粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法。
【課題】高精度に3次元構造物を形成するための粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法を提供する。
【解決手段】紛体は、フィラーFと接着剤Aとを備える。紛体に対し、液体Lが吐出される。フィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きい。液体Lと接触した接着剤Aが液体Lに溶解し、フィラーF間の隙間に浸透する。この浸透によりフィラーF同士が接着される。液体Lは吐出後、次第に揮発する。液体Lが揮発した後も、接着剤Aと液体Lとが接触した接触領域においてフィラーF同士は接着されたままである。この接触領域がそのまま固化し、造形物を形成する。フィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きいため、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えることが出来る。
【解決手段】紛体は、フィラーFと接着剤Aとを備える。紛体に対し、液体Lが吐出される。フィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きい。液体Lと接触した接着剤Aが液体Lに溶解し、フィラーF間の隙間に浸透する。この浸透によりフィラーF同士が接着される。液体Lは吐出後、次第に揮発する。液体Lが揮発した後も、接着剤Aと液体Lとが接触した接触領域においてフィラーF同士は接着されたままである。この接触領域がそのまま固化し、造形物を形成する。フィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きいため、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積された粉末材料に対し造形液を吐出することで3次元構造物を形成する3次元造形に用いられる粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、3次元構造物を形成する3次元造形装置が種々提案されている。その一例として、特許文献1に開示されている3次元造形装置は、堆積された粉末材料に対し造形液を吐出することで3次元構造物を形成している。即ち、特定の領域に粉末材料を堆積させる。堆積された粉末材料の層をスキージにより平坦化する。造形液を粉末材料の特定領域に吐出する。造形液が粉末材料に吐出されることで、粉末材料の粒子同士が接着される。次に堆積された粉末材料の層の上に更に粉末材料が堆積される。そして、堆積された粉末材料に対し、平坦化、及び造形液の吐出を行う。この粉末材料の堆積、平坦化、及び造形液の吐出を繰り返すことで、3次元構造物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−538191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている3次元造形では、3次元構造物を形成するための粉末材料の特性によっては、3次元構造物が造形中又は造形後に反ってしまい、高精度に3次元構造物を形成することができなかった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高精度に3次元構造物を形成するための粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料であって、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、前記充填材の比重は、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きいことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記充填材の粒径は、前記接着剤の粒径より大きいことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記粉末材料において前記充填材の占める体積率は、前記接着剤の占める体積率より大きいことを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項4記載の本発明は、3次元造形装置であって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の前記粉末材料が堆積される前記堆積面と、前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給部と、前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化部と、平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5記載の本発明は、3次元造形方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給ステップと、前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化ステップと、平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出ステップと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料を開発し、改良を重ねてきた。本発明者は、この粉末材料に対し、実験を行うことにより、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、前記充填材として、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きい粉末材料を選択することにより、3次元構造物を構成する粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来ることを確認した。
【0012】
従って、請求項1記載の粉末材料によれば、粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来るため、複数の粉末材料の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0013】
請求項2記載の粉末材料によれば、接着剤の粒径が充填材の粒径よりも小さいので、接着剤が造形液に速やかに溶解し、接着剤が充填材と充填材との隙間に速やかに浸透する。従って、接着剤が造形液に溶解する間に粉末材料の層が反ってしまうおそれを低減出来る。従って、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0014】
請求項3記載の粉末材料によれば、接着剤の占める体積率が充填材の占める体積率よりも小さいので、接着剤が造形液に速やかに溶解し、接着剤が充填材と充填材との隙間に速やかに浸透する。従って、接着剤が造形液に溶解する間に粉末材料の層が反ってしまうおそれを低減出来る。従って、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0015】
請求項4記載の3次元造形装置、及び請求項5記載の3次元造形方法によれば、粉末材料の層の反りを低減出来るため、複数の粉末材料の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元造形装置1を示す外観図である。
【図2】上記3次元造形装置1の内部構成を示す図である。
【図3】上記3次元造形装置1の内部構成の主要部を示す図である。
【図4】上記3次元造形装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図5】上記3次元造形装置1の一連の処理を示すフローチャートである。
【図6】図5のS3に示す構造形成処理を示すフローチャートである。
【図7】図5のS4に示す吐出処理を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体を説明するための説明図である。
【図9】本発明者が測定した造形物の反りを説明するための説明図である。
【図10】上記実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体に対し、液体Lが吐出された状態を説明するための説明図である。
【図11】液体Lと接触した接着剤Aの液体Lへの溶解、及びフィラーFの液体Lの中における浮遊を説明するための説明図である。
【図12】本実施形態におけるフィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えることができることを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[3次元造形装置の外観]
図1は、本実施形態に係る3次元造形装置1の斜視図である。3次元造形装置1は、造形部2と、設定部3と、を備える。造形部2の開放部2aの図1に示すX軸正方向側には、イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a及びクリアタンク114aが配置される。イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a及びクリアタンク114aは、各々、造形部2内に配置され、図2に示すヘッド110に対して各色の造形液を供給するためのタンクである。設定部3は操作部500と外部インターフェース600とを備える。操作部500は、電源スイッチや造形開始ボタン等、各種設定スイッチを備える。3次元造形装置1は、外部インターフェース600を介して、PC等の外部装置と接続することができる。
【0019】
図2、及び図3を用いて、造形部2について詳細に説明する。図2は、図1に示す造形部2の内部構成の一部をX軸正方向側から見た場合の側面図である。図3は、3次元造形装置1の内部の造形部2の一部を説明するための説明図である。造形部2は、図2に示すように、ヘッド110、ガントリ130、ヘッド吸引機構150、ステージ310、平坦化部320、粉末材料供給部330、粉末回収タンク340、及び制御部4を備える。以後、図2、及び図3に示すステージ310の堆積台310aの堆積面SFに平行な面をXY平面、XY平面に垂直な方向をZ軸方向と定義する。この定義は、他の図面においても共通のものとする。
