説明

簡易入浴装置

【課題】 排水時に通常は、排水口の排水蓋をモータにより開閉し、電動系統の故障又は停電時に排水蓋が閉じている場合には手動にて容易に排水することができる身体障害者及び被介護者等のための簡易入浴装置とすること。
【解決手段】浴槽本体部11と浴槽開閉部12とからなる浴槽体1を備えた簡易入浴機の排水機構部において、排水開口22の開閉を上下動によって行う排水蓋3と、該排水蓋3の下方に当接して上下動させる手動ロッド部4と,該手動ロッド部4を操作する手動操作部5とからなる手動伝達系統Aが具備されること。前記排水蓋3の下方に当接して上下動させる電動ロッド部6と、該電動ロッド部6を操作する電動操作部7とからなる電動伝達系統Bが具備されること。前記手動伝達系統Aと前記電動伝達系統Bとは、前記排水蓋3を、それぞれ独立して開けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水時に通常は、排水口の排水蓋をモータにより開閉し、電動系統の故障又は停電時に排水蓋が閉じている場合には手動にて容易に排水することができる身体障害者及び被介護者等のための簡易入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身障者、老人等の被介護者のための介護専用の入浴設備として、種々の簡易浴槽が存在している。この種の簡易浴槽は、一般家庭の入浴設備とは異なり、浴水が給排水可能な場所であれば、容易に設置することが可能である。しかし、簡易浴槽に入浴者が入って入浴しているときに、停電した場合、入浴者が簡易浴槽から出ようとする場合に、簡易浴槽の扉が開かなくては、入浴者が浴槽から出てゆくことができない。
【0003】
そのために、浴槽内の湯(浴水)は、確実に排水されなければならない。また、簡易浴槽は、一つのバスユニット内に種々の機能が詰め込まれており、重量が極めて重いものとなっている。このため、浴水が十分に満たされた状態では、総重量が極めて重くなり、浴槽の設置位置を変更するためには、やはり浴槽は排水が確実に行われなければならない。
【特許文献1】特開平11−324053号
【特許文献2】特開2000−213032
【特許文献3】特開2000−73426
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至3には、浴槽の排水口における排水蓋の開閉を遠隔操作する機構が開示されている。特許文献1及び特許文献2では、レリースワイヤを介して遠隔操作する排水蓋の開閉装置が開示されたものであり、特許文献3にはレリースワイヤを電動及び手動の両手段によって行うものが開示されている。すなわち、排水栓の裏面側には、前記レリースワイヤが接続されており、該レリースワイヤが排水蓋を押し上げる構造となっている。
【0005】
さらに、特許文献3では、排水口の排水蓋の開閉を電動及び手動の両方の手段を使用できるものであり、手動による排水蓋の開閉手段は、停電時又は電気系統の故障によって、電動制御による排水蓋の開閉が不可能となった場合に、手動による手段にて排水を行うことができるものである。しかし、特許文献3では、電動及び手動の両手段も共に共通の1本のレリースワイヤが排水蓋(排水栓)に連結されたものであり、該レリースワイヤがモータ等に直結されている場合には、停電時におけるモータの停止位置によっては、手動による排水栓を上下に動作させることが行い難くなることも十分にあり得る。
【0006】
このように排水蓋を上下動させる伝達系統が一つのみで、1本のみのレリースワイヤに支障が生じて移動ができなくなると、電動のみでなく手動によっても、排水栓への開閉動作伝達ができなくなるおそれが十分にある。本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的)は、介護専用入浴設備の簡易浴槽において、排水の排水蓋が閉じている場合に、排水蓋を開ける動作を、電動が故障した場合でも手動にて行うことができ、且つその構造を簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明を、浴槽本体部と浴槽開閉部とからなる浴槽体を備えた簡易入浴機の排水機構部において、排水開口の開閉を上下動によって行う排水蓋と、該排水蓋の下方に当接して上下動させる手動ロッド部と,該手動ロッド部を操作する手動操作部とからなる手動伝達系統と、前記排水蓋の下方に当接して上下動させる電動ロッド部と、該電動ロッド部を操作する電動操作部とからなる電動伝達系統とが具備され、前記手動伝達系統と前記電動伝達系統とは、前記排水蓋が閉じた状態から、それぞれ独立して前記排水蓋を開