説明

米糠食材の製造方法

【課題】米糠のザラツキ感がなく、しかも米糠に特有の臭気も感じられない米糠食材を提供する。
【解決手段】米糠食材の製造方法であって、油分が6重量%以下となるまで米糠を溶剤で脱脂した後、この脱脂糠を微粉砕し、ついで、微粉砕された脱脂米糠微粉末に過熱水蒸気を接触させ熱処理を施して、脱脂米糠微粉末を殺菌するとともに脱溶剤することを特徴とする、米糠食材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠を原料とする米糠食材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、我が国では年間約600万トンの米が消費されて、そのうちの10%、つまり60万トン弱の米糠が発生している。この米糠の約半分(43%)は米油の生産に使用されており、その残りは飼料用(17%)、えのきやしめじ等の栽培用(17%)、漬物用(5%)、その他農家による自家消費等(18%)に用いられている。
【0003】
米油の製造では、ヘキサン等の有機溶媒を用いて米糠から油分を抽出し、その後に残った脱脂糠は大部分飼料用として利用されている。
【0004】
また、脱脂糠に含まれている各種の生理活性物質は利用価値が高いために分離されて、既に商品化されている。例えば、フィチン酸、イノシトール、水溶性米糠混合成分(商品名:ライセオ)等が脱脂糠から生産され、その商品が市場に流通している。しかし、これらの生理活性物質は製造工程上の問題や収率の問題から価格が高くなるため、特殊な場合しか利用されていない。
【0005】
また、最近では米糠をそのまま、もしくは脱脂して利用する方法として、特開2002−119230「米ぬか加工物の製造方法及び米ぬか加工物」、特開2003−018075「脱脂米ぬか粉末の製造方法及び脱脂糠粉末」及び特開2005−204637「米ぬかの微粉化処理方法」等が提案され、更にそれらの商品として三和油脂株式会社によるヌカップ(商品名)、株式会社ライステックによるオリザブラン、株式会社大潟村あきたこまち生産者協会による微粉パウダー(商品名不明)、及びおいしさの科学研究所による健康のひかり(商品名)等が流通しているが、生糠を原料とするこれらの製品では、粉砕が粗過ぎるために糠の臭気や味、又は更にザラツキを感じるといった問題があり、そのうえ大腸菌、耐熱性の芽胞菌又はその他の雑菌の混入が見られるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−119230号公報
【特許文献2】特開2003−018075号公報
【特許文献3】特開2005−204637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、一般の健康志向の高まりに伴って、従来飼料として使用されてきた米糠又は脱脂糠を食材として利用することに注意が向けられているが、この米糠又は脱脂糠を食材として用いるには、口の中に入れた時のザラツキ感がなく、しかも米糠に特有の臭気も感じられないものとしなければならない。
【0007】
米糠を食材として利用可能にするためには、大腸菌、米糠中に多く含まれる耐熱性の芽胞菌及びその他の雑菌を殺菌し、脱脂糠中に残留するヘキサン等の有機溶剤を除去し、あるいは更に、米の生産に使用された農薬を除去する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の観点から米糠を食材として利用するための方法について鋭意研究した結果、
1) 米糠のザラツキ感をなくすために、この米糠を微粉砕するに当たり、予め米糠に溶剤処理を施して米糠の油分を抽出して、その米糠中の油分が6重量%以下、例えば、2〜4重量%となるまで米糠を脱脂しておくと、米糠の微粉砕工程において生じた米糠の粘りがその微粉砕に支障をきたすという問題が避けられること、及び
【0009】
2) 脱脂後の脱脂糠微粉末に過熱水蒸気による熱処理を施すと、米糠の殺菌とともに脱溶剤が好都合に達成されて、米糠に特有の臭気が感じられない食材が得られること、
【0010】
3) この食材を、ハンバーグ又はソーセージのような鳥獣又は魚を原料とする加工食品、納豆のような大豆製品及びキムチのような食品に添加すると、これらの食品に特有の臭いを抑制し、また、米飯、めん類、お好み焼き、小麦粉製品、コンニャク及び菓子のような食品に添加して使用すると、これらの食品の栄養価及び機能性が高められること、
を見い出した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいて発明されたものであって、
1.米糠食材の製造方法であって、油分が6重量%以下となるまで米糠を溶剤で脱脂した後、この脱脂糠を微粉砕し、ついで、微粉砕された脱脂米糠微粉末に過熱水蒸気を接触させて殺菌するとともに脱溶剤することを特徴とする、米糠食材の製造方法、及び、
2.上記の1の製造方法によって得られた米糠食材を、鳥獣又は魚を原料とする加工食品、大豆製品、米飯、めん類、お好み焼き、小麦粉製品、コンニャク、キムチ及び菓子に添加して、これらの添加成分として使用する方法に係わるものである
【発明の効果】
【0012】
本発明によって製造された米糠食材を種々の食品、例えば、鳥獣又は魚を原料とする加工食品、大豆製品、米飯、めん類、お好み焼き、小麦粉製品、コンニャク、キムチ及び菓子に添加すると、これらの食品に特有の、場合によっては望ましくない臭気が抑制され、また、米糠に含まれる食物繊維、ビタミン又はミネラルによって、それらの食品の栄養価又は機能性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によって製造された米糠食材は、牛肉、馬肉、豚肉、マトン肉、羊肉、綿羊肉、兎肉もしくは猪肉のような獣肉、または鶏肉、鴨肉もしくは家鴨肉のような鳥肉から製造される加工食品、例えばソーセージ、ハンバーグまたは肉団子、及び魚介類の水産物から製造される加工品、例えば魚肉練製品、蒸し蒲鉾、焼き抜き蒲鉾、焼き竹輪、ゆでかまぼこ、揚げ蒲鉾を製造する場合の添加成分として使用することができ、それによって原料の肉及び魚に由来する独特の臭気を抑制することができる。