【0020】
ヘッド110は、図3に示すように、イエローヘッド111と、マゼンタヘッド112と、シアンヘッド113と、クリアヘッド114とを有する。イエローヘッド111は、イエローの造形液を吐出可能に構成される。マゼンタヘッド112は、マゼンタの造形液を吐出可能に構成される。シアンヘッド113は、シアンの造形液を吐出可能に構成される。クリアヘッド114は、無色透明であるクリアの造形液を吐出可能に構成される。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113及びクリアヘッド114は、図1において示した中空のチューブTBを介して、イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a、クリアタンク114aに各々接続される。
【0021】
イエローヘッド111と、マゼンタヘッド112と、シアンヘッド113と、クリアヘッド114は、各々、複数の吐出口を有する。複数の吐出口は、Y軸方向に並列されている。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113、及びクリアヘッド114は、X軸方向に並列されている。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113、及びクリアヘッド114が有する複数の吐出口から、各々、イエロー、マゼンタ、シアン、及びクリアの造形液が吐出される。
【0022】
ガントリ130は、ヘッド110をステージ310の上側に保持する。ガントリ130は、図2に示すY軸方向に延出したレール160により、レール160に沿って摺動可能に保持される。ガントリ130は、図3に示すように、X軸方向に平行に延出するガイドシャフト130aを有する。ヘッド110は、図3に示すように、ガイドシャフト130aに沿って摺動可能に、ガイドシャフト130aに取り付けられる。ヘッド110は、図示しないタイミングベルトとそのタイミングベルトを移動させるモータとによってガイドシャフト130aに沿ってX軸方向に移動される。ガントリ130は、図示しないタイミングベルトとそのタイミングベルトを移動させるモータとによって図2に示すレール160に沿ってY軸方向に移動される。このように、ヘッド110とガントリ130とが移動されることにより、ヘッド110が堆積面SFに対し、X軸方向、及びY軸方向に相対移動される。
【0023】
ヘッド吸引機構150はキャップ150aを有する。ヘッド吸引機構150は、非図示の昇降機構によってZ軸方向に昇降可能に構成される。ヘッド吸引機構150は、非図示のポンプによって、キャップ150aの内部を吸引可能に構成される。ヘッド110が、ヘッド吸引機構150の上側に移動されると、ヘッド吸引機構150はZ軸正方向に上昇する。上昇したヘッド吸引機構150は、ヘッド110のZ軸負方向側の面に密着し、各色のヘッド111〜114の下面に存在する複数の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引を行う。
【0024】
ステージ310は、堆積台310aと堆積台移動部310bとを備える。粉末材料供給部330から供給される粉末材料が堆積台310aの堆積面SF上に堆積される。堆積台移動部310bは、図示しない堆積台移動モータにより駆動される。堆積台移動部310bが駆動されると、堆積台移動部310bは、堆積台310aをZ軸方向に移動させる。この移動により、ヘッド110が、堆積面SFに対し、Z軸方向に相対移動される。
【0025】
平坦化部320は、図2に示すように、造形部2のY軸負方向側に固定される。平坦化部320は、スキージ部320aとスキージシャフト320bとを備える。スキージ部320aは、スキージシャフト320bに沿って摺動可能に、スキージシャフト320bに取り付けられる。スキージ部320aは、図示しないモータによりスキージシャフト320bに沿って摺動される。スキージシャフト320bは、図2に示すように造形部2のY軸負方向側に固定される。スキージシャフト320bは、Y軸正方向側に延出する。堆積面SFに堆積された粉末材料は、スキージシャフト320bに沿って摺動するスキージ部320aによって平坦化される。平坦化処理の基本構成は、特表2004−538191号公報に開示されている。
【0026】
粉末材料供給部330は、粉末材料を収容可能な粉末材料タンク330aと粉末供給路330bとを備える。粉末材料タンク330aに収容された粉末材料は、粉末供給路330b内を通って、堆積面SFに供給される。造形対象領域を形成しない不要な粉末材料は、粉末回収タンク340により回収される。
【0027】
制御部4は、CPU、RAM、フラッシュROM等を有するコンピューターにより構成される。制御部4は、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの駆動制御を行う。ヘッド110のX軸方向への移動やガントリ130のY軸方向への移動により、ヘッド110が堆積面SF上に配置されることで、堆積面SFに堆積された粉末材料に各色の造形液が吐出可能となる。
【0028】
[3次元造形装置の電気的構成]
図4を用いて、3次元造形装置1の電気的構成について説明する。図4は、3次元造形装置1の電気的構成を示す図である。制御部4と、3次元造形装置1の各電気的構成部分とは、バス700により接続される。
【0029】
図4に示すX軸モータ210xは、ヘッド110をX軸方向に移動させる。Y軸モータ210yは、ガントリ130をY軸方向に移動させる。Z軸モータ210zは、堆積台移動部310bをZ軸方向に移動させる。X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、各々、エンコーダを内蔵するステッピングモータと、モータドライバとにより構成される。X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、エンコーダを有するため、各々、ヘッド110、ガントリ130、堆積台移動部310bの移動量及び原点位置を検出可能である。検出されたステージ310の移動量及び原点位置のデータはバス700を介して制御部4に供給される。
【0030】
吐出制御回路120は、制御部4から供給される吐出信号と色データとに従って、造形液の吐出タイミングと吐出すべき造形液の色を決定する。決定された造形液の色は、色選択信号としてヘッド110に供給される。ヘッド110は、色選択信号に従って、各色のヘッド111〜114の内、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0031】
ヘッド吸引機構150は、制御部4から供給される信号に従い、Z軸方向への昇降、キャップの装着、及び吸引を行う。
【0032】
制御部4は、図4に示すように、CPU41と、RAM42と、ROM43と、を備える。CPU41は、3次元造形装置1の各構成の駆動制御等の制御を行う。RAM42は、3次元造形装置1により造形される3次元構造物の色データ、及び座標データ等の各種データを記憶する。ROM43は、CPU41により実行される造形の手順に関するプログラム等の各種プログラムをあらかじめ記憶している。
【0033】
CPU41は、ヘッド110を制御し、ヘッド110に着色造形液、及び無色造形液を吐出させる。具体的には、ヘッド110に着色造形液、及び無色造形液を吐出させるための吐出信号を、ヘッド110に供給する。吐出信号は、各ヘッド111〜114に内蔵されているピエゾ素子に供給される電圧値の時間変化を示す信号である。
【0034】
CPU41は、吐出制御回路120に吐出信号と色データとを供給することで、ヘッド110を制御する。色データは、RAM42に記憶されている。吐出制御回路120は、色データに基づき、吐出すべき造形液の色を決定する。造形液の色は、色選択信号としてヘッド110に供給される。ヘッド110は、吐出制御回路120からの色選択信号に従って、各色のヘッド111〜114の内、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0035】
CPU41は、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zを制御する。CPU41は、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zの各々に駆動信号を供給する。駆動信号が供給されると、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、各々、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bを、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させる。
【0036】
CPU41は、粉末材料供給部330を制御し、粉末材料を堆積面SFに供給させる。CPU41は、平坦化部320を制御し、堆積面SFに堆積された粉末材料を平坦化させる。CPU41は、ヘッド吸引機構150を制御する。この制御により、ヘッド吸引機構150はZ軸方向への昇降、及びキャップの装着、及び吸引を行う。
【0037】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種プログラムに基づいて、3次元造形装置1を制御する。ROM43に記憶されている各種プログラムは、3次元造形装置1による造形の手順に関するプログラムを含む。CPU41は、ROM43に記憶されている手順に関するプログラムに基づいて、ある時点において着色、平坦化、及び吸引などの処理のうちどの処理を行うかを決定する。CPU41により、3次元造形装置1の各構成による処理の順序が決定され、また、異なる複数の処理の開始時点の同期がとられる。
【0038】
RAM42により記憶される座標データ、及び色データは、ユーザが外部装置であるパーソナルコンピューター(Personal Computer、以後「PC」と記す)800を操作することにより生成される。生成されたデータは外部インターフェース600、及びバス700を介して、RAM42に供給される。
【0039】
