説明

粉体フィラーのブレンド方法

【課題】ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合状態の良好な混合物を得るための混合方法を提供すること。
【解決手段】ペレット状熱可塑性樹脂60〜99重量部に対し、少なくとも、粉体フィラー1〜40重量部及び液体添加剤0.05〜0.6重量部を混合する方法であって、以下の第一工程及び第二工程を含む混合方法。
第一工程:上部及び下部に角度20〜60度のコーン部を有するタンブラータンクを備えたタンブラー混合機の該タンブラータンク内にペレット状熱可塑性樹脂の70重量%〜95重量%、液体添加剤全量をこの順で供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。
第二工程:前記タンク内の前記第一工程で得られた混合物の上に、粉体フィラー全量を供給し、さらに、該粉体フィラーの上に残りのペレット状熱可塑性樹脂の5〜30重量%を供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体フィラー含有樹脂組成物を製造する際などに利用できる、ぺレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体フィラー含有樹脂組成物は、粉体フィラーが微細であるほど強度と靭性のバランスが良くなるので、粉体フィラーとしては微細なものを使用することが好ましい。しかし、一方で、粉体フィラーが微細であると、押出機を用いて溶融混練する際のスクリュでの粉体フィラーの食い込みにより搬送効率が低下し、且つ、樹脂組成物中での粉体フィラーの分散が悪くなり、樹脂組成物の物性が低下する。
特許文献1には、平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂に20℃の粘度が0.1〜100センチポイズの液体を混合し、この混合物に平均粒子径0.001〜0.5mmの混合する技術が開示されている。
先行文献2には、平均一次粒径が0.1〜10μmのタルクと水溶性バインダーからなる顆粒状タルクを熱可塑性樹脂に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009− 40956号公報
【特許文献2】特開2006−111822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1の技術のように、樹脂原料としてペレット状樹脂を用いる場合には、混合機の形状、混合の手順等によっては、粉体フィラーの分散性がかえって悪くなるという課題があり、又、先行文献2の技術では、大粒径のフィラーの塊を作るので、粉体フィラーの搬送効率は高く、生産性は高いものの、粉体フィラーの分散性が悪くなるという課題がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合状態の良好な混合物を得るための混合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーとを混合する方法、さらに、得られた混合物を押出機等で溶融混練して樹脂組成物を製造する方法について鋭意検討した結果、ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合を、特定の形状のタンブラータンクを有するタンブラー混合機を用い、特定の順序で原料を仕込むことによって行うと、混合状態が良好な混合物が得られ、しかも、得られた混合物を押出機で溶融混練すると、安定して運転を実施することができ、粉体フィラーの分散性や各種物性に優れた樹脂組成物を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
ペレット状熱可塑性樹脂60〜99重量部に対し、少なくとも、粉体フィラー1〜40重量部及び液体添加剤0.05〜0.6重量部を混合する方法であって、以下の第一工程及び第二工程を含む混合方法。
第一工程:上部及び下部に角度20〜60度のコーン部を有するタンブラータンクを備えたタンブラー混合機の該タンブラータンク内にペレット状熱可塑性樹脂の70重量%〜95重量%、液体添加剤全量をこの順で供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。
第二工程:前記タンク内の前記第一工程で得られた混合物の上に、粉体フィラー全量を供給し、さらに、該粉体フィラーの上に残りのペレット状熱可塑性樹脂の5〜30重量%を供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明の混合方法を採用すれば、ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合状態の良好な混合物を得ることが出来る。また、本発明の混合方法で得られた混合物を押出機を用いて溶融混練すれば、粉体フィラーの食い込み等が起こらず、安定して溶融混練運転を実施することができ、粉体フィラーの分散性が良好で、かつ各種物性の良好な樹脂組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の混合方法において使用するタンブラー混合機の正面及び側面概略図である。
【図2】本発明の混合方法に引き続いて使用するのに適した同方向回転二軸押出機の概略図である。
