説明

粉末を混合する方法

本発明は、粉末混合物、噴霧乾燥粉末からなる1つのコンポーネントを調製する方法に関する。本発明は、ナノスケール粒子で噴霧乾燥粒子を被覆する方法、マイクロスケール粒子と噴霧乾燥粉末を混合する方法、および、噴霧乾燥粒子で担体物質を被覆する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、粉末混合物を調製する方法に関し、該方法では1つのコンポーネントが噴霧乾燥粉末からなる。本発明は、ナノスケール粒子で噴霧乾燥粒子を被覆する方法、および、噴霧乾燥粒子で担体を被覆する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
噴霧乾燥は、吸入可能粉末を調製するために非常に優れた方法である。この方法により、<10μmのMMADを有する粒子を、1工程で直接調製することができる。たとえば凍結乾燥または沈殿法のようなその他の粉末製造方法は、一般的に、次に研磨工程を要する。
吸入可能粉末の質の重要な基準は流動性であり、そして、粉末の分散性でもある。特に、小さな粒子、いわゆる、MMAD<10μmを有する粒子は、粒子の塊を形成する傾向があり、結果として、著しく粉末の吸入特性を損なう。粉末の特徴としてのこの劣化の原因は、粒子直径が減少するに従って、たとえばファンデルワールス力や、また、極性相互作用および静電力も粒子の重力と比較して偏って増加することである。
この作用の知見は先行技術の一環であり、その先行技術により多くの解決案がすでに展開されていることが示されている。
たとえば、マイクロ単位の粒子、いわゆる、10μm未満の粒子を、担体に適用することができる。これらの担体、たとえば、乳酸一水和物、グルコースまたはマンニトールは、実質的にマイクロ単位の粒子と比較して大きな粒子直径(50〜200μm)を有し、結果として、粒子特性に作用する重力の影響が増大する。
流動および分散特性を改良するためのさらなるストラテジーは、向上させた表面粗さであり、表面粗さは、たとえば、ナノ粒子でマイクロ単位の粒子を被覆すること(G. Huber et al., Powder technology 134 (2003) pages 181-192)、または、たとえばステアリン酸マグネシウムまたは疎水性アミノ酸でそれらを被覆することで粒子を疎水性にすることによって得られる(WO200403848)。
【0003】
これらの公知の方法において、マイクロ単位の粒子の製造後に追加の工程を必要とし、その工程中で対応する粉末が、たとえば担体、ナノ粒子または塗膜形成剤のような第二のコンポーネントと混合される。
細かくした結晶マイクロ粒子の混合は慣用されており、従って、この分野で公知である一方で、噴霧乾燥粉末の混合は、技術的課題となっている。噴霧乾燥粉末、特にタンパク質含有粉末は、通常アモルファスである。これは、これらの粉末が吸湿性を有し、結晶変形と比較して、それらがより高い表面エネルギーおよび高い静電気もしばしば有することを意味する。これらの特性は、他の粒子集団との混和性を著しく妨げる。不十分な混合方法の医薬的な影響には、たとえば、患者に投与する際に、治療効果のある物質の投与量の減少、または、不十分な均一性がある。
ナノ粒子を噴霧乾燥粉末に適用する方法のひとつは、ジェットミルで、または、ハイブリッド機(Nara製)での、機械的な被覆である。その他実現される方法は、静電的に補助された混合であり、その動力は、噴霧乾燥粒子およびナノ粒子と逆極性の電荷である(G. Huber et al., Powder technology 134 (2003) pp. 181-192)。
担体系と噴霧乾燥材料を混合する場合に、スクリーンまたは重力混合器が一般的に用いられる。
【0004】
従来の混合方法において、減少させた相対湿度水準のままで作動する方法連鎖を維持することは困難である。この局面は、特にアモルファス粉末において重要である。アモルファス粉末は、特に保管中に、周囲の水を吸収する傾向がある。吸収された水は、粉末のガラス転移温度を下げ、そして、結果としてガラス遷移温度は大抵保管温度より低くなり、再結晶化効果の傾向が強くなる。さらに、粉末において水蒸気吸収の結果、水蒸気の毛管凝縮が起こりうるため、従って著しく粉末の流動性が損なわれる。
従来の2プロセスステップにおいて、その他の重大な点は、能動的な介在が方法に必要であることである。これは、製造された粉末を回収し、混合装置にそれを移すことを意味する。この介在は、薬物製造方法の効率と安全性を損なう。
さらに、ほとんどの方法、たとえばジェットミルまたはボールミルで、最も特別にはハイブリッド機での混合のような方法は、機械的荷重を受けて、温度効果(ホットスポット)を伴う。水の吸収と同様に粉末のガラス転移温度を上回ることによって、アモルファス噴霧乾燥粉末の局所的な再結晶化が起こりうる。さらに、混合の間の機械的ストレスの結果として、噴霧乾燥粉末は、崩壊または融合によって破壊されうる。
ナノスケール粒子の微細構造の破壊からその他の問題が生じ、この破壊は、混合方法の間の機械的荷重および機械的荷重の動作の持続に起因する。ナノ粒子は、噴霧乾燥粒子上でスペーサーとしての役割を果たし、ファンデルワールス力を減弱することによって、粉末の流動性および空気力学的特性を改善する。高い荷重強度において、ナノ粒子からなるシール膜は、粒子上に形成されることができ、その結果、陽極効果を中和する(M. Eber, 2004, Dissertation for the University of Erlangen, Title: Efficacy and Performance of Nanoscale Flow Regulators)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、それ故に、減少させた相対湿度水準での混合方法を改善することである。さらなる目的は、混合方法の間、機械的荷重、従って、ホットスポットを減らすことである。
公開された特許出願WO03/037303は、同時に乾燥塔に2つの噴霧媒体を噴霧することによって、粒子混合物が1ステップの方法で、噴霧乾燥粉末から調製される方法を開示している。これによると、追加粒子集団は、第2の噴霧ノズルで作られ、これは実質的に噴霧乾燥機の中で活性物質を含む粉末と混合される。
この方法の欠点は、この技術を用いて達成されうる2つの粒子集団の大きさが極めて限定的な範囲でしかないことである。それ故に、ナノスケールの粒子で活性物質を含む噴霧乾燥粒子を被覆することはできない。その上、この方法は、結晶、およびしたがって、熱力学的に安定な担体(50〜200μmの好適な大きさのもの)、および、噴霧乾燥粉末の混合物を調製するために用いることができない。
本発明のさらなる目的は、それ故にナノ粒子と、または結晶担体と、噴霧乾燥粉末を混合することである。
【0006】
熱的に不安定な活性物質、特にタンパク質の噴霧乾燥において、そして低いガラス転移温度を有する粉末を製造する間、さらなる問題が、噴霧乾燥の間に不適な温度プロファイルによってタンパク質が損傷されうることの結果として生じる。
この条件下で、従来の噴霧乾燥では、出口温度は、低下するべきであり、このことは、全体の乾燥方法が準最適な様態で起こるべきであることを意味する。
乾燥方法を最適化する1つのとり得る方法は、サイクロンを冷却することである。しかしながら、この方法の欠点は、サイクロン上の粉末堆積物が絶縁効果を有し、そして、それ故にゆっくりと非効率的に冷却されうることである。
さらなる本発明の目的は、従って、高い導入温度を維持する一方で、噴霧乾燥の間、出口温度の必要かつ早急または効果的な制限に関する。
【0007】
高いタンパク質充填、たとえば50%(w/w)超過で粉末を製造することは、特に問題がある。高いタンパク質含有量は、たとえば流動性のような粉末特性に有害な影響を与える。粉末は元来、非常に高い凝集力と凝着力とを有する傾向にある。このことは、乾燥方法およびその後の方法工程の収率に影響を与えることを意味する。さらに、多くの量の治療用タンパク質を含む粉末は、タンパク質の凝集性質のせいで吸入しにくい。このことは、治療用タンパク質を高い割合で、かつ粉末および吸入特性に負の影響を与えることなく、噴霧乾燥粉末を製造することの問題を引き起こす。
【0008】
噴霧乾燥粉末の物理化学的特性を最適化する全く異なるアプローチは、粉末組成を変更することである。それ故に、噴霧溶液に疎水性物質を加えることで、当業者は、得られる粒子の粒子表面を修正することができ、よりよい分散性質を得ることができる。この方法の欠点は、しかしながら、活性物質と疎水性賦形剤の不適合を引き起こす可能性があることである。したがって、たとえば、疎水性賦形剤は、天然タンパク質よりも変性タンパク質に高い親和性を有することが知られている。それ故に、タンパク質凝集は、疎水性賦形剤とタンパク質との相互作用によって引き起こされうる。
