説明

粉体処理装置及び粉体処理方法

【課題】母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が起こり難い粉体処理装置及び粉体処理方法を提供する。
【解決手段】母粒子と前記母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を収容する粉体収容部と、前記粉体収容部内の粉体を流動させる流動手段と、前記母粒子及び前記被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を前記粉体収容部内に供給する供給手段と、を備える粉体処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体処理装置及び粉体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、母粒子に被覆粒子を付着させる粉体処理装置としては、ヘンシェルミキサー、Q型ミキサー(三井三池鉱山)、ノビルタ(ホソカワミクロン)や、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械)等のように衝撃力を主体とした方式のもの、メテオレインボー(日本ニューマチック工業)のような高温気流中で粉体を加熱冷却する方式のもの等が知られている。
【0003】
電子写真用トナーの分野等では、クリーニング性等の観点から不定形のトナーを母粒子として用い、該トナー母粒子に流動性や維持性等を付与する目的で、さまざまな被覆粒子(外添剤等)を所望の接着力で付着する方法が、従来から検討されている。
【0004】
上記粉体処理装置を利用したトナー製造方法としては、回転ローター型の表面処理装置(例えば、特許文献1参照)や、球型ミキサー(三井三池鉱山製)のような粉体撹拌装置(例えば、特許文献2参照)を用いて、装置内の回転体(攪拌翼)を高速攪拌し、トナー母粒子と被覆粒子とを混合して、トナー母粒子に被覆粒子を付着させる方法が提案されている。
【0005】
また、トナー母粒子に高温気流を供給して、トナー母粒子を熱処理し、トナー母粒子に被覆粒子を付着させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、前述のような衝撃力を主体とする方式の粉体処理装置を用いて、装置内の回転体(攪拌翼)を高速攪拌し、トナー母粒子と外添剤とを混合すると共に、溶媒を噴霧して、トナー母粒子を軟化させ、トナー母粒子に外添剤を付着させる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−94734号公報
【特許文献2】特開2003−15357号公報
【特許文献3】特開2003−177573号公報
【特許文献4】特開2010−9003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が起こり難い粉体処理装置及び粉体処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、母粒子と前記母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を収容する粉体収容部と、前記粉体収容部内の粉体を流動させる流動手段と、前記母粒子及び前記被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を前記粉体収容部内に供給する供給手段と、を備える粉体処理装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記供給手段は、前記第1気体に加え、前記粉体が軟化しない第2気体を前記粉体収容部内に供給する請求項1記載の粉体処理装置である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記第1気体と前記第2気体との混合比を調整する混合比調整手段を備える請求項2記載の粉体処理装置である。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記粉体収容部内の温度を調整する温度調整手段を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体処理装置である。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記流動手段は、前記粉体を攪拌する攪拌機を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体処理装置である。
【0014】
請求項6に係る発明は、母粒子と前記母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を流動させながら、前記母粒子及び前記被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を前記粉体に接触させ、前記母粒子と前記被覆粒子とを付着させる粉体処理方法である。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記第1気体を前記粉体に接触させる際には、前記粉体が軟化しない第2気体も前記粉体に接触させる請求項6記載の粉体処理方法である。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記母粒子と前記被覆粒子との付着を停止する際には、前記第2気体を前記粉体に接触させ前記粉体に接触させる前記第1気体の供給を停止するか、又は前記粉体に接触させる前記第1気体の供給量を前記第2気体の供給量より低くする請求項7記載の粉体処理方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によると、本構成を有さない場合と比べて、母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が減少する。
【0018】
本発明の請求項2によると、本構成を有さない場合と比べて、母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が減少する。
【0019】
本発明の請求項3によると、本構成を有さない場合と比べて、第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の粒子)同士の付着を抑制する。
【0020】
