説明

粉塵及び有機揮発成分除去装置

【課題】熱定着で発生する有機揮発成分及び粉塵が、画像形成装置外に排出される量を低減させる画像形成装置を提供する。
【解決手段】熱定着により未定着画像を定着する定着装置1a,1bを有する画像形成装置において、定着装置付近に吸気ダクト3を備え、吸気ダクト3から吸引した雰囲気はフィルター5を通過した後、排気することを特徴とする画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電写真法等に用いられる画像形成装置に関し、さらには有機揮発成分(VOC)及び粉塵除去装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、複写機などの画像形成装置で印刷する際、静電荷現像用トナーや画像形成部そして定着部材から粉塵などが発生する。特に、熱定着によって、異臭など人体に悪影響を与える有機揮発成分(以下、VOCと示すことがある)や揮発物などを含む粉塵が多く発生する。
【0003】
VOC、粉塵の発生源として、トナーの飛散、熱定着時のトナーからの揮発成分、定着装置の部材などが考えられており、人体への影響を与えないため、画像形成装置から粉塵やVOCの排出量の制限が必要である。
【0004】
加熱ローラから発生する揮発成分を除去する方法として、触媒フィルターを定着装置付近に設けることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、加熱ローラとフィルター間に距離があるため、装置内で揮発成分が拡散してしまい、十分に揮発成分を処理することはできなかった。
【0005】
揮発成分の拡散を防ぐため、定着部分にエアーを吹き付けることで、発生したVOCをエアーによってフィルターへと誘導し、装置外へ排出することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、装置内の気流を制御することは容易ではなく、VOCを十分にフィルターへと誘導することは困難であった。さらに、装置内に堆積した飛散トナーがエアーによって拡散し、装置内を汚染する可能性もあった。
【0006】
トナーが飛散することによる粉塵を除去する方法として、粉塵の受け部材に吸引口を設け、装置外部に排出することが提案されている(特許文献3参照)。しかし、受け部材だけでは飛散したトナー全てを集めることはできず、もちろん揮発成分については処理することはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−161122号公報
【特許文献2】特開2006−349826号公報
【特許文献3】特開2003−131532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、トナーに由来する有機揮発成分(VOC)及び粉塵を除去できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、定着装置の定着ローラ付近に、吸気ダクトを設置することにより、熱定着時に発生した粉塵及びVOCを効率良く吸引回収し、吸気ダクトに接続するフィルターより粉塵及びVOCを除去することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に達した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)熱定着により未定着画像を定着する定着装置を有する画像形成装置において、定着
装置付近に吸気ダクトを備え、吸気ダクトから吸引した雰囲気はフィルターを通過した後、排気することを特徴とする画像形成装置。
(2)吸気ダクトは、定着媒体と、定着装置の定着ローラとの間に位置することを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
(3)フィルターは、少なくとも防塵フィルター又は有機揮発成分を吸着するフィルターから構成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4)排気する雰囲気は画像形成装置内で循環させて排気することを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載の画像形成装置。
(5)吸気ダクトは、少なくとも1つの吸気孔がある柱状体であることを特徴とする前記(1)乃至(4)に記載の画像形成装置。
(6)カラー複写動作中の粉塵の放散速度が4mg/h以下の画像形成装置に用いられる
トナーであって、トナーから排出される粉塵の放散速度が1mg/h以上であることを特
徴とする静電荷像現像用トナー。
(7)カラー複写動作中の有機揮発成分の放散速度が18mg/h以下の画像形成装置に
用いられるトナーであって、トナー中の有機揮発成分が300ppm以上であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱定着で発生するVOC及び粉塵を画像形成装置外に排出しない画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1を用いて説明する。図1は現像部分、定着媒体、定着ローラ及び熱ローラを含む定着装置、吸気ダクト、吸気配管及び吸排気ポンプを含む排気装置を有する画像形成装置である。
図1のAは現像部分であり、1aは定着装置の熱ローラ、1bは定着装置の定着ローラである。現像部分において、トナーを付着された定着媒体9は1aの定着装置の熱ローラと1bの定着装置の定着ローラにおいて、定着媒体上に定着される。トナーは熱ローラ側の定着媒体に付着している。この定着において発生したVOC及び粉塵を含む雰囲気を、3の吸気ダクトで吸引する。VOC及び粉塵を含む雰囲気の吸引は6の吸排気ポンプによって行われる。吸気ダクトは、定着媒体が定着ローラを通過した後で、定着媒体においてトナーが定着される側に位置する。
【0014】
吸気ダクトの位置は、VOC及び粉塵発生源である定着媒体と定着装置である定着ローラ及び熱ローラにより近い方が好ましいが、定着ローラなどの部材と干渉しない位置に設置することが好ましい。より好ましくは、定着ローラを通過した定着媒体と、定着装置の定着ローラとの間に設置する。
吸気ダクトの形状は特に限定されないが、例えば吸気ダクトが筒状の場合は、図3に示すように吸気ダクトの長さは熱ローラの長さと同じか、それ以上の長さとし、熱ローラの中心から定着媒体の間に、熱ローラに並行に位置させることが、VOCや粉塵を含む雰囲気を効果的に吸引することかでき好ましい。
また、吸気ダクトは図4に示すような熱ローラを覆うような箱状であっても良く、この場合も吸気ダクトの長さは、熱ローラの長さと同じかそれ以上の長さとし、熱ローラに並
