説明

粉体及び電子写真用トナーの製造方法並びに電子写真用トナー

【課題】本発明は、ノズルが詰まることなく液状材料を安定して均質に噴霧供給でき、狭粒子径分布のトナーを製造できる噴霧造粒方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、スプレーノズルによりスプレー液である液体状材料にスプレーガスを衝突させて液状材料を微粒化した後、微粒化した液状材料を固化させ粉体を製造する方法であって、該スプレーガス全体の5質量%〜40質量%のスプレーガスを該液状材料とあらかじめ混合し、液状材料とスプレーガスの気液混合の二相流をスプレーノズル内流路中で形成した後に、さらに該二相流の噴出する流路の周囲からスプレーガス全体の95質量%〜60質量%のスプレーガスを噴出させて該二相流と衝突させ、液状材料を均質に微粒化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧造粒を要する分野全般、例えば、化成品、医薬品、食品、無機粉体などのスプレードライや溶融造粒に関し、特に電子写真用のトナーの製造方法に関する。さらに詳しくは、溶液、分散液、スラリー等の液状材料を二流体式スプレーノズルによって噴霧してトナー微粒子を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスプレー造粒装置は、生成した粒子を捕集するチャンバーの内部に様々な材料を噴霧して、該材料からなる微粒子状あるいは粉末状、さらには顆粒状の製品を製造するものである。
【0003】
例えば、あらかじめ溶媒に溶解もしくはスラリー状に分散させたり、もしくは加熱などによって溶融させた液状原料を、スプレーノズルによって造粒室の内部に噴霧し、該造粒室の内部で溶媒を乾燥、もしくは溶融物を冷却し、固体粒子を形成する。
このようなスプレーノズルには、所望の粒子径が大きな場合、たとえば100μmを超えるような場合には、回転ディスク式のノズルが用いられるが、100μmを下回るような小さな粒子径を求める場合には外部混合式の二流体式スプレーノズルが用いられる。
【0004】
これらのうち、たとえばトナーに応用された事例としては、たとえば特許文献1や2がある。
特許文献1の方法は、溶融手段によってトナー製造用の原料を含む混練物を溶融させた後及び/又は溶融しつつ、該溶融物をチャンバー内に排出しながら高圧のガスノズルによって噴霧させ、トナー粒子を得るものである。特許文献2の方法は、トナー製造用の原料を含む分散質が、分散媒中に微分散した分散液を、スプレーノズルによって微粒子化して噴射し、固化部内を搬送させつつ固化させて粒状とするものである。
しかし、特許文献1や2に開示した技術には、溶液やスラリー状材料から、噴霧造粒装置を用いて粒子を製造する場合には、原料液体のノズルが閉塞するという問題があった。
【0005】
たとえば特許文献3において、固体と液体が混在した混合物、又は固体が溶解した溶液の少なくとも一方からなる液状材料(すなわち溶液やスラリー状原料である)を装置本体の造粒室の内部に噴霧供給して粒子を得る造粒装置の問題点として、スプレーノズルが詰まるという問題が指摘され、解決策として液体側ノズルに機械的に位置変化するニードルを設け、ニードルによりノズル出口の固化物を除去する技術が示されている。
しかし、特許文献3の事例における、機械的なクリーニング機構を付与する場合には、単にニードルを設置するのみならず、たとえば周動部の液体シール機構なども必要になり、ノズルの構造が過剰に複雑になる問題があるし、そもそも閉塞もしくは閉塞しかけたノズルを如何に回復させるかを主眼としたもので、対処療法の域を出ないものである。
以上のように、スプレーノズルはスプレー造粒装置において重要な要素ではあるものの、ノズル閉塞という大きな問題を抱えていた。
【0006】
さて、スプレーノズルのつまりは、生成する粒子の粒子径や粒子径分布の制御に大きな影響を与える。スプレーノズルのつまりが発生すると、液体の噴霧状態に乱れが生じ、粗大粒が発生したり、液滴径分布(粒子径分布)がブロードになる。
特に高画質が求められるトナーの製造法として用いる場合には特に以下の問題がある。高画質に対応するためには、トナーの粒子径分布は小粒径で、かつできる限り狭いことが求められる。それゆえ、スプレーノズルの詰まりによって、粗大粒が発生したり、粒子径分布が広くなることは、噴霧造粒法におけるトナー粒子の製造方法において致命的な問題
であった。
発明者らは、これらのスプレーノズルの詰まりを解消し、良質なトナー粒子を製造することに適した製造方法の発明を試みたのである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−258394号公報
【特許文献2】特開2004−226668号公報
【特許文献3】特開2000−312817号公報
【特許文献4】特開2003−001090号公報
【特許文献5】特開2000−254554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ノズルが詰まることなく液状材料を安定して均質に噴霧供給でき、狭粒子径分布のトナーを製造できる噴霧造粒方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を採用した。
第一の構成として、本発明の造粒方法は、噴霧供給する液状材料(スプレー液であって、水や有機溶剤、またそれらに他の物質が溶解もしくは分散した溶液やスラリー)とスプレーガスの一部をあらかじめ混合し、液体材料とスプレーガスの一部の気液混合の二相流を形成した後に、さらにこの二相流と二相流の噴出する流路の周囲からスプレーガス(主流)とを衝突させ、霧化してから造粒するものである。