【0014】
この米糠食材、更に、パン製品、蕎麦やラーメンなどの麺類、それにお好み焼き、お菓子類等の小麦粉製品に混合して使用することができる。また、味噌や納豆などの大豆製品にも混ぜて使用すれば、それらに特有の臭気を消すことができる。また、同様に、キムチに混合してキムチに特有の臭気を消すこともできる。米糠食材は糠漬を作る場合の糠として使用すれば、その米糠食材が付いたまま糠漬を食べることもできる。更に、予め白米に混ぜて炊くと、玄米食と同様なものが得られる。
【0015】
本発明で原料として使われる米糠は腐り易いので、それの新鮮なうちに夾雑物を取り除いて脱脂するが、本発明では、この脱脂は米糠から油を除いて米糠を腐り難くするとともに、米糠を微粉砕し易くするのに必要な処理となっている。
【0016】
米糠を脱脂するには一般に圧搾法と溶剤抽出法とがあって、圧搾法は溶剤が不要であるが収量が低いため、効率的に油分を取り除くことができる溶剤抽出法、例えば、ノルマルヘキサンによる溶剤抽出法が好ましく用いられる。
【0017】
通常、360kgの玄米を精米する時、それから30kgの割合で取れる米糠には、例えば、水分12重量%、粗油分19.6重量%、粗たんぱく質14.8重量%、粗繊維質7.2重量%及び可溶性無機窒素37.9重量%、並びにその他少量のビタミンB1、ビタミンE及びパントテン酸が含まれており、また、米糠を溶剤抽出により脱脂した場合に得られる脱脂米糠では、例えば、水分12.0重量%、粗油分約1.1重量%、粗たんぱく質約19重量%、粗繊維質7.5重量%及び粗灰分12.2重量%、並びにその他少量のビタミンB1、ビタミンE及びパントテン酸が含まれている。
【0018】
本発明において、脱脂された米糠を微粉砕するには、乾式粉砕機に属して、高速回転ミルとジェットミルとの中間の特性を備えたサイクロンミルが用いられる。
このサイクロンミルの構造の概要を簡単な縦断側面図で示すと、図1の通りであって、サイクロンミル1の原料入口2から供給される原料の脱脂糠R’は、高速回転モーターM1に接続しているローター3と、同じく高速回転モーターM2に接続して、ローター3とは逆方向に回転しているローター4とが所定の間隔を開けて互いに向かい合って収納されている微粉砕チャンバー5の中に導入されると、この原料(脱脂米糠)R’は、互いに逆方向に回転するローター3と4とによって生ずる空気の激しい流動のため強力な衝撃力、圧縮力、吸引力及びせん断力を受けて微粉砕された後、微粉末Pは微粉末出口6から排出される。
【0019】
サイクロンミル1による微粉砕は、上記の空気による衝撃、圧縮、吸引及び剪断によるばかりでなく、原料粒子同士の衝突に基づく衝撃、圧縮及び剪断によっても引き起こされ、微粉砕される粒子の粒度は上記のローターの回転数またはローター間の間隔等を変更することによって変えることができる。
【0020】
図2は、本発明による粉砕システムの一例を図解して示すフローシートであって、この粉砕システムSには上記のサイクロンミルが組み込まれている。
【0021】
図2において、脱脂された米糠である原料R’は、振動フィーダーのような原料供給機(振動フィーダー)10に投入された後、それの排出口10aからサイクロンミル11の原料入口12の中に投入されて、サイクロンミル11の微粉砕チャンバー15の中に導入される。
【0022】
微粉砕チャンバー15の中に導入された原料R’は、高速回転モーターM1’及びM2’にそれぞれ接続して、この微粉砕チャンバー15の中で互いに逆向きに回転している2つのローター(図示せず)の作用によって微粉砕され、その結果生じた脱脂米糠の微粉砕物P’は粉砕物出口16から排出される。
【0023】
粉砕物出口16から排出された微粉末P’は、サイクロン7を通って分級された後、バグフィルター8内に所定の粒子範囲で集められる。バグフィルター8にはブロア9が接続され、この粉砕システムに付設されている粉砕制御盤Cが各装置部の作動を制御している。
【0024】
本発明によって製造される脱脂米糠微粉末、すなわち本発明による米糠食材の平均粒度径が100μmを超えると、この微粉末の粒子が舌に触れたときザラツキ感を感じるとともに、米糠特有の臭気が感じられるようになり、一方その平均粒度径が1μm未満である微粉末を製造するのは至難となって、コストが急激に高くなるので、この平均粒度径の範囲は一般に1〜100μmであるのが好ましく、すなわち、脱脂米糠微粉末の中心粒度径(メジアン径)は20μm以下であるのが好ましい。
【0025】
上記の平均粒度径は通常、粒度分析の結果によって得られ、例えば、マイクロトラックMT3200粒度分析計(日機装株式会社製)を用いる測定によって得られるDp10〔μm〕、Dp50〔μm〕、Dp90〔μm〕及びトップ〔μm〕から平均粒度径Dp50〔μm〕が決定される。
この平均粒度径はHoriba LA−950粒度分析計(堀場レイザ回析/散乱式粒度装置)を用いても測定できる。
【0026】
本発明によって微粉砕された脱脂米糠、玄米及び米糠に関するタンパク質、糖質及び脂質のような栄養成分及びミネラルの含有量を比較して、それぞれ表1及び2に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

