説明

粉体接着剤

【課題】 小接着面積加工材料に対して、仮止め加工時に安定して上記加工材料を仮固定できる適度な塗布厚みを有する塗布性、仮止め適性、および接着力が優れている粉体接着剤を提供すること。
【解決手段】 0.1μm〜350μmの粒径を有するセラック系樹脂を主成分とする粉体(a)が、融点が40℃〜100℃である0.1μm〜350μmの粒径を有する可塑剤粉体および/または(炭素数14以上の高級脂肪酸および/または炭素数16以上の高級アルコール)粉体である粉体(b)と、平均粒子径が0.1μm〜30μmの無機粉体および/または架橋性高分子粉体である粉体(c)とから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする粉体接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品や光学機器に使用されるガラス類、磁性体などの材料を切断加工、切削加工および研磨加工する際に、加工される材料を仮固定する粉体接着剤に関し、更に詳しくは、微発泡性を有することにより、塗布性や仮止め適性が優れており、とくに、表面凹凸を有するもの、あるいは、球形、楕円形、円筒形などのように、接着面が極めて小面積のもの、あるいは、点や線接点であるような比較的接着面積が小さい形状に加工される材料(以下、単に小接着面積加工材料という)に対して仮止め適性が優れている粉体接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄い板状、棒状あるいは筒状などのガラス類などの材料の切断加工は、加工の際に材料を傷つけずに、また、正確に精度よく加工するために該材料を加工時に動かないように仮固定して加工する必要がある。上記の材料の仮固定方法としては、材料を固定する支持台に、有機溶剤や水溶液に接着性樹脂を溶解した液状型接着剤を、スプレー、刷毛およびスピンコーターなどを使用し、あるいは棒状などの形状に成形された固形型接着剤を熱溶融して手塗りなどによって塗布して、その接着剤を介して支持体に材料を接着させ、切断加工を行う。この加工は、材料単体または材料をある数量を束ねて加工することもできる。加工終了後、材料に付着している接着剤を洗浄剤などで除去して加工された製品が得られる。
【0003】
上記の加工に使用される液状型接着剤は、その多くが有機溶剤を含有しており、塗布作業時に有機溶剤の揮発などの環境上の負荷がかかるという問題や、固形型接着剤に比べて十分な塗膜厚みが得られないことから、接着力が弱く、仮固定性が劣るために材料の切断加工性が低下するという問題がある。特に、前記の小接着面積加工材料に対する仮止め適性および接着力がよくない。また、上記の液状型接着剤は、塗布後に、溶剤分または水分を乾燥する工程が必要であるため、作業性が低下するという問題もある。
【0004】
前記の固形型接着剤は、棒状など一定の形に成型された固形の接着剤を加熱された支持固定台上に押し当てて熱溶融させて塗布し、加工される材料と接着させるが、塗布温度条件によって溶融粘度が変化するために、その塗布厚みにバラツキが発生しやすい。また、液状型接着剤に比べて溶融粘度が高いために塗布作業性が低下する。更に、前記の小接着面積加工材料に対して十分な接着力が得られないことがある。
【0005】
前記の固形型接着剤の製造は、接着剤を構成する樹脂成分などを軟化点以上に加熱し、適度の溶融粘度にて十分に均一に溶融混練し、冷却固化するか、あるいは上記の樹脂成分を有機溶剤に溶解し、加温しながら乾燥あるいは減圧乾燥して溶剤を除去し、得られた乾燥物をシリコーンなどの離型性の型に入れ、樹脂の溶融温度以上にて融解させて調製する。とくに、熱硬化性を有するセラック樹脂を接着剤成分として使用した場合に、接着剤調製における加熱溶融時の加熱温度や加熱時間によって経時的にセラック樹脂の熱硬化が進行する。このために、得られる固形型接着剤は熱硬化が進行しているために、使用時の溶融粘度が上昇しているため塗布性が低下したり、接着力が低下する。また、熱硬化が進行しているために、切断加工終了後、材料に付着している接着剤を洗浄剤などで除去して製品化する場合に、接着剤の洗浄除去性が低下する。これらの問題を解決する目的で、セラック樹脂にロジンを配合した固形型の接着剤(特許文献1)が開示されているが、該接着剤は、前記の固形型接着剤と同様に前記の小接着面積加工材料を仮固定した場合に、十分な塗布性や仮り止め性が劣る。特に、セラック樹脂の配合量が多過ぎると塗布性が劣り、また、接着剤調製中にセラック樹脂の熱硬化が進行しているために、セラック樹脂本来の接着強度が得にくい。
【0006】
