説明

粉末洗浄剤組成物

【課題】高いアルカリ緩衝能を有し、洗浄力に優れた粉末洗浄剤組成物、及びそれを用いる衣料の洗濯方法を提供する。
【解決手段】(1)界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有する平均粒径が100〜1000μmのアルカリ顆粒(a)、及び酸源と二酸化炭素源を含有する平均粒径が100〜1000μmの顆粒(b)を混合してなる洗浄剤組成物であって、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が28〜65質量%で、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11である粉末洗浄剤組成物、及び(2)その粉末洗浄剤組成物を用る洗濯方法であって、顆粒(a)と(b)との反応により発生する炭酸ガスを洗浄系外に放出して洗濯する衣料の洗濯方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄力に優れた粉末洗浄剤組成物、及びそれを用いる衣料の洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類に付着する最も代表的な汚れである人体由来の皮脂汚れは、汚れ中に遊離脂肪酸、グリセリド等の油分を多量に含有しており、それらがほこり中のカーボンや泥、剥離した角質等を閉じ込め、特に衿や袖等の汚れとして観察される。それらの洗浄にあたっては、主にこれらの油分を界面活性剤のミセルによって可溶化し除去することによって、カーボン、泥、角質をも衣類から脱落させる洗浄理論が知られている。
この洗浄理論によれば、高い洗浄力を得るためには洗濯液中の洗剤濃度(アルカリ剤濃度)を上げ、pHを高くすればよい。しかしながら、アルカリ剤濃度を高くしすぎると、家庭品品質表示法に定める弱アルカリ性洗剤(pH8〜11)の範疇を逸脱することになり、消費者に使用上の安全の喚起を促す措置や表示が必要になる等、商品としての使い勝手が悪くなり、不都合である。
そのため、従来から結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の配合量には制約があり、弱アルカリ性洗剤で洗浄力を向上させるのには限界があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、非石鹸性界面活性剤、脂肪酸及び/又はアルカリ金属脂肪酸、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩、及び金属イオン封鎖剤の各成分が特定の質量比を有し、特定の嵩密度を有する衣料用洗剤組成物が開示され、特許文献2には、界面活性剤、アルカリ金属ケイ酸塩、及び金属イオン封鎖剤を含有し、各成分が特定の質量比を有する衣料用洗剤組成物が開示されている。
特許文献1及び2によると、特定の高アルカリ・低硬度化された洗浄条件において、界面活性剤量が少なくても高い洗浄力を発現できることが開示されているが、そこには、アルカリ剤として高いpHを発現する結晶性アルカリ金属ケイ酸塩が配合されている。
【0004】
ところで、特許文献3には、撹拌せずに気泡形成ができる発泡成分(酸供給源、炭酸塩等の泡沸性顆粒)とシリコーン発泡抑制剤を含む、洗剤組成物用の調整発泡系が開示されている。
また、特許文献4では、酸源及び二酸化炭素源を含む発泡成分、結合剤、及び洗剤活性剤を含む顆粒であって、酸源及び二酸化炭素源が特定の粒径を有する顆粒が開示されており、この発泡成分が水で希釈された際に発泡し、それにより良好な溶解性や分散性を発現することが開示されている。
しかしながら、特許文献3及び4に記載の顆粒を含む洗剤組成物は、実質的な洗浄力等において十分に満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−235591号公報
【特許文献2】特開平11−269489号公報
【特許文献3】特表2002−526640号公報
【特許文献4】特表2002−531686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗浄力に優れた粉末洗浄剤組成物、及びそれを用いる衣料の洗濯方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、大量の結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有するアルカリ顆粒に、酸源と二酸化炭素源を含有する顆粒を混合して、pHを調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有する平均粒径が100〜1000μmのアルカリ顆粒(a)、及び酸源と二酸化炭素源を含有する平均粒径が100〜1000μmの顆粒(b)を混合してなる洗浄剤組成物であって、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が28〜65質量%で、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11である粉末洗浄剤組成物。
(2)前記(1)の粉末洗浄剤組成物を用いて衣料を洗濯する方法であって、アルカリ顆粒(a)と顆粒(b)との反応により発生する炭酸ガスを洗浄系外に放出して洗濯する衣料の洗濯方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄力に優れた粉末洗浄剤組成物、特に衣料用粉末洗浄剤組成物、及びそれを用いる衣料の洗濯方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粉末洗浄剤組成物は、界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有する平均粒径が100〜1000μmのアルカリ顆粒(a)、及び酸源と二酸化炭素源を含有する平均粒径が100〜1000μmの顆粒(b)を混合してなる洗浄剤組成物であって、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が28〜65質量%で、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11であることを特徴とし、特に衣料用粉末洗浄剤組成物として有用である。