スプレーガスとしては、主に空気を用いるが、アプリケーションに応じてスチームや、窒素などの不活性ガスを用いても良い。
【0010】
本構成のごとく、液体材料を二相流とすることで、液ノズルから吐出する以前から液体原料が二相流となることで流体のボリュームが増し、流体の実質的な流出速度が加速されるため、噴霧ノズル内部の付着・詰まりを予防することが出来る。
さらに、この二相流と二相流の噴出する流路の周囲からスプレーガス(主流)とを衝突させる構造とすることで、ノズル出口においてガス流の壁を形成し、液体材料がノズル出口周囲に飛散・付着することを防ぎ、ノズル出口付近での付着・閉塞を予防することができる。
【0011】
二相流を形成するために使用される空気は、本来スプレーガスとして使用される空気を利用するため、二相流を形成するために新たに余分な空気を必要としない。従来噴霧に使用していたスプレーガスの一部を使用すればよい。前記二相流を形成するためのガス量と、前記スプレーガス(主流)の量の質量比は5:95〜40:60が好ましく、より好ましくは10:90〜30:70、更に好ましくは10:90〜20:80である。換言すれば、二相流を形成するためのスプレーガス量は、スプレーガス全体の5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%であり、更に好ましくは10〜20質量%である。同様に、二相流の噴出する流路の周囲から噴出して二相流と衝突するスプレーガス(主流)の量は、好ましくは95〜60質量%であり、より好ましくは90〜70質量%であり、更に好ましくは90〜80質量%である。
ここで、
スプレーガス量=スプレーガス(主流)量+二相流を形成するためのガス量
である。
【0012】
二相流を形成するためのガス量の比率が小さすぎる場合は、均一な二相流が形成されないうえ、前記スプレーガス(主流)のガス量が実質的に削減されるため、適切な微粒化性能が得られないことがある。
すなわち、二相流を形成するためのガス量の比率が大きすぎる場合には、二相流を形成するためのガス量の比率が小さい場合に比べ二相流形成時にはより微粒化が進行する。しかし、相対的にスプレーガス量が小さくなり、スプレーガス(主流)による微粒化能は低下する。それゆえ、ある程度微粒化の進行した二相流を、さらに微粒化するほどの分散エネルギーをスプレーガスが有することができず、好ましい比率に対して微粒化能は低下することになる。
【0013】
本発明におけるノズル構造としては、たとえば図1が例示できる。
液体材料、たとえばスラリー状原料がノズル内部でスプレーガスの一部を分離した二相流形成用ガスと混合し、一次分散して速度を加速しつつノズル出口に向かって搬送される。さらにノズル出口において、二相流形成用ガスの膨張による更なる加速と、膨張しつつ高速で噴出すスプレーガス(主流)と衝突し、微粒化される。このスプレーガス流は、二相流の噴出口の周囲に形成された出口から噴出する。
ノズル内部で二相流形成用ガスと混合され一次分散し、また流体が加速されるため、ノズル内部での閉塞を予防することができる。さらに、ノズル出口において、液体(二相流)噴出口の周りにスプレーガス流の壁が存在するために、ノズル出口付近での付着も抑制される。
【0014】
ここで、従来型のスプレー造粒装置に使用されているノズルの説明を行う。
二相流を形成しながら噴霧する技術としては、一般的には内部混合式の二流体スプレーノズルが知られている。一般的な内部混合式と呼ばれるスプレーノズルの構造としては、図6が例示される。たとえば原料スラリーが、スプレーガスとノズル内で混合して二相流を形成しつつ加速し、ノズル出口において、出口までに加速と、スプレーガスの膨張による更なる加速により噴霧される。これに対して、二相流を形成せずにスプレーガスで噴霧するスプレーノズルとしては、一般的に外部混合式と呼ばれるスプレーノズルがあり、外部混合式スプレーノズルの構造としては、図7が例示される。たとえば原料スラリーが、ノズル出口付近において、膨張しつつ高速で噴出するスプレーガスと衝突して加速し、噴霧される。図7においては、スプレーガスをさらに渦流として供給する工夫がなされている。
【0015】
内部混合式の二流体スプレーノズルは、外部混合式のノズルのように、液体(二相流)噴出口の周りにガス流の壁が存在しないためにノズル出口付近への付着やそれに伴うノズル出口付近の閉塞がおきやすい欠点がある。
外部混合式のスプレーノズルは、液体原料のノズル出口付近での搬送力は、液を供給するポンプ手段による液圧やサイフォン効果による微弱な吸引力によるものであってきわめて弱く、また液の流出速度も内部混合式に比べて遅いために、ノズル内部で閉塞しやすい欠点がある。特に、スラリー状の材料を用いた場合には、分散質の沈殿や凝集、分離の影響を受けやすく、詰まりやすい。
【0016】
従来技術の事例である図6や7に係るスプレーノズルは、ノズル出口付近にガス流の壁が存在しなかったり、ノズル内部に液状原料を搬送する機能が無いために、本発明のノズルに比べ、スプレー造粒装置に適応した場合におけるノズル外部や内部での詰まりに弱い。すなわち、これらのノズルを使用するスプレー造粒方法によれば、得られる製品粒子は粒子径分布が広かったり、粗大粒を多く含みやすい。
【0017】
本発明のスプレー造粒方法によれば、前記のように詰まりの起こりにくいノズルを使用するために、粒子径分布が小さく、粗大粒を含まない良質な微粒子や粉体、顆粒を製造することができる。
【0018】
本発明に係る粉体の製造方法によるスプレー造粒方法のプロセスフロー図は、従来法の