けることを可能としてなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、前述の構成において、前記手動ロッド部は、軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が前記手動操作部にて上下動され、前記電動ロッド部は軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が電動操作部によって上下動されてなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3の発明を、前述の構成において、前記手動操作部と、前記手動ロッド部との間には、軸方向中間位置を揺動中心として揺動する手動リンクが設けられ、該手動リンクの軸方向一端部が前記手動ロッド部の他端側に連接され、該手動ロッド部の他端側が前記手動操作部にて上下動してなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、前述の構成において、前記電動操作部は、モータによって前記電動ロッド部が上下動してなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項5の発明を、前述の構成において、前記電動操作部は、ソレノイド機構部によって前記電動ロッド部が上下動してなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、前述の構成において、前記手動操作部のノブハンドル部と電動操作部のスイッチ部は、前記浴槽体の浴槽上部に設けられてなる簡易入浴装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によって、排水開口の開閉を上下動によって行う排水蓋と、該排水蓋の下方に当接して上下動させる手動ロッド部と,該手動ロッド部を操作する手動操作部とからなる手動伝達系統と、前記排水蓋の下方に当接して上下動させる電動ロッド部と、該電動ロッド部を操作する電動操作部とからなる電動伝達系統とを具備したものである。
【0012】
すなわち、前記手動ロッド部及び電動ロッド部は、それぞれの個別に排水蓋の下方に当接しているのみであり、手動伝達系統と電動伝達系統において共有する部品は存在しない。これによって、手動伝達系統によって排水蓋を上昇させて排水開口を開く作業と、電動伝達系統によって前記排水蓋を上昇させて排水開口を開く作業は、完全に独立して操作することができる。そのために、通常では電動伝達系統によって排水蓋を上昇させて排水開口を開ける場合に、停電によって電動伝達系統が停止し、排水蓋が閉じた状態で、電動ロッド部による排水蓋の上昇が不可能となっても、前記手動伝達系統の手動操作部の動作のみで排水蓋を上昇させることができる。
【0013】
そして、排水開口を開いて排水することができ、停電又は電動伝達系統の動力源等のみならず、その部品に損傷が生じても、該電動伝達系統とは全く異なる手動伝達系統によって、排水蓋を開ける動作を確実に行うことができる。このように、本発明では、前記手動伝達系統と電動伝達系統とは共有する構成部品は存在せず、排水蓋を開ける動作においては、手動伝達系統と電動伝達系統とが相互に干渉することなく、それぞれが独立して操作することができる。手動伝達系統による排水蓋の開きが確実に行われ、停電又は故障によって、電動伝達系統が使用できなくとも、手動伝達系統によって浴槽体の排水を簡単且つ確実にすることができる。
【0014】
請求項2の発明によって、前記手動ロッド部は、軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が前記手動操作部にて上下動され、前記電動ロッド部は軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が電動操作部によって上下動されてなる構造としたので、手動伝達系統の手動ロッド部の揺動動作を安定させることができ、また電動伝達系統においても電動ロッド部の揺動動作を安定させることができ、極めて簡易な構造にて、排水蓋の良好な開閉動作を得ることができる。
【0015】
請求項3の発明によって、前記電動リンクの長手方向の長さ分だけ、前記手動ロッド部の長手方向の長さを短くすることができ、これによって該手動操作部5は、揺動の上下振幅を大きく設定することができ、浴槽体の限られたスペース内に手動ロッド部の装着スペースを確保することができ、ひいては手動ロッド部の浴槽体内部への設置箇所における省スペース化によって、浴槽体の小型化を実現できるものである。
【0016】
