説明

粉砕刃及びそれを利用した粉砕装置

【課題】
粒度が均一な粉砕物を得るとともに、粉の発生が少ない粉砕刃及び粉砕装置を提供する。
【解決手段】
粉砕槽内に回転可能に支持された粉砕ローラ22の表面には、粉砕対象物を引き込むための爪と、多数の粉砕刃28が形成されている。粉砕ローラ22の斜め上方には、固定刃部材32が固定されている。前記粉砕刃28は、前記粉砕ローラ22の軸方向に沿って複数平行に形成された第1の溝26Aと、周方向に複数平行に形成された第2の溝26Bにより凸状に形成される。前記第1の溝26A及び第2の溝26Bの寸法・形状は、粉砕刃28間のスペースに粉砕対象物がどのような向きで入り込んだ場合であっても、最終的に生成される粉砕物が所定の長さを超えることがないように設定されるため、粒度品質が向上し、粉の発生が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕刃(ないし破砕刃)及びそれを利用した粉砕装置(ないし破砕装置)に関し、更に具体的には、粉砕物(破砕物)の粒度の均一化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の成形時には、金型に溶融した樹脂原料を注入するための経路も固化して取り出され、製品と切り離される。この経路の部分が固化したものはスプル・ランナーと呼ばれ、粉砕機などで粉砕した後、バージンペレットに混入されてリサイクル材として再利用される。図3を参照して、従来の粉砕装置の機構を説明すると、粉砕槽内に回転可能に支持された粉砕ローラ100の表面には、多数の粉砕刃102が設けられている。図3(A)は、粉砕ローラ100の粉砕刃102の構造を示す拡大図,図3(B)は、粉砕ローラ100の断面図である。これらの図に示すように、粉砕刃102は、駆動軸100Aの軸方向に複数列平行に設けられ、一つの列内の粉砕刃102は、軸方向に隣接する粉砕刃102と所定の間隔をおいて形成されている。そして、前記粉砕刃102の列が通過可能な形状の切り欠き刃部104Aが設けられた固定刃部材104と、前記粉砕刃102との間で、粉砕対象物の粉砕が行われる。前記粉砕刃102の列同士の間には、粉砕対象物(例えば、スプル・ランナーなど)を入りやすくするための傾斜面106が設けられている。なお、ガイドプレート108は、粉砕対象物の落下を防止するためのものである。このような従来技術としては、例えば、以下の特許文献1に示す固定式粉砕機などがある。
【特許文献1】特許第3143451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、再利用の際に、射出成形機への供給や計量もしくは混合などを精度よく、かつ、円滑に行うためには、カットされた粒(粉砕物)について、(1)粒の大小差がなく、限りなくバージンペレットの大きさに近いこと,(2)粉が少ないこと、といった粒度品質が求められる。従って、粉砕刃のモデルは粉砕機そのものの性能・精度となり得るとともに、射出成形機への供給や、計量時の計量時間、計量・混合精度の安定化を図るため重要となる。
【0004】
通常、粉砕刃102のサイズなどは、スプル・ランナーの太さ・再利用時の使用設備仕様(スクリュー径)などから指定される。しかしながら、スプル・ランナーには、金型工法により針のように細く、しかも長いものも少なくない。その粉砕を、図3に示すような従来モデルの粉砕刃102で行おうとした場合、粉砕刃102の軸方向の幅WXに相当する長さの粉砕品のほか、隣接する粉砕刃102の列同士の間隔IYに相当する長さの粉砕品も発生してしまう。そのような長い粉砕品は、射出成形機への供給,計量時の計量時間,計量混合精度の安定化を阻害する場合もある。また、長い粉砕物は、粉砕刃102の列間のスペースに押し込まれたまま固定刃部材104内を通過するため、粉の発生を助長させる要因の一つにもなる。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、粉砕物の粒度が均一になるように,すなわち、所定の大きさや長さ以上の粉砕物が生じないように粉砕を行うとともに、粉の発生を低減することができる粉砕刃及びそれを利用した粉砕装置を提供することである。