説明

粉体容器の排出装置

【課題】粉体を収容した容器内を鉛直に移動する弁体を空気圧シリンダによって駆動し底部の排出口を開閉させて粉体を排出する排出装置における、容器内の粉体量の変化による排出量の変化を小さく均一にできるようにした、粉体容器の排出装置を提供する。
【解決手段】弁体(8)を開閉駆動する空気圧シリンダ(10)に圧力空気を制御して給排する給排手段(12)と、容器(4)内の粉体の重量を計測する計測手段(14)と、コントローラ(18)を備え、コントローラ(18)は、計測手段(14)の出力から算出した粉体の単位時間当たりの減量値が、予め設定した、減量値と時間の関係の減量線に沿うように、給排手段(12)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容した粉体を弁体の開閉によって定量的に排出する粉体容器の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収容した粉体を、容器底部の排出口の弁体を容器内において鉛直方向に全閉位置と全開位置の間で空気圧シリンダによって移動させ排出する粉体容器の排出装置が実用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−54758号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したとおりの粉体容器の排出装置には、次のとおりの改善の望まれている課題がある。
【0005】
すなわち、粉体を排出する場合、排出口を開閉する弁体は、一定の空気圧力で伸縮駆動される空気圧シリンダによって開閉されるので、容器内の粉体の量が変化する(粉面レベルが変化する)と弁体に加わる粉体の重量の変化により、粉面レベルの高いときには排出口を全開させるまで(図1の寸法S)の時間が多くかかり、逆に粉面レベルの低いときには排出口は速い時間で開けられ、排出口を開ける時間が同じであっても、容器内の粉面レベルによって排出口の開度に違いが生じ、排出量が均一でなくなり、所望の量の粉体の排出が難しい。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その主たる技術的課題は、粉体を収容した容器内を鉛直方向に移動する弁体を空気圧シリンダによって駆動し底部の排出口を開閉させて粉体を排出する排出装置における、容器内の粉体の量の変化による排出量の変化を小さく均一にできるようにした、粉体容器の排出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記技術的課題を解決する粉体容器の排出装置として、粉体の容器内に、底部の排出口を全閉する位置と全開する位置の間で鉛直方向に移動自在に配設された弁体と、この弁体を開閉駆動する空気圧シリンダと、この空気圧シリンダに圧力空気を制御して給排する給排手段と、容器内の粉体の重量を計測する計測手段と、排出スイッチが接続されたコントローラと、を備え、コントローラは、排出スイッチがオンときには、給排手段によって弁体を所定の基本空気圧力および基本開時間で断続的に開状態にして排出口から粉体を排出させるとともに、予め設定した減量値と時間の関係である減量線に沿って、計測手段の出力から算出した粉体の単位時間当たりの減量値を制御し、設定した基本空気圧力および基本開時間を、単位時間の減量値が大きいほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短くし、減量値が小さいほど空気圧力を大きくかつ弁体の開時間を長くする、ことを特徴とする粉体容器の排出装置が提供される。
【0008】
好適には、コントローラは、予め、粉体の収容される容器の鉛直方向の高さを上層、中層、下層に分け、各層ごとに給排手段による基本空気圧力および弁体の基本開時間を、下層ほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短くして設定する。
【0009】
また、弁体は、円錐状を成しその底面側が排出口に接離自在に当接され、容器は、排出口から上方に向けて拡がる円錐状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って構成された粉体容器の排出装置によれば、計測手段により計測した容器内の粉体の重量から算出した容器内の粉体の減量の変化が、予め設定した均一な減量線に沿うように、排出口を開閉する弁体を動かす空気圧シリンダへの空気圧力および弁体の開時間を制御する。したがって、容器内の粉体の量の変化による排出量の変化を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成された粉体容器の排出装置の構成説明図。
【図2】弁体の開閉の基本を示す線図。
【図3】コントローラによる制御手順を示すフローチャート。
【図4】コントローラによる他の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された粉体容器の排出装置について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0013】
図1を参照して説明する。全体を番号2で示す粉体容器の排出装置は、粉体の容器4内に、底部の排出口6を全閉する位置と全開する位置の間(寸法Sで示す)で鉛直方向に移動自在に配設された弁体8と、弁体8を開閉駆動する空気圧シリンダ10と、空気圧シリンダ10に圧力空気を制御して給排する給排手段12と、容器4内の粉体の重量を計測する計測手段14と、排出スイッチ16が接続されたコントローラ18を備えている。
【0014】
