説明

粉体用カートンおよび粉体用カートンの製造方法

【課題】係合片を係合穴に挿入しやすい粉体用カートンおよび粉体用カートンの製造方法を提供すること。
【解決手段】箱本体1には、蓋部3の係合片12と相対する位置に、係合片12を挿入可能な大きさの係合穴5が形成され、係合片12が挿入された場合に係合片12の外面と対向する位置に、係合穴5の縁部の一部であり前記係合穴5の内側に向かって凸状の係止片25が形成され、係止片25の左右の縁部は係合穴5から外方へ向かって切り込まれてなる切り込み部25aによって形成され、係止片25の縁部の少なくとも一部は箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっており、該係合穴5の背面側には、間隙が形成され、係合片12を係合穴5からその背面の間隙内に挿入するようにされている粉体用カートンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末洗剤などの粉体を収納するための粉体用カートンおよび粉体用カートンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉末洗剤などの粉体を収納するための収納容器として、厚紙製もしくはプラスチックフィルムをラミネートした厚紙製のカートンが広く用いられている。通常、このようなカートンは、上面を開口された容器本体と、この上面開口部を覆う開閉式の蓋部とから構成されており、蓋部と容器本体とがヒンジ部を回動支点として自由に開閉できるようになっている。また、このようなカートンでは、一般的に、洗剤がこぼれ落ちたり、湿気を帯びたりすることがないように、蓋部に設けられた係合片を本体に設けられた係合穴に挿入することにより蓋部を開閉する係合機構が備えられている。
【0003】
カートンの係合機構の1つとして、つまみ片を回動することによって、つまみ片と一体になって回動する係合片を間隙内にコハゼ掛けに挿入し、開閉自在な蓋部を定位置にロックするようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、カートンの係合機構の1つとして、スロットと嵌め合う延長部分を備えるもの(例えば、特許文献2参照)や、舌片と差込部とを備えるものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3502631号公報
【特許文献2】特表2002−538050号公報
【特許文献3】特開2001−63725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロックが確実にできるカートンの係合機構では、係合片を係合穴に挿入しにくく、蓋部を開閉しにくいことが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、係合片を係合穴に挿入しやすく、使用性に優れた粉体用カートンおよび粉体用カートンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を採用した。
本発明の粉体用カートンは、上面を開口された箱本体と、該上面開口部を覆う開閉自在な蓋部とを有する粉体用カートンにおいて、前記蓋部の前板または側板には係合片が設けられ、前記箱本体の正面板または側面板には、前記蓋部の係合片と相対する位置に、前記係合片を挿入可能な大きさの係合穴が形成され、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の縁部の少なくとも一部は前記箱本体の外面から外部側に向かって立ち上がっており、該係合穴の背面側には、正面板または側面板の内壁面に貼着されたフラップによって所定のすきま寸法からなる間隙が形成され、前記係合片を前記係合穴からその背面の間隙内に挿入するようにされていることを特徴とする。
【0007】
このような粉体用カートンでは、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の縁部の少なくとも一部は前記箱本体の外面から外部側に向かって立ち上がっているので、間隙のすきま寸法が大きいものとなり、係合片が係合穴に挿入しやすいものとなる。
【0008】
また、本発明の粉体用カートンは、上面を開口された箱本体と、該上面開口部を覆う開閉自在な蓋部とを有する粉体用カートンにおいて、前記蓋部の前板または側板には係合片が設けられ、前記箱本体の正面板または側面板には、前記蓋部の係合片と相対する位置に、前記係合片を挿入可能な大きさの係合穴が形成され、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の左右の縁部に前記係合穴から外方へ向かって切り込まれてなる切り込み部が形成され、該係合穴の背面側には、正面板または側面板の内壁面に貼着されたフラップによって所定のすきま寸法からなる間隙が形成され、前記係合片を前記係合穴からその背面の間隙内に挿入するようにされていることを特徴とする。
【0009】
このような粉体用カートンでは、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の左右の縁部は前記係合穴から外方へ向かって切り込まれてなる切り込み部によって形成されているので、間隙のすきま寸法が大きいものとなり、係合片が係合穴に挿入しやすいものとなる。
【0010】
また、上記の粉体用カートンにおいては、切り込み部を前記係合穴と反対側の端部から延在させた方向と水平方向とのなす角度が0〜60°の範囲であるものとすることができる。
このような粉体用カートンとすることで、より一層、係合片が係合穴に挿入しやすいものとすることができる。
【0011】
また、上記の粉体用カートンにおいては、前記蓋部の前板または側板の下縁部につまみ片が下向きに突設され、該つまみ片の左右の上端部を結ぶ水平ライン上の中央位置には、水平ラインよりも上に向かって凸状の前記係合片が切り込まれているとともに、該係合片の左右の下端部と前記つまみ片の左右の上端部との間には水平な回動用折り罫線が刻設され、該回動用折り罫線を回動中心として、前記つまみ片と係合片の全体が前記蓋部の前板または側板の内外方向に回動自在とされており、前記つまみ片を回動することによって、つまみ片と一体になって回動する前記係合片を係合穴から前記間隙内にコハゼ掛けに挿入し、開閉自在な蓋部を定位置にロックするようにしたことを特徴とするものとすることができる。
