説明

粉塵除去フィルタ

【課題】コピー機、プリンター、多機能OA機、POD印刷機等の電子機器の内部に設置され、前記機器の排気中に含まれるトナー等の粉塵捕集を目的とした粉塵除去フィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有するフィルタを提供すること。
【解決手段】少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されたサーマルボンド不織布からなる粉塵除去フィルタにおいて、前記サーマルボンド不織布におけるポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成重量比率が99:1〜60:40であり、かつ、前記サーマルボンド不織布の充填密度が0.07g/cm以下である粉塵除去フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター、多機能OA機、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、前記機器の排気中に含まれるトナー等の粉塵捕集を目的とした粉塵除去フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンター等の画像形成機器は、まず、帯電された感光体ドラム上に露光装置を用いて静電潜像を形成している。この静電潜像を現像装置によって現像してトナー像を形成し、さらに、このトナー像を用紙等に転写する形態をとっている。その際に、供給したトナーが全て用紙等に転写されるわけではなく、装置内部には浮遊トナーが発生し、排気と共に外部へ排出される。近年、環境問題への意識の高まりから、トナー等の粉塵に関して、排出規制が行われるようになっており、その規制をクリアするために、トナー等の粉塵を効率よく捕集できるフィルタが望まれている。また、前記フィルタは電子機器内部に設置されるため、難燃性に優れていることが望まれている。
【0003】
静電複写印刷に用いられるトナーの捕集を目的としたトナーフィルタとして、2層構造のサーマルボンド不織布からなる濾材を使用したトナーフィルタが知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも2層構造のトナーフィルタ用濾材であって、上流側の不織布層が、ハロゲン系以外の難燃剤をもって難燃処理を施したポリプロピレン繊維を芯とし鞘部をポリエチレンとした芯鞘構造の熱融着性繊維をもって構成されている一方、下流部の不織布層が、ポリエチレンテレフタレート繊維を芯として鞘部をポリエチレンとした芯鞘構造の熱融着性繊維をもって構成されていて、上流側および下流側の不織布層同士が熱融着性繊維の熱融着をもって積層一体化されているとともに、不織布層全体にエレクトレット化処理を施していることを特徴とする濾材を用いたトナーフィルタが開示されている。
しかしながら、特許文献1は、トナーフィルタを構成している濾材の充填密度が高いため、十分に高い粉塵捕集量が得られないという問題がある。
【0004】
上述のとおり、コピー機、プリンター、多機能OA機、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、前記機器の排気中に含まれるトナー等の粉塵捕集を目的とした粉塵除去フィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有する粉塵除去フィルタは見当たらないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、コピー機、プリンター、多機能OA機、POD印刷機等の電子機器の内部に設置され、前記機器の排気中に含まれるトナー等の粉塵捕集を目的とした粉塵除去フィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有するフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の通りである。
1.少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されたサーマルボンド不織布からなる粉塵除去フィルタにおいて、前記サーマルボンド不織布におけるポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成重量比率が99:1〜60:40であり、かつ、前記サーマルボンド不織布の充填密度が0.07g/cm以下であることを特徴とする粉塵除去フィルタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明による粉塵除去用フィルタは、少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が構成重量比率99:1〜60:40で混繊されたサーマルボンド不織布であって、充填密度が0.07g/cm以下であるサーマルボンド不織布からなる粉塵除去用フィルタであり、充填密度が低いため、非常に高い粉塵捕集量を有するという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における粉塵除去フィルタは、少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されたサーマルボンド不織布からなる。ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されていることによりサーマルボンド不織布の充填密度を低く保つことができ、その結果、粉塵除去フィルタが十分に高い粉塵捕集量を有することを本発明者らは見出したからである。もし、ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊された状態でなければ、前記サーマルボンド不織布の充填密度は高くなり、結果として、十分に高い粉塵捕集量を得ることができない。