以下、本発明の粉末洗浄剤組成物の各成分等について順次説明する。
【0010】
<アルカリ顆粒(a)>
本発明に用いられるアルカリ顆粒(a)は、界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、平均粒径が100〜1000μmのアルカリ顆粒である。
本発明の粉末洗浄剤組成物中のアルカリ顆粒(a)の含有量は、洗浄性能とpHの観点から、30〜90質量%含むものが好ましく、40〜85質量%含むものがより好ましく、50〜80質量%含むものがより好ましい。
【0011】
(界面活性剤)
本発明に用いられる界面活性剤に特に限定はなく、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。例えば、非イオン界面活性剤を複数組み合わせて用いてもよく、また陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤の中から各種のものを複数選択して、組み合わせて用いてもよい。好ましくは界面活性剤中で、非イオン界面活性剤を30〜100質量%を含むものが好ましく、40〜90質量%含むものがより好ましく50〜80質量%含むものがより好ましい。
【0012】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸アルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、アルキルグルコースアミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
これらの中では、炭素数10〜18、好ましくは炭素数12〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する1価又は2価のアルコールのエチレンオキサイド付加物であって、平均付加モル数3〜25、好ましくは6〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。なお、該平均付加モル数が0〜1のものは粉末物性を低下させる傾向があるため、その含有率は好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下とすることが望ましい。
【0013】
陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩又はエステル塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩等が好ましい。
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアミン塩等の第4アンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、カルボキシ型又はスルホベタイン型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0014】
前記界面活性剤の含有量は、全組成物中、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは6〜30質量%である。界面活性剤の含有量が1質量%未満であると、十分な洗浄力が得られにくい傾向があり、40質量%を越えると相対的に結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の配合量が減り、十分な洗浄力が得られにくい傾向がある。
【0015】
(結晶性アルカリ金属ケイ酸塩)
本発明に用いられる結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、アルカリ能とイオン交換能を有するため、その配合量を適宜調整することにより、粉末洗浄剤組成物の洗浄力や洗浄条件を好適に調整することができる。
結晶性アルカリ金属ケイ酸塩としては、アルカリ金属ケイ酸塩のSiO2/M2O(但し、Mはアルカリ金属を示す)が、0.5〜2.6であるものが好ましく用いられる。その好適例としては、次の組成式(1)を有するものが挙げられる。
xM2O・ySiO2・zMemn・wH2O (1)
(式中、Mは周期律表のIa族元素、MeはIIa、IIb、IIIa、IVa又はVIII族元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せを示し、y/x=0.5〜2.6、z/x=0.01〜1.0、n/m=0.5〜2.0、w=0〜20である。)
【0016】
一般式(1)において、Mは周期律表のIa族元素から選ばれ、Ia族元素としてはNa、K等が挙げられる。これらは単独で又は例えばNa2OとK2Oとが混合してM2O成分を構成していてもよい。
Meは周期律表のIIa、IIb、IIIa、IVa又はVIII族元素から選ばれ、例えばMg、Ca、Zn、Y、Ti、Zr、Fe等が挙げられる。これらの中では、資源及び安全上の点から、Mg、Caが好ましい。また、これらは単独で又は2種以上を混合してもよく、例えばMgO、CaO等を混合してMemn 成分を構成していてもよい。また、本発明における結晶性アルカリ金属ケイ酸塩においては、水和物であってもよく、この場合の水和量はw=0〜20の範囲である。
【0017】
