説明

籾摺り処理システム

【課題】揺動式選別部を用いて効率的な選別を行いながらも、一部脱ぷ籾に肌ずれが発生するリスクを可及的に低減することのできる籾摺り処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】籾摺り処理システムにおいて、ロール間の圧着により初期の籾摺り処理を行うロール式脱ぷ部と、ロール式脱ぷ部の下手側にある風選部と、ロール式脱ぷ部で脱ぷ処理され、風選部で風選された穀粒と未脱ぷ籾とを選別する揺動選別部と、揺動選別部で選別された未脱ぷ籾を再度籾摺り処理する脱ぷファンからなる衝撃式脱ぷ部とよりなり、しかも、衝撃式脱ぷ部で籾摺り処理された穀粒と籾殻は、ロール式脱ぷ部の下手側の風選部に還流して風選し、再度揺動選別部において揺動選別するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺り処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の籾摺り設備には、一対の脱ぷロール間に籾を供給して脱ぷするロール式脱ぷ部や、脱ぷにより生じた籾殻を除去する風選部、籾殻が除かれて残存した玄米や脱ぷされなかった籾(以下、両者を総称して「穀粒」ともいう。)をそれぞれ選別する揺動選別部が設けられている。
【0003】
特に、ロール式脱ぷ部の脱ぷロールは、摩擦力による玄米への傷つき(肌ずれ)を防止するため、脱ぷ率を8〜9割程度に留めるよう脱ぷロール間における圧着力を調整するようにしている。
【0004】
そして、脱ぷされなかった籾は再びロール式脱ぷ部に送って脱ぷする一方、選別された玄米は製品玄米として次工程へ送るようにしている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−330936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、揺動式選別部は、大量の穀粒を効率的に選別できるという長所があるものの、穀粒の比重や滑りやすさの違いによって選別を行うため、脱ぷ処理に供されたにもかかわらず脱ぷされなかった籾(以下、未脱ぷ籾という。)の中には、籾を被覆する籾殻が一部のみ剥皮された一部脱ぷ籾も含まれてしまう場合がある。
【0007】
このような一部脱ぷ籾は、既に玄米が一部露出しているため、複数回脱ぷロールに供されると、露出部分が肌ずれを起こしてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、揺動式選別部を用いて効率的な選別を行いながらも、一部脱ぷ籾に肌ずれが発生するリスクを可及的に低減することのできる籾摺り処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、籾摺り処理システムにおいて、ロール間の圧着により初期の籾摺り処理を行うロール式脱ぷ部と、ロール式脱ぷ部の下手側にある風選部と、ロール式脱ぷ部で脱ぷ処理され、風選部で風選された穀粒と未脱ぷ籾とを選別する揺動選別部と、揺動選別部で選別された未脱ぷ籾を再度籾摺り処理する脱ぷファンからなる衝撃式脱ぷ部とよりなり、しかも、衝撃式脱ぷ部で籾摺り処理された穀粒と籾殻は、ロール式脱ぷ部の下手側の風選部に還流して風選し、再度揺動選別部において揺動選別するように構成した。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、請求項1に記載の籾摺り処理システムにおいて、揺動選別部において選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することに特徴を有する。
【0011】
また、請求項3に係る発明では、請求項1に記載の籾摺り処理システムにおいて、揺動選別部における揺動板の籾層排出位置に配設した仕切板を左右位置調整自在に構成するとともに、仕切板の位置に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ロール間の圧着により初期の籾摺り処理を行うロール式脱ぷ部と、ロール式脱ぷ部の下手側にある風選部と、ロール式脱ぷ部で脱ぷ処理され、風選部で風選された穀粒と未脱ぷ籾とを選別する揺動選別部と、揺動選別部で選別された未脱ぷ籾を再度籾摺り処理する脱ぷファンからなる衝撃式脱ぷ部とよりなり、しかも、衝撃式脱ぷ部で籾摺り処理された穀粒と籾