【0012】
また、上記の粉体用カートンにおいては、前記係合片が、前記蓋部の前板または側板の下縁部に下向きに突設されているものとすることができる。
【0013】
また、上記の粉体用カートンにおいては、前記蓋部の前板または側板の下縁部と前記係合片の下端部との間には水平な係合用折り罫線が刻設され、該係合用折り罫線を回動中心として、前記係合片のうち前記係合用折り罫線よりも下端側の部分が前記蓋部の前板または側板の内外方向に回動自在とされており、前記係合片を前板または側板の内方向に回動することによって、前記係合片の少なくとも一部を前記係合穴から前記間隙内に挿入し、開閉自在な蓋部を定位置にロックするようにしたものとすることができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の粉体用カートンの製造方法は、上記のいずれかの粉体用カートンの製造方法であって、抜き刃で打ち抜くことにより前記係合穴を形成すると同時に、前記係止片の縁部の少なくとも一部を前記箱本体の外面から外部側に向かって立ち上がらせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粉体用カートンは、間隙のすきま寸法が大きいものであるので、従来のカートンと比較して、係合片が係合穴に挿入しやすく、使用性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜図9は、本発明に係る粉体用カートンの第1実施形態を説明するための図である。
本実施形態の粉体用カートンは、図1に示すように、上面を開口された箱本体1と、この上面開口部2を覆う蓋部3とから構成されている。
箱本体1および蓋部3の材料としては、板紙を主原料とした紙素材が用いられる。紙素材としては、板紙にポリエチレン等のプラスチックフィルムをラミネートした(PEサンド)ものや、板紙にワックスコートしたものなどが用いられる。尚、紙素材の米坪量は400〜700g/m2、好ましくは550〜650g/mである。
箱本体1は、図2に示すように、正面板1A、背面板1B、左右2枚の側面板1C,1Cおよび4枚の底面板9を有し、これらを組み立てて接着することにより、図1に示すように、上部を開口された箱状の容器とされている。
【0017】
図1および図2に示すように、上面開口部2には、正面フラップ4A、背面フラップ4B、左右2枚の側面フラップ4C,4Cが備えられている。そして、4枚のフラップ4A〜4Cを内側に折り返し、箱本体1の内壁面に接着することにより、上面開口部2の口縁の強化を図るとともに、正面板1Aの上部中央位置に形成された係合穴5の背面側に所定のすきま寸法からなる間隙6(図6(b)参照)を形成している。
【0018】
係合穴5は、蓋部3を閉じた状態において係合片12と相対する位置に形成され、係合片を挿入可能な大きさで形成されている。係合穴5およびその背面の間隙6は、後述する蓋部3の係合片12をコハゼ掛けに挿入することにより蓋部3を閉蓋位置にロックするものである。
係合穴5の上縁部5Aは、図4(a)に示すように、係合穴5の内側(下)に向かって凸状の円弧状に形成された係止片25からなる。係止片25は、係合片12が挿入された場合(ロック状態)に係合片12の外面と対向する位置に設けられ(図8(b)参照)ている。係止片25が、下に向かって凸状の円弧状に形成されているので、係合穴5に挿脱される係合片12が係止片25の円弧状の形状に沿って案内されることになり、係合穴5への係合片12の挿脱が非常にスムーズに行われるようにされている。また、係合穴5の上縁部5Aを構成する係止片25の縁部近傍は、外側に向かって反ることにより湾曲する曲面とされており、係止片25の縁部は、図6(b)に示すように、箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっている。
【0019】
また、係止片25の左右の縁部は、図4(a)に示すように、係合穴5から外方へ向かって切り込まれてなる切り込み部25aによって形成されている。図4(a)に示す切り込み部25aは、係合穴5の上縁部5Aを構成する係止片25の円弧形状の延在する方向に切り込まれてなる曲線部25bと、曲線部25bの係合穴5と反対側の端部から箱本体1の側面板1Cに向かって水平に切り込まれてなる直線状の直線部25dとからなる。図4(a)に示す切り込み部25aにおいては、直線部25dを係合穴5と反対側の端部25eから延在させた方向と水平方向とのなす角度は0°とされている。
この切り込み部25aは、曲線部25bと直線部25dとからなるので、曲線部25bと直線部25dとにより間隙6のすきま寸法5Bが十分に確保されることと、曲線部25bによって係合片12が非常にスムーズに案内されることとの相乗効果により、非常に係合片12の入れやすい係合穴5とすることができる。しかも、直線部25dが水平方向に切り込まれているので、曲線部25bと直線部25dとの接する部分近傍における開閉時の負荷が分散されて、係合穴5の上縁部5Aがへたりにくくなり好ましい。
【0020】
また、切り込み部25aの長さ(曲線部25bと直線部25dを合わせた長さ)は、3mm以上であることが望ましい。切り込み部25aの長さが3mm未満であると、係合穴5の上縁部5Aの立ち上がる高さが十分に高くならない場合があり、切り込み部25aを形成したことによる係合穴5へ係合片12を入れやすくする効果が十分に得られない恐れがある。また、切り込み部25aの長さ(曲線部25bと直線部25dを合わせた長さ)は、切り込み部25aの係合穴5と反対側の端部25eから箱本体1の上面開口部2までの鉛直方向の距離(図4(a)においては端部25eと折り罫線7との間の鉛直方向の距離)の半分(50%)以下であることが望ましい。切り込み部25aの長さが、端部25eと折り罫線7との間の鉛直方向の距離の半分を超えると、係合穴5の上縁部5Aの強度が低下して係合穴5の上縁部5Aがへたりやすくなり、開閉回数が増えた場合にロック機構が十分に機能しなくなる恐れがある。
【0021】