他の目的は、粉砕刃の作製を容易に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の粉砕刃は、回転ローラの表面上に軸方向に複数平行に形成された第1の溝と、周方向に複数平行に形成された第2の溝によって、凸形の略角柱状に多数形成されており、前記第1の溝内に少なくとも一部が入り込んだ粉砕対象物を固定刃部材との間で粉砕する際に、前記粉砕対象物を所定の長さ以下に粉砕するように、前記第1及び第2の溝が形成されていることを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記第1の溝の軸方向に沿って入り込んだ粉砕対象物と、前記第1の溝から径方向に突出するように少なくとも一部が入り込んだ粉砕対象物が、ほぼ同等の長さに切断されるように、前記第1及び第2の溝を形成したことを特徴とする。他の形態は、前記粉砕対象物が、プラスチックであることを特徴とする。更に他の形態は、前記粉砕対象物が、スプル・ランナーであることを特徴とする。
【0008】
本発明の粉砕装置は、粉砕対象物が投入される粉砕槽,該粉砕槽内に略水平かつ回転可能に支持される回転ローラ,該回転ローラを回転させる回転駆動機構,前記回転ローラの表面に形成された請求項1〜4のいずれかに記載の粉砕刃,前記粉砕槽内に固定されており、前記回転ローラの軸方向の粉砕刃の列と略同一形状、かつ、該粉砕刃が通過可能な切り欠き刃部が形成された固定刃部材,前記粉砕槽内で、前記固定刃部材に対向する位置に設けられており、投入された粉砕対象物の落下を防止する落下防止部材,を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉砕刃間の溝(スペース)の寸法や形状の改良を行うことにより、所定の長さ以上の粉砕物の発生を防止し、粒度品質が格段に向上するとともに、粉の発生を低減することができる。また、粉砕刃の形状の改良により、刃の加工が容易になり、汎用工具や汎用設備での作製が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の粉砕装置の全体構成を示す斜視図である。図2(A)は、本実施例の粉砕刃の構造を示す斜視図,図2(B)は、前記(A)を#A−#A線に沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。図1に示すように、本実施例の粉砕装置10では、スプル・ランナー64などの粉砕対象物を所定の粒度(大きさないし長さ)に粉砕する粉砕槽20が足12に支持されており、前記粉砕槽20の下方には、処理後の粉砕物を回収する回収容器46が設けられている。また、粉砕槽20の上方には、前記スプル・ランナー64などを投入するための投入口58を備えたホッパ56が設けられている。該ホッパ56は、粉砕槽20に対して開閉可能となっており、金具62により閉じた状態での固定が可能となっている。
【0012】
前記粉砕槽20の対向する一対の側面間には、略水平に、粉砕ローラ22が回転可能に支持されている。また、前記粉砕槽20の他の側面側は、前記粉砕ローラ22に設けられた粉砕刃28を通過させることによって、前記スプル・ランナー64を粉砕(ないし切断)するための固定刃部材32が、傾斜面を形成するように固定されている。更に、前記粉砕槽20の他の側面側には、粉砕処理前のスプル・ランナー64が下方に落下するのを防止するためのガイドプレート38が、同じく傾斜面を形成するように固定されている。
【0013】
前記粉砕ローラ22の表面には、爪24と多数の粉砕刃28が設けられている。前記爪24は、投入されたスプル・ランナー64を引き込んで粉砕刃28での粉砕を行うためのもので、前記粉砕刃28よりも径方向に突出するように形成されている。なお、このような爪24は公知である。また、前記粉砕刃28は、図2(A)に示すように、粉砕ローラ22の表面に、該粉砕ローラ22の軸方向に沿って複数平行に形成された第1の溝26Aと、周方向に複数平行に形成された第2の溝26Bを設けることによって一体に形成されるが、粉砕刃28や溝26A,26Bが形成されたディスクを複数枚重ねるようにしてもよい。なお、ここでは、軸方向に所定間隔で複数並んだ粉砕刃28を、粉砕刃列29とする。前記第2の溝26Bの幅によって、前記粉砕刃28の軸方向の幅WAが決定され、前記第1の溝26Aの幅によって、前記粉砕刃列29間の間隔IBが決定される。また、粉砕刃28の深さDは、前記第1及び第2の溝26A,26Bの深さにより決定される。本実施例では、後述するように、最終的な粉砕物の粒度がほぼ均一となるように、前記溝26A及び26Bの形状・寸法が決定される。なお、前記第1の溝26Aを、若干傾いた略コ字状とすることにより、傾斜面30を形成し、スプル・ランナー64が入りやすくなる。このような粉砕ローラ22は、前記粉砕槽20の外側に設けられたモータ52の回転を、ギア機構(ないし減速機)54及び駆動軸50を介して伝達することにより、回転可能となっている。なお、駆動軸50と粉砕ローラ22を一体に構成するようにしてもよい。