殻は、ロール式脱ぷ部の下手側の風選部に還流して風選し、再度揺動選別部において揺動選別するように構成したため、揺動式選別部を用いて効率的な選別を行いながらも、一部脱ぷ籾に肌ずれが発生するリスクを可及的に低減することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、揺動選別部において選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することとしたため、未脱ぷ籾をさらに効率よく脱ぷさせることができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、揺動選別部における揺動板の籾層排出位置に配設した仕切板を左右位置調整自在に構成するとともに、仕切板の位置に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することとしたため、揺動選別部の選別状態に応じて衝撃式脱ぷ部での脱ぷ効率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る穀物調整設備のフローシートである。
【図2】本実施形態に係る穀物調整設備の外観を示した説明図である。
【図3】本実施形態に係る穀物調整設備の外観を示した説明図である。
【図4】脱ぷ風選装置の構成を示した説明図である。
【図5】揺動選別装置の構成を示した説明図である。
【図6】揺動選別装置の構成を示した説明図である。
【図7】衝撃式脱ぷ機の構成を示した説明図である。
【図8】設備制御装置の外観を示した説明図である。
【図9】穀物調整設備の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】籾量−脱ぷファン回転数テーブルを示した説明図である。
【図11】ファンモータの回転数制御を行う際のフローである。
【図12】仕切位置−脱ぷファン回転数テーブルを示した説明図である。
【図13】ファンモータの回転数制御を行う際のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明に係る籾摺り処理システムを適用した穀物調製設備のフローシートであり、図2は同穀物調製設備の正面右側から見た斜視図であり、図3は、同穀物調製設備の正面左側から背面側に回り込んで見た斜視図である。
【0017】
図1に示すように、穀物調整設備1は、原料昇降機10、ロールタンク11、脱ぷ風選装置12、混合粒昇降機13、一番物ホッパー14、揺動選別装置15、玄米昇降機16、衝撃式脱ぷ機17などが備えられており、籾を原料として供給することで、設備制御装置18(図2参照)にて各部の制御を行いながら脱ぷ、選別を行い、玄米を製造するための設備である。
【0018】
穀物調整設備1は、図2及び図3に示すように、脱ぷ風選装置12を揺動選別装置15上に載設して構成しており、揺動選別装置15上部の外周囲に作業フロア2aが横外方への張出し状に設けられるとともに、作業フロア2aへの昇降移動用の階段2bが設けられている。
【0019】
先ず、図1のフローに沿って各図面を参照しながら、各部の構成について説明する。図1に示すように、原料昇降機10は、前工程の粗精選処理を終えた原料籾を供給口10aに供給することで、籾を上昇搬送する。搬送された籾は、原料昇降機10の上端に形成された原料出口10bから流出し、ロールタンク11内へ落下する。
【0020】
ロールタンク11は、籾を一時貯留するためのものであり、その取出し口11aに設けられた原料供給機構11bにより、脱ぷ風選装置12へ籾を定量供給する機能を有している。
【0021】
脱ぷ風選装置12は、供給された籾の脱ぷ処理を行うロール式脱ぷ部25と、脱ぷ処理後の処理物から籾殻を除去する風選部26とを備えている。
【0022】
ロール式脱ぷ部25は、内蔵した一対の脱ぷロール20間の圧着により初期の籾摺り処理を行う部位である。
【0023】
具体的に説明すると、ロールタンク11から供給された籾は、図4に示す原料通路21を通じて、ロール式脱ぷ部25内の一対の脱ぷロール20上に落下される。脱ぷロール20は、図示しない脱ぷロールモータ20aにより、僅かな間隙を隔てて互いに異なるスピードで内巻き方向へ回転しており、落下した籾を挟み付けてロールに圧着させ、摩擦することにより脱ぷ処理を行う。
【0024】