座標データは、3次元造形装置1により造形される3次元構造物の座標(X、Y、Z)のデータである。色データは、座標(X、Y、Z)における3次元構造物の色のデータである。ユーザがPC800を操作し、仮想の3次元構造物の立体データが生成される。PC800により立体データに基づいて座標データ、及び色データが生成される。RAM42により記憶される座標データは、PC800上の仮想の堆積面上の空間に対し割り振られた直交座標系における座標位置(X、Y、Z)である。仮想の堆積面上の空間に対し割り振られた直交座標系における座標位置(X、Y、Z)は、堆積面SF上の直交座標系における座標位置(X、Y、Z)と対応している。色データは座標位置(X、Y、Z)における仮想の3次元構造物の色のデータである。
【0040】
CPU41は、RAM42から、特定の座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データを読み出す。CPU41は、特定の座標位置Zにおける全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給されるように、粉末材料供給部330を制御する。具体的には、CPU41は、全ての座標(X、Y)により構成される領域の面積と堆積台移動部310bのZ軸方向の移動距離とから規定される1層分の堆積容積以上の量の粉末材料を、堆積面SFに対し粉末材料供給部330に供給させる。堆積面SFに対し供給された粉末材料は、平坦化部320により平坦化される。このように、特定の座標位置Zにおける全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給され、平坦化されることで、特定の座標位置Zにおける造形対象領域が堆積面SF上に形成される。造形対象領域が堆積面SF上に形成された後、ヘッド110により造形液が吐出されることで、着色、及び造形が行われる。
【0041】
CPU41は、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの移動量及び原点位置のデータとRAM42に記憶されている座標データとに基づいて、ヘッド110の現在位置の座標位置(X、Y、Z)を決定する。ステージ310の移動量及び原点位置のデータはX軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zの各エンコーダにより検出される。ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの移動量及び原点位置のデータは、バス700を介して、CPU41に供給される。
【0042】
[3次元造形装置の処理]
以下、図5を用いて3次元造形装置1の一連の処理について説明する。図5は、3次元造形装置1の一連の処理を示すフローチャートである。図6は、図5に示す一連の処理のうちの構造形成処理を示すフローチャートである。図7は、図5に示す一連の処理のうちの吐出処理を示すフローチャートである。一連の処理は、制御部4により実行される。
【0043】
図5に示す処理では、先ず、制御部4に電源ONの指令が供給され、3次元造形装置1の駆動が開始される。3次元造形装置1の駆動が開始されると、初期化処理が行われる(ステップS1、以後S1と記す)。具体的には、ヘッド吸引機構150により、各色のヘッド111〜114の下面に存在する複数の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引が行われる。この吸引により、各色のヘッド111〜114が吐出可能な状態となる。また、RAM42に記憶されているデータが一旦消去される。
【0044】
初期化処理が行われると、データが記憶されているか否かが判定される(S2)。RAM42によりデータが記憶されていないと判定されると(S2:No)、ユーザにより3次元構造物に関するデータがPC800、及びバス700を介して制御部4に供給されていないため、処理がS2に戻る。RAM42によりデータが記憶されていると判定されると(S2:Yes)、処理S3に移る。最初にS2からS3に処理が移るとき、RAM42により記憶されている座標位置Zのうち、最小の座標位置Zが現在の座標位置Zとして指定される。座標位置Zは、造形される3次元構造物のZ軸方向の座標位置Zとして、RAM42に記憶されている。この現在の座標位置Zの指定は、制御部4により行われる。
【0045】
処理がS3に移ると、構造形成処理が行われる(S3)。S3における構造形成処理により、堆積面SFにある座標位置Zにおける1層分の粉末材料が供給される。また、堆積面SFに供給された粉末材料が平坦化される。この際、余分な粉末材料は平坦化部320により堆積面SFから粉末回収タンク340へ落下回収される。
【0046】
構造形成処理が行われると、吐出処理が行われる(S4)。S4における吐出処理により、堆積面SFに供給された粉末材料に造形液が吐出される。造形液の吐出により、粉末材料が結合される。粉末材料が結合されることで、造形される3次元構造物のうちの1層の造形がなされる。なお、下層がある場合は、現在造形された層と下層との結合造形もなされる。また、造形液の吐出により、造形と同時に着色がなされる。
【0047】
吐出処理が行われると、造形終了か否かが判定される(S5)。具体的には、制御部4に電源OFFの指令が供給されたか、または図7において示したRAM42に記憶されている全ての座標位置Zに対する処理が完了したかが判定される。造形終了でないと判定されると(S5:No)、処理がS6に移る。処理がS6に移ると、現在の座標位置Zが、RAM42に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更される(S6)。S6において次の座標位置Zは、RAM42に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置ZよりもZ軸正方向に大きい座標位置Zである。S6における変更は、制御部4により行われる。座標位置Zは、造形される3次元構造物のZ軸方向の座標位置Zとして、RAM42に記憶されている。複数の層から形成される3次元構造物のうちの1層に対応した座標位置Zと対応付けられた座標位置(X、Y)の座標データ、及び色データに基づき、構造形成処理、及び吐出処理が行われる。そして、S6において、座標位置Zが、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更されることで、S3、及びS4の処理により、各々、3次元構造物のうちの次の層の構造形成処理、及び次の層に対する吐出処理が行われる。このように、3次元構造物の着色、及び造形が1層ずつ為される。S5において、造形終了と判定されると(S5:Yes)、全ての処理が終了する。
【0048】
図6を用いて、図5に示す動作制御におけるS3の構造形成処理について具体的に説明する。図6に示す構造形成処理では、まず現在の座標位置ZにおけるデータがRAM42から読み出される(SA1)。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0049】
座標データが読み出されると、粉末供給処理が行われる(SA2)。具体的には、CPU41により、粉末材料供給部330が制御される。この制御により、現在の座標位置Zにおける堆積面SF上に対し、粉末材料が供給される。
【0050】
粉末供給処理が行われると、粉末材料の平坦化処理が行われる(SA3)。具体的には、CPU41により、平坦化部320が制御される。この制御により、堆積面SFに堆積された粉末材料が所定の造形対象領域を含む領域内で平坦化される。
【0051】
平坦化処理が行われると図6に示す構造形成処理が完了し、処理が図5に示すS4の吐出処理に移る。例えば、現在の座標位置ZがRAM42により記憶されている最初の座標位置Zである場合、図6に示す構造形成処理により、粉末材料の層が形成される。以後、説明する吐出処理によりこの層の造形対象領域に対し造形液が吐出される。図6に示す構造形成処理により、形成される造形対象領域外の領域は、単に粉末材料が堆積された領域である。従って、この造形対象領域外の領域に、造形液は吐出されない。
【0052】
図7を用いて、図5に示す動作制御におけるS4の吐出処理について具体的に説明する。図7に示す吐出処理では、まず現在の座標位置ZにおけるデータがRAM42から読み出される(SB1)。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標位置(X、Y)の座標データ、及びその座標データにおける各座標位置(X、Y)と対応付けて記憶されている色データである。データが読み出されると、ヘッド110が初期位置に相対移動される(SB2)。
【0053】
ヘッド110が初期位置に相対移動されると、移動吐出処理が実行される(SB3)。即ち、ヘッド110が相対移動されながら、造形液の吐出が行われる。具体的には、ヘッド110が移動され、SB1において読み出された特定の座標位置(X、Y)にヘッド110が到達すると、その座標位置(X、Y)と対応付けられている色の造形液が吐出される。SB1において読み出された全ての座標データに関し、このSB3の処理が行われることにより、図5のS3に示す構造形成処理により形成された粉末材料の層に対する造形、及び着色がなされる。SB1において読み出された全ての座標データに関し、このSB
3の処理が行われると、図7に示す吐出処理が終了する。
【0054】
[実験結果]
本発明者は、上記のような3次元造形に用いられる粉末材料を開発し、改良を重ねてきた。本発明者は、この粉末材料に対し、実験を行うことにより、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、造形液に溶解することで充填材同士を接着する接着剤と、を備え、充填材として、粉末材料に吐出される造形液の比重より大きい粉末材料を選択することにより、3次元構造物を構成する粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来ることを確認した。以下にその実験結果を示す。
【0055】
実験方法としては、以下に示すような方法を用いた。
(1)まず、堆積面に堆積させた紛体を平らな層になるように平坦化した。
(2)紛体の上に液体を吐出した。その際、液体を吐出した領域、即ち造形対象領域は、10mm×30mmの範囲とした。
(3)紛体が固化することで出来た約10mm×30mm×0.4mmの体積の造形物の反りを測定した。
