説明

米飯成型装置

【課題】安全に成形を行うことができる米飯成形装置をより安価に提供する。
【解決手段】成形ローラ31a,31bの凹型面31が上流側から下流側に向かって移動するのに伴い、凹型面31の内側から外側に向かって突出する離型手段としての離型板4を設け、離型板4によって凹型面31内に貼り付いた米飯成形物Rを離型させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、にぎり寿司用のシャリ玉などを作る米飯成型装置に関し、さらに詳しく言えば、型離れのよい米飯成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
すし飯用のシャリ玉を量産する装置の1つとして、例えば特許文献1に記載の握り玉成形装置(米飯成形装置)がある。この米飯整形装置は、表面に米飯が充填される凹型面を備えた左右一対の成形ローラを有し、凹型面内にすし飯を充填した状態で成形ローラ同士を互いに向き合う方向に回転させることで各凹型面内のシャリ玉が俵状のシャリ玉が圧縮成形される。
【0003】
これによれば、成形ローラを用いることでシャリ玉を効率的に大量生産できるが、成形ローラを用いたシャリ玉の成形は、凹型面内にシャリが付着しやすく、そのままでは歩留まりが低い。そこで歩留まりを高めるため、成形ローラを離型性のよい材料(例えば四フッ化エチレン樹脂など)で形成したり、凹型面の表面をシボ加工してシャリが付着しにくくしていた。それでもシャリが付着する場合は、凹型面に植物油などを塗布して凹型面に付着しにくくしていた。
【0004】
しかしながら、上述した四フッ化エチレン樹脂は、米飯への剥離性がよい反面、材料コストが高い。さらには、材質的にも射出成形が困難なために、切削加工で作るため、加工時間やコストが高くなってしまう。また、従来の成形装置の1つには、成形されたシャリ玉をピックアップして搬送する搬送機能を備えたものもあるが、成形ローラにすし飯が付着したまま移動すると、定位置外で放出されてエラーが発生し、動作不良を起こすおそれがあった。
【0005】
また、寿司はヘルシー食事である印象を持つ人が多いことから、植物油を用いるという行為はマイナスイメージとなり、植物油を用いることなくシャリ玉を作ることが好ましい。また、植物油などを塗布する場合は、ある一定時間にわたってシャリ玉を生産し続けると、油ぎれを起こすため、定期的に機械を止めて油を塗布する必要があり、手間と時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−14635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、安全に成形を行うことができる米飯成形装置をより安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、水平回転軸を中心に互いに相反する方向に回転する2つの成形ローラを有し、上記各成形ローラの外周面には、米飯成形物を成形する凹型面が設けられ、上記成形ローラ同士を回転させながら、その上流側から上記米飯を投入し、上記凹型面内で圧縮成形して、下流側から上記米飯成形物を放出する米飯成形装置において、上記凹型面が上流側から下流側に向かって移動するのに伴って、上記凹型面内から突出する離型手段を有し、上記凹型面内で形成された上記米飯成形物を上記離型手段によって離型させることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記離型手段は、上記凹型面による圧縮成形後に上記凹型面内に突出することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記成形ローラには、円周方向に沿って一周するガイド溝が設けられており、上記ガイド溝に上記離型手段としての離型板が挿入されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上記請求項3において、上記ガイド溝および上記離型板は、上記成形ローラの回転軸線に沿って少なくとも1つ設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、上記請求項3または4において、上記離型板は円弧状もしくは直線状の離型面を有し、上記離型面は、上記凹型面が下流側に回転移動してくるのに伴い、その高さが上記凹型面の底面から外周面に向かって徐々に増えるように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、凹型面が上流側から下流側に向かって移動するのに伴って凹型面内から突出する離型手段を有し、凹型面内で成形された米飯成形物を離型手段によって離型させることで、仮に米飯成形物が凹型面内に付着したまま移動しても、米飯成形物がほぼ定位置に放出することができる。