本発明の請求項4によると、本構成を有さない場合と比べて、第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の粒子)同士の付着を抑制する。
【0021】
本発明の請求項5によると、本構成を有さない場合と比べて、第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の粒子)同士の付着を抑制する。
【0022】
本発明の請求項6によると、本構成を有さない場合と比べて、母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が減少する。
【0023】
本発明の請求項7によると、本構成を有さない場合と比べて、母粒子に付着した被覆粒子の埋没及び脱離が減少する。
【0024】
本発明の請求項8によると、本構成を有さない場合と比べて、粉体の流動を停止した後の第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の粒子)同士の付着を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る粉体処理装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る粉体処理装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す粉体処理装置1は、母粒子と母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を収容する粉体収容部10、母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を粉体収容部10内に供給する供給手段としての第1気体供給ブロア14a、粉体収容部10内の粉体を流動させる流動手段としての攪拌機20を備えている。供給手段としては、第1気体供給ブロア14aに加え、粉体が軟化しない第2気体を粉体収容部10内に供給する第2気体供給ブロア14bを備えていてもよい。
【0028】
また、粉体処理装置1は、第1気体と第2気体との混合比を調整する混合比調整手段としての第1気体流量調整弁16及び第2気体流量調整弁18、粉体収容部10内の温度を調整する温度調整手段としてのヒータ28を備えていてもよい。
【0029】
また、粉体処理装置1は、第1気体を発生させる気体発生手段としての第1気体発生装置12、冷却器22、回収容器24、気体の温度を調整する温度調整手段としてのヒータ26、気体の濃度を検出する濃度検出手段としての濃度センサ30、気体の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ32、気体の流量を検出する流量検出手段としての流量センサ34、及び各配管を備えていてもよい。
【0030】
第1気体供給配管36の一端は、第1気体発生装置12の気体排出口(不図示)に接続され、他端は粉体収容部10の気体供給口(不図示)に接続されている。第1気体供給配管36には、第1気体供給ブロア14a、第1気体流量調整弁16、ヒータ26、濃度センサ30、温度センサ32、流量センサ34が設置されている。第2気体供給配管38の一端は、冷却器22の気体排出口(不図示)に接続され、他端は第1気体供給配管36の第1気体流量調整弁16とヒータ26との間に接続されている。第2気体供給配管38には、第2気体供給ブロア14b、第2気体流量調整弁18が設置されている。第1循環配管40の一端は、粉体収容部10の気体排出口(不図示)に接続され、他端は冷却器22の気体供給口(不図示)に接続されている。第2気体取り込み配管42には、弁42aが設けられており、第1循環配管40に接続されている。第2循環配管44の一端は、冷却器22の液体排出口(不図示)に接続され、他端は回収容器24を介して第1気体発生装置12の液体供給口(不図示)に接続されている。冷却器22と回収容器24との間及び回収容器24と第1気体発生装置12との間の第2循環配管44には弁(44a,44b)が設けられている。
【0031】
粉体収容部10の粉体投入口(不図示)には、粉体投入配管46が接続されており、粉体投入配管46には弁46aが設けられている。また、粉体収容部10の粉体排出口(不図示)には、粉体排出配管48が接続されており、粉体排出配管48には弁48aが設けられている。
【0032】
流動手段としての攪拌機20は、粉体収容部10内の粉体を攪拌する機構を備えるものであれば特に制限されるものではないが、本実施形態の攪拌機20は、粉体収容部10内に設置される回転軸50、回転軸50に設置される回転体52(回転翼等)、回転軸50を回転させるシャフト54及びモータ56を備える。
【0033】
以下に、本実施形態の粉体処理装置1の動作及び粉体処理方法について説明する。
【0034】
まず、弁46aを開いて、粉体投入配管46から粉体収容部10内に、母粒子及び母粒子に被覆する被覆粒子を含む粉体を投入する。このとき、母粒子及び被覆粒子はあらかじめ混合していてもよいが、別々に投入し、例えば、第1気体の供給前に粉体収容部10内で混合してもよい。
【0035】
粉体収容部10内に粉体を投入した後、攪拌機20のモータ56を稼働させ、回転軸50及び回転体52を回転させ、粉体を攪拌する(流動させる)。なお、攪拌機20により粉体を攪拌せずに、粉体収容部10内に供給される気体の気流により、粉体を流動させてもよい。
【0036】
次に、第1気体供給ブロア14aを稼働させ、第1気体供給配管36から粉体収容部10内へ第1気体を供給する。この際、第1気体が常温で液体の場合は、第1気体発生装置12により、加熱・気化させた後、第1気体供給ブロア14aにより、第1気体供給配管36から粉体収容部10内へ第1気体を供給する。また、第2気体取り込み配管42の弁42aを開放し、第2気体供給ブロア14bを稼働させ、第2気体取り込み配管42、冷却器22、第2気体供給配管38を介して第1気体供給配管36へ第2気体を流入させ、第2気体を第1気体と共に粉体収容部10に供給する。
【0037】
