説明

米を原料とした乳酸発酵食品及び飲料の製造方法

【課題】 これまでの研究を更に進め、先に開発した乳酸発酵技術を応用して米を原料とする新規な乳酸発酵食品又は飲料を提供することを課題とする。
【解決手段】
以下に示す工程にて、植物性乳酸発酵食品又は飲料を製造することができる。
(1)事前に乳酸菌を増殖培養する工程、(2)炊飯した米に麹菌を扶植し、米麹を作り、それを粉状にする工程、(3)該粉米麹に一定量の酵母と水を加え、パンの製造方法と同じように全体を練り込んだものを発酵処理する工程、(4)その後工程(1)にて得られた乳酸菌培養液も加え、全体を撹拌・練り込んだ後乳酸発酵する工程及び(5)最後にそのままあるいは適当な添加物又は水を加える工程及び/又は形を加工する工程を行う。工程(3)の後に加熱処理を加えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米を原材料として使用する乳酸発酵食品及び飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、米を原材料とする乳酸発酵飲料を米の加水物を酵素分解又は麹を作用させた後、濾過して得られる糖化液に乳酸菌を加え、発酵した後酵母を加え更に発酵を行い、アルコール濃度が1%未満の内に発酵を停止する方法にて飲料を作る方法が記載されている。しかしこの製造方法では米を処理して糖化する工程を必要としている。一方、特許文献2には、魚肉、畜肉、野菜、米飯等の食品に米麹を添加し、低温性の乳酸菌接種を行い0〜10℃で発酵熟成して乳酸発酵食品を製造する方法が記載されている。
本発明者は特許文献3に示すように、大豆を原料として酒母を製造できるまったく新しい方法を開発し、特許権を取得した。更に、その技術を発展させ大豆を原料とするアルコール含有量が1%未満の乳酸発酵飲料の製造技術を開発し、特許文献4に示すように特許出願中である。
【特許文献1】特開平7−255438号公報
【特許文献2】特開2004−222542号公報
【特許文献3】特許第3749967号公報
【特許文献4】特願2006−278127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまでの研究を更に進め、先に開発した乳酸発酵技術を応用して米を原料とする新規な乳酸発酵食品又は飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に示す工程にて、植物性乳酸発酵食品又は飲料を製造することができる。
(1)事前に乳酸菌を増殖培養する工程、(2)炊飯した米に麹菌を扶植し、米麹を作り、それを粉状にする工程、(3)該粉米麹に一定量の酵母と水を加え、パンの製造方法と同じように全体を練り込んだものを発酵処理する工程、(4)その後工程(1)にて得られた乳酸菌培養液も加え、全体を撹拌・練り込んだ後乳酸発酵する工程及び(5)最後にそのままあるいは適当な添加物又は水を加える工程及び/又は形を加工する工程を行う。
工程(3)の後、加熱処理工程を追加し、その後工程(4)以降の処理を行うことは極めて有効である。加熱処理としては80〜90℃にて5〜60分程度に保持する方法で十分である。この工程を行うことで麹菌は死滅し、後の工程で加えられた乳酸菌による発酵を優先的に行える利点が生じる。
乳酸菌増殖培養液は大豆を原料として作ることができる。大豆を豆腐製造工程にて豆乳と豆腐殻を得、分離した豆腐殻に麹菌を扶植し、豆腐殻麹を作る。この豆腐殻麹に豆乳と糖質(単糖類、二糖類又は多糖類)及び酵母を加えて発酵処理を行う。発酵の初期の段階で発酵中の液の一部を取り出し、培養して生息している乳酸菌を特定する。
次に、特定された乳酸菌を菌の培養液に加え、一定温度に一定時間保持し、乳酸菌の増殖培養を行う。ここまでが工程(1)のより詳しい説明である。勿論この方法に限定されるものではない。
発酵溶液に加熱処理を施すということは一般的に行われていない。パン生地を乳酸発酵させるという考えはこれまでなかったし、米麹を製粉化し、パン生地状にするという発想も従来にはない斬新なものである。このパン生地状のものを乳酸発酵させるという考えはまったく新しいものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明で製造される植物性乳酸発酵食品又は飲料はペプチド、γ−アミノ酪酸等の人体に有用な成分を多く含み、血圧低下、食後の血糖上昇予防、血漿中の中性脂肪やコレステロールの低下等の効果が期待できます。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に説明する工程を行い、米を原料とする植物性乳酸発酵食品又は飲料を得る。
工程(1)大豆を豆腐製造工程を用いて豆乳と豆腐殻に分離する。分離した豆腐殻に麹種菌を扶植する。麹種菌を受けた豆腐殻を20〜40℃に温度調節した室に72〜120時間放置し、豆腐殻に麹菌を得る。麹菌を得た豆腐殻に豆乳と糖質(単糖類、二糖類、多糖類)等を加え、酵母を付与する。酵母を受けた溶液を発酵処理し、工程の初期の段階で液の一部を取り出し寒天培地にて培養し、液中に存在する乳酸菌の特定と抽出を行う。
本発明で特定された乳酸菌はレウコノストコメセンテロイデス(Leuconosto comesenteroides)、ラクトバチリスサケ(Lactobacillus sake)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillsacidophilus)、ラクトバチリス カゼイ(Lactbacills casei)及びストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等である。
抽出した乳酸菌を菌の培養液中に加え、増殖培養を行う。この液をその後の工程で利用する。
【0007】
工程(2)炊飯した米(白米、玄米又は発芽玄米)に麹菌を扶植し、米麹を作り、それを粉状にする。
工程(3)該粉米麹に一定量の酵母と水を加え、パンの製造方法と同じように全体を練り込んだものを発酵処理する。
工程(4)その後工程(1)にて得られた乳酸菌培養液も加え、全体を撹拌・練り込んだ後乳酸発酵し、乳酸菌発酵物(a)を得る。
工程(5)乳酸発酵物(a)をそのままあるいは適当な添加物又は水を加える工程及び/又は形を加工する工程を行う。