【0010】
本発明におけるサーマルボンド不織布を構成するポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成重量比率は99:1〜60:40である。より好ましくは、95:5〜80:20である。もし、ポリオレフィン系熱接着性繊維のみで構成されていれば、サーマルボンド不織布の充填密度を低く保つことができない。また、ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成比率が60:40よりもポリオレフィン系熱接着繊維の構成比率が小さい場合は、熱接着繊維の構成比率が小さいため、繊維が脱落するという問題が生じる。また、ポリオレフィン系熱接着繊維の構成比率が小さいと、効率的なエレクトレット化ができず、結果として、十分に高い粉塵捕集量が得られない。
【0011】
本発明におけるサーマルボンド不織布の充填密度は0.07g/cm以下である。より好ましくは、0.05g/cm以下である。充填密度が、0.07g/cmより大きければ、十分に高い粉塵捕集量が得られず、また、十分な難燃性が得られない。充填密度の下限については、特に定めないが、0.01g/cm以上であることが好ましい。0.01g/cm未満であれば、サーマルボンド不織布の作製が困難になるからである。
【0012】
本発明におけるサーマルボンド不織布の目付は特に限定しないが、30〜400g/mであることが好ましい。この範囲外では、サーマルボンド不織布の作製が困難になるからである。また、厚みに関しては、0.4〜20mmであることが好ましい。
【0013】
本発明におけるポリオレフィン系熱接着繊維の構成材料に関しては、特に定めないが、コスト面からポリエチレン、ポリプロピレンといった一般的なポリオレフィンが好ましい。また、異なる構成材料からなるシース・コア繊維、サイド・バイ・サイド繊維といった複合繊維でもよい。
【0014】
本発明におけるポリオレフィン系熱接着繊維の繊度は、特に定めないが、0.5〜50デシテックスであることが好ましい。より好ましくは、1〜30デシテックスである。0.5デシテックスより小さければ、粉塵除去フィルタの圧力損失が高くなるため、実用的ではない。また、50デシテックスより大きければ、サーマルボンド不織布を作製する際の加工性が悪くなるという問題が生じる。
【0015】
本発明におけるポリオレフィン系熱接着繊維の繊維長は、特に定めないが、30〜130mmであることが好ましい。30mmよりも短い、もしくは、130mmよりも長い場合は、サーマルボンド不織布を作製する際の加工性が悪くなるという問題が生じる。
【0016】
本発明におけるポリオレフィン系熱接着繊維に付着している油剤については、特に定めないが、エレクトレット化を効率的に促進させるために、分子量400〜800のポリエチレングリコールと炭素数10〜20の脂肪酸からなる脂肪酸エステルが主体成分であることが好ましい。ここで言う主体成分とは、重量比で50%以上含有されていることを表す。
【0017】
本発明におけるポリエステル系繊維の構成材料に関しては、特に定めないが、コスト面からポリエチレンテレフタレートといった一般的なポリエステルが好ましい。
【0018】
本発明におけるポリエステル系繊維の繊度は、特に定めないが、0.5〜50デシテックスであることが好ましい。より好ましくは、1〜30デシテックスである。0.5デシテックスより小さければ、粉塵除去フィルタの圧力損失が高くなるため、実用的ではない。また、50デシテックスより大きければ、サーマルボンド不織布を作製する際の加工性が悪くなるという問題が生じる。
【0019】
本発明におけるポリエステル系繊維の繊維長は、特に定めないが、30〜130mmであることが好ましい。30mmよりも短い、もしくは、130mmよりも長い場合は、サーマルボンド不織布を作製する際の加工性が悪くなるという問題が生じる。
【0020】
本発明における粉塵除去フィルタにおける、前記サーマルボンド不織布の形状は、特に定めないが、単板形状やプリーツ形状が好ましい。なお、プリーツ加工には、一般的なひだ折り機を使用することができる。例えば、レシプロ方式やロータリー方式の折機を使用することができる。
【0021】
本発明における粉塵除去フィルタにおける、前記サーマルボンド不織布は、エレクトレット化処理を施されていることが好ましい。エレクトレット化処理を施すことで、粉塵捕集量が向上するからである。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0023】
[不織布の目付の測定方法]
JIS L1906 5.2(2000)記載の方法に準拠し、20cm×20cmのサイズで測定した。
【0024】
[不織布の厚みの測定方法]
JIS L1906 5.1(2000)記載の方法に準拠し、0.069N/cm(7gf/cm)の荷重下にてn=10で測定した。
【0025】
[粉塵捕集量の測定方法]