また、上記の固形型接着剤は、接着剤の調製時に高温にて加熱溶融する必要があり、更に、接着作業においても成型された固形接着剤を再溶融させて被接着体に塗布しなければならず高エネルギーを消費する。
【0007】
上述のように、従来の仮固定に使用される接着剤は、前記の小接着面積加工材料に対する仮止め適性がよくなく、また、十分な接着力が得られない。特に、熱硬化性の固形型接着剤は、接着剤調製における加熱溶融時の加熱温度や加熱時間によって経時的に熱硬化が進行するために、塗布時の熱溶融粘度が上昇して塗布性が低下したり、接着力が低下する。更に、熱硬化が進行しているために、切削や切断加工終了後、材料に付着している接着剤を洗浄剤などで除去して製品化する場合に、接着剤の洗浄除去性が低下するなどの問題がある。
【0008】
このために、前記の小接着面積加工材料に対して、適度の接着剤の塗布厚みを有する塗布性と、安定した仮止め適性や接着力を有し、接着剤調製中においても経時変化が殆どなく、接着剤塗布作業における作業環境負荷が少ない安定した仮固定ができる接着剤が要望されている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−179842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、とくに、小接着面積加工材料に対して、仮止め加工時に安定して上記加工材料を仮固定できる適度な塗布厚みを有する塗布性、仮止め適性、および接着力が優れている粉体接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、0.1μm〜350μmの粒径を有するセラック系樹脂を主成分とする粉体(a)を含有してなる粉体接着剤であって、更に、融点が40℃〜100℃である0.1μm〜350μmの粒径を有する可塑剤粉体および/または(炭素数14以上の高級脂肪酸および/または炭素数16以上の高級アルコール)粉体である粉体(b)と、平均粒子径が0.1μm〜30μmの無機粉体および/または架橋性高分子粉体である粉体(c)とからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体を含有することを特徴とする粉体接着剤を提供する。
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記の接着剤は、これを粉状で塗布し、次に、130℃〜180℃、好ましくは130℃〜150℃で、加熱溶融することによって、接着剤粉中に包含される空気や水分による発泡が発現し、見かけの適度な塗布厚みを持たせることができる。このことから、前記の小接着面積加工材料に対して塗布性、仮止め適性および接着力が優れており、かつ、溶剤などによる作業環境負荷が少なく、接着剤調製時に加熱溶融工程がないために、接着剤調製中や保管中の経時変化が少なく、更に、加工後における使用済み接着剤の洗浄剤による除去が容易であることを見いだした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、0.1μm〜350μmの粒径を有するセラック系樹脂を主成分とする粉体(a)から構成される粉体接着剤とすることにより、該粉体接着剤が、接着時に微発泡性を有し、塗布性、仮止め適性および接着力が優れており、特に、前記の小接着面積加工材料の切断加工、切削加工および研磨加工時などの仮固定に有効である粉体接着剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明を特徴づける粉体(a)は、公知の方法で粉体化された0.1μm〜350μmの粒径を有する粉体で、好ましくは70μm〜250μmの粒径を有する粉体である。上記の粉体(a)は、セラック系樹脂粉体単体でもよく、また、該セラック系樹脂粉体と、0.1μm〜350μmの粒径を有するロジン系樹脂粉体あるいは有機溶剤および/またはアルカリ溶液に可溶な樹脂粉体から選ばれる少なくとも1種との混合物であってもよい。
【0015】
本発明の接着剤中における粉体(a)において、セラック系樹脂の含有量が、40質量%〜100質量%、好ましくは60質量%〜100質量%である。上記のセラック系樹脂の含有量が多くなれば接着力は増大するが、40質量%未満の場合には接着強度が低下する傾向にある。
【0016】
上記の粉体(a)が、350μmの粒径より粗い場合には、得られる粉体接着剤を塗布し、加熱溶融した際に、微発泡性現象が減少すると推定され、均一な見かけの接着剤の塗布厚みが得られにくく、小接着面積加工材料への塗布性、仮止め性および接着力が劣り、上記の材料を切断加工する時に材料が動きやすく精密な切断加工がしにくくなる。
【0017】
