説明

粉体塗料組成物の製造方法

【課題】少ない品揃えでも幅広い色相に調色することができ、メタリック調やパール調の光輝感を有する塗膜が得られる粉体塗料組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】2種以上の粉体塗料を混合する粉体塗料組成物の製造方法であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物の製造方法、並びに2種以上の粉体塗料を含有してなる粉体塗料組成物であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、自動車部品、電化製品、家具、工作機械、事務機器、玩具等の塗装に用いられ得る粉体塗料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、有機溶剤を使用しない低公害型塗料として、自動車部品、電化製品、家具、工作機械、事務機器、玩具等への需要が増加しつつある。粉体塗料による塗装は低公害型であるとともに、1回の塗装で形成される塗膜が厚く、従来の溶剤型塗料のように何度も重ね塗りする必要がないため、塗装時間を短縮することができる。さらに、塗料中に溶剤を含有しないため、塗膜中にピンホールを発生させることがない等の利点も有している。
【0003】
そこで、用途に合わせて、メタリック調やパール調の様々な外観を有する塗膜が得られる粉体塗料が求められており、例えば、メタリック調塗膜が得られる粉体塗料として、粘着性を備えた結合剤を介してフレーク状顔料を表面に結合させた熱硬化性樹脂粉末を含有した、メタリック調粉体塗料組成物が開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、より少ない品揃えで、幅広い色相の塗膜が得られる粉体塗料を調製する方法として、2種以上の色相の異なる粉体塗料を混合する技術が検討されているが(特許文献2参照)、メタリック調やパール調の光輝感のある塗膜が得られる粉体塗料の調色を行う際には、色相の調整だけでなく光輝感の調整も同時に必要とされるため、製造性の低い粉体塗料では溶剤型塗料ほど容易ではないのが実情である。
【特許文献1】国際公開第2002/094950号パンフレット
【特許文献2】特開平10−219412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少ない品揃えでも幅広い色相に調色することができ、メタリック調やパール調の光輝感を有する塗膜が得られる粉体塗料組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 2種以上の粉体塗料を混合する粉体塗料組成物の製造方法であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物の製造方法、並びに
〔2〕 2種以上の粉体塗料を含有してなる粉体塗料組成物であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にしたがって、少なくとも2種の互いに色相の異なる粉体塗料を混合することにより、メタリック調やパール調の光輝感を有する、様々な色相の塗膜が得られる粉体塗料組成物を少ない品揃えで簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の粉体塗料組成物は、少なくとも、樹脂及び着色剤を含有した樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合された、互いに色相の異なる少なくとも2種の粉体塗料を混合して得られるものである。
【0009】
樹脂粉末に含有される樹脂としては、従来より公知である樹脂が特に限定されることなく使用可能である。例えば、ポリエチレン、ナイロン樹脂、塩化ビニルなどの非反応性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの反応性樹脂等が挙げられ、これらは2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでは、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を主成分として、樹脂総量中、50〜100重量%含有することがより好ましい。
【0010】