【0014】
一方、前記固定刃部材32には、前記粉砕ローラ22が回転した際に、前記爪24を通過させるための切り欠き部(図示せず)や、前記粉砕刃28を通過させる切り欠き刃部36が設けられている。なお、固定刃部材32の切り欠き部を通過した爪24の通路となるガイド溝34が、粉砕槽20に設けられている(図1参照)。前記切り欠き刃部36は、前記粉砕刃列29と略同一形状であって、粉砕刃28が通過することができる程度の寸法に設定されている。このため、前記粉砕ローラ22を回転させると、爪24によって引き込まれたスプル・ランナー64が、粉砕刃28によって、切り欠き刃部36に押し込まれて切断される。なお、切断された粉砕物は、前記固定刃部材32の裏側から、粉砕槽20の下方に設けられた回収口48を通過して、回収容器46に回収される。このような固定刃部材32は、レバー44によって開閉可能となっている。ガイドプレート38についても、基本的には前記固定刃部材32と同様の構成であり、爪24を通過させるための切り欠き部(図示せず)と、粉砕刃列29を通過させるための切り欠き部42が形成されており、図示しないレバーによって開閉可能となっている。以上説明した各部を構成する材料は公知であり、そのいずれを用いるようにしてもよい。
【0015】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、図示しない電源を入れ、モータ52を駆動して粉砕ローラ22の回転を開始し、ホッパ56の投入口58から、粉砕対象物であるスプル・ランナー64を投入する。投入されたスプル・ランナー64は、爪24により引き込まれて、多数の粉砕刃28の間に少なくとも一部が入った状態となる。すなわち、第1の溝26A,第2の溝26B,あるいは、第1及び第2の溝26A及び26Bの交差部分に、スプル・ランナー64の少なくとも一部が入り込んだ状態となる。粉砕刃28の間に入り込んだスプル・ランナー64は、粉砕ローラ22の回転によって、固定刃部材32まで運ばれ、切り欠き刃部36を粉砕刃28が通過する際に、所定の長さに切断される。
【0016】
例えば、図2(A)に点線で示すように、スプル・ランナー64が、第1の溝26Aに沿って入り込んでいる場合には、粉砕刃28の幅WAに相当する長さに切断され、図2(B)に点線で示すように、径方向に突出するように粉砕刃28間に一部が入り込んだ場合には、間隔IBに相当する長さに切断されるという具合である。従って、間隔IBと幅WAの長さがほぼ同等となるように溝26A及び26Bの形状・寸法を設定することにより、スプル・ランナー64がどのような向きで入り込んだ場合であっても、所定の長さ(本実施例の場合は、間隔IB)を超えない粉砕品を形成することができる。本実施例では、例えば、前記間隔IBと幅WAが、約4mm程度となるように設定されているが、必要に応じて適宜変更してよい。
【0017】
そして、粉砕ないし切断された粉砕物は、固定刃部材32の裏側から粉砕槽20の下方に設けられた回収容器46へ回収され、必要に応じて適宜手段で成形機などへ送られて、再利用される。一方、粉砕槽20内に残った粉砕対象物は、粉砕ローラ22の回転の継続によりやがて切断され、最終的に回収容器46へ回収される。なお、粉砕前のスプル・ランナー64の落下がガイドプレート38により防止されるのは、上述した通りである。
【0018】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)粉砕刃28間の溝26A及び26Bの寸法や形状の改良を行うことにより、所定の長さ以上の粉砕物の発生が防止され、粒度品質が格段に向上するとともに、粉の発生を低減することができる。
(2)略コ字状の溝26A及び26Bによって粉砕刃28を形成できることから、従来のような刃部形成用の特殊切削工具が不要で汎用化でき、作製が容易になる。このため、粉砕刃28の加工工程の短縮と、製造コストの低減が可能となる。
