者が口を大きくあけて発声することを繰り返した後の簡易マスク1の状態を観察することによって確認することができる。また、顔面に対してずれ易いマスクは、顔面との間に隙間を作り易く、その隙間から粉じんがマスクの内側へ侵入し易いものでもある。したがって、簡易マスク1のずれ易さを観察するときに、簡易マスク1の内外に粉じん計測用のセンサーをセットしておくことによって、ずれ易さ、換言すると隙間の生じ易さを定量的に評価することができる。すなわち、簡易マスク1の外部における粉じん濃度を測定する一方、発声を繰り返しいる間に簡易マスク1の内部における粉じん濃度を測定して、外部の濃度に対する内部の濃度の割合を漏れ率として求めればよい。この発明に係る簡易マスク1の漏れ率は、それを労研式マスクフィッティングテスターMT−03型(柴田科学(株)製)で測定したときに、2%を越えることがない。
【実施例】
【0026】
この発明の実施例である複数の簡易マスクとそれと対比するための複数の比較例の簡易マスクとを作り、それらの簡易マスクを伸長するときの力と、漏れ率と、着用中における顔面に対してのずれの有無とを測定・観察した結果は表1,2,3のとおりであり、各実施例における簡易マスクの構造の概略も表1,2,3に示されている。また、測定・観察の方法は以下のとおりである。
【0027】
測定・観察方法
1.被覆部の寸法
被覆部について、上下方向と幅方向との最大寸法をノギスで測定した。深さの測定では、被覆部をその内面が下に向くようにして水平な測定基準面に載せ、その基準面からの被覆部の高さをハイトゲージで測定して、その高さの最大値を深さとした。
【0028】
2.被覆部の側面形状
被覆部における周縁部のうちで、鼻梁部に当接させる部位と顎部に当接させる部位とが垂直線に接した状態で上下へ並ぶように被覆部をセットした。その被覆部を側方から観察したときに、周縁部には顔面に向かって凹となる部位が含まれているときに、その被覆部の側面形状を「形状A」と定義し、周縁部が図5に例示の如く垂直線Vに平行しているときに、その被覆部の形状を「形状B」と定義した。実施例の簡易マスクは「形状A」を有するものであり、比較例の簡易マスクには、「形状A」を有するものと、「形状B」を有するものとが含まれている。ちなみに、図5の簡易マスクは従来例の一つである。
【0029】
3.周縁部の接合線
周縁部に沿って延びる接合線について、周縁部の縁から接合線の内側縁(図3参照)までの幅をノギスで測定し、その幅が2mmを越えていないときの接合線を「接合線a」と定義し、その幅が2mmを超えているときの接合線を「接合線b」と定義した。実施例の簡易マスクは「接合線a」を有するものであり、比較例の簡易マスクには「接合線a」を有するものと「接合線b」を有するものとが含まれている。
【0030】
4.接顔用パッドの切り欠き部
切り欠き部は、被覆部の縦方向中心線の両側それぞれの二箇所または三箇所に設けた。各実施例において、切り欠き部には長さが5〜20mmのものを採用した。簡易マスクにおいて、図2に例示の如く切り欠き部と接顔用パッドの内周縁部とが曲線でつながり、切り欠き部を挟んで内周縁部どうしが離間している場合には、その内周縁部どうしをつなぐ滑らかな線を想定し、その線から切り欠き部の端部までの長さを切り欠き部の長さとした。
【0031】
5.伸長に要する力(kgf)
図6に示されているように、実施例の簡易マスクをその内面が上を向くようにして、水平な測定台に載せた。簡易マスクの周縁部分と縦方向中心線(図2参照)との交点およびその近傍、すなわち図2における第1部分51と第2部分52とをつかみ代が4mmとなるようにして幅19mmを有する二個のダブルクリップ(コクヨ製 ダブルクリップ 小口 クリ−35)で把持した。ダブルクリップの一方は、デジタルフォースゲージ DPRSX−50((株)イマダ製)の測定部に連結し、ダブルクリップのもう一方は測定者が指先で摘んだ。デジタルフォースゲージでの測定部は測定台に固定してあり、測定者は摘んでいるダブルクリップを縦方向中心線に沿うようにして約200mm/minの速度でゆっくりと移動させることによって簡易マスクを縦方向中心線に沿って伸長し、ダブルクリップの移動距離が10mmに達したときにおけるデジタルフォースゲージのモニター部の表示値(kgf)を伸長に要する力とした。
【0032】
6.漏れ率(%)とずれの観測
25歳の男性被験者Aと35歳の男性被験者Bとに実施例の簡易マスクを着用させた。労研式マスクフィッティングテスター MT−03型(柴田科学(株)製)をそのマニュアルに定められている標準条件で使用するようにセットした。このテスターの粉じん濃度センサーを簡易マスクの内部と外部とにセットし、被験者A,Bに「あ、い、う、え、お……わ、ゐ、う、ゑ、を、ん」の五十音のすべてを約30秒かけて大きな声で発声させた。その30秒の間に簡易マスク外部の粉じん濃度に対する簡易マスク内部の粉じん濃度の割合(%)を求め、その割合を漏れ率とした。
【0033】
また、発声終了後には、顔面における簡易マスクの位置を点検して発声開始前の顔面における位置と比較し、位置の変化が明瞭ではない場合には、簡易マスクにずれがないと判断し、位置の変化が明瞭である場合には、簡易マスクにずれがあると判定し、漏れ率とずれの有無との関係、ずれの有無と被覆部の形状との関係、ずれの有無と接合線の幅との関係、ずれの有無と切り欠き部の数との関係を確認した。
【0034】
(実施例1)
実施例1の簡易マスクでは、被覆部として上下、幅、深さの寸法が120×135×42mmのものを使用した。被覆部には、外面から内面に向かってプレフィルタであるポリエステル繊維の不織布、メインフィルタであるポリプロピレン繊維の不織布、保形ネットであって網の目の大きさが約3×3mmであるポリエチレン製ネットを重ね合わせて使用した。接顔用パッドには厚さ2.5mmの発泡ポリエチレンシートとレーヨン繊維の不織布とのラミネートシートを採用して、不織布が肌に対する接触面となるようにして使用した。被覆部の側面形状には「形状A」を採用し、周縁部の接合線には「接合線a」を採用した。接顔用パッドの切り欠き部は、縦方向中心線の両側それぞれの二箇所に設けた。そのときの接顔用パッドにおける切り欠き部のレイアウトは、表1に記載のとおりである。