粉体収容部10内に供給された第1気体及び第2気体は、粉体収容部10の気体供給口(不図示)側に設置される多孔板58により拡散し、粉体収容部10内の粉体と接触する。このように、粉体を流動させながら、母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を粉体に接触させる。そして、第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方)が軟化し、母粒子と被覆粒子とが付着する。また、第2気体を供給せずに第1気体を供給して、第1気体を粉体に接触させてもよい。第2気体を供給せずに第1気体を供給して、母粒子と被覆粒子を付着させる場合でも、衝撃力や溶媒噴霧によって母粒子と被覆粒子を付着させる従来の方法より、第1気体により軟化する粒子の表面が均一に軟化するため、母粒子(特に母粒子の凹凸部等)に付着した被覆粒子の埋没及び脱離等が減少する。但し、第1気体及び第2気体を供給して、母粒子と被覆粒子を付着させた方が、第2気体を供給せずに第1気体を供給して、母粒子と被覆粒子とを付着させた場合より、第1気体により軟化する粒子の表面が均一に軟化するため、母粒子(特に母粒子の凹凸部等)に付着した被覆粒子の埋没及び脱離等が減少する。
【0038】
また、第2気体の供給前に第1気体を供給し、母粒子と被覆粒子とを付着させ、その後、第2気体を供給して、粉体同士の付着を抑制してもよい。なお、第1気体の供給前に、第2気体を供給し、その後、第1気体を供給してもよい。
【0039】
次に、粉体に接触した後の第1気体及び第2気体の気流には粉体が混入する場合があるため、粉体収容部10内の気体排出口(不図示)側に設置されるフィルタ62を通過させ、第1気体及び第2気体の気流から粉体を除去する。粉体が除去された第1気体及び第2気体は、第1循環配管40を通って冷却器22に流入する。冷却器22では、第1気体及び第2気体を第1気体の露点以下に冷却し、第1気体を液体として凝縮させ、第2気体から分離させる。そして、第1気体の凝縮液を第2循環配管44から回収容器24に貯留させる。回収容器24内の第1気体の凝集液を第2循環配管44から、第1気体発生装置12に供給して、第1気体を再利用してもよい。また、第2気体を第2気体供給配管38、第1気体供給配管36から粉体収容部10内に再度供給してもよい。このように、第1気体及び第2気体を再利用すれば、第1気体及び第2気体を再利用しない場合と比べて、第1気体及び第2気体の使用量が削減される。
【0040】
母粒子と被覆粒子との付着を停止する際には、第1気体供給ブロア14a及び第2気体供給ブロア14bを停止して、第1気体及び第2気体の供給を停止する。或いは、第1気体流量調整弁16及び第2気体流量調整弁18を制御して、第2気体の供給を続けたまま第1気体の供給を停止するか、第1気体の供給量を第2気体の供給量より低くして、母粒子と被覆粒子との付着を停止する。第2気体の供給を続けたまま第1気体の供給を停止するか、又は第1気体の供給量を第2気体の供給量より低くして、母粒子と被覆粒子との付着を停止した方が、第1気体及び第2気体の供給を停止して、母粒子と被覆粒子との付着を停止した場合より、粉体に残存する第1気体が除去され易いため、粉体の流動を停止した後に第1気体により軟化する粒子同士の付着が抑制される。また、水蒸気を混合した第2気体を粉体収容部10内の粉体に接触させても、第1気体及び第2気体の供給を停止した場合より、粉体に残存する第1気体が除去され易くなる。
【0041】
以上のようにして得られた粉体(母粒子と被覆粒子とが付着した粉体)を粉体排出配管48から回収する。
【0042】
本実施形態では、粉体収容部10内の粉体を流動させる流動手段として、攪拌機20を用いるが、その他の実施形態では、流動手段として、粉体収容部10内に第1気体を供給する第1気体供給ブロア14a、第2気体を供給する第2気体供給ブロア14bのうち少なくともいずれか一方を用いてもよい。すなわち、第1気体供給ブロア14a、第2気体供給ブロア14bにより供給された気体の気流により、粉体を流動させてもよい。
【0043】
このように、粉体収容部10内の粉体を流動させる場合は、必ずしも攪拌機20を設置しなくてもよい。しかし、攪拌機20を設置する方が、攪拌機20を設置しない場合に比べて、粉体と第1気体(及び第2気体)との接触効率が向上し、第1気体により軟化する粒子の表面が均一に軟化するため、第1気体により軟化する粒子同士の付着が抑制される。
【0044】
本実施形態では、供給手段として第1気体供給ブロア14a及び第2気体供給ブロア14bを用いるが、供給手段は第1気体供給ブロア14a単体でもよい。但し、供給手段として第1気体供給ブロア14a及び第2気体供給ブロア14bを用いる方が、第1気体供給ブロア14a単体を用いるより、母粒子(特に母粒子の凹凸部等)に付着した被覆粒子の埋没及び脱離等が減少する点で好ましい。
【0045】
また、粉体収容部10内に供給される第1気体及び第2気体の混合比率によっては(例えば、1:100以上1:5以下(第1気体:第2気体)の範囲に設定される場合)、第1気体供給ブロア14aを設けなくても、蒸気圧により第1気体の供給が可能である。この場合、供給手段として、第1気体を発生させる第1気体発生装置12及び第2気体供給ブロア14bを用いればよい。
【0046】
供給手段は、第1気体や第2気体を粉体収容部10内に供給するものであれば、ブロアに制限されるものではなく、例えば、コンプレッサ、真空ポンプ等であってもよい。
【0047】
粉体収容部10内の温度を調整する温度調整手段を設置することが好ましく、本実施形態では、温度調整手段として、ヒータ28を用いる。但し、温度調整手段は、粉体収容部10内の温度を調整するものであれば、ヒータに制限されるものではなく、例えば、熱媒を流通させるジャケット等であってもよい。ヒータ28等の温度調整手段により、粉体収容部10内の温度を調整した方が、粉体収容部10内の温度を調整しない場合と比べて、第1気体の液化が抑制される。その結果、液化した第1気体と第1気体により軟化する粒子(母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の粒子)との接触により、第1気体により軟化する粒子間の液架橋力の発生が抑制され、第1気体により軟化する粒子同士の付着が抑制される。
【0048】
第1気体と第2気体との混合比を調整する混合比調整手段を設置することが好ましく、本実施形態では、混合比調整手段として、第1気体流量調整弁16及び第2気体流量調整弁18を用いる。但し、混合比調整手段は、第1気体と第2気体との混合比を調整するものであれば、弁に制限されるものではなく、例えば、オリフィス、縮小管等であってもよい。第1気体流量調整弁16及び第2気体流量調整弁18等の混合比調整手段により、第1気体と第2気体との混合比を調整した方が、第1気体と第2気体との混合比を調整しない場合と比べて、母粒子と被覆粒子との付着状態が制御されるため、第1気体により軟化する粒子同士の付着が抑制される。