表1及び表2に示されるように、脱脂米糠微粉末、すなわち、本発明による米糠食材は極めて栄養価が高くてミネラルも多く、単位重量当たりの各栄養素及びミネラルの含有量は玄米の10倍程度になる。
【0029】
本発明方法の途中で得られる脱脂米糠の中には通常105個/g程度の数の一般生菌が存在しており、また、セリウス菌を代表とする耐熱性芽胞菌は5.0×102 個/g程度の数で存在している。なお、汚染状況によって異なるが大腸菌群やサルモネラ菌も検出される場合がある。そこで、脱脂された米糠微粉末が微生物で汚染されるのを防ぐため、過熱水蒸気温度:140〜200℃及び加熱時間:5〜40秒の条件の基に過熱水蒸気で脱脂米糠微粉末を熱処理して、この微粉末を殺菌すると、表3に示されるように、一般生菌及び耐熱性芽胞菌とも陰性(<30)となって、衛生上問題が無くなった。
【0030】
この過熱水蒸気による熱処理は、例えば、誘導加熱式の加熱装置で生成させた過熱水蒸気によって行われ、この熱処理によって脱脂米糠が短時間のうちに効率的に殺菌される。熱処理によって過熱水蒸気中に含まれるようになった不純物は、この過熱水蒸気が水に戻るまでの途中で物理的に取り除いてもよいし、あるいは過熱水蒸気中にあるうちに分解して取り除くこともできる。このような過熱水蒸気による殺菌方法を採用すれば、熱処理後の米糠を、冷却、乾燥から包装まで直結する一連の工程によって生産性の向上を図りながら衛生的に処理することができる。
【0031】
本発明で用いられる過熱水蒸気は、従来市販されている適当な過熱水蒸気発生装置を使用して発生させることができ、例えば、図3に示されるような過熱水蒸気発生システムに組み込まれた過熱蒸気発生装置を使用して過熱水蒸気を得ることができる。
【0032】
図3に図解した説明図として示される過熱水蒸気発生システム20においては、ボイラー21で作られた飽和水蒸気が管路22を通って過熱水蒸気発生装置23に導入され、この過熱水蒸気発生装置23で飽和水蒸気は高周波により加熱されて高温の過熱水蒸気となり、その過熱水蒸気は管路24を経て排出される。過熱蒸気発生システム20において、25は高周波を発生させるための高周波加熱電源であり、26は過熱水蒸気発生装置23に高周波を送るための高周波ケーブルであり、27は過熱水蒸気発生装置23内で発生する過熱水蒸気の温度を監視するための温度監視ボックスであり、そして28は制御すべき過熱水蒸気の温度を過熱水蒸気発生装置23にフィードバックさせるための電線である。
【0033】
【表3】