さらなる欠点は、噴霧乾燥粒子中で疎水性物質が大抵不適な結晶化効果を生じることであり、このことが再度タンパク質損傷を引き起こしうる。
このことは、噴霧乾燥粉末の満足できる流動性、または、満足できる分散性を、粉末の結晶化効果によって引き起こされるタンパク質への損傷なしで保障することというさらなる問題を引き起こす。
【0009】
それ故に本目的は、それぞれがナノスケール粒子を含む噴霧乾燥粉末および担体からなる粉末混合物を製造する方法を提供することであり、
1.継続的に相対湿度を低減し、
2.機械的荷重の低減を示し、
3.特に粒子にやさしく、活性物質の安定性にとって好ましく、そして、加えて、
4.噴霧乾燥粉末の好適な流動性または好適な分散性の特性を保障することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要
本発明は、ナノ粒子、マイクロスケール粒子または担体系を混合する方法によって問題点を解決するものであり、それは、1工程の方法にて噴霧乾燥機で直接行われる。これは、噴霧乾燥粉末に非常にやさしい方法である。噴霧乾燥機において直接混合が行われるので、混合方法は、非常に低い相対湿度で行われうる。噴霧乾燥の後に、混合装置に粉末を移す必要がない。噴霧乾燥粉末を分散させるためのエネルギーの追加出力は必要がなく、噴霧溶液を前もって散布することによって、製造された粉末は噴霧乾燥の間、最適な分散形態で存在する。
ナノ粒子のやさしい分散の結果、さらに、好適なナノ構造の破壊がほとんど起こらない。
さらに、乾燥が終わった後に冷たい空気を吹き込むことによって、噴霧乾燥粉末への温度負荷を減少することができる。結果として、粉末はストレスが軽くなり、特に、より長いプロセス時間で有利となる。
【0011】
噴霧乾燥粉末、および、特にタンパク質を含む粉末処方を開発する場合に、当業者は、一般的に活性物質の優れた安定性と、優れた粉末特性(たとえば、優れた流動性および分散性)との双方を達成するという問題を有することとなる。特に、たとえば、高い投与量の医薬で必要であるように、粉末中、高タンパク質含有である場合、粉末が非常に強い凝集性を有する傾向がある。活性物質のこのタイプの典型的な例は、IgG型抗体である。
本発明により、タンパク質安定性および粉末特性の間の関係性を主として取り消すことがこれから可能となる。噴霧溶液、および従って、粉末の形成については、タンパク質の安定性に本質的に重点がおかれうる。空気力学特性の最適化は、一方で、噴霧乾燥機に好適な賦形剤と直接混合することによって達成されうる。
さらに、不活性賦形剤を追加することによって、粉末混合物中のタンパク質含有量、および従って、活性物質の投与量を制御できる。様々な投与量の調製は、実質的に担体と混合することによって簡単になる。
これは、プロセス時間の削減および好適な機械装置の製造のコスト低減ももたらす。
噴霧溶液を乾燥してから、冷たい空気を吹き込むことによって粉末を冷却するオプションによって、粉末をさらに安定化させることができるために、熱不安定物質でさえさらに満足がいく処理がされる。
本発明の1つの応用は、粉末の開発であり、たとえば、粉末含有医薬製剤、たとえば吸入および経鼻または経口応用である。他の開発された粉末の使用方法は、それらを好適な液体に溶解(もどす)し、そのあと静脈内、皮下、筋肉内、関節内経路でそれらを投与することである。
【0012】
本発明における方法の特別に有利な態様は、マイクロスケール混合コンポーネントを用いた粉末混合物の投与量の調節である。粒子径は、それぞれ5μm未満または、10μm未満であるべきである。理想的には、混合コンポーネントの粒子径は、噴霧乾燥粉末と同じ桁であるべきである。
本発明における方法の他の特別に有利な態様は、担体を用いた粉末混合物の投与量の調節である。吸入による投与用の粉末を製造する場合には、担体は、100μm未満の粒子径の粒子を高い割合(30%超過)で有するべきである(実施例7、表13参照)。
【0013】
従来の計量スクリュー、計測ストリップ、計測ブラッシュ(Palas製)、振動チャネルなどのような計測装置は、ナノスケール粒子に適していないので、噴霧乾燥機にナノスケール粒子を追加することは、特に課題とされている。それ故に、本発明における方法のその他の特別に有利な態様は、噴霧乾燥機へのナノスケール粒子の混合である。噴霧乾燥機へのマスフローの調節は、本発明における空気圧で行われる。この態様において、貯蔵容器中の混合コンポーネントの粉末の層は、機械的攪拌によって均質化される。ナノスケール粒子は、気流によってエアロゾルに変換され、次にベンチュリノズルを介して噴霧乾燥機に送り込まれる。マスフローは、機械的攪拌の間のエネルギーの出力によって、および、貯蔵容器中の体積流量の双方によって調節される。
【0014】
本発明における方法の別の特別に有利な態様は、親水性または疎水性のナノスケール粒子と噴霧乾燥粉末の混合物である。好適なナノスケール粒子の例示は、高い分散した親水性の二酸化シリコンまたは疎水性のエアロジル(Aerosil)R972である。ナノスケール粒子の使用は、上述した二酸化シリコンに限定されない。賦形剤の有用性の要素の決定は、粒子サイズであり、実質的に1000nm未満または500nm未満、そして特に有利に100nm未満であるべきである。
【0015】
本発明は、先行技術によって推定できない。
公開された特許出願WO200403848において、粉末(噴霧乾燥粉末を含む)は、アミノ酸、ステアリン酸マグネシウム、および、リン脂質と、製造の後、ミル(ジェットミル/ボールミル)で混合される。この手順の意図は、粒子表面の修飾(それらを疎水化すること)によって粉末の空力的特性を最適化することだった。この方法の目的は、粒子表面に膜を形成すること、および表面粗さを増加させないことである。しかしながら、表面粗さを増加することは、本発明の局面の重要な局面である。さらに、特許出願において説明された方法を用いると、1ステップの方法で表面修飾と噴霧乾燥粉末の製造を組合せることができない。
公開された特許出願WO2000053158およびWO2000033811は、混合プロセスを開示し、そのなかで、すでに調製された粉末は、さらなる混合プロセスで追加された粉末と混合される。これらの混合プロセスの目的は、粉末特性を最適化することと、担体に粉末をアプライすることである。スクリーンおよび重力混合機(たとえばTurbular mixers)は、ミキサーとして用いられる。さらに、混合原理は、混合がせん断応力によって引きおこされるものとして開示されている。しかしながら、この出願で開示されたプロセスは、すべての場合において2ステップの方法である。言い換えると、本発明と対比して、混合が別々のプロセスステップ中での粉末の製造の後に行われる。
【0016】
その他の公開された特許出願(US2004/0118007、“Methods and apparatus for making particles using spray dryer and in-line jet milling”)で、噴霧乾燥粉末が、製造された直後にジェットミルにインラインで送られる方法が開示されている。この追加ステップの目的は、凝集体を壊すことであり、担体系およびナノ粒子の追加によって、噴霧乾燥粒子の表面を修飾することではない。さらに、この方法によって、担体に希釈することによる、投与量の創出ができない。
【0017】
公開された特許出願WO03/037303も、粉末混合物を直接噴霧乾燥機で製造する方法を開示している。この方法において、2つの噴霧溶液を、多重ノズルによってそれぞれを独立して乾燥塔に送る。製造の間、ラフィノースおよびロイシン双方の粒子が製造される。次に、該粒子は噴霧乾燥機で混合される。しかしながら、この方法は、結晶担体系およびナノ粒子の混合物を調製するためには用いることができない。
【0018】
文献GB866038は、噴霧乾燥によるポリビニルアセテート粉末の製造方法を開示している。この方法において、カルボン酸カルシウムまたは二酸化チタンのような不活性粉末も、乾燥プロセスの間、いわゆる可塑剤と混合物中に導入される。この方法の要点は、ポリビニルアセテートの乾燥方法は、不活性材料が送られた後止められるのみである。この目的は、噴霧乾燥粒子中に不活性物質を入れることであり、不活性粒子を導入することにより表面の性質を修正することではない。さらに、この方法は、2つの粒子集団を混合する方法ではなく、ポリビニルアセテートおよび不活性物質からなる新しいハイブリッド粒子の調製である。