請求項4の発明によって、前記電動操作部は、モータによって前記電動ロッド部が上下動(揺動)し、安定した動力を供給できる。請求項5の発明によって、前記電動操作部は、ソレノイド機構部によって前記電動ロッド部が上下動(揺動)する構造としたので、ソレノイド機構部によって、動力源の小型化及び省スペース化を実現することができ、ひいては浴槽体の小型化を実現することができる。
【0017】
請求項6の発明によって、前記手動操作部のノブハンドル部と電動操作部のスイッチ部は、前記浴槽体の浴槽上部に設けられることによって、通常の電動伝達系統によるスイッチ部の操作、或いは停電時におけるノブハンドル部の操作を入浴者に負担をかけずに容易に操作することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。浴槽体1は、図1(A),図6に示すように、主に浴槽本体部11と浴槽開閉部12とから構成され、その浴槽本体部11と浴槽開閉部12とで浴槽体1が構成される。その浴槽本体部11と浴槽開閉部12によって、入浴者が入る浴槽室部13が形成されている。前記浴槽本体部11の形状は、略立方体又は略直方体等で且つ開口が形成され、カプセル或いは繭形等の筐体形状に形成されたものである。そして、前記浴槽本体部11の上方に位置する開口部が上面開口部11aとなり、正面側に位置する開口部が出入り口部11bとなる。該出入り口部11bは、入浴者が浴槽体1の浴槽室部13内に出入りするための開口となり、前記浴槽開閉部12を浴槽本体部11に閉じることで浴槽室部13は水密性が保たれる(図8参照)。
【0019】
その浴槽本体部11と浴槽開閉部12とは、合成樹脂で形成されており、それぞれが成形型によって一体成形品として形成される。浴槽本体部11と浴槽開閉部12とが開閉する構成となっており、その開閉構造は、前記浴槽本体部11に前記浴槽開閉部12が枢支連結されて、スイングする扉状構造である〔図1(A)参照〕。また、図示しないが、前記浴槽本体部11と前記浴槽開閉部12とが完全に分離する構造とした実施形態も存在する。前記浴槽本体部11の内部には座席部14が形成されている〔図1(A)参照〕。
【0020】
排水機構は、図1(B),図2に示すように、排水口筐体2,排水蓋3,手動伝達系統A,電動伝達系統Bから構成されている。そして、前記排水機構は、図1(A),図8に示すように、前記浴槽体1の底面部15に装着されている。また、前記排水機構は、浴槽体1の浴槽本体部11又は浴槽開閉部12のいずれかに設置される。前記排水口筐体2は、図1(B),図2及び図3に示すように、排水室21,排水開口22,手動伝達ケーシング部23,電動伝達ケーシング部24及び排出管部25から構成されている。さらに、前記排水開口22には、フィルタ26が装着されている。
【0021】
前記排水室21は、その外形は、略円筒状のケーシングで、内部は略円筒状の部屋となっている。その直径方向の中心位置には、ガイド軸21aが形成されている。該ガイド軸21aは、前記排水蓋3を上下方向に案内する役目をなす(図4参照)。また前記ガイド軸21aは、略柱形状に形成されたものであり、後述する手動ロッド部4及び電動ロッド部6等と干渉しないように形成されている〔図1(B)参照〕。前記排水室21の上方には、排水開口22が形成されており、該排水開口22より排水室21に浴槽体1の浴水が流れ込むようになっている。前記排水開口22の周囲にはフランジ部21bが形成され、該フランジ部21bが浴槽本体部11の底面部15に配置される〔図1(A)参照〕。
【0022】
前記手動伝達ケーシング部23は、前記排水室21の側面部から外方に突出するように形成されたものであって、手動伝達系統Aの手動ロッド部4が装着される部位である。前記手動伝達ケーシング部23の内部には、接合部23a及び被覆部23bから構成されている(図4参照)。前記接合部23a及び被覆部23bは共に、管形状に形成されており、前記接合部23aが排水室21の室内に連通するように接合固着される〔図4(B)参照〕。そして、前記接合部23aに被覆部23bが被せられて、前記接合部23aと被覆部23bとの間に、後述する手動ロッド部4の揺動中心部42を回動自在に支持する軸支部23cが形成される〔図4(A)参照〕。該軸支部23cは空隙部として形成されている。また前記接合部23aと前記被覆部23bとは、ネジ接合による接合手段が用いられる。
【0023】