行に位置させることがVOCや粉塵を含む雰囲気を効果的に吸引することかでき好ましい。
【0015】
吸気ダクトによって吸引されたVOC及び粉塵を含む雰囲気は4の吸気配管を通り、5のフィルターで吸着される。フィルターによってVOC及び粉塵が除去された雰囲気は、画像形成装置外に排気するか、装置内で循環させることができるが、使用環境の面から装置内で循環させることが好ましい。
【0016】
フィルターは、少なくとも防塵フィルター又は有機揮発成分を吸着するフィルターから構成される。フィルターは、VOC及び粉塵を吸着できるものであれば特に限定されず、活性炭、化学吸引剤、触媒吸引剤などのVOCや粉塵を吸着する吸着剤を含むものが好ましい。また、VOCを吸着させるフィルターと、粉塵を吸着させる防塵フィルターなど複数のフィルターを組み合わせて用いてもよく、それぞれ交換可能であることが好ましい。
【0017】
吸気ダクトの吸引圧は大きい方が、VOC及び粉塵を十分に吸引することができるが、定着媒体を吸引しない程度の吸引圧であることが好ましい。吸引圧が大きすぎると、定着媒体の位置が不安定になり、定着不良を発生する。また、吸排気ポンプが大型化してしまい、消費電力の増大及び装置大型化となり好ましくない。
【0018】
吸気ダクトの形状は特に限定されず、いくつかの平面や曲面で囲まれた立体を用いる。具体的には筒状や三角柱などの柱状体等が挙げられる。筒状の場合は図5a、bに示すよ
うな吸引孔が複数あるもの、図5cに示すような吸引孔が筒長さ方向に切り欠いてあるものなどを用いてもよい。図5aのように、吸引孔の間隔を狭めたり、広くしたりすること
で、吸引圧力が吸気ダクト全体で均一になるように調整することが好ましい。また、図5bのように、吸引孔の大きさを調整することで、吸引圧力が各吸引孔で均一となるよう、吸排気ポンプとの近さによって調整することが好ましい。図5bの吸引孔は吸排気ポンプに近い方の吸引孔を小さくし、吸引圧力を調整している。
【0019】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図2を用いて説明する。図1と同様、現像部分、定着媒体、定着ローラ及び熱ローラを含む定着装置、吸気ダクト、吸気配管及び吸排気ポンプを含む排気装置を有する画像形成装置である。
【0020】
吸気ダクトによって吸引されたVOC及び粉塵を含む雰囲気は、4の吸気配管を通り、5のフィルターでVOC及び粉塵が吸着される。フィルターによってVOC及び粉塵が除去された雰囲気は、7の送気配管を通過し、8の送気ダクトより排出される。8より排出されるエアーが壁となり、熱定着により発生するVOC及び粉塵を拡散させることなく3の吸気ダクトより吸引することができる。
また、装置内で排気が循環することによって、装置外に排気が排出されず、画像形成装置の使用環境が向上する。
【0021】
本願発明の装置を用いることによって、装置内に粉塵及びVOCが拡散する前に吸引されるため、トナーから発生する粉塵及びVOC量が多いトナーを用いても、画像形成装置外に排出される粉塵及びVOC量を削減することができる。
【0022】
画像形成装置から排出される粉塵及びVOC量は、エコマークであるブルーエンジェルで規定された試験方法(RAL-UZ-122:2005)で測定することができる。
また、トナーの揮発成分はガスクロマトグラフ等で測定することができる。
本願発明の装置を用いることにより、カラー複写動作中に、トナーから排出される粉塵の放散速度が1mg/h以上であっても、画像形成装置からの粉塵の放散速度を4mg/h
以下とすることができる。また、カラー複写動作中にトナーの有機揮発成分が300ppm以上であっても、画像形成装置からの有機揮発成分の放散速度を18mg/h以下とす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で用いられる画像形成装置の実施形態1を示す図である。
【図2】本発明で用いられる画像形成装置の実施形態2を示す図である。
【図3】筒状吸気ダクトと、定着装置である熱ローラ及び定着ローラとの位置を示す図である。
【図4】箱状吸気ダクトと、定着装置である熱ローラ及び定着ローラとの位置を示す図である。
【図5】筒状吸気ダクトの吸引孔を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
A:現像部分
1a:熱ローラ
1b:定着ローラ
2a,2b:サポートローラ
3:吸気ダクト
4:吸気配管
5:フィルター
6:吸排気ポンプ
7:送気配管
8:送気ダクト
9:定着媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱定着により未定着画像を定着する定着装置を有する画像形成装置において、定着装置付近に吸気ダクトを備え、吸気ダクトから吸引した雰囲気はフィルターを通過した後、排気することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
吸気ダクトは、定着媒体と、定着装置の定着ローラとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
フィルターは、少なくとも防塵フィルター又は有機揮発成分を吸着するフィルターから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
排気する雰囲気は、画像形成装置内で循環させて排気することを特徴とする請求項1乃至3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
吸気ダクトは、少なくとも1つの吸気孔がある柱状体であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
カラー複写動作中の粉塵の放散速度が4mg/h以下の画像形成装置に用いられるトナ
ーであって、トナーから排出される粉塵の放散速度が1mg/h以上であることを特徴と
する静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
カラー複写動作中の有機揮発成分の放散速度が18mg/h以下の画像形成装置に用い
られるトナーであって、トナー中の有機揮発成分が300ppm以上であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107895(P2010−107895A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282024(P2008−282024)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】