一般式(1)において、y/xは、洗浄力、溶解性等の観点から、好ましくは0.8〜2.4であり、より好ましくは1.0〜2.2である。また、カチオン交換能の観点から、1.5〜2.1がより好ましい。
また、z/xは、洗浄力、溶解性等の観点から、好ましくは0.01〜1.0であり、より好ましくは0.02〜0.9である。x,y,zは前記のy/x及びz/xに示されるような関係であれば、特に限定されるものではない。
なお、前記のようにxM2Oが例えばx’Na2O・x”K2Oとなる場合は、xはx’+x”となる。このような関係は、zMemn 成分が2種以上のものからなる場合におけるzにおいても同様である。また、n/m=0.5〜2.0は、当該元素に配位する酸素イオン数を示し、実質的には0.5、1.0、1.5、2.0の値である。
【0018】
組成式(1)で表されるもの以外の結晶性アルカリ金属ケイ酸塩としては、組成式(2)を有するものが挙げられる。
2O・x’SiO2・y’H2O (2)
(式中、Mはアルカリ金属を表し、x’=0.5〜2.6、y’=0〜20である。)
式(2)において、x’は、洗浄力、溶解性等の観点から、好ましくは0.8〜2.4であり、より好ましくは1.0〜2.2である。また、カチオン交換能の観点から、1.5〜2.1がより好ましい。y’はy’=0のものが好ましい。
【0019】
本発明における結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、組成式(1)を有するものはM2O、SiO2、Memn の3成分からなり、組成式(2)を有するものはM2O、SiO2 の2成分からなる。したがって、本発明における結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を製造するには、その原料として各成分が必要になるが、本発明においては特に限定されることなく公知の化合物を適宜使用することができる。
例えば、M2O成分、Memn 成分としては、各々の当該元素の単独又は複合の酸化物、水酸化物、塩類、当該元素含有鉱物が用いられる。より具体的には、M2O成分の原料としては、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、Na2SO4 等が挙げられ、Memn 成分の原料としては、CaCO3、MgCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2、MgO、ZrO2、ドロマイト等が挙げられる。SiO2 成分としてはケイ石、カオリン、タルク、溶融シリカ、珪酸ソーダ等が挙げられる。
【0020】
結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の調製例としては、上記の原料成分を、目的とする結晶性アルカリ金属ケイ酸塩のx、y、z又はx’、y’の値となるように所定の量比で混合し、電気炉、ガス炉等の加熱炉で、通常300〜1500℃、好ましくは500〜1000℃、より好ましくは600〜900℃の温度で焼成して結晶化させる方法が挙げられる。加熱温度が前記範囲内であれば、洗浄力、イオン交換能が大きく低下することはない。加熱時間は、加熱温度にもよるが、通常0.1〜24時間である。
より具体的には、特開昭60−227895号公報、特開平7−187655号公報、Phys. Chem. Glasses. 7, 127-138(1966)、 Z. Kristallogr., 129, 396-404(1969)等に記載の方法が挙げられる。市販品としては、株式会社トクヤマシルテック製の商品名:プリフィード(SiO2/Na2O(モル比)=2.0)等が挙げられる。また、メタケイ酸ナトリウム(SiO2/Na2O(モル比)=1.0)を用いてもよい。
上記の結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
このようにして得られた結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、0.1質量%分散液において11以上のpHを示し、炭酸ソーダや炭酸カリウムと比較して優れたアルカリ能を示す。また、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、アルカリ緩衝効果についても特に優れるものである。
結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、イオン交換能として、CaCO3換算で100ppmCaCl2水溶液に対して0.4g/Lの濃度で10分間イオン交換した際、Caイオン交換能が、100CaCO3mg/g以上、好ましくは180mg/g〜250mg/gを有するものが好ましい。
【0022】
また、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、洗浄力及び安定性の観点から、平均粒径が、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜20μmである。なお、ここでいう平均粒径とは、粒度分布のメジアン径である。
かかる平均粒径を有する結晶性アルカリ金属ケイ酸塩は、振動ミル、ハンマーミル、ボールミル、ローラーミル等の粉砕機を用いて粉砕し、適度な平均粒径に調整することができる。
本発明の粉末洗浄剤組成物中の結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量は、好ましくは28〜65質量%、より好ましくは35〜60質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。
本発明に用いられるアルカリ顆粒(a)には、界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩のほかに、アルカリ顆粒(a)の保存安定性や溶解性を遅延させる目的や界面活性剤の染み出し等を防止する目的で、洗剤に配合されるビルダー等の公知の洗浄剤基材(その他の配合基材)を配合しても良い。アルカリ顆粒(a)中のその他の配合基材の配合割合は、アルカリ顆粒のアルカリ能の観点から、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0023】