容器4は、排出口6から上方に向けて拡がる円錐状に形成され、上端部には粉体の投入口5が設けられている。容器4は、計測手段14を介して基台フレーム7の上に支持されている。
【0015】
弁体4は、円錐状を成しその底面側の周縁が排出口6に接離自在に当接され、底面の中央に下方から伸びた空気圧シリンダ10のロッドが連結されている。
【0016】
空気圧シリンダ10は、複動シリンダで、シリンダ筒本体は基台フレーム7に取付けられている。
【0017】
給排手段12は、コントローラ18からの信号に基づいて空気圧源20からの空気圧力を調整する圧力調整弁12aと、調整された圧力空気をコントローラ18からの信号に基づいて空気圧シリンダ10に給排する四方弁である電磁方向切換弁12bを備えている。
【0018】
計測手段14は、ロードセルを備え、粉体の収容された容器4の重量から容器4の重量を引いた粉体の重量を計測しコントローラ18に出力する。
【0019】
排出スイッチ16は、オンにおいて粉体の排出を指令し、コントローラ18を介して弁体8を繰返し断続的に開作動させて排出口6から粉体を下方の受入部9に排出させ、オフにおいてはコントローラ18を介して弁体8の作動を止め排出口6を閉じ粉体の排出を止める。
【0020】
図1とともに図2を参照して説明する。コントローラ18は、排出スイッチ16がオンのときには、給排手段12によって弁体8を所定の基本空気圧力Psおよび基本開時間Tsで断続的に開状態にして排出口6から粉体を排出させるとともに、計測手段14の出力から算出した粉体の単位時間当たりの減量値が、予め設定した減量値と時間の関係である減量線Gに沿うように給排手段12を制御し、基本空気圧力Psおよび基本開時間Tsを単位時間の減量値が大きいほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短く、減量値が小さいほど空気圧力を大きくかつ弁体の開時間を長くするように調整する。
【0021】
図1、2とともに図3、主として図3を参照して、コントローラ18の制御手順について説明する。
【0022】
ステップS1において、排出スイッチ16のオンオフを判定し、オンのときにはステップS2に進み、オフのときには「エンド」に進み制御を終了する。
【0023】
ステップS2においては、給排手段12の基本空気圧力Psおよび弁体8の基本開時間Tsによって、空気圧シリンダ10により弁体8を開閉駆動させ排出口8を断続的に開状態にし、排出口6から粉体を排出させ、ステップS3に進む。
【0024】
ステップS3においては、計測手段14の出力から粉体の単位時間当たりの減量値を算出してステップS4に進み、ステップS4において、減量値が、予め設定した減量値と時間の関係である減量線Gに予め設定した許容範囲内で沿っているかを判定し、沿っているときにはステップS1に戻り、外れているときにはステップS5に進む。
【0025】
ステップS5においては、減量値が、減量線Gの上方に外れている(排出量すなわち減量が少ない)か、下方に外れている(排出量すなわち減量が多い)か、を判定し、上方に外れているときはステップS6に、下方に外れているときはステップS7に進む。
【0026】
ステップS6においては、給排手段12の圧力調整弁12aにより空気圧力Psを大きくし、切換弁12bにより弁体8の開時間Tsを長くし、排出量(減量)を多くし、ステップS3に進む。
【0027】
ステップS7においては、給排手段12により空気圧力Psを小さくし、弁体8の開時間Tsを短くし、排出量(減量)を少なくし、ステップS3に進む。
【0028】
コントローラ18による上述の制御演算においては、粉体の排出量(減量)が減量線Gに沿うように、粉面レベルを容器4内の最高位置から最低位置まで連続的に算出し、給排手段12の空気圧力および開時間の調整を行うので、演算そして演算装置が複雑になる。そこで、粉体のレベルを予め3層に分け演算を容易にした実施形態について以下に説明する。
【0029】
先ず図1を参照して説明する。本実施形態においては、コントローラ18は、予め、容器4の大きさに応じて粉体の収容される鉛直方向高さを上層H、中層M、下層Lの3層に分け、各層ごとに給排手段12による弁体の基本開時間および基本空気圧力を、下層ほど弁体の開時間を短くかつ空気圧力を小さく設定する。
【0030】
すなわち、上層Hにおける空気圧力Ph、開時間Th、中層Mにおける空気圧力Pm、開時間Tm、下層Lにおける空気圧力Pl、開時間Tlとし、Ph>Pm>Pl、Th>Tm>開時間Tlの関係で設定する。
【0031】
図1とともに図2、図4、主として図4を参照して、コントローラ18によるこの制御手順について説明する。
【0032】
ステップS11において、排出スイッチ16のオンオフを判定し、オンのときにはステップS12に進み、オフのときには「エンド」に進み制御を終了する。
【0033】
ステップS12においては、計測手段14の出力である粉体重量から粉体の最上部が上層H、中層M、下層Lのいずれにあるかを算出し、ステップS13に進む。
【0034】
ステップS13においては、算出した層が上層Hかどうかを判定し、上層Hの場合はステップS14に進み、上層Hでない場合はステップS15に進む。
【0035】
ステップS14においては、給排手段12の基本空気圧力Phおよび開時間Thで空気圧シリンダ10により弁体8を開閉駆動させ、排出口8を断続的に開状態にして排出口6から粉体を排出させ、ステップS16に進む。
【0036】
ステップS15においては、算出した層が中層Mかどうかを判定し、中層Mの場合はステップS21に進み、中層Mでない(下層Lの)場合はステップS22に進む。
【0037】
ステップS21においては、給排手段12の弁体8の基本空気圧力Pmおよび開時間Tmで空気圧シリンダ10により弁体8を開閉駆動させ、排出口8を断続的に開状態にして排出口6から粉体を排出させ、ステップS16に進む。