それと同様でよく、例えば図2に示される。原料保持手段からポンプ手段によって原料液体がスプレーノズルに供給される。同時に、スプレーノズルにはスプレーガスが、供給される。スプレーガスは、必要に応じて温度を調整される。スプレーノズルとしては、例えば図1,3,4のノズルが使用できる。スプレーノズルから、捕集チャンバの内部に向けて原料が噴霧される。噴霧された原料液滴は、別途送風手段によって供給される搬送気流により、捕集手段に搬送され、製品として回収される。必要に応じて該搬送気流は温度を調節してよい。また、噴霧された液滴は、必要に応じて該搬送気流と熱交換を行ったり、該搬送気流に揮発成分を放出してもよい。
なお図2のフロー図において、図6、7のようなノズルを用いた場合は従来方法によるスプレー造粒方法を示す。
【0019】
第二の構成としては、前記二相流の形成方法にベンチュリー、エジェクターもしくはリングノズルを用いることである。ベンチュリ−状構造の一例としては図3、エジェクター状構造の一例としては図4のような事例があげられる。ここでは図を省略するが、リングノズルを利用したものは、図3の二相流形成用スプレー空気の流路と、液体材料の流路を入れ替えた構造を図示する場合とほぼ同様である。
本構成のごとく、エジェクター、ベンチュリー、若しくはリングノズルを用いることで、効率よく分散された二相流を形成できると共に、液体材料の供給配管へのガスの逆流を防止することが出来る。
【0020】
内部混合式の二流体スプレーノズルや本発明のようなノズルにおいて、二相流形成に液体流路の圧力を適切に制御しない場合、たとえば噴霧エア(ガス)の供給圧力に対して液体材料の供給圧力が過小である場合に、液体材料の供給配管へ逆流する懸念がある。
しかし、エジェクター、ベンチュリーもしくはリングノズルを二相流の形成に用いることで、供給圧力がガス圧力よりも小さい場合でもガスが液体側へ逆流することなく、むしろ液体材料を吸引し、出口側へ搬送する作用をもたらすことができる。
前記のベンチュリ−等の方法のほかにも、液体が逆流しない方法、好ましくは出口への推進力を与えるような方法で二相流を形成できる方法であれば、同様の効果が期待できる。
【0021】
別の構成としては、前記二相流の形成方法が渦流であることである。たとえば図1の二相流形成用スプレーガス流と液体材料の混合部を図5のように変心させることで実現する事例があげられる(図5は、図1の図に対して垂直な方向の断面である)。図5のように液体流路壁面に沿うように二相流形成用スプレーガスを供給することで二相流が渦流で形成される。
二相流を渦流で形成することで、ノズル内壁面に対する固着や体積を抑制することができ、ひいては詰まりを防止することができる。
渦流を形成するさらに別の手段としては、二相流の形成後であって、スプレーガスと衝突する前の二相流の流路に、回転力付与手段を備えることが挙げられる。回転力付与手段としては、たとえば、一定方向に流れ方向を変化させる邪魔板様の部材を流路中に設置するとか、流路の壁に螺旋溝を形成するなどの方法がある。具体的な形態としては、たとえば、図9のような、スタティックミキサのエレメントのような部材が例示される。かかる部材をノズル内部に設置した事例を、図10に示す。
【0022】
第三の構成としては、前記スプレーガス(主流)が、渦流であることである。従来のスプレー造粒装置においても、渦流とすることが好ましいことが知られているが、本方法においても、特に該スプレーガスを渦流とすることで、ノズル出口の付着が抑制され、閉塞を予防することができ、好ましい。
【0023】
第四の構成としては、本方法を電子写真用トナーの製造方法に利用することである。前
記のような構成要件を満たす装置を使用するトナー粒子の製造方法は、ノズルへの付着やノズルの閉塞による粗大粒の発生の少ない優れた方法である。
第五の構成は、前記の方法で製造された電子写真用トナー粒子そのものである。本法で作成されたトナー粒子は、従来噴霧造粒法のそれに比べ粗大粒が少なく粒度分布がシャープであり、電子写真用トナーとして優れている。
第六の構成としては、前記二相流を形成する流路長さが、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの4倍以上であることである。このように形成することで、安定した二相流を孔から噴出させることができるため、スプレーガスとの衝突状態が安定し、結果的に噴霧状態が安定することになる。
言い換えれば、前記二相流を形成する流路長さが短すぎると、二相流の形成が安定する前に孔から噴出するために、吐出ムラとなる。二相流の形成が安定せず噴出状態が安定していない状態とは、すなわち気液の混合が十分でなく、二相流中における気泡や液滴の径が十分に小さくなっていない状態であって、気泡や液滴の分散・分割が進行している過程である。
それ故、前記二相流を形成する流路長さを4D以上とすることで、粒子径分布をシャープにできる。
図11に、前記二相流を形成する流路長さと、二相流の噴出する孔の直径Dを図示する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、ノズルが詰まることなく液状材料を安定して均質に噴霧供給でき、狭粒子径分布のトナーを製造できる噴霧造粒方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本方法を電子写真用トナーのスプレー造粒装置として応用した場合のプロセスフローを、図2に則して説明する。
たとえば、トナー用樹脂と着色剤、およびその他のトナー構成材料からなるトナー原料が、原料保持手段から溶融もしくは溶解した状態でポンプ手段を経てスプレーノズルに供給され、スプレーガスと共に、捕集チャンバ内に噴霧される。噴霧された粒子は、別途捕集チャンバに供給される空気流と共に捕集手段に搬送され、回収される。
