説明

粉状サプリメント用分散媒

【課題】粉体状サプリメントに適した分散媒および粉体用分散媒と粉体状サプリメントとを組み合わせたサプリメント混合液作成用キットを提供する。
【解決手段】せん断変形速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300Pa・sである溶液である粉体用の分散媒。溶液は、ジェランガム0.017%、サイリウムシードガム0.45重量%水溶液、または、ジェランガム0.025重量%水溶液、または、ジェランガム0.04%、ペクチン0.0048重量%水溶液であり。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状サプリメント用の分散媒に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養補助剤であるサプリメントが、注目され、一般に普及している。サプリメントの剤型は、錠剤、ソフトカプセル、ハードカプセル等が一般的である。剤型は、サプリメントの水溶性、油溶性等の性質や臭いなどの性格によって、適する剤型が異なり、従来は、設定された処方に基づいて配合された組成となっている。
複数種類のサプリメントを利用している人も多い。また、既存の処方量によらず、利用者に応じて成分比を変えて、個々人に合わせた処方のニーズもある。乾燥粉体を処方し、分包した場合に水に分散しない場合や、コップなどに付着することがある。
溶けない薬剤を溶けるように工夫する試みは多数行われている。例えば、特許文献1(特開2004−65016号公報)では、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルについて、MgCl(塩化マグネシウム)またはMgSO(硫酸マグネシウム)等のMg塩や、CaCl(塩化カルシウム)等のCa塩は、水に易溶であるが、苦味が強いという問題があったのに対して、水に難溶性である水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを水、クエン酸、グリシンからなる分散媒を利用して溶解して、1月以上にわたり苦味が無く安定したミネラル含有溶液を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−65016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粉体状サプリメントに適した分散媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.せん断変形速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300 Pa・sである溶液であることを特徴とする粉体用の分散媒。
2.粉体が粉体状サプリメントであることを特徴とする1.記載の粉体用分散媒。
3.溶液は、ジェランガム0.017%、サイリウムシードガム0.45重量%水溶液であることを特徴とする1.又は2.記載の粉体用分散媒。
4.溶液は、ジェランガム0.025重量%水溶液であることを特徴とする1.又は2.記載の粉体用分散媒。
5.溶液は、ジェランガム0.04%、ペクチン0.0048重量%水溶液であることを特徴とする1.又は2.記載の粉体用分散媒。
6.粉体状サプリメントが複数種類のビタミンを含むことを特徴とする2.〜5.のいずれかに記載の粉体用分散媒。
7.粉体状サプリメントの平均嵩比重が0.57であることを特徴とする6.記載の粉体用分散媒。
8.1.〜7.のいずれかに記載された粉体用分散媒と粉体状サプリメントとを組み合わせたサプリメント混合液作成用キット。
【発明の効果】
【0006】
粉体状サプリメントなどの粉体が、溶液中に均質に分散させることができ、容器を傾けて注ぎ出したときに、容器に残りが少ないので、粉体を服用することができる。溶液状体では保存性が低下するサプリメントや各人用に処方されたサプリメントなどの粉体を飲用直前に本発明の分散媒に混合して服用することができる。
粉体と分散媒をセットにして、携帯することにより容易に利用できる。このようなセットの例としては、小容器付きキャップを備えたペットボトルなどが適している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】粉体サプリの混合状体を示す図。
【図2】分散媒のせん断速度と粘度の関係を示すグラフ。
【図3】容器の例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願人は、顆粒状等の粉体状している服用用のサプリメントや薬剤について、服用直前に混合して飲用するための分散媒を提供する。溶けない組成や溶液では保全性が悪いものなどは、服用直前に水などに混合あるいは溶解して飲用する場合がある。特に、利用者個人に合わせた処方に配合した組成であるオーダーのサプリメントなどに対して、飲用時に利用しやすい分散媒を提供する。
【0009】
<粉体>
本発明では、顆粒状も含めて粉体状をいい、飲用する直前に分散媒に混合あるいは溶解して用いるものである。飲用直前とは、混合あるいは溶解後30分以内程度には飲用することを指す。麦茶などのように作り置きして、一日中いつでも飲用に供するようなものではない。粉体状のものには、粉体状サプリメント、医薬、乾燥食品などがある。複数種類を混合した組成物形態も含まれる。
【0010】
粉体状サプリメントには、一般に健康食品素材として摂取できるものを乾燥・あるいは顆粒状にしたものを使用できる。
【0011】
たとえば、水溶性・脂溶性のビタミン類、食物繊維など多糖類、単糖類〜オリゴ糖、たんぱく質、ペプチド、アミノ酸、ミネラル類、各種野菜粉末、ローヤルゼリー、プロポリス、キノコ抽出物、植物抽出エキス等が挙げられる。
【0012】
本願発明の粉末状サプリメントには、分散性向上のための乳化剤やキレート剤を添加することも出来る。具体的には、ショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、各種サポニン類、リン酸塩等、食品及び食品添加物として使用できるものを粉末サプリメントの性状に合わせて適宜選択することが出来る。
【0013】
<分散媒>
本発明に用いる分散媒は、せん断変形速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300 Pa・sである溶液である。この溶液は、(1)ジェランガム0.017%、サイリウムシードガム0.45重量%水溶液、(2)ジェランガム0.025重量%水溶液、(3)ジェランガム0.04%、ペクチン0.0048重量%水溶液に調整することにより提供できる。
本発明者は、ゲル化剤を用いて分散媒を探求した結果、分散性と飲用後にコップ残りが少ない分散媒を見つけることができた。単純には共通項を見出すことは困難であった。せん断速度と粘度に着目した結果、せん断速度が極めて小さい領域においてニュートン流体として振舞う領域となるゼロシア粘度が粘度が45〜1500Pa・sであること 且つ、せん断速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300 Pa・sである溶液が適していることを見出すことができた。
【0014】
この粘度の分散媒を実現するゲル化・安定剤として、ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ゼラチン、澱粉、デキストリン、セルロース、カゼインナトリウム、グリセリン、エリスリトールなどの糖アルコール類、が挙げられる。
【0015】
<形態>
容器に収納した分散媒と粉体状物を組み合わせて提供することができる。
ペットボトル等の容器に詰めた分散媒と粉体状サプリメントの分包をセットにし、飲用時に粉体サプリメントを分散媒に混合して使用することができる。分包は、小収納部付きキャップに収納しておくこともできる。ゲル化剤などの分散媒は、加温撹拌溶解等の処理をして溶液状態で容器に充填する。
例えば収納部付きキャップを備えたボトルなどを使用することができる。キャップの収納部分に粉体を収納し、ボトル容器本体には本発明の分散媒を収納し、服用直前にキャップ内の粉体を分散媒に混合して飲用に供することができる。
粉状サプリメントなどの粉体をキャップ部に収納し、容器本体部分に分散媒を収納し、服用時に粉体に分散媒に混合できる組み合わせキットの例を図3に示す。分散媒1を収納した容器3と小収納部を備えたキャップ4に粉体2を封入した状態を(a)に示す。 キャップ4を押し込むことによってキャップ内に備えられた刃体6の先端がシール5を突き破り、粉体2が分散媒1に混合される状態を(b)に示す。(c)はキャップ4の中間部の横断面を示し、この例では、刃体6は十字形をしており、粉体収容空間を確保し、且つ、シール5の開封を大きくする工夫がされている。
【0016】
〔試験例〕
[分散媒の調整]
1.分散媒の配合
ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、デキストリン、ph調整剤、ゲル化補助剤及び水からなる素材を配合し、加温・撹拌調整した9種類の分散媒を作成した。配合は表1に記載したとおりである。
【0017】
【表1】