【図3】実施例及び比較例で使用したタンブラータンクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の混合方法において使用するタンブラー混合機について、その一例の概略図である図1を使って説明する。
タンブラー混合機では、タンブラータンク(1)内に混合すべき原料を供給し、該タンブラータンクを回転又は振動させることにより原料を混合する。タンブラータンク(1)のタンク内径と高さの比は、1:1〜1:2であることが好ましい。本発明において使用するタンブラー混合機の混合能力を十分活用するためには、タンブラータンク(1)の内容積に対するペレットと粉体フィラーの容積は、40〜80%にするのが好しく、さらに好ましくは40〜70%である。この範囲であると混合の効率が良い。
本発明において使用するタンブラー混合機のタンブラータンクは、その上部及び下部にコーン部を有しており、その角度α(タンク断面においてコーン部外壁とタンク胴部外壁のなす角度から90度を引いた値(図1参照))は、20〜60度の範囲である。好ましくは30〜60度であり、さらに好ましくは35〜55度である。コーン部の角度をこの範囲に入る角度にすると、回転中のタンク内において角に留まるペレットを適切な量とすることができ、タンクと一緒に回転するペレットとの混合効率を高めることができる。
本発明においては、タンブラータンク内に原料を順次上から下に供給するので、原料投入口(2)は、タンブラータンクの上部(とりわけ、上部コーン部の頂上部分)に設置することが好ましい。一方、混合物排出口(3)は、混合物を抜き出すのでタンクの下方に設置することが好ましい。(4)は、タンクを掴む金属製のバンド、(5)は、タンブラー全体を支える支持体である。
【0011】
本発明においては、使用するタンブラー混合機のタンブラータンクの内部に、邪魔板(6)を設置することが好ましい。
邪魔板はタンク内の原料の移動を規制する役割を果たし、邪魔板を設置すると短時間で混合をすることが可能となり、混合効率が高まる。邪魔板は、原料の移動を規制するものであればその形状に限定はなく、必ずしも板状でなくてもよい。例えば、邪魔板として円柱状の棒を使用し、これをタンク内部に斜めに設置してもよいし、邪魔板として、山形鋼を使用し、これをタンク内部に斜めに設置してもよい。
もっとも、邪魔板は、タンク内部の掃除をするときには掃除時間が長くなるので、混合する粉体フィラーが少ない場合等には、必ずしも付ける必要はない。
【0012】
本発明においては、上述のようなタンブラー混合機を用いて、ペレット状熱可塑性樹脂60〜99重量部、少なくとも、粉体フィラー1〜40重量部と液体添加剤0.05〜0.6重量部を混合する。その際、以下の第一工程及び第二工程をこの順で実施することにより混合を行う。
【0013】
第一工程:タンブラー混合機のタンブラータンク内にペレット状熱可塑性樹脂(60〜99重量部)の70〜95重量%を供給し、次いで液体添加剤全量(0.05〜0.6重量部)を供給し、タンブラータンクの回転数を10〜50rpm、好ましくは15〜40rpm、さらに好ましくは15〜30rpmで、10〜30分、好ましくは10〜25分、さらに好ましくは、10〜25分混合する。回転数が高すぎたり、低すぎると混合効率は低下する。混合時間は、長過ぎると生産性が低下し、短いと混合不足になる。
【0014】
第二工程:タンブラータンク内の第一工程で得られた混合物の上に、粉体フィラー全量(1〜40重量部、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部)を供給する。その際、粉体フィラーは、第一工程で得られた混合物の上に満遍なく広げた方が、混合効率が良くなる。
次いで、この粉体フィラーの上に残りのペレット状熱可塑性樹脂5〜30重量%供給し、粉体フィラーが見えなくなるように覆い隠す。そして、タンブラータンクの回転数を10〜50rpm、好ましくは15〜40rpm、さらに好ましくは15〜30rpmで、10〜30分、好ましくは10〜25分、さらに好ましくは、10〜25分混合する。回転数が高すぎたり、低すぎると混合効率は低下する。混合時間は、長過ぎると生産性が低下し、短いと混合不足になる。
【0015】
第二工程で得られた混合物は、さらに二軸同方向回転押出機等により溶融混練することが好ましい。使用できる押出機としては、例えば、ドイツ連邦共和国COPERION社製ZSKシリーズ、日本国東芝機械製TEMシリーズ、日本製鋼所TEXシリーズ等が適している。
押出機のサイズは、スクリュ長径D=40〜200mmの範囲であることが好ましい。スクリュ長径を上記範囲とすることにより、高い生産量を確保し、コストの低減化を図りつつ、溶融混練時の過度の発熱を抑制することができる。
押出機の長さは、スクリュ長径の12〜60倍であることが好ましい。押出機の長さを上記範囲とすることにより、十分に混練を行うことができ、また酸化劣化を防止できる。
押出機に使われるモーターとしては、例えば、インバーターモーター、直流モーターを使用することができる。モーターの冷却には、空気冷却タイプと循環水冷却タイプがあるが、空気中にゴミをまき散らさないためにも循環水冷却タイプの方が好ましい。