また、ロール式脱ぷ部25には、図示しない脱ぷロール間隙調整機構20bが配設されている。この脱ぷロール間隙調整機構20bは、脱ぷロール20に接続されたエアシリンダ(図示せず)を有しており、接続されたエアチューブ20cに供給する圧搾空気の圧力を変更することにより、エアシリンダを駆動させて脱ぷロール20の圧着力を変更可能に構成している。また、脱ぷロール間隙調整機構20bは、設備制御装置18と電気的に接続されており、設備制御装置18からの間隙調整信号を受信することにより、エアチューブ20cに供給する圧搾空気の圧力調整を行う。
【0025】
脱ぷロール20にて脱ぷ処理された処理物は、案内板22a,22bに案内されて落下口23から風選部26へ落下する。なお、ここで処理物には、脱ぷ処理により生じた玄米、籾殻の他、脱ぷされなかった籾や、一部脱ぷ籾、しいな(未熟米)等が含まれている。
【0026】
風選部26では、脱ぷ風選装置12の下部に設けられた吸気ファン24(図1参照)の吸引力によって内部の空気が流動しており、この流動する空気によって、籾殻の除去を行う。
【0027】
具体的には、風選部26は、図4に示すように、同風選部26の略中央部に開口した吸引口27から前述の吸気ファン24により風選部26内部の空気を吸引しつつ、脱ぷ風選装置12の下方に形成した空気入口37から空気を流入させることにより、風選部26内部に気流を発生させるようにしている。
【0028】
また、風選部26の内部は、処理物を適正に分離できるよう、仕切を設けて空気流路を形成しており、分離された処理物を適宜搬出できるよう構成している。
【0029】
すなわち図4に示すように、風選部26には、裏面壁30に複数の板状体を断続的に立設して内部空間31の左下側から右上方向へかけて形成した風選案内板32と、風選案内板32の右上側先端部に達した気流を下方へ向けて案内する円弧状案内板33と、同円弧状案内板33に沿って下方へ案内された気流を風選案内板32の下面側へ案内する吸引口案内板34とが備えられている。
【0030】
風選案内板32は、大別して3つの部位から構成している。すなわち、図中左側端部の低い位置に配設された第1風選案内板32aと、風選案内板32の略中央位置に配設された第2風選案内板32bと、同中途部から右上端にかけて配設され先端部を下方へ向けて円弧状に湾曲させた第3風選案内板32cとがそれぞれ間隔を隔てて配設されている。
【0031】
第1風選案内板32aは、空気入口37から流入する空気流を風選部26の左側へ案内するための案内板である。
【0032】
第2風選案内板32b及び第3風選案内板32cは、案内板22bとの間に選別風路32dを形成して、気流とともに処理物を案内しながら風選するための案内板である。
【0033】
また、第1風選案内板32aと第2風選案内板32bとの間には、気流に流されにくい玄米や籾や一部脱ぷ籾(以下、一番物ともいう。)を取出す一番取出部35が備えられており、同一番取出部35に配設された一番取出オーガ35aを駆動することにより、脱ぷ風選装置12の裏面から一番物を取り出すことができるよう構成している。また、一番取出部35の裏面側には、混合粒昇降機13の供給口13aが配置されており、取り出された一番物は、一番物ホッパー14に投入されるべく、混合粒昇降機13によって上方搬送される。
【0034】
また、第2風選案内板32bと第3風選案内板32cとの間には、やや気流に流されやすいしいなを取出す二番取出部36が備えられており、同二番取出部36に配設された二番取出オーガ36aを駆動することにより、図4中紙面手前側に搬送されて二番落下路36bを介して穀物調整設備1の左側面部に設けた二番取出口36c(図2参照)より取り出されるよう構成している。
【0035】
そして、最も気流に流されやすい籾殻は、風選案内板32の右上端部に至ると、円弧状案内板33に気流とともに案内されて、塵埃分離室38に至る。この塵埃分離室38は、第3風選案内板32cと、円弧状案内板33と、吸引口案内板34に囲まれた比較的広い断面積を有する空間であり、気流の速度を低下させて気流から籾殻を重力分離させるようにしている。
【0036】
また、塵埃分離室38の下部には、重力分離された籾殻を取出すための籾殻取出部39が備えられており、同籾殻取出部39に配設された籾殻取出オーガ39aを駆動することにより、脱ぷ風選装置12の裏面から取出すことができるように構成している。
【0037】