【0019】
US特許US3842888は、五水ホウ砂を調製する方法を開示している。この方法において、まず乾燥塔で洗浄液を乾燥し、次に洗浄液の供給の下部に、乾燥塔へ乾燥されるホウ砂溶液を送りこむことで、向流で乾燥を行われる。
この目的は、粉末、本質的にホウ砂を低密度で製造することである。この方法において、2つの異なる粉末の混合は起こらない。さらに、この特許は、乾燥塔に粉末を送ることを含まず、むしろ、2つの液体を送っている。
【0020】
文献JP8302399は、向流方法によって、洗浄剤を乾燥させる方法を開示している。乾燥洗浄顆粒の収率を改善するために、ケイ酸アルミニウムのような無機賦形剤を乾燥塔に送る。この方法は、本発明と異なり、この方法によって、洗浄剤は、向流方法によって乾燥され、並流方法によってなわれない。特に、高い温度に強くさらされる結果、熱不安定活性物質は、向流乾燥の間に損傷を受ける。たとえば、タンパク質の場合、変性が生じるおそれがある。さらに、文献は、洗浄剤の噴霧乾燥のみを開示している。医薬活性物質の乾燥は、該文献において記載されていない。洗浄剤に必要な条件は、タンパク質または医薬活性物質、特に抗体に適用することができず、それは、これらがより熱的に不安定で壊れやすいためである。
図面の説明
明細書において言及される全ての割合は、乾燥固体、特に噴霧乾燥によって得られた粉末の濃度および組成に関する(w/w)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一体化した混合ユニット全体によって修正された噴霧乾燥方法の概略図を示す。 図1は、修正された噴霧乾燥方法の略図を示す。1以上の活性物質、および、1以上の賦形剤を含む噴霧溶液がポンプ装置を介してアトマイザーユニット(1)に供給される。 これは、噴霧システム、たとえば2つまたは3つのノズル、加圧型ノズル、遠心型ノズル、ベンチュリノズル、または、超音波ノズルのいずれかの好適なタイプとなり得る。噴霧の後に、形成された液滴は、並流方法によって、最終的に粒子が形成されるまで、乾燥塔(2)中で乾燥ガスにより蒸散する。乾燥工程ののち、1(図1A参照)またはそれ以上(図1B参照)の好適な分散および測定ユニット(4)を通して、1(図1A参照)またはそれ以上(図1B参照)の他の粉末は、乾燥塔(2)へ導入される。 乾燥塔(2)の中、および、その後の粒子コレクターまたはガス/固体分離機(3)、たとえばサイクロン中で、2つの異なる粒子が組み合わされ、混合物を形成する。混合物は、たとえば、噴霧乾燥粉末およびナノスケール粒子の粉末、または、噴霧乾燥乾燥粉末および担体(たとえば結晶ラクトース)からなり得る。噴霧乾燥粉末、ナノスケール粒子および担体の組み合わせも、本発明に包含される。その他の好適な態様は、異なる噴霧乾燥粉末の混合である。 A)1つの他の粉末/担体/ナノ粒子の供給。 B)4a、4bおよび4cと称される多くの他の粉末、担体、またはナノ粒子の供給。点線状の矢印は、別の方法を示し、その中で、これらの追加される粉末、担体、またはナノ粒子は、最初に前もって混合され、次に、共通の好適分散および測定ユニットに送られる。 液滴の乾燥および噴霧乾燥粉末の製造は、本分野の現在の状況に対応する。これは、噴霧溶液は、水溶性、および、好適な医薬的に許容される有機溶媒からなるもの双方でありうることを意味する。乾燥媒体は空気または窒素である。乾燥塔に入れる乾燥ガスの導入温度は、50℃〜200℃である。乾燥塔を通過した後の出口温度は、25℃〜150℃である。
【図2】異なる粉末(GRANULAC 140をともに/ともなわず)の微粒子画分(FPF)および送達される質量を示す。 微粒子画分は、空気力学的粒子径(APS、TSI)と関連付けて、1ステップインパクタ(インパクタ インレット、TSI)を用いて決定した。インパクタノズル用の分離基準点は、5.0μmだった。 測定用に、粉末をサイズ3カプセルにパッケージし、吸入器(ハンディヘラー(登録商標)、ベーリンガーインゲルハイム)を用いて排出した。粉末送達流速は、ハンディヘラーにおける圧力損失が4kPaで使えるように、調節された。空気体積はPharma Eurにおいて4リットルだった。インパクタステージ上に堆積した粒子が“リバンウシング(rebouncing)”することを防ぐために、測定の間、インパクタプレートを高い粘着性のあるBrij溶液でコートした。 送達質量は、吸入器からの粉末の排出前後のカプセル重量差から計算される。 微粒子画分は、湿式化学で測定した。このために、微粒子画分が蒸着されたフィルターを、なだらかな勾配(tilting)の再構成媒体中で、3分間インキュベートした。次に、再構成媒体をフィルター殺菌して、濾液中のタンパク質濃度をUV分光法で測定した。得られた結果は、3つの分離測定に由来するものとした。 バー1、2および3は、調製された3つの粉末混合物を表す。Granulac 140の混合比は、粉末1で0%(w/w)、粉末2で30%(w/w)および粉末3で90%(w/w)だった。
【図3】噴霧乾燥粉末および担体の混合物のSEM図を示す。 70%(w/v)IgG1抗体および30%(w/v)トレハロースを含む噴霧乾燥粉末および担体材料Granulac 140(結晶ラクトース一水和物)のSEM図。 混合物の組成物:30%噴霧乾燥粉末/70%Granulac 140。 図は、走査型電子顕微鏡(SUPRA55VP、ツァイスSMT製、オバーコチェン(Oberkochen))を用いて撮影した。粉末サンプルは、好適なスライド上に直接噴霧した。余剰材料は吹き飛ばして除いた。次に、サンプルを15nm金/パラジウムで被覆し、十分な導電率を確保した。 図を表示する検出は、二次電子を用いて行った。 倍率:1000× カソードから粉末の距離:10mm シャッターサイズ:10μm 加速電圧:5kV 真空:4.17e−004Pa
【図4】噴霧乾燥粉末およびナノ粒子の混合物のSEM図を示す。 70%(w/v)IgG2抗体および30%(w/v)トレハロースを含む噴霧乾燥粉末およびエアロジルR812のSEM図。エアロジルR812は、ナノスケール疎水性の二酸化シリコンからなる。 混合物の組成:66%噴霧乾燥粉末/24%エアロジル812R 図は、走査型電子顕微鏡(SUPRA55VP、ツァイスSMT製、オバーコチェン(Oberkochen))を用いて撮影した。これを行うために粉末サンプルは、好適なスライド上に直接噴霧した。余剰材料は吹き飛ばして除いた。次に、サンプルを約15nm金/パラジウムで被覆し、十分な導電率を確保した。 図を表示する検出は、二次電子を用いて行った。 倍率:15000× カソードから粉末の距離:5mm シャッターサイズ:10μm 加速電圧:5kV 真空:4.24e−004Pa
【図5】ナノ粒子の混合比および分散圧力による微粒子画分(FPF)を示す。 この略図は、噴霧乾燥粉末(70%(w/v)IgG2/30%(w/v)トレハロース)およびエアロジルR812からなる、異なる粉末混合物を示す。粉末を異なる圧力で分散し、噴霧機に導入した。 噴霧乾燥は、BuchiB191を用いて行った。以下の噴霧乾燥条件を選択した: 導入温度:150℃ 出口温度:90℃ 噴霧機ガス速度:700L/h 吸引機のパワー:100% 噴霧速度:3.0mL/分 噴霧溶液の固形分:3% 四角印:分散圧力0.5バール 丸印:分散圧力1.75バール 三角印:分散圧力3.0バール
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本明細書の範囲内で用いられる用語および記号表示は、下記に定義された次に意味を有する。重量および重量百分率の細目は、他に定義する場合以外は、組成物の乾燥質量または、溶液/懸濁液の固形分に基づく。一般表現「含む」は、より特定する用語「からなる」を包含する。さらに、「ひとつ」および「多数」は、制限的に用いられない。
「粉末」は、非常に微細で、粉砕した物質を意味する。「噴霧乾燥粉末」は、噴霧乾燥によって製造された粉末を意味する。
「粒子」は、物質の小さな断片を意味する。本発明の中で、用語粒子は、本発明における粉末中の粒子を表す。用語粒子および粉末は、本発明中で時折、同じ意味として用いられる。用語粉末は、その成分の粒子も含む。従って、粒子は全ての粒子、いわゆる粉末を表す。
用語「組成物」は、少なくとも2つの開始材料の液体、半固体、または固体混合物を表す。
用語「医薬組成物」は、患者に投与するための組成物を表す。
【0023】