【0056】
表1は、各種粉末材料(表1において「紛体」と記す。以後、「紛体」と記す。)に対し、造形液(表1において「液体」と記す。以後、「液体」と記す。)を吐出した際の造形物の反りの測定結果を示す。液体として、H2O/グリセリン(=90wt%/10wt%)であり、比重が1.02の液体を用いた。紛体として、表1に示す粒子径、及び比重を有する各種充填剤(表1において「フィラー」と記す。以後、「フィラー」と記す。)と、表1に示す粒子径の接着剤と、を表1に示す配合比にて混合した各種紛体を用いた。本実施形態に係る紛体は、図8に示すように、フィラーFと接着剤Aとを備える。表1に示す造形物の反りとは、図9に示すように、高さ方向における形成された造形物MDの表面SUの位置の最高値MAXと最低値MINとの差である。本実施形態に係る紛体は実験No.3〜5の液体Lの比重より大きい比重を有するフィラーを含んだ紛体である。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す実験No.1の実験結果と実験No.2〜5の実験結果とを比較すると、実験No.1の造形物の反りが非常に大きいことが分かる。従って、本実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体を3次元造形に用いる場合と比較して、紛体がフィラーFを備えない場合、造形物の反りが非常に大きくなることが分かる。一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体を含む実験No.2〜5の紛体は、フィラーFと接着剤Aとを備えるため、造形液吐出後の造形物の反りを抑え、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0059】
表1に示す実験No.2の実験結果と本実施形態に係る実験No.3〜5の実験結果とを比較すると、実験No.2の造形物の反りが実験No.3〜5の造形物の反りよりも大きいことが分かる。従って、フィラーFの比重が、紛体に吐出される液体Lの比重より小さい場合(実験No.2ではフィラーF:0.45<液体L:1.02である)、造形物の反りが大きくなることが分かる。一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体が備えるフィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きく、この場合に、造形液吐出後の造形物の反りが抑えられ、高精度に3次元構造物を形成することが出来ることが分かる。
【0060】
本実施形態に係る紛体のように、フィラーFの比重が紛体に吐出される液体Lの比重より大きい場合に、造形物の反りが抑えられるメカニズムについては種々考えられる。しかし、概ね以下に示すようなメカニズムに基づいて、本実施形態の紛体は、造形物の反りを抑えるという効果を奏するものと思われる。
【0061】
即ち、図8において示したようなフィラーFと接着剤Aとを備える紛体に対し、図10に示すように液体Lが吐出される。すると、図12に示すように液体Lと接触した接着剤Aが液体Lに溶解し、フィラーF間の隙間に浸透する。この浸透によりフィラーF同士が接着される。一方、図12に示すように、液体Lと接触していない接着剤Aは液体Lに溶解しない。よって、図12に示すように、この非接触領域においては、フィラーF同士は接着されない。なお、図12に示す液体Lは吐出後、次第に揮発する。液体Lが揮発した後も、接着剤Aと液体Lとが接触した接触領域においてフィラーF同士は接着されたままである。よって、この接触領域がそのまま固化し、造形物を形成する。
【0062】
実験No.2に示すようにフィラーFの比重が、紛体に吐出される液体Lの比重より小さい場合、図11に示すように、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊してしまう。実験No.2に示す紛体が3次元造形に用いられる場合、この浮遊した状態で固化が起きるため形成される造形物の反りが起きてしまうものと考えられる。
【0063】
一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体が3次元造形に用いられる場合、図12に示すように、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えるという効果を奏するものと思われる。
【0064】
以上示したように、本発明者は、紛体に吐出される液体Lの比重より大きい比重を有するフィラーFを含む紛体を3次元造形に用いることにより、3次元構造物を構成する紛体の層の液体L吐出後の反りを低減出来ることを確認した。従って、本実施形態に係る紛体によれば、紛体の層の液体L吐出後の反りを低減出来るため、複数の紛体の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0065】
なお、実験No.3に示す実験結果と実験No.4に示す実験結果とを比較すると、フィラーFの粒径が、接着剤Aの粒径より大きい場合に、造形物の反りを可及的に小さくできることが分かる。即ち、実験No.3、及びの実験No.4のフィラーFの粒径は、いずれも40μmである。実験No.3の接着剤Aの粒径は、10μmであるため、実験No.3のフィラーFの粒径は、接着剤Aの粒径より大きい。一方、実験No.4の接着剤Aの粒径は、120μmであるため、実験No.4のフィラーFの粒径は、接着剤Aの粒径より小さい。実験No.3の造形物の反りは、0.01mm以下であったのに対して、実験No.4の造形物の反りは、0.05mmと大きい。従って、本実施形態に係る紛体によれば、接着剤Aの粒径より大きい粒径のフィラーFを適用することで、造形物の反りを可及的に小さくし、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0066】
また、実験No.3に示す実験結果と実験No.5に示す実験結果とを比較すると、紛体においてフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より大きい場合に、造形物の反りを可及的に小さくできることが分かる。即ち、実験No.3の配合比(フィラー/接着剤)は、80/20であるのに対し、実験No.5の配合比は、33/67とフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より小さい。実験No.3の造形物の反りは、0.01mm以下であったのに対して、実験No.5の造形物の反りは、0.03と大きい。従って、本実施形態に係る紛体によれば、紛体においてフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より大きい紛体を適用することで、造形物の反りを可及的に小さくし、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0067】
(変形例)
本実施形態において、座標データ、及び色データは、PC800から、外部インターフェース600、及びバス700を介して取得していた。しかし、これに限らず、例えば、PCから取得した各種データを基に、制御部により座標データ、及び色データを生成してもよい。この場合、制御部は、座標データ、及び色データを生成する演算部を備える。データ記憶部は、演算部により生成された座標データ、及び色データを取得する。
【0068】
本実施形態において、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bが各々X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動されることにより、ヘッド110が堆積面SFに対しX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に相対移動されていた。しかし、これに限らず、例えば、ステージがX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動されることによりヘッドが堆積面に対しX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に相対移動されてもよい。
【0069】
本実施形態において、粉末材料の供給は、粉末材料供給部330によりなされていた。また、堆積面SFに堆積された粉末材料の平坦化は、平坦化部320によりなされていた。しかし、これに限らず、例えば、粉末材料の供給、及び平坦化は、作業者によりなされてもよい。
【0070】
本実施形態において、複数の層により3次元構造物が形成されていたが、これに限らず、例えば、1層のみで3次元構造物が形成されてもよい。また、この場合、RAM42等のデータ記憶部に記憶されるZ座標位置は、1つとなる。
【0071】
本実施形態において、フィラーFは、炭酸カルシウムであり、接着剤Aはポリビニルアルコール、液体Lは、H2O/グリセリンであったが、これに限らず、フィラーの比重が、紛体に吐出される液体の比重より大きいという条件のもと、材料は何であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 3次元造形装置
110 ヘッド
111 イエローヘッド
112 マゼンタヘッド
113 シアンヘッド
114 クリアヘッド
130 ガントリ
210x X軸モータ
210y Y軸モータ
310 ステージ
310a 堆積台
310b 堆積台移動部
330 粉末材料供給部
4 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
SF 堆積面
F フィラー
A 接着剤
L 液体
