説明

米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法

【課題】崩壊性や食味が良いと共に、十分な硬度を備え、摩損度にも優れた米糠錠剤を提供する。又、打錠機へ投入する前に良好な流動性が得られる米糠錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】生の米糠2から脂質を脱脂した脱脂米糠4を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により製造される。これにより、脱脂により米糠特有の臭いを無くして食味を良くすると共に、所定の粒度に微細化することで、舌等で感じる粒子感を無くして口内違和感を無くする。又、脱脂米糠4を所定の粒度に粉砕して粒子表面積を大きくするため、打錠による粒子同士の結合が強くなり、錠剤が十分な硬度を備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
玄米を精米すると多量の米糠が生成されるが、斯かる米糠は従来、搾油、動物の飼料、きのこ栽培用の床、糠漬の床、肥料等に用いられ、又、約30%の米糠は廃棄処理されている。
【0003】
一方、米糠には、脂質、蛋白質、粗繊維、糖質、ビタミン類、ナイアシン、イノシトール、フィチン酸、オリザノール、遊離γアミノ酪酸等の機能性物質が含まれていることから、近年、米糠は高機能性食品として注目されている。そこで、米糠を機能性物質を利用した新規食材として用いることが種々検討されている。
【0004】
而して、米糠を食材として利用するようにした先行技術文献としては、例えば特許文献1〜6がある。
【0005】
特許文献1においては、3〜200μmの脱脂米糠を遠赤外線で焙煎し、90〜100℃の熱風が吹き込まれている塔内に脱脂米糠粉末を供給し、粉体流動層を形成させた状態中に、可食性バインダー(0.5〜20%重量割合)の水溶液を噴霧して脱脂粉末に吸着させ、乾燥により100〜500μmの米糠顆粒状物を形成している。而して米糠顆粒状物を食品添加物として食品に加えた場合に、容易に且つ均質に分散させるものとなっている。
【0006】
特許文献2においては、炒った米糠とクエン酸及び異性化乳糖とを、10/1〜10/10(米糠/クエン酸)、10/3〜10/10(米糠/異性化乳糖)の割合にするように、炒った米糠に、賦形剤としての異性化乳糖とクエン酸とをミキサーで混合攪拌し、打錠機により球状・偏平円盤状に押し固めている。而して、空気との接触表面積が少ない日持ちの良い米糠とすると共に、クエン酸の効果により、梅干と同様な効果が期待できるものとなっている。
【0007】
特許文献3においては、生糠に水を加えて混練し、出口に穴あきダイスを取り付けた加圧スクリューで押し出して加水米糠をペレット状に成形するものである。
【0008】
特許文献4においては、脱脂米糠より有機酸(フィチン酸)水溶液にて抽出液を得、抽出液を濃縮・乾燥して米糠エキスを製造するものである。
【0009】
特許文献5においては、無機質肥料の粉体を粒状物にするため、無機質肥料に粒状促進剤として米糠を1.5−20wt%混合・攪拌して粒状化し、乾燥するものである。
【0010】
特許文献6においては、沈降性及び崩壊性に優れ、崩壊時における油膜等の浮遊物を生じない水田の除草剤とするため、米糠に珪素化合物を配合し、錠剤・板状又は粒状にするものである。
【特許文献1】特開2004−65236号公報
【特許文献2】特公昭63−26976号公報
【特許文献3】特開2003−63918号公報
【特許文献4】特開2001−252031号公報
【特許文献5】特開平10−167869号公報
【特許文献6】特開2003−155209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1、2においては、脱脂米糠の粒径及び残留脂肪量を十分に考慮しておらず、粒子径が大きい脱脂米糠を含む場合には、摂取時に、大きい粒子が何時までも口内に残り、嚥下性が悪い。又、脱脂米糠の残留脂肪量が多い場合には、米糠特有の臭いが残り、食味が悪い。