<顆粒(b)>
本発明に用いられる顆粒(b)は、酸源と二酸化炭素源を含有し、平均粒径が100〜1000μmの顆粒である。
本発明の粉末洗浄剤組成物中の顆粒(b)の含有量は、発泡性の観点から、10〜70質量%含むものが好ましく、15〜60質量%含むものがより好ましく、20〜50質量%含むものがより好ましい。
【0024】
(酸源)
酸源とは、酸自体もしくは他の化合物と反応して酸となる化合物である。
酸源としては、モノ又はポリカルボン酸、又はカルボン酸の重合体の水和物又は無水物から選ばれる1種以上が挙げられる。このうち25℃の酸解離定数(pKa)が2.0〜10.0、より好ましくは3.0〜8.0、更に4.0〜7.0のものが好適に用いられる。
これらの中では、モノ又はポリカルボン酸の重合体が好ましく、Na塩となることで、カルシウム補足能を有するキレート剤として作用しうるものが好ましい。
具体的には、有機酸はモノ−、ジ−又はトリプロトン酸であることが好ましく、有機酸の好適例としては、クエン酸、アジピン酸、グルタル酸、3‐セトグルタル酸、シトラマル酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。このような酸は好ましくはそれらの酸形、無水形又は混合物の形で用いられる。
これらの中でも、アルカリ緩衝能、保存安定性、溶解性の観点から、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、及びそれらの無水物から選ばれる1種以上がより好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0025】
カルボン酸の重合体の具体例としては、例えば、アクリル酸、(無水)マレイン酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びその塩等の重合反応、各モノマーの共重合反応、又は他の重合性モノマーとの共重合反応によって合成されるものが挙げられる。このとき共重合に用いられる他の共重合モノマーの例としては、例えば、アコニット酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、ビニルホスホン酸、スルホン化マレイン酸、ジイソブチレン、スチレン、メチルビニルエーテル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル(及び共重合後に加水分解した場合はビニルアルコール)、アクリル酸エステル等が挙げられる。また、特開昭54−52196号公報記載のポリグリオキシル酸等のポリアセタールカルボン酸重合体を用いることもできる。上記の重合体、共重合体としては、重量平均分子量が800〜100万のものが用いられ、好ましくは5000〜20万のものが用いられる。
これらの中でも、洗浄性能や保存安定性の観点から、分子量が5000〜1万のアクリル酸重合体や5万〜10万のアクリル酸とマレイン酸の共重合体が好ましく用いられる。
【0026】
0
酸源は、炭酸アルカリと反応して炭酸ガスを発生するものであればよく、このような機能があれば酸源の一部がNa、アンモニウム塩やka塩で中和されていてもよい。
酸源は、そのもの又は中和物がキレート剤として働き、水を軟化する機能が高いほど好ましく、具体的には、酸源はそのもの又はその中和物のpKcaが1.8以上が好ましく、2.2以上のものがより好ましい。
また、酸源は、そのもの又はその中和物Caのイオン交換能は180mgCaCO3/g以上が好ましく、200mgCaCO3/g以上のものがより好ましく用いられる。
【0027】
酸源、好ましくは酸自体の粒径は、好ましくは1〜800μm、より好ましくは5〜500μm、より好ましくは5〜60μm、より好ましくは5〜30μmの容量メジアン粒径を有していることが好ましい。
このような酸源は、発泡成分中への配合直前に、この酸源よりも大きな粒径を有した粗い酸源物質を粉砕又は粉化して得ることが好ましい。即ち、貯蔵後における細粒径酸源の取扱いは問題を起こすことがあるため、酸源を粗い形で貯蔵して、使用前にこの物質を粉砕した方が有利である。
本発明の洗浄剤組成物中の酸源の含有量は、好ましくは2〜75質量%であり、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜28質量%である。
【0028】
(二酸化炭素源)
二酸化炭素源は、水との接触で酸源と反応したときに二酸化炭素を発生しうる物質をいう。二酸化炭素源としては、炭酸塩が挙げられ、特に炭酸塩、重炭酸塩及び過炭酸塩又はそれらの混合物が好ましい。
炭酸塩としては、カリウム、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、その中では炭酸ナトリウム及びカリウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。
重炭酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、その中では重炭酸ナトリウム及びカリウムが好ましく、重炭酸ナトリウムがより好ましい。
乾燥顆粒(b)における炭酸塩、重炭酸塩又はそれら混合物の選択は、乾燥顆粒(b)が溶解される水性媒体で望まれるpHに応じて行える。例えば、相対的に高いpH(例えば、pH9.5以上)が水性媒体で望まれるときには、炭酸塩を単独で用いるか、又は炭酸塩及び重炭酸塩の組合せを用いることが好ましく、後の場合には、典型的には0.1〜10、更に好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜2の炭酸塩対重炭酸塩の質量比で、炭酸塩のレベルが重炭酸塩のレベルよりも高い。
【0029】
二酸化炭素源の粒径は、好ましくは1〜800μm、より好ましくは5〜500μm、より好ましくは5〜60μm、更に好ましくは5〜30μmの容量メジアン粒径を有していることが好ましい。
なお、酸源及び二酸化炭素源の容量メジアン粒径は、公知の方法、特に容量メジアン粒径を示すようにプログラム化されている、レーザー光散乱装置又は回折装置により、例えばMalvern 2600又はSympatec Helosレーザー光散乱装置(又は回折計)により測定することができる。
本発明の洗浄剤組成物中の二酸化炭素源の含有量は、好ましくは2〜75質量%であり、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜28質量%である。
本発明の顆粒(b)には、酸源と二酸化炭素源のほかに、顆粒(b)の保存安定性を高める目的で界面活性剤やポリマー等の被覆材や洗剤に配合されるビルダー等の公知の洗浄剤基材(その他の配合基材)を配合しても良い。顆粒(b)中のその他の配合基材の配合割合は、アルカリ顆粒のアルカリ能の観点から、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0030】
<アルカリ顆粒(a)及び顆粒(b)の製造>
本発明で用いられるアルカリ顆粒(a)及び顆粒(b)の製造方法に特に制限はなく、各成分を混合した後、押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、噴霧造粒法、破砕造粒法等の公知の方法により製造することができる。用いることができる造粒装置としては、例えば、深江パウテック株式会社のハイスピードミキサー、ハイフレックスグラル、ヘンシェルミキサー、株式会社パウレック製のバーチカルグラニュレーター、太平洋機工株式会社製のアペックスグラニュレーター、プロシェアミキサー、株式会社徳寿工作所製のジュリアミキサー、株式会社マツボー製レディゲミキサー、日本アイリッヒ株式会社製のインテンシブミキサー、不二パウダル株式会社製のマルメライザー、ペレッターダブル、株式会社ダルトン製ツインドームグラン、ファインディスクペレッター、フロイント産業株式会社製のローラーコンパクター、ターボ工業株式会社製ローラーコンパクター、新東工業株式会社製のブリケッタ、ホソカワミクロン株式会社製のブリケッティングマシン等が挙げられる。
【0031】
より具体的には、アルカリ顆粒(a)は、界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を転動造粒法により製造することが好ましい。転動造粒法の中では、造粒収率等の観点から、特に撹拌転動造粒法が好ましい。
撹拌転動造粒機としては、撹拌羽根を備えた主撹拌軸を内部の中心に有し、更に混合を補助し粗大粒子の発生を抑制するための補助撹拌軸を一般的には主撹拌軸と直角方向に壁面より突出させた構造を有するものが挙げられる。
アルカリ顆粒(a)の製造において、液状又はペースト状の界面活性剤をバインダーとして使用する観点から、ハイスピードミキサー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、インテンシブミキサーが好ましく、造粒粒子の粒径分布を均一にする観点から、回転ブレードとチュッパー装置を有しているハイスピードミキサーやレディゲミキサーがより好ましい。
顆粒(b)は、乾式造粒することが好ましく、例えば、市販の大粒径の酸源物質を粉砕して粒径を調整し、二酸化炭素源と混合し、必要に応じて結合剤等の他の成分を添加して混合物を形成し、ローラーコンパクターを用いて造粒することが好ましい。
ローラーコンパクターは、フィードスクリューを備えたフィードホッパーとロールプレス、グラニュレーター(粉砕・整粒機)等により構成され、同速度で回転する2個のロール間で、粉末原料を圧縮して高密度の板状成型物(フレーク)をつくり、グラニュレーターで解砕して数mm以下の顆粒を成形する乾式破砕造粒装置である。
【0032】
アルカリ顆粒(a)の平均粒径は、溶解性と流動性の観点から、好ましくは100〜1000μmであり、より好ましくは200〜800μm、更に好ましくは300〜700μmである。顆粒(b)の平均粒径は、流動性と保存安定性の観点から、好ましくは100〜1000μmであり、より好ましくは200〜800μm、更に好ましくは300〜700μmである。
本発明の顆粒(a)と(b)を混合するための混合装置としては均一に混合することができるものであれば種類を問わないが、例えば、水平円筒型、V型等の混合機や攪拌造粒機や転動造粒機を用いることができる。
アルカリ顆粒(a)と顆粒(b)の配合比(a)/(b)は、発泡性と洗浄性能の観点から85/15〜30/70が好ましく、80/20〜35/65がより好ましく、80/20〜40/60が特に好ましい。
【0033】
<粉末洗浄剤組成物>
本発明の粉末洗浄剤組成物は、アルカリ顆粒(a)及び顆粒(b)を混合してなる粉末洗浄剤組成物であって、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が28〜65質量%で、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11であることを特徴とする。
本発明の粉末洗浄剤組成物は、粉末洗剤を用いる用途であれば特に限定はなく用いることができるが、衣料用粉末洗剤として特に好適に用いることができる。
本発明の粉末洗浄剤組成物には、例えば、ビルダー顆粒等の公知の洗浄剤基材、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、漂白活性化剤、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、消泡剤(シリコーン等)、セルラーゼやプロテアーゼ等の酵素、染料、香料等を適宜配合することができる。
