説明

簡易防食装置

【課題】 管路等で防食すべき鋼材に簡単に取り付けることができる簡易防食装置を提供する。
【解決手段】 水に接触している鋼材11を、陽極材15を用いて防食するための簡易防食装置であり、鋼材11に挟んで取り付けるべく取付金具13を細長コ字状に形成し、その取付金具13の内面に切り起こし爪17を形成し、取付金具13に直接又はリード線14を介して陽極材15を電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を加工してなる立金物、ケーブル支持架台、ケーブル受棚、梯子などの腐食を防止する簡易防食装置に係り、特に犠牲防食のための陽極を鋼材に簡単に取り付けることができる簡易防食装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管路・洞道・マンホール(以下管路等という)には、多数の電力ケーブルが敷設されている。この管路等内は、水没している場合があることから電力ケーブル等を支持する鋼製の地中線用立金物などの鋼材を防食する必要がある。通常地中線用立金物などの鋼材の防食には亜鉛メッキや塗装が施されてはいるが、メッキ層や塗膜に局所的に傷があると、そこから局所的に腐食が進行する。局所的腐食でも部分補修ができない場合は、健全部もふくめ、全体的に取替を実施せざるを得ない。この場合、被支持物の仮吊りなど仮設工事が必要となり、管路等内の環境によっては、電気供給を一時中断する線路停止を伴う場合もあり制約も多い。
【0003】
現場メッキは大規模機器を必要とすること、周囲養生を必要とすることから容易には実施不可能である。
【0004】
また塗装による補修は、周囲の水を除去、乾燥、ケレン(錆落とし)、下塗りの準備工程が必要となることや衛生換気が必要となることから管路等環境では適さない。
【0005】
従来、特許文献1〜4に示されるように鋼材の防食には、その鋼材より卑なる犠牲電極を水中に配し、その犠牲電極と鋼材とを電気的に接続し、犠牲電極と鋼材間に防食電流を流すようにしている。
【0006】
図8は、マンホール40内における立金物41の電気防食装置42を示したものであり、水中wに陽極材43を水没するように設け、その陽極材43にリード線44を接続し、そのリード線44を水面上の立金物41に接続し、さらに立金物41をボンド線45にて相互に接続し、陽極材43から各立金物41へ防食電流が流れるようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開昭53−137839号公報
【特許文献2】特公昭57−53871号公報
【特許文献3】特開昭58−6979号公報
【特許文献4】実公昭63−15331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マンホール40は、水没している場合もあり、その場合は、防食しなければならない対象面積が大きくなる。よって防食面積が大きいと、これを補償するためには、陽極材43も大きいものが必要となり、設置スペース、運搬・搬入の問題が生じる。
【0009】
従って、陽極材は、小さなものを分散し、各立金物41毎に取り付けることが好ましいが、分散して取り付けるには、多大な労力を要する問題がある。
【0010】
本発明の目的は、管路等で防食すべき鋼材に簡単に取り付けることができる簡易防食装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具に陽極材を電気的に接続した簡易防食装置である。
【0012】
請求項2の発明は、水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具にリード線を介して陽極材を接続した簡易防食装置である。
【0013】
請求項3の発明は、先端にコ字状の支持部材を備えた治具を形成し、その治具の支持部材に取付金具を収容し、その治具で取付金具を鋼材に押し込んで、鋼材に取付金具を取り付けた請求項1又は2記載の簡易防食装置である。
【0014】
請求項4の発明は、水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具の後方に陽極材を一体に取り付けた簡易防食装置である。
【0015】
請求項5の発明は、陽極材は心金を有し、その心金を陽極材から突出させると共にネジ部を形成し、その心金のネジ部を取付金具にボルト締めして陽極材を取り付けた請求項4記載の簡易防食装置である。
【0016】
請求項6の発明は、取付金具の後方に心金を取り付け、その心金の周囲に陽極材を鋳込んで設けた請求項4記載の簡易防食装置である。
【0017】
請求項7の発明は、取付金具の内面に鋼材と接する切り起こし爪を多数形成した請求項1〜6いずれかに記載の簡易防食装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、陽極材と電気的に接続された取付金具を細長コ字状に形成し、これを鋼材を挟むように押し込むことで、簡単に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0020】
図1〜図6は、簡易防食装置の一実施の形態を示し、図1は使用状態を示す正面図、図2は図1のA−A線矢視図、図3は陽極の詳細図、図4は取付金具の詳細図、図5は取付金具を鋼材に取り付けるための治具の詳細図を示したものである。
【0021】
図1において、11は、マンホールや洞道などの管路等10内で起立して設けられた鋼材(この例では立金物)で、その全体或いは下部が水中wに没した状態にあり、図には示していないが鋼材11にて棚が支持され、その棚上に電力ケーブル等が敷設されている。
【0022】
本発明の簡易防食装置12は、鋼材11を挟んで差し込むことで取り付ける取付金具13と、その取付金具13にリード線14を介して電気的に接続される陽極材15とからなる。
【0023】
取付金具13は、図4(a)、図4(b)に示すように、ステンレス鋼で形成された細長コ字状の取付金具本体16の内面に複数個の切り起こし爪17が形成され、取付金具本体16の上縁にリード線14をボルト止めするためのボルト穴18が形成されて構成される。