【0034】
表3の結果で示されるように、過熱水蒸気の温度が160℃である場合には、45秒間の加熱時間で、そして過熱水蒸気の温度が180℃である場合には、15秒間の加熱時間で一般生菌数も耐熱性芽胞菌のセリウス菌も陰性になることが分かる。
【0035】
また、脱脂米糠中に残ったヘキサンの残存量は5〜10ppmであったが、140℃の過熱水蒸気で5秒間処理すると、脱脂米糠中にヘキサンは検出されなかった。
【0036】
過熱水蒸気発生装置と組み合わせた殺菌装置からなる脱脂米糠微粉末の殺菌システムを説明するための概略を図で示すと、図4の通りである。
図4に示される殺菌システム30は、過熱水蒸気発生システム31と殺菌装置32とが結合した構成となっていて、この過熱水蒸気発生システム31において33はボイラーを示し、そして34は過熱水蒸気発生装置を示している。
【0037】
殺菌装置32において、35は殺菌装置本体を示し、36は保温ヒーターを示し、37は除菌フィルターを示し、38は冷却送気ファンを示し、そして39は排気ファンを示している。
【0038】
図4の殺菌システム30によれば、図のAから管路40から給水される水はボイラー33で飽和水蒸気となって過熱水蒸気発生装置34に供給され、その結果この過熱水蒸気発生装置34内の誘導加熱コイル41で140〜200℃のような高温にまで加熱された過熱水蒸気は管路42を通って殺菌装置32の本体35の中に導入される。
【0039】
一方、被処理物定量フィーダー(図示せず)から矢印Bに沿って順に殺菌装置本体35の中に装入される脱脂米糠微粉末43は、殺菌装置本体35の中に導入された過熱水蒸気に曝されながらベルトコンベア44により殺菌装置本体35の中を移動し、その結果、この脱脂米糠微粉末43が最後に矢印Cに沿って殺菌装置本体35から連続的に排出されることによって、脱脂米糠微粉末43は殺菌される。
【実施例】
【0040】
ついで、実施例を参照して発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
実施例1:
まず、次のようにして、本発明による米糠食材を製造した。
米糠1000gにヘキサン2500m1を加えて米糠油をヘキサン中に抽出した後、この米糠を100〜110℃に加熱して脱溶剤する。次いで、それを空冷して脱脂米糠を得る。
得られた脱脂米糠を図1に示す構造の粉砕機に装入して微粉砕し、微粉末出口から脱脂米糠微粉末を採取する。得られた脱脂米糠微粉末の粒度分布は図5に示される通りで、その全てが1〜100μmの粒度範囲に、そして99容量%以上が1〜80μmの粒度範囲に入り、中心粒度径は20μmであった。
また、上記脱脂米糠微粉末に図4に示される殺菌装置システムを用いて過熱水蒸気による加熱処理を施して、この微粉末を殺菌するとともに脱溶剤し、それと同時に、脱農薬した。
【0041】
得られた米糠食材は、水分:1.0重量%、油脂分:約1.5重量%、タンパク質:約20重量%、繊維:約21重量%、糖質:約26重量%、灰分:約13.5重量%及びその他少量のビタミン類を含んでいた。
また、含有アミノ酸の分析を行ったところ、遊離γ−アミノ酸「ギャバ(GABA)」を80mg/100g含んでいることも解った。
【0042】
実施例2:
マトン肉(羊肉)100gに対して「だし」100mlを加え5〜10分間煮て得られた試験用の肉各100gを「たれ」に漬けて、漬けたれ焼肉を製造した。製造された各漬けたれ焼肉の各100gに対して、実施例1で製造した米糠食材:3gをたれに添加混合して、3〜12時間たれに浸漬した後、加熱処理を施した。
これらの試験品について本発明による食材の消臭効果を調べたところ、下記の表4に示される結果が得られた。
【0043】
この消臭効果の判定には、20名のパネラーが参加して、次のような基準で判定し、また米糠に特有な味、すなわち異味の有無についても調べた。
+2 全く消臭されていない
+1 無添加のものに比べて不快臭が幾分弱い
±0 無添加のものに比べて不快臭がかなり弱い
−1 嗅だだけでは不快臭は感じられないが、噛み締めると僅かに不快臭を感じる
−2 噛み締めても全く不快臭は感じない
また、これらの試験においては、比較のために、粒度範囲の上限が200μmを越える点だけが異なっている比較用米糠食材も製造して、同様の調査を行った。
判定結果は、20名のパネラーの判定結果の平均値となっている。
【0044】
2・1)マトン肉に対する米糠食材の消臭効果
【0045】
【表4】

