説明

粉体分注装置

【課題】粉体分注装置において、分注装置は同軸形状のシリンダ及びプランジャから全体が略ノズル形状ゆえ、ロボットの取付軸に容易に取付け可能であり、その動作の自動化が可能であり、作業効率を大幅に向上し得る。
【解決手段】装置本体に設けられたシリンダと、フィルタ体を固着され且つ該シリンダに対して同軸的に相対スライド自在に配されたプランジャであって、所定スライド限界位置において該シリンダ先端内部で且つ該フィルタ体の外方に所定容積の粉体収納空間を画成する前記プランジャと、該シリンダに連通して配された吸引・吐出手段であって、前記フィルタ体を介した吸引作動時に該シリンダ先端から空気と共に粉体を吸入し前記粉体収納空間内に粉体を吸入させ、前記フィルタ体を介した空気の吐出作動時に前記粉体収納空間から粉体を排出させる前記吸入・吐出手段と、を具備することを特徴とする粉体分注装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、粉体を分注する装置であって、食品や製薬に使用される各種の粉体を定量し、一定濃度の液体サンプルとして分析に供するための前処理装置である粉体分注装置に関する。
【従来技術】
【0002】
一般に、塩、小麦粉、片栗粉のような食品粉体に例えば防腐剤がどの程度混入しているかを検査するためには、粉体のままでは検査できない。検査のためには、それら粉体を、一旦マイクロプレート中のウエル(凹部)に排出分注してウエル内の蒸留水に溶かした一定濃度の溶液として、その溶液をクロマトグラフィ等を用いて分析検査して防腐剤の混入割合等を知る。粉体は食品粉体に限ることはなく他の種々のものでもよく、例えばカフェイン又はビタミン等が混入した風邪粉薬等の製薬に使用してもよく、その場合には風邪粉薬としての粉体を上記の如く分注して蒸留水に溶かして上記と同様の手法によりそれに混入したカフェイン又はビタミン等の混入割合等を知る。
【0003】
ところで、従来の上記粉体の分注方法としては、一定容積の容器(例えば計量桝)内に粉体を手動により容器上面と同一面になるまで入れて、引き続き手動により上記分注作業を行うか、又は粉体を天秤により重量計測して所定重量分を容器内へ移し変え、引き続きその容器を手動により移送して上記分注作業を行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに上記従来例によれば、粉体の所定容量(重量)を取り分ける作業、及び引き続いての分注作業をほぼ手動により行っており自動化していないため、(1)作業効率が悪く、また(2)分注精度も不十分であり、また(3)分注量を可変するにも面倒であるという問題点があった。
【発明の効果】
【0005】
(1)分注装置は同軸形状のシリンダ及びプランジャから全体が略ノズル形状ゆえ、ロボットの取付軸に容易に取付け可能であり、その動作の自動化が可能であり、作業効率を大幅に向上し得る。
(2)吸引・吐出手段による空気の吸引又は吐出により、粉体をシリンダの粉体収納空間へ吸入又は該空間から排出を行っているので、粉体の吸入及び排出量が正確であり、分注精度を向上し得る。またその後にプランジャのスライド移動によりシリンダ内周に残留付着した粉体を掻き落としているので、一層分注精度を向上し得る。従来法による粉体分注再現の誤差精度(所定容積の粉体をある個所から別の個所へ移動したときの粉体容積の再現精度)は5〜10%程度であったが、本発明の粉体分注装置によれば2%未満に向上できた。
(3)パルスモータ等によりプランジャのスライド限界位置を可変設定することにより、シリンダ先端内方の粉体収納空間の容積、即ち粉体の分注量を容易に可変設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明になる粉体分注装置の一実施形態の正面図、図2は図1の粉体分注装置の側面図、図3はその要部の縦断図である。
【0007】
図1中、粉体分注装置1は、逆U字形(図中上方がU字形の底部)フレーム2の下部に取付けられた固定ブロック3及びシリンダ保持ブロック4と、シリンダ保持ブロック4に嵌挿して取付けられたシリンダ5(シリンダノズル部5a)と、フレーム2の上部に上下方向固定バー6を介して取付けられたパルスモータ(ステッピングモータ)7と、パルスモータ7のモータ軸7aのカップリング8と固定ブロック3との間に回転可能に取付けられた回転ねじ9と、フレーム2の上部と固定ブロック3との間に固着した1対のガイドバー10に対して上下方向スライド自在に取付けられたスライド体11とを具備する。