【0024】
取付金具本体16は、鋼材11を挟むように延びる一対の挟持片19,19とその挟持片19,19の後端を連結する連結片20からなり、挟持片19,19の間隔が先端に行くに従って狭くなるよう、またその先端部19a、19aは鋼材11に差し込みが容易になるように外側に開かれた形状にされる。
【0025】
挟持片19,19には、例えば図示のようにコ字状に切り込こまれ、その切り込まれた片が斜め後方に起立するようにされて切り起こし爪17が形成される。この切り起こし爪17は、挟持片19,19で対称に設けられる。
【0026】
一方の挟持片19の上縁には、折り曲げ片21が形成され、その折り曲げ片21にボルト穴18が穿設される。
【0027】
図3に示すように、陽極材15は、マグネシウムからなり、図には示していないが中心に心金を有する。この陽極材15にはリード線14が接続される。リード線14は、導線に絶縁材が被覆されてなり、リード線14の陽極材15との接続部には、リード線14内の導体に水が浸入しないように熱収縮チューブ14aが被覆される。またリード線14の先端には、圧着端子22が設けられる。
【0028】
このリード線14の圧着端子22を取付金具13のボルト穴18にボルト止め23して、取付金具13をリード線14を介して陽極材15と一体に接続しておく。
【0029】
図5は、取付金具13を鋼材11に差し込むための治具24を示したもので、図において、ハンドル25に支持棒26が設けられ、その支持棒26の先端にコ字状の支持部材27が設けられ、その支持部材27の底部の基端部に支持片28が設けられて治具24が構成される。
【0030】
鋼材11への取付金具13の取付は、取付金具13を治具24の支持部材27内に嵌め込んだ状態で、ハンドル25を両手で持ちながら、取付金具13を、水面上の鋼材11を挟むようにして押し込むことで取り付ける。
【0031】
これにより取付金具13の切り起こし爪17が図2に示すように鋼材11に接触すると共に、挟持片19,19の弾性力により、取付金具13を鋼材11に取り付けることができ、また陽極材15は、水中wに没するようにすることで、その鋼材11を防食することができる。
【0032】
このように本発明の簡易防食装置12は、鋼材11に取付金具13を差し込んで取り付けるだけで簡単に取り付けることができ、また陽極材15も200g以下の小さなものですむため、取付作業を簡単に行うことができる。
【0033】
図6(a)、図6(b)は、本発明の他の実施の形態を示したものである。
【0034】
本実施の形態においては、リード線14を用いずに取付金具13に直接陽極材15を取り付けるようにしたものである。すなわち、陽極材15に設けられている心金30の先端にネジ部31を形成し、その取付金具13の連結片20にネジ部31を挿通する穴32を形成し、その穴32にネジ部31を通した後、ナット33をねじ込んでボルト止めすることで、取付金具13と陽極材15とを一体化することができ、これにより治具を用いずに陽極材15を手で握って、水中wに位置した鋼材11に差し込めば、図6(b)のように取り付けることが可能となる。
【0035】
図7(a)、図7(b)は、本発明のさらに他の実施の形態を示したものである。
【0036】
本実施の形態においては、図6のように陽極材をボルト締めする代わりに、取付金具13の連結片20に心金30を溶接し、その心金30の周りに陽極材15を鋳込んで一体としたものである。
【0037】
この図7の実施の形態でも、図6と同様に陽極材15を手で握って、水中wに位置した鋼材11に差し込めば、図7(b)のように取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】陽極の詳細図である。
【図4】取付金具の詳細図である。
【図5】図1の取付金具を鋼材に取り付けるための治具の詳細図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態を示す図である。
【図8】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11 鋼材
13 取付金具
14 リード線
15 陽極材
17 切り起こし爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具に陽極材を電気的に接続したことを特徴とする簡易防食装置。
【請求項2】
水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具にリード線を介して陽極材を接続したことを特徴とする簡易防食装置。
【請求項3】
先端にコ字状の支持部材を備えた治具を形成し、その治具の支持部材に取付金具を収容し、その治具で取付金具を鋼材に押し込んで、鋼材に取付金具を取り付けた請求項1又は2記載の簡易防食装置。
【請求項4】
水に接触している鋼材を、陽極材を用いて防食するための簡易防食装置において、鋼材に挟んで取り付けるべく取付金具を細長コ字状に形成し、その取付金具の後方に陽極材を一体に取り付けたことを特徴とする簡易防食装置。
【請求項5】
陽極材は心金を有し、その心金を陽極材から突出させると共にネジ部を形成し、その心金のネジ部を取付金具にボルト締めして陽極材を取り付けた請求項4記載の簡易防食装置。
【請求項6】
取付金具の後方に心金を取り付け、その心金の周囲に陽極材を鋳込んで設けた請求項4記載の簡易防食装置。
【請求項7】
取付金具の内面に鋼材と接する切り起こし爪を多数形成した請求項1〜6いずれかに記載の簡易防食装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−336072(P2006−336072A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162337(P2005−162337)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000211891)株式会社ナカボーテック (42)
【Fターム(参考)】