粉末洗浄剤組成物中のアルカリ顆粒(a)中の結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が、洗浄能力の観点から、好ましくは30〜62質量%であり、より好ましく35〜60質量%である。また、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11であり、好ましくは10.3〜10.9である。該水溶液のpHの調整は、顆粒(b)の酸源の含有量等を調整することにより行うことができる。
【0034】
<衣料の洗濯方法>
本発明の衣料の洗濯方法は、本発明の粉末洗浄剤組成物を用いて衣料を洗濯する方法であって、顆粒(b)の水中での中和反応により発生する炭酸ガスを洗浄系外に放出して洗濯することを特徴とする。これによって、酸性のガスが洗濯系外に出るので、その分洗濯浴がアルカリ性になり洗浄性能が高まる。
また、顆粒(b)の発泡により、顆粒(b)は、アルカリ顆粒(a)よりもごく短時間で分散溶解する。その結果、顆粒(b)の中和反応が終了した際の生成物にCaイオン交換能がある場合、通常よりも高速に洗浄系内のCaイオンを補足する。
一般に高アルカリ下で高硬度の水は、脂肪酸等の汚れがスカムを形成しやすく、そのような汚れは洗濯によって除去するのは困難である。従って、汚れ落ちの良い理想的な洗濯を行うには、キレート剤によってまず洗浄系内の硬度を下げた後、アルカリ量を上げて脂肪酸等の汚れを脂肪酸ナトリウム(石けん)に変え、汚れを乳化させてやるようなアルカリ遅延での洗浄形態が好ましい。本発明の洗浄方法では、Ca補足能を有する顆粒(b)が発泡しながらすばやく溶解し、その後アルカリ顆粒(a)が溶解しアルカリ性を発揮する。従ってアルカリ遅延の効果が発現しやすくなる。
【0035】
さらに、顆粒(b)にはpKaが2〜10、より好ましくは4〜7の酸源を用いた場合、アルカリ顆粒が溶解したてのまだpHがそれほど上がっていない領域(pH=7〜8付近の領域)で、緩衝作用が働き、pHの上昇が抑制される。この作用によってアルカリ遅延効果はさらに助長され、より洗浄性能を引き上げる効果が得られる。アルカリ遅延の具体的な程度としては、最高pHに到達するまでの時間が20秒〜5分、好ましくは30秒〜3分、40秒〜2分がさらに好ましい。本発明の洗濯方法においては、生成する酸性の炭酸ガスを洗浄系外に放出し、pH上昇とアルカリ遅延効果という2つの作用によって、洗浄性能を向上させる。本発明の洗濯方法は、このような2つの効果を発揮させる洗浄方法であるため、優れた洗浄力を発揮することができる。
本発明の衣料の洗濯方法においては、使用する粉末洗浄剤組成物の量は特に限定されないが、水30L当たり通常15〜30g、好ましくは18〜25g使用すれば、十分な洗浄力を発揮することができる。
【実施例】
【0036】
以下の調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各種の物性は以下の方法により測定した。
【0037】
(1)平均粒径の測定
目開き125μm、180μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1400μm、及び2000μmの9段の篩と受け皿を用いて、受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(株式会社平工製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け5分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留した粒子の質量を測定し、各篩上の粒子の質量割合(%)を算出した。受け皿から順に目開きの小さな篩上の粒子の質量割合を積算していき合計が50%となる粒径を平均粒径とした。
(2)pHの測定
容量1Lのビーカーに25℃のイオン交換水1Lを加え、そこに長さ35mmのスターラーピースを入れ、950rpmで撹拌した。pH電極をセットし、pHが安定したところで、1gの試験サンプルを添加し、最高pHを測定した。
【0038】
(3)洗浄率の測定
下記組成の人工汚染液を、下記の方法で布に付着して人工汚染布を調製し、かき混ぜ式洗浄力試験機(株式会社上島製作所製、商品名:ターゴトメータ)を用いて、回転数85rpm、洗浄時間10分、温度20℃、使用水4°DH(Ca/Mg=8/2)の条件下で5枚の汚染布を洗浄し、下記の方法で洗浄率を求めた。
(人工汚染液の組成)
ラウリン酸0.44%、ミリスチン酸3.09%、ペンタデカン酸2.31%、パルミチン酸6.18%、ヘプタデカン酸0.44%、ステアリン酸1.57%、オレイン酸7.75%、トリオレイン酸13.06%、パルミチン酸n−ヘキサデシル2.18%、スクアレン6.53%、卵黄レシチン液晶物1.94%、鹿沼赤土8.11%、カーボンブラック0.01%、水道水はバランス量。
【0039】
(人工汚染液の布への付着方法:詳細は特開平7−270395号公報の実施例参照)
布の巻出し部、グラビア汚染部、乾燥部、ブラッシング部、布の巻取り部より構成され、布の巻出し部とグラビア汚染部の間に蛇行調整装置、及びグラビア汚染部と乾燥部との間に布の張力を調整するテンテョンコントロール装置を設けたグラビア式汚染機を用意した。布〔木綿金巾2003布(染色試材谷頭商店製)〕は巻出し部よりシート送りロール、蛇行調整部を通り、グラビア汚染部へ搬出される。汚染部は、グラビアロールAと押さえロールBと汚染浴Cとからなる。布は、ロールAとBの間を通り、ロールAに付着した汚垢をロールBで押さえつけ布に塗布した。
グラビアロールA(セル容量58cm3/cm2)には、彫刻(溝を彫った凹部)が施してあり、これを汚垢液に浸した後、凹部以外のロール表面に付着した余分な汚垢をドクターナイフで削り取り、ロールの溝に入った汚垢を布に塗布(塗布速度1.0m/min)した。その後、100℃で1分間乾燥し、ブラッシング工程を経て、汚垢布を巻き取った。