押出機の混練ゾーンのニーディングブロックとしては、右回りニーディングブロック、中立ニーディングブロック、左回りニーディングブロック及び逆ねじ等が使用できる。押出機の混練ゾーンの下流側には、大気ベントや真空ベントを付けても良い。大気ベントの役割はガス抜きであるので、熱可塑性樹脂100重量部に対して粉体フィラーが20重量部以上供給される場合、大気ベントから粉体フィラーに含まれるガスを抜くのに適している。真空ベントは、熱可塑性樹脂の揮発分、分解物の除去等を除去するのに適しており、真空ベントの絶対圧力は、0.05〜0.9MPaであることが好ましい。
押出機として、第二供給口、第三供給口を有するものを使用し、ここから、熱可塑性樹脂や粉体フィラーを供給しても良い。
押出機のダイ部の先端には、通常、ダイプレートが設置される。ダイプレートのストランドの穴径は、1.5〜6.0mm程度であり、1穴当たり10〜40kg/hrの流量にするように穴数を調整することが好ましい。ストランドカット方式の場合、ダイプレートにはストランド出口にメヤニが発生することがあるので、空気を吹き付けるメヤニ除去装置を設置しても構わない。その際、空気は5μmのフィルターを通した後に使用することが好ましい。ストランドバスの冷却水も、10μm程度のフィルターを通した後に使用することが好ましい。また、カット方式として、ホットカット方式やアンダーウォーターカット方式を採用してもよい。ストランドカット方式で得られるペレットは、円柱状である。ホットカット方式とアンダーウォターカット方式で得られるペレットは、球状である。ペレットの目標平均サイズの設定値は、例えば、1〜6mmとすることができる。好ましくは2〜5mmで、さらにさらに好ましくは2.5〜3.5mmである。カッティング目標値を1〜6mmに設定されたペレットは、成形機スクリュ又は押出機スクリュで十分に混練することができる。
【0016】
本発明の混合方法においては、ペレット状熱可塑性樹脂60〜99重量部に対し、少なくとも粉体フィラー1〜40重量部、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部と、液体添加剤0.05〜0.6重量部とを混合する。
【0017】
以下、本発明において混合する原材料について説明する。
本発明において、ペレット状熱可塑性樹脂組成物とは、ペレット形状に成形された熱可塑性樹脂単体又は複数の熱可塑性樹脂のブレンド物をいう。
ペレット状熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルとアルケニル系樹脂のブレンド物、ポリスチレン系樹脂(ゼネラルパーパスポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・イソプレンブロック共重合体等)、ポリカーボネイト、ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、ホモポリオキシメチレン、コポリマーポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルニド、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6,T、ポリアミド9,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6)、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン及びポリエーテルケトンから選ばれた少なくとも1種の樹脂又は樹脂組成物が挙げられる。
好ましいペレット状熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンエーテルとアルケニル系樹脂のブレンド物、ポリカーボネイト、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルニド及びポリアミド樹脂である。さらに好ましいペレット状熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂のブレンド物及びポリスチレン系樹脂である。なお、ブレンド物は、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂をドライブレンドしたものでも、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂を溶融混練したコンセントレートでも構わない。
【0018】
ペレット状熱可塑性樹脂のペレット形状に限定はなく、例えば、円柱形のものや、球形のものを使用することができる。円柱のペレット場合、その直径は1〜6mm、長さは1〜6mm程度であることが好ましく、通常、直径3mm、長さ3mm程度である。また、球形ペレットの場合は、その直径1〜6mm程度であることが好ましく、通常、直径3mm程度である。また、球形ペレットは真球状であってもよいし、縦横比0.5〜0.9の楕円球状であってもよい。
【0019】
本発明の混合方法において使用する粉体フィラーの種類に限定はなく、例えば、ケイ酸カルシム、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種を使用することができる。
この中で好ましい粉体フィラーは、平均粒径が500μm以下のケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種である。さらに好ましい粉体フィラーは、タルク、炭酸カルシウムである。