また、図4(a)に示す係止片25は、係合穴5を抜き刃で打ち抜いて形成する工程において、係合穴5および切り込み部25aの形状に対応する抜き刃を用いて、係合穴5を打ち抜くと同時に切り込み部25aを打ち抜くことにより、係止片25の縁部のうち少なくとも係合穴5の上縁部5Aを箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がらせて形成することができる。
一般に、環状の穴のみを打ち抜く場合に使用される抜き刃は、先端部の外径が内側に向かって徐々に小さくなるように形成されている。このため、通常、環状の穴を打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と打ち抜かれた穴の縁部との間に大きな摩擦は発生しない。しかし、環状の穴のみであっても、穴の縁部に鋭角な凹部が存在する場合や、ピッチの狭い波型が形成されている場合、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と打ち抜かれた穴の縁部との間に大きな摩擦が発生する。また、環状の穴から外方へ向かって切り込まれてなる切り込みが形成されている場合にも、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と打ち抜かれた穴の縁部との間に大きな摩擦が発生する。
【0022】
したがって、切り込み部25aを形成しない場合には、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と係合穴の縁部との摩擦によって持ち上げられる係合穴の縁部の高さはわずかとなる。
これに対し、係合穴5と切り込み部25aとを同時に打ち抜く場合、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と切り込み部25aとの間に大きな摩擦が発生する。そして、抜き刃と切り込み部25aとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Aが大きく持ち上げられ、上方に向かって立ち上がる。このことにより、後述する間隙6のすきま寸法5B(図6(b)参照)をより大きく形成することができ、係合穴5の深さをより深くすることができる。よって、係合片12の入れやすい係合穴5とすることができ、使用性に優れたものとなる。
【0023】
抜き刃と切り込み部25aとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Aが立ち上がる高さは、抜き刃の厚みや、切り込み部25aの長さや、箱本体1を構成する紙素材の米坪量などによって決定される。例えば、抜き刃の厚みが、1.0mm、切り込み部25aの長さが5mm、紙素材の米坪量が600g/mである場合には、0.1〜2.0mmの範囲となる。
また、図4に示すように、係止片25の最も係合穴5側の部分と、切り込み部25aの最も係合穴5から遠い部分との鉛直方向の距離Hは、2mm〜12mmの範囲とされることが好ましく、3mm〜8mmの範囲であることがより好ましい。係止片25の最も係合穴5側の部分と、切り込み部25aの最も係合穴5から遠い部分との鉛直方向の距離Hが、上記範囲未満であると、係合穴5の上縁部5Aの立ち上がる高さが十分に高くならない場合があり、切り込み部25aを形成したことによる係合穴5へ係合片12を入れやすくする効果が十分に得られない恐れがある。また、上記距離Hが上記範囲を超えると、係合穴5へ係合片12を入れたときの係合片12の延在方向が水平方向に近くなり、ロック機構が十分に機能しなくなる恐れがある。
【0024】
なお、切り込み部25aの形状は、図4(a)に示す例に限定されるものではなく、例えば、図4(b)に示すように、切り込み部25aは、係合穴5の上縁部5Aの両端部からそれぞれ係合穴5の外方へ向かって切り込まれてなる直線状のものであってもよい。また、切り込み部25aは、例えば、図4(c)および図4(d)に示すように、切り込み部25aの係合穴5と反対側の端部25eから延在させた方向と水平方向とのなす角度が0°でないものであってもよい。切り込み部25aの係合穴5と反対側の端部25eから延在させた方向と水平方向とのなす角度αは、図4(c)に示す切り込み部25aにおいては、45°とされており、図4(d)に示す切り込み部25aにおいては、90°とされている。
【0025】
なお、切り込み部25aの係合穴5と反対側の端部25eから延在させた方向と水平方向とのなす角度αは、係合穴5の内側に向かって凸状の係止片25の左右の縁部を形成することができる角度範囲で任意に決定できるが、0〜60°の範囲とすることが望ましく、0〜45°の範囲とすることがより望ましい。角度αを0°未満とした場合、切り込み部25aを形成したことによる係合穴5への係合片12の入れやすさを改善できない恐れがある。また、60°を超える角度αとした場合、係合穴5の上縁部5Aの強度が低下して係合穴5の上縁部5Aがへたりやすくなり、開閉回数が増えた場合にロック機構が十分に機能しなくなる恐れがある。
【0026】
また、図2に示すように、箱本体1の背面板1Bの背面フラップ4Bと重なり合う位置には、背面板1Bの一部を上に凸状に切り込むことによって形成されたヒンジ板10が供えられている。また、ヒンジ板10の下端の中央部には、下に凸状の切り込み10bが設けられ、切り込み10bの両側には、折り罫線10a、10aが設けられている。ヒンジ板10は、切り込み10bおよび折り罫線10a、10aを回動支点として上下方向に回動自在とされている。そして、本実施形態においては、ヒンジ板10が蓋部3の背面板3Dの内面に接着固定されることにより、蓋部3が回動自在に開閉できるように構成されている。また、図2に示すように、ヒンジ板10は、中央部に切り込み10bを入れ、ヒンジ板10を折り罫線10a、10aの形成部分のみで箱本体1にヒンジ連結することにより、蓋部3の戻り反発を抑えるとともに、蓋部3をスムーズに開閉できるようにされている。
【0027】