前記空気流の気流は、温度調整手段によって温度を調整される。これは吸気温度測定手段(T1)により計測される。また、排気温度は、排気温度測定手段T2により計測される。スプレーガスにも温度調整手段が設けられてもよく、スプレーガスの温度は温度調整手段T3で計測される。
【0026】
別の例ではたとえば、トナー用樹脂と着色剤、およびその他のトナー構成材料からなるトナー原料が、有機溶媒に溶解された状態でスプレーノズルに供給され、スプレーノズルで微粒子状に噴霧された後、外気よりも加熱された空気流と熱交換し、溶媒成分を蒸発させた後捕集手段により捕集される。空気流の加熱温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。また、150℃未満が好ましく、より好ましくは130℃未満であり、更に好ましくは100℃未満である。
【0027】
また別の例ではたとえば、トナー用樹脂と着色剤、およびその他のトナー構成材料からなるトナー原料が、加熱溶融した状態でスプレーノズルに供給され、スプレーノズルで微粒子状に噴霧された後、60℃未満、このましくは25℃未満、より好ましくは10℃未満に冷却された搬送空気流と熱交換して冷却固化した後捕集手段により捕集される。
スプレーノズルの温度は、好ましくは90〜350℃、より好ましくは150〜320℃である。
【0028】
また別の例では、トナー原料が、水や有機溶媒などの分散媒に微分散されたスラリーがスプレーノズルに供給され、スプレーノズルで微粒子状に噴霧された後、外気よりも加熱
された空気流と熱交換し、溶媒成分を蒸発させた後捕集手段により捕集される。空気流の加熱温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。また、150℃未満が好ましく、より好ましくは130℃未満であり、更に好ましくは100℃未満である。
微分散のサイズとしては、好ましくはメジアン径が5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下が好ましい。ここで、メジアン径の測定は、島津製作所(株)製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000を用いて測定した値のことである。
【0029】
本方法で用いることができる前記トナー用樹脂としては、たとえばポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル;フェノール樹脂;天然変性フェノール樹脂;天然樹脂変性マレイン酸樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニール;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール;テルペン樹脂;クマロンインデン樹脂;石油系樹脂等が挙げられる。好ましい結着物質としては、スチレン系共重合体もしくはポリエステル樹脂が挙げられる。これらは単独であるいは2個以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド、硫酸バリウム、硫酸鉛、硫酸ストロンチウム、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、群青、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉、ブロンズ粉などの無機顔料、マダーレーキ、ロックウッドレーキ、コチニールレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールイエローS、リソールファストイエロー2G、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、エオシンレーキ、キノリンエローレーキ、インダスレンブルー、チオインジゴマルーン、アリザリンレーキ、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ベリレンレッド、ベリレンスカーレット、イソインドリノンエロー、ジオキサジンバイオレット、アニリンブラックなどの有機顔料が挙あげられる。これらは単独であるいは2個以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記着色剤の前記トナー(以下、画像形成粒子とも記す)における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、画像形成粒子の着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、画像形成粒子中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及び画像形成粒子の電気特性の低下を招くことがある。
【0032】
さらに、トナー原料として離型剤などとしても機能するワックスを含有していることも好ましく、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどの植物系ワッ
クス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成炭化水素、硬化ひまし油や硬化ひまし油誘導体などの水素化ワックス、アルコール、エステル、アミド、イミド、ケトン、金属石鹸などの脂肪酸誘導体などを用いることが出来る。これらは単独であるいは2個以上組み合わせて用いることができる。
前記ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜160℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。前記融点が、40℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある他、定着機への紙の巻き付きなどが発生することがある。