なお、粉体フィラーの平均粒径は、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、光学顕微鏡もしくは、走査型電子顕微鏡等による画像上の粉体の投影像に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。
【0020】
本発明の製造方法において使用する液体添加剤は、液体であれば特に限定はなく、樹脂組成物の用途等に応じて適宜決定することができ、具体的には、蒸留水、イオン交換水、オイル(パラフィン系、ナフテン系、シリコン系)等を挙げることができる。
【0021】
本発明の混合方法においては、ペレット状熱可塑性樹脂、粉体フィラー及び液体添加剤に加えて、さらに、粉体フィラー分散剤(エチレンビスアマイド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸)、エラストマー、官能基付与剤(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸)、各種着色剤、着色補剤(酸化チタン等)、紫外線吸収剤、耐電防止剤、安定剤(酸化亜鉛、硫化亜鉛、燐系、イオウ系、ヒンダードフェノール系等)を混合することが出来、これらは、第一及び第二工程のいずれかの任意の時点でタンブラータンク内に供給することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に説明する。
実施例、比較例においては、タンブラー混合機として、図3(1)〜(3)に示すようなタンブラータンクを有するものを使用した。いずれも、タンク内径40cm、高さ70cmで、(1)は、その上部及び下部に角度αが45度のコーン部を有し、(2)は、下部にのみ角度αが45度のコーン部を有し、(3)は、コーン部を有しない。混合条件は、実施例、比較例すべてにおいて、回転数23rpm、混合時間各15分とした。
【0023】
第一工程、第二工程を経て得られた混合物は、さらに二軸同方向回転押出機で溶融混錬し、樹脂組成物のペレットを得た。二軸同方向回転押出機としては、コペリオン社製ZSK40MC(12バレル)を使用した。
そのスクリュ構成とバレル構成は、次の通りである。
No.1バレル :第一供給口が設けられている。
No.2バレル :搬送ゾーン
No.3〜4バレル :第一混練ゾーン
No.5バレル :大気ベントが設けられている。
No.6バレル :第二供給口が設けられている。
No,7バレル :第二混練ゾーン
No.8バレル :第三供給口が設けられている。
No.9バレル :第三混練ゾーン
No.10バレル :真空ベント(絶対圧0.01MPa)が設けられている。
No.11、12バレル:クローズドバレル
また、その他の条件は、次の通りである。
ダイヘッド :4Φmm 6穴
ストランドバス :水温 40℃±3℃
ペレタイザー :円柱状 直径の目標値2.5±0.3mm
振動篩い :ペレターザー下流側に設置して長いペレット、連粒ペレット、切り粉を排除
全バレル温度、ダイ温度:280℃
押出量 :130kg/hr、
スクリュ回転数 :400rpm
なお、押出機の第一供給口には、混合物用重量式フィーダーを設置した。
【0024】
(混合物の混合状態)
第二工程で得られた混合物におけるペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合状態は、以下の基準にしたがって目視で判定した。
5:ペレットの廻りに均一に付いて、タンブラー内壁にも粉体フィラーが付かない。
4:ペレットの廻りに均一に付いて、タンブラー内壁の粉体フィラーの塊が付く。
3:ペレットと粉体フィラーの玉が少しできる。
2:ペレットと粉体フィラーの玉が多い。
1:粉体フィラーの塊とペレットの塊が分離している。
【0025】
(粉体フィラーの食い込み性)
粉体フィラーが押出機の第一供給口の下部にある押出機スクリュの上に堆積するかどうかを目視で観察した。
(押出機トルク変動)
以下の基準にしたがって評価した。
3:平均値±3%
2:平均値±6%
1:平均値±10%
【0026】
(樹脂組成物のフィラー分散性評価)
押出機で製造された樹脂組成物のペレットを、射出成形機で200mmX200mmの平板に成形し、そのピンゲート部表面の外観を観察し、以下の基準にしたがって1〜5の5段階で評価した。
1:ピンゲート部中心から表面半径1cm以内の75%以上がざらざらしている。
2:同様に半径1cm以内の50〜74%がざらざらしている。
3:同様に半径1cm以内の25〜49%がざらざらしている。
4:同様に半径1cm以内の1〜24%がざらざらしている。
5:同様に半径1cm以内にざらざらがない。
【0027】
(樹脂組成物の物性評価)
押出機で製造された樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械製IS−80AM射出成形機)で平板状に成形した。その際のシリンダー温度は、240〜290℃とし、金型温度は、60℃〜90℃とした。得られた成形体について、Izod衝撃強度と引張伸びを測定した。Izod衝撃強度は、ASTMのD256に従い、サンプルを1/8インチのノッチ付短柵として評価した。引張伸びは、ASTMのD658に従い1/8インチのダンベルで評価した。