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積された粉末材料に対し造形液を吐出することで3次元構造物を形成する3次元造形に用いられる粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、3次元構造物を形成する3次元造形装置が種々提案されている。その一例として、特許文献1に開示されている3次元造形装置は、堆積された粉末材料に対し造形液を吐出することで3次元構造物を形成している。即ち、特定の領域に粉末材料を堆積させる。堆積された粉末材料の層をスキージにより平坦化する。造形液を粉末材料の特定領域に吐出する。造形液が粉末材料に吐出されることで、粉末材料の粒子同士が接着される。次に堆積された粉末材料の層の上に更に粉末材料が堆積される。そして、堆積された粉末材料に対し、平坦化、及び造形液の吐出を行う。この粉末材料の堆積、平坦化、及び造形液の吐出を繰り返すことで、3次元構造物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−538191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている3次元造形では、3次元構造物を形成するための粉末材料の特性によっては、3次元構造物が造形中又は造形後に反ってしまい、高精度に3次元構造物を形成することができなかった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高精度に3次元構造物を形成するための粉末材料、粉末材料を用いた3次元造形装置、粉末材料を用いた3次元造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料であって、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、前記充填材の比重は、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きいことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記充填材の粒径は、前記接着剤の粒径より大きいことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記粉末材料において前記充填材の占める体積率は、前記接着剤の占める体積率より大きいことを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項4記載の本発明は、3次元造形装置であって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の前記粉末材料が堆積される前記堆積面と、前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給部と、前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化部と、平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5記載の本発明は、3次元造形方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給ステップと、前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化ステップと、平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出ステップと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料を開発し、改良を重ねてきた。本発明者は、この粉末材料に対し、実験を行うことにより、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、前記充填材として、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きい粉末材料を選択することにより、3次元構造物を構成する粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来ることを確認した。
【0012】
従って、請求項1記載の粉末材料によれば、粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来るため、複数の粉末材料の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0013】
請求項2記載の粉末材料によれば、接着剤の粒径が充填材の粒径よりも小さいので、接着剤が造形液に速やかに溶解し、接着剤が充填材と充填材との隙間に速やかに浸透する。従って、接着剤が造形液に溶解する間に粉末材料の層が反ってしまうおそれを低減出来る。従って、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0014】
請求項3記載の粉末材料によれば、接着剤の占める体積率が充填材の占める体積率よりも小さいので、接着剤が造形液に速やかに溶解し、接着剤が充填材と充填材との隙間に速やかに浸透する。従って、接着剤が造形液に溶解する間に粉末材料の層が反ってしまうおそれを低減出来る。従って、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0015】
請求項4記載の3次元造形装置、及び請求項5記載の3次元造形方法によれば、粉末材料の層の反りを低減出来るため、複数の粉末材料の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元造形装置1を示す外観図である。
【図2】上記3次元造形装置1の内部構成を示す図である。
【図3】上記3次元造形装置1の内部構成の主要部を示す図である。
【図4】上記3次元造形装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図5】上記3次元造形装置1の一連の処理を示すフローチャートである。
【図6】図5のS3に示す構造形成処理を示すフローチャートである。
【図7】図5のS4に示す吐出処理を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体を説明するための説明図である。
【図9】本発明者が測定した造形物の反りを説明するための説明図である。
【図10】上記実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体に対し、液体Lが吐出された状態を説明するための説明図である。
【図11】液体Lと接触した接着剤Aの液体Lへの溶解、及びフィラーFの液体Lの中における浮遊を説明するための説明図である。
【図12】本実施形態におけるフィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えることができることを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[3次元造形装置の外観]
図1は、本実施形態に係る3次元造形装置1の斜視図である。3次元造形装置1は、造形部2と、設定部3と、を備える。造形部2の開放部2aの図1に示すX軸正方向側には、イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a及びクリアタンク114aが配置される。イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a及びクリアタンク114aは、各々、造形部2内に配置され、図2に示すヘッド110に対して各色の造形液を供給するためのタンクである。設定部3は操作部500と外部インターフェース600とを備える。操作部500は、電源スイッチや造形開始ボタン等、各種設定スイッチを備える。3次元造形装置1は、外部インターフェース600を介して、PC等の外部装置と接続することができる。
【0019】
図2、及び図3を用いて、造形部2について詳細に説明する。図2は、図1に示す造形部2の内部構成の一部をX軸正方向側から見た場合の側面図である。図3は、3次元造形装置1の内部の造形部2の一部を説明するための説明図である。造形部2は、図2に示すように、ヘッド110、ガントリ130、ヘッド吸引機構150、ステージ310、平坦化部320、粉末材料供給部330、粉末回収タンク340、及び制御部4を備える。以後、図2、及び図3に示すステージ310の堆積台310aの堆積面SFに平行な面をXY平面、XY平面に垂直な方向をZ軸方向と定義する。この定義は、他の図面においても共通のものとする。
【0020】
ヘッド110は、図3に示すように、イエローヘッド111と、マゼンタヘッド112と、シアンヘッド113と、クリアヘッド114とを有する。イエローヘッド111は、イエローの造形液を吐出可能に構成される。マゼンタヘッド112は、マゼンタの造形液を吐出可能に構成される。シアンヘッド113は、シアンの造形液を吐出可能に構成される。クリアヘッド114は、無色透明であるクリアの造形液を吐出可能に構成される。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113及びクリアヘッド114は、図1において示した中空のチューブTBを介して、イエロータンク111a、マゼンタタンク112a、シアンタンク113a、クリアタンク114aに各々接続される。
【0021】
イエローヘッド111と、マゼンタヘッド112と、シアンヘッド113と、クリアヘッド114は、各々、複数の吐出口を有する。複数の吐出口は、Y軸方向に並列されている。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113、及びクリアヘッド114は、X軸方向に並列されている。イエローヘッド111、マゼンタヘッド112、シアンヘッド113、及びクリアヘッド114が有する複数の吐出口から、各々、イエロー、マゼンタ、シアン、及びクリアの造形液が吐出される。
【0022】
ガントリ130は、ヘッド110をステージ310の上側に保持する。ガントリ130は、図2に示すY軸方向に延出したレール160により、レール160に沿って摺動可能に保持される。ガントリ130は、図3に示すように、X軸方向に平行に延出するガイドシャフト130aを有する。ヘッド110は、図3に示すように、ガイドシャフト130aに沿って摺動可能に、ガイドシャフト130aに取り付けられる。ヘッド110は、図示しないタイミングベルトとそのタイミングベルトを移動させるモータとによってガイドシャフト130aに沿ってX軸方向に移動される。ガントリ130は、図示しないタイミングベルトとそのタイミングベルトを移動させるモータとによって図2に示すレール160に沿ってY軸方向に移動される。このように、ヘッド110とガントリ130とが移動されることにより、ヘッド110が堆積面SFに対し、X軸方向、及びY軸方向に相対移動される。
【0023】