【0049】
粉体収容部10の気体供給口(不図示)側には、多孔板58を設置することが好ましい。多孔板58を設置した方が、多孔板58を設置しない場合に比べて、粉体収容部10内に供給された気体の拡散性が向上し、気体と粉体との接触率が向上する。
【0050】
粉体収容部10内の側面には、邪魔板60を設置することが好ましい。邪魔板60は、主に、攪拌機20により粉体収容部10内側面に押し出された粉体を攪拌機20側に押し戻すためのものであり、邪魔板60を設置しない場合に比べ、粉体の攪拌性が向上する。
【0051】
粉体収容部10の気体排出口(不図示)側には、フィルタ62を設置することが好ましい。フィルタ62は、主に、粉体収容部10から排出される気体の気流に混入した粉体等を取り除くためのものである。
【0052】
粉体の母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体とは、溶剤ガスである。そして、本実施形態で用いられる第1気体は、母粒子及び被覆粒子のうち少なくともいずれか一方の少なくとも表面を軟化させるものであれば特に制限されるものではないが、粒子間凝集のし難さ等の点で、母粒子を軟化させるものであることが好ましい。例えば、トナー粒子の製造等で着色剤と樹脂等を含む粒子を母粒子として用いる場合等では、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶媒や、イソプロピルアルコール等のアルコール類等の液体原料を気化させた気体等が好適に用いられる。
【0053】
また、粉体が軟化しない第2気体とは、溶剤非含有ガスである。そして、本実施形態で用いられる第2気体は、母粒子及び被覆粒子が軟化しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、空気や、窒素等の不活性ガス等が用いられる。また、第1気体に引火性がある場合には、第2気体としては、窒素等の不活性ガスが好適に用いられる。
【0054】
第1気体及び第2気体の混合比率は、母粒子と被覆粒子との付着状態等に応じて設定されることが好ましい。例えば、母粒子から脱離し易い被覆粒子を用いる場合には(例えば、母粒子としてスチレン−アクリル系樹脂、被覆粒子として球形シリカ)、第2気体より第1気体の比率を高くし(例えば、第1気体:第2気体の混合比率が5:3以上5:1以下の範囲)、母粒子と被覆粒子とを付着させ、母粒子から被覆粒子が脱離し難くなった段階で、第2気体の比率を上げて(例えば、第1気体:第2気体の混合比率が1:2以上1:100以下の範囲)、第1気体により軟化する粒子同士の付着を抑制する等でもよい。
【0055】
また、第1気体及び第2気体の流量は、第1気体と第2気体との混合比率等に応じて設定されるものであり、特に制限されるものではないが、例えば、気体流量を気体流通方向の断面で割った線速度が0.01m/s以上2.0m/s以下の範囲に設定されることが好ましい。第1気体及び第2気体の流量が0.01m/s未満の場合には、処理中に第一気体と接触しない粒子が発生する場合があり、2.0m/sを超える場合には、気流により粒子がフィルタ側に押し上げられ、フィルタに堆積した粒子が凝集する場合がある。
【0056】
そして、第1気体及び第2気体の混合比率、第1気体及び第2気体の流量については、例えば、濃度センサ30で検出した第1気体、第2気体の濃度、流量センサ34で検出した第1気体及び第2気体の流量を予め設定した設定値と比較しながら、第1気体流量調整弁16及び第2気体流量調整弁18によって調整される。
【0057】
第1気体及び第2気体の温度は、第1気体が液化しない温度に設定されていれば、特に制限されるものではない。第1気体の液化温度については、使用する気体、気体の混合比、処理圧力によって変化する。調整した第1気体と第2気体の混合気体を処理想定圧力条件下に制御した容器内に投入し、容器内温度を変化させて容器壁面に第1気体の成分が結露する点を調査することで実験により求められる。例えば、第1気体が液化すると、粉体収容部10内で、液化した第1気体と第1気体により軟化する粒子とが接触する場合があるため、第1気体により軟化する粒子間に液架橋力が生じ、第1気体により軟化する粒子同士が付着する場合がある。第1気体及び第2気体の温度は、例えば、温度センサ32で検出した第1気体及び第2気体の温度を予め設定した設定値と比較しながら、ヒータ26によって調整される。
【0058】
粉体収容部10内の温度と圧力は、第1気体が液化しない温度及び圧力に設定されていれば特に制限されるものではない。第1気体が液化しない温度とは、粉体収容部圧力条件下で上述の実験により求められた温度である。なお、粉体収容部の圧力は、真空ポンプ(不図示)等により制御すればよい。粉体収容部10内の温度が第1気体が液化する温度であると、粉体収容部10内で第1気体が液化し、液化した第1気体と第1気体により軟化する粒子とが接触する場合があるため、第1気体により軟化する粒子間に液架橋力が生じ、第1気体により軟化する粒子同士が付着する場合がある。粉体収容部10内の温度は、例えば、粉体収容部10内に温度センサ32を設置し、該温度センサ32で検出した粉体収容部10内の温度を予め設定した設定値と比較しながら、ヒータ28によって調整される。
【0059】
また、粉体収容部10内の温度を第1気体が液化しない温度以上に調整し、且つ第1気体及び第2気体の混合比率を調整することにより、単に第1気体及び第2気体の混合比率を調整した場合に比べて、第1気体により軟化する粒子同士の付着や粒子の形状変化が抑制される。
【0060】
本実施形態では、攪拌機20の回転体52の形状、枚数、設置箇所、設置段数等は、粉体収容部10内に堆積する粉体の高さ、粉体の量、及び粉体の物性等に応じて設定されることが望ましい。また、回転体52の回転数については、攪拌機20を設置しない場合と比べて、粉体収容部10内に供給される気体と粉体との接触効率を向上させる回転数に設定される限り特に制限されるものではないが、被覆粒子が母粒子に埋没しないように設定されることが好ましい。また、回転体52を用いる場合には、例えば、回転軸50と多孔板58との間等のシール面へ、粉体が逆流することを防止するために、該シール面をガスでパージすることが好ましい。パージするためのガスは、第2気体でもよいし、第1気体と第2気体との混合ガスでもよい。
【0061】
本実施形態で用いる母粒子及び被覆粒子は、トナー製造、化粧品製造等の各種粉体製造の分野において用いられる全ての母粒子及び被覆粒子が含まれるが、母粒子は樹脂を含む粒子であり、例えば樹脂を主成分として(母粒子の質量に対し30質量%以上)含む粒子であり、被覆粒子は無機粒子であることが好ましい。
【0062】
例えば、トナーを製造する場合に用いられる母粒子は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有している。樹脂及び着色剤を含有する母粒子の製造方法は、例えば、粉砕法等の乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法等の湿式法等が挙げられる。そして、母粒子が湿式法により製造される場合等では、乾燥前又は乾燥途上の母粒子を粉体収容部10内に投入して、粉体収容部10内で乾燥させてもよい。
【0063】
樹脂の原料としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂、ウレタン系樹脂等、トナー用バインダ樹脂として、従来より使用されている各種の熱可塑性の合成樹脂及び天然樹脂等が用いられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られるポリエステル樹脂等が使用される。
【0065】
多価アルコール成分のうち、2価アルコール成分としては、例えばポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0066】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロース、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0067】
また、多価カルボン酸成分のうち、2価カルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0068】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンボール二量体酸、これらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0069】
また、着色剤としては、例えばカーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、カーミン6B、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ソルベントイエロー162、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3等が挙げられる。この着色剤の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、樹脂100重量部に対し、好ましくは1重量部以上10重量部以下、より好ましくは2重量部以上6重量部以下である。トナーを製造する場合に用いられる母粒子には、上記成分の他に電荷制御剤、離型剤等を含有していてもよい。
【0070】
電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものとして、例えばモノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸、それらの金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルコルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0071】
また、トナーを正帯電性に制御するものとして、例えばトリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、ニグロシン、脂肪酸金属塩等による変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化合物、フェロシアン化合物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズボレート類等が挙げられる。
【0072】
離型剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、サゾールワックス、モンタン系エステルワックス、モンタワックス、フィッシャトロプシュワックス等が挙げられる。特に、バインダ樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合には、酸化型ワックスの使用が好ましい。酸化型ワックスとしては、ポリオレフィン系の酸化型ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタワックス、フィッシャトロプシュワックス等が挙げられる。
【0073】
例えば、トナーを製造する場合に用いられる被覆粒子は、母粒子の流動性や維持性等を付与する外添剤等が挙げられる。外添剤としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化モリブデン等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト等の無機粒子等が使用される。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
<樹脂粒子分散液の調製>
スチレンを310重量部、n−ブチルアクリレートを90重量部、アクリル酸を8重量部、ドデカンチオールを6重量部採り、上記これらの成分を混合溶解して樹脂溶液を調製した。他方、非イオン性界面活性剤(三洋化成社製、ノニポール400)6重量部、及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)9重量部をイオン交換水500重量部に溶解した。次いで、上記調製した樹脂溶液を分散させて乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム4重量部を溶解させたイオン交換水50重量部を投入し、窒素置換を行った。その後、撹拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続し、樹脂粒子の体積平均粒径が155nm、ガラス転移点Tgが57℃、重量平均分子量Mwが33000のアニオン性の樹脂粒子分散液を得た。
【0076】