上記のセラック系樹脂は、ラックカイガラ虫が分泌する樹脂状の物質を公知の溶液抽出法、ソーダー法などの方法により精製したもので、その樹脂分はアレウリチン酸、ジャラール酸、ラクシジャラール酸などの樹脂酸とのエステル化合物を主成分とした天然セラック樹脂あるいは合成セラック樹脂である。上記のセラック系樹脂としては、例えば、精製セラック樹脂、漂白セラック樹脂、脱色セラック樹脂、および熱硬化抑制剤を配合したセラック樹脂などが挙げられる。本発明で使用するセラック系樹脂は、上記のセラック樹脂を公知の方法で0.1μm〜350μmの粒径、好ましくは70μm〜250μmの粒径に加工された粉体である。
【0018】
上記のセラック系樹脂の粒径が350μmより粗い場合には、得られる粉体接着剤を塗布して熱溶融する場合に、粉体層に包含される空気や水分が逃げやすいために、接着加工時に微発泡が発生しにくく、また、接着層表面が粗面になりやすく接着性が低下する傾向にある。
【0019】
上記のセラック系樹脂は、熱硬化時間が170℃にて90秒〜600秒を有するものが好ましく使用される。上記のセラック系樹脂の熱硬化時間が上記上限を越えると、接着力が低下し、一方、熱硬化時間が上記下限未満の場合には、セラック系樹脂の熱硬化が進行し過ぎて、加工後における接着剤の洗浄除去性が劣る傾向がある。なお、上記のセラック系樹脂の熱硬化時間とは、セラック樹脂のJIS規格K5909による測定値である。
【0020】
前記の粒径を有するロジン系樹脂粉体としては、天然ロジン類や合成ロジン類を公知の方法で粉体化したものが挙げられる。上記のロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン類;ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジンエステル、ロジン変性フェノール樹脂などの合成ロジン類などおよびこれらの混合物が挙げられる。上記のロジン系樹脂粉体の粒径が粗い場合には、塗布された粉体層を溶融した時に溶融層に微発泡が発生しにくい。上記のロジン系樹脂粉体としては、0.1μm〜350μmの粒径を有し、好ましくは70μm〜250μmの粒径を有するものが使用される。
【0021】
上記のロジン系樹脂粉体は、その軟化点が70℃〜180℃のものが好ましく使用される。上記の軟化点が70℃未満の場合には、粘着性が増加する傾向にあるために、粉体化がしにくく、また、得られる接着剤が保存中に固化しやすくなり、粉体接着剤の均一な塗布性が劣る。
【0022】
また前記の有機溶剤および/またはアルカリ溶液に可溶な樹脂粉体としては、例えば、分子内にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性のエポキシ系樹脂粉体、アルカリ可溶性のアクリル系樹脂粉体およびテルペンフェノール系樹脂粉体などが挙げられる。上記の樹脂粉体は、その軟化点が70℃〜180℃のものが好ましく使用される。上記の軟化点が70℃未満の場合には、粘着性が増加する傾向にあるために、粉体化がしにくく、また、得られる接着剤が保存中に固化しやすくなり、粉体接着剤の均一な塗布性が劣る。なお、前記の軟化点は、JIS K2207の環球法に準拠した測定値である。
【0023】
また、本発明の接着剤は、得られる粉体接着剤に適度な接着力並びに塗布性を付与するために、前記の粉体(a)と、更に、前記の粉体(b)と、粉体(c)とから選ばれる少なくとも1種を含有する。上記の粉体(b)は、融点が40℃〜100℃である0.1μm〜350μmの粒径を有する可塑剤粉体および/または(炭素数14以上の高級脂肪酸および/または炭素数16以上の高級アルコール)粉体で、好ましくは70μm〜250μmの粒径を有する粉体である。なお、上記の融点は、JIS K3331に準拠した測定値である。
【0024】
上記の粉体(b)における可塑剤粉体は、常温にて固体である可塑剤の粉体で、例えば、フタル酸ジシクロヘキシル、イソフタル酸ジメチルなどのフタル酸エステル系、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系、その他安息香酸エステル系など、好ましくはトリフェニルホスフェート、フタル酸ジシクロヘキシルが挙げられる。
【0025】
また、上記の(炭素数14以上の高級脂肪酸および/または炭素数16以上の高級アルコール)粉体は、常温にて固体である粉体で、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。上記粉体は、好ましくは炭素数14〜22の高級脂肪酸および/または炭素数16〜26の高級アルコールが好ましく使用される。
【0026】