(洗浄率の測定)
汚染前の原布及び洗浄前後の汚染布の550nmにおける反射率を自記色彩計(株式会社島津製作所製)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求め、5枚の洗浄率の測定平均値を洗浄力として示した。
洗浄率(%)=〔(洗浄後の汚染布の反射率―洗浄前の汚染布の反射率)/(原布の反射率―洗浄前の汚染布の反射率)〕×100
【0040】
調製例1(顆粒A−1の調製)
(1)活性剤混合液の調製
80℃の温度下でポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、花王株式会社製、商品名:エマルゲン106KM)70質量部、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(陰イオン界面活性剤、アルキル基の炭素数12〜14、花王株式会社製、商品名:ネオペレックスG−15)20質量部に相当する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸前駆体(花王株式会社製、商品名:ネオペックスFS)、並びに中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を混合することにより、界面活性剤混合液を調製した。
(2)顆粒A−1の調製
ハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社製、商品名:LFS−GS−2J)に平均粒径13μmの結晶性アルカリ金属ケイ酸塩(株式会社トクヤマシルテック製、プリフィード)を200g添加し、ブレード回転数600rpm、チョッパー回転数800rpmで混合した。そこに界面活性剤混合液55gを1分かけて添加した。添加終了後1分間撹拌し、そこにフローライト(株式会社トクヤマ製、特殊ケイ酸カルシウム、2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O(1<m<2、2<n<3))を3g添加し表面改質を行った。得られた顆粒を下部に125μmの篩、上部に1,000μm篩を装着した2段の篩で分級し125〜1000μmの粒度の顆粒を捕集し顆粒A−1とした。
【0041】
調製例2(顆粒A−2の調製)
(1)ベース顆粒の調製
イオン交換水を200mmの長さの撹拌羽根を有した混合槽(容量:180L)に添加し、撹拌しながら加熱した。水温が55℃に達した後に、炭酸ナトリウム(デンス灰、セントラル硝子株式会社製)31.8質量部を添加し、次に硫酸ナトリウム(無水中性ボウ硝、四国化成株式会社製)21.2質量部を添加して15分間撹拌した。その後40質量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(質量平均分子量10,000、花王株式会社製)純分換算で15質量部を添加し、次いで塩化ナトリウム(やき塩、日本製塩株式会社製7.9質量部)を添加して15分間撹拌した後、4A型ゼオライト(シルトンB,水澤化学株式会社製)を24.1質量部添加し、30分間撹拌して均質なスラリー(水分量53質量%)60kgを得た。このスラリーを噴霧乾燥して水分量1.2質量%のベース顆粒を得た。
(2)顆粒A−2の造粒
平均粒径13μmの結晶性アルカリ金属ケイ酸塩(株式会社トクヤマシルテック製、プリフィード)を48.1質量部と、ベース顆粒を19.2質量部をレディゲミキサー(容量20L、株式会社マツボー製)に添加し、主軸を80rpmで撹拌した。そこに活性剤混合液23.1質量部を添加し1分間造粒した。その後主軸回転数を150rpm、チョッパー回転数を3500rpmとして、平均粒径13μmの結晶性アルカリ金属ケイ酸塩(株式会社トクヤマシルテック製、プリフィード)を9.6質量部で表面改質を行い、5kgの顆粒を得た。得られた顆粒を下部に125μmの篩を、上部に1,000μm篩を装着させた2段の篩で分級し125〜1,000μmの粒度顆粒を捕集し顆粒A−2とした。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
調製例3(顆粒B−1からB−7の調製)
あらかじめ表2に示した原料(すべて和光純薬工業株式会社製)を、表2の割合となるように混合し、ローラーコンパクター(フロイント産業株式会社製、商品名:TF−MINI)を用いて、ローラー圧80kg/cm2で圧縮造粒した。得られた顆粒を下部に125μmの篩を、上部に1,000μm篩を装着させた2段の篩で分級し125〜1,000μmの粒度顆粒を捕集し顆粒B−1〜B−7とした。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例1〜8及び比較例1〜3
表3に示す配合割合で顆粒A−1と顆粒Bを混合し、洗剤組成物を調製し、pH及び洗浄率を測定した。
実施例においてすべてpHが10〜11の範囲を示した。また、比較例1ではpH10を下回り、洗浄性能は実施例のよりも低かった。また、比較例2及び3は、洗浄率は実施例と同等であったが、いずれもpHが11を超えていた。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
顆粒A−2と顆粒B−2、B−4を使って、表4の組成の洗浄剤組成物(試験洗剤1及び試験洗剤2(比較例))を調製し、以下の試験例1〜6による洗浄試験を行った。
試験例1(実施例9)
かき混ぜ式洗浄力試験機(株式会社上島製作所製、商品名:ターゴトメータ)に20℃イオン交換水900mLを添加し、85rpmで撹拌し、その撹拌中に試験洗剤1を0.667g添加した。1分間撹拌した後、40°硬水(Ca:Mg=8:2)100mL、汚染布5枚を投入し、洗浄を開始した。その後10分間洗浄し、洗浄力評価を行った。また、洗浄後5分経過した際に、pHメーターを浴中につけて、洗浄液のpHを測定した。洗浄5分後のpHと洗浄率を表5に示す。