【0046】
2・2)マトン入りハンバーグ
合挽ミンチ700g、マトン肉300g、全卵2個、オニオンソティー200g、生パン粉100gに食塩と胡椒、パプリカ、ナツメグを少々添加した。
マトン肉ミンチに米糠食材を添加し、約2時間熟成させた。その後、ミンチ肉をフライパンで焼き、焼き上げた後のミンチ肉の味と臭いについて調査したところ、表5に示されるような結果が得られた。
【0047】
【表5】

【0048】
3)鶏のキモ肉に対する米糠食材の消臭効果
鶏のキモ肉100gに対して「だし」100m1を加え5〜10分問煮て得られた試験用肉を「たれ」に漬けて、漬けたれ鶏焼肉を製造した。実施例2と同様に米糠食材の効果を調べたところ、表6に示されるような結果が得られた。
【0049】
【表6】

【0050】
実施例3:
「じゃこてん」に対する米糠食材の消臭効果及び品質改良効果の調査
「じゃこてん」は次の方法で製造した。
(1) 新鮮なうちに、魚の頭・内臓を取り除いて、その下ごしらえした魚を冷たい清水でよく洗って不要な皮や骨を取り除き、必要な身だけを採取する。
(2) その洗った魚の身から生臭を取り除くため、これを水に晒して、その後脱水する。
(3) 脱水した魚の肉をきめ細かくするために、ミンチにかける。
(4) ミンチにした魚肉に塩、澱粉、卵白、大豆蛋白、砂糖、調味料(アミノ酸等)及び保存剤(ソルビン酸)を加えて臼で練り上げ、この時に米糠食材を添加する。
(5) 練り上がった魚肉を板にのせて蒲鉾を製造し、その後、油で揚げる。
【0051】
実3・1)「じゃこてん」における米糠食材の消臭効果を調べたところ、表7
に示される結果が得られた。
【0052】
【表7】

【0053】
3・2)「じゃこてん」における米糠食材の品質改良効果
「じゃこてん」では、それに「腰」があることが高級品としての特徴であって、この「腰」の強度について、「じゃこてん」の食味実験で調査した。「腰」の強度は、下記の基準に基き、20名のパネラーによって調べたところ、表8に示される結果が得られた。
+2 全く「腰」がない
+1 やや「腰」がなくフニャフニャしている。
±0 「腰」は十分にある。
−1 やや「腰」はあるが、硬くなる傾向が認められる。
−2 硬くなり過ぎる。
【0054】
【表8】

【0055】
実施例4:
キムチにおける米糠食材の消臭効果
白菜を洗って、ゴミや虫をきれいに取り除いた後、白菜の葉の一枚ごとの間に塩を丁寧に塗り込み、一晩置いてじっくり発酵させる。数種の唐辛子、ニンニク、ショウガ、ニラ、ニンジン、アミエビなどを配合し、特製のタレを白菜に漬け込み、さらに一晩熟成させてキムチを製造した。米糠食材は上記の数種の添加物と同時に添加した。
実施例2と同様な方法で、消臭効果を調べたところ、表9に示される結果が得られた。
【0056】
【表9】

【0057】
実施例5:
納豆における米糠食材の消臭効果
市販の納豆に対し、実施例1で製造された米糠食材を「ふりかけ」のようにして混合して、実施例2と同様な方法で消臭効果について調べたところ、表10に示される結果が得られた。
【0058】
【表10】