籾殻が分離された気流は、第3風選案内板32cの湾曲先端部と吸引口案内板34との間の排風口40を通り、第3風選案内板32cの下面に沿いつつ吸引口27から吸引される。
【0038】
前述したように、脱ぷ処理に供された一番物は、混合粒昇降機13により上昇搬送されて一番物ホッパー14に貯留される。
【0039】
一番物ホッパー14は、一番物を一時貯留するためのものであり、その取出し口14aに設けられた一番物供給機構14b(図1参照)により、揺動選別装置15へ原料を定量供給する機能を有している。
【0040】
揺動選別装置15は、図5及び図6に示すように、外面ケーシング50により略密閉状に囲まれた空間内に、前後方向と左右方向の双方に傾斜された選別本体部51が配設されている。
【0041】
この選別本体部51は、上面に凹凸が形成された平板状の揺動選別板51aを複数段に積み重ねて構成している。
【0042】
また、選別本体部51は、同選別本体部51の下部に配設した揺動駆動部52に連結されており、同揺動駆動部52を駆動させることにより、選別本体部51(各揺動選別板51a)が揺動するよう構成している。
【0043】
また、選別本体部51の奥側である前後傾斜上流側には、供給タンク51bが固定されており、一番物ホッパー14から流下した一番物が、この供給タンク51bを介して複数の揺動選別板51aに分配されるよう構成している。
【0044】
また、選別本体部51の前面側である前後傾斜下流側には、揺動選別板51a上で選別されながら流下した一番物を、それぞれ種類別に仕分ける玄米仕切板53aと、未脱ぷ籾仕切板53bとが配設されている。
【0045】
玄米仕切板53aは、玄米と、玄米及び未脱ぷ籾の混合物とに仕分ける仕切板であり、また、未脱ぷ籾仕切板53bは、玄米及び未脱ぷ籾の混合物と未脱ぷ籾とに仕分ける仕切板である。また、玄米仕切板53aと未脱ぷ籾仕切板53bとは、両者間に架け渡した連結バー53cにて互いに連結されている(図6参照)。
【0046】
また、玄米仕切板53aには、仕切位置調整機構54が連結されており、同仕切位置調整機構54を駆動させることにより、玄米仕切板53aと、連結バー53cにより連結されている未脱ぷ籾仕切板53bとの仕切位置を調整可能に構成している。
【0047】
この仕切位置調整機構54は、位置調整モータ54aと、同位置調整モータ54aの駆動軸に取り付けられた回転軸54bと、回転軸54b上に形成された雄ネジ領域に螺合させた状態で玄米仕切板53aに連結される連結片54cとで構成している。
【0048】
位置調整モータ54aは、設備制御装置18に電気的に接続されており、同設備制御装置18からの位置調整信号を受信することにより、所定量だけ駆動軸を回転させる。回転軸54bは、54aの駆動軸の回動に伴って回転することにより、螺合させた連結片54cを左右方向へ移動させて、玄米仕切板53aと未脱ぷ籾仕切板53bとを共に移動させる。
【0049】
また、未脱ぷ籾仕切板53bの上部先端には、未脱ぷ籾の選別状況を検出するための選別状況検出センサ55が配設されており、同選別状況検出センサ55は、設備制御装置18に電気的に接続されている。
【0050】
設備制御装置18は、選別状況検出センサ55から送信される選別状況信号に応じて、位置調整モータ54aを駆動させることにより、選別状況に応じて各仕切板53a,53bの位置を調整可能としている。
【0051】
また、未脱ぷ籾仕切板53bには、同未脱ぷ籾仕切板53bの位置を検出するための仕切位置検出センサ53dが配設されている。この仕切位置検出センサ53dもまた設備制御装置18に電気的に接続されており、設備制御装置18に対して未脱ぷ籾仕切板53bの左右方向における位置情報を含む仕切位置検出信号を送信する。この仕切位置検出信号に含まれる未脱ぷ籾仕切板53bの位置に関する情報は、後述する設備制御装置18の制御部80に備えられた記憶部(RAM)の所定領域に記憶される。
【0052】
また、玄米仕切板53aの下部は、主に玄米などの高比重選別物を高比重選別物受部56へ案内するための高比重選別物案内板57aと、混合物を混合物ホッパー58へ案内するための混合物案内板57bとが、下方へ向けて拡開するY字状に取り付けられている。
【0053】
また、未脱ぷ籾仕切板53bの下部は、混合物を混合物ホッパー58へ案内するための混合物案内板59aと、未脱ぷ籾を未脱ぷ籾ホッパー60へ案内するための未脱ぷ籾案内板59bとが、下方へ向けて拡開するY字状に取り付けられている。