用語「医薬的に許容される賦形剤」は、本発明の範囲内において調剤の中に含まれうる賦形剤を表す。賦形剤は、たとえば、検体または検体の肺に毒物学的にあまり有害性を有さないで、肺経路によって投与され得る。
用語「混合」は、可能な限り均一に分散させる方法で異なる粉末を混ぜ合わせる工程を意味する。この工程において、混合される粒子は、同じまたは異なる平均粒子径を有してもよい。たとえば、用語混合は、2つの噴霧乾燥粉末の混合を包含する。用語混合は、ナノスケール粒子と、または、担体と噴霧乾燥粉末の混ぜ合わせも包含する。用語混合は、従って、第2の粒子集団で1つの粒子集団での被覆も包含する。
【0024】
用語可塑剤は、アモルファス粉末のガラス転移温度をより低くするこの物質に関する材料特性を示す。従って、たとえば、水は、噴霧乾燥粉末用の可塑剤であり、粉末の含水率に関連して、ガラス転移温度を低くする。
1ステップの方法は、2プロセスステップが1ユニット(たとえば装置、チャンバーのようなもの)で行われる点で、2ステップの方法とは異なる。2ステップの方法においては、2ユニットが2プロセスステップに必要とされる。たとえば乾燥工程と混合工程とからなる方法の場合に、1プロセスステップ中に乾燥および混合の双方が1つの装置または1ユニット中で起こる。このユニットは、たとえば噴霧乾燥機でありうる。2プロセスステップにおいて、粉末は乾燥後に第1装置から第2装置(次の混合工程用)に移送される。用語「医学的に許容される塩」は、たとえば以下の塩を含むが、これに限定されるものではない:無機酸の塩、たとえば、塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物塩、および硝酸塩である。有機酸の塩でもよく、たとえば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩、およびステアラートの塩、ならびにエストラート、グルセプタートおよびラクトビアナートの塩であってもよい。
【0025】
用語「活性物質」が意味する物質は、有機体の中で活性または反応を引き起こす。活性物質が、治療目的でヒトまたは動物の体内に投与された場合には、医薬組成物または薬剤と呼ばれる。
活性物質の例は、インスリン、インスリン様成長因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、および他の成長因子、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)、エリスロポエチン(EPO)、サイトカイン、たとえば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18のようなインターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)−アルファ、−ベータ、−ガンマ、−オメガ、または−タウ、TNF−アルファ、ベータ、またはガンマのような腫瘍壊死因子(TNF)、TRAIL、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、MCP−1およびVEGFである。その他の例は、モノクローナル、ポリクローナル、多特異的かつ一本鎖抗体、およびそれらの断片、たとえばFab、Fab’、F(ab’)2、FcおよびFc’断片、軽(L)および重(H)免疫グロブリン鎖およびそれらの定常、可変または超可変領域、並びに、FvおよびFd断片である(Chamovら、1999)。抗体は、ヒト起源または非ヒト起源でありうる。ヒト化およびキメラ抗体でも可能である。同様に、それは、たとえば放射性物質または化学的に定義された薬剤と結合する結合タンパク質および抗体に関する。
【0026】
Fab断片(抗原結合断片=Fab)は近接定常領域によってともに固定される両方の鎖の可変領域からなる。それらは、たとえば、パパインのようなプロテアーゼで処理することによって、または、DNAクローニングによって従来の抗体から製造されうる。他の抗体断片は、ペプシンによるタンパク質分解によって製造されうるF(ab’)2断片である。
遺伝子クローニングによって、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のみからなる短縮抗体断片を調製することも可能である。それらは、Fv断片(断片可変=可変部位の断片)として知られている。定常鎖のシステイン基による共有結合は、これらのFv断片中に存在し得ないから、それらは、大抵いくつかの他の方法で安定化させる。この目的で、重鎖および軽鎖の可変領域は、約10〜30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸の短いペプチド断片により大抵一緒につなぎ合わされる。これは、VHおよびVLがペプチドリンカーで一緒につなぎ合わされる単ポリペプチド鎖を生成する。このような抗体断片は、単鎖Fv断片(scFv)とも呼ばれる。scFV抗体の例は、公知であり、開示されている(たとえばHustonら、1988参照)。
【0027】
これまでに、様々なストラテジーが多重結合scFv誘導体を製造するために発展してきた。この意図は、改善した薬物動態特性および増加した結合親和力を有する組換え抗体を製造することである。scFv断片の多量体化を達成するために、それらは、多量体化ドメインを有する融合タンパク質として製造される。多量体化ドメインは、たとえば、IgGのCH3領域またはロイシンジッパードメインのようなへリックス構造(コイルドコイル構造)でありうる。他のストラテジーにおいて、scFv断片のVH領域およびVL領域の間の相互作用は、多量体化(たとえば二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabody)および五重特異性抗体(pentabody))に用いられる。
用語「二重特異性抗体」は、本分野において、二価ホモ二量体型scFv誘導体を示すものである。scFv分子におけるペプチドリンカーを5〜10アミノ酸に短くすることで、スーパーインポーズするVH/VL鎖によってホモダイマーの形成が生じる。二重特異的抗体は、さらに、挿入ジスルフィド橋により確立される。二重特異的抗体の例は、文献、たとえばPerisicら、1994に確認することができる。
用語「ミニボディ」は、本分野において、二価ホモ二量体型scFv誘導体を示すものである。それは、二量化領域として免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を含む融合タンパク質からなる。これは、ヒンジ領域、IgGのおよびリンカー領域によって、scFv断片と結合する。このようなミニボディの例は、Huら、1996により記載されている。
用語「三重特異性抗体」は、本分野において、三価ホモ三量体scFv誘導体を示すものである(Korttら、1997)。リンカー配列を用いることなくVH−VLの直接融合で、三量体の形成にいたる。
【0028】
二価、三価または四価構造を有する小さい抗体として技術的に知られている断片も、scFv断片の誘導体である。多量化は、二量体、三量体または四量体コイルドコイル構造によって達成される(Packら、1993および1995;Lovejoyら、1993)。
用語「賦形剤」は、製剤に追加される物質を表し、本発明において、粉末、特に噴霧乾燥粉末を表す。賦形剤は、通常それ自体に活性が無く、特に、医学的活性が無く、そして、実際の成分、たとえば活性物質の調合を改善すること、または、それらの何らかの側面を最適化することに役立つ(たとえば保存性)。
医薬的な「賦形剤」は、薬剤または医薬組成物の一部であり、とりわけ、活性物質が活性部位に到達し、そこで放出されることを確かにする。賦形剤は、3つの基本的な役割がある:担体機能、活性物質の放出制御、および安定性の増加である。賦形剤は、効果の持続性または速度を変化する医薬的態様を生み出すことにも用いられる。
【0029】
用語「アミノ酸」は、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基を含む化合物を表す。アミノ基は、カルボキシル基に対して通常α位置にあるが、分子中で他の配置がありうる。アミノ酸は、たとえばアミノ基、カルボキシアミド基、カルボキシル基、イミダゾール基、チオ基および他の基のような他の官能基も含みうる。さまざまな光学異性特性を含む、天然のまたは合成起源の、ラセミまたは光学活性(D−またはL−)アミノ酸を用いることができる。たとえば、用語イソロイシンは、D−イソロイシン、L−イソロイシン、ラセミイソロイシンおよび2つのエナンチオマーのさまざまな比率を含む。