【0019】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した各部の形状・大きさは一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。特に、溝26A及び26Bについては、粉砕物に求められる粒度(大きさ・長さ)に応じて、設計変更可能である。例えば、前記実施例では、粉砕刃28の幅WAと間隔IBがほぼ同等になるように設定することとしたが、粉砕対象物の形状や粉砕刃間への入り込み方を考慮した上で、各部の形状・寸法を決定するようにしてよい。
(2)前記実施例の粉砕装置10の構成も一例であり、回収容器46に回収した粉砕物を輸送する輸送手段などを接続するようにしてもよい。
(3)粉砕ローラ22の回転駆動機構も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更可能である。
(4)上述した作用も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。
(5)本実施例では、粉砕対象物として、スプル・ランナー64を例に挙げて説明したが、他の各種のプラスチック材,例えば、成形不良品などの粉砕に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、粉砕刃間の溝(スペース)の寸法や形状の改良を行うことにより、所定の長さ以上の粉砕物の発生を防止して粒度品質を向上させるとともに、粉の発生を低減することとしたので、粉砕装置の用途に適用できる。特に、スプル・ランナーなどのプラスチック廃材を再利用するための粉砕装置の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施例1の粉砕ローラの構造を示す図であり、(A)は斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図3】背景技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10:粉砕装置
12:足
20:粉砕槽
22:粉砕ローラ
24:爪
26A,26B:溝
28:粉砕刃
29:粉砕刃列
30:傾斜面
32:固定刃部材
34:ガイド溝
36:切り欠き刃部
38:ガイドプレート
42:切り欠き部
44:レバー
46:回収容器
48:回収口
50:駆動軸
52:モータ
54:ギア機構(ないし減速機)
56:ホッパ
58:投入口
62:金具
64:スプル・ランナー
100:粉砕ローラ
100A:駆動軸
102:粉砕刃
104:固定刃部材
104A:切り欠き刃部
106:傾斜面
108:ガイドプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ローラの表面上に軸方向に複数平行に形成された第1の溝と、周方向に複数平行に形成された第2の溝によって、凸形の略角柱状に多数形成されており、
前記第1の溝内に少なくとも一部が入り込んだ粉砕対象物を固定刃部材との間で粉砕する際に、前記粉砕対象物を所定の長さ以下に粉砕するように、前記第1及び第2の溝が形成されていることを特徴とする粉砕刃。
【請求項2】
前記第1の溝の軸方向に沿って入り込んだ粉砕対象物と、前記第1の溝から径方向に突出するように少なくとも一部が入り込んだ粉砕対象物が、ほぼ同等の長さに切断されるように、前記第1及び第2の溝を形成したことを特徴とする請求項1記載の粉砕刃。
【請求項3】
前記粉砕対象物が、プラスチックであることを特徴とする請求項1又は2記載の粉砕刃。
【請求項4】
前記粉砕対象物が、スプル・ランナーであることを特徴とする請求項3記載の粉砕刃。
【請求項5】
粉砕対象物が投入される粉砕槽,
該粉砕槽内に略水平かつ回転可能に支持される回転ローラ,
該回転ローラを回転させる回転駆動機構,
前記回転ローラの表面に形成された請求項1〜4のいずれかに記載の粉砕刃,
前記粉砕槽内に固定されており、前記回転ローラの軸方向の粉砕刃の列と略同一形状、かつ、該粉砕刃が通過可能な切り欠き刃部が形成された固定刃部材,
前記粉砕槽内で、前記固定刃部材に対向する位置に設けられており、投入された粉砕対象物の落下を防止する落下防止部材,
を備えたことを特徴とする粉砕装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate