説明

粉体用バルブ

【課題】装置を複雑化、大型化することなく、バルブ内に粉体が溜まるのを防止し、且つ、高圧の圧送に耐え得る粉体用バルブとする。
【解決手段】弁箱21内に弁軸25で支持された弁体22を設け、前記弁体22は外面に球面27を備えてその球面27が前記弁箱21の弁座23に接して閉弁する。前記弁体22には、前記弁軸25に直交する流通孔26が設けられて閉弁状態から弁体22がいずれの方向に回転しても前記流通孔26を介して開弁可能とする。その流通孔26を弁体22の背面22b側で全長に亘って開放した。この構成によれば、ボール弁の利点であるフルボア、高剛性を確保でき、また、弁箱21の内面に向かって流通孔26を流れる粉体の圧力が及ぶ。このため、その弁箱21の内面付近に溜まりがちな粉体を粉体の噴流で吹き飛ばして除去できる。また、弁体22の向きを変えれば、弁軸25を挟んで両側で粉体を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体移送用の流路の開閉を行うために用いられる粉体用バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工場などで粉体の移送を行う場合、その流路の途中に、流路を開閉するバルブ(開閉弁)が設けられる。このバルブは、粉体の移送量を制御するために設けられ、特に高圧の場合、フルボア、弁体の高剛性を期待できるボール弁形式のバルブが多用されている。
【0003】
ボール弁形式のバルブを用いる場合、例えば、図7に示す粉体用バルブ10のように、弁箱1の流入口11から導入される粉体は、そのほとんどが弁体2の流通孔6を通って流出口12へと流れる(図中の矢印A,B参照)が、一部の粉体が弁箱1と弁体2との隙間4に溜まりやすいという問題がある。これは、弁体2が寸開状態(弁体2が、完全に開弁した状態と完全に閉弁した状態との間の位置にあって、弁孔がわずかに開いている状態)の時におこりやすいといえる。その溜まった粉体を放置すると、バルブの開閉に支障をきたすことがある。
また、特に、粉体が凝固しやすい性質である場合は、その隙間に入り込んだ粉体が凝固して、その凝固した粉体の塊が徐々に大きくなり、バルブの開閉ができなくなることもあるので好ましくない。
【0004】
そこで、弁箱1の弁座3の下流側に、前記隙間4に通じる気体注入孔7を設け、その気体注入孔7から弁箱1内に向かって供給する空気によって、前記隙間4の粉体を除去する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、粉体用のバルブではないが、図8に示すように、水道用のセグメントボール弁の技術が開示されている。
このセグメントボール弁によれば、通常のボール弁と同様に、閉弁状態にある弁体2を図中の左右どちら方向に回動させても開弁させることができるとともに、その弁体2を軽量にすることができるという利点がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−289335号公報
【特許文献2】特開2005−249177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記図7に示すバルブによれば、弁箱1に気体注入孔7を設け、その気体注入孔7内に定期的に気体を吹き込む装置が必要となる。このため、バルブが複雑化するとともに、かえってメンテナンスが煩雑になるという欠点がある。
【0008】
また、図8に示すバルブによれば、弁体が、その前面が弁座に接離する板状の部材と、その板状の部材の背面に突出して設けられた弁軸への支持部材とから構成され、その弁体がボール弁の弁体のように球状を成していない。
このため、一般的なボール弁と比較して弁体の剛性が劣る傾向がある。弁体の剛性が劣ると、特に、粉体の圧送が高圧で行われる際には、その圧に耐えられない場合もある。仮に、弁体を高圧の圧送に耐え得るものとすれば、装置が大型化し、または高価になってしまうという問題もある。
【0009】
そこで、この発明は、装置を複雑化、大型化することなく、バルブ内に粉体が溜まるのを防止し、且つ、高圧の圧送に耐え得る粉体用バルブとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、弁箱内に弁軸で回転自在に支持された弁体を設け、前記弁体はその外面に球面を備えてその弁体の球面が前記弁箱の流入口に設けた環状の弁座の全周に接することにより閉弁するようになっており、前記弁体には、前記弁軸の軸心方向に直交する方向に伸びる流通孔が設けられて、前記閉弁状態から弁体が前記弁軸周りにいずれの方向に回転しても前記流通孔を介して開弁可能であり、前記流通孔は、前記弁軸の軸心を挟んで前記閉弁状態で弁座に向く側の反対側がその長さ方向に沿って全長に亘って開放されている粉体用バルブの構成を採用した。
【0011】
弁体に設けた球面が弁座全周に接してバルブを閉弁し、その弁体の弁軸周りの回転により、弁体に設けた流通孔を介してバルブを開弁し得る構成を採用すれば、ボール弁の利点であるフルボア、高剛性を確保することができる。
その弁体に設けた流通孔が、閉弁状態で弁座に向く側の反対側において長さ方向全長に亘って開放されているので、開弁状態において、その開放された側に位置する弁箱の内面に向かって流通孔を流れる粉体の圧力が及ぶ。このため、その弁箱の内面付近に溜まりがちな粉体を、その流通孔を流れる粉体の噴流で吹き飛ばして除去することができる。
また、その弁体は、閉弁状態から弁軸周りにいずれの方向に回転しても前記流通孔を介して開弁可能であるので、弁体の向きを変えれば、弁軸を挟んで両側において、弁箱の内面付近に溜まった粉体を除去することができる。
【0012】
以上のようなことから、装置を複雑化、大型化することなく、バルブ内に粉体が溜まるのを防止し、且つ、高圧の圧送に耐え得る粉体用バルブとすることができる。
【0013】
この構成において、前記弁体として半球状のものを採用し得る。弁体が半球状であれば、開弁状態において、前記流通孔の開放された側(球面の反対側)における弁体と弁箱との間隔は非常に広くなる。間隔が広ければ、粉体の噴流作用が、その開放された側における弁箱の内面全体に及び易くなる。このため、溜まった粉体の除去により効果的である。
なお、弁体が半球状であれば、弁体の高剛性を確保しつつ、且つ、完全な球体からなる通常のボール弁の弁体よりも軽量化することができるという利点もある。
【0014】
また、前記の各構成において、前記弁箱内面は球面であり、前記開弁状態において、前記弁体の球面と前記弁箱の内面の球面との間に、前記弁座から遠ざかるにつれて徐々に拡がる隙間が設けられている構成を採用し得る。
この構成によれば、弁体が閉弁状態から開弁方向に回転する際における、その弁体による粉体の掻き取り効果が良好に発揮できるようになる。
【0015】
この掻き取り効果とは、すなわち、開弁時に、向い合う弁体の外面と弁箱の内面とが相対移動することにより、その弁体の外面と弁箱の内面との間の隙間に介在する粉体が、弁体の外面に押されながら、あるいは引張られながら徐々に弁座から遠ざかる側へ(下流側へ)排出されていく効果である。
この掻き取りの際に、前記隙間に介在する粉体が徐々に集合してその大きさを増していき、弁体が開弁状態に至るまでの間に、その粉体の集合した塊が弁体と弁箱との間に噛み込んでしまう事態を生じることもある。
このため、前記のように、その弁体と弁箱との間の隙間を、弁座から遠ざかるにつれて徐々に拡がるように設定すれば、粉体が円滑に下流側へ排出されてその噛み込みを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、装置を複雑化、大型化することなく、バルブ内に粉体が溜まるのを防止し、且つ、高圧の圧送に耐え得る粉体用バルブとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。この実施形態は、粉体の輸送ライン、例えば、天然ガスハイドレートの粉体を圧送する輸送管の途中に設けられる粉体用バルブ20である。
【0018】
図1に示すように、流入口11と流出口12とが設けられた弁箱21内に、弁軸25によって、その弁軸25周りに回転自在に支持された弁体22が設けられている。
【0019】
弁体22は、いずれの方向の断面も全て真円である球体に対し、図4に示すように、その球体を貫通する断面円形の直線状の流通孔26が設けられて、さらに、その流通孔26を挟んで球体の約半分が除去されたような「半球状」の形態を成している。すなわち、前記流通孔26は、その半球状の弁体22の背面(前記除去された側の面)22bにおいて、その全長に亘って開放されている。
【0020】
弁箱21の流入口11には、流出口12側に向く環状の弁座23が設けられており、前記弁体22の前面22a、すなわち球面27が弁座23側へ向けば、その球面27が前記弁座23の全周に水密に接することができるようになっている。この球面27が弁座23の全周に水密に接すれば、粉体用バルブ20は閉弁状態である(図1(a)及び図4(a)参照)。
【0021】
また、弁軸25の軸心pは、この流通孔26の中心線qと直交する位置関係にあり、その交点が弁体22の球面27の中心である。弁体22が、図1(b)に実線又は斜線に示す位置にあれば、粉体用バルブは、その流通孔26を介して流入口11から流出口12まで連通する開弁状態である(図4(b)(c)参照)。
すなわち、この粉体用バルブ20は、前記閉弁状態から、弁体22を弁軸25周りいずれの方向に90度回転させても開弁状態となり得る。
【0022】
前記球面27は、図4(a)に示すように、閉弁状態における弁座23への当接部分に近い箇所で、前記流通孔26の内周面との間に、先鋭なエッジ状の稜線部28を成している。また、前記球面27は、図4(c)に示すように、弁軸25の取付部に近い箇所で、前記流通孔26の内周面との間に、面取り部29を介在している。
【0023】
さらに、前記弁箱21の内面は、前記弁座23から流出口12に至る範囲で、前記弁体22の球面27に沿うように形成された球面13となっている。
また、開弁状態において、その弁箱21の内面の球面13と、前記弁体22の球面27との間に隙間24が設けられている。隙間24の幅は、前記弁座23から流出口12側へ遠ざかるにつれて徐々に拡がるように設定されている。
【0024】
この粉体用バルブの作用を説明すると、図1(a)に示す閉弁状態において、弁軸25と連動する操作部8(図2及び図3参照)を回せば、弁体22は弁軸25周りに回転し、例えば、図1(b)に実線で示すように開弁状態に移行する。
この開弁状態において、弁箱21の流入口11から導入される粉体は、そのほとんどが弁体22の流通孔26を通って流出口12へと流れる(図中の矢印A,B参照)。
【0025】
弁箱21の内面は凹状の球面13であるので、この開弁状態において、特に、前記弁体22の背面22b側に位置する球面13には、例えば、図5(a)に示すように徐々に粉体が付着しようとする。
しかし、前記流通孔26は、その付着面に向かって長さ方向に沿って全長に亘って開放されているので、その付着した粉体の多くは、粉体の噴流によって下流側へ導かれ、付着量を増大させない。
【0026】
つぎに、操作部8(図2及び図3参照)を先程と逆方向に回すと、弁体22は弁軸25周りに回転し、図1(a)に示す閉弁状態を経て、図1(b)に鎖線で示す開弁状態に移行する。
【0027】
弁体22が、図5(a)に示す矢印C,Dのように回転するのに伴い、図5(b)に示すように、弁箱21の内面に付着した粉体が、弁体22の前記エッジ状の稜線部28に押されながら、徐々に弁座23から遠ざかる側へ(下流側へ)排出されていく。稜線部28がエッジ状であるので、その掻き取り効果が高いといえる。また、弁体22が半球状であることにより、弁体22が弁軸25周りに回転する際に、稜線部28が球面13を掻く範囲が広くなり、その掻き取り効果を高めている。
【0028】
このとき、その弁体22の球面27と弁箱21の内面の球面13との間には、弁座23から遠ざかるにつれて徐々に拡がるように設定された隙間24があるので、図5(c)に示すように、弁体22の回転とともに掻き出された粉体が徐々に集合してその大きさを増しても、その粉体が弁体22の回転を阻害せず、粉体は円滑に下流側へ排出される。
【0029】
また、弁体22を、図1(b)に示す実線状態と、図1(b)に示す鎖線状態とを交互に繰り返すことにより、弁軸25を挟んで両側において、弁箱21の内面付近に溜まった粉体を除去することができる。
なお、弁箱21の内面への粉体付着を最小限に抑えるため、図1に示すように、弁箱21内において、弁体22を収容する部分に対応する前記球面13と、その球面13よりも下流側に位置する流出口12付近の内面との境を、符号Rに示すように、その内面全周に亘って弧状に形成して滑らかに取り付けている。
【0030】
この実施形態では、弁体22を半球状としたが、他の形態からなる弁体22を採用することもできる。例えば、図6(a)に示すように、上記実施形態の弁体22よりも球体に近い形態の弁体22、あるいは、図6(b)に示すように、ほぼ球体からなる弁体22を採用してもよい。各実施形態で面取り部29は省略したが、必要に応じて面取り部29を設けても良い。
これらの弁体22においても、流通孔26が、弁体22の背面22b側で、その長さ方向に沿って全長に亘って開放されているので、上記実施形態と同様の粉体の除去効果を発揮し得る。さらに、例えば、断面が真円ではなく楕円である球体をベースに、前記弁体22を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態を示し、(a)は閉弁状態、(b)は開弁状態を示す切断側面図
【図2】同実施形態を示す平面図
【図3】同実施形態を示す正面図
【図4】弁体と弁座との位置関係を示す斜視図で、(a)は閉弁状態、(b)(c)は開弁状態を示す。
【図5】開閉弁時の作用を示す説明図
【図6】(a)(b)は、他の実施形態の弁体を示す斜視図
【図7】従来例のボール弁式粉体用バルブの正面図
【図8】従来例のセグメントボール弁の正面図
【符号の説明】
【0032】
1,21 弁箱
2,22 弁体
3,23 弁座
4,24 隙間
5,25 弁軸
6,26 流通孔
7 気体注入孔
8 操作部
10,20 粉体用バルブ
11 流入口
12 流出口
13,27 球面
28 稜線部
29 面取り部
22a 前面
22b 背面
p 弁軸の軸心
q 流通孔の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱21内に弁軸25で回転自在に支持された弁体22を設け、前記弁体22は外面に球面27を備えてその弁体22の球面27が前記弁箱21の流入口11に設けた環状の弁座23の全周に接することにより閉弁するようになっており、前記弁体22には、前記弁軸25の軸心p方向に直交する方向に伸びる流通孔26が設けられて、前記閉弁状態から弁体22が前記弁軸25周りにいずれの方向に回転しても前記流通孔26を介して開弁可能であり、前記流通孔26は、前記弁軸25の軸心pを挟んで前記閉弁状態で弁座23に向く側の反対側がその長さ方向に沿って全長に亘って開放されている粉体用バルブ。
【請求項2】
前記弁体22は、半球状であることを特徴とする請求項1に記載の粉体用バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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