【0012】
米糠には一般に18〜20%程度の脂肪分が含まれており、そのまま用いた場合、含有脂肪分のためバインダーが機能を発揮できず、流動性に優れた顆粒状物を得ることができない。又、特許文献1〜6において脱脂米糠の粒子径を十分に考慮しない場合は、脱脂米糠を打錠により錠剤としても、錠剤の硬度が不十分で輸送中に錠剤が割れてしまう虞があり、又、崩壊性にも問題がある。このため、顆粒強度を維持するために、バインダーはα化澱粉及び増粘多糖類の中から選ぶことが必須条件となっている。
【0013】
更に、特許文献1においては、脱脂米糠の扱いやすさを目的とした顆粒化技術であり、打錠のことを考慮した流動性の改善を何ら行っておらず、又、打錠時の臼での滑りを良くするための方法が明確となっておらず、打錠時に滑りが悪くなり、臼と杵との間の粉体摩擦により、十分な力が顆粒に伝わらない。
【0014】
又、特許文献2においては、打錠機へ供給する対象物が米糠とクエン酸及び異性化乳糖との混合物であるため、流動性が劣り、打錠機への均一な供給ができないという問題がある。
【0015】
本発明は、上述の実情に鑑み、嚥下性や食味が良いと共に、十分な硬度を備え、摩損度にも優れた米糠錠剤を提供すること、及び、打錠機へ投入する前に良好な流動性が得られる米糠錠剤の製造方法を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の米糠錠剤は、生の米糠から脂質を脱脂した脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により製造されたものであり、請求項2の米糠錠剤においては、粉砕後の粒度は50μm以下であり、請求項3の米糠錠剤においては、脱脂した後の脂肪分は4%以下である。
【0017】
請求項4の米糠錠剤の製造方法は、生の米糠から脂質を脱脂した脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠するものであり、請求項5の米糠錠剤の製造方法においては、粉砕後の粒度は50μm以下であり、請求項6の米糠錠剤の製造方法においては、脱脂した後の脂肪分は4%以下であり、請求項7の米糠錠剤の製造方法においては、生の米糠の脱脂は、生の米糠を、食品衛生法で認可された溶剤に浸漬するか、加熱後冷却するか、圧搾するかの何れかの方法で行なうものであり、請求項8の米糠錠剤の製造方法においては、脱脂を溶剤により行なう場合は、ヘキサンのような低極性溶剤を用いるものであり、請求項9の米糠錠剤の製造方法においては、脱脂米糠の殺菌は、脱脂米糠を、マイクロ波殺菌により処理するか、オゾン殺菌により処理するか、電子線殺菌により処理するか、加圧昇温により処理するか、粉体の摩擦・混練・せん断力での加熱方法により処理するかの何れかの方法で行うものであり、請求項10の米糠錠剤の製造方法においては、粉砕した脱脂米糠を流動化させて結合剤を噴霧し、顆粒化を行うものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1〜10に記載の米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法によれば、生の米糠から脂質を脱脂し、脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により、米糠錠剤が製造されるため、脱脂により米糠特有の臭いを無くして食味を良くすると共に、所定の粒度に微細化することで、舌等で感じる粒子感を無くして口内違和感を無くすることができる。又、脱脂によって脂質による結合剤の機能低下を抑制すると共に、脱脂米糠を所定の粒度に粉砕して粒子表面積を大きくするため、打錠による粒子同士の結合が強くなり、錠剤が十分な硬度を備えることができる、という優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法を添付図面を参照して説明する。 図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であり、図1は生の米糠から脱脂米糠を製造する手順を示す工程図、図2は脱脂米糠を粉砕した状態を1500倍で示す写真であり、図3は脱脂米糠を粉砕した状態を5000倍で示す写真である。