【0038】
ステップS22においては、給排手段12の弁体8の基本空気圧力Plおよび開時間Tlで空気圧シリンダ10により弁体8を開閉駆動させ、排出口8を断続的に開状態にして排出口6から粉体を排出させ、ステップS16に進む。
【0039】
ステップS16においては、粉体の単位時間当たりの減量値を算出してステップS17に進み、ステップS17において、減量値が、予め設定した減量値と時間の関係である減量線Gに予め設定した許容範囲内で沿っているかを判定し、沿っているときにはステップS11に戻り、外れているときにはステップS18に進む。
【0040】
ステップS18において、減量値が、減量線Gの上方に外れている(排出量すなわち減量が少ない)か、下方に外れている(排出量すなわち減量が多い)か、を判定し、上方に外れているときはステップS19に、下方に外れているときはステップS20に進む。
【0041】
ステップS19においては、給排手段12の空気圧力を大きくし、弁体8の開時間を長くし、排出量(減量)を多くし、ステップS12に戻る。
【0042】
ステップS20においては、給排手段12の空気圧力を大きくし、弁体8の開時間を短くし、排出量(減量)を少なくし、ステップS12に戻る。
【0043】
上述したとおりの粉体容器の排出装置2の作用効果について説明する。
【0044】
粉体容器の排出装置2は、計測手段14により計測した容器4内の粉体の重量から算出した容器4内の粉体の減量の変化が、予め設定した均一な減量線Gに沿うように、排出口6を開閉する弁体8を動かす空気圧シリンダ10への空気圧力および弁体8の開時間を制御する。
【0045】
したがって、容器4内の粉体の量の変化による排出量の変化を均一にすることができる。
【0046】
他の制御においては、コントローラ18は、予め、粉体の収容される容器4の鉛直方向の高さを上層H、中層M、下層Lに分け、各層ごとに給排手段12による基本空気圧力および弁体の基本開時間を、下層ほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短くして設定する。
【0047】
したがって、粉体のレベルを予め3層に分けることにより、コントローラ18は、容器4の最高位置から最低位置までの全範囲において連続的に粉面レベルを算出しなくてよいので、演算そして演算装置を簡単にすることができる。
【0048】
また、弁体8は円錐状を成しその底面側が排出口6に接離自在に当接され、容器4は排出口6から上方に向けて拡がる円錐状に形成されている。
【0049】
したがって、弁体8および容器4を単純な円錐形状に形成することにより、粉体の排出口6への流れを良くするとともに、コントローラ18による排出量の演算、算出も容易である。
【0050】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0051】
本発明の実施の形態においては、コントローラによる演算を容易にするために粉体のレベルを上層H、中層M、下層Lの3層に分けたが、層分けしなくてもよい。また、層分けは3層以外でもよい。
【符号の説明】
【0052】
2:粉体容器の排出装置
4:容器
6:排出口
8:弁体
10:空気圧シリンダ
12:給排手段
14:計測手段
16:排出スイッチ
18:コントローラ
H:上層
M:中層
L:下層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の容器内に、底部の排出口を全閉する位置と全開する位置の間で鉛直方向に移動自在に配設された弁体と、
この弁体を開閉駆動する空気圧シリンダと、
この空気圧シリンダに圧力空気を制御して給排する給排手段と、
容器内の粉体の重量を計測する計測手段と、
排出スイッチが接続されたコントローラと、を備え、
コントローラは、
排出スイッチがオンときには、給排手段によって弁体を所定の基本空気圧力および基本開時間で断続的に開状態にして排出口から粉体を排出させるとともに、
予め設定した減量値と時間の関係である減量線に沿って、計測手段の出力から算出した粉体の単位時間当たりの減量値を制御し、設定した基本空気圧力および基本開時間を、
単位時間の減量値が大きいほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短くし、減量値が小さいほど空気圧力を大きくかつ弁体の開時間を長くする、
ことを特徴とする粉体容器の排出装置。
【請求項2】
コントローラは、
予め、粉体の収容される容器の鉛直方向の高さを上層、中層、下層に分け、
各層ごとに給排手段による基本空気圧力および弁体の基本開時間を、下層ほど空気圧力を小さくかつ弁体の開時間を短くして設定する、
ことを特徴とする請求項1記載の粉体容器の排出装置。
【請求項3】
弁体が、円錐状を成しその底面側が排出口に接離自在に当接され、
容器が、排出口から上方に向けて拡がる円錐状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉体容器の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86937(P2012−86937A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234622(P2010−234622)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【出願人】(591147786)赤武エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】