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、2アミノ酸基より多くからなるアミノ酸のポリマーを表す。
さらに、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、10アミノ酸基より多くからなるアミノ酸のポリマーを表す。
用語ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、仮名として用いられ、ホモペプチドおよびヘテロペプチドの双方、いわゆる、同一または異なるアミノ酸基からなるアミノ酸のポリマーを含む。「ジペプチド」は、それ故に、2つのペプチド性結合アミノ酸で構成され、「トリペプチド」は、3つのペプチド性結合アミノ酸で構成される。
本明細書で用いられる用語「タンパク質」は、20アミノ酸基より多い、特に100アミノ酸基より多いアミノ酸のポリマーを表す。
【0030】
用語「小タンパク質」は、50kD未満の、または30kD未満の、または5−50kDのタンパク質を表す。用語「小タンパク質」はさらに500アミノ酸基未満または300アミノ酸基未満のアミノ酸基のポリマー、または、50−500アミノ酸基のポリマーに関する。好ましい小タンパク質は、たとえば、「ヒト成長ホルモン/因子」のような成長因子、インスリン、カルシトニンまたはそのようなものである。
用語「タンパク質安定性」は、90%より大きい、好ましくは95%より大きいモノマー含有量を示す。
用語「オリゴサッカライド」または「ポリサッカライド」は、少なくとも、3つの単量体糖分子からなるポリサッカライドを表す。
用語「%(w/w)」は、噴霧乾燥粉末中の活性物質または賦形剤の質量に基づく百分率量を表す。定まった百分率は、粉末の乾燥物質に基づく。粉末中の残留水分は、それ故考慮されない。
【0031】
用語「アモルファス」は、粉末化調合物が10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、および最も好ましくは4、3、2または1%未満の結晶画分を含むことを意味する。
言葉「吸入可能」は、粉末が肺経路投与に適していることを意味する。吸入可能粉末は、吸入器により分散し吸入され、粒子が肺に入り、肺胞を通して、適宜、全身性活性を発現させることができる。吸入可能な粒子は、たとえば、0.4−30μm(MMD=質量中央径)の平均粒子直径を有することができ、通常0.5−20μm、好ましくは1−10μmおよび/または0.5−10μ、好ましくは0.5−7.5μm、さらに好ましくは0.5−5.5μm、さらにより好ましくは1−5μm、そして最も好ましくは1−4.5μmまたは3−10μmの平均空気力学的粒子径(MMAD=空気動力学的中央粒子径)を有することができる。
【0032】
「質量中央径」または「MMD」は、平均粒子径分布の計測結果である。この結果は、全側方浸透流の50%で全体積分布の直径として表される。MMD値は、いずれかの他の従来法を用いることもできるが(たとえば電子顕微鏡法、遠心沈降法)、たとえばレーザー回析法で測定することができる。
用語「平均空気力学的粒子径」(=空気動力学的中央粒子径(MMAD))は、粉末の粒子の50%がより小さい空気力学的直径を標準的に有する空気力学的粒子径を示す。懸念がある場合には、MMADを測定する参照方法は、本発明の明細書で示した方法である(実施例、方法参照)。
MMDおよびMMADは、互いに異なっても良く、たとえば、噴霧乾燥で製造された中空球は、MMADよりもMMDが大きくなり得る。
【0033】
用語「微粒子画分」(FPF)は、≦5μmMMADの粒子径の粒子からなる粉末の吸入可能部分を示す。容易に分散可能な粉末中で、FPFは20%超過、好ましくは30%超過、さらに好ましくは40%超過、そしてさらに好ましくは50%超過、さらに好ましくは55%超過である。この状況下で用いられる表現「カットオフ直径」は、FPFを測定する場合に、どの粒子が考慮されるかを意味する。5μmのカットオフ直径で30%のFPF(FPF5)は、粉末中の全ての粒子の少なくとも30%が5μm未満の平均空気力学的粒子径を有することを意味する。
用語「飛行時間」は、測定の標準方法の名前であり、さらに詳細は、実施例で記載する。飛行時間測定において、MMADは、定義された測定距離を超える粒子の飛行時間を計測することで測定される。MMADは飛行時間と相関がある。これは、大きなMMADを有する粒子は、対応する小さな粒子より飛行時間が長くなることを意味する(これに関しては実施例、方法参照)。
【0034】
用語「分散可能」は、飛行能力を意味する。粉末の飛行能力の基本的な必要条件は、別々の粒子への粉末の分解と、空気中での別々の粒子の分散である。粒子の塊は、大きくて肺に入れず、それ故に吸入治療用に適していない。
用語「送達質量」は、吸入器を使用する場合に、送達される粉末の量を示す。送達は、この場合において、たとえばカプセルを用いて、排出前後のカプセルを計量することで測定される。排出質量は、排出前後のカプセル質量の差異に対応する。
用語「担体」は、噴霧乾燥粉末と比較して大きな粒子を意味する。この特性により、噴霧乾燥粉末を担体にアプライすることができる。たとえば、約5μmの平均直径を有する噴霧乾燥粒子を製造した場合に、担体は50−200μmの平均粒子径を有するべきである。典型的な担体は、糖およびポリオールである。担体の選択は、しかしながら、これらの物質のカテゴリーに限定されない。
【0035】
用語「マイクロスケール粒子」または「マイクロスケール賦形剤」は、噴霧乾燥粉末中の粒子と同じ大きさのオーダーの粒子を示す。マイクロスケール粒子は、好ましくは0.5−10μm、1−10μm、特に好ましくは2−7.5μmの平均空気力学的粒子径(MMAD)の粒子である。マイクロスケール賦形剤は、特に噴霧乾燥機で粉末混合物を調製することに適しており、粉末コンポーネントは、空気力学的に同様に振舞うので、従って、混合されない工程が生じることを抑制する。それ故に、マイクロスケール賦形剤は、特に噴霧乾燥粉末の高い割合で、さらに特に噴霧乾燥タンパク質含有粉末の高い割合で好ましくは、希釈して投与量を調製することに適している。
用語「ナノ粒子」または「ナノスケール粒子」は、噴霧乾燥粉末と比較して非常に小さな粒子を表す。この特性により、噴霧乾燥粉末をナノスケール粒子で被覆することができる。たとえば、約5μmの平均直径を有する噴霧乾燥粒子が製造された場合、ナノ粒子は1nm−500nm、または5nm−250nm、または10nm−100nmの平均粒子径を有するべきである。
「エアロジル(登録商標)」は、二酸化シリコン(SiO2)、または、デグサ製のエアロジル(登録商標)R812のような修飾疎水性(アシル鎖)の二酸化シリコンのナノ粒子を示す。ナノ粒子の他の例は、たとえば二酸化チタン(TiO2)である。
用語「生分解性ナノ粒子」は、好ましくは、有害または非天然崩壊生成物を製造することなく、ヒトまたは動物の体内で崩壊することができる以下のようなナノ粒子を意味する。
【0036】
用語「投与量」は、吸入器のような投与装置を用いた場合に送達される物質の量、特に治療上の活性物質の量を表す。投与量の決定要因は、粉末中の物質、特に活性物質の割合、および、送達される粉末の量である。噴霧乾燥粉末の場合の送達投与量は、それ故に噴霧乾燥粉末中の活性物質の割合を変更することによって、または、不活性粉末(いわゆる活性物質が存在しないもの)中に追加または混合されることによって調節することができる。
用語「希釈」は、噴霧乾燥粉末、特に活性物質を含有する噴霧乾燥粉末の減少させた投与量を表す。
用語「混合コンポーネント」は、噴霧乾燥粉末とは別に粉末として噴霧乾燥機に移送される物質を意味する。混合コンポーネントは、ナノスケール若しくはマイクロスケール粒子、または担体からなり得る。
【0037】
[本発明における組成物]
本発明は、噴霧乾燥粉末を、ナノ粒子、マイクロスケール粒子と、および/または、担体と混合する方法であって、混合工程を噴霧乾燥機で行う方法に関する。
本発明の方法は、特に噴霧乾燥の後に粉末を混合装置へ移送しないことを特徴とする。
本発明は、さらに以下の工程から特徴付けられる粉末を混合する方法に関する:
a.噴霧される1以上の物質を含み、さらに、1以上の賦形剤を含んでもよい噴霧溶液を、コンパートメントに噴霧/散布する工程、
b.工程(a)中と同じコンパートメントで得られた液滴を乾燥する工程、
c.たとえば担体またはナノ粒子を含む1以上の他の粉末を、工程(b)中と同じコンパートメントに、混合物を形成する条件下で導入する工程、および、