【0020】
図1中、1は原料である生の米糠2をヘキサン等の低極性溶剤により浸漬して、米糠2に含有されている脂質を溶剤中に抽出させる溶剤浸漬工程、3は溶剤浸漬工程1で低極性溶剤中に脂質が抽出された米糠から低極性溶剤を加熱し気化させて除去し、脱脂米糠4を取出すと共に、脱脂米糠4は含まれていないが脂質が含まれている、気化した低極性溶剤5を取出すようにした脱溶剤工程、6は溶剤浸漬工程1で脂質が抽出された低極性溶剤、及び脱溶剤工程3からの脂質を含む低極性溶剤5を加熱して気化させると共に冷却し、米油7と、米油7が含まれていない液化した低極性溶剤8を生成させる蒸留工程であり、蒸留工程6で得られた低極性溶剤8は、溶剤浸漬工程1へ戻されるようになっている。
【0021】
而して、溶剤浸漬工程1では、生の米糠2はヘキサン等の低極性溶剤に約45分程度、浸漬され、低極性溶剤中には米糠2に含有されている脂質が抽出される。浸漬時間は米糠2の脱脂度により適宜調整される。
【0022】
溶剤浸漬工程1で米糠2から抽出された脂質を含む低極性溶剤は、脱溶剤工程3へ送給されて、低極性溶剤であるヘキサンの沸点約69℃以上の温度で約1時間程度加熱され、脱溶剤(溶剤揮散)が行なわれる。このため、気化した低極性溶剤5は蒸留工程6へ送給され、脱脂米糠4が生成される。生成された脱脂米糠4の脂質含有率は約4w/w%以下、好ましくは1.5〜2.0w/w%とする。
【0023】
溶剤浸漬工程1で脂質が抽出された低極性溶剤は、蒸留工程6において加熱され気化し、脱溶剤工程3からの脂質を含む低極性溶剤5と共に冷却され液化して蒸留が行なわれる。而して、この蒸留により米油7と液化した低極性溶剤8が生成され、低極性溶剤8は溶剤浸漬工程1へ戻されて、米糠2からの脂質の抽出に再び使用される。
【0024】
ここで、米糠2の脱脂は、生の米糠2を、食品衛生法で認可されたヘキサン等の低極性溶剤に浸漬する代わりに、加熱後の冷却(加熱冷却法)によっても良いし、圧搾(圧搾法)によっても良い。
【0025】
脱溶剤工程3で脱脂された脱脂米糠4は、殺菌工程9で、マイクロ波を照射するマイクロ波殺菌により殺菌されており、脱脂米糠4にマイクロ波を2分間程度弱照射し、品温を120℃程度に上昇させ、その後マイクロ波強度を調整し、上昇した温度に維持して大腸菌群や一般生菌数等の細菌を殺菌する。なお、マイクロ波は、残留糠内水分の温度上昇により糠温度を好適に上昇させることができる。
【0026】
ここで、殺菌工程9の殺菌方法は、マイクロ波殺菌に限定されるものでなく、オゾン殺菌、電子線殺菌、加圧昇温等でも良く、更に粉体の摩擦・混練・せん断力による加熱方法でも良く、粉体内部まで確実に加熱する方法であれば特に制限されるものではない。なお、オゾン殺菌は、米糠のフェルラ酸がオゾンと反応する可能性があり、電子線殺菌は、脱脂米糠4の内部まで電子線が浸透せず、加圧昇温では、粉体への熱伝達が困難であるという可能性がある。又、他の高温ガス殺菌・高温蒸気殺菌法では、媒体温度と糠温度との間の熱伝達が困難であるため、米糠の温度が上昇しないという問題があり、具体的には、150℃の高温空気に米糠粉体を曝した場合であっても、30分程度の時間では温度が上昇せず大腸薗群は陽性のままであった。
【0027】
