説明

粉体供給方法及び粉体供給装置

【課題】時間あたりの粉体の供給量を微量にし、且つ時間あたりの粉体の供給量を精密に制御する粉体供給方法及び粉体供給装置を提供する。
【解決手段】粉体1を収納する粉体タンク2と、粉体タンク2内へ搬送流体3を送り込む導入管4と、粉体タンク2内の粉体1を搬送流体3と共に外部へ供給する排出管5と、粉体1の供給に伴って排出管5の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように粉体タンク2を上昇させる昇降部6と、粉体表面を水平にならすように粉体タンク2に振動を与える振動部7と、粉体タンク2を上昇させる昇降部6の上昇速度によって時間あたりの粉体1の供給量を決定するように昇降部6を制御する制御部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を供給する粉体供給方法及び粉体供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微量な粉体を供給する際には、テーブルフィーダやスクリューフィーダ等の搬送手段を用いて定量的に搬送したり、空気搬送方法により流動層から粉体を搬送したりしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−261807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テーブルフィーダやスクリューフィーダ等の搬送手段を用いる場合には、時間あたりの粉体の供給量が数g/minレベルになるため、より微量な粉体の供給や制御が困難であるという問題があった。また空気搬送法を用いる場合には、時間あたりの粉体の供給量が数十μg/minレベルになる一方で、搬送空気の流速のみで粉体の供給量を調節するため、時間あたりの粉体の供給量を精密に制御することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、時間あたりの粉体の供給量を微量にし、且つ時間あたりの粉体の供給量を精密に調節する粉体供給方法及び粉体供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉体供給方法は、粉体を収納する粉体タンク内へ導入管により搬送流体を送り込み、前記粉体タンク内の粉体を排出管により搬送流体と共に外部へ供給する粉体供給方法であって、
粉体の供給時には、排出管の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように粉体タンクを昇降部により上昇させると共に、粉体タンクへ振動部により振動を与えて粉体表面を水平にならし、更に昇降部の上昇速度によって時間あたりの粉体の供給量を決定するものである。
【0007】
本発明の粉体供給方法において、時間あたりの粉体の供給量は、粉体タンク内の水平断面積である粉体表面の面積と、昇降部の上昇速度とを用いて算出されることが好ましい。
【0008】
本発明の粉体供給方法において、供給開始時に、粉体タンク内へ挿入された排出管の先端を粉体表面の高さに合せることが好ましい。
【0009】
本発明の粉体供給装置は、粉体を収納する粉体タンクと、該粉体タンク内へ搬送流体を送り込む導入管と、前記粉体タンク内の粉体を搬送流体と共に外部へ供給する排出管と、粉体の供給に伴って排出管の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように粉体タンクを上昇させる昇降部と、粉体表面を水平にならすように粉体タンクへ振動を与える振動部と、前記昇降部の上昇速度によって時間あたりの粉体の供給量を決定するように昇降部を制御する制御部とを備えるものである。
【0010】
本発明の粉体供給装置において、制御部は、時間あたりの粉体の供給量を、粉体タンク内の水平断面積である粉体表面の面積と、昇降部の上昇速度とを用いて算出するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉体供給方法及び粉体供給装置によれば、粉体の供給時には、排出管の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように昇降部により粉体タンクを上昇させると共に、粉体タンクへ振動部により振動を与えて粉体表面を水平にならすので、粉体表面から微量の粉体を排出管へ取り込み、微量の粉体を外部へ供給することができる。また昇降部の上昇速度によって時間あたりの粉体の供給量を決定するように昇降部を制御するので、時間あたりの粉体の供給量を精密に調節することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の粉体供給方法及び粉体供給装置の形態例を示す概念図である。
【図2】(A)は排出管の粉体タンク側の先端と粉体表面との位置関係を示す概念図であり、(B)は排出管の粉体タンク側の先端と粉体表面との他の位置関係を示す概念図であり、(C)は排出管の粉体タンク側の先端と粉体表面との別の位置関係を示す概念図である。
【図3】昇降部の構成を示す概念図である。
【図4】振動部の構成を変更した他例を示す概念図である。
【図5】昇降部の上昇速度と時間あたりの粉体の供給量とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例を図1〜図5を参照して説明する。
【0014】