【0033】
前記ワックスの前記画像形成粒子における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像形成粒子100重量部に対して0〜40質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。前記含有量が、40質量部を超えると、低温定着性の阻害や画質の劣化(光沢度が高すぎる)を生ずることがある。
【0034】
さらには、トナー原料として帯電制御材を含むことが好ましい。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらの中でも、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属塩の金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、ストロンチウム、ホウ素、ケイ素、ニッケル、鉄、クロム、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0035】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフ
ェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NE
G VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−
901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
【0036】
前記帯電制御剤は、マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、あるいは前記画像形成粒子の各成分と共に前記有機溶媒に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいは画像形成粒子製造後に画像形成粒子表面に固定させてもよい。
【0037】
前記帯電制御剤の前記画像形成粒子における含有量としては、結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。該含有量が、0.1質量部未満であると、画像形成粒子の帯電特性の悪化が見られることが
あり、10質量部を超えると、画像形成粒子の帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0038】
本方法で用いることのできる前記有機溶剤としては、前記トナー材料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましい。
具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロルエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類、エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、ギ酸ブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類、ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄、窒素含有有機化合物類、その他水を用いることができ、このましくは、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等がよく、さらには、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100質量部に対し、100〜2000質量部が好ましく、200〜1500質量部がより好ましく、300〜1000質量部が更に好ましい。
【0040】
トナーの粒子径の評価は、コールターカウンター法を用いた値である。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(DVとする)、個数平均粒径(DNとする)を求めることができる。
【0041】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満
;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm〜40.30μm未満の粒子を対象とする。
【実施例】
【0042】
[実施例A]
図8に示すスプレー造粒装置を用い、スプレーセットアップ条件(スプレーノズルの構造)を変更させつつ、以下の溶解したトナー原料(溶液状と分散スラリー状の混合物)を用いてトナー粒子を作成し、粒度分布(DV、DN)を測定して、DV/DNを求め評価した。
DV/DNは、小さいほど好ましく、近年の高画質対応のトナー粒子として使用するためには、少なくともDV/DNは1.35未満であることが求められる。
スプレーノズルセットアップ以外の条件は同一で、ユーティリティー使用量も同一である。
【0043】
本評価方法においては、スプレー造粒装置内に設置されたスプレーノズル部で安定して均質な噴霧が出来ているほど粒度分布の狭い製品微粒子が得られる。それゆえ、前記DV/DNの値がより小さいほど、安定して均質な噴霧が出来ており好ましい。
DV/DNは値が小さいほど粒子径分布が狭く、トナーの製造方法として好ましい。また、このような粒子径分布の狭さは、特にトナー粒子として良質である。