殺菌工程9で殺菌された脱脂米糠4は、粉砕工程10で粉砕機(図示せず)により微粉粒状に粉砕され、次に分級機(図示せず)より細かい脱脂米糠4と粗い脱脂米糠4とに整粒され、整粒された脱脂米糠4は捕集機(図示せず)及び集塵機(図示せず)で捕集されると共に、粗い脱脂米糠4は再び粉砕機に戻される。
【0028】
ここで、集塵された脱脂米糠4は、図2、図3に示す如く、粒度(平均粒子径)が5〜50μm(50μm以下)好ましくは15〜20μmになるようになっている。ここで粒度(平均粒子径)が15〜20μmであるならば、粒子径50μm以上の粒子を全体の5%以下で含むものであっても良い。なお、粉砕する前の脱脂米糠は、通常、粒度(平均粒子径)が100〜1000μmであり、図4には、脱脂米糠を粉砕する前の状態(通常の脱脂米糠)を50倍で示し、図5には、脱脂米糠を粉砕する前の状態(通常の脱脂米糠)を150倍で示している。
【0029】
粉砕された脱脂米糠4は、顆粒化工程11で流動層法により顆粒化されており、脱脂米糠4を、熱ガスが下方から噴出している容器内に投入することにより、粉体を個別の粒子として流動化させ、水、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、天然多糖類(プルラン)、澱粉、乳糖類等の可食性の結合剤を上方から噴霧し、粒子に結合剤を付着させると共に他の粒子を接触させて結合し、所定時間乾燥させて顆粒の形状にしている。
【0030】
ここで、粉砕された脱脂米糠4を顆粒化する方法は、攪拌法・押し出し法等公知の各種方法でも良いが、液状の結合剤を粉末に散布して顆粒化するため、液体の散布により脱脂米糠4がダマ状やママ粉状になり、脱脂米糠4への均質な散布が極めて難しい。又、攪拌・押し出し過程において、一部のダマ粉やママ粉が練り固められて嵩比重の大きい顆粒になるため、これらダマ粉やママ粉等により嵩比重が不均一であると共に、硬い粗粒が混在する可能性が高くなる。一方、流動層法の場合には、粒子と粒子との接触頻度が高く、粒子に付着した液体が他粒子の表面接触により分散されるため、脱脂米糠4がダマ状やママ粉状になることがない。又、流動層内の粒子は、外部からの圧力が少なく、練り固められることが無いため、含有液量や嵩比量が比較的均一な顆粒を作り、硬い粗粒の混在を抑制するものとなる。
【0031】
更に、結合剤は、水、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、天然多糖類(プルラン)、澱粉、乳糖等の以外のものであっても、食品・医薬品等に添加することが許容される可食性のものならば、特に限定されるものではない。なお、米糠粉末の脂肪分が通常の場合(20%前後)には、可食性の結合剤を入れても顆粒にすることができない。
【0032】
顆粒化された脱脂米糠4は、打錠工程12で、打錠機により所定の形状に打錠されて米糠錠剤13となっている。
【0033】
ここで、脱脂米糠4は、図2、図3に示す如く、粉砕(微細化)により粒子の表面積を大きくしたものを顆粒化するため、打錠化した場合には、粒子同士の結合が強く、錠剤の強度を好適に維持することができる。又、顆粒の脱脂米糠4は、先の顆粒化工程11で顆粒化されて流動性を向上するため、好適に打錠することができる。一方、図4、図5に示す如く、顆粒化する前の粉砕された脱脂粉末では、流動性に劣ることから、打錠機の臼に容易に充填することができず、安定的に定量供給を行うことができない。
【0034】
以下、具体的に、顆粒化工程11の処理方法や結合剤を変えて顆粒化し、顆粒化した脱脂米糠4を略同じ条件で打錠し、製造された錠剤の品質や、崩壊性(口溶け)の状態を確認し、夫々比較した。なお、錠剤の品質は、嵩比重、錠剤硬度、崩壊試験で記載し、錠剤硬度や崩壊試験の検査方法は、日本薬局法に規定される方法で行った。
[実施例1]