【0035】
実施例1についての伸長に要する力、漏れ率、ずれの測定・観察結果は、表1に記載のとおりである。
【0036】
(実施例2)
実施例2の簡易マスクは、接顔用パッドにおける切り欠き部のレイアウトが実施例1のレイアウトと異なることを除けば、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0037】
(実施例3)
実施例3の簡易マスクは、接顔用パッドにおける切り欠き部のレイアウトが実施例1,2のレイアウトと異なることを除けば実施例1の簡易マスクに同じである。
【0038】
(実施例4)
実施例4の簡易マスクは、接顔用パッドの六箇所に切り欠き部が形成されていることを除けば、実施例1の簡易マスクに同じである。
【比較例】
【0039】
以下に示す複数の比較例の簡易マスクを作成し、実施例の簡易マスクと同様に測定・観察した結果は、表2,3に記載のとおりである。
【0040】
(比較例1)
接顔用パッドに切り欠き部が形成されていないことを除くと、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0041】
(比較例2)
接顔用パッドの二箇所に切り欠き部が形成されていることを除くと、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0042】
(比較例3)
被覆部の寸法が115×125×42mmであり、接合線が「接合線b」であり、接顔用パッドには切り欠き部が形成されていないことを除くと、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0043】
(比較例4)
接顔用パッドの二箇所に切り欠き部が形成されていることを除くと、比較例3の簡易マスクに同じである。
【0044】
(比較例5)
接顔用パッドの四箇所に切り欠き部が形成されていることを除くと、比較例3の簡易マスクに同じである。
【0045】
(比較例6)
接顔用パッドの六箇所に切り欠き部が形成されていることを除くと、比較例3の簡易マスクに同じである。
【0046】
(比較例7)
被覆部の寸法が115×125×42mmであり、側面形状が「形状B」であり、接合線が「接合線b」であり、接顔用パッドに切り欠き部が形成されていないことを除くと、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0047】
(比較例8)
接合パッドの四箇所に切り欠き部が形成されていることを除くと、比較例7の簡易マスクに同じである。
【0048】
(比較例9)
側面形状が「形状B」であり、接顔用パッドに切り欠き部が形成されていないことを除くと、実施例1の簡易マスクに同じである。
【0049】
(比較例10)
被覆部の寸法が127×130×60mmであって、被覆部の側面形状が「形状B」であり、接合線が「接合線b」の態様にある市販の簡易マスクである。
【0050】
(比較例11)
被覆部の寸法が115×155×60mmであり、接合線が「接合線b」の態様にあって、接顔用パッドには切り欠き部が形成されていない市販の簡易マスクである。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【符号の説明】
【0054】
1 簡易マスク
2 被覆部
3 着用手段(締め紐)
6 内面
7 外面
8 周縁部
11 接顔用パッド
12 外周縁部
13 内周縁部
21,21 切り欠き部
22,22 切り欠き部
A 上下方向
B 幅方向
C 前後方向
CL 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク着用者の口部と鼻部とを覆うことが可能であってカップ状に形成されている通気性の被覆部と、前記被覆部から延びていて前記着用者の頭部、頸部、耳部のいずれかに掛け回すことのできる着用手段とを有し、前記被覆部は前記着用者の顔面と向かい合う内面とその反対面である外面とを含み、前記被覆部の周縁部分における前記内面には前記周縁部分に沿って環状に延びていて外周縁部と内周縁部とを有する接顔用パッドの前記外周縁部が取り付けられ、前記被覆部が前記顔面の上下に一致させる上下方向と、前記上下方向に直交して前記鼻部を横切る横方向と、前記上下方向と前記横方向とに直交する前後方向とを有する簡易マスクであって、
前記被覆部は熱可塑性合成繊維で形成された不織布の複数枚を含み、前記パッドは柔軟にして弾性変形可能なものであり、
前記被覆部と前記パッドとは、前記周縁部分の縁からの距離が2mmまでの範囲内において接合していて、前記マスクを側方から見たときの前記周縁部分が、前記着用者の鼻梁部に向けられる第1部分と顎部に向けられる第2部分とにおいて前記顔面に向かって凹となるようにくぼみ、
前記パッドには、前記被覆部を前記横方向において二等分する縦方向中心線の両側それぞれに、前記内周縁部から前記外周縁部に向かって延びる長さが5〜20mmである前記パッドに対しての切り欠き部が前記上下方向において互いに離間した状態で複数形成されていることを特徴とする前記マスク。
【請求項2】
前記両側それぞれに形成されている前記切り欠き部の数が2または3である請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記上下方向を水平方向に向けた状態の前記マスクを前記第1部分と前記第2部分とにおいて把持し、前記水平方向へ200mm/minの速度で10mm伸長するときに要する力が、0.2kgfを越えることのない請求項1または2記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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