【0008】
スライド体11は、回転ねじ9に螺合して回転ねじ9の回転に伴って上下動するナット体12と、該ナット体12に固着されたフレーム13(センサ部13aを有する)に固着されシリンダ5内を挿通するプランジャ14(ナット体12と共に上下動可能)と、プランジャ14の下端に取付けねじ15(図3、図4参照)により取付けられたフィルタ体16とからなる。
【0009】
21a、21bは1対の三方電磁弁で、夫々フレーム2の両側に固着されたフレーム22a、22bに取付けられ、図6〜図10に示す如く、一方ではシリンダ5に設けたL型パイプ23に流路23aを介して接続され且つ他方では真空ポンプ24に夫々流路25a、25bを介して接続されている。
【0010】
26(図1)は、フレーム13のセンサ部13aと共働するセンサであり、センサ26の水平方向に離間対向配設した発光素子及び受光素子(図示せず)間の経路をセンサ部13aが上下動して遮断することにより、スライダ体11の下動限界位置を制御するが、周知の構成であるためここでは詳述しない。
【0011】
図3中、シリンダ5は、上部にシリンダキャップ27を有し、そのシリンダノズル部5aが、シリンダ保持ブロック4に挿通されて下方へ突出している。なお、シリンダ5は、これと一体のバネ係止部29とシリンダ保持ブロック4との間に介装したバネ30により図中下方へ付勢され、その肩部5bがシリンダ保持ブロック4に当接して位置決めされている。これはシリンダノズル部5a先端部が不慮に何かに当接したときにシリンダノズル部5aがバネ30に抗して寸法rだけ図中上方へ逃げ変位して当接による衝撃を柔らげる作用を果たす。
【0012】
次に、図3中、プランジャ14はシリンダ5のシリンダノズル部5a内に挿入されて、プランジャ14の下端にフィルタ体16を取付けられる。
【0013】
次に、フィルタ体16について述べる。フィルタ体16は、図3乃至図5に示す如く略リング形状をしており、プランジャ14下端に当接した状態で、これを挿通したねじ15がプランジャ14下端のねじ穴14aに螺入されることにより該プランジャ14下端に対して固着される。なお、フィルタ体16の外周溝16aにはOリング28を取付けられる。
【0014】
ここで、図3中、スライド体11(プランジャ14)の初期位置(上動限界位置)においては、フィルタ体16は、同図中実線で示す如く、フィルタ体下面がシリンダ5下端より寸法pだけ上動した位置にあるから、シリンダ5下端にp×qπ/4の容積の粉体収納空間5cを形成している。(ただしq=シリンダ5の内径)なお、上記寸法pは、パルスモータ7のパルス数設定を可変することにより可変設定可能であるから、上記容積、即ち粉体の分注量の可変設定は容易である。
なお、フィルタ体16は、超高分子量ポリエチレン又はポリエステル等の気孔性の樹脂材料からなり、その寸法は、例えば外径6mm程度厚さ3mm、気孔径15〜20μm程度であり、空気は透過させるが、本発明において吸引する対象の粉体(塩で直径100〜250μm、小麦粉又は片栗粉で直径30〜50μm)は透過させない。又はフィルタ体16は、ステンレス等の焼結金属材料からなってもよく、その場合は濾過径は1〜5μmである。
【0015】
次に、上記粉体分注装置1の操作について説明する。
【0016】
最初に、パルスモータ7を設定パルス分だけ所定方向へ回転作動させて、回転ねじ9の所定方向回転によりスライド体11を下方へスライドさせて、図3中二点鎖線で示す如く、フィルタ体16下面をシリンダ5下端と同一レベルとさせる。
【0017】
次に、図6に示す如く、装置1のシリンダノズル部5a下端を、攪拌機31に載置した容器32中の粉体33中に一定深さ分差し込む。続いて、パルスモータ7を先ほどとは逆方向へ設定パルス分だけ回転作動させて、スライド体11を上方へ寸法pだけスライドさせて、プランジャ5を、そのフィルタ体16下面が図3中実線で示す初期位置(上動限界位置)へ至るまで上動させて粉体収納空間5cを形成する。
【0018】