また、4枚のフラップ4A〜4Cは、内側に折り返されて箱本体1の内壁面に接着されるが、この際、正面フラップ4Aの図2中に二点鎖線のハッチングで示されるハッチング部分6Aおよび背面フラップ4Bのヒンジ板10と重なり合う部分については接着剤を塗布することなしに接着している。さらに、正面フラップ4Aの折り返し接着時に、ハッチング部分6Aについては、切り込みのない折り罫線7に沿って折り返される。このことにより、フラップ4A〜4Cを内側に折り返した状態としたときに、ハッチング部分6Aに膨らみを持たせることができ、図6(b)に示すように、係合穴5の背面にすきま寸法5Bの大きい間隙6が形成され、深さの深い係合穴5を形成できる。なお、図2に示すハッチング部分6Aは、正面フラップ4Aを切り込みのない折り罫線7に沿って折り返したときに、係合穴5と相対する位置とその近傍の部分である。
【0028】
また、正面フラップ4Aのハッチング部分6A以外の部分、ならびに背面フラップ4B、左右2枚の側面フラップ4C,4Cについては、表側から厚紙の半分の厚さ位まで切り込みを入れた表半切り線(ハーフカット)8によって折り返すことにより、箱本体1の内壁面に接着するようにしている。このことにより、フラップ4A〜4Cを内側に折り返した状態としたときに、ハッチング部分6A以外の部分については、表半切り線8に沿って鋭角的に折り曲げられ、シャープな折り返し口縁部が形成される。
【0029】
このように、間隙6は、切り込みのない通常の折り罫線7に沿って折り返されることにより形成可能であるが、例えば、図2に示すハッチング部分6Aの全体あるいはその一部に、箱本体1の内部側に向かって突出するエンボス面27(図6(c)参照)を形成すれば、間隙6のすきま寸法5Bをより大きく形成することができ、係合穴5の深さをより深くすることができる。よって、係合片12の入れやすい係合穴5とすることができ、使用性に優れたものとなる。
【0030】
また、図2に示す係合穴5を取り囲むように、箱本体1の外部側に向かって突出するエンボス面25f(図6(d)参照)を形成した後、係合穴5と切り込み部25aとを同時に打ち抜くことにより、係合穴5の上縁部5Aがエンボス面25fに形成されているものとしてもよい。この場合には、間隙6のすきま寸法5Bをより大きく形成することができ、係合穴5の深さをより深くすることができる。
なお、エンボス面27およびエンボス面25fは、図6(d)に示すように、フラップ4A〜4Cを内側に折り返した状態としたときには相反する方向に突出して大きな間隙6を構成しているが、図2に示すように、フラップ4A〜4Cを折り返す前の状態では、同じ方向に突出している。したがって、エンボス面27およびエンボス面25fの2つのエンボス面を形成する場合、エンボス面27およびエンボス面25fを同時に形成することができる。よって、2つのエンボス面を形成する場合であっても、いずれか1つのエンボス面を形成する場合と同様の製造工程で製造でき、製造工程を増やすことなく容易に効率よく製造できる。
【0031】
また、図6(b)、図6(c)、図6(d)に示す例では、ハッチング部分6Aについてのみ通常の折り罫線7によって折り返すようにしたが、ハッチング部分6Aを含む正面フラップ4Aの全口縁を通常の折り罫線7で折り返すようにしてもよいし、正面フラップ4Aの全口縁をすべて表半切り線8で折り返すようにしてもよい。なお、正面フラップ4Aの全口縁をすべて表半切り線8で折り返す場合には、図6(e)に示すように、折り返された正面フラップ4Aが箱本体1の正面板1Aの内壁面にぴったりと張り付く状態となるので、間隙6の深さを確保するために、図6(e)に示すようにエンボス面27を形成したり、図6(e)に示すエンボス面27とともに、または図6(e)に示すエンボス面27に代えて、係合穴5を取り囲むように箱本体1の外部側に向かって突出するエンボス面25(図6(d)参照)を形成したりすることが望ましい。
【0032】
蓋部3は、図3(a)に示すように、天面板3A、前板3B、左右2枚の側板3Cおよび背面板3Dとからなり、これらを組み立てて接着することにより、図1に示すように、容器本体1の上面開口部2を覆う蓋部3とされている。
【0033】
また、図3(a)に示すように、蓋部3を構成する前板3Bの下縁中央部には、舌片状をしたつまみ片11が下向きに突設されている。また、つまみ片11の左右の上端部11A,11Aを結ぶ水平ライン上の中央位置には、上に向かって凸状の係合片12が切断線13によって形成されている。さらに、切断線13の左右の下端部13A、13Aとつまみ片11の左右の上端部11A,11Aとの間には、水平な回動用折り罫線14,14が刻設されている。そして、つまみ片11と係合片12の全体が、左右の回動用折り罫線14,14を回動中心として前板3Bの内外方向に回動可能とされている。なお、係合片12の横幅は、蓋部3のロック時に箱本体1の係合穴5内に入り込み得るように、係合穴5の穴幅よりも小さく設定されている。
【0034】
また、図3(b)に示すように、つまみ片11の下端部には、下向きに突設された凸状片11aが形成されていてもよい。さらに、つまみ片11の下端部と凸状片11aとの境界位置には、凸状片11aの左右の端縁間を結んで水平な谷折り用罫線23が形成されていてもよい。
図3(b)に示すように、つまみ片11の下端部に凸状片11aおよび谷折り用罫線23が形成されている場合、つまみ片11の下端部の位置で谷折り用罫線23に沿って谷折りに折り曲げて凸状片11aを引き起こすことができる。よって、凸状片11aを容易につまむことができ、凸状片11aをつまんで係合片12およびつまみ片11を容易に操作することができ、優れた操作性が得られる。
【0035】
例えば、初回の使用時には、つまみ片11と正面板1Aとが接着されているので、図8(a)および図8(b)に示すように、つまみ片11を指先で掴んで外方へ向けて引っ張り上げていき、つまみ片11と正面板1Aとの接着を引き剥がすことにより、蓋部3を開封する。これにより、蓋部3は箱本体1のヒンジ板10を回動支点として開閉可能となる。
ここで、図3(b)に示すように、つまみ片11の下端部に凸状片11aおよび谷折り用罫線23が形成されている場合、初回の使用時に凸状片11aを指先で押し上げるようにすると、図7に示すように、凸状片11aが谷折り用罫線23の位置で谷折りに折れ曲がり、凸状片11aが外方へ起きあがる。このため、凸状片11aを簡単につまめるようになり、凸状片11aを掴んだ指先に力が入りやすく、接着状態にあるつまみ片11を簡単に引き剥がして開封することができる。
また、図3(b)に示すように、つまみ片11の下端部に凸状片11aおよび谷折り用罫線23が形成されている場合、初回時以降の開閉操作時においても、初回の使用時に形成される谷折り用罫線23による折り曲げ癖によって、凸状片11aが外方へ向けて浮いているので、凸状片11aを簡単に掴むことができ、開閉操作をスムーズに行なうことができる。
【0036】
また、切断線13の左右の下端部13A,13Aと回動用折り罫線14,14との交差部には、応力分散用の半径0.5〜1.0mm程度の円弧状切り込み24が形成されており、開閉操作時につまみ片11や係合片12に過剰な引っ張り力が作用しても、該円弧状切り込み24によって応力を分散し、切断線13の左右の下端部13A,13Aの位置からつまみ片11や係合片12が破れていくことがないようにしている。
【0037】
また、図5に示すように、蓋部3の背面板3Dにおいて、箱本体1の背面板1Bに形成されたヒンジ板10と相対する面には、エンボス加工によって、箱本体1側に向かって所定の高さで突出するエンボス面3Eが形成されている。蓋部3の背面板3Dは、このエンボス面3Eによって箱本体1の背面板1Bのヒンジ板10に接着されている。このようにヒンジ板10と蓋部3の背面板3Dとを、箱本体1側に向かって突出するエンボス面3Eによって接着すると、カートン製造における接着工程での圧着性が向上し、蓋部3の背面板3Dとヒンジ板10との接着性が改善され、より確実、かつ、より強固に接着することができる。また、エンボス面3Eの突出高さの分だけ蓋部3の全体が箱本体1の背面側に向けて引き寄せられるような状態となり、蓋部3の前面側が箱本体1により強く押し付けられるかたちとなるので、蓋部3と箱本体1のロックがより確実になるとともに、上面開口部2の密封性も向上する。
【0038】
なお、蓋部3のつまみ片11は、箱本体1内に粉末洗剤などの内容物を充填して上面開口部2を封緘紙などでシールした後、箱本体1の正面板1Aの上部に接着剤などを用いてつまみ片11を接着固定し、製品として出荷される。なお、接着剤がホットメルトタイプの場合、つまみ片11が接着される部分の正面板1Aの表面に複数条の浅いミシン目を入れ、接着剤が染み込むことによるミシン目のアンカー効果によって、より確実に接着することが望ましい。
【0039】
このような粉体用カートンは、次のようにして使用される。
まず、使用前においては、図6に示すように、蓋部3は未開封状態であり、箱本体1の上面開口部2に被せられた状態で、つまみ片11の裏面部を箱本体1に開閉不可能に接着されている。そして、初回の使用時には、つまみ片11の先端部分を指先で掴んで外方へ向けて引っ張り上げていき、つまみ片11と箱本体1との接着を引き剥がすことにより、蓋部3を開封する。これにより、蓋部3は箱本体1のヒンジ板10を回動支点として開閉可能となる。
【0040】
つまみ片11の箱本体1との接着を引き剥がした後、つまみ片11を指で掴んでさらに上方に向けて持ち上げていくと、図8(a)に示すように、つまみ片11は回動用折り罫線14,14を回動中心として上方へ向かって回動する。つまみ片11が上方へ回動すると、つまみ片11と一体に形成されている係合片12も回動用折り罫線14,14を回動中心として下方に向かって回動し、係合片12の先端部が箱本体1の係合穴5内に入り込む。なお、この回動操作時に、つまみ片11をやや外側へ引っ張るようにしながら持ち上げると、蓋部3の前板3Bがその弾性によって外側へ膨らむので、係合片12を簡単に係合穴5内に入れることができる。
【0041】
そして、係合片12が係合穴5内に入り込んだ状態で、つまみ片11を元の方向、すなわち下側に向けて押し戻して行くと、つまみ片11は回動用折り罫線14,14を回動中心として下方へ向かって回動し、係合片12は逆に上方へ向かって回動する。
【0042】
係合片12が上方へ向かって回動していくと、図8(b)に示すように、係合片12の先端は、係合穴5の背面の間隙6内に差し込まれるようにして入り込んでいき、いわゆるコハゼ掛けの状態で係合穴5とその背面の間隙6内に挿入され、蓋部3を該位置にロックする。図8(b)に示すように、係合片12は、係合穴5とその背面の間隙6内にコハゼ掛けの状態で挿入されるので、係合片12が係合穴5内から簡単に抜け出るようなことがなくなり、蓋部3を閉蓋位置に確実かつ安定的にロックすることができる。
【0043】
一方、ロックされている蓋部3を開くには、図8(b)の状態においてつまみ片11を指で持ち、つまみ片11を少なくとも水平もしくはそれ以上となる位置まで上方へ向かって持ち上げればよい。これによって、係合片12は、図9(a)および図9(b)に示すように、係合穴5の間隙6内で水平もしくはそれよりも下向きの位置まで回動する。
【0044】
そして、図9に示す状態のまま、さらにつまみ片11を上方へ向けて引っ張り上げていくと、係合片12はそのまま自然に係合穴5と間隙6内から抜け出ていき、蓋部3のロックが解除される。したがって、蓋部3は箱本体1のヒンジ板10を回動支点として開閉可能となる。なお、この開蓋操作の場合にも、つまみ片11をやや外側に引っ張るようにして持ち上げていくと、蓋部3の前板3Bがその弾性によって外側へ膨らむので、係合片12を係合穴5と間隙6内で簡単に図9(a)および図9(b)の状態まで回動させることができる。
【0045】
上記したように、本実施形態に係る粉体用カートンは、係止片25の縁部である係合穴5の上縁部5Aが箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっているので、間隙6のすきま寸法5Bが大きいものとなり、係合片12が係合穴5に挿入しやすいものとなる。よって、使用性に優れたものとなる。
【0046】
また、本実施形態では、粉体用カートンを製造する工程において、抜き刃で打ち抜くことにより係合穴5および切り込み部25aを形成すると同時に、係止片25の縁部である係合穴5の上縁部5Aを箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がらせるので、係止片25の縁部を立ち上がらせるためだけの工程を設けることなく、係合片12が係合穴5に挿入しやすい本実施形態に係る粉体用カートンを容易に製造できる。