着色剤としては、通常、粉体塗料に使用されるすべての無機系顔料と有機系顔料とを用いることができる。無機系顔料としては、酸化チタン、べんがら、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系、ペリレン系、縮合アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサン系等の顔料が挙げられ、具体的には、アゾ系顔料としてはレーキレッド、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等、ニトロ系顔料としてはナフトールイエロー等、ニトロソ系顔料としてはピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等、フタロシアニン系顔料としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等、アントラキノン系顔料としてはインダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等、キナクリドン系顔料としてはキナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等、ジオキサン系顔料としてはカルバゾールジオキサジンバイオレット等が、それぞれ挙げられる。樹脂100重量部に対する着色剤の含有量は、その種類により異なるが、無機系顔料では、1〜60重量部、有機系顔料では0.05〜30重量部が好ましい。
【0011】
樹脂粉末に反応性樹脂が含まれる場合、樹脂粉末には硬化剤が含有されていてもよい。硬化剤としては、用いられる反応性樹脂の官能基に対応した従来より公知である硬化剤が特に限定されることなく使用可能である。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート系硬化剤;1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート系硬化剤;ブロックイソシアネート系硬化剤;ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のエポキシ系硬化剤;アルコキシシラン系硬化剤;ポリアジリジン系硬化剤;オキサゾリン系硬化剤;β-ヒドロキシアルキルアミド硬化剤等が挙げられる。硬化剤の含有量は、樹脂中に存在する官能基の量にもよるが、官能基の当量比で0.8〜1.2の範囲が好ましい。
【0012】
さらに、樹脂粉末には、必要に応じて、アクリレート重合体等の流動性添加剤、各種触媒や有機系スズ化合物等の架橋促進剤、表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ベンゾイン等のワキ防止剤等の添加剤等が含有されていてもよい。
【0013】
本発明に用いられる粉体塗料は、例えば、樹脂、硬化剤、着色剤、添加剤等を押出機等で溶融混練し、冷却後、ハンマーミル、ジェット衝撃ミル等の粉砕装置を用いて物理的粉砕を行い、ついで空気分級機、マイクロン・クラッシファイアー等の分級機を用いて分級することにより調製することができる。
【0014】
樹脂粉末の平均粒径は、塗装の際の粉体塗料同士の凝集防止の観点から、5μm以上が好ましく、塗膜表面の平滑性を維持する観点から100μm以下が好ましい。これらの観点より、樹脂粉末の平均粒径は、5〜100μmが好ましく、15〜60μmがより好ましい。
【0015】
樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介して結合されるフレーク状顔料としては、金属、マイカ及びガラスからなる群より選ばれた少なくとも1種からなるフレーク状顔料が好ましい。これらのフレーク状顔料において、金属フレークは、主に、粉体塗料にメタリック調の光輝感や干しょう色(再帰反射性)を付与するものであり、マイカフレーク及びガラスフレークは、主に、粉体塗料に結合させることで、パール調の光輝感を付与するものである。なお、本発明において、フレーク状とは、平均粒径が1〜150μmの固体状のかたまりをいい、フレーク状顔料の平均粒径とは、長径の平均粒径であり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される粒度分布における体積基準での50%値である。
【0016】
金属フレークとしては、アルミニウム、亜鉛、銅、ブロンズ、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属やブロンズ、ステンレス等の合金からなる金属フレークが挙げられ、これらの顔料の中でも、アルミニウムフレークは金属光沢に優れ、安価な上に比重が小さいため扱いやすく、特に好適である。
【0017】
金属フレークの平均粒径(D50)は、2〜60μmが好ましい。
【0018】
マイカフレークは、着色されていてもよく、例えば、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料等の当業者に公知の各種マイカ顔料が挙げられる。さらに、本発明においては、ホログラム顔料もマイカ顔料に含まれるものとする。
【0019】
マイカフレークの大きさは特に限定されないが、平均粒径(D50)が2〜50μm、かつ厚さが0.1〜5μmの鱗片状の光干渉性を有するマイカ顔料が好ましく、光輝感の観点から、平均粒径は10〜35μmがより好ましい。
【0020】
ガラスフレークとしては、金属酸化物被覆ガラスフレーク及び金属めっきガラスフレークからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。金属酸化物被覆ガラスフレークとは、ガラスフレークの表面に酸化チタン等の金属酸化物を被覆したものであり、金属めっきガラスフレークとは、ガラスフレークの表面に、銀、ニッケル等の金属をめっきしたものである。