【0028】
[実施例1]
ペレット状熱可塑性樹脂として、以下の複数種類のペレットを用意した。
ポリフェニレンエーテルS201A(旭化成プラスチックスシンガポール社製)(以下「PPE」という。)/ゲネラルパーパスポリスチレン685(PSジャパン製)(以下単に「685」という。)=80/20のコンセントレートペレット 31.5重量部
685のペレット 33重量部
ハイインパクトポリスチレンH9302(PSジャパン製)のペレット 25重量部
タフマーP0680J(三井科学製)のペレット 0.5重量部
また、粉体フィラーとして、平均粒径4μmのタルク(ハイトロンA)(竹原工業製)を10重量部を用意した。
タンブラー混合機(1)のタンブラー内に、上述のペレット状熱可塑性樹脂のうち、685のペレット10重量部以外を供給し、次いで、蒸留水(純水)を0.2重量部供給し、15分間、23rpmで混合した(第一工程)。
次に、得られた混合物の上にタルク10重量部を全体に広げるように供給し、次いで、685のペレット10重量部をタルクの上からタルクの上に被せるようにして供給し、さらに15分間、23rpmで混合した(第二工程)。
得られた混合物をタンブラーから抜き取り、上述の二軸同方向回転押出機の第一供給口に取り付けられた重量式フィーダーに入れ、第一供給口を介して押出機に供給して溶融混練した。押出量は130kg/hrに設定し、スクリュ回転数は400rpmとした。
第二工程で得られた混合物におけるペレット状熱可塑性樹脂とタルクの混合状態は良好で、溶融混練運転も安定し、得られた樹脂組成物のタルク分散性、物性ともに良好であった。
【0029】
[比較例1]
ペレット状熱可塑性樹脂を全て、第一工程においてタンブラーに供給した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例1に比べて、ペレット状熱可塑性樹脂とタルクの混合状態は悪く、溶融混練運転の安定性、樹脂組成物のタルク分散性、物性とも劣っていた。
[比較例2]
純水添加しなかった以外は、比較例1と同様に実施した。
比較例1より評価項目全てにおいて劣っていた。
[比較例3]
純水を第二工程でタンブラーに供給(純水、タルクの順で供給)した以外は、比較例1と同様に実施した。
比較例1より評価項目全てにおいて劣っていた。
[比較例4]
純水を第二工程でタンブラーに供給(タルク、純水の順で供給)した以外は、比較例1と同様に実施した。
比較例1より評価項目全てにおいて劣っていた。
【0030】
[比較例5]
純水を供給しなかった以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例1にくらべ、評価項目全てで劣っていた。
[比較例6]
純水を第二工程でタンブラーを供給(タルク、純水、ペレットの順で供給)した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例1にくらべ、評価項目全てで劣っていた。
[比較例7、8]
第一工程において、ペレット状可塑性樹脂、純水、タルクを一括して供給した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例1にくらべ、評価項目全てで劣っていた。
[比較例9,10]
タンブラーの形状を(2)、(3)とした以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1と比べ、評価項目全てで劣っていた。タンブラーの上部及び下部にコーン部がないと粉体フィラーの分散が劣る。
[比較例11]
第一工程及び第二工程における回転数を100rpmとした以外、実施例1と同様に行った。
実施例1と比べ、評価項目全てで劣っていた。回転数が大きすぎるとペレットに付いたタルクが剥がれて混合物の混合状態が悪くなる。
[比較例12,13]
タンブラーの混合時間を各5分、各60分とした以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1と比べ、評価項目全てで劣っていた。混合時間が短すぎても、長すぎても良好な混合状態は得られないことが確認できた。
【0031】
[実施例2]
第一工程において添加する685のペレットの量を13重量部、第二工程において供給するタルクの量を20重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1と比べ、タルクが増えた分、混合状態は若干悪くなり、Izod衝撃強度、粉体フィラー分散性、引張伸びも悪くなったものの、混合状態は概ね良好であった。
[実施例3]
第一工程で粉体フィラー分散剤としてエチレンビスステリアルアマイド0.2重量部(花王ワックス社製)を純水を供給した後に供給した以外は、実施例2と同様に行った。
実施例2と比べIzod衝撃強度、粉体フィラー分散性、引張伸びは良好になった。
[実施例4]
タンブラー内に丸棒の邪魔板を設置した以外は、実施例3と同様に行った。実施例2より、タルクの混合状態は良くなり、その他は実施例2と同様に良好であった。
[実施例5]
エチレンビスステリアルアマイド0.2重量部(花王ワックス社製)を、第二工程に変えて、第一工程で混合物に供給した以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様に全ての評価項目で良好であった。
[実施例6]