【0047】
なお、本発明の粉体用カートンは上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の変形例を挙げることができる。
図10は、本発明の粉体用カートンを構成する係止片の変形例を説明するための図である。
粉体用カートンを構成する係止片は、上述した実施形態に示した下に向かって凸状の円弧状の係止片25に限定されるものではなく、例えば、図10(a)に示すように、係合穴5の上縁部5Cが下に向かって凸状で、凸状の頂部が所定のピッチの複数の連続した波型に形成された係止片26aであってもよい。図10(a)に示す係止片26aとした場合、波型のピッチは例えば2〜3mmとすることができる。
図10(a)に示す係止片26aとすることで、係合片12の入れやすい係合穴5とすることができ、使用性に優れたものとなる。
【0048】
なお、図10(a)に示す係止片26aは、係合穴5の形状に対応する抜き刃を用いて係合穴5を打ち抜くことにより形成することができる。係止片26aは、係合穴5の縁部の一部を構成するものであるので、係合穴5の縁部にはピッチの狭い波型が形成されていることになり、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と係止片26aとの間に大きな摩擦が発生する。したがって、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と係止片26aとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Cが大きく持ち上げられ、上方に向かって立ち上がる。このことにより、間隙6のすきま寸法5Bをより大きく形成することができ、係合穴5の深さをより深くすることができる。
【0049】
抜き刃と係止片26aとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Cが立ち上がる高さは、抜き刃の厚みや、切り込み部25aの長さや、箱本体1を構成する紙の米坪量などによって決定される。例えば、抜き刃の厚みが、1.0mm、係止片26aの長さが5mm、紙の米坪量が600g/mである場合には、0.1〜2.0mmの範囲となる。
図10(a)に示す係止片26aを係合穴5の形状に対応する抜き刃を用いて打ち抜くことにより形成することで、深さの深い係合穴5を形成することができ、より一層係合片12の入れやすい係合穴5とすることができる。
【0050】
また、係止片25は、図10(b)に示すように、係合穴5の上縁部5Dが下に向かって凸状の2つの円弧型に形成された係止片26bであってもよい。
図10(b)に示す係止片26bとした場合にも、係合片12の入れやすい係合穴5とすることができ、使用性に優れたものとなる。
【0051】
また、図10(b)に示す係止片26bも、係合穴5の形状に対応する抜き刃を用いて係合穴5を打ち抜くことにより形成することができる。係止片26bは、係合穴5の縁部の一部を構成するものであるので、係合穴5の縁部を構成する係止片26bの左右の縁部と、係止片26bの中央とに鋭角な凹部51dが存在することになり、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と係止片26bとの間に大きな摩擦が発生する。したがって、打ち抜いた抜き刃を引き抜く際に、抜き刃と係止片26bとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Dが大きく持ち上げられ、上方に向かって立ち上がる。このことにより、間隙6のすきま寸法5Bをより大きく形成することができ、係合穴5の深さをより深くすることができる。
【0052】
抜き刃と係止片26bとの摩擦によって係合穴5の上縁部5Dが立ち上がる高さは、抜き刃の厚みや、切り込み部26bを構成する2つの円弧の中心角や、箱本体1を構成する紙の米坪量などによって決定される。例えば、抜き刃の厚みが、1.0mm、係止片26bの2つの円弧の中心角が20°、紙の米坪量が600g/mである場合には、1.0〜2.0mmの範囲となる。
図10(b)に示す係止片26bを係合穴5の形状に対応する抜き刃を用いて打ち抜くことにより形成する場合にも、深さの深い係合穴5を形成することができ、より一層係合片12の入れやすい係合穴5とすることができる。
【0053】
また、係止片25には、図10(c)に示すように、係合穴5の上縁部5Aの中央部に下に向かって凸状に形成された凸状部250と、凸状部250の左右の上縁をつなぐ位置に配置された折り罫線250aとが設けられていてもよい。
図10(c)に示す凸状部250を備えた係止片25では、係合片12を係合穴5内に入れる前に、折り罫線250aに沿って凸状部250を外方向に折り返しておくことができる。このようにすることで、係止片25が外側に向かって持ち上げられて、係合穴5の上縁部5Aが大きく持ち上げられ、上方に向かって立ち上がり、間隙6のすきま寸法5Bをより大きく形成することができるし、係合片12を係合穴5内に入れる際に、係合片12が凸状部250に引っ掛かって係合片12が係合穴5内に誘導されるようになる。したがって、図10(c)に示す凸状部250を備えた係止片25とした場合にも、係合片12の入れやすい係合穴5とすることができる。
【0054】
また、上記第1実施形態では、図1に示すように蓋部3には上に向かって凸状の係合片12が形成されていたが、係合片は、蓋部3の前板3Bまたは側板3Cの下縁部に下向きに突設されていてもよい。この場合、係合穴5の下縁部となる係止片が、係合穴5の内側(上)に向かって凸状に形成されていることが望ましい。
図11は、本発明の粉体用カートンの他の例を説明するための斜視図であり、図11(a)は分解斜視図であり、図11(b)は蓋部3を閉じた状態を示した斜視図である。図11に示す粉体用カートンでは、係合片112が、図11(a)に示すように、蓋部3の前板3Bの下縁部に下向きに突設されている。また、図11に示す粉体用カートンでは、係止片125は、図11(a)に示すように、係合穴5の下縁部を構成しており、係合穴5の内側(上)に向かって凸状のものとされており、係止片125の縁部である係合穴5の下縁部が箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっている。