前記電動伝達ケーシング部24は、前記手動伝達ケーシング部23と略同様に、前記排水室21の側面部から外方に突出するように形成されたものであって、電動伝達系統Bの電動ロッド部6が装着される部位である。前記電動伝達ケーシング部24の内部には、接合部24a及び被覆部24bから構成されている(図5参照)。前記接合部24a及び被覆部24bは共に、管形状に形成されており、前記接合部24aが排水室21の室内に連通するように接合固着される。そして、前記接合部24aに被覆部24bが被せられて、前記接合部24aと被覆部24bとの間に、後述する電動ロッド部6の揺動中心部62を回動自在に支持する軸支部24cが形成される。該軸支部24cは空隙部として形成されている。また前記接合部24aと前記被覆部24bとは、ネジ接合による接合手段が用いられる。
【0024】
排水蓋3は、図2,図4(B)に示すように、略円板形状をなしており、裏面側より、後述する手動ロッド部4又は電動ロッド部6が当接する構成となっている。さらに具体的には、前記排水蓋3の蓋板部31の裏面側に被ガイド筒状部32が形成されている。該被ガイド筒状部32には軸方向に沿って被ガイド穴32aが形成されている。そして、該被ガイド穴32aには、図4(A),(B)に示すように、前記ガイド軸21aが挿入され、排水蓋3は、前記ガイド軸21aによって、上下方向に移動することができる。また、手動ロッド部4及び電動ロッド部6が、前記排水蓋3の裏面側に当接する状態とは、前記被ガイド筒状部32の下端面に当接することとなる。
【0025】
前記手動伝達系統Aは、図1(B),図3(A),(B)に示すように、後述する手動操作部5の手動操作によって、前記排水蓋3を前記排水開口22にて上に移動させて、排水開口22における開動作を行わせるものであって、手動ロッド部4及び手動操作部5とから構成されている〔図3(A)参照〕。前記手動ロッド部4は、軸体41の軸方向の略中央箇所に揺動中心部42が形成され〔図3(A),(B)参照〕、該揺動中心部42が前記手動伝達ケーシング部23内に収められ、軸方向一端を手動作用端部41aとして、前記排水蓋3の裏面に当接して、手動ロッド部4が揺動中心部42を中心にして揺動する〔図1,図3(A),(B)参照〕。また、前記軸体41の軸方向他端側を被伝達端部41bとして、後述する手動操作部5に接続されている。前記揺動中心部42は、具体的には、図2,図3(A),(B)に示すように球体として形成されたものであり、可能な限り真球に近いものが好ましい。
【0026】
前記手動ロッド部4は、前記手動作用端部41a側を前記接合部23aから前記排水室21内部のガイド軸21a付近に遊挿状態で挿入し、該揺動中心部42が軸支部23cに支持されるようにして、前記接合部23aに被覆部23bが被覆される。このとき、前記手動ロッド部4の揺動中心部42は、軸支部23c内にてシール材等を介して水密状に構成される。手動ロッド部4は、前記揺動中心部42を揺動中心として揺動することができ、排水室21内にて前記手動作用端部41aは上下動する。
【0027】
手動操作部5は、図3(A),(C)に示すように、手動操作ノブ51,手動連結部52とから構成される。前記手動操作ノブ51は、ノブハンドル部51aと、ノブベース部51bとから構成されている。該ノブベース部51bは内部に摺動孔が形成され、前記ノブハンドル部51aがノブベース部51bに対して上下方向に移動操作できるようになっている〔図3(C)参照〕。前記ノブベース部51bは、浴槽体1の浴槽上部16に設置され、ノブハンドル部51aによる排水蓋3の開操作を浴槽体1の上部から操作することができる。前記浴槽上部16は、浴槽体1の上方位置に形成された水平状の段差部であり、種々の操作スイッチが配置されている。手動連結部52は、連結材52aの両側にジョイント部材52bが装着されたものである。前記連結材52aとしては、ワイヤが使用される。ワイヤ(連結材52a)は、フレキシブルな金属製のものが強度及び耐久性等の点から好ましい。
【0028】
また、前記手動ロッド部4と前記手動連結部52との間には手動リンク53が設けられている。該手動リンク53は、長手方向の中間領域(中間及びその近傍)に揺動中心部53aが形成され、手動リンク53の長手方向一端側が前記手動ロッド部4の被伝達端部41bに連結されている。具体的には、手動ロッド部4の被伝達端部41bに長孔41cが形成され、前記手動リンク53にはピン53bが形成され、ピン53bが前記長孔41cに対して摺動自在に接合されている。そして、前記手動リンク53は、前記手動連結部52のジョイント部材52bに連結されている〔図2、図3(A)参照〕。また、前記図6は、手動伝達系統Aの別の実施形態であり、前記手動リンク53が存在しない実施形態で、手動ロッド部4と手動操作部5とを直接、接続した実施形態である。
【0029】