ヘッド吸引機構150はキャップ150aを有する。ヘッド吸引機構150は、非図示の昇降機構によってZ軸方向に昇降可能に構成される。ヘッド吸引機構150は、非図示のポンプによって、キャップ150aの内部を吸引可能に構成される。ヘッド110が、ヘッド吸引機構150の上側に移動されると、ヘッド吸引機構150はZ軸正方向に上昇する。上昇したヘッド吸引機構150は、ヘッド110のZ軸負方向側の面に密着し、各色のヘッド111〜114の下面に存在する複数の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引を行う。
【0024】
ステージ310は、堆積台310aと堆積台移動部310bとを備える。粉末材料供給部330から供給される粉末材料が堆積台310aの堆積面SF上に堆積される。堆積台移動部310bは、図示しない堆積台移動モータにより駆動される。堆積台移動部310bが駆動されると、堆積台移動部310bは、堆積台310aをZ軸方向に移動させる。この移動により、ヘッド110が、堆積面SFに対し、Z軸方向に相対移動される。
【0025】
平坦化部320は、図2に示すように、造形部2のY軸負方向側に固定される。平坦化部320は、スキージ部320aとスキージシャフト320bとを備える。スキージ部320aは、スキージシャフト320bに沿って摺動可能に、スキージシャフト320bに取り付けられる。スキージ部320aは、図示しないモータによりスキージシャフト320bに沿って摺動される。スキージシャフト320bは、図2に示すように造形部2のY軸負方向側に固定される。スキージシャフト320bは、Y軸正方向側に延出する。堆積面SFに堆積された粉末材料は、スキージシャフト320bに沿って摺動するスキージ部320aによって平坦化される。平坦化処理の基本構成は、特表2004−538191号公報に開示されている。
【0026】
粉末材料供給部330は、粉末材料を収容可能な粉末材料タンク330aと粉末供給路330bとを備える。粉末材料タンク330aに収容された粉末材料は、粉末供給路330b内を通って、堆積面SFに供給される。造形対象領域を形成しない不要な粉末材料は、粉末回収タンク340により回収される。
【0027】
制御部4は、CPU、RAM、フラッシュROM等を有するコンピューターにより構成される。制御部4は、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの駆動制御を行う。ヘッド110のX軸方向への移動やガントリ130のY軸方向への移動により、ヘッド110が堆積面SF上に配置されることで、堆積面SFに堆積された粉末材料に各色の造形液が吐出可能となる。
【0028】
[3次元造形装置の電気的構成]
図4を用いて、3次元造形装置1の電気的構成について説明する。図4は、3次元造形装置1の電気的構成を示す図である。制御部4と、3次元造形装置1の各電気的構成部分とは、バス700により接続される。
【0029】
図4に示すX軸モータ210xは、ヘッド110をX軸方向に移動させる。Y軸モータ210yは、ガントリ130をY軸方向に移動させる。Z軸モータ210zは、堆積台移動部310bをZ軸方向に移動させる。X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、各々、エンコーダを内蔵するステッピングモータと、モータドライバとにより構成される。X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、エンコーダを有するため、各々、ヘッド110、ガントリ130、堆積台移動部310bの移動量及び原点位置を検出可能である。検出されたステージ310の移動量及び原点位置のデータはバス700を介して制御部4に供給される。
【0030】
吐出制御回路120は、制御部4から供給される吐出信号と色データとに従って、造形液の吐出タイミングと吐出すべき造形液の色を決定する。決定された造形液の色は、色選択信号としてヘッド110に供給される。ヘッド110は、色選択信号に従って、各色のヘッド111〜114の内、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0031】
ヘッド吸引機構150は、制御部4から供給される信号に従い、Z軸方向への昇降、キャップの装着、及び吸引を行う。
【0032】
制御部4は、図4に示すように、CPU41と、RAM42と、ROM43と、を備える。CPU41は、3次元造形装置1の各構成の駆動制御等の制御を行う。RAM42は、3次元造形装置1により造形される3次元構造物の色データ、及び座標データ等の各種データを記憶する。ROM43は、CPU41により実行される造形の手順に関するプログラム等の各種プログラムをあらかじめ記憶している。
【0033】
CPU41は、ヘッド110を制御し、ヘッド110に着色造形液、及び無色造形液を吐出させる。具体的には、ヘッド110に着色造形液、及び無色造形液を吐出させるための吐出信号を、ヘッド110に供給する。吐出信号は、各ヘッド111〜114に内蔵されているピエゾ素子に供給される電圧値の時間変化を示す信号である。
【0034】
CPU41は、吐出制御回路120に吐出信号と色データとを供給することで、ヘッド110を制御する。色データは、RAM42に記憶されている。吐出制御回路120は、色データに基づき、吐出すべき造形液の色を決定する。造形液の色は、色選択信号としてヘッド110に供給される。ヘッド110は、吐出制御回路120からの色選択信号に従って、各色のヘッド111〜114の内、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0035】
CPU41は、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zを制御する。CPU41は、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zの各々に駆動信号を供給する。駆動信号が供給されると、X軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zは、各々、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bを、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させる。
【0036】
CPU41は、粉末材料供給部330を制御し、粉末材料を堆積面SFに供給させる。CPU41は、平坦化部320を制御し、堆積面SFに堆積された粉末材料を平坦化させる。CPU41は、ヘッド吸引機構150を制御する。この制御により、ヘッド吸引機構150はZ軸方向への昇降、及びキャップの装着、及び吸引を行う。
【0037】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種プログラムに基づいて、3次元造形装置1を制御する。ROM43に記憶されている各種プログラムは、3次元造形装置1による造形の手順に関するプログラムを含む。CPU41は、ROM43に記憶されている手順に関するプログラムに基づいて、ある時点において着色、平坦化、及び吸引などの処理のうちどの処理を行うかを決定する。CPU41により、3次元造形装置1の各構成による処理の順序が決定され、また、異なる複数の処理の開始時点の同期がとられる。
【0038】
RAM42により記憶される座標データ、及び色データは、ユーザが外部装置であるパーソナルコンピューター(Personal Computer、以後「PC」と記す)800を操作することにより生成される。生成されたデータは外部インターフェース600、及びバス700を介して、RAM42に供給される。
【0039】
座標データは、3次元造形装置1により造形される3次元構造物の座標(X、Y、Z)のデータである。色データは、座標(X、Y、Z)における3次元構造物の色のデータである。ユーザがPC800を操作し、仮想の3次元構造物の立体データが生成される。PC800により立体データに基づいて座標データ、及び色データが生成される。RAM42により記憶される座標データは、PC800上の仮想の堆積面上の空間に対し割り振られた直交座標系における座標位置(X、Y、Z)である。仮想の堆積面上の空間に対し割り振られた直交座標系における座標位置(X、Y、Z)は、堆積面SF上の直交座標系における座標位置(X、Y、Z)と対応している。色データは座標位置(X、Y、Z)における仮想の3次元構造物の色のデータである。
【0040】
CPU41は、RAM42から、特定の座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データを読み出す。CPU41は、特定の座標位置Zにおける全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給されるように、粉末材料供給部330を制御する。具体的には、CPU41は、全ての座標(X、Y)により構成される領域の面積と堆積台移動部310bのZ軸方向の移動距離とから規定される1層分の堆積容積以上の量の粉末材料を、堆積面SFに対し粉末材料供給部330に供給させる。堆積面SFに対し供給された粉末材料は、平坦化部320により平坦化される。このように、特定の座標位置Zにおける全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給され、平坦化されることで、特定の座標位置Zにおける造形対象領域が堆積面SF上に形成される。造形対象領域が堆積面SF上に形成された後、ヘッド110により造形液が吐出されることで、着色、及び造形が行われる。
【0041】
CPU41は、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの移動量及び原点位置のデータとRAM42に記憶されている座標データとに基づいて、ヘッド110の現在位置の座標位置(X、Y、Z)を決定する。ステージ310の移動量及び原点位置のデータはX軸モータ210x、Y軸モータ210y、及びZ軸モータ210zの各エンコーダにより検出される。ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bの移動量及び原点位置のデータは、バス700を介して、CPU41に供給される。
【0042】
[3次元造形装置の処理]