d.形成された粉末を回収する工程。
【0038】
特に、工程cまたはdの過程で、噴霧乾燥粒子および他の粉末コンポーネントの双方を分散態様で組合せた場合に、混合物が製造される。これは、好ましくは、工程cで追加された担体またはナノ粒子の空気霧化の間行う。この空気霧化の好ましい混合圧力は、分散ユニットの1mmまたは2mmの溝幅にて1.75バールである。
混合溝で空気霧化する代わりに、混合は、たとえばベンチュリノズルのような他のガスフローノズルを用いて、特に行うことができる。追加された担体およびナノ粒子の空気分散の代わりに、超音波または静電気誘導分散も起こりうる。
【0039】
1つの特別な態様において、本発明の方法は、以下のことを特徴とする:
a.噴霧乾燥粉末が、0.5〜10μm、1〜10μm、好ましくは2〜7.5μmの平均空気力学的粒子径(MMAD)を有する粉末であり、
b.ナノ粒子が、500nm未満の平均粒子径(MMD)、200nm未満のMMD、または、1nm〜500nm、5〜250nm、好ましくは10〜100nmのMMDを有する粒子であり、
c.マイクロスケール粒子が、0.5〜10μm、1〜10μm、好ましくは2〜7.5μmの平均空気力学粒子径(MMAD)を有する粒子であり、そして、
d.担体が50μm超過、または、50〜200μm、好ましくは60〜100μmの平均粒子径(MMD)を有する物質である。
【0040】
好ましい態様において、本発明の方法は、担体が、100μm未満の粒子径を有する粒子で、少なくとも割合30%(w/w)占められることを特徴とする。
特別な態様において、本発明の方法は、少なくとも30%(w/w)の担体が100μmよりも小さいことを特徴とする。
他の態様において、方法は、ナノ粒子または担体が、糖、ポリオール、または、アミノ酸であることを特徴とする。
好ましい態様において、本発明は、担体が、医薬的に許容される結晶賦形剤(たとえば、ラクトース一水和物、グルコース、キトサンのような結晶糖、または、結晶ポリオール(たとえばマンニトール))であることを特徴とする。
他の態様において、方法は、ナノ粒子が、修飾または非修飾の態様の二酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、または、炭酸カルシウム(CaCO3)のような無機化合物であることを特徴とする。
【0041】
特に好ましい態様において、方法は、ナノ粒子が、生分解性ナノ粒子であることを特徴とする。これらは、たとえば、ナノスケール単糖、グルコースまたはマンニトールのようなナノスケールポリオール、たとえばラクトース一水和物、サッカロース、デンプン、アミロース、アミロペクチン、加水分解デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、キトサン、またはデキストランのようなナノスケール二糖類、オリゴ糖類またはポリ糖類、たとえばバリンまたはグリシンのようなナノスケールアミノ酸、ゼラチン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート(たとえばポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート))、PLGA(乳酸−グリコール酸共重合体)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、または、ヒト血清アルブミン(HSA)のようなナノスケールポリマー、または、たとえば、トリパルミチン−含有、または、ホスファチジルコリン−含有ナノ粒子のようなナノスケール脂質であることを特徴とする。
その他の特別な態様において、方法は、ナノ粒子がエアロジル(登録商標)(二酸化シリコン)および/または二酸化チタンではないことを特徴とする。
【0042】
その他の態様において、本発明における方法は、工程(a)、(b)および(c)におけるコンパートメントが噴霧乾燥機であることを特徴とする。
その他の態様において、本発明における方法は、工程(b)中の乾燥が乾燥塔で行われることを特徴とする。
特別な態様において、工程(b)が、並流方法で行われることを特徴とする。
特別な態様において、工程(b)が、向流方法で行われないことを特徴とする。
特別な態様において、工程(d)中の粒子がサイクロンで回収されることを特徴とする。
その他の態様において、工程(a)による噴霧溶液が、水溶液、または、好適な医学的に許容される有機溶媒からなる溶液のいずれかであることを特徴とする。
その他の態様において、工程(b)中の乾燥媒体が空気または窒素のいずれかであることを特徴とする。
その他の態様において、本発明における方法は、工程(b)中の乾燥の間、乾燥ガスの入口温度は50℃〜200℃であり、乾燥工程後の乾燥ガスの出口温度は25℃〜150℃であることを特徴とする。
【0043】
その他の態様において、本発明における方法は、噴霧乾燥粉末の温度負荷を、乾燥後に冷却空気に吹き入れることによって低減させる(たとえば、乾燥塔からの出口)ことを特徴とする。
その他の態様において、本発明における方法は、1以上の担体またはナノ粒子を、別々の分散および測定ユニットを通してコンポーネントに、直接導入することを特徴とする。
その他の態様において、本発明における方法は、1以上の担体またはナノ粒子をプレ混合し、さらに、分散および測定ユニットを通して直接噴霧乾燥機に、一緒に導入することを特徴とする。
その他の態様において、本発明の方法は、噴霧乾燥粉末を分散するために必要な追加エネルギー導入量なしであることを特徴とする。
その他の態様において、本発明における方法は、2つのタンパク質を一緒に混合することを特徴とする。
【0044】
特別な態様では、本発明における方法は、洗浄剤または無機混合物を調製する方法が除かれ、または、無機粉末を乾燥して調製して、さらに、その他の粉末と混合する方法は除かれることを特徴とする。
特別な態様では、本発明における方法は、洗浄剤も無機混合物も調製せず、混合物も調製しないことを特徴とし、該方法中で無機粉末を乾燥して製造し、さらに、その他の粉末と混合する。
本発明は、さらに、ナノ粒子で噴霧乾燥粒子を被覆する方法であって、本発明における記載された方法のひとつを用いた方法に関する。
本発明は、担体を混合することによって噴霧乾燥粉末の規定量(w/w)を含む組成物または投与量を調製する方法であって、本発明における記載された方法のひとつを用いた方法にも関する。
好ましい態様において、本発明における噴霧乾燥粉末がタンパク質含有粉末であることを特徴とする。
好ましい態様において、タンパク質が抗体である。
本発明は、さらに、本発明における方法のひとつで調製された組成物に関する。
特別な態様において、組成物が、薬剤用としての組成物である。
好ましい態様において、組成物が吸入薬剤用である。
【0045】
その他の態様において、本発明における組成物は、肺疾患または全身性疾患の治療用薬剤を調製するための使用される。
本発明は、さらに、1%(w/w)超過、特に30%(w/w)超過、35%(w/w)超過、40%(w/w)超過、45%(w/w)超過、50%(w/w)超過、55%(w/w)超過、60%(w/w)超過、65%(w/w)超過、70%(w/w)超過、80%(w/w)超過および90%(w/w)超過の噴霧乾燥タンパク質含有物を有し、少なくとも1つのナノ粒子、または、担体を含み、15%(w/w)超過、25%(w/w)超過、35%(w/w)超過、45%(w/w)超過、55%(w/w)超過、65%(w/w)超過の微粒子画分を有することに特徴を有する混合粉末に関する。
特別な態様において、本発明における粉末混合物は、タンパク質含有物が、抗体を含むことを特徴とする。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
この実施例では、固形分に基づいて70%IgG2および30%トレハロース二水和物を含む噴霧溶液を調製した。溶液の固形分は3%だった。噴霧溶液を、いわゆる高性能サイクロン(HPC)を利用するBuchi B−191で乾燥した。標準サイクロンと比較して、HPCは、よりちいさな直径のために、低い沈殿の限界点を有し、従って、より良い沈殿効率を有する。
乾燥条件:
導入温度:160℃
溶液の噴霧速度:3.0mL/分
噴霧機ガス速度:700L/h
混合物の調製は、乾燥塔にて、ラクトース一水和物(Granulac140)に直接吹き入れることによって行った。ラクトースの分散は、せん断作用により溝で行った(溝幅1mm)。分散圧力は、1.75バールだった。
3種類の粉末、または、粉末混合体を調製した。
【0047】
表1