粉体供給方法及び粉体供給装置は、粉体1を内部に収納する粉体タンク2と、粉体タンク2内へ搬送流体3を送り込む導入管4と、粉体タンク2内の粉体1を搬送流体3と共に外部へ供給する排出管5と、粉体タンク2の下部に配置されて粉体タンク2を上昇させる昇降部6と、粉体タンク2に振動を与える振動部7と、昇降部6等を制御する制御部8とを備えている。ここで粉体1は、粒子直径が0μmより大きく300μm以下のものであり、粒子密度は、0.0kg/Lより大きく3.0kg/L以下のものである。また粉体1の素材は、特に制限されるものではない。
【0015】
粉体タンク2は、円筒状の容器本体9であって、上端に蓋部10を配置すると共に下端に昇降部6が接触する半球状の底面を備えている。また容器本体9と蓋部10の間には、Oリング等のシール部材11を配して内部の圧が漏れないようになっている。更に粉体タンク2の容器本体9は、上部位置から下部中途位置まで一定の水平断面積を有している。また蓋部10には、導入管4と摺動し得る第一シール部材12を配すると共に、排出管5と摺動し得る第二シール部材13を配し、粉体タンク2が上昇する際に、導入管4や排出管5の接触部分から粉体タンク2の内部の圧が漏れないようにしている。ここで粉体タンク2は、上部から下端まで一定の水平断面積を有する円筒状の容器本体9であっても良い。
【0016】
導入管4は、粉体タンク2の蓋部10を貫通して上部から粉体タンク2内へ挿入され、導入管4の粉体タンク2側の先端を粉体タンク2内の粉体表面の上方へ配するようにしている。また導入管4の外部側には、空気ポンプや流体ポンプ等のポンプ部14が接続され、空気や他の流体を粉体タンク2内へ導入するようになっている。ここで導入管4及びポンプ部14は、粉体タンク2内の粉体1の舞い上がりを抑制する速度で搬送流体3を導入するようにしており、具体的には、粉体タンク2の直径が10mm以上40mm以下の場合に搬送流体3の導入流速を0.1L/min以上5.0L/min以下の一定速度にしており、粉体タンク2の直径が15mmの場合に搬送流体3の導入流速を1.0L/min以上1.5L/min以下の一定速度にしている。
【0017】
排出管5は、粉体タンク2の蓋部10を貫通して上部から粉体タンク2内へ挿入され、排出管5の粉体タンク2側の先端を粉体表面の高さと合わせるようにしている。また排出管5の外部側は、目的の送給先である検査機器等の送給部(図示せず)へ接続されており、粉体1を搬送流体3と共に送給するようになっている。ここで排出管5の粉体タンク2側の先端と粉体表面の高さを合わせる位置関係とは、図2(A)に示す如く排出管5の粉体1側の先端を斜めに切り欠いて先端の一部が粉体表面に埋没する位置関係でも良いし、図2(B)に示す如く排出管5の粉体1側の先端が粉体表面に接する位置関係でも良いし、図2(C)に示すごとく排出管5の粉体1側の先端が粉体表面に僅かに埋没する位置関係でも良い。また特に排出管5の粉体タンク2側の先端は、粉体表面の高さに対して接することが好ましい。
【0018】
図1に示す如く昇降部6は、粉体タンク2の下部を支持する板状の支持体15と、板状の支持体15を上方へ送り出す本体部16とを備えている。本体部16は、図3に示す如くモータ部17により回転するスクリューロッド18と、固定の案内ロッド19とを介して板状の駆動体20が上下方向へ移動させるようになっており、板状の駆動体20は、支持ロッド21を介して支持体15を支持し、支持体15を0.0mm/minより大きく 6.0mm/min以下の一定速度で上昇させるようになっている。また本体部16内には、駆動体20の異常な移動を停止するリミットスイッチ22を備えている。更に昇降部6は制御部8からの信号を受けてモータ部17を駆動し、支持体15の上昇速度を調節するようになっている。ここで昇降部6は、支持体15を上昇させるならば他の構成でも良い。
【0019】
図1に示す如く振動部7は、粉体タンク2の側部に配置されるバイブレータ等の振動部本体23と、振動部本体23から延在して粉体タンク2の側面に摺動可能に接触する針金等の伝達体24とを備えている。また振動部本体23は、内部に振動子(図示せず)を備え、振動を針金等の伝達体24から粉体タンク2へ伝えるようにしている。ここで振動部7は、図4に示す如く粉体タンク2と昇降部6の間に振動板等の伝達体25を配置し、振動を振動板等の伝達体25から粉体タンク2の底部へ伝えるようにしても良い。
【0020】
制御部8は、ポンプ部14、振動部7、昇降部6に制御信号を与えるように接続されており、内部には、所定のプログラムや関数を備え、粉体タンク2内の水平断面積である粉体1の表面積と、上昇速度を用いてデータを処理するようにしている。ここで制御部8は、昇降部6の内部に備えられるものでも良いし、昇降部6のみを制御するものでも良い。
【0021】
以下、本発明の形態例の作用を説明する。
【0022】
粉体1を供給先へ供給する際には、最初、準備段階として、粉体タンク2内に粉体1を収納し、供給開始時に、排出管5の粉体タンク2側の先端を粉体表面の高さに合せるように粉体タンク2の位置を調整する。ここで排出管5の粉体タンク2側の先端を粉体表面と合わせる際には排出管5の位置を調整しても良い。
【0023】
次にポンプ部14を駆動して搬送流体3を一定の流速で粉体タンク2内へ導入管4により送り込み、そして搬送流体3を粉体タンク2内から排出管5へ送り込むと同時に、粉体表面から微量の粉体1を排出管5へ取り込み、微量な一定量で粉体1を搬送流体3と共に供給先(外部)へ供給する。
【0024】
この時、時間あたりの粉体1の供給量は、0.010μg/min以上1000μg/min以下の範囲内で一定になっている。また振動部7は粉体タンク2を振動させて粉体表面を常に水平にならし、粉体表面の面積が粉体タンク2内の水平断面積と等しくなるようしている。更に昇降部6は、粉体タンク2を支持体15により上方へ送り出し、排出管5の先端と粉体表面の高さの位置関係を一定に保ち、時間あたりの粉体1の供給量が変化しないようにしている。