【0054】
これらの構成により、揺動選別板51aの左端から玄米仕切板53aまでの間に選別された高比重選別物は、玄米仕切板53aに仕分けられ、各揺動選別板51aの下流端部より落下して高比重選別物案内板57aに案内され、高比重選別物受部56内に収容される。高比重選別物受部56には、受け入れた高比重選別物を、玄米を回収するための玄米ホッパー61と、混合物ホッパー58とのいずれかに案内する切替案内板62が配設されている。
【0055】
この切替案内板62は、支点p1を中心に揺動可能に構成しており、図示しない切替レバーにより、選別本体部51の選別状況に応じて作業者が適宜切替操作する。
【0056】
例えば、高比重選別物が玄米である場合には、切替レバーを操作して玄米ホッパー61へ案内する一方、選別初期などのように高比重選別物が未脱ぷ籾が混入した玄米(混合物)である場合には切替レバーを操作して混合物ホッパー58へ案内する。なお、図4では、切替案内板62は、混合物ホッパー58へ混合物を案内する状態に切替られている。玄米ホッパー61へ案内された玄米は、玄米シュート63に落下し、玄米昇降機16によって次工程へ搬送される(図5及び図1参照)。また、混合物ホッパー58へ案内された混合物は、同混合物ホッパー58の下部に配設された混合物搬送装置64により、混合粒昇降機13の供給口13aへ送給されれ、再び一番物ホッパー14に投入される。
【0057】
また、玄米仕切板53aから未脱ぷ籾仕切板53bまでの間に選別された混合物は、両仕切板53a,53bに仕分けられ、揺動選別板51aの下流端部より落下して混合物案内板57bと混合物案内板59aとに案内され、混合物ホッパー58に収容される。
【0058】
また、未脱ぷ籾仕切板53bから揺動選別板51aの右端までの間に選別された未脱ぷ籾等は、未脱ぷ籾仕切板53bに仕分けられ、揺動選別板51aの下流端部より落下して未脱ぷ籾案内板59bに案内され、未脱ぷ籾ホッパー60に収容される。未脱ぷ籾ホッパー60に投入された未脱ぷ籾は、未脱ぷ籾ホッパー60の下部に配設された未脱ぷ籾流量センサ66を通過して、未脱ぷ籾搬送装置65により衝撃式脱ぷ機17へ送給される(図5参照)。未脱ぷ籾流量センサ66は、設備制御装置18に電気的に接続されており、同設備制御装置18に対して未脱ぷ籾の量に関する情報を含む未脱ぷ籾量信号を送信する。この未脱ぷ籾量信号に含まれる未脱ぷ籾の量に関する情報は、後述する設備制御装置18の制御部80に備えられた記憶部(RAM)の所定領域に記憶される。なお、図1に示すように、揺動選別装置15より搬出された未脱ぷ籾等を衝撃式脱ぷ機17へ送給する送給管84の中途部には、管路切替バルブ84aが配設されており、同管路切替バルブ84aには、ロールタンク返送管84bが延設されている(破線矢印で示す。)。このロールタンク返送管84bは、脱ぷ処理の対象物を麦とした場合に主に使用されるものである。管路切替バルブ84aは、送給する対象物を送給管84又はロールタンク返送管84bのいずれかに切り替える機能を有しており、麦の脱ぷ処理を行う場合には、揺動選別装置15にて選別された未脱ぷ麦を衝撃式脱ぷ機17に供することなく、ロールタンク11へ返送可能としている。ただし、本発明では、揺動選別装置15にて処理した処理物を、ロール式脱ぷ部の下手側の風選部に還流する点に特徴を有しており、以下において管路切替バルブ84aは、送給管84への流路が選択されているものとして説明する。
【0059】
また、送給管84の中途部には、異物排出バルブ85が配設されている。この異物排出バルブ85は、送給管84内に滞留する異物を送給管84外へ排出するためのバルブであり、同異物排出バルブ85を操作することにより、機外排出口85aから異物を排出可能に構成している。脱ぷ処理中に、一定時間毎にこの異物排出バルブ85の切替を行うことで、滞留する異物の除去を行う。
【0060】
衝撃式脱ぷ機17は、図7(a)に示すように、揺動選別装置15により選別された未脱ぷ籾を貯留する貯留タンク70と、未脱ぷ籾を剥皮する脱ぷ部71と、脱ぷされた処理物を空送する空送管72とが備えられており、未脱ぷ籾を再度籾摺り処理するための装置である。
【0061】
貯留タンク70は、略漏斗状の形状を有しており、その下部先端70aは、脱ぷ部71の略中央部に接続され脱ぷ部71に未脱ぷ籾を供給する。
【0062】
脱ぷ部71は、図7(b)に示すように、回動軸74aを有するファンモータ74と、回動軸74aに同軸状に取り付けられ半径方向外方へ向かう複数の回転翼73aを備えた脱ぷファン73と、脱ぷファン73が収容される外部ケーシング75とで構成している。
【0063】
ファンモータ74は、設備制御装置18に電気的に接続されており、設備制御装置18から送信されるファンモータ制御信号に応じた速度で回動軸74aを回動させる。
【0064】
脱ぷファン73は、放射状に複数配設された回転翼73aの中心側端部と、中央に配設される回動軸74aとの間に、ドーナツ状の分配空間73bが形成されており、貯留タンク70から供給される未脱ぷ籾は、この分配空間73bに導入され、回動する脱ぷファン73の遠心力によって、各回転翼73a間に分配される。各回転翼73a間に分配された未脱ぷ籾は、半径方向外方に移動するに従い、さらに大きな遠心力を受けることとなり、半径方向外方への力と回転方向の力を持った状態で、外部ケーシング75の内周面に衝突する。
【0065】
外部ケーシング75は、その内周面に合成樹脂(例えば、ウレタン樹脂)で形成したライナー材75bが貼付されている。図7(b)の拡大図に示すように、脱ぷファン73の回転に伴って回転翼73aの先端からライナー材75bへ向けて放出された未脱ぷ籾は、ライナー材75bからの摩擦力を受けながら、脱ぷファン73とライナー材75bとの間隙を回転方向へ移動しつつ脱ぷされ、玄米76と籾殻77とに分離される。
【0066】
空送管72は、脱ぷ部71にて脱ぷされた玄米76と籾殻77とを、脱ぷ風選装置12の風選部26へ空送するための管であり、その先端部72aは、ロール式脱ぷ部25の脱ぷロール20下部に望ませている(図4参照)。
【0067】
空送管72による玄米76及び籾殻77の空送は、脱ぷファン73の回転に伴って発生する気流によって行われる。
【0068】
したがって、衝撃式脱ぷ機17での再脱ぷにて生じた玄米76と籾殻77は、ロール式脱ぷ部25の下手側の風選部26に還流されることとなり、同風選部26にて風選されて籾殻77が除去され、揺動選別装置15に至ることとなる。
【0069】
このように、本実施形態に係る穀物調整設備1では、衝撃式脱ぷ機17を使用することとしたため、ロール式脱ぷ部25にて脱ぷしきれなかった少量の未脱ぷ籾の脱ぷ処理であれば極めて高効率の脱ぷを行うことができるため、未脱ぷ籾をロールタンク11に返すことなく、製品玄米として次工程に送ることが可能となる。
【0070】
また、未脱ぷ籾をロールタンク11に戻さないため、籾処理能率を飛躍的に向上させることができる。
【0071】
また、未脱ぷ籾を再びロール式脱ぷ部25にて脱ぷを行うことがないため、籾摺り能率のロスが大幅に軽減されると共に、無駄な循環による肌ずれの発生を低減することができる。
【0072】
また、衝撃式脱ぷ機17にて脱ぷした玄米76と籾殻77は、再び脱ぷ風選装置12の風選部26に投入(合流)するため、衝撃式脱ぷ機17専用の風選装置を別途設ける必要がなく、設備全体をコンパクトにすることができる。
【0073】
また、衝撃式脱ぷ機17は、脱ぷファン73による投げ出し力を生起するため、スロワー代わりとして使用することができ、同衝撃式脱ぷ機17の上部に設けた風選部26に処理物を送給するにあたり、専用の昇降機を設ける必要がなく、設備の構成をシンプルにすることができる。
【0074】
また、衝撃式脱ぷ機17は、脱ぷファン73により気流が発生するため、衝撃式脱ぷ機17にて脱ぷした玄米76及び籾殻77を風選部26に搬送するにあたり、前述の投げ出し力に加えて気流による追い風を利用することができ、風選部26への搬送をより円滑に行うことができる。
【0075】
次に、上述してきた穀物調整設備1の電気的構成、及び、穀物調整設備1全体を制御する設備制御装置18の構成について説明する。図8は設備制御装置18を示した説明図である。
【0076】
設備制御装置18は、内部にCPU、ROM、RAM等を備えた制御部80を備えており、玄米の生成に必要なプログラムを実行可能としている。また、制御部80内のRAMは、選別状況検出センサ55より送信される選別状況信号に含まれる選別状況の情報や、仕切位置検出センサ53dから送信される仕切位置検出信号に含まれる位置情報や、未脱ぷ籾流量センサ66から送信される未脱ぷ籾量信号に含まれる未脱ぷ籾量の情報が一時的に書き込まれて記憶される記憶部として機能する。これらの情報は、制御部80がプログラムを実行する際に参照される。