したがって、成形後のシャリ玉を回収したり、搬送したりするための機構を必要とせず、よりシンプルな構成でシャリ玉を大量生産できる。さらには、植物油などを塗布する必要がないため、生産コストを抑えることができるばかりでなく、洗浄などのメンテナンスがより容易になる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、凹型面による圧縮成形後に離型手段が凹型面内に突出するようになっていることにより、シャリ玉の圧縮成形時に離型手段が邪魔になることがないため、綺麗な成形物を作ることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、成形ローラに円周方向に沿って一周するガイド溝を設け、ガイド溝に離型手段としての離型板が挿入することで、簡単な構成で凹型面内に詰まった米飯成形物を取り除くことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、ガイド溝および離型板を成形ローラの回転軸線に沿って少なくとも1つ設けられていることで、凹型面内に残った米飯成形物を壊すことなく確実に外すことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、離型板は円弧状もしくは直線状の離型面を有し、離型面が凹型面が下流側に移動してきた際に凹型面の底面から外周面に向かって張り出すように配置されていることにより、凹型面内に米飯成形物が貼り付いた場合にのみ、その米飯成形物を強制的に凹型面内から離型させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る米飯成形装置の斜視図。
【図2】上記米飯成形装置の成形ローラと離型板の拡大分解斜視図。
【図3】上記成形ローラと離型板の配置を説明する正面図。
【図4】(a)〜(c)米飯成形の工程を説明する説明図。
【図5】凹型面に米飯成形物が貼り付いた状態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、この米飯成形装置1は、例えばテーブルなどの被設置面に設置される基台1aの上に矩形状の装置本体1bを備え、装置本体1bの上部にホッパー(図示しない)が着脱可能に取り付けられる。
【0021】
装置本体1bの前面は、保護パネル(図示しない)によって覆い隠されている。保護パネルは、後述する圧縮部2および成形部3の各ローラの軸方向の端面を塞いで米飯の漏出を防止する端板としての役目と、その内部に埃などが入り込まないようにするための仕切板としての役目を果たしている。メンテナンス時には、保護パネルを外すことにより、図1に示すような成形機構が現れるようになっている。
【0022】
図1において、ホッパーは取り外された状態であるが、通常、ホッパーは、その内壁面が上部から下部にかけてV字状に傾斜するように形成されており、上部から投入された米飯が徐々に下流側に流れるようになっている。本発明において、ホッパーの具体的な構成は任意であってよい。
【0023】
装置本体1bの前面中央には、ホッパーから送り出された米飯を圧縮しながら送り出す圧縮部2と、同圧縮部2で圧縮された米飯をシャリ玉に成形する成形部3とを備えている。
【0024】
圧縮部2は、水平回転軸22を中心に互いに相反する方向に回転する左右一対の送りローラ2a,2bを備えている。送りローラ2a,2bは、合成樹脂の成型品からなり、表面に半円状の送り溝21が円周方向に沿って連続的に形成された歯車状に形成されている。送りローラ2a,2bの表面に形成される送り溝21の形状は任意であってよい。
【0025】
この実施形態において、圧縮部2は、左右一対の送りローラ2a,2bを用いて、上流側から送り込まれるすし飯を圧縮して下流側に排出するようにしているが、例えばベルト状やウォーム状であってもよい。すなわち、送りローラ2a,2bは、ホッパーから送り出された米飯を適度な状態まで圧縮しつつ下流側に送り出すことができるならば、その送り出し形態や形状は仕様に応じて任意に選択できる。