本例の場合、発生した炭酸ガスは洗浄系内で再溶解したため、発泡は認められなかった。また、再溶解した炭酸ガスは酸として機能することから、pHが上がらなかった。
試験例2(実施例10)
ターゴトメーターに20℃のイオン交換水900mLを添加し、85rpmで撹拌し、その撹拌中に試験洗剤1を0.667g添加した。その後直ちに試験例1と同様に、硬水と汚染布を入れ10分間洗浄した。pHと洗浄率を表5に示す。
本例の場合、発生した炭酸ガスは洗浄系内で再溶解したため、発泡は認められなかった。また、再溶解した炭酸ガスは酸として機能することから、pHが上がらなかった。
【0048】
試験例3(実施例11)
ターゴトメーターに20℃イオン交換水900mLを添加し、その中に試験洗剤1を0.667g添加すると発泡が認められた。その後ターゴトメーターを85rpmで1分間撹拌した後、試験例1と同様に、硬水と汚染布を入れ10分間洗浄した。pHと洗浄率を表5に示す。
本例の場合、クエン酸と炭酸ナトリウムを含有した顆粒B−1の反応により炭酸ガスが発生して発泡し、系外に放出された。炭酸ガスは酸性のガスであるため、洗浄系のpHが上がり、その結果、洗浄性能が向上したと考えられる。
試験例4(実施例12)
ターゴトメーターに20℃のイオン交換水900mLを添加し、その中に試験洗剤1を0.667g添加すると発泡が認められた。その後ただちに試験例1と同様に、硬水と汚染布を入れ10分間洗浄した。pHと洗浄率を表5に示す。
本例の場合、クエン酸と炭酸ナトリウムを含有した顆粒B−1の反応により炭酸ガスが発生して発泡し、系外に放出された。その結果、洗浄系のpHが上がり、洗浄性能が向上したと考えられる。
【0049】
試験例5(比較例4)
ターゴトメーターに20℃のイオン交換水900mLを添加し、その中に試験洗剤2を0.667g添加した。試験洗剤2(比較例)には、酸源(クエン酸)が含まれていないため、発泡は認められなかった。その後直ちに試験例1と同様に、硬水と汚染布を入れ10分間洗浄した。その結果、洗浄率は優れていたが、pHは11を超えていた。結果を表5に示す。
試験例6(比較例5)
ターゴトメーターに20℃のイオン交換水900mLを添加し、その中に市販洗剤(花王株式会社製、商品名:アタック)を0.667g添加した。この市販洗剤には、酸源(クエン酸)が含まれていないため、発泡は認められなかった。その後直ちに試験例1と同様に、硬水と汚染布を入れ10分間洗浄した。その結果、試験例3及び4に比べて洗浄率は不十分であった。結果を表5に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
表5から以下のことが分かる。
(1)試験例1(実施例9)と試験例3(実施例11)の対比
試験例1と試験例3の対比から、試験洗剤を投入したときに、発泡があった場合の方が、洗浄性能は優れていることが分かる。これは、酸性の炭酸ガスが洗浄系外に逃げ、洗浄系のpHが上がったためと考えられる。
(2)試験例1(実施例9)と試験例2(実施例10)の対比
図1は、試験洗剤1、試験洗剤2、及び市販洗剤を、それぞれ25℃のイオン交換水1Lに0.667g添加したときの、経時でのpH変化を示す図である。試験洗剤1は、試験洗剤2や市販洗剤に比べ、pHの上昇が緩やかであり、約60秒でpHが一定になる。
試験例1と試験例2の違いは、汚染布を入れる前に、1分間撹拌したか否かの違いである。試験例1はpHが十分に上昇した後に、硬水を入れて洗浄しているのに対し、試験例2は、洗浄開始後60秒程度でようやくpHが上昇しきるような、アルカリ遅延条件下で洗浄しているため、アルカリ遅延効果によって、試験例1よりも高い洗浄力を発現したと考えられる。
(3)試験例4(実施例12)について
試験例4は、生成炭酸ガスの洗浄系外への放出によるpH上昇とアルカリ遅延効果という2つの作用によって、洗浄pHが11を超える試験例5に近い洗浄力を発現した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】試験洗剤1、試験洗剤2、及び市販洗剤を、それぞれ25℃のイオン交換水1Lに0.667g添加したときの、経時でのpH変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と結晶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有する平均粒径が100〜1000μmのアルカリ顆粒(a)、及び酸源と二酸化炭素源を含有する平均粒径が100〜1000μmの顆粒(b)を混合してなる洗浄剤組成物であって、結晶性アルカリ金属ケイ酸塩の含有量が28〜65質量%で、25℃における濃度1g/Lの水溶液のpHが10〜11である、粉末洗浄剤組成物。
【請求項2】
酸源が、モノ又はポリカルボン酸、又はカルボン酸の重合体の水和物又は無水物から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項3】
二酸化炭素源が炭酸塩である、請求項1又は2に記載の粉末洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粉末洗浄剤組成物を用いて衣料を洗濯する方法であって、アルカリ顆粒(a)と顆粒(b)との反応により発生する炭酸ガスを洗浄系外に放出して洗濯する衣料の洗濯方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−144147(P2010−144147A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326154(P2008−326154)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】