同時に、図9に示す如く、図中右方の三方電磁弁21aの3つの流路21a1〜21a3のうち中央の流路21a2を閉じて他の2つの流路21a1、21a3を開き、且つ他方の三方電磁弁21bの3つの流路21b1〜21b3のうち図中下方の流路21b3を閉じて他の2つの流路21b1、21b2を開く。すると、L型パイプ23からの流路23aは、2つの三方電磁弁21a、21bの弁切替状態に起因して、流路23a、25a、25b、21b2を介して大気へ開放連通される。従って、真空ポンプ24が作動したとき、流路25a、23a及びシリンダ5内の空気が図9中矢印方向へ吸引され、流路25b、21b2を介して大気へ排出される。(図9中斜線部参照)これにより、シリンダ5内に真空が発生するのみならず、シリンダ5下端の粉体収納空間5c内もその空気がフィルタ体16を介して吸引されて真空が発生しているから、該粉体収納空間5c内へ粉体33が吸引される。吸引後に攪拌機31が作動して容器32内の粉体33の表面が平らにされる。
【0019】
次に、粉体33を吸引したまま、装置1を分注個所の他の容器34のウエル34a(図7参照)の上方へ移動させる。ここで、今度は図10に示す如く、図中右方の三方電磁弁21aの3つの流路21a1〜21a3のうち下方の流路21a1を閉じて他の2つの流路21a2、21a3を開き、且つ他方の三方電磁弁21bの3つの流路21b1〜21b3のうち図中中央の流路21b2を閉じて他の2つの流路21b1、21b3を開く。すると、大気からの流路21a2は、2つの三方電磁弁21a、21bの弁切替状態に起因して、流路21a3、25a、25b、21b1、251b2を介して流路23aへ至り、L型パイプ23からシリンダ5、更にはフィルタ体16を介して粉体収納空間5cへ連通する。
【0020】
従って、真空ポンプ24が図9の場合と同一方向へ作動したとき、大気中の空気が流路21a2から吸引されて、該流路21a2、21a3、25aを介して真空ポンプ24により圧縮されて、更に流路25b、21b1、21b3、23aを介してシリンダ5内へ圧縮空気として吐出、即ち吹き込まれる。(図910斜線部参照)この圧縮空気流れは更にシリンダ5内においてフィルタ体16を介して粉体収納空間5cに吐出されるから、図7に示す如く、プランジャ14及びフィルタ体16は上動限界位置に留まったままで、該粉体収納空間5c内の粉体が圧縮空気圧により容器34のウエル34a内へ吐出分注される。
【0021】
続いて、パルスモータ7を前回とは逆方向へ回転作動させて、回転ねじ9を介してスライド体11(プランジャ14)を下方へ寸法pだけスライドさせて、フィルタ体16の下面を図3中二点鎖線で示す位置、即ち、図8に示す位置へ至らせる。これにより、先ほど粉体収納空間5c内の粉体が圧縮空気により吐出された後に、なおもシリンダ5内壁に残留付着していた粉体33が、下動するフィルタ体16の外周部分により掻き落とされて図8中符号33aで示す如くウエル34a内へ追加的に吐出分注される。
【0022】
これにより、単に圧縮空気のみにより粉体33を吐出する場合に比して、フィルタ体16により粉体33の残留付着分も吐出させているので、分注精度を向上し得る。
【0023】
勿論、容器34を天秤に載置しておき、その重量の増加分を計測するのが望ましい。
【0024】
なお、上記実施形態において、吸引・吐出手段としては真空ポンプ24を使用しているが、これに限らず、真空ポンプ及び圧縮機を併用しても良く、また他の種々の吸引・吐出手段を使用し得る。
【0025】
また、上記実施形態において、流路切替手段として三方電磁弁21a、21bを使用しているが、これに限らず種々の流路切替手段を使用し得る。
また、上記実施形態において、スライド体11の上動限界位置を可変するためにパルスモータ7を使用しているが、これに限ることなく、例えば上記上動限界位置を可変するための位置可変可能ストッパ機構を設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明になる粉体分注装置の一実施形態の正面図である。
【図2】図1の粉体分注装置の側面図である。
【図3】図1の粉体分注装置の要部の縦断図である。
【図4】図3の要部のうち、プランジャ、フィルタ体の分解図である。
【図5】フィルタ体の縦断図である。
【図6】図1の分注装置の要部の粉体吸引状態の図である。