(比較例1)攪拌法の顆粒化工程で、脱脂米糠に水を散水して攪拌し、残留水分6.5%程度に乾燥して顆粒化した場合には、錠剤は、厚み4.57mm、重量252mgで、嵩比重39g/100cc、錠剤硬度3.04kg、崩壊試験の崩壊時間9分となった。この結果、比較例1の錠剤は、輸送に耐える錠剤硬度等が不足する可能性があると共に、錠剤中に硬い粗粒が形成され、摂取時に、唾液での溶解に時間を有する粗粒子が口内に多少残った。又、攪拌中にHPC(ヒドロキシプロピルセルロース;植物由来のセルロース誘導体)を散布し、乾燥・顆粒化した場合には、摂取時に、唾液で容易に溶解しない粗粒が口内に残り、噛み砕かないと嚥下しにくい錠剤となった。
(実施例1)流動層法の顆粒化工程で、結合剤をヒドロキシプロピルセルロース(HPC:植物由来のセルロース誘導体)とし、ヒドロキシプロピルセルロースを7.53%で散布して顆粒化した場合には、錠剤は、厚み3.26mm、重量152mgで、嵩比重20g/100cc、錠剤硬度4.31kg、崩壊試験の崩壊時間6分となった。このようにして製造した錠剤は、攪拌法による錠剤よりも嵩比重が軽く、また唾液で一様に溶解し、口内に硬い粗粒が残ることも無かった。この結果、実施例1の錠剤は、輸送に耐える錠剤硬度等を十分に有すると共に、比較例1(攪拌法)の錠剤よりも嵩比重が軽く、又、崩壊性も唾液で一様に溶解し、口内に硬い粗粒が残ることも無かった。
(実施例2)流動層法の顆粒化工程で、結合剤を澱粉から抽出した天然多糖類(プルラン)とし、天然多糖類(プルラン)を3.75%で散布して顆粒化した場合には、錠剤は、厚み3.69mm、重量190mgで、嵩比重27g/100cc、錠剤硬度5.84kg、崩壊試験の崩壊時間10分となった。この結果、実施例2の錠剤は、輸送に耐える錠剤硬度等を十分に有すると共に、比較例1(攪拌法)の錠剤よりも嵩比重が軽く、又、崩壊性も唾液で一様に溶解し、口内に硬い粗粒が残ることも無かった。
【0035】
このように、本発明の米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法によれば、生の米糠から脂質を脱脂し、脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により、米糠錠剤が製造されるため、脱脂により米糠特有の臭いを無くして芳香薫臭を呈し、食味を良くすると共に、所定の粒度への粉砕により舌等で感じる粒子感を無くして口内違和感を無くすることができる。ここで、通常の脂肪分では、打錠により脂肪分が表面に浮き出て酸化腐敗を生じるが、脱脂を行うことにより、打錠により脂肪分が表面へ浮き出ることも防止できる。
【0036】
又、生の米糠2が含有する脂質をヘキサン等の低極性溶剤中に抽出することで、米糠に含有されている水溶性生理活性成分を失うことなく、米糠2に含有されている脂質は米油7中に溶解する。このため、脱脂米糠4に残存する残留農薬は、食品安全基本法(食品衛生法)で要求される農産食品中の残留農薬規制値以下となり、有害重金属等を含まない安全な食材となる。なお、脱脂米糠4を利用することで、生の米糠に含まれる残留農薬対策も同時に達成することができることは、安全な食材を提供するうえで最も大切なことであり、本方法で製造した脱脂米糠4は食品衛生法で求められる農産食品中の残留農薬基準を全て満している。
【0037】
又、脱脂によって残留脂質を4%以下とすることで、結合剤の機能を十分に発揮させると共に、脱脂米糠4を所定の粒度に粉砕して粒子表面積が大きくなるため、打錠による粒子同士の結合が強くなり、錠剤が十分な硬度を備えることができる。更に、適度の残留脂質を備えるため、打錠時に滑沢剤を不要にすることができる。
【0038】
脱脂米糠4の粒度(平均粒径)は、5〜50μm(50μm以下)になるようにすると、粒子感を無くして嚥下性の良い食味を有すると同時に、打錠においても十分な硬度を有することができる。又、脱脂米糠4の粒度(平均粒径)を15〜20μmにすると、嚥下性の極めて良い食味を有すると同時に、打錠においても最適な硬度を有することができる。ここで、粒度(平均粒径)が50μmより大きい場合には、粒子感が残って嚥下性が悪くなると共に、十分な硬度を得ることができない。