前記電動伝達系統Bは、図1(B),図5に示すように、電動操作部7の電動操作によって、前記排水蓋3を前記排水開口22にて上に移動させて、排水開口22における開動作を行わせるものであって、電動ロッド部6及び電動操作部7とから構成されている〔図1(A),図5参照〕。前記電動ロッド部6は、軸体61の軸方向の略中央箇所に揺動中心部62が形成され(図5参照)、該揺動中心部62が前記電動伝達ケーシング部24内に収められ、軸方向一端を電動作用端部61aとして、前記排水蓋3の裏面に当接して、電動ロッド部6が揺動中心部62を中心にして揺動する。また、前記軸体61の軸方向他端側を被伝達端部61bとして、後述する電動操作部7に接続されている。前記揺動中心部62は、具体的には、図2,図5等に示すように、球体として形成されたものであり、可能な限り真球に近いものが好ましい。
【0030】
前記電動ロッド部6は、前記電動作用端部61a側を前記接合部24aから前記排水室21内部のガイド軸21a付近に遊挿状態で挿入し、該揺動中心部62が軸支部24cに支持されるようにして、前記接合部24aに被覆部24bが被覆される。このとき、前記電動ロッド部6の揺動中心部62は、軸支部24c内にてシール材等を介して水密状に構成される。電動ロッド部6は、前記揺動中心部62を揺動中心として揺動することができ、排水室21内にて前記電動作用端部61aは上下動する。
【0031】
前記電動伝達系統Bは、前記手動伝達系統Aと同様に前記排水蓋3を前記排水開口22にて上に移動させて、排水開口22における開動作を行わせるものであるが、前記手動伝達系統Aとは、全て別の部材から構成されたものである。電動伝達系統Bは、電動ロッド部6及び電動操作部7とから構成されている。前記電動ロッド部6は、軸体61の軸方向の略中央箇所に揺動中心部62が形成され、該揺動中心部62が前記電動伝達ケーシング部24内に収められ、軸方向一端を電動作用端部61aとして、前記排水蓋3の裏面に当接して、電動ロッド部6が揺動中心部62を中心にして揺動する。
【0032】
また、前記軸体61の軸方向他端側を被伝達端部61bとして、後述する電動操作部7に接続されている。前記手動ロッド部4の手動作用端部41a及び電動ロッド部6の電動作用端部61aが前記排水蓋3に形成された被ガイド筒状部32の下端面に当接しており、前記手動ロッド部4の手動作用端部41a又は電動ロッド部6の電動作用端部61aが前記被ガイド筒状部32の下端面を介して押し上げる構造となっている。排水蓋3は、手動作用端部41a、電動作用端部61aが共に下降している時に、自重にて下降し排水開口22を閉じる。
【0033】
該電動操作部7は、電動機部71,電動連結部72,電動リンク73及び電動スイッチ部74とから構成される。前記電動機部71は、具体的にはモータ71aが使用される。該電動機部71の駆動軸には、電動連結部72が装着されている。該電動連結部72は、前記駆動軸が固着される回転中心部から離れて偏心した位置に枢支ピン72aが装着されたものである。電動リンク73は、軸方向一端が枢支ピン72aと枢支連結され、他端が前記電動ロッド部6の被伝達端部61bと枢支連結している。
【0034】
そして、前記電動機部71が始動して駆動軸が回転することによって、前記電動連結部72,前記電動リンク73から電動ロッド部6に動作伝達が行われ、電動ロッド部6が揺動動作を行い、前記排水蓋3を上昇させ、排水開口22の開動作を行うものである。図7は、電動伝達系統Bの別の実施形態であり、電動操作部7における動力源としてソレノイド機構部71bが使用されたものである。このソレノイド機構部71bは、通電すると、該ソレノイド機構部71bに向かって電動連結部72が上下動し、電動ロッド部6を揺動させる。前記電動機部71の始動,停止は、電動スイッチ部74によって行われ、該電動スイッチ部74は、浴槽体1の上部に防水タイプのスイッチとして装着されている。
【0035】
本発明では、排水開口22における排水蓋3の開閉は、通常は電動伝達系統Bにおいて電動によって操作する。電動伝達系統Bの電動機部71の始動,停止は、電動スイッチ部74によって行われる。電動スイッチ部74は、浴槽体1の浴槽上部16に形成された平坦状の段差面部に装着され、オンオフ動作を行い易いものとなっている。そして、浴槽体1に十分に浴水が満たされた状態で入浴を終了しようとするときに、停電又は電動伝達系統Bの故障が発生したときには、手動伝達系統Aにおける手動操作部5によって、排水蓋3を開いて、排水開口22より排水を行うものである。排水開口22より排水された浴水は、排水室21を通して、排出管部25から浴槽体1の外部に排出する。
【0036】