粉末2および粉末3の双方において、Granulac140なしの噴霧乾燥粉末(粉末1)と比較して、混合物の空気力学特性(FPFおよび送達質量)を改良することができた(図2参照)。微粒子画分を、送達前のカプセル中の活性物質に基づいて、湿式化学で測定した。送達質量を、粉末吸入器(ハンディヘラー(登録商標))からの粉末の排出前後の質量差異から得た。
図3は、粉末2の粉末混合体の走査型電子顕微鏡像を示す。
【0048】
<実施例2>
この実施例では、噴霧乾燥粉末および担体(Granulac140)の混合物の送達される投与量の均質性を測定した。噴霧乾燥の条件は、実施例1に説明したものと同様とした。
【0049】
粉末の比較:
表2

【0050】
表3

【0051】
表4

【0052】
90%Granulac140および10%噴霧乾燥粉末で混合物を調製することによって、噴霧乾燥粉末と比較して、投与量の均質性(homogeneity)または均一性(uniformity)を改良することができた。表3および4から理解できるように、カプセルに入った活性物質の重量、および送達されたタンパク質の量の双方に基づく送達投与量は、より均一であった。さらに、カプセルからの粉末の送達を、混合物の調製により顕著に改良した。
【0053】
<実施例3>
本実施例においては、噴霧乾燥機中での粉末混合物の調製の再現性を調べた。この目的は、実施例1で記載したように粉末処方物の3つのバッチを調製した。Granulac140を1.75バールの分散圧力で2mmのスロット幅に送り込んだ。表5は、重量に基づく微粒子画分および吸入器からの粉末の送達質量を示す。双方の測定条件は、非常に狭い変動幅を示した。このことは、噴霧乾燥機における混合工程は、非常に正確な方法で実行できることを意味する。
【0054】
表5

【0055】
<実施例4>
本実施例は、噴霧乾燥粉末およびエアロジル(Aerosil)R812からからなる様々な混合物を示す。
図4は、エアロジルで被覆された噴霧乾燥粉末の例を示す。
図5は、分散圧力によって決定する様々な混合物で得られる微粒子画分を示す。
エアロジルR812で被覆することによって、微粒子画分を増加することができる。
【0056】
<実施例5>
本実施例は、疎水性の二酸化シリコン(エアロジルR972,Degussa)と噴霧乾燥粉末との混合物、および、分散性が高い親水性の二酸化シリコン(Merck,Darmstadt,CAS no.7631−86−9)の混合物を示す。噴霧乾燥の工程条件を表6に示す。疎水性または親水性のナノスケール混合コンポーネントを、空気圧で供給した。このことを行うために、貯蔵容器(全体積1.1L)を200mLのナノスケール粉末でいっぱいにした。粉末層の上に、0.5L/分で空気を貯蔵容器に接線方向に導入した。粉末層を均質化するために、粉末をさらに機械的に攪拌した(300rpm)。次に、ベンチュリノズルを通して噴霧乾燥機に粉末を入れた。ベンチュリノズルの予備圧力は2バールであった。その他の容器を貯蔵容器とベンチュリノズルとの間に入れた。粒子のより粗い凝集体をこの容器に入れた。任意に、この容器を通して噴霧乾燥機に追加混合空気を導入することが可能であり、そして、追加粒子エアロゾルを導入することも可能である。
【0057】
表6

噴霧溶液を調製するために、0.9gのトレハロース二水和物を約70mlの水で溶解した。溶解後、IgG1含有15.4mlの溶液(タンパク質濃度:104mg/mL)を加えて、水を100mlになるまで加えた。追加混合コンポーネントなしで、噴霧乾燥後の粉末中の平均タンパク質含有量は58%だった。疎水性SiO2と混合した後に、粉末中のタンパク質の割合は47%に減少した。親水性SiO2の場合において、タンパク質含有量は54%だった。表7は、製造した、異なる粉末の空気力学特性を示す。測定は、図2に記載したように行った。明細書中で記載された方法と対比して、微粒子画分は、測定装置への粉末の送達の前後に、封入カプセルを秤量することによる、重量測定法で測定した。
【0058】
表7

ナノスケール粒子の追加による重量測定法で測定したFPFの増加(親水性SiO2の場合は33%FPFの増加、および、親水性SiO2の場合は29%FPFの増加)は、本質的に噴霧乾燥粉末の表面品質の改善がなされたことによるものである。これは、混合物中の追加コンポーメントの割合は11%未満であり、従って、FPFの増加は、粉末中の吸入可能なSiO2の増加した質量割合に主として起因するものではない。
この例示は、粉末中のタンパク質含有量調節の可能性を示し、従って、噴霧乾燥粉末とマイクロスケール賦形剤とを直接混合することによる活性物質の投与量の調節の可能性を示す。
噴霧乾燥粉末を製造する噴霧条件は、表8に記載している。
噴霧溶液を調製するために、0.9gのトレハロース二水和物を約70mLの水に溶解した。溶解後に、14.5mLのIgG1含有溶液(タンパク質濃度:104mg/mL)を加えて、水を100mLになるまで加えた。追加混合コンポーネントなしで、噴霧乾燥後の粉末中のタンパク質の割合は、60%だった。
【0059】
表8