また、前記の粉体(c)は、平均粒子径が0.1μm〜30μmの無機粉体および/または架橋性高分子粉体、好ましくは平均粒子径が5μm〜10μmの粉体である。該粉体(c)としては、例えば、ひ性硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの無機粉体、および架橋性アクリル系樹脂などの架橋性高分子粉体などが好ましく使用される。
【0027】
前記の粉体(a)と、粉体(b)とを配合する場合の好ましい配合割合は、a/b=50/50〜95/5(質量比)である。上記粉体(b)の割合が多過ぎると、得られる接着剤の接着力が低下し、また、微発泡性が低下するために見かけの接着層の厚みが得られない。一方、上記粉体(b)の割合が少な過ぎると、接着力が低下したり、塗布時の溶融粘度が上昇することにより、作業性が低下する。
【0028】
また、粉体(a)と、粉体(b)および粉体(c)を配合する場合の好ましい配合割合は、上記のa/b配合比において、(a+b)/c=30/70〜95/5(質量比)である。上記粉体(c)の配合割合が多過ぎると、接着力および微発泡性が低下しやすい。一方、粉体(c)の配合割合が少な過ぎると接着力が低下する。
【0029】
本発明では、得られる粉体接着剤の微発泡性を補強するするために、無機系あるいは有機系の発泡剤を更に配合することができる。その配合量は、本発明の目的を妨げない範囲であればとくに限定するものではない。上記の発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾ系化合物、ニトロソ系化合物、スルホニルヒドラジン系化合物などの発泡剤が挙げられる。
【0030】
本発明の粉体接着剤は前記の粉体(a)が、粉体(b)と、粉体(c)とから選ばれる少なくとも1種と一緒に公知の粉体混練機で均一に混合分散され、粒径が0.1μm〜350μm、好ましくは70μm〜250μmの粉体に調製する。その調製された粉体接着剤の軟化点は60℃〜120℃(JIS K2207の環球法に準拠した測定値)が好ましい。上記の粉体の粒径が粗過ぎると得られる粉体接着剤を塗布して熱溶融した場合に、粉体層に包含される空気や水分が逃げやすく微発泡が発生しにくく、また、接着層表面が粗面になりやすく、一方、上記の粒径が極端に小さ過ぎると見かけの塗布厚みが得られにくい。上記の本発明の粉体接着剤の粒径は、粉体層を熱溶融した場合に粉体層間で微発泡が発生する程度の空隙率を有する程度のものが好ましく使用される。
【0031】
なお、前記の粉体(a)、粉体(b)および上記の粉体接着剤の粒径範囲を有する粉体の調製方法は、例えば、粒径が70μm〜250μmの粉体を得る場合には、上記上限の粒径に相当するメッシュを有する篩いを使用して、上記の調製される粉体を一次ふるい分けし、次に、上記下限粒径未満の粉体を除去する篩いを使用して、一次ふるい分けされた該粉体を、二次ふるい分けして粉体を調製する。なお、0.1μm〜350μmのようにふるい分けの測定範囲外である微粒子を含有する場合には、上限の粒径に相当するメッシュを有する篩いを使用して、上記粉体をふるい分けして得る。なお、使用する篩いは、JIS Z8801に準拠した標準篩いである。
【0032】
本発明の粉体接着剤を使用して切断・切削加工される材料を仮固定する好ましい方法としては、例えば、下記の(A)、(B)および(C)の方法が挙げられる。(A)方法としては、下記の(1)〜(5)の工程からなり、まず、上記の材料を130℃〜180℃に加熱したカーボン材質からなる仮固定台に本発明の粉体接着剤を均一にふりかけることにより塗布する工程(1)、塗布された粉体接着剤を熱溶融しながら粉体層中に微発泡を発生させる工程(2)、次に、微発泡状態の接着剤上に上記の材料を押し当てて仮固定接着する工程(3)、仮固定された材料をダイヤモンドカッターなどによって一定の寸法に切削および切断加工する工程(4)、その後、有機溶剤やアルカリ性の洗浄剤によって上記の接着剤を洗浄除去する工程(5)からなる。
【0033】
また、(B)方法としては、前記の(A)方法における工程(1)において、前記の加熱された仮固定台にセラック樹脂を主成分とするスティック形状の固形型接着剤を手塗りで熱溶融しながら一次塗布し、次に、本発明の粉体接着剤を塗布する以外は(A)方法と同様にして加工される材料を仮固定する。
【0034】
また、(C)方法としては、前記の(A)方法における工程(1)において、仮固定台を予備加熱を行わないで、本発明の粉体接着剤を均一にふりかけることにより塗布し、次に、上記の加工される材料を粉体接着剤上面に押し当て、次に、仮固定台を130℃〜180℃に加熱し、粉体層中に微発泡を発生させ、微発泡状で仮固定接着する以外は(A)方法と同様にして加工される材料を仮固定する。
【0035】