樹脂粒子の粒径測定には、マイクロトラック(日機装(株)製、マイクロトラックUPA9340)を用いた。樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いた示差走査熱量測定(DSC)により求めた。形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて次のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、(ML/A)×(π/4)×100を算出し、これを平均した値を形状係数SF1として求めた。また、トナーの形状係数SF1は好ましくは110以上140以下の範囲、より好ましくは115以上130以下の範囲である。トナーの形状係数SF1が110より小さい、又は140を超えると、流動性、クリーニング性等が得られないことがある。
【0077】
<母粒子の調製>
上記調製した樹脂粒子分散液を260重量部、ポリ塩化アルミニウム4重量部、イオン交換水を100重量部採り、上記これらの成分を、加熱冷却器を備える攪拌槽に投入し、攪拌槽内の分散機(大平洋機工株式会社製、キャビトロン)により、混合分散させた後、4枚傾斜パドル(d/D=0.8、ここでdは羽根の軸と垂直方向の長さ、Dは槽の内径)にて攪拌しながら、加熱冷却器温度を57℃に設定し、液温度を48℃まで加熱した。4枚傾斜パドルの回転数は、気液界面の壁面近傍のスラリー滞留を起こさない回転数に設定した。次いで、この分散液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを7.0に調整した後、その液温度が96℃になるまで加熱撹拌して、30分保持し、凝集粒子を融合した。その後、液温度を40℃まで冷却した段階で、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを9に調整した後、母粒子スラリーを得た。スラリー中の母粒子の体積平均粒径(D50v)を測定したところ2.3μm(D50v)であり、形状係数SF1は129であった。
【0078】
得られた母粒子スラリーを目開き10μm網で篩分処理した後、フィルタープレス(東京エンジニアリング社製)でろ過し、得られた母粒子(着色樹脂粒子)に、着色剤樹脂粒子100重量部に対して200重量部のイオン交換水(導電率2μS以下)を通過させ、続けて300重量部のイオン交換水に1mol/リットルの硝酸水溶液をpH3.0になるまで加えた酸洗浄水を通過させ、更に500重量部のイオン交換水を通過させ、圧搾し、脱水した。この母粒子ケークを解砕した後、乾燥機(フラッシュジェットドライヤ セイシン企業製)で乾燥し、不定形の母粒子を得た。この不定形の母粒子の体積平均粒径(D50v)を測定したところ2.5μm(D50v)であり、形状係数SF1は128であった。
【0079】
<実施例1>
上記得られた母粒子100重量部と、被覆粒子であるシリカ(体積平均粒子径40nm)8重量部を容積75Lのヘンシェルミキサーにて周速30m/sにて1分間混合し、45μmの網で篩分後、図1の粉体処理装置の粉体収容部(内径300mm)に投入した。粉体収容部に供給する第1気体としてメチルエチルケトンの気体(母粒子を軟化させる気体であり、常温(25℃)で対象とする樹脂を溶解する物性を有する物質の気体を用い、メチルエチルケトンの気体の温度を30℃に設定した。また、粉体収容部内の温度を32℃に調整した。また、容器内圧力を100mmHg(絶対圧)に調整し、粉体収容部内のメチルエチルケトンの気体の鉛直方向の平均線速度(流量を粉体収容部断面積で割った値)を0.4m/sとした。そして、母粒子及びシリカを攪拌機により、回転体先端(最大長)周速5m/sの攪拌速度で攪拌しながら、10分間、メチルエチルケトンの気体に接触させ、10分経過後、メチルエチルケトンの気体の供給を停止し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0080】
<実施例2>
上記得られた母粒子100重量部と、被覆粒子であるシリカ(体積平均粒子径40nm)8重量部を容積75Lのヘンシェルミキサーにて周速30m/sにて1分間混合し、45μmの網で篩分後、図1の粉体処理装置の粉体収容部(内径300mm)に投入した。粉体収容部に供給する第1気体としてメチルエチルケトンの気体、第2気体として窒素ガス(常温(25℃)で対象とする樹脂を溶解する物性を有さない物質の気体)を用い、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の温度を30℃に設定し、第2気体に対する第1気体の濃度を10%に調整した。また、粉体収容部内の温度を35℃に調整した。また、容器内圧力を600mmHg(絶対圧)に調整し、粉体収容部内のメチルエチルケトンの気体と窒素ガスとの混合気体の鉛直方向の平均線速度(流量を粉体収容部断面積で割った値)を0.4m/sとした。また、母粒子及びシリカを攪拌機により、回転体先端(最大長)周速5m/sの攪拌速度で攪拌しながら、10分間、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体に接触させた。10分経過後、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの供給を停止し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0081】
<実施例3>
メチルエチルケトンの気体の供給前に窒素ガスを1分間供給し、その後、メチルエチルケトン(MEK)の気体及び窒素ガスの混合気体の供給を開始したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0082】
<実施例4>
被覆粒子を軟化させる第1気体としてアセトンを用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0083】
<実施例5>
上記得られた母粒子を軟化させる第1気体としてイソプロパノール(IPA)を用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0084】
<実施例6>
上記得られた母粒子及び被覆粒子が軟化しない第2気体として、空気を用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0085】
<実施例7>
窒素ガスに対するメチルエチルケトンの気体の濃度を2%、100%、170%としたこと以外、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0086】