【0039】
脱脂した後の脂肪分は、脱脂米糠4の脂質含有率で4w/w%以下になるようにすると、米糠特有の臭いを無くし、芳香薫臭を呈する食味を有すると同時に、可食性の結合剤を介して適切に顆粒化することができる。又、脱脂米糠4の脂質含有率で1.5〜2.0w/w%とすると、米糠特有の臭いを確実に無くし、芳香薫臭を呈する食味を有すると同時に、可食性の結合剤を介して好適に顆粒化することができる。又、打錠時に滑沢剤を不要にすることができる。ここで、脱脂米糠4の脂質含有率が4w/w%より大きい場合には、米糠特有の臭いが生じ、適切に顆粒化することができない。
【0040】
なお、本発明の米糠錠剤及び米糠錠剤の製造方法においては、使用する米糠については、特に制限は無く、いかなる搗精度の物でも良い。又、玄米の質に関しても特に制限は無く、必ずしも無農薬栽培や有機栽培に拘る必要も無いが、遺伝子操作原料成分や動物由来蛋白成分の検出されないものが望ましい。更に、結合剤は可食性を有するならば特に限定されるものではないこと、錠剤の味改善に伴う添加結合剤の変更、及び残留脂質の酸化防止のための錠剤表面の空気遮断層の形成等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の米糠錠剤を製造する場合の手順を示す工程図である。
【図2】本発明において脱脂米糠を粉砕した状態を1500倍で示す写真である。
【図3】本発明において脱脂米糠を粉砕した状態を5000倍で示す写真である。
【図4】脱脂米糠を粉砕する前の状態を50倍で示す写真である。
【図5】脱脂米糠を粉砕する前の状態を150倍で示す写真である。
【符号の説明】
【0042】
2 生の米糠
4 脱脂米糠
5 低極性溶剤
8 低極性溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の米糠から脂質を脱脂した脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠により製造されたことを特徴とする米糠錠剤。
【請求項2】
粉砕後の粒度は50μm以下である請求項1に記載の米糠錠剤。
【請求項3】
脱脂した後の脂肪分は4%以下である請求項1に記載の米糠錠剤。
【請求項4】
生の米糠から脂質を脱脂した脱脂米糠を所定の粒度に粉砕し、顆粒化して打錠することを特徴とする米糠錠剤の製造方法。
【請求項5】
粉砕後の粒度は50μm以下である請求項4に記載の米糠錠剤の製造方法。
【請求項6】
脱脂した後の脂肪分は4%以下である請求項4に記載の米糠錠剤の製造方法。
【請求項7】
生の米糠の脱脂は、生の米糠を、食品衛生法で認可された溶剤に浸漬するか、加熱後冷却するか、圧搾するかの何れかの方法で行なう請求項4〜6のいずれかに記載の米糠錠剤の製造方法。
【請求項8】
脱脂を溶剤により行なう場合は、ヘキサンのような低極性溶剤を用いる請求項7に記載の米糠錠剤の製造方法。
【請求項9】
脱脂米糠の殺菌は、脱脂米糠を、マイクロ波殺菌により処理するか、オゾン殺菌により処理するか、電子線殺菌により処理するか、加圧昇温により処理するか、粉体の摩擦・混練・せん断力での加熱方法により処理するかの何れかの方法で行う請求項4〜6のいずれかに記載の米糠錠剤の製造方法。
【請求項10】
粉砕した脱脂米糠を流動化させて結合剤を噴霧し、顆粒化を行う請求項4〜6のいずれかに記載の米糠錠剤の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−86206(P2008−86206A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267161(P2006−267161)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】