【0077】
また、設備制御装置18の正面部にはタッチパネル81が備えられており、制御部80に接続されている。このタッチパネル81は、操作入力部82と表示部83とが重ねられた状態となっており、使用者が制御部80に対して指示を行うための操作手段と、使用者に対する表示を行う表示手段とを兼ねている。
【0078】
また、制御部80には、図9に示すように、選別状況検出センサ55、仕切位置検出センサ53d、未脱ぷ籾流量センサ66、原料供給機構11b、脱ぷロールモータ20a、脱ぷロール間隙調整機構20b、吸気ファン24、一番物供給機構14b、揺動駆動部52、仕切位置調整機構54、ファンモータ74が接続されており、操作入力部82からの操作入力や、各センサからの信号入力に応じて、各部の制御を行うよう構成している。
【0079】
特に、本実施形態に係る穀物調整設備1では、選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御するよう構成している。以下、この構成について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0080】
制御部80内のROMには、図10に示す籾量−脱ぷファン回転数テーブルが予め記憶されている。この籾量−脱ぷファン回転数テーブルは、未脱ぷ籾流量センサ66から送信される未脱ぷ籾量信号に含まれる未脱ぷ籾の量の情報と、脱ぷファンの回転数とを対応付けたテーブルである。例えば、未脱ぷ籾流量センサ66から送信された未脱ぷ籾量信号に、未脱ぷ籾の量がA1〜A2の間の量であることを示す情報が含まれていた場合は、脱ぷファンの回転数をX1に設定し、未脱ぷ籾の量がA4〜A5の間の量であることを示す情報が含まれていた場合は、脱ぷファンの回転数をX4に設定することを示している。
【0081】
そして、制御部80のCPUは、図11に示すフローに従って処理を行う。すなわち、未脱ぷ籾流量センサ66から選別状況信号を受信すると、CPUは、受信した未脱ぷ籾量信号の情報を、RAMの所定アドレスに書き込みを行う(ステップS10)。
【0082】
次に、CPUは、ROMに記憶されている籾量−脱ぷファン回転数テーブルを参照し、未脱ぷ籾量信号の情報に応じた脱ぷファンの回転数を決定する(ステップS11)。
【0083】
そして、CPUは、ファンモータ74に対して、決定した回転数の情報を含むファンモータ制御信号を送信する(ステップS12)。
【0084】
このファンモータ制御信号を受信したファンモータ74は、同制御信号に応じた回転数で回動軸74aを回転させる。このように、本実施形態に係る穀物調整設備1では、揺動選別装置15において選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御する。
【0085】
〔変形例〕
上述の穀物調整設備1では、脱ぷファン73の回転数を、未脱ぷ籾の量に応じて制御することとしたが、例えば、未脱ぷ籾仕切板53bの位置に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御することとしても良い。以下、この構成について図12及び図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前述の穀物調整設備1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
制御部80内のROMには、前述の籾量−脱ぷファン回転数テーブルに替えて、図12に示す仕切位置−脱ぷファン回転数テーブルが予め記憶されている。この仕切位置−脱ぷファン回転数テーブルは、仕切位置検出センサ53dから送信される仕切位置検出信号に含まれる位置情報と、脱ぷファンの回転数とを対応付けたテーブルである。例えば、仕切位置検出センサ53dから送信された仕切位置検出信号に、未脱ぷ籾仕切板53bがB1〜B2の間に位置することを示す情報が含まれていた場合は、脱ぷファンの回転数をX1に設定し、未脱ぷ籾の量がB4〜B5の間に位置することを示す情報が含まれていた場合は、脱ぷファンの回転数をX4に設定することを示している。
【0087】
そして、制御部80のCPUは、図13に示すフローに従って処理を行う。すなわち、仕切位置検出センサ53dから仕切位置検出信号を受信すると、CPUは、受信した仕切位置検出信号に含まれる位置情報を、RAMの所定アドレスに書き込む(ステップS20)。