以下、図5を用いて3次元造形装置1の一連の処理について説明する。図5は、3次元造形装置1の一連の処理を示すフローチャートである。図6は、図5に示す一連の処理のうちの構造形成処理を示すフローチャートである。図7は、図5に示す一連の処理のうちの吐出処理を示すフローチャートである。一連の処理は、制御部4により実行される。
【0043】
図5に示す処理では、先ず、制御部4に電源ONの指令が供給され、3次元造形装置1の駆動が開始される。3次元造形装置1の駆動が開始されると、初期化処理が行われる(ステップS1、以後S1と記す)。具体的には、ヘッド吸引機構150により、各色のヘッド111〜114の下面に存在する複数の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引が行われる。この吸引により、各色のヘッド111〜114が吐出可能な状態となる。また、RAM42に記憶されているデータが一旦消去される。
【0044】
初期化処理が行われると、データが記憶されているか否かが判定される(S2)。RAM42によりデータが記憶されていないと判定されると(S2:No)、ユーザにより3次元構造物に関するデータがPC800、及びバス700を介して制御部4に供給されていないため、処理がS2に戻る。RAM42によりデータが記憶されていると判定されると(S2:Yes)、処理S3に移る。最初にS2からS3に処理が移るとき、RAM42により記憶されている座標位置Zのうち、最小の座標位置Zが現在の座標位置Zとして指定される。座標位置Zは、造形される3次元構造物のZ軸方向の座標位置Zとして、RAM42に記憶されている。この現在の座標位置Zの指定は、制御部4により行われる。
【0045】
処理がS3に移ると、構造形成処理が行われる(S3)。S3における構造形成処理により、堆積面SFにある座標位置Zにおける1層分の粉末材料が供給される。また、堆積面SFに供給された粉末材料が平坦化される。この際、余分な粉末材料は平坦化部320により堆積面SFから粉末回収タンク340へ落下回収される。
【0046】
構造形成処理が行われると、吐出処理が行われる(S4)。S4における吐出処理により、堆積面SFに供給された粉末材料に造形液が吐出される。造形液の吐出により、粉末材料が結合される。粉末材料が結合されることで、造形される3次元構造物のうちの1層の造形がなされる。なお、下層がある場合は、現在造形された層と下層との結合造形もなされる。また、造形液の吐出により、造形と同時に着色がなされる。
【0047】
吐出処理が行われると、造形終了か否かが判定される(S5)。具体的には、制御部4に電源OFFの指令が供給されたか、または図7において示したRAM42に記憶されている全ての座標位置Zに対する処理が完了したかが判定される。造形終了でないと判定されると(S5:No)、処理がS6に移る。処理がS6に移ると、現在の座標位置Zが、RAM42に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更される(S6)。S6において次の座標位置Zは、RAM42に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置ZよりもZ軸正方向に大きい座標位置Zである。S6における変更は、制御部4により行われる。座標位置Zは、造形される3次元構造物のZ軸方向の座標位置Zとして、RAM42に記憶されている。複数の層から形成される3次元構造物のうちの1層に対応した座標位置Zと対応付けられた座標位置(X、Y)の座標データ、及び色データに基づき、構造形成処理、及び吐出処理が行われる。そして、S6において、座標位置Zが、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更されることで、S3、及びS4の処理により、各々、3次元構造物のうちの次の層の構造形成処理、及び次の層に対する吐出処理が行われる。このように、3次元構造物の着色、及び造形が1層ずつ為される。S5において、造形終了と判定されると(S5:Yes)、全ての処理が終了する。
【0048】
図6を用いて、図5に示す動作制御におけるS3の構造形成処理について具体的に説明する。図6に示す構造形成処理では、まず現在の座標位置ZにおけるデータがRAM42から読み出される(SA1)。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0049】
座標データが読み出されると、粉末供給処理が行われる(SA2)。具体的には、CPU41により、粉末材料供給部330が制御される。この制御により、現在の座標位置Zにおける堆積面SF上に対し、粉末材料が供給される。
【0050】
粉末供給処理が行われると、粉末材料の平坦化処理が行われる(SA3)。具体的には、CPU41により、平坦化部320が制御される。この制御により、堆積面SFに堆積された粉末材料が所定の造形対象領域を含む領域内で平坦化される。
【0051】
平坦化処理が行われると図6に示す構造形成処理が完了し、処理が図5に示すS4の吐出処理に移る。例えば、現在の座標位置ZがRAM42により記憶されている最初の座標位置Zである場合、図6に示す構造形成処理により、粉末材料の層が形成される。以後、説明する吐出処理によりこの層の造形対象領域に対し造形液が吐出される。図6に示す構造形成処理により、形成される造形対象領域外の領域は、単に粉末材料が堆積された領域である。従って、この造形対象領域外の領域に、造形液は吐出されない。
【0052】
図7を用いて、図5に示す動作制御におけるS4の吐出処理について具体的に説明する。図7に示す吐出処理では、まず現在の座標位置ZにおけるデータがRAM42から読み出される(SB1)。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標位置(X、Y)の座標データ、及びその座標データにおける各座標位置(X、Y)と対応付けて記憶されている色データである。データが読み出されると、ヘッド110が初期位置に相対移動される(SB2)。
【0053】
ヘッド110が初期位置に相対移動されると、移動吐出処理が実行される(SB3)。即ち、ヘッド110が相対移動されながら、造形液の吐出が行われる。具体的には、ヘッド110が移動され、SB1において読み出された特定の座標位置(X、Y)にヘッド110が到達すると、その座標位置(X、Y)と対応付けられている色の造形液が吐出される。SB1において読み出された全ての座標データに関し、このSB3の処理が行われることにより、図5のS3に示す構造形成処理により形成された粉末材料の層に対する造形、及び着色がなされる。SB1において読み出された全ての座標データに関し、このSB
3の処理が行われると、図7に示す吐出処理が終了する。
【0054】
[実験結果]
本発明者は、上記のような3次元造形に用いられる粉末材料を開発し、改良を重ねてきた。本発明者は、この粉末材料に対し、実験を行うことにより、3次元構造物を形成する粒子である充填材と、造形液に溶解することで充填材同士を接着する接着剤と、を備え、充填材として、粉末材料に吐出される造形液の比重より大きい粉末材料を選択することにより、3次元構造物を構成する粉末材料の層の造形液吐出後の反りを低減出来ることを確認した。以下にその実験結果を示す。
【0055】
実験方法としては、以下に示すような方法を用いた。
(1)まず、堆積面に堆積させた紛体を平らな層になるように平坦化した。
(2)紛体の上に液体を吐出した。その際、液体を吐出した領域、即ち造形対象領域は、10mm×30mmの範囲とした。
(3)紛体が固化することで出来た約10mm×30mm×0.4mmの体積の造形物の反りを測定した。
【0056】
表1は、各種粉末材料(表1において「紛体」と記す。以後、「紛体」と記す。)に対し、造形液(表1において「液体」と記す。以後、「液体」と記す。)を吐出した際の造形物の反りの測定結果を示す。液体として、H2O/グリセリン(=90wt%/10wt%)であり、比重が1.02の液体を用いた。紛体として、表1に示す粒子径、及び比重を有する各種充填剤(表1において「フィラー」と記す。以後、「フィラー」と記す。)と、表1に示す粒子径の接着剤と、を表1に示す配合比にて混合した各種紛体を用いた。本実施形態に係る紛体は、図8に示すように、フィラーFと接着剤Aとを備える。表1に示す造形物の反りとは、図9に示すように、高さ方向における形成された造形物MDの表面SUの位置の最高値MAXと最低値MINとの差である。本実施形態に係る紛体は実験No.3〜5の液体Lの比重より大きい比重を有するフィラーを含んだ紛体である。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す実験No.1の実験結果と実験No.2〜5の実験結果とを比較すると、実験No.1の造形物の反りが非常に大きいことが分かる。従って、本実施形態に係るフィラーFと接着剤Aとを備える紛体を3次元造形に用いる場合と比較して、紛体がフィラーFを備えない場合、造形物の反りが非常に大きくなることが分かる。一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体を含む実験No.2〜5の紛体は、フィラーFと接着剤Aとを備えるため、造形液吐出後の造形物の反りを抑え、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0059】
表1に示す実験No.2の実験結果と本実施形態に係る実験No.3〜5の実験結果とを比較すると、実験No.2の造形物の反りが実験No.3〜5の造形物の反りよりも大きいことが分かる。従って、フィラーFの比重が、紛体に吐出される液体Lの比重より小さい場合(実験No.2ではフィラーF:0.45<液体L:1.02である)、造形物の反りが大きくなることが分かる。一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体が備えるフィラーFは、紛体に吐出される液体Lの比重より大きく、この場合に、造形液吐出後の造形物の反りが抑えられ、高精度に3次元構造物を形成することが出来ることが分かる。
【0060】
本実施形態に係る紛体のように、フィラーFの比重が紛体に吐出される液体Lの比重より大きい場合に、造形物の反りが抑えられるメカニズムについては種々考えられる。しかし、概ね以下に示すようなメカニズムに基づいて、本実施形態の紛体は、造形物の反りを抑えるという効果を奏するものと思われる。