前にも説明したように、工程(3)の後に加熱処理工程を組み込んでも良い。液全体を80〜90℃に保持し、5〜60分程度維持するのである。その後工程(4)以降を行うのである。
ここで、工程(5)をより詳しく説明すると、乳酸発酵物(a)は冷却後、乾燥して微粉細し、これをクリーム状にするとヨーグルト様の飲料を得る。乳酸発酵物(a)を濃縮、乾燥した後成型して錠剤や顆粒錠の植物性乳酸発酵食品を得ることが出来る。
乳酸菌発酵培養液中に、米胚芽成分又は米糠成分からアルコール抽出した抽出成分を加え機能性を強化したり、果実又は穀物を原料とした発酵醸造酢を加えて風味を変えた食品や飲料とすることもできる。アルコール抽出成分の添加量は乳酸菌発酵物1kg当たり0.1g〜20g程度が好ましく、酢の添加量は乳酸菌発酵物1kg当たり0.1〜5ml程度が好ましい。
米胚芽又は米糠からのアルコール抽出成分としては、トコトリエタノール、γ−オリザノール、イソシトール、ライセオ及びγ−アミノ酪酸等を挙げることができる。
【実施例1】
【0007】
大豆300gを使い、豆腐製造工程を用いて豆乳と豆腐殻に分離する。分離した豆腐殻約150gに麹菌1gを扶植し、35℃〜40℃に保った室にて約72時間保持し、豆腐殻麹を得た。この豆腐殻麹に豆乳100gと糖質として単糖類5gを加え、更に酵母1gを加え、35℃〜40℃に保持した室において発酵処理を行った。約2時間経過したところで液の一部50mlを取り出し、シャーレにて培養し、生存する乳酸菌の特定と抽出を行った。
特定された乳酸菌はレウコノストコメセンテロイデス(Leuconosto comesenteroides)及びラクトバチリスサケ(Lactobacillus sake)であった。この抽出したものを菌の培養液1リットルに入れて35℃〜40℃に保持した室にて72時間保持し、乳酸菌の増殖培養液を得た。
玄米750gをエタノール溶液に2〜5秒浸す処理を施した後、別容器に移し水を加え10時間から30時間経過し、発芽したことを確認した後炊飯する。炊飯した玄米を室温まで冷却後、麹菌5gを扶植した。麹菌を受けた玄米を35℃〜40℃に保った発酵室に96時間保持し発酵を行い、米麹約1500gを得た。
次に、製粉し粉米麹とした。粉米麹約1500gにパン酵母250mlを加え混合、撹拌し、練り上げ、25℃〜40℃に保持し、60分間発酵処理をした。その後この液を90度にて10分加熱処理を行った。この酵母発酵した粉米麹に前記乳酸菌増殖培養液1500mlを加え撹拌し、25℃〜40℃にて24時間乳酸発酵処理を行った。
このようにして得た液に水分調整を行い植物性乳酸発酵飲料約5リットルを得た。
【実施例2】
実施例1の玄米の代わりに白米を用いた以外は同様な工程を実施して植物性乳酸発酵飲料約4リットルを得た。
【実施例3】
実施例1の乳酸菌増殖培養液に発芽玄米のアルコール抽出物約0.2gを加えた以外は同様な工程を実施して植物性乳酸菌発酵飲料約5リットルを得た。
この乳酸飲料をある種のラットの投与する試験を行ったところ、高血圧や糖尿病の改善に効果が認められるような結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)事前に乳酸菌を増殖培養する工程、(2)炊飯した米に麹菌を扶植し、米麹を作り、それを粉状にする工程、(3)該粉米麹に一定量の酵母と水を加え、パンの製造方法と同じように全体を練り込んだものを発酵処理する工程、(4)その後工程(1)にて得られた乳酸菌培養液も加え、全体を撹拌・練り込んだ後乳酸発酵する工程及び(5)最後にそのままあるいは適当な添加物又は水を加える工程及び/又は形を加工する工程を行うことを特徴とする米を原料とした植物性乳酸発酵食品又は乳酸発酵飲料の製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)の後で加熱処理工程を加えた後、工程(4)以降の工程を行うことを特徴とする請求項1記載の米を原料とした乳酸菌発酵食品又は乳酸発酵飲料の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)の乳酸菌増殖培養の原料として大豆を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の米を原料とした植物性乳酸発酵食品又は飲料の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)の乳酸菌発酵培養液中に、米胚芽成分又は米糠成分からアルコール抽出した抽出成分を加えることを特徴とする請求項1、2又は3記載の米を原料とした植物性乳酸発酵食品又は飲料の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)の乳酸菌培養液中に、種子果肉を加え、乳酸発酵を更に行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の米を原料とした植物性乳酸発酵食品又は飲料の製造方法。
【請求項6】
添加剤として果実や穀物を原料とした発酵醸造酢を用いることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の米を原料とした植物性乳酸発酵食品又は飲料の製造方法。
【請求項7】
乳酸菌として、レウコノストコメセンテロイデス(Leuconostocomesenteroides)、ラクトバチリスサケ(Lactobacillus sake)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillsacidophilus)、ラクトバチリス カゼイ(Lactbacills casei)及びストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の中から選ばれる単独又は複数の乳酸菌を使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の米を原料とした植物性乳酸菌発酵食品又は飲料の製造方法。

【公開番号】特開2009−213455(P2009−213455A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99777(P2008−99777)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(597049330)
【Fターム(参考)】