また、同一のユーティリティー使用量であれば、DVの値がより小さいほど、より効率よく微粒子が得られているため、製造方法として好ましい。
【0044】
−トナー溶液の調製−
−−低分子ポリエステルの合成−−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物561質量部、テレフタル酸218質量部、アジピン酸48質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、該反応液を10〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸45質量部を添加し、常圧下、180℃にて2時間反応させて、低分子ポリエステルを合成した。
得られた低分子ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,500、重量平均分子量
(Mw)が6,700、ガラス転移温度(Tg)が43℃、酸価が25であった。
【0045】
−−マスターバッチ(MB)の調製−−
着色剤としての銅フタロシアニン顔料(「LIONOL BLUE FG−7351」、東洋インキ製造株式会社製)50質量部、ポリエステル樹脂(「RS801」;三洋化成工業社製、酸価=10、重量平均分子量(Mw)=20,000、ガラス転移温度(Tg
)=64℃)50質量部、及び水30質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合した。該混合物を二本ロールで130℃にて45分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で直径1mmの大きさに粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0046】
−−トナープレ溶解液の調製−−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、前記未変性ポリエステル119.88質量部、カルナバワックス20.0質量部、及びポリエチレンワックス(30質量部)にスチレン−アクリル酸ブチルエステル共重合体(70質量部)をグラフト化したワックス分
散剤12.0質量部、CCA(「サリチル酸金属錯体E−84」;オリエント化学工業社製)4.0質量部、前記マスターバッチ20.0質量部、前記有機溶剤としての酢酸エチル200.0質量部を仕込み、撹拌下、80℃まで昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間かけて30℃まで冷却して原料溶解・分散液を得た。
得られた原料溶解・分散液をビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、ディスク周速度6m/秒、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして、前記銅フタロシアニン顔料、及びカルナバワックスの分散を行い、トナープレ溶解液を得た。カルナバワックスの分散粒子径は、メディアン径で0.3μmである。
【0047】
−−高分子量ポリマーの合成−−
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量
(Mw)が9,500、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が5
1であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.53質量%であった。
【0048】
−−ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成−−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は418であった。
【0049】
−−トナー溶解分散液の調製−−
乳化直前に前記トナープレ溶解液の固形分濃度が50質量%となるように酢酸エチルを加え、反応容器中に、該有機溶剤相(1)187.94質量部、前記プレポリマー11.46質量部、及び前記ケチミン化合物0.6質量部を仕込み、TK式ホモミキサー(特殊機化社製)を用いて5,000rpmにて1分間混合して、さらにこれらの固形分濃度が10重量部となるように酢酸エチルを加え、TK式ホモミキサー(特殊機化社製)を用いて5,000rpmにて1分間混合して、トナー溶解分散液を調製した。
【0050】
−−噴霧工程−−
前記トナー溶解分散液(以下、「液状材料」とする)を、図8のフローの装置で噴霧する。
前記液状材料を、チュービングポンプでスプレーノズルへ供給し、別途供給されるスプレーガスと共に、捕集チャンバ内へ噴霧する。捕集チャンバ内には、別途80℃に設定された搬送ガスが送風手段と温度調整手段により供給され、この搬送ガスと熱交換しながら、二次乾燥手段[フラッシュジェットドライヤ(株式会社セイシン企業製)]に搬送され、捕集手段(サイクロン)で捕集される。得られたトナー粒子の溶剤成分含有率は、ガスクロマトグラフィーでの測定値で300ppm未満である。
前記噴霧工程において、実施例及び比較例のスプレーノズルの各条件を表1に示す。尚すべてのスプレー条件において、異なるのはスプレーノズルのガス供給方式のみであり、
ユーティリティー使用量、液体流路出口やスプレーガス(主流)噴出口のクリアランスや形状は同等とした。また表1中の噴霧エア使用空気量と二相流形成エア使用量との比は質量比である。
ここで、各々のスプレーノズルには、以下のものを用いた。
【0051】
比較例1:
一般的な内部混合型のスプレーノズルとして、スプレーイングシステムス社のスプレーセットアップ番号SU12A(液キャップPF2050、液キャップPA73160)を用いた。スプレーイングシステムスのカタログから引用した、前記スプレーイングシステムス社のスプレーノズルの構造は図6に示される。
比較例2:
一般的な外部混合型のスプレーノズルとして、アトマックス社のAM45Sを用いた他は比較例1と同じである。アトマックス社のAM45Sの構造に関する詳細は、特許文献4、5に示されている。特許文献5から引用した構造図は図7に示される。
比較例3:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1の態様のものを用いた。
【0052】
実施例1:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1の態様のものを用いた。
実施例2:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、渦流でガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1および図5の態様のものを用いた。
【0053】
実施例3:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、ベンチュリー方式によってガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図3の態様のものを用いた。
実施例4:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、エジェクタ−式にガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図4の態様のものを用いた。
実施例5:
前記実施例2と同じノズルである。
【0054】
【表1】

【0055】
−−結果−−
DV、DN、DV/DNの評価結果を表2に示す。
表2より、実施例は比較例に比べてDV/DNの値が小さく、トナー粒子として良好な値を示していることがわかる。また、実施例はDV/DN が小さいのみならず、DVの値も押しなべて小さく、小粒径で狭分布なトナーが従来と同一のユーティリティー使用量で得られており、エネルギー効率もよい。
比較例3は、スプレーノズルの形式は実施例1と同様であるが、スプレーノズルの操作条件である二相流形成エアの使用量比が好ましくないためか、DV/DNに改善が見られなかった。しかし、実施例2と5より、二相流形成エアの使用量比が好ましい範囲であれば、比較例に対して十分な改善が得られることがわかる、実施例内の比較では、今回の事例ではベンチュリーやエジェクタによって二相流を形成したほうがDVが小さく、より効率よく小粒径トナーを製造でき、渦流によって二相流を形成したほうがよりDV/DNが小さく狭分布である傾向が確認できるが、その差は僅差であり、いずれも優れた性能を示していると判断される。
【0056】
【表2】


[実施例B]
【0057】
スプレー造粒装置およびトナー溶液の調製は実施例Aと同様にして、スプレーノズルの条件を以下の条件で更に比較した。
比較例4:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1の態様のものを用いた。前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの10倍とした。
比較例5:
比較例4と同じノズルである。
【0058】
実施例6:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1および図5の態様のものを用いた。前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの10倍とした。
実施例7:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、渦流でガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1および図5の態様のものを用いた。前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの10
倍とした。
【0059】
実施例8:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、ベンチュリー式にガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図3の態様のものを用いた。同じく、前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの10倍とした。
実施例9:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、エジェクター式にガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図4の態様のものを用いた。同じく、前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの10倍とした。
実施例10:
前記実施例7と同じノズルである。
実施例11:
前記実施例8と同じノズルの内部に、二相流の回転力付与手段として図9のようなエレメントを挿入し、二相流を渦流としたノズルを用いた。
【0060】
実施例12:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1の態様のものを用いた。前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの3.5倍とした。
実施例13:
前記比較例2で使用したAM45Sの液流路を改造し、単純に二相流形成用ガスを混入し二相流を形成するよう変更した他は比較例2と同じである。内部構造は図1の態様のものを用いた。前記二相流を形成する流路長さは、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの4.5倍とした。
実施例14:
前記実施例6と同じノズル構成である。
【0061】
【表3】

【0062】
−−結果−−
DV、DN、DV/DNの評価結果を表4に示す。
表4より、実施例は比較例に比べてDV/DNの値が小さく、トナー粒子として良好な値を示していることがわかる。また、実施例はDV/DN が小さいのみならず、DVの値も押しなべて小さく、小粒径で狭分布なトナーが従来と同一のユーティリティー使用量で得られており、エネルギー効率もよい。
比較例4、5は、スプレーノズルの形式は実施例6と同様であるが、スプレーノズルの操作条件である二相流形成エアの使用量比が好ましくないためか、DV/DNに改善が見られなかった。しかし、実施例7と10と14より、二相流形成エアの使用量比が好ましい範囲であれば、比較例に対して十分な改善が得られることがわかる。実施例内の比較では、今回の事例ではベンチュリやエジェクタによって二相流を形成したほうがDVが小さく、より効率よく小粒径トナーを製造でき、過流によって二相流を形成したほうがよりDV/DNが小さく狭分布である傾向が確認できるが、その差は僅差であり、いずれも優れた性能を示していると判断される。また、実施例6、12、13により、二相流を形成する長さが、4D以上の場合に、4D未満に比べて、さらにDVすなわち粒子径がやや減少し、DV/DNすなわち粒子径分布がシャープになることがわかった。
【0063】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る粉体の製造方法において用いることのできるノズルの構造を示す概略図である。
【図2】本発明に係る粉体の製造方法によるスプレー造粒方法のプロセスフロー図である。
【図3】本発明に係る粉体の製造方法において用いることのできる別のノズルの構造を示す概略図である。
【図4】本発明に係る粉体の製造方法において用いることのできるさらに別のノズルの構造を示す概略図である。
【図5】図1の図に対して垂直な方向の断面図である。
【図6】従来の粉体の製造方法において用いられるノズルの構造を示す概略図である。
【図7】従来の粉体の製造方法において用いられる別のノズルの構造を示す概略図である。
【図8】本発明に係る粉体の製造方法によるスプレー造粒方法の別のプロセスフロー図である。
【図9】本発明に係る粉体の製造方法において用いることのできるノズル内の回転力付与手段の構造を示す概略図である。
【図10】本発明に係る粉体の製造方法において用いることのできるノズル内の回転力付与手段の設置位置の一例を示す概略図である。
【図11】本発明に係る粉体の製造方法において用いるノズル内の二相流を形成する部位の長さと二相流の噴出する孔の孔径D(円換算直径)を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーノズルによりスプレー液である液状材料にスプレーガスを衝突させて液状材料を微粒化した後、微粒化した液状材料を固化して粉体を製造する方法であって、該スプレーガス全体の5質量%〜40質量%のスプレーガスを該液状材料とあらかじめ混合し、該液状材料とスプレーガスの気液混合の二相流をスプレーノズル内流路中で形成した後に、さらに該二相流の噴出する流路の周囲からスプレーガス全体の95質量%〜60質量%のスプレーガスを噴出させて該二相流と衝突させ、液状材料を均質に微粒化することを特徴とする粉体の製造方法。
【請求項2】
前記二相流の形成方法が、ベンチュリー方式であることを特徴とする請求項1記載の粉体の製造方法。
【請求項3】
前記二相流の形成方法が、エジェクター方式であることを特徴とする請求項1記載の粉体の製造方法。
【請求項4】
前記二相流の形成方法が、リングノズル方式であることを特徴とする請求項1記載の粉体の製造方法。
【請求項5】
前記二相流の形成方法が、渦流方式であることを特徴とする請求項1記載の粉体の製造方法。
【請求項6】
前記二相流と衝突させるスプレーガスが渦流であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の粉体の製造方法。
【請求項7】
前記二相流を形成した後であってスプレーガスと該二相流を衝突させる前に、該二相流の流路に、回転力付与手段を備えることを特徴とする請求項1〜6の粉体の製造方法。
【請求項8】
前記二相流を形成する流路長さが、二相流の噴出する孔の円換算直径Dの4倍以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の粉体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一に記載の粉体の製造方法により電子写真用トナーを噴霧造粒することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電子写真用トナーの製造方法により製造されたことを特徴とする電子写真用トナー。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−304901(P2008−304901A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49121(P2008−49121)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】