【0025】
また制御部8は、粉体タンク2内の水平断面積である粉体1の表面積と、上昇速度とを積算して、時間あたりの粉体1の供給量を算出し、また搬送流体3の流速を一定にする条件下で昇降部6のモータ部17に信号を与え、昇降部6の支持体15等を介して粉体タンク2の上昇速度を制御している。ここで制御部8は、粉体タンク2内の水平断面積が予め入力され、所望の時間あたりの粉体1の供給量より上昇速度を算出するようにして良い。また制御部8は、ポンプ部14に信号を与えて搬送流体3の流速、駆動時間等を制御するようにしても良いし、振動部7に信号を与えて振動の開始、停止、駆動時間等を制御するようにしても良い。更に制御部8は、粉体1の表面積と上昇速度とを積算したものに対し、追加的に粉体1の密度を積算しても良い。また図5には、粉体1の供給量を調節するための昇降部6のダイヤル目盛り(昇降部6の上昇速度)と、時間あたりの粉体1の供給量との関係を示し、昇降部6の上昇速度によって粉体1の供給量が制御できることを示している。
【0026】
而して、このような実施の形態例によれば、粉体1の供給時には、排出管5の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように昇降部6により粉体タンク2を上昇させると共に、粉体タンク2へ振動部7により振動を与えて粉体表面を水平にならすので、粉体表面から微量の粉体1を排出管5へ取り込み、微量の粉体1を供給先(外部)へ供給することができる。また粉体タンク2へ振動部7により振動を与えて粉体表面を水平にならし、昇降部6の上昇速度により時間あたりの粉体1の供給量を決定するので、粉体1の供給量を精密に調節することができる。
【0027】
実施の形態例において、制御部8は、時間あたりの粉体1の供給量を、粉体タンク2内の水平断面積である粉体表面の面積と、昇降部6の上昇速度とから算出するように構成されると、時間あたりの粉体1の供給量を適確に決定すると共に、制御部8により昇降部6の上昇速度を制御し得るので、時間あたりの粉体1の供給量を一層精密に調節することができる。
【0028】
実施の形態例において、供給開始時に、粉体タンク2内へ挿入された排出管5の先端を粉体表面の高さに合せると、水平な粉体表面から粉体1を安定的に取り込むので、粉体表面から微量の粉体1を好適に供給することができる。
【0029】
実施の形態例において、振動部7は、針金等の伝達体24を介して粉体タンク2の側面に摺動可能に接触して配置されると、粉体表面の近くで振動し、粉体表面を適切に水平にならすことができる。また他の振動部7の場合の如く、粉体タンク2と昇降部6の間に振動板等の伝達体25を配置し、振動を粉体タンク2の底部へ振動を伝えるように構成されると、粉体タンク2を安定して支持すると同時に粉体タンク2に適切に振動を与えることができる。
【0030】
尚、本発明の粉体供給方法及び粉体供給装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 粉体
2 粉体タンク
3 搬送流体
4 導入管
5 排出管
6 昇降部
7 振動部
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収納する粉体タンク内へ導入管により搬送流体を送り込み、前記粉体タンク内の粉体を排出管により搬送流体と共に外部へ供給する粉体供給方法であって、
粉体の供給時には、排出管の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように粉体タンクを昇降部により上昇させると共に、粉体タンクへ振動部により振動を与えて粉体表面を水平にならし、更に昇降部の上昇速度によって時間あたりの粉体の供給量を決定することを特徴とする粉体供給方法。
【請求項2】
時間あたりの粉体の供給量は、粉体タンク内の水平断面積である粉体表面の面積と、昇降部の上昇速度とを用いて算出されることを特徴とする請求項1に記載の粉体供給方法。
【請求項3】
供給開始時に、粉体タンク内へ挿入された排出管の先端を粉体表面の高さに合せることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の粉体供給装置。
【請求項4】
粉体を収納する粉体タンクと、該粉体タンク内へ搬送流体を送り込む導入管と、前記粉体タンク内の粉体を搬送流体と共に外部へ供給する排出管と、粉体の供給に伴って排出管の先端と粉体表面の位置関係を一定に保つように粉体タンクを上昇させる昇降部と、粉体表面を水平にならすように粉体タンクへ振動を与える振動部と、前記昇降部の上昇速度によって時間あたりの粉体の供給量を決定するように昇降部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする粉体供給装置
【請求項5】
制御部は、時間あたりの粉体の供給量を、粉体タンク内の水平断面積である粉体表面の面積と、昇降部の上昇速度とを用いて算出するように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の粉体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−56658(P2012−56658A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199579(P2010−199579)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】