混合コンポーネントには、粉砕で微粒化したラクトース一水和物を用いた。微粒化の後、糖は3.9μmのMMADを有し、重量測定法で測定した14%の微粒子画分を有した。
【0060】
微粒化したラクトース一水和物を、計量スクリュー(ZD9F、スリーテック(Three Tec)製)を用いて計測した。排出粉末を気流20mL/分でベンチュリノズルに注いだ。ベンチュリノズルの準備圧力は0.69バールだった。表9で記載するとおり、2つの粉末混合物を計測スクリューの異なる計測速度で調製した。微粒子画分または微粒子画分中のタンパク質の量を湿式化学で測定した。このために、3つのカプセルをインパクタ注入口(型3306/TSI)に置き、そして、インパクタノズルのフィルター下流を分析した。図2に方法を記載した。25mMヒスチジン/1.6mMグリシンからなる緩衝液(pH6.0)を再構成媒体として用いた。
噴霧乾燥粉末および微粒化されたラクトース一水和物の混合割合は、表9に示した。粉末2において、たとえば、62%(w/w)の噴霧乾燥粉末および38%(w/w)の微粒化ラクトース一水和物の比率で2つのコンポーネントを混合することによって、粉末中のタンパク質含有量が38.8%であることが分かった。
表9で示すように、微粒子画分中のタンパク質含有量は、混合コンポーネントと混合することでかなり減少させることができた。
【0061】
粉末中のタンパク質含有量、従って微粒子画分中のハンディへラーを用いた送達後の混合比は開始混合物とほぼ同じであった。表10は、開始混合物のタンパク質含有量と、測定した微細粉末粒子画分中のタンパク質含有量とを示す。微粒子画分中のタンパク質含有量は、湿式化学によって測定されたFPF中のタンパク質含有量から得られ、タンパク質含有量はFPF中の粉末の量に基づいたものである。これは、特に、微粒化されたラクトース一水和物のようなマイクロスケール賦形剤、たとえば、噴霧乾燥機中で粉末混合物を調製することに適していることを示す。これは、粉末コンポーネントは空気力学的に同様にふるまい、従って、混合しない工程を抑制するためである。
【0062】
表9

【0063】
表10

噴霧溶液を表11に記載する重量に対応するように調製した。噴霧乾燥粉末を調製するための噴霧条件は、表12に記載した。
【0064】
表11

【0065】
表12

噴霧乾燥粉末を様々なPharmatoses(DMV)と、噴霧乾燥機中で混合した(表13参照)。含有物を計量スクリュー(ZD9F、スリーテック)を用いて10rpmで計測した。排出粉末を気流20L/分で直接噴霧乾燥機に導入した。
【0066】
表13から分かるように、得られた混合比は、用いた混合コンポーネントの粒子径に非常に依存していた。特に、ファルマトース50Mおよびファルマトース90Mのような粗い担体は、インライン混合にあまり適していない。その中で、あまり混合されない傾向があるためである。用いられる混合コンポーネントは少なくともファルマトース125Mに相当する粒子径を通するべきである。小さな粒子は、多量の混合コンポーネントを追加する場合に特に好ましい。
表13

【図1A)】

【図1B)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧乾燥粉末を、ナノ粒子、マイクロスケール粒子と、および/または、担体と混合する方法であって、
混合工程を噴霧乾燥機で行なう方法。
【請求項2】
噴霧乾燥の後に粉末を混合装置へ移送しない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a.噴霧される1以上の物質を含み、さらに、1以上の賦形剤を含んでもよい噴霧溶液を、コンパートメントに噴霧/散布する工程、
b.工程(a)中と同じコンパートメントで得られた液滴を乾燥する工程、
c.たとえば担体またはナノ粒子を含む1以上の他の粉末を、工程(b)中と同じコンパートメントに、混合物を形成する条件下で導入する工程、および、
d.形成された粉末を回収する工程、
を備える粉末を混合する方法。
【請求項4】
a.噴霧乾燥粉末が、0.5〜10μm、1〜10μm、好ましくは2〜7.5μmの平均空気力学的粒子径(MMAD)を有する粉末であり、
b.ナノ粒子が、500nm未満の平均粒子径(MMD)、200nm未満のMMD、または、1nm〜500nm、5〜250nm、好ましくは10〜100nmのMMDを有する粒子であり、
c.マイクロスケール粒子が、0.5〜10μm、1〜10μm、好ましくは2〜7.5μmの平均空気力学粒子径(MMAD)を有する粒子であり、そして、
d.担体が50μm超過、または、50〜200μm、好ましくは60〜100μmの平均粒子径(MMD)を有する物質である、
請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
担体が、100μm未満の粒子径を有する粒子で、少なくとも割合30%(w/w)占められる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ナノ粒子または担体が、糖、ポリオール、または、アミノ酸である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
担体が、医薬的に許容される結晶賦形剤である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
賦形剤が、たとえば、ラクトース一水和物、グルコース、キトサンのような結晶糖、または、マンニトールのような結晶ポリオールである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子が、修飾または非修飾の態様の二酸化シリコン(SiO2)、酸化チタニウム(TiO2)、または、炭酸カルシウム(CaCO3)である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子が、生分解性ナノ粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
生分解性ナノ粒子が、
ナノスケール単糖、
グルコースまたはマンニトールのようなナノスケールポリオール、
たとえばラクトース一水和物、サッカロース、デンプン、アミロース、アミロペクチン、加水分解デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、キトサン、またはデキストランのようなナノスケール二糖類、オリゴ糖類またはポリ糖類、
たとえばバリンまたはグリシンのようなナノスケールアミノ酸、
ゼラチン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート(たとえばポリ(イソヘキシルシアノアクリレート))、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、PLGA(乳酸−グリコール酸共重合体)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、または、ヒト血清アルブミン(HSA)のようなナノスケールポリマー、または、
たとえば、トリパルミチン−含有、または、ホスファチジルコリン−含有ナノ粒子のようなナノスケール脂質である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)、(b)および(c)のコンパートメントが噴霧乾燥機である請求項3〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(b)中の乾燥が乾燥塔で行なわれる請求項3〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、並流方法で行なわれる請求項3〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(d)中の粒子がサイクロンで回収される請求項3〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(a)による噴霧溶液が、水溶液、または、好適な医学的に許容される有機溶媒からなる溶液のいずれかである請求項3〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(b)中の乾燥媒体が空気または窒素のいずれかである請求項3〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(b)中の乾燥の間、乾燥ガスの入口温度は50℃〜200℃であり、乾燥工程後の乾燥ガスの出口温度は25℃〜150℃である請求項3〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
噴霧乾燥粉末の温度負荷を、乾燥後に冷却空気に吹き入れることによって低減させる(たとえば、乾燥塔からの出口)請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
1以上の担体またはナノ粒子を、別々の分散および測定ユニットを通してコンパートメントに、直接導入する請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1以上の担体またはナノ粒子をプレ混合し、さらに、分散および測定ユニットを通して直接噴霧乾燥機に、一緒に導入する請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ナノ粒子で噴霧乾燥粒子を被覆する方法であって、
請求項1〜21のいずれかに記載の方法を用いた、前記方法。
【請求項23】
担体を混合することによって噴霧乾燥粉末の規定量(w/w)を含む組成物または投与量を調製する方法であって、
請求項1〜21のいずれかに記載の方法を用いた、前記方法。
【請求項24】
噴霧乾燥粉末がタンパク質含有粉末である請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
タンパク質が抗体である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の方法で調製された組成物。
【請求項27】
薬剤用としての請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
吸入薬剤用としての請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
肺疾患または全身性疾患の治療用薬剤を調製するための請求項26に記載の組成物の使用。
【請求項30】
1%(w/w)超過、特に30%(w/w)超過、35%(w/w)超過、40%(w/w)超過、45%(w/w)超過、50%(w/w)超過、55%(w/w)超過、60%(w/w)超過、65%(w/w)超過、70%(w/w)超過、80%(w/w)超過および90%(w/w)超過の噴霧乾燥タンパク質含有物を有し、
少なくとも1つのナノ粒子、または、担体を含み、
15%(w/w)超過、25%(w/w)超過、35%(w/w)超過、45%(w/w)超過、55%(w/w)超過、65%(w/w)超過の微粒子画分を有する、
粉末混合物。
【請求項31】
タンパク質含有物が、抗体を含む請求項30に記載の粉末混合物。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−509287(P2010−509287A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535731(P2009−535731)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062040
【国際公開番号】WO2008/055951
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】