本発明の粉体接着剤は、前記の仮固定の方法において、塗布された粉体接着剤を130℃〜180℃に加熱して、その溶融時に微発泡させて使用することが好ましいが、本発明の粉体接着剤を100℃〜130℃程度で、加熱溶融させ微発泡させないで仮固定することもできる。
【0036】
前記の、切削および切断加工される材料は、電子部品などに使用されるフェライト、ネオジウムおよび希土類金属などからなる磁性体、光学部品、医療用部品などに使用されるガラス類、その他として、セラミック、金属などが挙げられる。
【実施例】
【0037】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのはとくに断りのない限り質量基準である。なお、本発明は下記の実施例に限定するものではない。
【0038】
[実施例1〜5]
下記の粉体(a)、粉体(b)および粉体(c)を使用し、表1のように配合し、粉体混合分散機を使用して、均一に混合分散し本発明の粉体接着剤K1〜K5を調製した。
【0039】
なお、表1における粉体(a)、粉体(b)および粉体(c)は下記の通りである。
粉体(a):
・a1:0.1μm〜250μmの粒径を有する精製セラック樹脂粉体(170℃にて熱硬化時間が300秒である)
・a2:0.1μm〜250μmの粒径を有する精製セラック樹脂粉体(170℃にて熱硬化時間が300秒である)90%と、0.1μm〜250μmの粒径を有し、軟化点が130℃のロジン樹脂粉体10%の混合物
・a3:70μm〜250μmの粒径を有する精製セラック樹脂粉体(170℃にて熱硬化時間が300秒である)60%と、70μm〜250μmの粒径を有し、軟化点が130℃のロジン樹脂粉体40%の混合物
粉体(b):
・b1:0.1μm〜250μmの粒径を有するフタル酸ジシクロヘキシル粉体
・b2:70μm〜250μmの粒径を有するステアリン酸粉体
・b3:0.1μm〜250μmの粒径を有するステアリルアルコール粉体
粉体(c):平均粒子径5μm〜10μmの硫酸バリウム(ひ性硫酸バリウム)
【0040】

【0041】
[比較例1]
下記の成分を有機溶剤に均一に溶解分散して比較例の液状型接着剤L1を調製した。
・ロジン樹脂 30部
・トルエン50%とイソプロピルアルコール50%の混合溶剤 70部
【0042】
[比較例2]
下記の成分を120℃の条件下にて10分間、均一に熱溶融混練して均質化し、均質化後型枠に流し込み、常温まで冷却・固化して比較例の固形型接着剤L2を調製した。
・170℃にて90秒の熱硬化時間を有するセラック樹脂 80部
・トリクレジルホスフェート 20部
【0043】
上記で得られた各々の接着剤について、円筒状の磁性体を使用し、その円筒面を各々の接着剤を使用して下記の方法でカーボンプレートの仮固定台に下記の仮固定接着を行い、常温にてダイヤモンドカッターにて上記の磁性体を切断し、その塗布性、仮止め適性および接着力に関して下記の測定方法で評価した。評価結果を表2に示す。
[仮固定接着]
本発明の接着剤による仮固定は、前記の仮固定法の(A)方法により150℃にて仮固定接着し、また、前記の比較例1の液状型接着剤による仮固定は、刷毛塗りにて仮固定台に塗布し、溶剤を乾燥後、カーボンプレートを150℃に加熱して磁性体を仮固定接着し、また、比較例2の固形型接着剤は150℃に加熱されたカーボンプレートの仮固定台に手塗りにて塗布し、直ちに上記の磁性体を仮固定接着する。
【0044】
(塗布性)
仮固定における上記磁性体の円筒面に対する接着剤の塗布性の状況を下記の評価方法で評価した。
○:磁性体の円筒面の接着面に対する接点から円筒の周囲にかけて接着剤が付着しており、仮止めに十分な接着塗布性が得られている。
×:磁性体の円筒面が接着面と接着剤を介して接点のみで付着しており、仮止めに十分な接着塗布性が得られていない。
【0045】
(仮止め適性)
前記円筒状の磁性体の仮止め適性を下記の評価方法で評価した。
○:接着剤層に微発泡があり、仮固定台上の接着剤層と磁性体の円筒面との接触面積が大きくなり、磁性体の切断加工が良好に行える程度のしつかりした仮止めを有している。
△:接着剤層に微発泡性が認められず、仮固定台上の接着剤層と磁性体の円筒面との接触面積が十分に大きくなく、磁性体の切断加工が良好に行える程度の仮止めが得られない。
×:接着剤層に微発泡性が認められず、仮固定台上の接着剤層と磁性体の円筒面が接点のみで接着しており、磁性体の切断加工が良好に行えず、仮止めが不十分である。
【0046】
(接着力)
上記で得られた各々の接着剤を一方のステンレス基板に塗布し、150℃にて加熱溶融してから他方のステンレス基板を貼り合わせ、常温まで冷却してから、該貼り合わせ基板の剪断力を引張強度測定機を使用してJIS K6850の引張剪断力に準拠して測定した。