150×150mmサイズのフィルタサンプルに、風速30cm/sで、粉塵濃度0.5g/mのトナー粉塵(リコー製IPSiO SPトナー・シアン C710)20gを負荷させた。粉塵負荷停止時の粉塵付着量[g]を粉塵負荷前後の圧力損失の差[mmAq]で割ることにより粉塵捕集量[g/mmAq]を算出した。
【0026】
[難燃性の試験方法]
ULで定めるUL94試験法に基づいて評価した(UL94:Standard for Safety Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances. Horizontal Burning Foamed Material Test;94HF−1,or 94HF−2)。そして、UL94試験法に定められた有炎燃焼時間、無炎燃焼時間、燃焼距離、脱脂綿の燃焼の有無から燃焼性のグレードを求め、定められた基準に基づいて判定し、94HF−1以上を合格と判定した。
【0027】
(実施例1)
分子量600のポリエチレングリコールとオレイン酸のエステルを85%含有した油剤が付着したポリオレフィン系熱接着繊維(ポリプロピレンを芯成分、ポリエチレンを鞘成分とした芯鞘繊維、繊度2.2デシテックス、繊維長51mm)とポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、繊度6.6デシテックス、繊維長51mm)を重量比95:5でカード機に投入し、混繊・開繊した後、ニードルパンチ処理を施し、ウェブを作製した。前記ウェブに135℃の熱風をエアースルーさせて、サーマルボンド不織布を作製した。この時のサーマルボンド不織布の目付は195g/m、厚みは4.5mmであり、充填密度は0.043g/cmであった。
【0028】
(実施例2)
ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の重量比が80:20以外は実施例1と同様に作製し、その後、10kVの直流電圧を印加してエレクトレット化処理を行った。目付197g/m、厚み5.8mm、充填密度0.034g/cmのサーマルボンド不織布を得た。
【0029】
(実施例3)
145℃の熱風をエアースルーさせた以外は実施例1と同様に作製し、その後、10kVの直流電圧を印加してエレクトレット化処理を行った。目付195g/m、厚み3.5mm、充填密度0.056g/cmのサーマルボンド不織布を得た。
【0030】
(比較例1)
ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の重量比が100:0以外は実施例1と同様に作製し、目付202g/m、厚み2.4mm、充填密度0.084g/cmのサーマルボンド不織布を得た。
【0031】
(比較例2)
ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の重量比が50:50以外は実施例1と同様に作製し、目付200g/m、厚み6mm、充填密度0.033g/cmのサーマルボンド不織布を得た。
【0032】
実施例1〜3、比較例1〜2で得られたサーマルボンド不織布について、粉塵捕集量の測定、および、難燃性の試験を実施した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、実施例1〜3は、ポリエステル系繊維が含有されておらず、かつ、充填密度が0.07g/cmより大きい場合(比較例1)、また、ポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成比率(重量比)が60:40よりも、ポリオレフィン系熱接着繊維が少ないため、効率的なエレクトレット化がなされていない場合(比較例2)と比べて、難燃性、粉塵捕集量の面で優れていることが分かる。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明における粉塵除去フィルタは、少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されたサーマルボンド不織布からなる粉塵除去フィルタにおいて、前記サーマルボンド不織布におけるポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成重量比率が99:1〜60:40であり、かつ、前記サーマルボンド不織布の充填密度が0.07g/cm以下であり、充填密度が低いため、非常に高い粉塵捕集量を有するので、コピー機、プリンター、多機能OA機、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、前記機器の排気中に含まれるトナー等の粉塵捕集を目的とした粉塵除去フィルタ、および、車載用フィルタや空気清浄機等の家庭電化製品に用いられる粉塵除去フィルタ等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維が混繊されたサーマルボンド不織布からなる粉塵除去フィルタにおいて、前記サーマルボンド不織布におけるポリオレフィン系熱接着繊維とポリエステル系繊維の構成重量比率が99:1〜60:40であり、かつ、前記サーマルボンド不織布の充填密度が0.07g/cm以下である粉塵除去フィルタ。

【公開番号】特開2011−167654(P2011−167654A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35607(P2010−35607)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】