【図7】図1の分注装置の要部の第1段階の粉体吐出状態の図である。
【図8】図1の分注装置の要部の第2段階の粉体吐出状態の図である。
【図9】上記分注装置の三方電磁弁及び真空ポンプの粉体吸引時の切替状態の図である。
【図10】上記分注装置の三方電磁弁及び真空ポンプの粉体吐出時の切替状態の図である。
【符号の説明】
【0027】
1 粉体分注装置
2 フレーム
3 固定ブロック
4 シリンダ保持ブロック
5 シリンダ
5c 粉体収納空間
7 パルスモータ(ステッピングモータ)
8 カップリング
9 回転ねじ
10 ガイドバー
11 スライド体
12 ナット体
13 フレーム
13a センサ部
14 プランジャ
15 取付けねじ
16 フィルタ体
21a、21b 三方電磁弁
21a1〜21a3、21b1〜21b3 電磁弁流路
23 L型パイプ
24 真空ポンプ
25a、25b 流路
26 センサ
27 シリンダキャップ
28 Oリング
29 バネ係止部
30 バネ
31 攪拌機
32、34 容器
33(33a) 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体分注装置において、
装置本体に設けられたシリンダ(5、5a)と、
フィルタ体(16)を固着され且つ該シリンダに対して同軸的に相対スライド自在に配されたプランジャ(14)であって、所定スライド限界位置において該シリンダ先端内部で且つ該フィルタ体の外方に所定容積の粉体収納空間(5c)を画成する前記プランジャ(14)と、
該シリンダに連通して配された吸引・吐出手段(24)であって、前記フィルタ体(16)を介した吸引作動時に該シリンダ先端から空気と共に粉体(33)を吸入し前記粉体収納空間(5c)内に粉体を吸入させ、前記フィルタ体を介した空気の吐出作動時に前記粉体収納空間から粉体を排出させる前記吸入・吐出手段(24)と、
を具備することを特徴とする粉体分注装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体分注装置において、
前記プランジャ(14)が前記シリンダ(5、5a)に対してスライドし、前記プランジャ(14)の所定スライド限界位置を可変設定して前記粉体収納空間(5c)の容積を可変設定するパルスモータ(7)が更に設けられていることを特徴とする粉体分注装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉体分注装置において、
前記粉体収納空間(5c)から粉体が排出された後に、前記プランジャ(14)が該シリンダ(5,5a)の先端方向へスライドすることにより、該フィルタ体(16)によりシリンダ内周面に残留付着した粉体(33)を更に掻き落とし排出させることを特徴とする粉体分注装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の粉体分注装置において、
前記吸引・吐出手段(24)の吸入及び吐出作動を切り替える切替手段(21a、21b)を有することを特徴とする粉体分注装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粉体分注装置において、
前記切替手段は1対の三方電磁切替弁(21a、21b)であることを特徴とする粉体分注装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の粉体分注装置において、
前記フィルタ体(16)は、超高分子量ポリエチレン又はポリエステル等の気孔性の樹脂材料からなることを特徴とする粉体分注装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の粉体分注装置において、
前記フィルタ体(16)は、ステンレス等の焼結金属材料からなることを特徴とする粉体分注装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の粉体分注装置において、
前記吸引・吐出手段(24)は、真空ポンプであることを特徴とする粉体分注装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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