【0059】
実施例6:
ラーメンにおける米糠食材の品質改良効果
小麦粉970gにかん粉20gと食塩10gを添加して380gの水を加え、これを1kg用ミキサーで混練後、30〜40分放置して熟成させ、圧延ロールで麺帯の状態にして20番の切刃で切断し、ラーメンの麺を製造した。上記の小麦粉を混練する際に、本発明による実施例1の米糠食材を小麦粉に混合した。
上記の麺で調理したラーメンの食味実験は8名のパネラーによって行なった。米糠食材を3重量%よりも多く添加すると、ぼそつきが出て米糠食材の添加は麺にとって不適当になるが、米糠食材には本来ビタミンB2やフェノール類が含まれているので、米糠食材を添加する場合には、ラーメンを黄色じ着色するために従来使われていた黄色の色素を添加する必要はない。また、3%重量以下添加する場合には食味上にも問題はなく、米糠食材は植物繊維及びマグネシウムのようなミネラル成分を強化するものとして役立つことができる。
【0060】
実施例7:
「味噌」に対する米糠食材の効果
甘口の麦味噌に米糠食材を3重量%添加して、十分に撹梓した。
食味の試験は、10名のパネラーで行なった。この試験では、鍋の中の水200m1に煮干を入れて沸騰させてから、中火で2〜3分間煮出した後、煮干を取り出して、米糠食材が添加された上記の麦味噌を熱い湯の中に溶かし込んだ。このようにして作られた味噌汁について味見したところ、米糠食材を添加した麦味噌を使った味噌汁の方が、麦味噌を添加しなかった麦味噌を使った味噌汁よりも美味しくて、甘味が僅かに強く感じられた。これは米糠食材中に含まれるイノシトールが甘味の増加に関与していたものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明において好ましく使われる乾式微粉砕機トルネードミルの概要を示す説明図である。
【図2】本発明による粉砕システムの一例を図解して示すフローシートである。
【図3】本発明で用いられる過熱水蒸気発生システムを図解して示す説明図である。
【図4】脱脂米糠微粉末の殺菌のために使用される殺菌システムを図解して示す説明図である。
【図5】本発明によって製造された米糠食材粒度分布の一例を示す粒度分布図である。
【符号の説明】
【0062】
1、11:サイクロンミル
2 :原料入口
3、4 :ロ−タ−
5、15:微粉砕チャンバ−
6、16:微粉砕物出口
7 :サイクロン
8 :バグフィルター
9 :ブロア
10 :振動フィーダー
10a :排出口
12 :原料入口
M1、M1’ :高速回転モ−ター
R、R’、43:脱脂米糠微粉末
P、P’:微粉砕物
S :粉砕システム
C :粉砕制御盤
20、31 :過熱水蒸気発生システム
21、33 :ボイラー
22、24、40、42 :管路
23、34 :過熱水蒸気発生装置
25 :高周波加熱電源
26 :高周波ケーブル
27 :温度監視ボックス
28 :電線
30 :殺菌システム
32 :殺菌装置
35 :殺菌装置本体
36 :保温ヒーター
37 :除菌フィルター
38 :冷却送気ファン
39 :排気ファン
41 :誘導加熱コイル
44 :ベルトコンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠食材の製造方法であって、油分が6重量%以下となるまで米糠を溶剤で脱脂した後、この脱脂糠を微粉砕し、ついで、微粉砕された脱脂米糠微粉末に過熱水蒸気を接触させる熱処理を施して、脱脂米糠微粉末を殺菌するとともに脱溶剤することを特徴とする、米糠食材の製造方法。
【請求項2】
前記の脱脂米糠微粉末の中心粒度径が20μm以下である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記の微粉砕がサイクロンミルを用いて遂行される、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記の殺菌及び脱溶剤とともに脱農薬も行われる、請求項1ないし3のいずれかに記載された製造方法。
【請求項5】
前記の殺菌及び脱溶剤、あるいは更に脱農薬を達成するための熱処理が、温度140〜200℃の過熱水蒸気を用いて5〜60秒間の間行われる、請求項1ないし4のいずれかに記載された製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された製造方法によって得られた米糠食材を、鳥獣又は魚を原料とする加工食品、大豆製品、米飯、めん類、お好み焼き、小麦粉製品、コンニャク、キムチ及び菓子に添加して、これらの食品の添加成分として使用する方法。
【請求項7】
前記の畜肉又は魚肉の加工食品がハンバーグ、ソーセージ、蒲鉾又は竹輪である、請求項6記載の使用方法。
【請求項8】
前記の大豆製品が味噌又は納豆である、請求項6記載の使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−54586(P2008−54586A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235702(P2006−235702)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(506296053)有限会社 上州ふる里食品 (1)
【Fターム(参考)】