<実施例8>
粉体収容部内の温度を27℃、37℃、42℃とし、混合気体の温度を粉体収容部内の温度マイナス2℃としたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0087】
<実施例9>
第1気体及び第2気体の気流により母粒子及びシリカを流動させるために、攪拌機による母粒子及びシリカの攪拌を停止したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0088】
<実施例10>
メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の供給を停止する際には、メチルエチルケトンの気体の供給を停止し、窒素ガス(平均線速度は0.4m/s)を粉体収容部内の粉体に10分間接触させた後、窒素ガスの供給を停止したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0089】
<実施例11>
メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の供給を停止する際には、窒素ガスに対するメチルエチルケトンの気体の濃度を0.1%とした混合気体(平均線速度は0.4m/s)を粉体収容部内の粉体に10分間接触させ、窒素ガスに対するメチルエチルケトンの気体の濃度を0.1%とした混合気体の供給を停止したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理し、母粒子にシリカを付着させた粒子を得た。
【0090】
<比較例>
上記得られた母粒子100重量部とシリカ(体積平均粒子径40nm)8重量部を容積75Lのヘンシェルミキサーにて周速30m/sにて1分間混合し、45μmの網で篩分後、球型ミキサー(粉体攪拌装置)に投入して、回転体先端(最大長)周速65m/sで30分攪拌し、母粒子とシリカとを付着させた粉体を得た。
【0091】
<被覆粒子脱離量の測定>
水溶液中に粉体を分散させることによって母粒子から脱離する被覆粒子(シリカ)の割合(被覆粒子脱離量)を以下のようにして測定した。まず、0.2%界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)入り水溶液40ml中に、実施例1〜11又は比較例の粉体2重量部を添加した後、マグネチックスターラーにて、100rpmで5分間攪拌した。次に、この分散液を遠心分離機で、3000rpmで2分間遠心分離し、上澄み液を除去した。その後、イオン交換水を加えて、再度分散させ、その分散液をろ紙によりろ過し、上澄みを常温で1昼夜放置して乾燥させた。その乾燥物を圧縮成形し、蛍光X線を測定して、被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Aを測定した。また、実施例1〜11又は比較例の粉体をそのまま圧縮成形し、蛍光X線を測定して、被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Bを測定する。さらに、母粒子単独を圧縮成形し、蛍光X線を測定して、被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Cを測定した。そして、((被覆粒子脱離量(%))=(NET強度B−NET強度A)/(NET強度B−NET強度C)×100)の式に、測定したNET強度A〜Cを当てはめて、被覆粒子の脱離量を算出した。
【0092】
<被覆粒子埋没量の測定>
母粒子表面に埋没した被覆粒子(シリカ)の割合(被覆粒子埋没量)を以下のようにして測定した。0.2%界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)入り水溶液40ml中に実施例1〜11又は比較例の粉体2重量部を添加した後、マグネチックスターラーにて、100rpmで5分間攪拌した。次に、その分散液に超音波分散水槽にて150mAで30分間超音波を加えた後、遠心分離機で、3000rpmで2分間遠心分離し、上澄み液を除去した。その後、イオン交換水を加えて、再度分散させ、その分散液をろ紙によりろ過し、上澄みを常温で1昼夜放置して乾燥させた。その乾燥物を圧縮成形し、蛍光X線を測定して被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Aを測定した。また、実施例1〜11又は比較例の粉体をそのまま圧縮成形し、蛍光X線を測定して被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Bを測定した。さらに、母粒単独を圧縮成形し、蛍光X線を測定して被覆粒子の構成元素(Si)のNET強度Cを測定した。そして、((被覆粒子埋没量(%))=(NET強度A−NET強度C)/(NET強度B−NET強度C)×100)の式に、測定したNET強度A〜Cを当てはめて、被覆粒子埋没量を算出した。
【0093】
<粗粉量の測定>
実施例1〜11又は比較例の粉体100gを106μm目開きの網に通過させ、網上から刷毛で粉体をこすりながら、網下より集塵機で粉体を吸引し、網上の粉体の粒子数を数えた。許容範囲は50個までで、50個を越えるものは>50個と記載し、具体的な個数は数えなかった。
【0094】
表1に、実施例1〜11及び比較例の処理条件をまとめた。また、表2に、実施例1〜11及び比較例の粉体の被覆粒子脱離量、被覆粒子埋没量、粗粉量の結果をまとめた。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