【0088】
次に、CPUは、ROMに記憶されている仕切位置−脱ぷファン回転数テーブルを参照し、仕切位置検出信号の位置情報に応じた脱ぷファンの回転数を決定する(ステップS21)。
【0089】
そして、CPUは、ファンモータ74に対して、決定した回転数の情報を含むファンモータ制御信号を送信する(ステップS22)。
【0090】
このファンモータ制御信号を受信したファンモータ74は、同制御信号に応じた回転数で回動軸74aを回転させる。このように、本変形例に係る穀物調整設備1では、未脱ぷ籾仕切板53bの位置に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御することとなる。
【0091】
上述してきたように、本発明に係る籾摺り処理システムでは、脱ぷロール20,20間の圧着により初期の籾摺り処理を行うロール式脱ぷ部25と、ロール式脱ぷ部25の下手側にある風選部26と、ロール式脱ぷ部25で脱ぷ処理され、風選部26で風選された穀粒と未脱ぷ籾とを選別する揺動選別部(例えば、揺動選別装置15)と、揺動選別部で選別された未脱ぷ籾を再度籾摺り処理する脱ぷファン73からなる衝撃式脱ぷ機17とよりなり、しかも、衝撃式脱ぷ機17で籾摺り処理された穀粒と籾殻は、ロール式脱ぷ部25の下手側の風選部26に還流して風選し、再度揺動選別装置15において揺動選別するように構成したため、揺動式選別部を用いて効率的な選別を行いながらも、一部脱ぷ籾に肌ずれが発生するリスクを可及的に低減することができる。
【0092】
また、揺動選別装置15において選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御することとしたため、未脱ぷ籾をさらに効率よく脱ぷさせることができる。
【0093】
また、揺動選別装置15における揺動選別板51aの籾層排出位置に配設した未脱ぷ籾仕切板53bを左右位置調整自在に構成するとともに、未脱ぷ籾仕切板53bの位置に応じて衝撃式脱ぷ機17における脱ぷファン73の回転翼73aの回転数を制御することとしたため、揺動選別板51aの選別状態に応じて衝撃式脱ぷ機17での脱ぷ効率を調整することができる。
【0094】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0095】
1 穀物調整設備
12 脱ぷ風選装置
15 揺動選別装置
16 玄米昇降機
17 衝撃式脱ぷ機
18 設備制御装置
20 脱ぷロール
25 ロール式脱ぷ部
26 風選部
51a 揺動選別板
53b 未脱ぷ籾仕切板
53d 仕切位置検出センサ
54 仕切位置調整機構
55 選別状況検出センサ
66 未脱ぷ籾流量センサ
73 脱ぷファン
73a 回転翼
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール間の圧着により初期の籾摺り処理を行うロール式脱ぷ部と、
ロール式脱ぷ部の下手側にある風選部と、
ロール式脱ぷ部で脱ぷ処理され、風選部で風選された穀粒と未脱ぷ籾とを選別する揺動選別部と、
揺動選別部で選別された未脱ぷ籾を再度籾摺り処理する脱ぷファンからなる衝撃式脱ぷ部とよりなり、
しかも、衝撃式脱ぷ部で籾摺り処理された穀粒と籾殻は、ロール式脱ぷ部の下手側の風選部に還流して風選し、再度揺動選別部において揺動選別するように構成した籾摺り処理システム。
【請求項2】
揺動選別部において選別した未脱ぷ籾の量に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することを特徴とする請求項1に記載の籾摺り処理システム。
【請求項3】
揺動選別部における揺動板の籾層排出位置に配設した仕切板を左右位置調整自在に構成するとともに、
仕切板の位置に応じて衝撃式脱ぷ部における脱ぷファンの回転翼の回転数を制御することを特徴とする請求項1に記載の籾摺り処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−40535(P2012−40535A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186390(P2010−186390)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】