【0021】
ガラスフレークの平均粒径は、光輝感の観点から10μm以上が好ましく、塗膜外観の観点から、80μm以下が好ましい。これらの観点から、上記平均粒径は、10〜80μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。また、ガラスフレークの平均厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。
【0022】
金属フレーム、マイカフレーク、ガラスフレーク等のフレーク状顔料の粉体塗料中の含有量(粉体塗料固形分100重量部に対する顔料の固形分重量割合:PWC)は、ハイライト部及びシェード部ともにより輝度感の高いキラキラ感を伴った光輝性を発現させる観点から、0.01重量%以上が好ましく、塗膜外観の観点から、30重量%以下が好ましい。これらの観点から、上記含有量は、0.01〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。
【0023】
前記フレーク状顔料は、各粉体塗料に単独で結合されていてもよく、複数種のフレーク状顔料が併用されていてもよいが、本発明の粉体塗料組成物は、意匠性の観点より、金属からなるフレーク状顔料が樹脂粉末の表面に結合された粉体塗料とマイカ又はガラスからなるフレーク状顔料が結合された樹脂粉末の表面に粉体塗料とを含んでいることが好ましい。
【0024】
樹脂粉末の表面にフレーク状顔料を結合させるための接着性を有する結合剤は、溶媒に溶解させて使用するのが好ましいため、溶媒に完全に溶解すること、溶媒に溶解させたときの粘度が低いこと、さらにブロッキング抑制の必要性から溶媒が除去されれば固化し、接着性を失うこと、等の特性を有することが好ましい。
【0025】
このような特性を有する接着性を有する結合剤としては、数平均分子量及び軟化点の値がともに特定の範囲にある樹脂等が挙げられる。
【0026】
上記樹脂の数平均分子量は、フレーク状顔料を樹脂粉末に結合させた粉体塗料同士のブロッキングを防止する観点から、300以上が好ましく、フレーク状顔料を樹脂粉末に結合する際に、樹脂粉末への均一な浸透、分散を促進する観点から、2000以下が好ましい。これらの観点より、樹脂の数平均分子量は、300〜2000が好ましく、400〜1500がより好ましい。
【0027】
また、上記樹脂の軟化点は、フレーク状顔料を樹脂粉末に結合させた粉体塗料同士のブロッキングを防止する観点から、30℃以上が好ましく、フレーク状顔料を樹脂粉末に結合する際に、樹脂粉末への均一な浸透、分散を促進する観点から、180℃以下が好ましい。これらの観点より、樹脂の軟化点は、30〜180℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。
【0028】
本発明において、結合剤としては、クマロン・インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン系樹脂、テルペン系水素添加系樹脂、テルペン・フェノール系水素添加系樹脂、ロジン系樹脂、水素添加ロジンエステル系樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂などの天然樹脂や、アルキルフェノール・アセチレン系樹脂、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド系樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、キシレン系樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド系樹脂などの合成樹脂や、ポリブテン、液状系ゴムなどのオリゴマー系粘着付与剤等が挙げられる。その他、各種ゴム材料、油脂、ロウ(ワックス)などが接着性を有する結合剤として好適に使用可能である。これらのなかでは、本発明において適度な接着性を有する結合剤として、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、テルペン系水素添加系樹脂及びテルペン・フェノール系水素添加系樹脂が好ましい。
【0029】
接着性を有する結合剤の配合量は、得られる粉体塗料中、フレーク状顔料の遊離防止の観点から、0.1重量%以上が好ましく、ブロッキング防止の観点から、5重量%以下が好ましい。これらの観点より、結合剤の配合量は、得られる粉体塗料中、0.1〜5重量%が好ましい。
【0030】