【0026】
次に、成形部3は、送りローラ2a,2bから送り出されたすし飯を俵状のシャリ玉へと成形する左右一対の成形ローラ3a,3bを備えている。ここで、成形ローラ3a,3bは左右ほぼ同一形状であるため、一方の成形ローラ3aについてのみ説明する。
【0027】
図2および図3を参照して、成形ローラ3aは、所定の水平回転軸34を中心に回動可能に取り付けられており、この例では合成樹脂の成型品からなる。成形ローラ3aの表面には、すし飯が充填される凹型面31が設けられている。
【0028】
凹型面31は、ほぼU字状に形成されており、成形ローラ3aの軸線方向に沿ってシャリ玉をほぼ半分に分割した容積とほぼ同じ容積を有する。この例において、凹型面31は成形ローラ3aの円周方向に60°間隔で6箇所設けられているが、凹型面31の設置数や設置間隔などは仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0029】
成形ローラ3aの軸線方向のほぼ中央には、離型板4が差し込まれるガイド溝32が設けられている。ガイド溝32は、成形ローラ3aの表面から中心に向かって形成された環状溝であって、その中心には離型板4の軸受面41を支持するためのガイド軸33が設けられている。
【0030】
ガイド軸33は、成形ローラ3aの回転軸34を中心に同軸に配置されており、ガイド軸33に沿って離型板4の軸受面41が案内されるようになっている。図2に示すように、離型板4は、上述したガイド溝32に沿って挿入可能な板体からなり、上述した軸受面41が、その先端側にC字状に設けられている。
【0031】
軸受面41は、離型板4の先端側にガイド軸33に合わせてC字状に切り欠かれた切欠部であり、軸受面41側を先端として、離型板4をガイド溝32に沿って挿入し、ガイド軸33に合致させることにより、図3に示すように、軸受面41がガイド軸33に保持されるようになっている。
【0032】
離型板4の外周面には、凹型面31内に付着した米飯成形物を離型させるための離型面42が設けられている。図3に示すように、離型面42は好ましくは円弧状の湾曲面からなり、凹型面31が下流側に移動してくることで、凹型面31の底部から突出するように現れるようになっている。離型面42は、直線状であってもよい。
【0033】
離型板4には、離型板4を米飯成形装置1に固定するための保持孔43が設けられている。保持孔43は、軸受面41と対向する側の端部に設けられた貫通孔であって、成形ローラ3a,3bに隣接して立設された取付軸44に差し込まれることにより、米飯成形装置1に保持されるようになっている。
【0034】
離型面42は、少なくとも1つ設けられていればよく、すなわち、離型板4の中心線を挟んで半分の形状であれば、離型手段として機能するが、その場合、軸受面41が半分となり、ガイド軸33に引っ掛からなくなってしまうため、別の固定手段が必要となる。
【0035】
このような理由からこの実施形態において、離型面42は、離型板4の中心線を挟んで左右対称に形成されている。これによれば、上述した固定手段を用いることなく、ガイド軸33で支持することができるし、さらには、離型板4を裏返すことで、左右の成形ローラ3a,3bのガイド溝32に取り付けることができる。
【0036】
この例において、ガイド溝32および離型板4は、成形ローラ3aの軸線方向の中央に1本のみ設けられているが、複数箇所設けられていてもよい。複数箇所設けられる場合には、それらが等間隔で配置されていることが好ましい。
【0037】
基台1bには、成形部3で成形され、放出されたシャリ玉を受ける回転ステージ5が設けられている。回転ステージ5は、所定の駆動手段を介して回転する回転盤である。回転ステージ5の具体的な構成については、本発明において任意であってよい。
【0038】
圧縮部2,成形部3および回転ステージ5は、装置本体1bの側面に設けられた手動式のハンドル6を回動することによって、それらが同期的に回転するようになっている。この例において、米飯成形装置1の駆動手段は、もっともシンプルな手動式であるが、言うまでもなく、これらは電動式であってもよいし、さらにコンピュータを用いて全自動で制御してもよい。
【0039】
次に、図4を参照しながら、米飯成形装置1の成形手順の一例について説明する。まず、すし飯が充填された図示しないホッパーを装置本体1bの上部に設置した状態で、ハンドル6を回転させると、圧縮ローラ2a,2bによって棒状に圧縮されたすし飯Rが圧縮ローラ2a,2bの回転に伴って、図4(a)に示すように、成形ローラ3a,3bの凹型面31,31内に供給される。