表2から判るように、母粒子と被覆粒子を含む粉体を流動させながら、粉体を軟化させる第1気体を粉体に接触させることにより得られた実施例1の粉体は、比較例と比べて、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、母粒子と被覆粒子とを含む粉体を流動させながら、粉体を軟化させる第1気体及び粉体が軟化しない第2気体を粉体に接触させることにより得られた実施例2の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、メチルエチルケトンの気体の供給前に窒素ガスを供給し、その後、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の供給前に窒素ガスを供給したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例3の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、被覆粒子を軟化させる第1気体としてアセトンを用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例4の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、第1気体として、IPAを用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例5の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、母粒子及び被覆粒子が軟化しない第2気体として、空気を用いたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例6の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、窒素ガスに対するメチルエチルケトンの気体の濃度を2%、100%、170%としたこと以外、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例7の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、粉体収容部内の温度を27℃、37℃、42℃とし、混合気体の温度を粉体収容部内の温度マイナス2℃としたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例8の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、攪拌機による母粒子及びシリカの攪拌を停止して、第1気体及び第2気体の気流により母粒子及びシリカを流動させたこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例9の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の供給を停止する際に、メチルエチルケトンの気体の供給を停止し、窒素ガスを粉体収容部内の粉体に接触させた後、窒素ガスの供給を停止したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例10の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、メチルエチルケトンの気体及び窒素ガスの混合気体の供給を停止する際に、窒素ガスに対するメチルエチルケトンの気体の濃度を0.1%とした混合気体を粉体収容部内の粉体に接触させ後、その混合気体の供給を停止したこと以外は、実施例2と同様の条件で処理することにより得られた実施例11の粉体は、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。また、実施例1〜11の粉体は、母粒子が不定形でも、比較例より、被覆粒子埋没量、被覆粒子脱離量が低減した。
【0098】
また、これら実施例1〜11の粉体は、比較例より、粗粉量が低減した。また、実施例1〜11の粉体は、母粒子が不定形でも、比較例より、粗粉量が低減した。
【符号の説明】
【0099】
1 粉体処理装置、10 粉体収容部、12 第1気体発生装置、14a 第1気体供給ブロア、14b 第2気体供給ブロア、16 第1気体流量調整弁、18 第2気体流量調整弁、20 攪拌機、22 冷却器、24 回収容器、26,28 ヒータ、30 濃度センサ、32 温度センサ、34 流量センサ、36 第1気体供給配管、38 第2気体供給配管、40 第1循環配管、42 第2気体取り込み配管、42a,44a,44b,46a,48a 弁、44 第2循環配管、46 粉体投入配管、48 粉体排出配管、50 回転軸、52 回転体、54 シャフト、56 モータ、58 多孔板、60 邪魔板、62 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子と前記母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を収容する粉体収容部と、
前記粉体収容部内の粉体を流動させる流動手段と、
前記母粒子及び前記被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を前記粉体収容部内に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする粉体処理装置。
【請求項2】
前記供給手段は、前記第1気体に加え、前記粉体が軟化しない第2気体を前記粉体収容部内に供給することを特徴とする請求項1記載の粉体処理装置。
【請求項3】
前記第1気体と前記第2気体との混合比を調整する混合比調整手段を備えることを特徴とする請求項2記載の粉体処理装置。
【請求項4】
前記粉体収容部内の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体処理装置。
【請求項5】
前記流動手段は、前記粉体を攪拌する攪拌機を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体処理装置。
【請求項6】
母粒子と前記母粒子を被覆するための被覆粒子とを含む粉体を流動させながら、前記母粒子及び前記被覆粒子のうち少なくともいずれか一方を軟化させる第1気体を前記粉体に接触させ、前記母粒子と前記被覆粒子とを付着させることを特徴とする粉体処理方法。
【請求項7】
前記第1気体を前記粉体に接触させる際には、前記粉体が軟化しない第2気体も前記粉体に接触させることを特徴とする請求項6記載の粉体処理方法。
【請求項8】
前記母粒子と前記被覆粒子との付着を停止する際には、前記第2気体を前記粉体に接触させ前記粉体に接触させる前記第1気体の供給を停止するか、又は前記粉体に接触させる前記第1気体の供給量を前記第2気体の供給量より低くすることを特徴とする請求項7記載の粉体処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−24649(P2012−24649A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162634(P2010−162634)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】