【0047】

【0048】
上記の評価結果から、本発明の粉体接着剤は、仮止め用接着剤として、円筒状などの小接着面積加工材料に対して、塗布性、仮止め適性および接着力が優れていることが実証されている。なお、本発明を小接着面積加工材料の接着に関して説明したが、本発明の接着剤は上記用途に限定されず、他の種々の接着にも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、本発明の粉体接着剤は、微発泡性を有し、塗布性、仮止め適性および接着力が優れており、特に、電子部品や光学機器に使用される小接着面積加工材料の切断加工、切削加工および研磨加工などの仮固定用接着剤として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1μm〜350μmの粒径を有するセラック系樹脂を主成分とする粉体(a)が、融点が40℃〜100℃である0.1μm〜350μmの粒径を有する可塑剤粉体および/または(炭素数14以上の高級脂肪酸および/または炭素数16以上の高級アルコール)粉体である粉体(b)と、平均粒子径が0.1μm〜30μmの無機粉体および/または架橋性高分子粉体である粉体(c)とから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする粉体接着剤。
【請求項2】
粒径が0.1μm〜350μmであり、軟化点が60℃〜120℃である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項3】
前記の粉体(a)において、セラック系樹脂の含有量が、40質量%〜100質量%である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項4】
前記のセラック系樹脂が、170℃にて熱硬化時間が90秒〜600秒である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項5】
前記の粉体(a)において、セラック系樹脂粉体以外が、0.1μm〜350μmの粒径を有するロジン系樹脂粉体あるいは有機溶剤および/またはアルカリ溶液に可溶な樹脂粉体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項6】
前記のロジン系樹脂粉体と、有機溶剤および/またはアルカリ溶液に可溶な樹脂粉体の軟化点が70℃〜180℃である請求項5に記載の粉体接着剤。
【請求項7】
前記の粉体(a)と前記の粉体(b)とを配合した配合割合が、a/b=50/50〜95/5(質量比)である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項8】
前記の粉体(a)および前記の粉体(b)と、前記の粉体(c)とを配合した配合割合が、(a+b)/c=30/70〜95/5(質量比)である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項9】
前記の可塑剤粉体が、トリフェニルフォスフェートおよび/またはフタル酸ジシクロヘキシルである請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項10】
前記の無機粉体が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、シリカ、アルミナおよび酸化チタンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項11】
前記の架橋性高分子粉体が、架橋性アクリル系樹脂粉体である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項12】
更に、発泡剤を配合した請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項13】
被接着材料が、磁性体、ガラス類、金属およびセラミックから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の粉体接着剤。
【請求項14】
前記請求項1に記載の粉体接着剤を100℃〜180℃にて加熱溶融して被接着材料を接着することを特徴とする接着方法。

【公開番号】特開2006−96881(P2006−96881A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285008(P2004−285008)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】