【0018】
2.分散媒の調整
(1)分散媒(b)は、ゲル化剤0.50gを秤量し、80g程度のお湯で80℃10分間撹拌溶解した。ゲル化補助剤として0.05%乳酸カルシウムを添加後、100gに調整し用いた。
(2)分散媒(c)〜(f)は、ゲル化剤(c)0.010g、(d)0.025g、(e)0.050g、(f)0.075gをそれぞれ秤量し、80g程度のお湯で90℃以上10分間撹拌溶解した後、100gに調整し用いた。
(3)分散媒(g)〜(i)は、ゲル化剤(g)0.10g、(h)0.025g、(i)0.50gをそれぞれ秤量し、80g程度のお湯で80℃、10分間撹拌溶解した後、100gに調整し用いた。
【0019】
[粉体サプリメントの調整]
次のビタミン類を中心とする配合したマルチビタミン顆粒をもちいた。
1.マルチビタミンの組成
配合比率(重量%)
・VBミックス (日油(株) 25.0
・カロチン(顆粒)(協和発酵工業(株)) 10.0
・ビタミンC (日油(株)) 55.0
・ビタミンD3粉末 (BASFジャパン(株)) 1.0
・d-αトコフェロールパウダー (エーザイ(株)) 9.0
【0020】
2.顆粒の調整
(1)使用機器
<造粒>
攪拌造粒機;ハイスピードミキサー
LFS-GS-2J(深江パウテック(株)製)
<乾燥>
流動層造粒装置:流動層造粒コーティング装置 MP-01
((株)パウレック製)