樹脂粉末表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料を結合させる方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。即ち、あらかじめ均一に混合した樹脂粉末とフレーク状顔料に、溶媒に溶解した接着性を有する結合剤を添加し、混練する。溶媒が蒸発し全体が粉体化するまで混練を継続し、完全に溶媒を除去した後、気流式分級機(スクリーン)により分級して粉体塗料を得る。この方法では、混練しながら溶媒を蒸発除去し、乾燥することにより、フレーク状顔料と樹脂粉末の結合力を高めると同時に樹脂粉末同士のブロッキングを抑制することができる。なお、溶媒を蒸発除去し、乾燥する際には真空吸引を行うことが好ましい。また、あらかじめ溶媒に溶解させた結合剤にフレーク状顔料を分散させたものを、樹脂粉末に添加し、混合攪拌しながら、溶媒を蒸発させてもよい。
【0031】
接着性を有する結合剤を溶解する溶媒は特に限定されるものではないが、樹脂粉末を溶解、膨潤させないことが必要であり、低沸点であることが望ましい。一般に粉体塗料用の樹脂は50〜80℃で溶解するため、樹脂の溶融温度未満で留去することができる低沸点溶媒が好ましい。さらに、真空吸引による乾燥温度として好適な、-5〜50℃の範囲、より好ましくは0〜35℃の範囲の温度での完全除去が可能であることが望ましい。
【0032】
上記観点より、結合剤を溶解する溶媒は、常圧下での沸点が特定の範囲にある溶媒が好ましい。溶媒の常圧下での沸点は、沸点に伴って低下する引火点を考慮しての安全性の観点から、28℃以上が好ましく、粉体塗料同士のブロッキング防止の観点から、130℃以下が好ましい。これらの観点より、溶媒の常圧下での沸点は、28〜130℃が好ましく、60〜110℃がより好ましい。
【0033】
本発明において好適に用いられる溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン等のイソパラフィン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、四塩化炭素などの有機ハロゲン化物類、水等が挙げられる。
【0034】
結合剤を溶解する溶媒の使用量は、結合剤溶液を、樹脂粉末及びフレーク状顔料に均一に混合する観点から、樹脂粉末、フレーク状顔料、結合剤及び溶媒のからなる混合液中、
2重量%以上が好ましく、流動性の観点から、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。これらの観点より、結合剤を溶解する溶媒の使用量は、前記混合液中、混合粉体中、2〜50重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0035】
溶媒の乾燥による除去を含めた混練において、混練物の温度は、乾燥の長時間化を避ける観点から、-5℃以上が好ましく、樹脂粉体同士の結合を防止する観点から、50℃以下が好ましい。これらの観点より、混練物の温度は、-5〜50℃が好ましく、0〜35℃がより好ましい。
【0036】
樹脂粉末とフレーク状顔料の混合工程と、それに続く結合剤を添加しての混練・乾燥工程は、真空ニーダーミキサー等を用いて、同一装置内で連続的に行うことも可能であるが、生産性向上の観点から、混合工程と混練工程とを分離して行うこともできる。その場合、混合工程に用いられる混合機としては、常圧ニーダーミキサー、2軸スクリュー型混練機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速ミキサー、ブレンダー等が挙げられ、混練・乾燥工程に用いられる混練・乾燥機としては、振動乾燥機、連続式流動乾燥機等が挙げられる。
【0037】
樹脂粉末の表面に接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合された粉体塗料の平均粒径は、塗装作業性と塗膜の平滑性の観点からは、5〜100μmが好ましい。一方、通常、2種以上の色相の異なる粉体塗料を混合して均一な色相の粉体塗料組成物に調色する観点からは、25μm未満であることが好ましいとされる。これに対し、本発明のように光輝感を有する塗膜が得られる粉体塗料組成物を調製する場合には、平均粒径が25μm以上であっても、均一な色相の塗膜を形成することができる。また、粉体塗料の平均粒径は、塗膜の平滑性の観点から、50μm以下がより好ましい。これらの観点より、各粉体塗料の平均粒径は、25〜50μmがより好ましい。
【0038】
また、各粉体塗料間の比重差は、粉体塗料の均一混合の観点から、0.7以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
【0039】
2種以上の粉体塗料を混合して得られる本発明の粉体塗料組成物は、前記の樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合された、少なくとも2種の互いに色相の異なる粉体塗料を、例えば、公知の混合機により乾式混合して得られるが、かかる粉体塗料に加えて、着色剤を含有していない樹脂粉末、即ち樹脂を含有するが、着色剤を含有していない樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合された粉体塗料(非着色粉体塗料)をさらに混合することが好ましい。着色剤を含有していない粉体塗料を加えることにより、粉体塗料組成物の色相に影響を与えることなく、光輝感のみを調整することができる。
【0040】
非着色粉体塗料は、着色剤を使用しないこと以外は、前記粉体塗料と同様にして製造することができる。
【0041】
少なくとも2種の互いに色相の異なる粉体塗料、及び必要に応じて用いられる非着色粉体塗料を、各種混合機を用いて混合することにより、本発明の粉体塗料組成物が得られる。各粉体塗料の配合量は、粉体塗料組成物に求める色相や光輝感を考慮して、適宜決定される。
【0042】
本発明の粉体塗料組成物は、被塗装物(基材)に対して塗布された後、加熱することにより塗膜を得ることができるものである。被塗装物は、特に限定されないが、焼付けにより変形、変質等が発生しないものが好ましく、好適な被塗装物として、公知の鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属及び各種合金等が挙げられる。
【0043】
本発明の粉体塗料組成物を塗装する方法としては、あらかじめ塗装表面をブラスト処理後、化成処理等の公知の処理を施した上で粉体塗料組成物を付着させ、その後加熱硬化させることが好ましい。上記化成処理は、環境保護の面からノンクロメート処理であることが好ましく、ジルコニウム処理等が挙げられる。
【0044】
本発明の粉体塗料組成物を被塗装物表面に塗布する方法としては、スプレー塗装法、流動浸漬法、静電粉体塗装法の公知の方法を適用することができるが、塗着効率の観点からは、静電粉体塗装法が好ましい。静電粉体塗装法には、コロナ放電方式、摩擦帯電方式等が挙げられる。
【0045】
本発明の粉体塗料組成物を加熱硬化させる条件としては、硬化に関与する官能基及び硬化促進剤の量により異なるが、例えば、加熱温度は、100〜230℃が好ましく、140〜200℃がより好ましく、150〜180℃がさらに好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には1分間以上が好ましく、5〜30分間がより好ましい。
【0046】
本発明の粉体塗料組成物により形成される塗膜の厚みは、特に限定されないが、加熱硬化により形成された塗膜の厚みが、20〜200μm程度となるように設定することが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
粉体塗料の製造例1
ポリエステル樹脂「ファインディックM-8034」(大日本インキ化学工業社製)60重量部、エポキシ樹脂「エポトートNT-114」(東都化成社製)3重量部、硬化剤「IPDIアダクトB-1530」(ヒュルス社製、ε-カプロラクタムブロック化イソシアネート)10重量部、ベンゾイン0.5重量部、及び体質顔料「沈降性硫酸バリウム-100」(堺化学社製)9.62重量部をヘンシェルミキサーで混合し、エクストルーダーにより溶融混練を行い、冷却、粉砕した後、分級し、樹脂粉末A0を得た。得られた樹脂粉末の平均粒径を測定したところ、35μmであった。なお、平均粒径は、マイクロトラックHRA X-100(日機装社製粒度測定器)を用いて測定した粒度分布より体積平均を算出して求められた値である。この測定に際しては、解析プログラムとして「MICRO TRAC D.H.S. X100 Data Handling SystemSD-9300PRO-100」(日機装社製)を用い、測定条件として"Particle Transparency"を"reflect"に設定した。
【0049】
得られた樹脂粉末50g、アルミニウムフレーク「PCF7601A」(東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径:33.7μm)2g、及びアルミニウムフレーク「PCF7160A」(東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径:16.3μm)0.5gを十分に乾式混合した後、200ml容の密閉ガラス瓶型高速ブレンダー(PHONIX社製)にチャージした。
【0050】
次いで、接着性を有する結合剤としてテルペン・フェノール系水素添加系樹脂「YS-ポリスターTH-130」(ヤスハラケミカル株式会社製、数平均分子量:800、軟化点:130℃)1.5gをノルマルヘプタン(沸点:98.4℃)10gに溶解させた溶液を、高速ブレンダーにチャージした混合物に添加し、薬匙で均一になるよう十分に混練した。混練を継続しながら約1時間自然乾燥させると粉塵が立つ粉体が得られた。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC, ポリスチレン換算値)により測定した値である。また、軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。
【0051】