【0040】
さらにハンドル6を回してゆくと、図4(b)に示すように、凹型面31,31は、下流に向かって回転しつつ、成形ローラ3a,3bが互いに内向きに回転することで対向し、凹型面31,31内に充填されたすし飯Rがシャリ玉状に圧縮成形される。
【0041】
成形ローラ3a,3bがさらに回転してゆくと、図4(c)に示すように、凹型面31,31は下流側に向かって徐々に開放され、これに伴い、成形されたシャリ玉Rが回転ステージ5の上に放出される。
【0042】
凹型面31,31がシャリ玉Rの開放位置を過ぎてさらに回転すると、凹型面31,31の底面から離型板の離型面42が現れ始め、さらに回転するのに伴って、離型面42の底面からの高さが徐々に高くなるようになっている。
【0043】
これによれば、図5に示すように、開放位置を過ぎてもなお、凹型面31,31の内側にシャリ玉Rが付着していると、成形ローラ3a,3bの回転に伴って、シャリ玉Rの底面が離型板4の離型面42に沿って強制的に凹型面31から持ち上げられ、凹型面31から離型される。
【0044】
この例において、凹型面31は、にぎり寿司用のシャリ玉を成型する成形型を例に取って説明したが、本発明の成形ローラ3と離型板4との組合せはこれ以外の成形用途としても用いることができる。
【0045】
すなわち、シャリ玉以外におにぎりや餅などの成形にも用いることができるし、さらにはクッキーやパンなどの成形用としても用いることができる。このような用途も本発明に含まれる。
【0046】
また、この例において、成形ローラ3a,3bは、左右対称の形状に形成されているが、例えば一方の成形ローラ3aにのみ凹型面31が形成され、他方の成形ローラ3bは凹型面31がない単なるローラであって、成形ローラ3aの凹型面31内の充填物を圧縮するような左右非対称の成形ローラを用いた場合であってもよい。いずれにせよ、凹型面31を備えた成形ローラに対して本発明の離型板4を適用することで、同様の離型効果が奏される。
【符号の説明】
【0047】
1 米飯成形装置
2 圧縮部
2a,2b 圧縮ローラ
3 成形部
3a,3b 成形ローラ
4 離型板
5 回転ステージ
R すし飯(シャリ玉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転軸を中心に互いに相反する方向に回転する2つの成形ローラを有し、上記各成形ローラの外周面には、米飯成形物を成形する凹型面が設けられ、上記成形ローラ同士を回転させながら、その上流側から上記米飯を投入し、上記凹型面内で圧縮成形して、下流側から上記米飯成形物を放出する米飯成形装置において、
上記凹型面が上流側から下流側に向かって移動するのに伴って、上記凹型面内から突出する離型手段を有し、上記凹型面内で形成された上記米飯成形物を上記離型手段によって離型させることを特徴とする米飯成形装置。
【請求項2】
上記離型手段は、上記凹型面による圧縮成形後に上記凹型面内に突出することを特徴とする請求項1に記載の米飯成形装置。
【請求項3】
上記成形ローラには、円周方向に沿って一周するガイド溝が設けられており、上記ガイド溝に上記離型手段としての離型板が挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の米飯成形装置。
【請求項4】
上記ガイド溝および上記離型板は、上記成形ローラの回転軸線に沿って少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項3に記載の米飯成形装置。
【請求項5】
上記離型板は円弧状もしくは直線状の離型面を有し、上記離型面は、上記凹型面が下流側に回転移動してくるのに伴い、その高さが上記凹型面の底面から外周面に向かって徐々に増えるように配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の米飯成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152150(P2012−152150A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14702(P2011−14702)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】