【0055】
図11に示す粉体用カートンでは、蓋部3の開閉は、図11(a)および図11(b)に示すように、背面側のヒンジ板3Dを回動支点として回動させるとともに、係合片112の先端部を箱本体1の係合穴5内に出し入れすることによって行なう。
図11に示す粉体用カートンでは、係止片125の縁部である係合穴5の下縁部が箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっているので、間隙6のすきま寸法5Bが大きいものとなり、係合片12が係合穴5に挿入しやすいものとなる。よって、使用性に優れたものとなる。
また、図11に示す粉体用カートンでは、係止片125が、上に向かって凸状の円弧状に形成されているので、係合穴125に挿脱される係合片112が係止片125の円弧状の形状に沿って案内されることになり、係合穴5への係合片112の挿脱が非常にスムーズに行われる。
【0056】
なお、蓋部3の前板3Bの下縁部に下向きに突設される係合片の形状は、図11に示す例に限定されるものではなく、例えば、図12に示す形状であってもよい。
図12は、本発明の粉体用カートンの他の例を説明するための斜視図であり、図12(a)は分解斜視図であり、図12(b)は蓋部3を閉じた状態を示した斜視図である。図12に示す粉体用カートンでは、左右2つの係合片212、212が、図11に示す粉体用カートンと同様に、蓋部3の前板3Bの下縁部に下向きに突設されている。しかし、図12(a)に示す粉体用カートンでは、図11に示す粉体用カートンと異なり、係合片212は2つ設けられており、左右2つの係合片212、212の間に位置する前板3Bの下縁部には、補強部材212aが設けられている。補強部材212aは、2つの係合片212、212をつなぐように設けられており、補強部材212aの縁部は、係合片212、212の先端部よりも前板3Bの下縁部に近い位置とされている。
【0057】
また、図12(a)に示す粉体用カートンには、2つの係合片212、212と相対する位置に2つの係合穴5が設けられている。そして、図12(a)に示すように、係合穴5の上縁部5Aを構成する係止片225が、図1に示す粉体用カートンと同様に、係合穴5の内側(下)に向かって凸状に形成されている。また、係止片225の縁部である係合穴5の上縁部は、箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっている。
【0058】
また、図12(a)に示す粉体用カートンでは、蓋部3の前板3Bの下縁部(係合片212の上端部)には水平な係合用折り罫線212bが刻設され、係合用折り罫線212bを回動中心とし、係合片212、212と補強部材212aとが一体化された状態で、蓋部3の前板3Bの内外方向に回動自在とされている。そして、図12(a)に示す粉体用カートンでは、係合片212、212と補強部材212aとを前板3Bの内方向に回動することによって、図12(b)に示すように、係合片212、212がそれぞれ係合穴5から間隙6内に挿入されて、開閉自在な蓋部3を定位置にロックするようにされている。
【0059】
図12に示す粉体用カートンにおいても、係止片225の縁部である係合穴5の上縁部が箱本体1の外面から外部側に向かって立ち上がっているので、間隙6のすきま寸法5Bが大きいものとなり、係合片212が係合穴5に挿入しやすいものとなる。よって、使用性に優れたものとなる。
【0060】
「実施例」
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
表1に示すように、図4(b)に示す係止片25の切り込み部25aにおける係合穴5と反対側の端部25eから延在させた方向と水平方向とのなす角度(切り込み角度)と、切り込み部25aの長さを変化させた係合穴5を備え、係合穴5の上縁部(係止片25の下端部)と箱本体1の上面開口部2との間の鉛直方向の距離が12mmである粉体用カートンを製造し、以下に示すようにして、係合片12の係合穴5への差込み易さと係合穴5の上縁部5Aのへたりのなさとを調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(差込み易さ)
10人の被験者により係合片の係合穴への差込み易さの評価を行なった。評価基準を以下に示す。
8人以上が差込み易い:◎
5〜8人が差込み易い:○
3〜5人が差込み易い:△
1〜3人が差込易い:×
【0064】
(上縁部のへたりのなさ)
10人の被験者により10回開閉操作を行なった粉体用カートンの蓋を持ち上げたときの上縁部のへたりのなさ(ロックの確実性)の評価を行なった。評価基準を以下に示す。
8人以上が上縁部はへたりなし:◎
5〜8人が上縁部はへたりなし:○
3〜5人が上縁部はへたりなし:△
1〜3人が上縁部はへたりなし:×
【0065】
表1より、切り込み部を形成することにより、切り込み角度を30〜90°の範囲では、全て係合片12の係合穴5への差込み易さが改善されることが確認できた。また、切り込み角度0°の場合や切り込み角度10°の場合においても、切り込み部の長さを3mm以上とすることで、差込み易さが改善されることが確認できた。
また、切り込み角度を60°以下とすることで、切り込み部の形成に伴う係合穴5の上縁部5Aのへたりを防止でき、切り込み角度を45°以下の範囲、より好ましくは切り込み角度を30°以下の範囲とすることで、係合穴5の上縁部5Aのへたりをより効果的に防止できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態に係る粉体用カートンの分解斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る粉体用カートンの箱本体の展開図である。
【図3】第1実施形態に係る粉体用カートンの蓋部の展開図である。
【図4】第1実施形態に係る粉体用カートンの一部を拡大して示した部分拡大図で ある。
【図5】第1実施形態に係る粉体用カートンのヒンジ板と箱本体との連結状態を示す略示部分拡大図である。
【図6】第1の実施の形態に係る粉体用カートンの使用方法の説明図である。