第一工程において純水の代わりにミネラルオイル(エッソ石油社製;クリストール352)0.2重量部を供給し、第二工程においてエチレンビスステアリルアマイドを供給しなかった以外は、実施例5と同様に実施した。
実施例5と同様に全ての評価項目で良好であった。
[実施例7]
ペレット状熱可塑性樹脂をポリカーボネート1250Y(帝人化成社製)に代えた以外は、実施例5と同様に実施した。
実施例5と同様に全ての評価項目で良好であった。
[実施例8]
ペレット状熱可塑性樹脂をポリカーボネート1250Y(帝人化成社製)に代えた以外は、実施例6と同様に実施した。
実施例6と同様に全ての評価項目で良好であった。
[実施例9]
ペレット状熱可塑性樹脂をナイロン66 1300S(旭化成ケミカルズ社製)に代えた以外は、実施例5と同様に実施した。
実施例5と同様に全ての評価項目で良好であった。
[実施例10]
ペレット状熱可塑性樹脂をナイロン66 1300S(旭化成ケミカルズ社製)に代えた以外は、実施例6と同様に実施した。
実施例6と同様に全ての評価項目で良好であった。
【0032】
結果を表1及び表2に示す。
本発明の混合方法によれば、ペレット状熱可塑性樹脂と粉体フィラーの混合状態の良好な混合物を得ることができ、さらにこの混合物を使用して溶融混練を行えば、溶融混練を安定して行うことができ、粉体フィラーの分散性と各種物性が良好な樹脂組成物組成物を製造することが出来た。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の混合方法を利用して得られた樹脂組成物は、OA材料(プリンター、複写機等)、電子材料、光学材料、バッテリケース材料、バッテリセル材料、フィルム、シート等の用途分野に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0034】
(1) タンブラーのタンク
(2) 原料投入口
(3) 混合物排出口
(4) タンクを掴むバンド
(5) タンブラー支持体
(6) 邪魔板
(7) 押出機本体
(8) 第一供給口
(9) 第二供給口
(10)第三供給口
(11)混練ゾーン
(12)大気ベント又は真空ベント
(13)大気ベント又は真空ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状熱可塑性樹脂60〜99重量部に対し、少なくとも、粉体フィラー1〜40重量部及び液体添加剤0.05〜0.6重量部を混合する方法であって、以下の第一工程及び第二工程を含む混合方法。
第一工程:上部及び下部に角度20〜60度のコーン部を有するタンブラータンクを備えたタンブラー混合機の該タンブラータンク内にペレット状熱可塑性樹脂の70重量%〜95重量%、液体添加剤全量をこの順で供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。
第二工程:前記タンク内の前記第一工程で得られた混合物の上に、粉体フィラー全量を供給し、さらに、該粉体フィラーの上に残りのペレット状熱可塑性樹脂の5〜30重量%を供給し、10〜50rpmで10〜30分混合する工程。
【請求項2】
前記第一工程において、さらに、粉体フィラー分散剤全量を、前記液体添加物を供給した後に供給する請求項1記載の混合方法。
【請求項3】
前記第二工程において、さらに、粉体フィラー分散剤全量を、前記残りのペレット状熱可塑性樹を供給する前に供給する請求項1記載の混合方法。
【請求項4】
前記タンブラー混合機が、前記タンブラータンク内部に邪魔板を有する請求項1〜3いずれか一項記載の混合方法。
【請求項5】
前記ペレット状熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテルとアルケニル系樹脂のブレンド物、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体及び水素添加スチレン・イソプレンブロック共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4いずれか一項記載の混合方法
【請求項6】
前記ペレット状熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテルとアルケニル系樹脂のブレンド物30〜70重量部及びポリスチレン系樹脂70〜30重量部からなる請求項5記載の混合方法。
【請求項7】
前記粉体フィラーが、マイカ、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜6いずれか記載の混合方法。
【請求項8】
前記粉体フィラーの平均粒径が6μm以下である請求項1〜7いずれか記載の混合方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の混合方法により混合物を得る工程と、
得られた混合物を溶融混練する工程とを含む樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1808(P2013−1808A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134505(P2011−134505)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】