【0061】
即ち、図8において示したようなフィラーFと接着剤Aとを備える紛体に対し、図10に示すように液体Lが吐出される。すると、図12に示すように液体Lと接触した接着剤Aが液体Lに溶解し、フィラーF間の隙間に浸透する。この浸透によりフィラーF同士が接着される。一方、図12に示すように、液体Lと接触していない接着剤Aは液体Lに溶解しない。よって、図12に示すように、この非接触領域においては、フィラーF同士は接着されない。なお、図12に示す液体Lは吐出後、次第に揮発する。液体Lが揮発した後も、接着剤Aと液体Lとが接触した接触領域においてフィラーF同士は接着されたままである。よって、この接触領域がそのまま固化し、造形物を形成する。
【0062】
実験No.2に示すようにフィラーFの比重が、紛体に吐出される液体Lの比重より小さい場合、図11に示すように、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊してしまう。実験No.2に示す紛体が3次元造形に用いられる場合、この浮遊した状態で固化が起きるため形成される造形物の反りが起きてしまうものと考えられる。
【0063】
一方、本実施形態に係る実験No.3〜5の紛体が3次元造形に用いられる場合、図12に示すように、接着剤Aの溶解、又は液体Lの揮発中に、フィラーFが液体Lの中で浮遊せず、造形物の反りを抑えるという効果を奏するものと思われる。
【0064】
以上示したように、本発明者は、紛体に吐出される液体Lの比重より大きい比重を有するフィラーFを含む紛体を3次元造形に用いることにより、3次元構造物を構成する紛体の層の液体L吐出後の反りを低減出来ることを確認した。従って、本実施形態に係る紛体によれば、紛体の層の液体L吐出後の反りを低減出来るため、複数の紛体の層により構成される3次元構造物の寸法変化を低減出来る。よって、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0065】
なお、実験No.3に示す実験結果と実験No.4に示す実験結果とを比較すると、フィラーFの粒径が、接着剤Aの粒径より大きい場合に、造形物の反りを可及的に小さくできることが分かる。即ち、実験No.3、及びの実験No.4のフィラーFの粒径は、いずれも40μmである。実験No.3の接着剤Aの粒径は、10μmであるため、実験No.3のフィラーFの粒径は、接着剤Aの粒径より大きい。一方、実験No.4の接着剤Aの粒径は、120μmであるため、実験No.4のフィラーFの粒径は、接着剤Aの粒径より小さい。実験No.3の造形物の反りは、0.01mm以下であったのに対して、実験No.4の造形物の反りは、0.05mmと大きい。従って、本実施形態に係る紛体によれば、接着剤Aの粒径より大きい粒径のフィラーFを適用することで、造形物の反りを可及的に小さくし、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0066】
また、実験No.3に示す実験結果と実験No.5に示す実験結果とを比較すると、紛体においてフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より大きい場合に、造形物の反りを可及的に小さくできることが分かる。即ち、実験No.3の配合比(フィラー/接着剤)は、80/20であるのに対し、実験No.5の配合比は、33/67とフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より小さい。実験No.3の造形物の反りは、0.01mm以下であったのに対して、実験No.5の造形物の反りは、0.03と大きい。従って、本実施形態に係る紛体によれば、紛体においてフィラーFの占める体積率が、接着剤Aの占める体積率より大きい紛体を適用することで、造形物の反りを可及的に小さくし、高精度に3次元構造物を形成することが出来る。
【0067】
(変形例)
本実施形態において、座標データ、及び色データは、PC800から、外部インターフェース600、及びバス700を介して取得していた。しかし、これに限らず、例えば、PCから取得した各種データを基に、制御部により座標データ、及び色データを生成してもよい。この場合、制御部は、座標データ、及び色データを生成する演算部を備える。データ記憶部は、演算部により生成された座標データ、及び色データを取得する。
【0068】
本実施形態において、ヘッド110、ガントリ130、及び堆積台移動部310bが各々X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動されることにより、ヘッド110が堆積面SFに対しX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に相対移動されていた。しかし、これに限らず、例えば、ステージがX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動されることによりヘッドが堆積面に対しX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に相対移動されてもよい。
【0069】
本実施形態において、粉末材料の供給は、粉末材料供給部330によりなされていた。また、堆積面SFに堆積された粉末材料の平坦化は、平坦化部320によりなされていた。しかし、これに限らず、例えば、粉末材料の供給、及び平坦化は、作業者によりなされてもよい。
【0070】
本実施形態において、複数の層により3次元構造物が形成されていたが、これに限らず、例えば、1層のみで3次元構造物が形成されてもよい。また、この場合、RAM42等のデータ記憶部に記憶されるZ座標位置は、1つとなる。
【0071】
本実施形態において、フィラーFは、炭酸カルシウムであり、接着剤Aはポリビニルアルコール、液体Lは、H2O/グリセリンであったが、これに限らず、フィラーの比重が、紛体に吐出される液体の比重より大きいという条件のもと、材料は何であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 3次元造形装置
110 ヘッド
111 イエローヘッド
112 マゼンタヘッド
113 シアンヘッド
114 クリアヘッド
130 ガントリ
210x X軸モータ
210y Y軸モータ
310 ステージ
310a 堆積台
310b 堆積台移動部
330 粉末材料供給部
4 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
SF 堆積面
F フィラー
A 接着剤
L 液体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料であって、
3次元構造物を形成する粒子である充填材と、
前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、
前記充填材の比重は、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きいことを特徴とする粉末材料。
【請求項2】
前記充填材の粒径は、前記接着剤の粒径より大きいことを特徴とする請求項1記載の粉末材料。
【請求項3】
前記粉末材料において前記充填材の占める体積率は、前記接着剤の占める体積率より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の前記粉末材料が堆積される前記堆積面と、
前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給部と、
前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化部と、
平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出部と、を備えることを特徴とする3次元造形装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給ステップと、
前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化ステップと、
平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出ステップと、を備えることを特徴とする3次元造形方法。
【請求項1】
堆積面に堆積された粉末材料の特定領域に対し、造形液を吐出することで3次元構造物を造形する3次元造形に用いられる粉末材料であって、
3次元構造物を形成する粒子である充填材と、
前記造形液に溶解することで前記充填材同士を接着する接着剤と、を備え、
前記充填材の比重は、前記粉末材料に吐出される前記造形液の比重より大きいことを特徴とする粉末材料。
【請求項2】
前記充填材の粒径は、前記接着剤の粒径より大きいことを特徴とする請求項1記載の粉末材料。
【請求項3】
前記粉末材料において前記充填材の占める体積率は、前記接着剤の占める体積率より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の前記粉末材料が堆積される前記堆積面と、
前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給部と、
前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化部と、
平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出部と、を備えることを特徴とする3次元造形装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の前記粉末材料を前記堆積面に供給して堆積させる粉末供給ステップと、
前記堆積面に堆積された前記粉末材料を平坦化する平坦化ステップと、
平坦化された前記粉末材料に対し前記造形液を吐出する吐出ステップと、を備えることを特徴とする3次元造形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−125996(P2012−125996A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278931(P2010−278931)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]