【図7】粉体用カートンの使用方法の説明図であって、接着部の剥離操作開始時のつまみ片と係合片部分の拡大断面図である。
【図8】第1実施形態に係る粉体用カートンの使用方法の説明図であって、(a)はつまみ片の箱本体との接着を引き剥がした後のつまみ片と係合片の回動している状態を説明するための拡大斜視図であり、(b)はロック状態におけるつまみ片と係合片の断面図である。
【図9】第1実施形態に係る粉体用カートンの使用方法の説明図であって、(a)はロック解除操作時のつまみ片と係合片の拡大斜視図であり、(b)はロック解除完了状態におけるつまみ片と係合穴部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の粉体用カートンを構成する係止片の変形例を説明するための図である。
【図11】本発明の粉体用カートンの他の例を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の粉体用カートンの他の例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 箱本体、1A 正面板、1B 背面板、1C 側面板、2 上面開口部、3 蓋部、3A 天面板、3B 前板、3C 側板、3D 背面板、3E エンボス面、3F 後板、4A 正面フラップ、4B 背面フラップ、5、5C、5D 係合穴、5A 上縁部、6 間隙、7 折り罫線、8 表半切り線、10 ヒンジ板、11 つまみ片、11a 凸状片、12、112、212 係合片、13 切断線、14 回動用折り罫線、15 ヒンジ片、16 切断線、17 ヒンジ用折り罫線、18 突片、19 切断線、21 接着剤、22 切れ目、23 谷折り用罫線、24 円弧状切り欠き、25、26a、26b、125、225 係止片、25a 切り込み部、25e 端部、25f、27 エンボス面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口された箱本体と、該上面開口部を覆う開閉自在な蓋部とを有する粉体用カートンにおいて、
前記蓋部の前板または側板には係合片が設けられ、
前記箱本体の正面板または側面板には、前記蓋部の係合片と相対する位置に、前記係合片を挿入可能な大きさの係合穴が形成され、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の縁部の少なくとも一部は前記箱本体の外面から外部側に向かって立ち上がっており、該係合穴の背面側には、正面板または側面板の内壁面に貼着されたフラップによって所定のすきま寸法からなる間隙が形成され、
前記係合片を前記係合穴からその背面の間隙内に挿入するようにされていることを特徴とする粉体用カートン。
【請求項2】
上面を開口された箱本体と、該上面開口部を覆う開閉自在な蓋部とを有する粉体用カートンにおいて、
前記蓋部の前板または側板には係合片が設けられ、
前記箱本体の正面板または側面板には、前記蓋部の係合片と相対する位置に、前記係合片を挿入可能な大きさの係合穴が形成され、前記係合片が挿入された場合に前記係合片の外面と対向する位置に、前記係合穴の縁部の一部であり前記係合穴の内側に向かって凸状の係止片が形成され、前記係止片の左右の縁部に前記係合穴から外方へ向かって切り込まれてなる切り込み部が形成され、該係合穴の背面側には、正面板または側面板の内壁面に貼着されたフラップによって所定のすきま寸法からなる間隙が形成され、
前記係合片を前記係合穴からその背面の間隙内に挿入するようにされていることを特徴とする粉体用カートン。
【請求項3】
請求項2に記載の粉体用カートンにおいて、
前記切り込み部を前記係合穴と反対側の端部から延在させた方向と水平方向とのなす角度が0〜60°の範囲であることを特徴とする粉体用カートン。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粉体用カートンにおいて、
前記蓋部の前板または側板の下縁部につまみ片が下向きに突設され、
該つまみ片の左右の上端部を結ぶ水平ライン上の中央位置には、水平ラインよりも上に向かって凸状の前記係合片が切り込まれているとともに、該係合片の左右の下端部と前記つまみ片の左右の上端部との間には水平な回動用折り罫線が刻設され、該回動用折り罫線を回動中心として、前記つまみ片と係合片の全体が前記蓋部の前板または側板の内外方向に回動自在とされており、
前記つまみ片を回動することによって、つまみ片と一体になって回動する前記係合片を係合穴から前記間隙内にコハゼ掛けに挿入し、開閉自在な蓋部を定位置にロックするようにしたことを特徴とする粉体用カートン。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粉体用カートンにおいて、
前記係合片が、前記蓋部の前板または側板の下縁部に下向きに突設されていることを特徴とする粉体用カートン。
【請求項6】
請求項5に記載の粉体用カートンにおいて、
前記蓋部の前板または側板の下縁部と前記係合片の下端部との間には水平な係合用折り罫線が刻設され、該係合用折り罫線を回動中心として、前記係合片のうち前記係合用折り罫線よりも下端側の部分が前記蓋部の前板または側板の内外方向に回動自在とされており、
前記係合片を前板または側板の内方向に回動することによって、前記係合片の少なくとも一部を前記係合穴から前記間隙内に挿入し、開閉自在な蓋部を定位置にロックするようにしたことを特徴とする粉体用カートン。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の粉体用カートンの製造方法であって、
抜き刃で打ち抜くことにより前記係合穴を形成すると同時に、前記係止片の縁部の少なくとも一部を前記箱本体の外面から外部側に向かって立ち上がらせることを特徴とする粉体用カートンの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−326613(P2007−326613A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159673(P2006−159673)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】