自然乾燥させた粉体を1リットル容のナスフラスコに移し、エバポレーターを用い、回転混合させながら、さらに20分間常温で真空乾燥させた。真空乾燥後、ナスフラスコ中の粉体を観察したところ、凝集塊は存在していなかったため、特に粉砕は行なわなかった。得られた粉体を目開き106μmのスクリーンにかけて、クリアの粉体塗料A1を得た。得られた粉体塗料の平均粒径を樹脂粉末と同様にして測定したところ、36μmであった。また、粉体塗料の比重は、1.3であった。なお、比重は、JIS Z8807に従って測定した値である。
【0052】
得られた粉体塗料を300mm×400mm×0.3mmのブリキ板上に、硬化膜厚が50〜80μmになるように静電スプレー塗装し、180℃に設定された焼き付け乾燥炉に投入して20分間焼き付け、硬化させて、メタリック調の塗膜を得た。得られた塗膜の測色を「SMカラーコンピュータSM-7」(スガ試験機社製カラーコンピュータ、測定孔30φ)にて行ったところ、L値が50.02、a値が-0.35、b値が-1.33であった。
【0053】
粉体塗料の製造例2
「沈降性硫酸バリウム-100」9.62重量部の代わりに、着色剤「CR-90」(石原産業社製)5重量部及び「沈降性硫酸バリウム-100」4.62重量部を使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末B0を調製し、さらにアルミニウムフレークと混合して、平均粒径が36μm、比重が1.29の白色の粉体塗料B1を得た。
【0054】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜のL値は57.47、a値は-0.4、b値は-2.79であった。
【0055】
粉体塗料の製造例3
「沈降性硫酸バリウム-100」9.62重量部の代わりに、着色剤「FW-200P」(デグサ社製)0.125重量部及び「沈降性硫酸バリウム-100」9.495重量部を使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末C0を調製し、さらにアルミニウムフレークと混合して、平均粒径が36μm、比重が1.29の黒色の粉体塗料C1を得た。
【0056】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜のL値は41.05、a値は0.05、b値は-0.23であった。
【0057】
粉体塗料の製造例4
「沈降性硫酸バリウム-100」9.62重量部の代わりに、着色剤「トダカラー130ED」(戸田工業社製、酸化第二鉄)0.88重量部及び「沈降性硫酸バリウム-100」8.74重量部を使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末D0を調製し、さらにアルミニウムフレークと混合して、平均粒径が36μm、比重が1.29の赤色の粉体塗料D1を得た。
【0058】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜のL値は44.32、a値は4.48、b値は1.51であった。
【0059】
粉体塗料の製造例5
「沈降性硫酸バリウム-100」9.62重量部の代わりに、着色剤「ファーストゲンブルーNK」(大日本インキ化学工業社製、銅フタロシアニン)0.5重量部及び「沈降性硫酸バリウム-100」9.12重量部を使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末E0を調製し、さらにアルミニウムフレークと混合して、平均粒径が36μm、比重が1.29の青色の粉体塗料E1を得た。
【0060】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜のL値は42.14、a値は-2.21、b値は-9.92であった。
【0061】
粉体塗料の製造例6
「沈降性硫酸バリウム-100」9.62重量部の代わりに、着色剤「HY-100」(チタン工業社製、黄色酸化鉄)2.5重量部及び「沈降性硫酸バリウム-100」7.12重量部を使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末F0を調製し、さらにアルミニウムフレークと混合して、平均粒径が36μm、比重が1.29の黄色の粉体塗料F1を得た。
【0062】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜のL値は48.27、a値は-0.55、b値は6.70であった。
【0063】
粉体塗料の製造例7
アルミニウムフレークの代わりに、マイカフレーク「Iriodin103WNT」(メルク社製、平均粒径18.1μm)2.5gを使用した以外は、粉体塗料の製造例1と同様にして、平均粒径が35μmの樹脂粉末を調製し、さらに平均粒径が36μm、比重が1.3のクリアの粉体塗料A2を得た。
【0064】
さらに、得られた粉体塗料を用いて塗膜を形成し、測色した。得られた塗膜はパール調を呈しており、L値は66.99、a値は-1.23、b値は0.71であった。
【0065】
実施例1〜12及び比較例1、2