【0021】
(2)製造
カロチンビーズ以外の原料をハイスピードミキサー中に仕込み、原料重量に対して10%の水を添加してアジテーター300rpm、チョッパー3000rpmで3分間練合を行った。
その後得られた練合物を流動層造粒装置で、給気温度70℃で乾燥することにより顆粒を得た。得られた顆粒とカロチンビーズをビニール袋で混合し、マルチビタミン顆粒を作製した。
【0022】
(3)粉体粒径の組成
篩振とう機(筒井理化学機械株式会社製 機器名称:MICRO VIBRO SIFTER M-2)による測定で、次の比率の粒度分布をもつ顆粒製剤を製造した。

1.00mm超の粒子 : 0.3%、
0.71〜1.00mmの粒子 : 16.4%、
0.50〜0.71mmの粒子 : 21.9%、
0.30〜1.50mmの粒子 : 40.4%、
0.25〜0.30mmの粒子 : 6.6%、
0.18〜0.25mmの粒子 : 9.5%、
0.15〜0/18mmの粒子 : 2.3%、
0.15mm未満の粒子 : 2.6%
(4)平均嵩比重
得られたマルチビタミン顆粒の平均嵩比重は、0.57であった。
【0023】
3.分散性の評価
(1)分散処理、流出処理
直径24mmのガラス製バイアルに30mmの高さまで(a)〜(i)の分散媒を充填し冷却した後、0.5gの前記マルチビタミン顆粒を入れて上下に激しく10回振って混合した。
取り出しは容器を傾け、ゲルを流出させた。
(2)評価
混合状体の評価及び流出させたマルチビタミン顆粒粉末を取り出した後のバイアル容器に残ったマルチビタミン顆粒の状態の評価を次の基準で行った。評価結果を表2に示す。
混合状体は、混合直後、5分後、10分後、15分後の状態を評価した。これは、服用直前に粉体を分散させて飲用するという使用形態を想定した評価である。混合状体の例を図1に示す。
【0024】
<混合状体評価>
0:溶液中にまったく分散されない、混ざらない
1:溶液と混ざるが沈殿している
2:溶液と混ざり、沈殿は見られない
3:溶液中に均質に分散している
【0025】
<取り出し後の状態評価>
0:傾けても取り出すことが出来ない
1:傾けると出てくるが、残存が多い
2:傾けると出てきて、残存があまりない
【0026】
<総合評価>
×:0〜5 (水と変わらない、または水よりも評価が低い)
△:6〜9 (水よりは優れているが課題を残す)
○:10〜14(課題の解決にとても優れている)
【0027】
【表2】

【0028】
4.分散媒の物性評価
分散媒の物性をせん断速度と粘度関係を試験した。直径5cmのプラスチックシャーレに3mm厚のゲルを作成し試験に用いた。測定時にプレートからはみ出た部分は除いた。測定結果を図2に示す。
(1)使用装置
TA Instruments社製 粘弾性測定装置 ストレス制御式レオメーター AR-G2
(2)測定条件
使用プレート:直径4cm アルミ製パラレルプレート
Gap : 2000μm
定常流粘度測定モード:せん断速度1.0E-04〜1.0E-01 の範囲で測定
【0029】
5.結果
表2において、総合評価「○」である(b)と(d)と(g)に着目して、分散媒の物性を確認したところ、せん断変形速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300 Pa・sである溶液が含まれることが明らかとなった。
特に、ジェランガム0.025重量%水溶液や、ジェランガム0.04%、ペクチン0.0048重量%水溶液が適していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
せん断変形速度0.01 1/secのときの粘度が10〜300 Pa・sである溶液であることを特徴とする粉体用の分散媒。
【請求項2】
粉体が粉体状サプリメントであることを特徴とする請求項1記載の粉体用分散媒。
【請求項3】
溶液は、ジェランガム0.017%、サイリウムシードガム0.45重量%水溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉体用分散媒。
【請求項4】
溶液は、ジェランガム0.025重量%水溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉体用分散媒。
【請求項5】
溶液は、ジェランガム0.04%、ペクチン0.0048重量%水溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉体用分散媒。
【請求項6】
粉体状サプリメントが複数種類のビタミンを含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の粉体用分散媒。
【請求項7】
粉体状サプリメントの平均嵩比重が0.57であることを特徴とする請求項6記載の粉体用分散媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載された粉体用分散媒と粉体状サプリメントとを組み合わせたサプリメント混合液作成用キット。


【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−120514(P2011−120514A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280058(P2009−280058)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】