本発明は、手動伝達系統Aは、手動ロッド部4,手動操作部5とからなり、電動伝達系統Bは電動ロッド部6,電動操作部7とから構成され、手動伝達系統Aと電動伝達系統Bにおいて共有する部品は存在しない。これによって、手動伝達系統Aによって排水蓋3を上昇させて排水開口22を開く作業と、電動伝達系統Bによって前記排水蓋3を上昇させて排水開口22を開く作業は、完全に独立して操作することができる。そのために、通常では電動伝達系統Bによって排水蓋3を上昇させて排水開口22の開動作を行う場合に、停電によって電動伝達系統Bが停止し、排水開口22が閉じた状態で電動ロッド部6による排水蓋3の上昇が不可能となっても、前記手動伝達系統Aの手動操作部5の操作のみで排水蓋3を開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(A)は本発明を装着した浴槽体の斜視図、(B)は手動伝達系統及び電動伝達系統による排水室箇所の一部断面にした構成図である。
【図2】手動伝達系統及び電動伝達系統による排水室箇所の一部断面にした斜視図である。
【図3】(A)は手動伝達系統において閉じた状態の縦断側面図、(B)は手動伝達系統において開いた状態の縦断側面図、(C)は電動伝達系統の要部拡大断面図である。
【図4】(A)は排水室箇所の拡大断面図、(B)は排水室箇所の分解図である。
【図5】電動伝達系統の構成を示す拡大断面図である。
【図6】手動伝達系統の別の実施形態の構成図である。
【図7】電動伝達系統の別の実施形態の構成図である。
【図8】浴槽体の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…浴槽体、11…浴槽本体部、12…浴槽開閉部、22…排水開口、3…排水蓋、
A…手動伝達系統、4…手動ロッド部、42…揺動中心部、5…手動操作部、
51a…ノブハンドル、53…手動リンク、B…電動伝達系統、6…電動ロッド部、
62…揺動中心部、7…電動操作部、71a…モータ、72…ソレノイド機構部、
74…スイッチ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体部と浴槽開閉部とからなる浴槽体を備えた簡易入浴機の排水機構部において、排水開口の開閉を上下動によって行う排水蓋と、該排水蓋の下方に当接して上下動させる手動ロッド部と,該手動ロッド部を操作する手動操作部とからなる手動伝達系統と、前記排水蓋の下方に当接して上下動させる電動ロッド部と、該電動ロッド部を操作する電動操作部とからなる電動伝達系統とが具備され、前記手動伝達系統と前記電動伝達系統とは、前記排水蓋を、それぞれ独立して開けることを特徴とする簡易入浴装置。
【請求項2】
請求項1において、前記手動ロッド部は、軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が前記手動操作部にて上下動され、前記電動ロッド部は軸方向中間位置を揺動中心部として揺動し,軸方向一端部にて前記排水蓋の下方側に当接すると共に軸方向他端が電動操作部によって上下動されてなることを特徴とする簡易入浴装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記手動操作部と、前記手動ロッド部との間には、軸方向中間位置を揺動中心として揺動する手動リンクが設けられ、該手動リンクの軸方向一端部が前記手動ロッド部の他端側に連接され、該手動ロッド部の他端側が前記手動操作部にて上下動してなることを特徴とする簡易入浴装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記電動操作部は、モータによって前記電動ロッド部が上下動してなることを特徴とする簡易入浴装置。
【請求項5】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記電動操作部は、ソレノイド機構部によって前記電動ロッド部が上下動してなることを特徴とする簡易入浴装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記手動操作部のノブハンドル部と電動操作部のスイッチ部は、前記浴槽体の浴槽上部に設けられてなることを特徴とする簡易入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−57728(P2009−57728A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224897(P2007−224897)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】