表1に示す重量比で粉体塗料をスーパーミキサー(日本スピンドル社製)にて2分間混合した。得られた粉体塗料組成物を、300mm×400mm×0.3mmのブリキ板上に、硬化膜厚が50〜80μmになるように静電スプレー塗装し、180℃に設定された焼き付け乾燥炉に投入して、20分間焼き付け、硬化させて塗膜を得た。
【0066】
比較例3
表1に示す重量比の粉体塗料とアルミニウムフレーク「PCF7601A」(東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径:33.7μm)を1:1の重量比で混合し、スーパーミキサー(日本スピンドル社製)にて2分間混合した。得られた粉体塗料組成物を、300mm×400mm×0.3mmのブリキ板上に、硬化膜厚が50〜80μmになるように静電スプレー塗装し、180℃に設定された焼き付け乾燥炉に投入して、20分間焼き付け、硬化させて塗膜を得た。
【0067】
実施例及び比較例で得られた塗膜のメタリック感、まだら感及び外観を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
〔メタリック感〕
塗膜のメタリック感を、光輝感及びアルミニウムムラ(配向が不均一による)から評価した。
○:光輝感が良好で、アルミニウムムラが見られない。
△:光輝感が低く、若干アルミニウムムラが見られる。
×:光輝感が全くない。
【0069】
〔まだら感〕
視力1.5のモニターが塗装後の塗板を2m離れて目視により観察し、塗膜のまだら感を、色別れから評価した。
○:色ムラが全く見られない。
△:若干色ムラが見られる。
×:全面に色ムラが見られる。
【0070】
〔外観〕
塗装、焼付け後の塗板を色差計「SMカラーコンピュータ SM-7」(スガ試験機社製カラーコンピュータ、測定孔30φ)により、L値、a値、b値を測定し、評価した。
○:a値又はb値の絶対値の少なくともいずれか一方が1以上であり、色彩がある。
×:a値及びb値の絶対値がともに1未満であり、色彩がない。
【0071】
【表1】

【0072】
以上の結果より、実施例1〜12ではいずれも、メタリック感を有し、まだら感がなく、良好な外観を有する塗膜が得られることが分かる。なお、実施例9、10では、メタリック感とパール感を合わせ持つ塗膜が得られた。これに対し、フレーク状顔料を使用していない比較例1、2で得られた塗膜は、メタリック感がなく、まだら感も顕著であり、フレーク状顔料を粉体塗料の樹脂粉末表面に付着させず、粉体塗料と混合して用いた比較例3で得られた塗膜は、メタリック感はあるものの、まだら感のある塗膜であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の粉体塗料組成物は、自動車部品、電化製品、家具、工作機械、事務機器、玩具等の塗装に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の粉体塗料を混合する粉体塗料組成物の製造方法であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物の製造方法。
【請求項2】
2種以上の粉体塗料が、着色剤を含有していない樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
フレーク状顔料が、金属、マイカ及びガラスからなる群より選ばれた少なくとも1種からなる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
フレーク状顔料が金属フレークである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
金属フレークがアルミニウムフレークである請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
フレーク状顔料がマイカフレーク又はガラスフレークである請求項3記載の製造方法。
【請求項7】
2種以上の粉体塗料が、金属からなるフレーク状顔料が樹脂粉末の表面に結合されてなる粉体塗料とマイカ又はガラスからなるフレーク状顔料が樹脂粉末の表面に結合されてなる粉体塗料とを含む請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
2種以上の粉体塗料の平均粒径が25〜50μmである請求項1〜7いずれか記載の製造方法。
【請求項9】
2種以上の粉体塗料間の比重差が、いずれも0.7以下である請求項1〜8いずれか記載の製造方法。
【請求項10】
2種以上の粉体塗料を含有してなる粉体塗料組成物であって、前記2種以上の粉体塗料のうち、少なくとも2種の粉体塗料が、互いに色相が異なり、樹脂及び着色剤を含有してなる樹脂粉末の表面に、接着性を有する結合剤を介してフレーク状顔料が結合されてなる粉体塗料である、粉体塗料組成物。

【公開番号】特開2008−31349(P2008−31349A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208257(P2006−208257)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】